2021年12月03日

会計ソフトを変えるもの(その3)

前回は、コンピューティングパワーとネットワーク帯域の増大によって、中央集中から分散、そして再び中央集中という技術の循環サイクルができているとお話をしました。だからこそ、2008年、私はクラウドという言葉が一般的でない時代に、これからはSaaS(クラウド)と宣言できたのです。

もっとも、中央集中か分散かは、使い勝手の観点からは答えはそう単純ではありません。ユーザーは、既に自分のPCで色々とできることに慣れています。それが、中央集中の時代になった(戻った)から使い勝手は犠牲になります、ではユーザーは納得しません。これまで通りの使い勝手は維持しなければならない。そうなると、分散の良さを活かした中央集中ということになります。

例えば、分析そのものは使い慣れたExcelで、でもそのデータはクラウドに保管し、チーム内でも共有できるという組み合わせになります。また、スマホアプリもまた分散の良さを活かした中央集中です。Gmailにせよ、Twitterにせよ、Slackにせよ、Webブラウザーで使うことができます。ただ、そうすると使い勝手としてはイマイチ。だからこそ、スマホアプリを使うわけです。スマホアプリは、端末であるスマホのリソースを使って動いていますから、本質的に分散の仕組みです。ただ、常にクラウドとつながっていることにより、データの観点では中央集中になっています。つまり、やはり分散と中央集中の組合せです。

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(社内資料を思いっきり公開、笑)

実は、テクノロジーの循環サイクルは、振り子のように中央集中と分散の間を行ったり来たりという訳ではありません。実際に起こっているのは、スパイラル、すなわち、進化しつつの融合です。中央集中(メインフレーム)から分散(PC)へ、そして再び中央集中(クラウド)へ。しかし、ここで言う「再びの中央集中」は、以前の「中央集中」と同じものではありません。上でお話ししたような分散の良さを活かした中央集中、言い換えれば進化した中央集中です。

ちなみに、中央集中→分散→中央集中の次として、再び分散を意味するエッジ・コンピューティングという概念があります。重いデータを中央に送ることなく、分散して処理する。例えば自動車の自動運転では大量のデータをリアルタイムに処理する必要がありますから、エッジ・コンピューティングは欠かせません。ただ、これも、PCと同じような分散に戻るということではありません。分散と中央集中がそれぞれの良さを活かしつつ融合していくということです。

だいぶ長くなってしまいましたが、これが私が弥生の社長に就任した13年前から、クラウドに取り組み続けている理由です。(まだまだ続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:39 | TrackBack(0) | 弥生
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