2021年12月22日

弥生の価値

先週金曜日に、弥生の株主がオリックス株式会社から、グローバルな投資会社であるKKRに変わることを発表しました。現段階では、オリックスKKRの間で弥生株式の譲渡に関する契約が締結された段階であり、実際に弥生の株主がKKRに変わるのは来年春の予定です。

今回の取引に関しては、10月から一部で報道がされており、直近では先々週末にも報道がされていました。これらは正式決定および正式発表前のいわゆるリーク記事です。正式な決定もされておらず、また、弥生はもとよりオリックスとしても正式に発表したものではありませんので、私としても対外的に何らコメントしようがなく、扱いには苦慮しました。この種の話は徹底した秘密保持義務が課されているはずなのですが、何なんでしょう、というのが私の率直な気持ちです。

これらリーク記事はそれなりに注目を集めたようですが、注目を集めた一つの理由はその取引価格でしょうか。10月の報道では2,000億円以上、12月の報道では2,400億円とされています。正式な取引価格は公表されておらず、私も正確には知りません(取引はあくまでもオリックスとKKR間のものですから)。ただ、オリックスからは子会社株式売却益が1,632億円であると発表されていますので、まあ当たらずと言えども遠からずと想像が付くかと思います。

この金額をどう見るか、ですが、私としてはKKRに弥生を高く評価していただいた結果だと考えています。一連のプロセスの中で(上でお話ししたようにプロセスは基本的に売主であるオリックスと買手候補間のものです)、私も限られた時間ではありますが、弥生の現況について、そして今後の成長戦略についてお話しをしています。そういったやり取りを通じ、弥生の現状での収益性であり、その安定性への評価に加え、将来に向けて高い成長性、その蓋然性に関する評価が合わさった結果だと考えています。

事業の利益は売上 - コストであり、利益を伸ばそうとすれば、売上を上げるか、コストを下げるか。当然のことながら、弥生は健全な成長のためにはしっかり投資する(結果的にコスト増となる)べきだと考えており、コスト削減で利益をひねり出そうという発想はありません。次に、売上は顧客数×顧客単価と分解することができますが、売上を伸ばそうとすれば、顧客数もしくは顧客単価、あるいはその両方を伸ばす必要があります。先ほど成長性と書きましたが、弥生はお客さまの数をこれまで以上に増やしていくことによって、充分に高い成長を実現できると思っています。

逆に、弥生は自分たちの都合だけで価格を引き上げ、それによっていわゆる顧客単価(ARPU)を引き上げ、無理やり売上増を実現しようとは思っていません。もちろん提供価値を向上させる中で、価格を見直すこと自体は否定しませんが、価値があると認めるのはお客さまですから、自分たちの都合でできるものではなく、お客さまの納得感ありきです。ですから、弥生のお客さま、パートナーの皆さま、ご安心ください。

より多くのお客さまがデジタル化のメリットを実感できるように。そのためには、今足元の売上にはつながりませんが、電子インボイス推進協議会を通じて法令改正対応だけでなく、業務の効率化を実感できるインボイス対応を進めています。また、もっと足の長い話ですが、デジタル化を通じて年末調整のあり方を根本から見直すということにも取り組んでいます。

弥生は5年どころか、10年先を見据えて種を蒔き、じっくりと育てています。従業員やお客さまを犠牲にしての無理のある急成長ではなく、幸せな従業員がお客さまにしっかりとした価値を提供し続けることによって、5年先も10年先も、安定的に継続的に成長することを目指しています。こういった弥生の考え方を、理解、そして支持いただくことが、今回の高い評価につながっています。

まだKKRの皆さんとじっくりとは議論できてはいないのですが、弥生の成長戦略に賛同しており、それを確実に実現するために最大限の協力をしたいと言っていただいています。KKRという強力なパートナーを得て、これから実現できることにワクワクしています。
posted by 岡本浩一郎 at 13:00 | TrackBack(0) | 弥生
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