2022年02月18日

透ける狙い

今週は今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししています。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少なめ。ただ少ない中でも、目立つのが区分欄の増加ということを前回お話ししました。近年区分が増えている背景には、税制の複雑化があるとも。

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もっとも今回追加された区分欄は全て申告書左上の「収入金額等」のエリアなのですが、このエリアでの追加には税制の複雑化という以上に、国税庁として何を注視しているかが表れているように思います。

わかりやすいのが、「雑」「その他」という行の区分欄ですね。雑所得がこれまで「公的年金等」と「その他」の2行だったものが、昨年の申告書から「公的年金等」「業務」「その他」の3行に分かれたのには、ここでいう業務に該当する「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」を今後はしっかりと見ていきますよという国税庁の意志の表れではないかということを昨年お話ししました

今回は「その他」の行に区分欄が新設された訳ですが、それではこの区分欄に何を記入するのかと手引き(pdf)を確認してみると、「個人年金保険に係る収入がある場合は「1」を、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」を、個人年金保険に係る収入及び暗号資産取引に係る収入の両方がある場合は「3」を記入します」とあります。暗号資産(仮想通貨)取引というと、国税庁が申告漏れや不正確な申告に目を光らせているのは周知の事実。これまでの申告書では、雑所得があることはわかっても、その内訳がどうなっているかは曖昧だった(厳密に言えば、第二表で所得の内訳を記入することは求められてはいましたが、この欄はややアバウトなので)のですが、今後はこの区分欄でビシッと特定されることになります。結果的に、暗号資産取引による雑所得がある場合には、通常より丁寧に見られることになるのでしょう。

不動産所得の収入で新設された区分欄のうち「区分1」は、手引きによれば「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(措法41の4の3)の適用がある場合は、「1」を記入します」とありますので、これも国外中古建物が注視されていることの表れですね。

では、事業所得の「営業等」収入の区分、「農業」収入の区分、そして不動産所得の収入の「区分2」は何を注視しているのかというと、実は、帳簿の付け方なのです。これらの区分には「1」から「5」までの区分を記入するのですが、これは手引きで以下のように解説されています。

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電子帳簿保存法というと耳馴染みはないかもしれませんが、実は全事業者に影響が及びうるということを昨年お話ししました(結果的には2年間の猶予期間が設けられたということも昨年末にお話ししました)。

今回、こういった区分が設けられたということは、国税庁がどのように帳簿を付け、保存するのかということに関心を持っているということの表れです。もちろん弥生を使っていれば、少なくとも「2」(会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合)に該当しますので、国税庁から見ても、「ああちゃんとした帳簿付けをしていますね。よろしい。」ということになるものと思いますが(笑)。

申告書全体から見ればほんのわずかな変更点ですが、毎年確定申告書を睨んでくると、こんなことが浮かび上がってくるのです。職業病だと思いますが、なかなかマニアックなことは自覚しております(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:37 | TrackBack(0) | 税金・法令
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