2022年04月19日

事業所得か雑所得(業務)か 2022

今年の確定申告期間は終了しました(ただし新型コロナウイルス感染症の影響が続き、申告等ができなかった場合には申請により個別に延長が認められる措置はあり)が、もう少しだけ確定申告の話題を。

昨年、確定申告書の雑所得の中に業務という区分を新設されたということをお話ししました。弥生のお客さまであれば馴染みのある事業所得ではなく、雑所得の一区分としての業務。以前お話ししたように、雑所得とは事業所得等、他の所得のいずれにも当たらない所得とされており、その中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。

実は、この業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。

雑所得には、税金が軽減されるなどの税務上のメリットはないのですが、一方で、帳簿付けも要らず、領収書の保存も要らずということで、申告が簡単というのがメリットでした。これが変わるということです。少し厄介なのは、業務に係わる収入が300万円(1,000万円)を超えた場合、というのは、実は今年分ではなく、前々年の数字が判断基準になります。ですので、そうか、今年はちょっと稼ぎを抑えるかと言っても、実は既に遅く、前々年である2000年の収入が300万円超であれば、来年春の確定申告に向けて、領収書の保存が必要になり、1,000万円超であれば、さらに収支内訳書の作成が必要になります。また、この判断基準は「収入」に基づいています。例えば、利益は50万円しかなくても、収入(売上)が300万円超であれば、領収書の保存が必要になります。

こうなってくると、雑所得ではなく、事業所得の方がいいのではないか、という考え方もあるかと思います。とくかくラクだったのが雑所得のメリット。それが変わった以上は、多少手間がかかっても事業所得(青色申告)で積極的に節税メリットを取りに行くというのもありかと。事業所得で青色申告であれば、最大65万円の青色申告特別控除が得られますから、圧倒的な節税メリットがあることはこれまでにもお話ししてきた通りです。

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難しいのは、雑所得と事業所得は自由に選べるわけではないということ。これも以前お話ししたことですが、事業所得として認められるためには、営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められる状態である必要があります。つまり、継続的に儲けるつもりで、儲ける一定の確からしさがある場合は事業所得になりうるということです。

それに対し、儲かったらラッキーぐらいのつもりの場合は、雑所得ということになります。ただ、収入が300万円超であれば事業として認められる可能性はあると思いますし、1,000万円超であれば、それはもう立派な事業のように思うのは私だけでしょうか(もちろん収入が1,000万円でも、原価が1,000万円超で常に赤字であれば、継続的に儲けるつもりがない、ということになるのでしょうが)。

今回、雑所得の手間が増えることによって、雑所得か事業所得というのは今後より大きな論点になっていきそうです。
posted by 岡本浩一郎 at 23:52 | TrackBack(0) | 税金・法令
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