2020年(令和2年)分の所得税の確定申告書から雑所得の中に業務という区分(ここでいう区分は雑所得の中での「公的年金等」「業務」「その他」という分類の意味)が新設されました。またこの際には、新設された業務の行に区分欄(ここでいう区分は付加情報的な意味合い)が設けられました。
ただ、実はこの業務の区分欄はこれまで記入不要とされてきました。しかし前回お話しした内容を踏まえると、来年の申告からはこの区分欄に記入が必要になってくるのではないかと推測できます。前回お話しした通り、来年の申告からは、業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存(5年間)が義務化され、また、1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられますが、例えば、前者の場合は区分欄に「1」を、後者の場合には区分欄に「2」を記載しなさい、といったようになるのではないかと思います。
厄介なのは、前回もお話しした通り、この判断の元となる収入は前々年の収入であるということです。つまり来年の申告(2022年(令和4年)分)であれば、2020年(令和2年)分が判断対象になることになります。
ここで勘のいい方はお気付きかと思います。そう、雑所得の中に業務という行ができたのが2020年(令和2年)分。2020年(令和2年)分の申告では業務を括りだして申告しているはずだから、その数字を見てくださいということです。つまり、2022年(令和4年)分の申告から領収書の保存や収支内訳書の作成が求められる、そのために、2020年(令和2年)分からしっかり仕込みがされていたということです。
もっともこれは当たり前と言えば当たり前。というのは、今回の領収書保存の義務化や収支内訳書の作成義務化は、令和2年度の税制改正(pdf)で定められたものだからです。つまり令和2年度の税制改正で決まったことが、まず2020年(令和2年)分から確定申告書に反映された。ただその段階では業務の区分欄は使われなかった。満を持して業務の区分欄が実際に使われるようになるのが、2022年(令和4年)分の確定申告(来年春)から、ということです。
要はだいぶ前から既にレールは敷かれていたということになりますが、今回の領収書保存の義務化や収支内訳書の作成義務化については、正直、現段階ではほとんど認知されていないと思いますので、注意が必要です。特に領収書の保存という意味では、今から心がけておかないと来年春の申告時の際に、ない!ということになりかねませんので。
ただ前回もお話ししましたが、雑所得で収入(売上)が300万円、ましてや1,000万円という方は、雑所得ではなく、事業所得として青色申告ができる状態を目指すべきなのではないかと思います。それはすなわち、営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められる状態を目指すということです。