事業所得か雑所得かの判断基準に関するパブコメは8/31で締め切りとなりました。パブコメを受けてどのような結論になるのか興味津々です。ただ、先週末の段階で既に4,000件超の意見が寄せられていたということで、整理するのも時間がかかりそうですね。
これまでにもお話しした通り、私自身としては今回の改正については全体としては賛成です。事業所得と雑所得の境界線が曖昧だった中で、一つの判断基準が示され、どちらに該当するかの予見性が高まることはプラスだと考えているからです。一方で、今回示された、主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合についてのみ、反証がない限り雑所得という基準に関して、反証となり得る事例を示すべきだとも考えています。例えば副業だが例年は収入300万円以上であり、社会通念上事業と称するに至る程度になっている方が、新型コロナウイルス禍など外的な要因により一過性で収入が300万円未満となった場合。この場合、外形的には今回の判断基準では雑所得となりますが、事業所得として扱うべきだと思いますし、それが明示されるべきだと考えています。
副業を推進しようという動きもある中で、収入金額が 300 万円を超えない場合(かつ有効な反証がない場合)に税金上のメリットがない雑所得になることに対する反対の声もあるようです(というか報道によれば、そういった声が大きいのかと思われます)が、それであれば、雑所得にも一定の税制上の優遇措置を設けるという方向もありえるのではないでしょうか。事業所得でなおかつ青色申告の場合、1) 青色申告特別控除、2) 損失の繰越、3) 損失の他の所得との通算というメリットがありますが、例えば、雑所得についても一定の条件の下で特別控除を認める(逆に3)は認めない)という考え方もあるのではないかと思います。
以前お話ししましたが、業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます(ただし、逆に言えば、300万以下であれば領収書の保存すら求められないわけですから、雑所得と、帳簿の作成と証憑の保存が求められる事業所得とは大きく性格が異なることがわかるかと思います)。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。
上記も踏まえ、収入に関わらず、業務に係わる雑所得について、収支内訳書を作成し提出した場合には、特別控除として一定額の控除を認めるというのはどうでしょうか。収支内訳書は、もともと事業所得の白色申告の際に作成するものです。事業所得の白色申告について、2014年分から帳簿付けが義務化されていますが、これと足並みをそろえ、事業所得の白色申告および業務に係わる雑所得ともに、帳簿付けをして収支内訳書を提出すれば特別控除が認められるとなれば、やる気もおきるのではないでしょうか。
特別控除が認められるということは、納税者にとっては節税になるわけですから、国の税収としてはマイナスになるのではないかと思われるかもしれません。ただ、帳簿があることによって、より確からしい申告が可能になるわけですから、全体としては納税者も嬉しいし、国としても嬉しいとなり得るのではないかと思います。立場的に我田引水と見えるかもしれませんが(笑)、正しく帳簿を付けて正しく申告する人がトクをする仕組みのお手伝いをしたいと思っています。