事業所得か雑所得かの判断基準について、国税庁より通達の一部改正の形で新しい基準(案)が示され、8月末を期限にパブコメが募集されていましたが、その結果が本日公表されました。
パブコメで寄せられた意見を受け、結論としては大幅な見直しとなりました。率直に言って驚くほどの大幅な見直しです。8月下旬に4,000件以上の意見が寄せられているという報道がありましたが、最終的に7,059件の意見が寄せられたとのこと。本ブログでお話しした通り、私としては、改正案に一定の懸念はあり、明確にすべき点は存在するが、全体としては賛成でした。弥生としてもそういった趣旨の意見は提出しています。7,059件が個別にどのような内容だったのかはわかりませんが、報道から察するに、また、結果的に大幅な見直しになったことを踏まえると、否定的な意見が相当多かったということなのかと思います。
どのように見直しになったのか、ですが、もともとの改正案は、事業所得か雑所得かの判断において、1) 主たる所得か、主たる所得でないか、また、2) 収入が300万円超か、300万円以下かという二つの判断ポイントがありました。今回公表された改正では、この二つのポイントは両方ともなくなり、新たに、帳簿が作成され保存されているかという判断ポイントに変わりました。これは、「所得税法上、事業所得者には、帳簿書類の保存が義務づけられている点」を鑑みたものだそうです。
結果的に、副業であっても、あるいは収入が300万円以下であっても、帳簿を作成し、保存していれば、事業所得と認められ得るということになります。もともとの改正案に対する私の懸念としては、事業立ち上げ期につき結果的に(収入が少ない)副業に見えてしまう場合や、新型コロナウイルス禍など外的な要因により一過性で収入が300万円以下となった場合などに、本来は事業所得として扱うべきものが、雑所得になりかねないというものでした。それが今回の改正では、帳簿を作成し、保存していれば事業所得になり得るということで、懸念は無事に解消されました。
ただし、注意が必要なのは、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかにより判定する」という原則が何ら変わった訳ではないということです。ですから、帳簿を作成し、保存していれば事業所得になり得ますが、だからといって必ず事業所得と認められるわけではありません。
意見公募結果には書かれていませんが、日経の記事では「ただし帳簿があっても、収入金額が300万円以下でかつ本業の収入の1割未満の場合や、赤字が続いているにもかかわらず赤字解消のための取り組みを進めていない場合などは、状況により個別に判断する方針だ」とありますが、これが社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかという判断(の一例)なのかと思います。
個別判断が必要なところは残ります。日経にも書いてある通り、そもそも「通達は国税庁の内規で、法律ではない。こうした取り扱いを不服とした納税者が訴訟を起こした場合は、事業実態を裁判所が総合的に判断することに」なります。0/1の絶対的ルールではありませんが、それでも帳簿を作成し、保存していれば原則として事業所得という一つの基準が示されたことは大きな前進だと思います。