2023年02月24日

事業所得か雑所得(業務)か 2023

前々回は令和4年分と令和3年分の申告書について、どのような違いがあるのか、マニアックに(笑)語ってみました。項目が大きく変わった訳ではないものの、様式全体としては実は結構な変化量です、とお話ししました。

今回の確定申告で、一つ大きく変わるのは、事業所得と雑所得の扱い。二年前(令和2年分)から雑所得の中に「業務に係わるもの」という新しい区分が新設されました。国税庁の定義では、雑所得とは「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」とされています。この中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。

ただこの時点から、事業所得なのか、あるいはそれに該当せず雑所得(業務)となるのかの線引きはグレーな部分があると指摘をしてきました

さらに、業務に係る雑所得について、令和4年分(つまり今回の確定申告です)から求められることが格段に増えるというお話しもしました。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます(なお、ここでいう300万円/1,000万年を超えてというのは判断する対象年が前々年(今回で言えば令和2年分)なので、注意が必要です)。

それを見越してか、雑所得(業務)の行が追加された段階(令和2年分)から、雑所得(業務)の行には、区分欄が用意されていたものの、これまでは使われてきませんでした。自称確定申告書ウォッチャー(!?)として、昨年には来年(今回)からこの区分欄の記入が求められるだろうという予言をしていました。業務に係わる収入が300万円を超え、領収書等の保存(5年間)が求められる場合には「1」を、また収入が1,000万円を超え、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが求められる場合には「2」を記載しなさいとなるのでは、というのが私の予言です。

それでは今回実際にどうなったかと言うと、予言は概ねハズレ。この区分欄が使われるようになるというのはアタリですが、使われ方はハズレでした。正解は確定申告の手引き(pdf)を見るとわかりますが、「業務に係る雑所得の金額の計算上、現金主義の特例を適用する場合は」区分欄に「1」を記入する、でした。ちなみにこれは、雑所得(業務)の計算上、売上や経費を現金ベースで計上することを認める(例えば年末に売掛で売上を計上した場合には、その年の売上には含まれない)という特例に関するものです(収入金額が300万円以下の場合にのみ認められる特例です)。

また事業所得と雑所得の扱いについて、昨年夏に大きな進展があったことは本ブログでもお話しした通りです。昨年の夏に事業所得か雑所得かの判断において、1) 主たる所得か、主たる所得でないか、また、2) 収入が300万円超か、300万円以下かという二つの組合せで判断するというパブコメが実施され、大きな反響を呼びました。そして結果的に、当初案からは大きく変わり、帳簿が作成され保存されているかという判断ポイントに変わりました。結果的に、副業であっても、あるいは収入が300万円以下であっても、帳簿を作成し、保存していれば、事業所得と認められ得るということになりました。

重要なのは、この考え方は令和4年分(今回!)から適用されるということです。つまり、今回の申告において、本当に事業所得で良いのか(雑所得(業務)とすべきではないか)、あるいは逆に、本当に雑所得(業務)で良いのか(事業所得として認められうるのではないか)という点をしっかり考える必要があります。

有利なのは当然事業所得ということになりますが、昨年のパブコメを通じて、帳簿付けをしていれば事業所得と認められ得ることが明確になりました。ただ、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかにより判定する」という原則は変わっていません。そのため、これはあくまでも個人的な意見ですが、自分としてこれは事業であると自信をもって説明でき、なおかつ帳簿をしっかり付けているのであれば、事業所得で良いのではないかと考えています。

この際、開業届を出していないから、事業所得と認められないのでは、と気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、実は開業届を出さなくても特に罰則はありません。開業届を出していなくても、事業所得として最初に申告をするとそれが開業届の代わりになるというのが実態です。開業届を出したから事業所得と認められる訳でもありませんし、逆に開業届を出していないから事業所得として認められないという訳でもありません。

開業届よりむしろ重要なのは、所得税の青色申告承認申請書です。これを出さない限り青色申告は認められません。ですから、やはり基本は開業届と所得税の青色申告承認申請書をセットで提出するのが望ましいということは揺るぎません。

仮に、開業届は出していないけれど、事業として認められ得る実態がある、帳簿もちゃんと付けた、という方は今回は事業所得として白色申告し、さらに今回の申告時にあわせて所得税の青色申告承認申請書を提出し、来年こそはメリット山盛りの青色申告としたいところです。

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あ、今回はまず白色申告という方は、もちろん、やよいの白色申告 オンラインを是非どうぞ! フリープランであれば、全ての機能をずっと無料で使っていただけます。ということで、しっかりと宣伝で終わるのでした(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 18:31 | TrackBack(0) | 税金・法令
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