2011年05月02日

健康保険組合の仕組み

先日のブログ記事ではさらっと流してしまいましたが、この春からの健康保険料率は、協会けんぽが9.50%(全国平均)に対し、弥生も加入している関東ITソフトウェア健保組合が(大幅に引き上げられたとはいえ)8.50%。いまだに1.00%の差があります。さらに、40才以上の方が対象になる介護保険料も含めて考えると、協会けんぽが11.01%に対し、関東IT健保は9.50%とその差は1.51%に広がります。

従業員としてはこの差の半分を負担しているわけですが、先日と同じロジックで言えば、これは同じ中小企業でも協会けんぽに加入している中小企業の従業員か、関東IT健保に加入している従業員かで、事実上消費税1%以上に相当する格差が発生しているということです。

なぜこういったことが起きるか、ですが、三つ理由があるかと思います。まず、関東IT健保はIT企業が加入して組合のために、加入者の平均年齢が低いと言われています。比較対象となる協会けんぽでは被保険者の平均年齢が43.6歳(約一年半前の数字なので現在は+α?)。一方で、関東IT健保は35.1歳(平成23年予算)と10歳以上の差があります。平均年齢が低い = 病気になりにくい = 医療費での保険給付が少ない、ため低い保険料率でも成り立ちやすいということです。

二つ目ですが、扶養家族が少ないということ。協会けんぽは被保険者数が1,952万人に対し、被扶養者数が1,531万人。直接的な保険加入者(従業員)一人に対し、その扶養家族が0.78人という割合ですね。これに対し、関東IT健保のこの比率は、0.61人です(うーん、想像はできますが明確な差ですね、苦笑)。保険料は扶養家族があっても増えませんが、保険給付は扶養家族が増えるほど増えますので、扶養家族が少ないほど財政上は有利になります。

三つ目ですが、報酬が高いということ。協会けんぽの平均標準報酬月額が279,216円に対し、関東IT健保は390,000円と実に40%近く上回っています。保険料は報酬に連動しますので、報酬が全体的に高いほど、保険料収入も増えることになります。

要は保険料収入が見込める一方で、保険給付が少なくすむ加入者ばかりが集まっているから、保険料率を低く抑えることができるわけです。

さらに言えば、関東IT健保は日本全体で1,447ある健康保険組合の中でも恵まれた組合です。先ほど三つの条件を完璧に満たしているからです。まず、加入者の平均年齢ですが、例えば、東京都土木建築健康保険組合は被保険者の平均年齢が45.7歳(ここを選んだのはたまたま検索で引っ掛かったからで、他意はありません)。一方で、関東IT健保は35.1歳ですから、実に10歳以上の差があります。

二つ目の扶養家族ですが、健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)によると、1,447ある健康保険組合では、被保険者数が1,559万人に対し、被扶養者数が1,397万人。保険加入者(従業員)一人に対し、その扶養家族が0.9人。これに対し、関東IT健保は、0.61人。そして、三つ目の報酬ですが、健保連の平均値は平均標準報酬月額が361,660円に対し、関東IT健保は390,000円と7.8%ほど上回っています。

今回の関東IT健保の料率引き上げは、これだけ優良な健保組合でも、料率を引き上げざるを得ない状況になってきているということです。これは特に平成20年度より、後期高齢者医療制度がスタートし、現役世代が加入する健保組合が高齢者医療制度に納める納付金が大きく増えてきたことによります。このため、平成23年には、1,447ある健康保険組合のうち、約90%が赤字となることを予想しています。関東IT健保はまだ黒字の10%に含まれていますが、逆に言えば、今回料率を引き上げなければ赤字に転落していたということでしょう。
posted by 岡本浩一郎 at 09:29 | TrackBack(0) | 業務
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