2011年05月27日

会計事務所の差別化戦略: 記帳代行

間が一回あいてしまいましたが、前回は、会計事務所の差別化戦略についてお話ししました。会計事務所の4つの業務のうち、申告業務と税務調査立会は税理士独占業務でもあり、コア業務。一方で、それだけでは差別化できないので、残りの二つの業務である記帳代行もしくはよろず経営相談が差別化の鍵になるということでした。今日は、記帳代行に力を入れるというオプションについて。

記帳代行は、明確に「代行」と入るだけに、本来は企業(会計事務所からするとお客さま、ここでは顧問先と言う表現をします)が行うべき記帳業務を代行するということになります。顧問先からすると、お金を払って、一定の手間を肩代わりしてもらうということですね。この記帳代行については、一定のニーズがあるのは確かですが、会計事務所にとって積極的にやりたい業務かというと、実は微妙なところです。

なぜならば、会計事務所にとって、記帳代行というのは労働集約型の作業であり、必ずしも付加価値が高い作業ではないからです。確かに、会計事務所は記帳を請け負うことによって、多少は高い顧問料を得やすくなります。しかし、その業務を行うためには、それなりの労力が必要。要は、労力がかかる割にあまり儲からない、というわけです。

その一方で、記帳代行は会計事務所にとって戦略的な意味を持つのも事実です。まずは、顧問先を獲得するハードルを下げることができます。一般的に顧問先は会計についてあまり詳しくない中で、「お客さま自身がちゃんと理解しないとダメです。だからまずは自分で帳簿を付けましょう」と言うよりも、「帳簿付けから全部面倒見ます。お客さまは事業に専念して下さい」というのは非常にわかりやすいメッセージとなります。

また、そのような形で丸受けをすることによって、(意識してそれを狙っているかどうかは別として)会計をブラックボックス化しやすい、それによって顧問先を囲い込みやすいのです。これは逆のパターンを考えるとわかりやすいかと思います。記帳代行を受けない場合は、原則として顧問先が弥生会計のような会計ソフトに自分で入力します(もちろん入力する際のアドバイスはあります)。ここで顧問先が、ある会計事務所のサービスに納得できない場合は、弥生会計のデータを持って、別の会計事務所を探せば済みます。一方で、記帳代行をお願いしている場合は、こうはいきません。良くも悪くも会計業務を握られてしまっているからです。

このように会計事務所にとっても、顧問先にとってもメリットもデメリットも混在する中で、記帳代行に力を入れようとする会計事務所にとっては、業務の仕組み化がキモになります。一部の大型会計事務所では、オフショア(日本国外)の記帳代行センターを設置するという動きもあります。特に日本語を読むことのできる人の多い中国。労力がかかることは避けられないが、せめてそれにかかるコストを下げようというわけですね。特に大型事務所では、現地にスタッフを派遣し、業務の質向上を図っているようです。
posted by 岡本浩一郎 at 18:29 | TrackBack(0) | 業務
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