2011年08月30日

私のインターン体験(続き)

私がアメリカでインターンを体験したQuarterdeckは、当時海外でのビジネスを強化しようと考えていました。そこにたまたま私がインターンとして働くことになり、海外担当のマネージャーの下で、アジアへの進出戦略のお手伝いをすることになりました。特にターゲットとして考えていたのが、日本ですが、日本に加え、香港そしてシンガポールの市場について、それぞれどの程度の市場規模が見込めるのか、市場規模に応じ、どのような形での進出がありうるのか(現地法人 or 営業所、単独 or 合弁...)といったことを調査し、計画としてまとめました。

実際に働き始めて改めてなるほどなあと思ったのは、皆で一緒に何かをするというよりは、皆がそれぞれのペースで働いていること。日本では机がいくつも横にならんだオフィスが一般的ですが、アメリカの場合、マネージャーは個室、スタッフはキュービクルというパーティションで区切られた半個室が一般的です。私もキュービクルを一つあてがわれたのですが、そこで仕事をしている限り、あまり周りの人と話をするということがありません。もちろん、相談があれば、その人の所に行って相談すればいいわけですが、日本のように、ちょっと隣の人と息抜きがてら雑談というのがありません。

当然、一日の中で誰がどのように働いているという細かいチェックもあまりなく、基本は個々人が(必要に応じ打合せも経ながら)与えられたタスクを着々とこなすというスタイルでした。当時(今もありますが)、Scott Adamsというアメリカでは有名な漫画家のDilbertという4コマ(3コマ?)漫画が結構好きだったのですが、漫画そのもののオフィスといった感じでした(漫画通りのどうしようもないボスがいたということではなく、オフィスでの働き方という意味で)。もっとも、一口にアメリカの会社といっても、実態は様々なのでしょうから、あくまで私の経験ということで。

ここまではある意味想像通りだったのですが、一つ驚いたのは、ある時まで顔をあわせていた人が突然いなくなること。どうしたの、と聞くとさも当たり前のように、「彼は辞めた」と。

当時はあまり理解していませんでしたが、PC環境がDOSからWindowsに移る中で、経営環境はかなり厳しかったようです。振り返ってみると、本国での売上が伸び悩む分、海外で何とかという発想だったのかもしれません。もちろん、本国でも手をこまねいているわけではなく、色々な会社を買収してWindowsでの中核製品を確立しようとしていました。中にはWebCompassというメタサーチのソフトもあってこれは結構面白かったのですが、残念ながらQEMMに次ぐ主力製品が生まれることはありませんでした。

Quarterdeckはもう存在していません。私がインターンをした2年後の1998年に、Symantec(ウイルス対策ソフトのNortonで有名ですね)に買収されました。あるところまでは、買収する側だった会社が、傾くと今度は買収される側となる。アメリカのダイナミズムを実感する出来事でした。

私自身はレポートを指導教授に無事提出し、「よくできているね」と褒めてもらってAをもらいました。ただ、今振り返ると、アジア進出の戦略というよりも戦術に過ぎなかったと思いますし、会社が抱えていた本当の課題に何ら解を示せなかったことは残念に思います。まあ、もちろんインターンにそういったことは期待されていなかったと思いますが。

これは本当にご縁だと思っていますが、今は弥生というパッケージソフトウェア会社の社長。さらに時代はPCからスマートフォンやタブレット、デスクトップからクラウドという変革期。あのインターンは実は小手調べで、15年後の今、自分の真価を問われているように感じています。
posted by 岡本浩一郎 at 21:33 | TrackBack(0) | パーソナル
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