2013年03月12日

青色申告による節税のメカニズム

先日、「かんたん税金計算」ツールをご紹介しましたが、実際に試されると、青色申告による節税が想像以上に大きいことに驚かれるのではないかと思います。例えば、1年間の売上金額が400万円、1年間の経費・仕入金額が100万円で計算してみると、その差は実に18.5万円。

この差がどこで生まれるかは、「納税額の内訳」を見て頂ければ明確なのですが、このケースでいうと、所得税が白色申告で164,000円から青色申告で99,000円に65,000円ダウン。住民税は271,000円から206,000円でやはり65,000円ダウン。さらに国民健康保険料が267,000円から212,000に55,000円ダウンしています。所得税で6.5万円、住民税で6.5万円、国民健康保険料で5.5万円で合計18.5万円の節税ということですね。

これはどういうことか。青色申告であり、青色申告特別控除というのは、あくまでも所得税上の制度なのですが、実は、住民税や国民健康保険料も所得税上の「所得金額」で計算されるため、結果的に青色申告特別控除が効いて節税になるのです。

以下の図のように、個人事業主の所得税の計算に当たっては、まず売上から経費・仕入を引きます。いわゆる利益ということになりますが、税金の計算上は所得金額という表現になります。ただ、この際、青色申告特別控除はあたかも経費であったかのように売上から引くことができます。つまり、特別控除の分だけ、所得金額が減ります。

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この所得税上の所得金額から、所得税で適用される所得控除(例えば、基礎控除や扶養控除など)を引くと「課税される所得金額」になり、さらにそこに所得税率(5%から40%の累進税率)をかけると所得税が計算されます。

実は、住民税の仕組みもほぼ同様、なおかつ、計算の出発点は、所得税上の所得金額になります。同じ所得税上の所得金額から、今度は住民税で適用される所得控除(例えば、基礎控除や扶養控除など所得税と共通するものが多いですが、控除金額は異なります)を引くと住民税上の「課税される所得金額」になり、さらにそこに住民税率(基本的に10%)をかけると住民税が計算されます。ここでミソなのは、出発点が所得税上の所得金額であるということですね。すなわち、既に青色申告特別控除が引かれた数字であり、結果的に、青色申告特別控除によって住民税も下がることになります。

国民健康保険料(国民健康保険税)も似たような状況です。国民健康保険料は、計算の出発点が、所得税上の所得金額になるケース(旧ただし書き方式、主流はこちら)と、住民税から計算されるケース(住民税方式)があるのですが、いずれにしても、結果的には、青色申告特別控除によって税金が下がることになります。ただし、国民健康保険料は自治体によって、計算方法や料率が異なるので、どこまで税金が下がるのかは自治体によります。今回の「かんたん税金計算」は東京都千代田区の平成24年度の料率で計算しています。

これらを料率という視点で整理すると、所得税で最低5%、住民税で10%、国民健康保険料で8.5%の料率だとして、合計で23.5%になりますので、青色申告特別控除65万円によって、65万円×23.5%の15.3万円が節税できることになります(所得税が10%だと合計28.5%になり、65万円×28.5%の18.5万円の節税になります)。

かなり大きい金額ですよね。青色申告がこれだけの節税になることは意外に知られていないのですが、紛れもない事実です(ただし、国民健康保険料に関しては、計算方式が自治体によって異なるので100%とは言い切れないのですが、これまでのところ、青色申告によって国民健康保険料が節税にならない自治体は確認されていません)。家電量販店などでお話しするとビックリされる方が多いですね。青色申告特別控除が65万円得られると言われてもなかなかピンとこないですが、手取り(節税額なので)が15万円以上増えますというと、途端にピンとくるようです。

この節税のメカニズムについては、昨年のこの時期に徹底的に解説していますので、もっと知りたいという方は是非以下の記事もご参照ください。

2012/03/07 青色申告で節税 (その1)
2012/03/09 青色申告で節税 (その2)
2012/03/12 青色申告で節税 (その3)
2012/03/13 青色申告で節税 (その4)
2012/03/14 青色申告で節税 (その5)

posted by 岡本浩一郎 at 19:26 | TrackBack(0) | 税金・法令
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