2017年12月15日

建て増しではなく、抜本的な対応を

昨日、与党の税制改正大綱が発表されました。内容としては概ね事前に報道されてきた通りで、大きなサプライズはありません。結果的には個人を軸に2,800億円の増税になるとのこと。衆院選では論点にならなかったのに、なぜいきなり増税が決まるのか、あるいは増税の負担が「取れるところ」に偏っている(いわゆる高所得者ということになりますが、実際に数字を見てみると、高所得者以上に狙い撃ちにされているのは喫煙者ですね)などの批判もあるようですが、ここではその観点でのコメントは差し控えます。

ただ、今回の大綱は、抜本的な対応(の第一歩)ではなく、建て増しに終わってしまっていることがとても残念です。今回の改正で、誰でもが控除を受けることができる基礎控除が10万円上がることになりますが、同時に、所得金額が2,400万円を超える人は減額、2,500万円を超える人はゼロというこれまでにない仕組みが導入されます。これは所得控除方式では、同じ控除額でも(実効税率が異なるので)所得が大きい人の方が控除による減税額が大きくなってしまう(要は逆進性がある)ことが問題とされたためです。

しかし、基礎控除の逆進性を問題とするのであれば、本来のあるべき姿は、所得を問わず同じ金額が控除される税額控除とすべきです(もっと言えば給付付き税額控除)。これに対し、今回の税制改正大綱は、税額控除方式のメリットを認めながらも、「現行の所得控除方式から変更した場合、負担の変動が急激なものとなりかねないことから」見送り、現行の所得控除方式の建て増しである「逓減・消失型の所得控除方式」を採用しています。

また、今回の大綱では、基礎控除が10万円上がるかわりに、給与所得控除が10万円下がることになっています。もっとも同時に、「子育てや介護に対して配慮する観点から」子育て世帯や介護世帯は「負担増が生じないよう措置を講ずる」としています。この趣旨自体には全く異論はないのですが、では子育て世帯のためにかつての政権で廃止された(年少)扶養控除を復活するのかと思いきや、「所得金額調整控除」という新しい控除が作り出されました。これも建て増し。

これで思い出すのが、住民税での調整控除ですね。これはかつて、税源移譲によって住民税の税率が10%に統一された際に、「所得税と市・県民税の人的控除額の差額に起因する負担増を調整するため」に導入されたものです。住民税は、納税者ではなく、地方自治体が計算して通知されるものだけに、この控除についてご存じない方が多いかと思いますが、この調整控除は数字の辻褄を合わせるためだけのものであり、必要以上に複雑な仕組みになっています。

いやいや、税金の計算が面倒臭くなると、会計ソフトメーカーや税理士には嬉しいんでしょ、と思われるかもしれません。そんなことはありません。事実として、事業面では確かに複雑な税制の方がプラスかもしれません。ただ、社会的コストを最小化するという意味で、税制は本来、可能な限りシンプルであるべきだと思っていますし、私がお付き合いさせて頂いている税理士の先生方も同じように考えています。

確かに、短期間で検討しなければならない、そして影響をでる人をできるだけ少なくするようにと考えると、今回のような「建て増し」にならざるを得ないことは理解できます。ただ、それを繰り返していけば、複雑怪奇で誰も理解できない税制になる一方です。誰も理解できない税制では自分が納めている税金が公平なものかどうか判断できなくなりますから、結果的に税制への不信感を高めることにつながります。少子高齢化の中で、ただでさえ負担を増やさざるを得ない日本で、それが本当に良いことだとは思えません。

丁寧に説明することが必要になったとしても、税制のあるべき姿をキチンと議論し、時間がかかったとしても、建て増しではなく、抜本的な対応を図っていくべきなのではないでしょうか。それこそが、税制への、ひいて言えば国への信頼を取り戻す正道だと思います。

色々と思うところをストレートに書いてしまいました(汗)。もちろん、今回の税制改正大綱が正式に法令化された暁には、弥生としてキチンと対応していきますので、ご安心ください。
posted by 岡本浩一郎 at 19:42 | TrackBack(0) | 税金・法令

2017年12月13日

額面通りには受け取れない

年末が近付き、今年も税制改正に関する報道が続いています。昨日は、日経で、「青色申告、電子なら控除10万円増 20年1月から」という報道がありました。「政府・与党は2020年1月から、自営業者や個人事業主が紙ではなく電子申告を利用した場合に、控除の金額を10万円増やすと決めた。会社員にとっての給与所得控除にあたる「青色申告特別控除」を対象にする」とのこと。

おっ、これはいいニュースと思ったのですが、よく読んでみると、額面通りには受け取れない話でした。

現在取りまとめが進められている与党の与党税制改正大綱では、2020年1月から、基礎控除を10万円引き上げ、48万円にするということが固まっています。基礎控除は基本的に誰にでも適用になりますから、これは原則的にすべての人が減税対象となることになります。ただし、給与所得のある人向けの給与所得控除は一律10万円の引き下げになるため、結果的に給与所得のある人はプラスマイナスなしということになります。逆にいえば、給与所得控除のない、フリーランス等の事業所得者は基礎控除10万円増になる減税効果だけが効くことになります。

しかし、実はここからが落とし穴なのですが、事業所得者のうち、青色申告をする人に適用される青色申告特別控除が10万円減額されるとのこと。つまり、青色申告特別控除も合わせて考えると実はプラスマイナスがなくなるということです。ただし、冒頭の報道の通り、電子申告をすれば控除額が10万円上乗せされるため、ここまでを合算すれば、再び控除額10万円増(=減税)になるということです。

つまりは、事業所得者は控除額10万円増によって減税になりうるが、それを実際に享受できるのは、青色申告で電子申告をした人のみ、ということになるようです。電子申告自体は、社会的コストを低減する上では有効な手段ですから、電子申告を推進すること自体には全く異論はないのですが、電子申告をしなければ減税を受けられないというやり方には、あまり賛成できません。

このやり方の矛盾が出るのは、白色申告との比較ですね。白色申告はもともと特別控除がありませんから、青色申告特別控除のように10万円減額することができません。つまり基礎控除の増額だけが効くことになり、白色申告の場合は、電子申告をしようが、しまいが、減税になるからです。つまり、国として推進しようとしている青色申告の人にのみ、電子申告でなければ減税にならないというペナルティを与えることになるわけです。(なお、現時点で明らかになっていることからの推測ですので、実際には白色申告にも何らかの調整が入るかもしれません。)

電子申告を推進すること自体に異論はないものの、正直使い勝手がいいと言えないのが現実。そういった中で、今回の施策のポイントは電子申告の使い勝手がどこまで改善されるか、ですね。実はこの増減税が実施される一年前(2019年1月)から、e-Taxの利用が簡便化されることになっており、これによって使い勝手が改善されることが期待されます。

この簡便化の方式としては、大きく分けて1)マイナンバーカードを利用する方式と、2)税務署で本人確認の上、ID/パスワードを取得する方式があります。現状のマイナンバーカードの普及状況を考えると、実際問題としてどこまで簡便になるのか不安はありますが、マイナンバーカードを必要としない方式2)も合わせ、これならe-Taxがいいね、となるか、期待したいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:44 | TrackBack(0) | 税金・法令

2017年10月27日

素直には喜べない

今月の給与明細を見て、また厚生年金保険料が上がったとため息をついた方も多いのではないでしょうか。ただ、今回は引上げ幅はこれまでよりだいぶ少ない(昨年までと比べて約1/3)、なおかつ、実は引上げは今回で終わりになるはずなのです。

毎年のことですから、10月になると厚生年金保険料が上がるのがもはや当たり前のように感じますが、実はこれは時限措置。2004年(平成16年)の年金制度改正によって、2004年から2017年まで毎年保険料率が上がることになりました。この制度改正前の料率は、13.58%。それが2017年には18.3%にまで上がることが決まっていました。今回、いよいよ終着地点である18.3%に達し、引上げはこれで終わりということになりました。ちなみに、毎年0.354%ずつじわじわと上がってきたのですが、最終回となる今回は18.3%までの残り分となる0.118%ということで、今回はこれまでより引上げ幅が少なくなっています。

なお、個人事業主が加入する国民年金の保険料も同じ期間に月13,300円から、終着地点の16,900円に向けて毎年引上げとなりましたが、こちらもやはり今年4月の引上げで最終となります。

ただ、よしこれで引上げが終わり、やったー! と素直に喜べるかというと、そうではありません。そもそも平成16年の年金制度改正は、年金制度を100年間に渡って維持できるように行われたものです(「100年安心」というキーワードを覚えている方もいらっしゃるかと思います)。では、実際に14年間に渡る引上げを経て、年金制度が安心できる状態になったかというと、残念ながらそうはなっていません。

年金や医療などの社会保障給付の総額は、年金制度改正が行われた2004年度には85.6兆円でしたが、直近(2016年度の予算ベース)では118.3兆円にまで膨らんでいます。社会保障給付の財源として社会保険料で賄われた額は2004年度には53.8兆円でしたが、直近では66.3兆円。社会保険料の引上げによって、財源としては12.5兆円ほど増えましたが、同じ期間に給付は32.7兆円も増えています。給付に対し、社会保険料によって賄えた割合を計算すると、2004年度には62.8%だったものが、2016年度には56.0%まで下がってしまっています。つまり、これだけ社会保険料を引上げても、支出(給付)の増加に追いつけていないのです。

ところで、2014年には実に17年ぶりに消費税率が引上げになりましたが、これは社会保障と税の一体改革として実施されました。社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指したのが、社会保障と税の一体改革であり、その第一歩が2014年の消費税率の8%への引上げでした。

17年間も封印されてきた消費税率引上げがなぜ実施されたのか。これは私見ですが、2017年には社会保険料の引上げが打ち止めになることと無縁ではないと考えています。これまでは、増加を続ける社会保障給付を、社会保険料の引上げである程度埋め合わせてきた。ただ、2017年に社会保険料の引上げが打ち止めになってからはそうもいかない。だからこそ、新たな財源が2017年までに必要だった。

ご承知のように、社会保障と税の一体改革では、2014年4月に消費税率8%へ、そして2015年10月には消費税率10%への引上げが予定されていましたが、実際には10%への引上げは2度延期され、まだ実施されていません(現時点での法令では2019年10月と定められています)。

増加を続ける社会保障給付の財源として消費税がいいのか、引き上げるにしてもいつがいいのか、はたまた思い切って給付を削減すべきなのか。色々な見方/考え方があると思います。ただ、一つ言えるのは、社会保険料の引上げがいよいよ打ち止めとなった今、何らかの対策は待ったなしということです。

折しも衆議院選挙が行われましたが、安定的な政権運営基盤が確立された今、その場しのぎではなく、将来を見据えた本質的な対策を打ち出し、かつ実行して欲しいと願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 20:59 | TrackBack(0) | 税金・法令

2017年03月09日

確定申告とマイナンバー

今回の確定申告から、確定申告書にマイナンバーの記載が必要になりました(国税庁の案内pdf)。記載が必要になるのは、申告される方本人に加え、配偶者、扶養親族(16歳未満も含む)、そして事業専従者のマイナンバーです。

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また、申告書上にマイナンバーを記載するだけではなく、本人確認書類の提示又は写しの添付が必要です。ただし、必要なのは申告者本人分の確認書類のみ。配偶者、扶養親族、事業専従者分についてはマイナンバーの記載は必要ですが、本人確認書類は必要ありません。

本人確認書類の写しを添付する場合には、添付書類台紙に1) マイナンバーの通知カードと、2) 運転免許証、公的医療保険の被保険者証など、の2種類のコピーを添付します。既にマイナンバーカードを取得されている場合には、マイナンバーカードのみで大丈夫ですが、表と裏それぞれのコピーを添付する必要があります。

本人確認書類は、「提示」又は「写しの添付」となっていますので、税務署に申告書を提出する場合には、窓口で本人確認書類の原本を提示することで済ませることができます。ただ、この時期の税務署は当然のごとく混み合いますし、移動の時間もかかりますので、個人的には、郵送での提出(この場合は本人確認書類のコピーを添付)もしくは、e-Taxでの電子申告をおススメします。

e-Taxでの申告の場合は、申告に際し、電子証明書で本人確認が行われていますので、本人確認書類の提示又は写しの添付は必要ありません(が、申告書上へのマイナンバーの記載は必要です、お間違えのないように)。

弥生製品では、デスクトップ(やよいの青色申告 17)でも、クラウド(やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン)でも、今回の申告から、申告書上へのマイナンバーの記載に対応しています。ただし、マイナンバーの現況を鑑み、あえてマイナンバーを弥生側で保持しない仕組みとしていますので、申告書を出力する直前に入力するようにお願い致します(その後弥生製品を終了/ログアウトした段階でマイナンバーの情報を廃棄します)。ご希望であれば、マイナンバーの記載がない状態で印刷して頂き、マイナンバーだけを手書きで記入して提出することも可能です。

気になるのが、今回の申告書でマイナンバーを記載しなかったらどうなるの、です。端的に言えば、申告書が受付けられないということはありません。マイナンバーを記載していなくても、提出自体は受付けてもらえます(こちらのFAQのQ2-3-2参照)。しかし、マイナンバーの記載は(罰則はないものの)法令上求められていることですし、その後税務署からお問合せを受ける可能性もあります。これは今後の運用を見てみないと何とも言えませんが、マイナンバーの記載がないと税務調査を受けやすくなるといった可能性も否定できません。そういった意味では、やはりちゃんと記載するのが無難ではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 21:00 | TrackBack(0) | 税金・法令

2017年02月08日

まずは領収書の整理から

前回もお話しした通り、いよいよ来週2/16(木)から確定申告が始まります。1月末に、私自身が「今年は例年より圧倒的に準備が進んでいません(泣)」と告白しましたが、さすがにマズイということで、今週に入って準備を始めました。

さっそく申告書を作成したいところですが、まず数字を固めないといけません。まずやるべきは書類の整理。私の場合、控除を受けるための領収書の整理から始めるようにしています。具体的には(私の場合には)、医療費控除を受けるための医療費の領収書。生命保険料控除を受けるための生命保険料控除証明書。地震保険料控除を受けるための、地震保険料控除証明書。そして、寄附金控除を受けるための寄附金の領収書。寄附金の領収書には、ふるさと納税の領収書も含まれます。

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個人事業主の場合には、もちろん事業上の(=経費の)領収書の整理も必要になります。ただ、どちらかといえば、控除用の領収書の整理から始めた方がいいかもしれません。というのは、控除のための領収書は申告時に提出しなければならないのに対し、経費の領収書は申告時に提出する必要はないためです。

誤解されていることも意外に多いのですが、事業所得の申告をする上で、帳簿や、その原始証憑である領収書を申告書と同時に提出する必要はありません。帳簿の集計結果を収支内訳書(白色申告の場合)、青色申告決算書(青色申告の場合)に記入して提出はしますが、帳簿自体は提出する必要はありません。念のためですが、だからといって帳簿付けが要らない、あるいは領収書の保管が必要ないということではありません。これらは一定年数の保存が義務付けられており、また仮に税務調査が入った場合には、帳簿を提示できる必要がありますし、当然、帳簿の元となった領収書も提示できる必要があります。

これに対し、控除に必要な領収書は原則として、申告書に添付して提出する必要があります(ちなみにe-Taxで電子申告した場合は、添付が不要になりますが、その場合は5年間手元で保管が必要になるので、どちらがいいかは微妙です)。そういった意味で、あくまでもどちらかと言えば、ですが、まずは申告期限までに確実に提出が必要になる控除のための領収書からスタートするとよいのではないかと考えています。

ということで、領収書の整理をしていたところ、昨年の5月に、熊本地震の義援金として熊本県に寄附をした分の領収書が行方不明になっていることが判明。例年は年末にかけて様々な寄附を行うようにしており、寄附金の領収書を受け取ってから確定申告までの期間が短いのですが、これは昨年の5月。どこにしまったのか、全く記憶にありません。不幸中の幸いでまだ時間はあるので、今週末にでも大捜索を行いたいと思います(苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 22:35 | TrackBack(0) | 税金・法令

2016年04月21日

利子割の廃止

先週に、来年から、国税の振替納税の際の領収証書の送付がなくなるというお話しをしました。これは行政の効率化であり、経費削減のため。実は似たような話がもう一つあり、これは既に今年から始まっています。

それは法人の預貯金等の利子(利息)にかかっている税金のうち、地方税分の5%(これを一般的に利子割と呼びます)が廃止されたこと。ご存知の方も多いと思いますが、個人・法人にかかわらず預貯金等の利子からは一定の税金が源泉徴収されます。去年までは、個人・法人共通で、利子所得の金額に一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率を乗じて算出した所得税等が源泉徴収されていました。

今年に入って、個人については変更がないのですが、法人についてのみ、利子所得の金額に15.315%(所得税・復興特別所得税)の税率を乗じて算出した所得税等が源泉徴収されることになりました。つまり利子割が廃止され、源泉徴収される金額が5%分減ったということになります。

むむ、法人だけ減税なのか、というのは早とちり。実は、元々個人と法人では利子割の扱いが異なります。個人の場合は、一般的な住民税と利子割は全く別物という扱いになっており、住民税がいくらであろうと、利子割は別途かかるようになっています。一方で、法人の場合は、利子割は法人の住民税の一部を前払いしているという扱いになっています。このため、決算で法人住民税の金額を算出する際に、既に利子割として払った分を控除することができました。今回の変更では、利子割として源泉徴収される分がなくなったと同時に、それを法人住民税から控除することもなくなった(結局トータルでの税額は変わらない)のです。

それでもなぜ変わったのか。それは、法人が赤字の場合に、利子割を還付することになっており、還付にコストがかかっていたからです。上でお話ししたように、利子割は法人住民税(法人税割)の一部を前払いするという位置付けです。ここで法人が赤字の場合に、法人住民税(法人税割)はゼロになりますが、利子割は払ってしまっているので、払った分を還付してもらえることになっていました。ただ、ご承知のように低金利の時代で、還付される金額が数百円ということも珍しくありません。たかだか数百円の還付のため、還付コスト(これも数百円でしょう)かけるのは無駄であるということで、それであれば還付の原因となる利子割を廃止しようということになったわけです。

実際、私の(弥生の社長になる前の)会社も、私が弥生の社長に就任して以降は営業休止状態でずっと赤字。それでも法人住民税の均等割70,000円は毎年払う必要があるのですが、同時に毎年数百円程度の利子割の還付を受けてきています。還付の案内を見るたびに、これだけの金額の還付のために、結構なコストがかかっているんだろうな、と思っていました。

利子割の廃止は、無駄な手間、コストを掛けずに済むという意味で、とても良いことだと思っています。同時に、副次効果として、利子割の廃止によって、実際に受け取った利子の金額から、源泉徴収された所得税等の金額を割り出すのが少しだけ容易になりました。たとえば、口座に利子として100円(A)が入金されていた場合、これまでは実際に支払われた利子は125円(B=A/0.79685)で、そこから所得税・復興特別所得税が19円(C=B*0.15315)、利子割が6円(D=B*0.05)源泉徴収されたという計算と帳簿付けが必要でした(なおかつ、金額の計算の中で、端数による1円のずれが出ることがあり、結構厄介でした)。それが今年からは、100円入金されたら、実際の利子は118円(B=A/0.84685)で、ここから所得税・復興特別所得税が18円(C=B*0.15315)源泉徴収された、と僅かではありますが、計算がシンプルになります(1円のずれも出なくなりました)。

行政はコスト感覚がないと言われがちですが、実は、いかに無駄を省くか、効率化するかが考えられ、少しずつではあってもそれが実行されているのですね。こういった動きは大歓迎です。
posted by 岡本浩一郎 at 23:25 | TrackBack(0) | 税金・法令

2016年04月15日

実は必要性はない?

確定申告が終わって早一ヶ月。すっかり過去の話になっている方も多いでしょうが、まだ完全には終わっていません。確定申告の結果、納付の必要がある場合には、原則としては確定申告の期間中に納付を済ませる必要があるのですが、振替納税の手続きを行っておけば、本来の納期限から約一ヶ月後に自動的に振替(口座引落し)が行われます。今年の場合は、所得税が4月20日(水)、消費税が4/25(月)に振替が行われます

振替は自動的に行われますが、ちゃんと資金を入金しておいて下さいね、ということで、事前に「振替納税のお知らせ」という葉書が送られてきます。この葉書が送られてきている方は、まもなく振替(口座引落し)が行われますから、口座の残高確認をお忘れなく。

実際に振替が完了すると、その後に領収証書が送られてきます。この領収証書が送られてくると、いよいよ確定申告が終わった & 今年も払ったぞ、と実感が湧くのですが、実は領収証書を見れるのは今年が最後になるそうです。

こちらにお知らせがありますが、来年1月からは振替納税の領収証書が送付されなくなるとのこと。ちょっと調べてみると、例えば、大阪府では、「経費削減のため、平成16年10月の振替分から領収証書の送付を廃止させていただいております」とあるように、地方自治体ではそれなりに前から廃止されてきているようです。今回は、国税の振替納税についても、領収証書の送付が廃止されることになります。

確かに言われてみれば、振替(口座引落し)があったこと自体は通帳への記帳で確認できますから、わざわざ送ってもらうまでもない気がします。実はこれは、会計検査院より「口座振替納付の都度、金融機関から領収証書を納税者に送付する必要性は高いとは認められないのに、これにより多額の口座振替納付に係る経費を支払っていた事態は適切ではなく、改善の必要がある」(pdf)という指摘を受け、来年からの送付廃止に至ったのだそうです。

会計検査院というのは、「国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行う憲法上の独立した機関」なのだそうです。正直あまり馴染みはありませんが、国などの支出に無駄がないよう、こんなこともチェック/指導しているのですね。

振替納税で領収されているのだから、領収証書を発行して送付する。これまで何年も行われてきた訳ですし、当たり前と言えば当たり前のようにも聞こえます。ただ、実は冷静に考えてみれば、実は必要性はない。国に限らず、会社の業務においても、そういった事例は他にも色々と存在するのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 18:54 | TrackBack(0) | 税金・法令

2016年03月30日

どうなる軽減税率

昨日3月29日に平成28年度予算が国会で成立しましたが、実はこれと同時に、平成28年度税制改正関連法も成立しています。メディアの報道は予算成立に集中しており、税制改正関連法についてはあまり触れられていませんが…。今回成立した税制改正関連法によって、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げにあわせ、軽減税率が導入されること、さらに平成33年4月には適格請求書(いわゆるインボイス)の発行が求められることが法律として定められました。

あれ、軽減税率ってもう決まっていたのでは、と思われるかもしれませんが、昨年秋から議論されてきたものの、それが法律として正式に国会で成立したのが昨日ということになります。

一方で、そもそも来年4月の消費税率10%への引き上げは延期になる可能性が高いのではと感じられている方もいらっしゃるかと思います。確かに昨今の報道を見聞きするにつけ、引き上げ延期のための伏線を引いているようにしか見えないですよね。

ただ、国の最終的な決定事項としての法律としては、今でも2017年4月には消費税率10%への引き上げとなっていますし、さらに昨日の国会決議によって、軽減税率もあわせて導入されることが正式に決定したということになります。

現実問題として、軽減税率導入に向けた準備は既に始まっています。ソフトメーカーに対する説明会も開催されていますが、詳細を聞くにつけ、本当にこれをやるのか、しかもこの先一年間で、とため息が出ます。

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軽減税率はおそらく多くの方が思っている以上に厄介です。今回軽減税率の対象となった飲食料品や新聞を販売する事業者以外には関係ないと思われるかもしれませんが、そうではありません。なぜならば、消費税は仕入にも関わっているから。軽減税率が生鮮食料品に限られるのであれば、生鮮食料品を仕入れる事業者は限られていますから、確かに影響は小さかったでしょう。ただ、最終的にそれが飲食料品に広がったことによって、事実上全ての事業者に影響が及ぶことになりました。新聞に関してはこの際に購読を止める(か電子版に絞る)という消極的対応策もありますが、来客時や来客時のために、お水やお茶を買わないという選択肢はありません。

詳細はここでは省きますが、軽減税率を正しく処理しない、例えば、お茶を標準税率で計上してしまうと、仕入税額控除が過大になり、結果的に納めるべき消費税を過少に計算してしまうことになります。

でも、軽減税率は8%でしょ。今も8%だから、変わらない。これに10%が加わるだけ、と思われるかもしれませんが、実は軽減税率の8%と今の8%は違うのです。消費税というのは、実は国税としての消費税と地方税としての消費税で成り立っているのですが、今の8%は、国分が6.3%、地方分が1.7%、これに対して軽減税率の8%は国分が6.24%、地方分が1.76%となっています。つまり、今の8%と軽減税率の8%は明確に区別しなければなりません。消費税率が10%に引上げになる際には、経過措置としての(今と同様の)8%と軽減税率の8%が混在することになりますが、それらを正しく分別しないと、国分/地方分の計算が狂うことになります。

それでも影響が仕入れる側だけであれば、まだマシかもしれません。販売する側で厄介なことと言えば、例えば、割引の問題。軽減税率対象品と対象外品を同時に販売し、なおかつ、割引を行った場合、この割引を軽減税率対象分と対象外分に按分しなければなりません。

考えれば考えるほど、これは相当な大ごとであると再認識させられます。この軽減税率が日本全国の事業者に大きな影響を与えることは確か。しかも残された期間はわずか一年間。正式に法律となった以上、その是非を語っていてもしょうがありません(ちなみに、まだ検討段階での私の意見はこちら)。弥生としては、お客さまの業務が支障なく進められるように全力を尽くしたいと思っています。一方で、法律として決まっていても、実際にどうなるかわからないという宙ぶらりんな状況は正直厳しいです。

もちろん日本という国の将来のために最も適切な判断が下されるものと思いますし、そのためには、状況を慎重に見極める必要があるのだと思いますが、このまま進むにせよ、軌道修正をするにせよ、とにかく一刻も早く判断して頂きたいと願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 11:49 | TrackBack(0) | 税金・法令

2016年02月08日

ふるさと納税の功罪

来週2月16日にはいよいよ確定申告が始まります。この時期は全力でお客さまの確定申告を支援しなければなりませんが、そのためにも、自分の確定申告の目処を付けておく必要があります。今年も弥生で申告書を作成するつもりですが、その前にまずは申告の際に必要となる資料の整理から。私の場合は、基本的に給与所得となりますので、必要となる資料は、生命保険料控除や寄附金控除など所得控除に必要な書類に限られます。これらは受け取った際に、決まった場所にファイリングするように心がけているため、さほど時間をかけずに整理は終了。今週末にでも、申告書を作成するつもりです。

申告の内容としては例年と大きくは変わりませんが、今回はこれまでよりもふるさと納税の寄附先を増やしてみました。例年、心のふるさとである湯河原町に加え、岩手県(いわての学び希望基金)、宮城県(東日本大震災みやぎこども育英募金)、そして福島県(東日本大震災ふくしまこども寄附金)への寄附を行っています。今回、ふるさと納税の枠が広がったこともあり、特産品ギフトを目当てに他の自治体への寄附も行ってみました。

あれ、ちょっと待てよ、という声も聞こえてきそうです。一年前には、「この種の特産品ギフトはやめるべき(少なくとも最小限にするべき)だと考えています」と書きました。それが特産品ギフトを目当てにとは、何だと。

決して趣旨替えをしたわけではありませんが、結構悩んだのは事実です。ただ、ふるさと納税の枠が広がり(さらに一定の条件の下で確定申告が不要になるなど)国としてはふるさと納税をさらに拡大させようという意思が明確な中で、特産品目当てを単に批判するだけではなく、自分も経験した上でその良し悪しを改めて考えたいと思ったからです。

実際やってみて感じたのは、特産品をプレゼントするということには一定の合理性があるということ。ふるさと納税については、各自治体でも情報を発信していますが、ふるさとチョイスなど、ポータルサイトで比較・申込するのが一般的になっています。実際にこういったサイトで見てみると、へえ、この町ではこんな特産品があるのか、など、多くの発見があります。最初はふるさと納税の特典として(実質)ただで入手したものであっても、気に入って二回目以降は直接(お金を払って)購入するという流れができるのであれば、確かに地域の振興に役立つでしょう。また、領収書を送って頂く際に、多くの場合、その町のパンフレットなども同封されてくるのですが、見ていると、一度行ってみたいという気分にもなります。

一方で、やはり課題もあると感じています。食べ物など消費するものはまだいいのですが、PCや家電製品などは換金性が高すぎるため、もらったものをヤフオクなどで売却することによって、寄附をしても損をしないどころか、お金として返ってきてしまいます。もっとも、あまりに金銭的価値の高い特産品を受け取った場合、一時所得として課税されることもあるようです。

もう一つの課題は、所得の高い人ほど、累進的にふるさと納税の枠が大きくなること。ふるさと納税の枠(ほぼ全額が戻ってくる額)は、一般的に住民税特例控除の額で決まってくるのですが、住民税特例控除は、(寄附金 - 2千円)×(90% - 所得税率×1.021)と計算され、住民税所得割額の2割が限度とされています。所得が高いと、計算式中の所得税率が上がる(最高45%)ために、住民税特例控除の対象となる部分が少ない(その分所得税の寄附金控除の対象が大きい)、さらに、上限の計算根拠となる住民税所得割額が大きいため、累進的に枠が拡大します。

特に後者の問題については、明らかに公平ではないので、是正が必要だと考えます。昨今消費税の軽減税率は高所得者にメリットが大きいとも議論されていますが、ふるさと納税はそれと比較にならないぐらいに高所得者に有利になっています。

前者の換金性の問題についても、金額的に過度な返礼はやめる、特に換金性の高い返礼品はやめるという自主ルールが確立されることが望ましいと考えています。実際、総務省からは過度な返礼を控えるべきという通知(pdf)も出ているようですが、まだかなりばらつきはあるようです。目に余るので規制するとなるよりは、自治体間で話し合って自主ルールを確立すべきではないでしょうか。

もっとも最大の課題は、被災地の支援など、特産品を出さない、出せないという自治体へのふるさと納税が相対的に不利になりかねないということです。上の二つの課題は特産品を出す自治体側や制度を設計した国の問題ですが、最後の課題に関しては、ふるさとを応援するという志を大事にできるか、という私たちの問題かと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 23:57 | TrackBack(0) | 税金・法令

2016年01月13日

問題なし

お願いしている税理士の先生から、私自身の所得税申告について税務調査が入るようですと一報があったのは昨年の9月末。これまで、自分で設立した会社で一回、弥生で二回の税務調査を受けています(いずれも特に問題はなし)が、自分個人の申告に対する調査は初めて。

調査のタイミングは指定することが可能ですので、税理士を通じてスケジュール調整の上、実際に調査が行われたのが、10月の末。当日は午前10時から約2時間ほど、質疑応答の形で調査が行われました。特に回答に困るような質問もなく、関連する資料をいくつか提供しただけで比較的あっさり終了。ただ、結構以前の海外からの送金まで事前に調べられていることにはちょっと驚きました。

当日も問題なさそうですね、という結論は見えていたのですが、約一ヶ月後に税理士から、調査が終了し、問題は特になかったとのことですと報告があり、それからまた一ヶ月後の年末に「更生決定等をすべきと認められない旨の通知書」というものが送付されてきました。

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聞きなれない書類ですが、税務調査手続の透明性を高めるために、平成25年1月から税務調査の手続を定めた国税通則法の規定が施行されたことにともなって新設されたものです。端的に言えば、申告に問題はなかったという結果を通知するもの(それにしても回りくどい名称ですね、笑)。

私の場合、平成24年分、平成25年分、平成26年分の三年分の所得税の申告(正確に言えば復興特別所得税の新設により、平成25年分と26年分は、所得税及び復興特別所得税の申告)が調査対象となり、いずれの年も申告に問題はなかったと認めて頂いた訳です。

ご存知の方も多いと思いますが、申告の受付時には基本的に内容のチェックはなく、またある程度整合性が取れている申告書であれば還付も行われます。逆に言えば、申告が受付けられた、あるいは納付をした/還付を受けただけでは申告に問題がないというお墨付きにはなりません。忘れた頃に税務調査が入って問題を指摘されることもありうるわけです。

つまり、税務調査が入って「更生決定等をすべきと認められない旨の通知書」を受け取って初めて申告に問題がなかったというお墨付きを得たことになります。私自身は、毎年極めて真面目に申告をしており、後ろめたいところは一切ありませんので(何せソフトを通じてお客さまの申告のお手伝いをするという立場でもありますし、かなり保守的にならざるを得ません)、問題はないはずだ、と思いつつも、もし何かあったらどうしようと一抹の不安があったのも事実。そういった意味で、無事に問題なしというお墨付きを頂けたことでホッとしています。

以前本ブログでも税務調査について書いたことがありますが、国税庁の公式統計では実調率(と言うようです)が個人の申告で1.0%(平成25年分)。私は通算で20年以上は確定申告をしてきていますので、そろそろくじに当たるタイミングだったのかもしれません(実際には海外との資金のやり取りがちょこちょこあるのがアンテナに引っかかったようです)。平日の数時間を費やしてしまいましたが、結果的にお墨付きという安心感を得られましたし、仕事がら色々と勉強にもなりました。

ちなみに私は申告書を毎年自分で弥生会計を使って作成しています。今回、私の申告に問題ないとお墨付きを頂いたことで、弥生会計で作成した申告書にもお墨付きを頂いたようで、ちょっと嬉しいです。毎年何十万人もの方に弥生会計/やよいの青色申告で申告書を作成、提出して頂いていますので、当たり前と言えば当たり前ではあるのですが。
posted by 岡本浩一郎 at 17:22 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年11月19日

ついに来た

周りにも受け取ったという人があまりおらず、横浜市は結構遅くなると聞いていたので、早くても12月かなと高をくくっていたのですが、出張から帰ったところ届いていました。そう、マイナンバー(個人番号)の通知です。

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会社で改めて聞いてみたところ、届いていないという人の方が多い状況でした。とはいえ、今月中には届く方がだいぶ増えそうですね。ただ、問題は、届いたけれど受け取っていないという人がそれなりにいること。簡易書留ですので、日中家にいないとなると受け取るのも大変です。

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恐る恐る封筒を開けてみると、通知カードが、小学生の娘の分も含めちゃんと家族分ありました。立場的にマイナンバーについてはかなり前から研究していましたし、マイナンバーについて人前で話す機会も多かったのですが、正直なところあまり実感はありませんでした。マイナンバーの記入欄のあるマル扶でも、まだ記入はしないで済みましたし。それが急に現実となった感じです。

現実感を帯びてきたという中で、そういえばどうしようと(ある意味)気が付いたのが、個人番号カードを作成するかどうか。今回の通知カードは個人番号カード交付申請書(兼電子証明書発行申請書)を兼ねています。これだけ個人番号が流出することの恐ろしさ(?)を刷り込まれてしまうと、通知カードはしっかりしまった上で、リスクになる個人番号カードはない方がいいとも感じてしまいます。

まあ、e-Tax等で使うことを考えると私自身はあった方がいいのでしょうが、家族の分までいるかというと、うーん。カードを作る手間もありますし、実際に持っていることのメリットが見えないとなかなか普及は進まないでしょうね。今後どれぐらいのペースで交付申請が提出されるのか、興味深いところです。
posted by 岡本浩一郎 at 19:43 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年10月23日

マイナンバーの是非

言えるうちに言っておこうということで、前回/前々回と軽減税率の是非、そして消費税率のさらなる引上げの是非について個人的な見解を述べさせて頂きました。軽減税率は反対(条件付き反対)、消費税率のさらなる引上げは、歳入を増やすために何かを引き上げざるを得ないのであれば、それは消費税という消極的賛成。

この勢いでマイナンバーについてもちょっとお話ししてみたいと思います。改めて説明するまでもありませんが、マイナンバーには日本の国民全員一人ひとりに付与される個人番号(12桁)と法人に付与される法人番号(13桁)があります。ただやはり注目は個人番号で、一般的にマイナンバーと言う時は個人番号を指すことが多いようです。

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マイナンバーには大きく3つのメリットがあると言われています。まずは行政の効率化。行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されます。二つ目が国民の利便性の向上。添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。 また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ることができます。そして三つ目が公平・公正な社会の実現。所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行うことができます。

これらのメリットは全て内閣府によるマイナンバー広報資料からの受け売りですが、個人的にも、社会全体の効率性向上は必須だと考えています。前回、高齢化によって社会保障費が爆発的に増えてきているとお話ししましたが、高齢化によって生産年齢人口が減る中で、経済規模(GDP)を維持拡大するためには、社会全体での効率化(生産性の向上)が不可欠。マイナンバーはそのために極めて有効な武器となります。

つまり、マイナンバーの目指すところという意味では私は大賛成です。国がマイナンバーを使って様々な情報を収集するということを警戒する向きもあるようですが、意図的に所得を隠している方はともかく(笑)、後ろめたいところのない人にとっては、メリットはあっても、特に困ることはありません。より正確に言えば、無論誤った方向で利用されないように注視していくことは必要ですが、メリットがそのリスクを大きく上回る制度だと考えています。

ただし…ここから一気に歯切れが悪くなりますが、目指すところとしてのマイナンバー制度は大賛成なのですが、実施に運用される制度としてはもろ手を挙げての賛成とは言えません。正直に言って、難しい制度としてのスタートになってしまったと感じています。目指しているところは正しくても、なぜ問題含みの制度になってしまったのか。

以前もお話したことですが、本来はID(識別情報)に過ぎないマイナンバーを、あたかも本人であることを証明するパスワード(認証情報)であるかのように扱うことから様々な無理が生まれてしまっていると考えています。カードという物理的な媒体に、目に見える情報として記載されているものを、最高レベルの機密情報として扱わなければならない。

とは言え、マイナンバーへの対応は、法令によって全事業者に義務付けられています。難しい制度にどうやって対応するか。それを支援することが弥生の付加価値だと考えています。

ということで、是非シリーズの第三弾、マイナンバーの是非は、目指すところは大賛成、しかし、実際の制度としては、うーん、ということになります。

次回からは、いよいよ来週金曜日に発売開始となる弥生給与 16/やよいの給与計算 16でのマイナンバー対応についてお話しさせて頂きます。
posted by 岡本浩一郎 at 09:07 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年10月21日

消費税か社会保険料か

この1週間ほどで軽減税率をめぐる議論は急展開し、昨日には自民党の宮沢洋一税制調査会長の(2017年4月の軽減税率導入は)「目指すと言うよりは導入する」という発言も報道されました。あっという間に2017年4月の軽減税率導入が既定路線になってきています。

前回、立場的に発言が難しくなる前に書いておこうということで、私は軽減税率には反対です、と書きました。少なくとも現状で想定されている消費税率10%の際の軽減税率8%という前提では。つまり条件付きの反対。ただし、前提が変われば、すなわち、将来的に消費税率が10%以上に引上げになるようであれば話は変わってきます。

前回お話しした通り、消費税率のさらなる引上げに関しての私の意見は消極的賛成です。つまり、引上げずに済むのであればそれに越したことはない、一方で、おそらく引き上げざるを得ないだろう(そしてそれを考えると、軽減税率もタイミングは別として必要となってくるであろう)と考えています。

誤解のないようにお話しさせて頂くと、もちろんまず優先されるべきは、(無駄な)歳出の削減のはずです。歳出削減によって、消費税率のさらなる引上げを避けるというのが本筋だと思います。ただし、歳出削減が進まない、追い付かないことによって、歳入を増やさざるを得ない(税金もしくは社会保険料を引き上げざるを得ない)とすると、それは消費税にならざるを得ないと考えています。

昨年4月の消費税率の8%への引上げは景気に大きな影響を与えたとして報道されていますが、実は、そこまで注目はされてこなかったものの、過去10年以上に渡って、考え方によっては消費税以上に景気に影響を与えうる引上げが行われてきました。それは、社会保険料、なかでも厚生年金保険料です。厚生年金は、平成16年の年金制度改正によって平成16年から毎年保険料率が上がっており、この先平成29年まで上がることが決まっています。この制度改正前の料率は、13.58%。それが平成29年には18.3%にまで上がることが決まっています。

料率ですとピンとこないので、例として、月の給料(正確には標準報酬月額)が300,000円の方で考えると、平成16年初は、月々20,370円の負担(会社負担分もあわせると40,740円)だったものが、平成29年末には、27,450円(会社負担分もあわせると40,740円)と、実に7,080円/月、年間で84,960円上昇することになります。会社負担分とあわせた総額では、14,160円/月、169,920円/年の上昇です(シンプルにするため、賞与はなしという想定ですが、賞与がある場合にはさらに負担が増えることになります)。

ここで注目して頂きたいのは、消費税はお金を使わない限り発生しませんが、社会保険料負担はお金を稼ぐ段階で発生しますから、同じ率であれば、実は消費税よりも負担が重いということです。例えば、月収(額面)が36万円で手取りが約30万円(扶養家族1名の想定)、うち家賃(これは消費税非課税)と貯蓄で10万円とすると、消費税がかかる消費は20万円です。仮に厚生年金保険料率が1%上がると、36万円×1%の3,600円の負担増(ただし、会社と折半で負担)、一方で消費税率を1%上げると、負担増は消費税がかかる20万円×1%の2,000円です。

上でお話ししてきたように、厚生年金保険料率は平成16年から着実に上がってきており、平成29年までには5%弱(4.72%)も上がることになります(さらに健康保険料も着実に上がってきています)。これらは見方によっては消費税率で5%以上に相当する負担増と言えます。10年以上かけてのじんわりとした負担増ですからあまり注目されてきませんでしたが、実は10年以上にも渡る景気の下押し要因になってきたのではないかと考えています。

ちなみに、これだけ保険料が上がっても、まだおカネは足りません。高齢化が進むことによって社会保障給付費、すなわち、年金の支給や医療費が爆発的に増えてきているからです。平成になる頃には40兆円を超えるぐらいだった社会保障給付費は、直近では100兆円を軽く超えるところまで膨らんでいます。100兆円を超える社会保障給付費のうち、実は保険料では半分程度しか賄えていません(平成26年の予算ベースでは、社会保障給付費が115.2兆円に対し、保険料は64.1兆円に過ぎません)。足りない部分は国や地方公共団体が負担しています。と言っても、国や地方公共団体は税金で成り立っていますから、結局税金で穴埋めしていますということです。

ここで注目が必要なのは、平成16年の年金制度改正によって決まった年金保険料率の引上げが平成29年で打ち止めになること。つまりこれまでは社会保障給付費の伸びを(ある程度)保険料の引上げで補ってきた訳ですが、それができなくなるということです。それでも伸びていく社会保障給付費は税金で補うしかありません。年金保険料率の引上げ終了が平成29年、すなわち2017年。消費税の10%への引上げは2017年。これは偶然でしょうか。

メディアは何が軽減税率の対象になるのかという話題で盛り上がっていますが、そういったわかりやすい(下手をすれば身勝手な)議論に留まるのではなく、今後の社会保障の費用負担をどう軽減するのか、軽減努力をしたにしても増える分をどう賄うのか、そういった本質的な議論がなされて欲しいと願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:45 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年10月16日

軽減税率の是非

ちょっと前に日本版軽減税率として盛り上がった(?)、マイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度ですが、あっさり撤回になったようです。まあ、率直に言って筋が悪いとは思っていましたので、早期に見直されたことは良かったかと思います。一方で、公平かつ効率的に売上を把握するための社会インフラとして考えれば、大きなポテンシャルもあり得た仕組みですので、その観点では残念だと感じています。

やはり軽減税率は政治的に必達ということで、ここに来て急に2017年4月に消費税率が10%に引上げになるのと同じタイミングで軽減税率を導入するという方向で動き出しました。まだ紆余曲折はあるものと思いますが、今後の議論を注意深く見守っていきたいと思います。

軽減税率に向けて具体的に動き出す中で、今後は立場的に発言し難くなると思いますので、今のうちに(笑)、軽減税率に対する個人的見解をお話しさせて頂ければと思います(本ブログは個人ブログですので、弥生の公式見解とは必ずしも一致しません、念のため)。

結論から申し上げると、私は軽減税率には反対です。軽減税率を導入すれば、物品によって異なる税率の処理が必要になり、事業者にとって大きな負担になります。また、よく言われていることですが、何が軽減税率適用になり、何はならないのかの線引きが極めて難しいことも問題です。もちろん、生活必需品での税負担を下げるという軽減税率のメリットも理解はしていますが、軽減税率によって発生する社会的コストと社会的メリットが釣り合わないと考えています。

ただし、これは現状で想定されている消費税率10%の際の軽減税率8%という前提での話です。2%の軽減は全く意味がないとはいいませんが、負担感の解消という目的をどこまで果たせるかというと疑問です。一方で、1%分でも2%分でも軽減税率を導入する限り、社会的コストは発生します。

もっとも、将来的に消費税率が20%という時代を考えたらどうか。一般の物品は消費税率は20%で、生鮮食料品は8%。ここまで差が付けば、負担感の解消という意味では有効でしょう。そうなってくると、ある程度社会的コストをかけてでも、軽減税率を導入する意義が生まれます。実際、軽減税率が導入されている欧州諸国も、通常の消費税率が20%前後になっているからこそ、軽減税率が必要になっているとも言えます。

政治的に軽減税率導入にこれだけ拘っているのも、将来的に消費税率10%以降の世界をにらんでいるからなのではないでしょうか。要は将来的には必ず必要になるものだから、このタイミングで、と。もちろん、そう明言される方はどなたもいらっしゃらないと思いますが。

そうなってくると、消費税率のさらなる引上げの是非ということになりますが、こちらに関しての私の意見は消極的賛成です。つまり、引上げずに済むのであればそれに越したことはない、一方で、おそらく引き上げざるを得ないだろう(そしてそれを考えると、軽減税率もタイミングは別として必要となってくるであろう)と考えています。

消費税に限らず税金は個人の可処分所得を減らすわけですから、個人消費という意味では明らかにマイナスです。ただ、実は消費税以上に可処分所得に影響を与えている存在があります。それは社会保険料。社会保険の代表格である厚生年金は、平成16年の年金制度改正によって平成16年から毎年保険料率が上がっており、この先平成29年まで上がることが決まっています。この制度改正前の料率は、13.58%。それが平成29年には18.3%にまで上がることが決まっています。これがこれ以上上がるよりは消費税を引き上げた方がいいというのが私の考えです。

もちろん、そもそも歳出削減が第一優先ですし、歳出削減によって、社会保険料にせよ、消費税にせよ引き上げなくて良いのがベストです。ただし、歳出削減が進まない、追い付かないことによって、歳入を増やさざるを得ない(税金もしくは社会保険料を引き上げざるを得ない)とするとそれは消費税だと考えています。

消費税か社会保険料か、という話は長くなってしまうので、また次回。
posted by 岡本浩一郎 at 10:59 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年09月11日

本当の狙いは

前々回から、マイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度について考えてきました。今日の朝刊では、日本型軽減税率制度の財務省案として掲載されましたが、概ね事前に報道された通りで、特に新しい情報はありませんでした。

この日本型軽減税率制度について、これまで色々と考えてきましたが、やはり、特に費用対効果の観点から、首を傾げざるを得ない仕組みです。給付付き税額控除という制度であれば、ほぼ同じようなメリットを提供でき、なおかつ費用対効果が高いからです。それでもなぜこの日本型軽減税率制度なのか。一つの大きな理由が、この制度名称からにもあるように、あくまでも「軽減税率」の制度に拘っているということでしょう。

ただ、今回の仕組みを飲食料品に関する軽減税率を実現する仕組みとしてではなく、もっと壮大な社会的なインフラとして考えれば、首を傾げざるを得ない仕組みから、極めて合理的な仕組み(賛否両論だとは思いますが)に180度変わりうるのです。それがもう一つの、かつ、実は本当の狙いなのかもしれません。その極めて合理的な仕組みを既に実現しているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。

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実は韓国では、既に物品(飲食料品に限らず)を現金で買う際に、個人を特定するIDを提示することが一般的になっています。そしてその情報は、韓国の国税庁に集約されるようになっています。もっとも、それは軽減税率のためではありません(改めてお話ししますが、軽減税率ではないものの、個人にメリットがあるような仕組みにはなっています)。

税金を徴収する側からすると、一番困るのは事業者に売上を隠されること。売上を隠してしまえば、それに見合う利益もなくなりますし、結果として納税する額を減らすことができます。これはもちろん犯罪ですが、よくあることであるのも事実。実際、POSレジのないような飲食店(昔ながらのパターンで言えば、カゴに小銭を入れてぶら下げている八百屋さんもそうですね)では、売上がなかったことにするのは容易です。当然のことながら、日経での「税務署は見ている」という連載でも度々語られていますが、税務調査でも売上が隠されていないのかは大きな焦点になります。

一方、海外では、事業者が売上を隠すことを防ぐための仕掛けとして、例えば、決まった用紙での領収書発行を義務付けることがあります。代表的なのが、台湾の統一発票というものです。韓国の現金領収書という仕組みもこの延長線上にあります。すなわち、必ず領収書を発行させ、さらにそれをデータとして収集する。その狙いは、隠されがちな現金での売り上げを漏れなく捕捉しようというものです。

韓国の現金領収書と同様に、今回の日本型軽減税率制度も購買履歴を収集し、一元管理する仕組みです。この仕組みでは、個人の購買行動が把握される、という懸念が多く聞かれますが、その実際の狙いは、買った人の履歴を捕捉することではなく、売った人の履歴を捕捉することと考えたらどうでしょうか。つまり、日本型軽減税率制度は、その実、韓国の現金領収書のように、売上を漏れなく捕捉するための仕組みと考えたら。

この仕組みは間違えなく様々な議論を呼ぶでしょう。ただ、真面目に税金を納めている人からすれば特に恐れるような仕組みではありません。個人的には社会的な公平性と効率性を実現するためには、極めて合理的な仕組みだと考えていますし、結論はともかく、真剣に検討すべき仕組みだと考えています。

[参考]
韓国の現金領収書の仕組みについては、こちらのレポート(pdf)のp172~が詳しいです。
台湾の統一発票については、こちらのレポート(pdf)をご参照ください。
posted by 岡本浩一郎 at 18:50 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年09月10日

本当の狙いは別のところに?

昨日お話ししたマイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度ですが、冷静になって考えるほど、疑問が湧いてきます。本当にこの制度が実現可能なのか、実現は可能だとしても特に費用対効果という観点から妥当性のあるものかどうか。

まずは実現可能かどうか、ですが、技術的に実現可能かどうか、と言われれば可能でしょう。ある意味、Tポイントカードのようなポイントの仕組みと同様と言えば同様ですから。購買履歴に対し、2%(正確に言えば税込価格の2/110)のポイントを蓄積し、それをあるタイミングで現金として振り込む。後述する費用の観点を一旦脇に置けば、販売者が準備しなければならないICカードリーダーも技術的には問題ありません。インターネットに接続していないお店のために、ICカードリーダー自体に通信機能を付与することも可能でしょう(ただし、電波の届かないところもゼロではないですよね)。

とはいえ現実的には課題は山積みです。まずは準備の時間。軽減税率は2017年度に導入するとされていますが、「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の構築は何とか間に合わせるにしても、ICカードリーダーを全国津々浦々に存在するお店(対象は酒を除く飲食料品を扱うお店に限られますが)に行き渡らせることができるかというと、これはまず不可能でしょう。とりあえず強制的に送りつけることはできるかもしれませんが、そもそもPOSレジもないような個人商店で実際に使えるようにするには時間が足りません。

もっとも、時間に関しては、2017年度の導入を諦めるとすれば何とかなりそうな気もします(10%引き上げからこの制度導入までの期間は簡易的な給付措置など暫定的な対応を行う前提で)。

ある意味、時間以上に課題が大きいのはセキュリティでしょう。還付を受けるためには個人番号カードを常時持ち歩かなければならない(落としたらどうする?)。また、ICカードリーダーで読み取る際にも、カード上に記載されている個人番号を店員に見られないように(店員も見ないように)しないといけない。さらに、飲食料品をネットで購入する場合には、購入時に(もしくは予め)個人番号を入力しなければならない、そして販売業者はそれをありとあらゆる手段を使って秘密に保たなければならない。

実はこれらは課題としては本質的ではありません。以前本ブログでも書きましたが、個人番号はあくまで個人を特定するIDであって、その個人であることを証明するパスワードではありません。情報セキュリティの観点では、秘密に保たれるべきはパスワードであって、IDではありません。一方で、個人番号は法律によって特定個人情報として極めて秘密性を高く保たれることが求められており(それができない場合には懲役刑すらありうる!)、それがマイナンバーを今回の制度に活用することを極めて難しくしています。

ただ課題が山積みの中で、最大の問題は費用対効果でしょう。前回もお話したように、今回、還付には一人年間4,000円程度の上限が定められるそうです。となると、人口を1億2千万として、還付される額は、約5,000億円。一方で、購買金額を記録する「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の整備に約3,000億円かかるそうです(第二の国立競技場ですとか、新たな天下り組織と否定的な意見が早速聞こえてきています)。さらに、ICカードリーダーを広く普及させるために数百億円使うと言う話も聞こえてきます(ただ、個人商店に行き渡らせることはできても、実際に使えるようにするためにはもっとお金がかかるでしょう)。5,000億円を還付するために、3,000億円以上かける。もちろん還付される額は毎年で、整備費用は一過性ですので、apple to appleではありませんが、整備されたシステムの維持費用もありますし、少なくともかなりコストのかかる仕組みであることは事実でしょう。

ある意味この制度の最大の難点は、同様の効果を持ちえて、なおかつ、上に挙げたような課題がほとんどない代替制度がありうるということでしょう。それは前回もお話した給付付き税額控除です。

今回の制度では、一人年間4,000円程度の上限が定められると書きましたが、これは酒を除く飲食料品で年間20万円ほど支出するという計算になります。一人年間20万円、すなわち月2万円以下ですから、確かに誰でもがこの制度のメリット(還付)を受けることになるでしょう。ただ、逆に、誰でもメリットを受けるのであれば、面倒くさい仕組みを導入することなく、単純に一人当たり4,000円を支給するという発想が生まれます。

このアプローチでは、支給するのではなく、税金(所得税)から差し引く(税額控除)というやり方も可能です。以前行われたこともある定額減税がこのやり方ですね。ただ、税金から差し引くやり方の場合、そもそもそこまで税金を払っていない人はメリットをすべて受けることができない、という課題があります。つまり税金を10,000円納めている人は4,000円の控除を受けて負担が6,000円(4,000円のメリットを受けた)になりますが、税金を1,000円納めている人は、1,000円しか控除を受けられない。

この課題を解消しようとするのが給付付き税額控除で、税金を10,000円納めている人は4,000円の控除を受けて負担が6,000円(4,000円のメリットを受けた)というところまでは同じですが、税金を1,000円納めている人は、1,000円控除を受けて税額が0円になった上で、さらに3,000円の給付を受けられる(合計4,000円のメリットを受けられる)という仕組みです。

この給付付き税額控除の場合、マイナンバーで還付方式と異なり、大掛かりな仕組みの整備は必要ありません。基本的にこれまでの税金計算/納付の仕組みの延長線上で実現できます。つまり給付付き税額控除は圧倒的に費用対効果が高いということになります。

では、ほぼ同じようなメリットを提供でき、なおかつ費用対効果が高い制度が存在するのに、なぜ今回課題が山積みのマイナンバーで還付方式が急浮上してきているのでしょうか。それは、後者は政権公約である軽減税率の一種だ、と主張できるから、ということでしょう。

ただ、実は、今回の仕組み、飲食料品に関する軽減税率を実現する仕組みとしてではなく、もっと壮大な社会的なインフラとして考えれば、首を傾げざるを得ない仕組みから、極めて合理的な仕組み(賛否両論だとは思いますが)に180度変わりうるのです。その極めて合理的な仕組みを既に実現しているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。次回は、この現金領収書についてお話してみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:43 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年09月09日

マイナンバー活用で2%分還付?

去る3月31日に、2015年度税制改正の関連法が国会で成立し、これによって、今年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げは、2017年4月に延期されることが正式に法律として決定しました。一方で、これは国会で成立した正式な法律にはなっていませんが、一昨年末に自公両党によって公表された平成26年度 税制改正大綱において、軽減税率について「税率10%時に導入する」とされています。

ここにきて急に報道されていますので、ご存知の方も多いと思うのですが、この軽減税率について、表面上の税率を変えるという(世界的に見て)一般的なやり方ではなく、軽減の対象となる飲食料品(酒を除く)の購買金額を記録し、消費税2%相当分を別途還付するという案が急浮上してきました。どうやって購買金額を記録するかというと、個人番号カードを販売店で購入する時にICカードリーダーにかざすのだそうです。

私は税制のあり方について、立場的に、その良し悪しを発言しないように(少なくとも公の場では、笑)しています。弥生の仕事は、税制の筋が良いものであろうが悪いものであろうが、それをキチンとサポートするソフトウェアを提供し、なおかつお客さまの業務が滞りなく進むようにお手伝いすることだからです。ただ、今回の案にはさすがに驚きました。正直、首を傾げざるを得ません。

色々な方から意見が出始めていますが、突っ込みどころ満載です。全国津々浦々、飲食料品を扱っているお店が、ICカードリーダーをくまなく備え付ける。POSレジを利用しているお店はともかく、POSレジのないお店はどうするのか。事業主の負担の軽減策も考慮するとのことですが、少なくとも2017年という時間軸で考えると現実的とは思えません。

また、利用するのが、個人番号カードです。絶対的に機密情報として扱わなければならない個人番号が記載されたカード。そのカードを常時持ち歩き、飲食料品を購入する際には必ず提示する。そしてお店としても、その個人番号を見てはならないし、記録してもならない。しかし、飲食料品を購入する場所は物理的なお店とは限りません。らでぃっしゅぼーやのような宅配ですとか、ネット販売。その場合は、サイトで個人番号を登録するのでしょうか。そして宅配業者、ネット販売業者は本当は扱いたくもない個人番号を、絶対的な機密情報として扱うことを求められるのでしょうか。

百歩譲って、ここら辺の問題は解消できるとしても、費用対効果は正当化できるのでしょうか。今回、還付には一人年間4,000円程度の上限が定められるそうです。となると、人口を1億2千万として、還付される額は、約5,000億円。一方で、購買金額を記録する「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の整備に約3,000億円かかるそうです。5,000億円を還付するために、3,000億円かける。もちろん還付される額は毎年で、整備費用は一過性ですので、apple to appleで比較することはできませんが、整備費用は一過性といっても、一般的にITシステムでは年間で、初期整備費用の20-30%ぐらいの維持費用がかかることも珍しくありません。また、この整備費用には、全国津々浦々にICカードリーダーを配備し、実際に使えるようにするための費用も考慮されていません。

費用対効果という観点では、単純に一人年間4,000円の給付を行った方が賢明に思えます。これであれば、還付(給付)額は同じ5,000億円でも、そのために必要な費用は桁違いに少なく済むでしょう。でも、所得の高い人も含めて全員に給付するのでは、逆進性の解消にならない? それであれば、所得制限を設けて、一定の所得以下の方に定額を給付しても良いでしょう。ただ、そうなると、それは軽減税率ではなく、給付付き税額控除という制度になります。

一方で、マイナンバーを利用して、購買履歴(裏返せば売上明細)を広く補足するということに意味はあるかもしれません。それを実際に行っているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。しかし、今回の変形的な軽減税率の仕組みは、まるで思い付きのようで、韓国の現金領収書のように、非常に深くまで考えられた仕組みには見えません。

穿った見方ですが、まるで、「ほーら、このやり方では無理がありますよね。だから…」と別の落とし所に落とすための釣り餌にすら見えてしまいます。

今回の財務省案は報道ベースの情報のみで、その詳細を全て把握できるいるわけではありませんので、今日この場で是非を明言することは避けたいと思います。さらなる情報を収集しつつ、改めてそのメリット/デメリットを冷静に考えてみたいと思います。同時に、非常に興味深い仕組みである韓国の現金領収書の仕組みについてもご紹介してみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 23:58 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年04月16日

所得税の振替納税

今年は所得税の確定申告期間が3月16日で終わりました。それからちょうど一ヶ月。苦労してギリギリに提出したという方も、一ヶ月も経つと、そういえばそんなこともあったなー、と過去のことになってしまっているかもしれません。

ただ、完全に過去のこととしてしまう前に、ひとつ注意が必要なことがあります。それは、確定申告の結果、所得税を納付する必要があり、なおかつ、口座振替による納税を選択した場合、その振替が来週月曜日、4/20に行われるということ。

確定申告の際には、申告書を提出するだけでなく、納付の必要がある場合には、その納付も済ませる必要があります。ただ、申告は電子申告や郵送(当日消印)/持参(時間外収受箱)など、締切当日の夜まで何とかなりますが、納付はそうもいきません。また、資金繰りの観点からも、後倒しにできる支払いは後倒しにするのが原則。そういった意味で、後日向こうの方から引き引き落としてくる口座振替納税はおススメです。一方で、少し間があくために忘れてしまい、いざ振替となると資金が足りないというリスクもあります。

私も毎年確定申告をしていますが、給与所得中心で、寄附金控除などもあるため、還付での申告がほとんど。ただ、今回は何年振りかの納付の申告。忘れていないよね、という親心からか、昨日「振替納税のお知らせ」が送られてきました。

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お知らせにも書いてありますが、確実に振替できるようにするためには、前日までに口座に資金を入れておく必要があります。つまり…明日ですね。口座振替は、通常その日の朝一番に振替になるものの、その時点で残高が足りなければ、日中や夜に再度振替えてくれるケースも多いので、最悪当日の入金でも間に合うことも多いと思いますが、これは約束はされていません(銀行によって、処理のタイミングや回数が異なるようです)。

当日の入金でも間に合うかどうか試してみたい気もしますが、万が一振替ができないと、いきなり延滞税がかかってきますので、試す勇気がありません。やはり安全のために、前営業日までの入金をおススメします。

なお、消費税についても振替納税を選択されている方は、4/23(木)に振替になりますので、そちらもお忘れなく。

蛇足ですが、納税も終わって確定申告を過去のこととしてしまう前にもう一つ。今年は手書きで苦労した、突貫工事で苦労したという方は、来年こそは、申告ソフトを活用し、着実に準備を進めていきましょう。初めて申告ソフトを利用される方のために、やよいの白色申告 オンラインとやよいの青色申告 オンライン、それぞれで初年度無償キャンペーンを実施しています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:13 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年02月13日

ふるさと納税に物申す

いよいよ来週月曜日(2/16)から平成26年分の所得税の確定申告が始まります。今年の申告期間は2月16日(月)から3月16日(月)まで。

この期間は、大阪・札幌カスタマーセンターはもちろん、私も含め、全社を挙げてお客さまを全力でサポートしていきます。全力投球するためにも、個人的な心配事(?)は片付けておかなければなりません。

ということで、まずは自分自身の確定申告書を作成。書類をまとめておくといった準備は済んでいましたので、弥生会計(やよいの青色申告)を利用すれば、20分ほどで作成は終了。宣伝になってしまいますが、弥生会計(やよいの青色申告)の確定申告機能は、どんな書類が必要なのかから始まって、どの項目にどんな内容を記入すべきかをソフトウェアが案内してくれますから、迷うことがありません。さらに当たり前中の当たり前ですが、記入した内容に基づいて控除額などを自動計算してくれますから、数字を誤ってしまったり、一つの項目と別の項目で矛盾を生じることもありません。

今回の申告はイレギュラーな内容が多いので、念のため税理士の先生に最終チェックをお願いする予定ですが、とりあえず作成が済んでホッと一安心です。

今回の申告でもふるさと納税による寄附金控除を受けるのですが、今回(昨年末)のふるさと納税ではちょっとしたサプライズがありました。私がここ数年ふるさと納税をしている先は、心のふるさとである湯河原町に加え、岩手県(いわての学び希望基金)、宮城県(東日本大震災みやぎこども育英募金)、そして福島県(東日本大震災ふくしまこども寄附金)です。昨年までは、ふるさと納税に対するお礼として特産品をもらうことはありませんでした。

しかし、今回は、湯河原町からお礼の品が! 昨年に制度改正され、10,000円以上のふるさと納税に対し、地元特産品や宿泊ギフト券が贈られるようになったようです。思わぬギフトで嬉しい面もありつつも、少々複雑な気持ちです。

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あくまでも私個人の意見ですが、この種の特産品ギフトはやめるべき(少なくとも最小限にするべき)だと考えています。理由は二つあります。

1) 以前本ブログでもお話ししたことがありますが、ふるさと納税は本来は国(所得税)や、居住している自治体(住民税)に納めるべき税金を、ふるさと納税先の自治体に移転させる仕組みです。つまりふるさと納税をする人が増えるほど、国や居住自治体に入る税金が減ります。つまり、ふるさと納税先の自治体が、ふるさと納税された資金を特産品ギフトの購入に使うということは、本来は税金として活用されるべきものが、特産品に消費されてしまっていることになります。税金が豊富にあるのであればともかく、国もほとんどの自治体も大赤字の中で、税金の使い方としては望ましくないのではないでしょうか。

2) 今回私がふるさと納税をした自治体の中では、岩手県(いわての学び希望基金)、宮城県(東日本大震災みやぎこども育英募金)、そして福島県(東日本大震災ふくしまこども寄附金)のいずれも特産品ギフトはありません。これは当然の話で、いずれも東日本大震災による震災孤児等支援のために設立された寄附金ですから、その寄附金を特産品に消費すべきではありません。一方で、これらの寄附金は特産品がないことによって、どんなに意義のある寄附であっても、寄附先として敬遠される可能性があります。ふるさと納税を特産ギフトによる経済的メリット追求のためと考えると、特産品ギフトがない寄附先は当然最初から検討の対象とならないことになってしまいます。

ふるさと納税での特産品ギフトは益々過熱しており、なかには土地(これはさすがにストップがかかったようです)や、PC、もっと現金なところではTポイントを進呈という自治体もあるようです。本来はふるさと納税先で有意義に活用されるべきお金が、結局は(一部とは言え)ふるさと納税をした人の経済的メリットとして還元されてしまう。ふるさとを応援するというふるさと納税の趣旨を鑑みると、決して良いことだとは思えません。

この先ふるさと納税できる枠が広がり、なおかつ、一定の条件の下で確定申告をしなくても済むようになると言われています。それはそれで良いことだとは思うのですが、特産品ギフトの競争がますますエスカレートすることを危惧しています。

私は規制は少なければ少ない方がいいと考える人ですので、特産品ギフトを禁止することを望むものではありません。ただ、自治体間で特産品ギフト競争がエスカレートしないように、一定の自主ルールは必要なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 16:00 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年01月23日

まずは準備から

前回、やよいの青色申告 15 (弥生会計 15)で平成26年分の確定申告対応ができたとご報告しました。クラウドアプリケーションのやよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンラインも、来週1/29(木)には平成26年分の確定申告対応を行います。

いよいよ2月16日(月)から始まる確定申告に向けて、皆さまの準備も進んでいますでしょうか。ばっちり、場合によったらもう済んだという方もいらっしゃるかと思いますが、そろそろ準備しなければいけないのは分かっているのだけど、ついつい後回しにしてしまって…という方も多いのではないかと思います。

そんな時はまず最低限の準備から始めましょう。すなわち、書類の準備と申告の準備。

書類の準備としては、まず請求書や領収書を一通り収集しておきましょう。 あとは、銀行の通帳を記帳しておくのも大事な準備です。私自身、随分長いこと記帳しておらず、合計記帳(いくつかの明細をまとめて記帳される)になってしまい、明細がわからなくなって困ったことがあります。

医療費や生命保険料は、あくまでも個人としての支出であり、いわゆる事業上の経費にはなりません。ただし、事業上の経費にならないから領収書も要らないという訳ではありません(事業の収支を申告する青色申告決算書や収支内訳書では必要はないのですが、最終的に個人としての所得を申告する確定申告書を作成する際には必要)。医療費の領収書や保険料の控除証明書、あるいは寄附金の領収書は医療費控除や生命保険料控除などの所得控除を受ける(=その分節税できる)ためには必要となりますので、これらもこのタイミングでまとめておきましょう。

逆に実は確定申告の際に必要がないのが、支払調書。例えばフリーランスのライターが原稿料の支払いを受ける際には、一定額の源泉徴収がなされ、また年間を通じた支払額、源泉徴収額を合算した支払調書という書類を受け取ります(通常は翌年1月に)。たまに支払調書が届かないから、申告できない、という方がいらっしゃるのですが、実はこれは誤解です。この支払調書は、受け取った額、またすでに源泉徴収で収めた額を把握する上では便利なのであればベターですが、確定申告の際に添付する必要はありません(もちろんその代わりに帳簿上で売上の金額、源泉徴収された金額がキチンと記録されている必要があります)。

もう一つ落とし穴になりそうなのは、e-taxの際に必要となる電子証明書。税金をおまけしますという「飴」があった関係で、数年前から電子申告、すなわちe-taxを利用されている方もそこそこいらっしゃるのではないかと思います。ただ、e-taxで申告するには、住民基本台帳カードが必要で、なおかつこのカードに有効な電子証明書が格納されている必要があります。この「有効な」というのが曲者で、この証明書の有効期間は3年間。去年は大丈夫だったのに今年申告しようとしたら証明書の有効期間が切れていた…ということが十分起こり得ますので注意が必要です。

あとはe-taxの際に必要となるパスワードを忘れてしまったというのも「あるある」ではないでしょうか。証明書の更新はこちら、パスワードの再設定はこちらに情報があります。

申告期限ギリギリになって、あの領収書が見つからない、あるいは、証明書の失効でe-taxができないとなると命取り(大袈裟?)になることも考えられますので、まずは書類を集める/整理する、またe-taxの場合には準備を確認するところから始めましょう。
posted by 岡本浩一郎 at 18:48 | TrackBack(0) | 税金・法令