2022年05月06日

そこまでシンプルではなかった解法

年明けに、私が通っているスポーツクラブで、ロッカーの利用方法が変わったとお話ししました。会員証をプラスチックカードではなく、入館の都度スマホの画面で表示するようにする、という変更にともなって、ロッカーの利用に際し、プラスチックカードを差し込まなくてよいようになりました。

その実現方法がロッカーの大幅な仕様変更ではなく、全てのロッカーに予め会員証と同じものを差し込んでおくというシンプルな解法だったことが驚きだったということをお話ししました。

それから何ヶ月か経っていますが、実際のところシンプルな解法による問題も明らかになっているようです。どのような問題が発生しているのかというと…。

1) 一人で複数のロッカーを使う人が発生

以前は、ロッカーの使用に際し、ロッカーに会員証を差し込むようになっており、結果的に一人で複数のロッカーを利用することはできませんでした(会員証と同じ形状のプラスチックカードを偽造しない限り)。しかし、現状では会員証を差し込むという行為がなくなったことにより、一人でいくつでもロッカーを利用できるようになりました。ただ、私自身としては、一人で複数のロッカーを使う理由が見出せませんが。

2) ロッカーのカギを持ち帰ってしまう人が発生

以前は、ロッカーに会員証を差し込むとはじめて、ロッカーのカギを取り外せる(=ロッカーに施錠できる)ようになっていました。しかし、現状では会員証を差し込むという行為がなくなったことにより、自由にロッカーのカギをかけられるようになりました。例えば、気に入った位置のロッカーがあったとすると、そのカギを持ち帰ってしまうことによって、そのロッカーを事実上占有することができるようになりました。

なぜこれらの問題が発生していることがわかったかというと、これらの行為をやめてくださいという張り紙がされたからです(笑)。

正直何なんですかねえ、という感じです。どんな仕組みにせよ、その裏をかこうとする人はいるものです。それを防ごうとすると、より複雑な仕組みにせざるを得ない。シンプルな仕組みが望ましくても、なかなかシンプルな仕組みに徹しきれないというのも、また現実かと思います。

先日、相続したマンションで路線価などに基づいた不動産評価が低すぎるなどとして課税した国税当局の処分の妥当性が争われた訴訟で、国税当局の処分を適法とした最高裁判決が下され、話題になりました。

誰にとっても税金は多く払いたいものではありません。このため税制の穴を突こうとする人が現れ、それを防ごうと対策を講じる、それでもさらに穴を突こうとする、それを再び防ごうとする、の繰り返しで、税制がどんどんと複雑化してしまう。この繰り返しにはきりがないため、用意されているのが、国税当局の「伝家の宝刀」である「著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」という例外規定です。今回はこの伝家の宝刀の妥当性が問われた訴訟でした。

税制も本来はシンプルであり、誰にとってもわかりやすいことが一番のはずです。ただ、シンプルな解法も万能ではない。シンプルでありながら、ロッカーを占有するように/過度に節税が可能になるように、誰かだけがトクをすることを許さない公平な仕組み。言うは易しいが、現実はなかなか難しい。これは完全に私見になりますが、やはり基本はシンプルであるべきだと思います。シンプルな仕組みの穴を突く、裏をかく人も現れるのだと思いますが、何が許されるのかは、良識/良心で判断すべき、というのは理想主義にすぎるでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:17 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月21日

業務の区分欄

2020年(令和2年)分の所得税の確定申告書から雑所得の中に業務という区分(ここでいう区分は雑所得の中での「公的年金等」「業務」「その他」という分類の意味)が新設されました。またこの際には、新設された業務の行に区分欄(ここでいう区分は付加情報的な意味合い)が設けられました。

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ただ、実はこの業務の区分欄はこれまで記入不要とされてきました。しかし前回お話しした内容を踏まえると、来年の申告からはこの区分欄に記入が必要になってくるのではないかと推測できます。前回お話しした通り、来年の申告からは、業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存(5年間)が義務化され、また、1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられますが、例えば、前者の場合は区分欄に「1」を、後者の場合には区分欄に「2」を記載しなさい、といったようになるのではないかと思います。

厄介なのは、前回もお話しした通り、この判断の元となる収入は前々年の収入であるということです。つまり来年の申告(2022年(令和4年)分)であれば、2020年(令和2年)分が判断対象になることになります。

ここで勘のいい方はお気付きかと思います。そう、雑所得の中に業務という行ができたのが2020年(令和2年)分。2020年(令和2年)分の申告では業務を括りだして申告しているはずだから、その数字を見てくださいということです。つまり、2022年(令和4年)分の申告から領収書の保存や収支内訳書の作成が求められる、そのために、2020年(令和2年)分からしっかり仕込みがされていたということです。

もっともこれは当たり前と言えば当たり前。というのは、今回の領収書保存の義務化や収支内訳書の作成義務化は、令和2年度の税制改正(pdf)で定められたものだからです。つまり令和2年度の税制改正で決まったことが、まず2020年(令和2年)分から確定申告書に反映された。ただその段階では業務の区分欄は使われなかった。満を持して業務の区分欄が実際に使われるようになるのが、2022年(令和4年)分の確定申告(来年春)から、ということです。

要はだいぶ前から既にレールは敷かれていたということになりますが、今回の領収書保存の義務化や収支内訳書の作成義務化については、正直、現段階ではほとんど認知されていないと思いますので、注意が必要です。特に領収書の保存という意味では、今から心がけておかないと来年春の申告時の際に、ない!ということになりかねませんので。

ただ前回もお話ししましたが、雑所得で収入(売上)が300万円、ましてや1,000万円という方は、雑所得ではなく、事業所得として青色申告ができる状態を目指すべきなのではないかと思います。それはすなわち、営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められる状態を目指すということです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:08 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月19日

事業所得か雑所得(業務)か 2022

今年の確定申告期間は終了しました(ただし新型コロナウイルス感染症の影響が続き、申告等ができなかった場合には申請により個別に延長が認められる措置はあり)が、もう少しだけ確定申告の話題を。

昨年、確定申告書の雑所得の中に業務という区分を新設されたということをお話ししました。弥生のお客さまであれば馴染みのある事業所得ではなく、雑所得の一区分としての業務。以前お話ししたように、雑所得とは事業所得等、他の所得のいずれにも当たらない所得とされており、その中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。

実は、この業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。

雑所得には、税金が軽減されるなどの税務上のメリットはないのですが、一方で、帳簿付けも要らず、領収書の保存も要らずということで、申告が簡単というのがメリットでした。これが変わるということです。少し厄介なのは、業務に係わる収入が300万円(1,000万円)を超えた場合、というのは、実は今年分ではなく、前々年の数字が判断基準になります。ですので、そうか、今年はちょっと稼ぎを抑えるかと言っても、実は既に遅く、前々年である2000年の収入が300万円超であれば、来年春の確定申告に向けて、領収書の保存が必要になり、1,000万円超であれば、さらに収支内訳書の作成が必要になります。また、この判断基準は「収入」に基づいています。例えば、利益は50万円しかなくても、収入(売上)が300万円超であれば、領収書の保存が必要になります。

こうなってくると、雑所得ではなく、事業所得の方がいいのではないか、という考え方もあるかと思います。とくかくラクだったのが雑所得のメリット。それが変わった以上は、多少手間がかかっても事業所得(青色申告)で積極的に節税メリットを取りに行くというのもありかと。事業所得で青色申告であれば、最大65万円の青色申告特別控除が得られますから、圧倒的な節税メリットがあることはこれまでにもお話ししてきた通りです。

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難しいのは、雑所得と事業所得は自由に選べるわけではないということ。これも以前お話ししたことですが、事業所得として認められるためには、営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められる状態である必要があります。つまり、継続的に儲けるつもりで、儲ける一定の確からしさがある場合は事業所得になりうるということです。

それに対し、儲かったらラッキーぐらいのつもりの場合は、雑所得ということになります。ただ、収入が300万円超であれば事業として認められる可能性はあると思いますし、1,000万円超であれば、それはもう立派な事業のように思うのは私だけでしょうか(もちろん収入が1,000万円でも、原価が1,000万円超で常に赤字であれば、継続的に儲けるつもりがない、ということになるのでしょうが)。

今回、雑所得の手間が増えることによって、雑所得か事業所得というのは今後より大きな論点になっていきそうです。
posted by 岡本浩一郎 at 23:52 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月15日

いよいよ本当の最終日

確定申告の(個別延長後の)期限は4/15(金)。いよいよ本日となりました。また、e-Taxの接続障害で期限内に電子申告ができなかった場合には、その旨を申告書の特記事項へ記載することで、期限後の申告が認められていますが、その措置も本日、4/15(金)までとされています。

新型コロナウイルス感染症の影響で申告期限を個別に延長する場合も、e-Taxの接続障害で期限後に電子申告をする場合にも、特記事項に記載する必要があります(前者は「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」、後者は「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」)。詳細は前回お話しした通りとなりますので、ご確認ください。

なお、これまでは所得税の確定申告を念頭にお話ししてきましたが、消費税の確定申告については若干注意が必要です。消費税についても、新型コロナウイルス感染症の影響で申告期限を個別に延長することが認められていますが、e-Taxの接続障害はあくまでも所得税の確定申告期限で発生した問題であるため、これを理由にした消費税の確定申告期限延長は認められていません。

新型コロナウイルス感染症の影響で消費税の申告期限を個別に延長する場合には、申告書に記載する住所欄(建物名)に「(新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請)」と記載します。こちらも前回ご紹介した弥生のサポート情報でご説明しておりますので、ご確認ください。

また、これも前回お話しした通り、個別延長時には、申告日が納付期限日となりますので、注意が必要です。仮に金融機関で納付を予定している場合には、まず今日の営業時間内に納付を済ませてしまいましょう。期限ぎりぎりでの申告については、これまでにもお話ししてきていますが、郵送、税務署の時間外収受箱への投函、e-Tax、それぞれデッドラインとなる時間が異なります。今日中に申告を済ませられるよう、何をいつまでに行うか、再確認しておきましょう。

なお、タイトルは「本当の最終日」としていますが、4/16以降も新型コロナウイルス感染症の影響が続き、申告等ができなかった場合は、申告等ができるようになった日から2ヶ月以内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を所轄の税務署に提出することで、個別の延長が認められるようです。まさに今、新型コロナウイルス感染症の療養中であり、申告書作成ができないといった場合にはこの方法をとればいいですから、無理をする必要はありません。くれぐれもお大事に。
posted by 岡本浩一郎 at 12:03 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月13日

こちらもお忘れなく

確定申告の(個別延長後の)期限が4/15(金)ともう目の前に迫っています。また、e-Taxの接続障害で期限内に電子申告ができなかった場合には、その旨を申告書の特記事項へ記載することで、期限後の申告が認められていますが、その措置も4/15(金)までとされていますので、注意が必要です。

いずれの場合にも、申告書の特記事項に記載が必要になります。まずは、新型コロナウイルス感染症の影響で申告期限を個別に延長する場合。申告書を紙で提出する際に、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載する必要があります。また、e-Taxで提出するのであれば、特記事項として、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

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次にe-Taxの接続障害で期限後に申告をする場合。この場合は、紙での申告という選択肢はなく、e-Taxでの提出に限定されますが、この際にも、特記事項として「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

弥生製品でこれらの記載を行う方法については、こちら(やよいの青色申告 22やよいの青色申告 オンラインやよいの白色申告 オンライン)のサポート情報をご確認ください。

なお、一点ご注意いただきたいのは、これらは申告期限「および」納付期限の延長申請ということです。つまり、この方法によって、申告をした瞬間に、その日が申告期限となり、同時に、納付期限となります。ですから、金融機関で納付するつもりで、今日夕方に延長申請とともに申告をすると、その瞬間にその日が納付期限になる一方で、もう金融機関が営業していませんから、納付期限内に納税できないという「詰んだ」状態になります。

これを避けるためには、予め納税を済ませた上で延長申請および申告を行う、もしくは、常におススメなのは、預貯金口座からの振替納税とすることです。今回延長申請を行った方の預貯金口座からの振替日は、5/31(消費税に関しては5/26)となっています。

もっとも、新規に振替納税の利用を希望される方は、申告の日までに所轄の税務署へ「預貯金口座振替依頼書」を提出する必要があるため、やはり詰んでしまうのですが…。今日であれば、まだ2営業日ありますから、早々に預貯金口座振替依頼書を提出する、あるいは予め金融機関で納付するなど、打つ手はあります。これが最終日の4/15(金)になると本当に詰みかねないので、くれぐれもご注意ください。
posted by 岡本浩一郎 at 17:37 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月11日

そろそろ最後の追い込み

4月も中旬になりました。何かお忘れではありませんか? そう、確定申告の(個別延長後の)期限が4/15(金)ともうすぐそこまで迫っています。もともとの期限である3/15までに申告を済ませていない方は最後の追い込みが必要なタイミングです。ちなみに、e-Taxの接続障害で期限内に電子申告ができなかった場合には、その旨を申告書の特記事項へ記載することで、期限後の申告が認められていますが、その措置も4/15(金)までとされていますので、注意が必要です。

ところで申告と言えば、来年1月から申告書に大きな変化があります。とは言っても、本ブログを読んでいただいている方にはあまり影響はないと思いますが。

大きな変化と言いつつ、あまり影響はないとは、何なんだと思われるかもしれませんが、来年(2023年/令和5年)1月より、確定申告書Aが廃止され、確定申告書Bに統一されるのです。

ご存じの方も多いかと思いますが、所得税の確定申告書には申告書Aという様式と、申告書Bという様式が存在します。この二つのうち申告書Bが基本となり、給与所得だけではなく、事業所得や譲渡所得などすべての所得に対応しています。これに対し、申告書Aは、申告する所得が給与所得や公的年金等・その他の雑所得、総合課税の配当所得、一時所得のみの方が使用できる(要は会社員と年金受給世代向け)いわば簡易版です。

事業所得については申告書Bでしか対応していないため、弥生シリーズでは申告書Bの様式のみに対応しています。このため、弥生のお客さまへの影響はないということになります。

実は申告書Aと申告書Bの一本化への布石は少し前から打たれていました。2020年(2019年分/令和1年分)の申告書Bでは、一枚目(第一表)の左下にある所得から差し引かれる金額(所得控除)の項目が大きく見直しになりました。項目が新しく追加になったわけではないのですが、並びが大きく変わり、途中に「(10)から(20)までの計」という小計行が追加されました。これは実は申告書Bの所得控除の記入欄を申告書Aに合わせたものです。

つまり申告書Bの所得控除の記入欄を申告書Aに合わせ、より簡易的な記入(給与所得があり年末調整を受けた方で、年末調整で適用された控除のままでいいという方は、小計行だけ記載すれば、生命保険料控除などの内訳を書かなくてもよい)を認めるようにしたのが第一ステップ。それを受けての第二ステップということで、来年から申告書Aを申告書Bに吸収するということです。

これまで申告書Aと申告書Bの二つが存在し、国税庁として両方の準備が必要だったわけですが、来年からは一つだけ準備すればいいということになり、大きく省力化されることになります。国税庁の申告作成コーナーでは、必要な項目のみ記入する方式となり、紙の様式の重要性が相対的に下がってきました。結果的に、できるだけ簡素な様式で確定申告のハードルを下げるという役割を担ってきた申告書Aですが、その役割を終えたということなのかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:39 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年03月15日

波乱の最終日

今年もこの日がやってきました。そうです、今年の確定申告期限(正確にいえば所得税の期限)は本日までです(ただし、今年は新型コロナウイルス禍の影響を受け、簡易な手続きで申告期限の延長が認められています)。先週末から追い込みをかけてなんとか終わったという方も多いかと思います。

一方で、昨日e-Tax(電子申告)をしようとしてエラーになっている方もいらっしゃるのではないかと思います。既に報道されていますし、国税庁からもアナウンスされていますが、昨日より、国税庁のe-Taxシステムで接続障害が発生しています。やよいの青色申告 オンライン(やよいの白色申告 オンライン)もしくはやよいの青色申告 22でe-Taxしようとする際には、この国税庁のe-Taxシステムに接続を行うため、「e-Tax受付システムへのログイン時に致命的なエラーが発生しました」といったようなエラーが発生する可能性があります。

ある意味厄介なのは、100%の確率でエラーになるということではなく、エラーになるケース、エラーにならないケースが存在するようです。今朝の時点でも、国税庁から「断続的につながりづらい状態が発生しており、未だ障害原因の解明には至っておりません」と発表されています。弥生側から見えるエラーログや、お客さまからのお問合せ状況を見ても、障害はまだ続いていると判断しています。

一方で今日が最終日ということで、どうするか、ですが、国税庁からはこの e-Tax の障害により期限内の申告が困難な場合には、1) 本日中に書面により提出する、もしくは2) 個別に申告期限を延長して、後日提出するという二つの選択肢が提示されています。

確実に今日中に済ませる場合には1) 書面ですが、この場合、書面で提出しても、電子申告等の優遇措置が受けられるかどうかが判然としていません。e-Taxで申告をするつもりが、障害でe-Taxが使えずに書面で提出するのですから、優遇措置を適用すべきだと思いますが、その可否は現時点で明らかになっていません。

このため、弥生としては、2) e-Taxによる後日提出を推奨します。この場合には、申告書の特記事項欄に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」である旨を記載した上で送信する必要があります(弥生製品での対応方法はこちらをご参照ください)。実は、これは新型コロナウイルス禍の影響で個別に申告期限の延長が認められる際と同じ方法です(こちらは、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載することになっています)。

では後日というのはいつなんだ、ということになりますが、国税庁から障害回復の一報があるまでは待った方がいいと思います。多くの方が送信できないと何回もリトライすることによって、トラフィックが通常より増え、結果的に障害回復の妨げになっているものと思われるからです。上記のように後日提出が認められた以上、一旦リトライを止めて、国税庁の障害回復を待ちたいと思います。弥生としても状況を継続的に確認し、情報を発信していきます。

なお、このような状況で、申告は済ませたはずだけれど、本当に申告が受け付けられているかどうか不安という方もいらっしゃるかと思いますが、メッセージボックスを確認すれば、申告が正常に受け付けられているかどうかの確認ができます。ただ、今回の障害でメッセージボックスの確認自体もできない状態です。こちらも障害が解消されてから、メッセージボックスを確認、万が一申告が正常に受け付けられていないようであれば、上記のように「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」と補記した上で再度申告を行うことになるかと思います。

なお、もともとe-Taxではなく、紙での申告を予定していた方は、今回の障害によらず、本日が期限となります。一番簡単なのは、本日の消印で郵送することです。ただ、新型コロナウイルス禍の影響で、郵便局の夜間窓口の営業時間が短縮されていることが多いので、本日の消印での郵送を考えている方は、この段階で提出を予定している郵便局に電話し、何時までであれば本日の消印が得られるか確認しておくことをお勧めします。
posted by 岡本浩一郎 at 15:27 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月18日

透ける狙い

今週は今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししています。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少なめ。ただ少ない中でも、目立つのが区分欄の増加ということを前回お話ししました。近年区分が増えている背景には、税制の複雑化があるとも。

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もっとも今回追加された区分欄は全て申告書左上の「収入金額等」のエリアなのですが、このエリアでの追加には税制の複雑化という以上に、国税庁として何を注視しているかが表れているように思います。

わかりやすいのが、「雑」「その他」という行の区分欄ですね。雑所得がこれまで「公的年金等」と「その他」の2行だったものが、昨年の申告書から「公的年金等」「業務」「その他」の3行に分かれたのには、ここでいう業務に該当する「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」を今後はしっかりと見ていきますよという国税庁の意志の表れではないかということを昨年お話ししました

今回は「その他」の行に区分欄が新設された訳ですが、それではこの区分欄に何を記入するのかと手引き(pdf)を確認してみると、「個人年金保険に係る収入がある場合は「1」を、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」を、個人年金保険に係る収入及び暗号資産取引に係る収入の両方がある場合は「3」を記入します」とあります。暗号資産(仮想通貨)取引というと、国税庁が申告漏れや不正確な申告に目を光らせているのは周知の事実。これまでの申告書では、雑所得があることはわかっても、その内訳がどうなっているかは曖昧だった(厳密に言えば、第二表で所得の内訳を記入することは求められてはいましたが、この欄はややアバウトなので)のですが、今後はこの区分欄でビシッと特定されることになります。結果的に、暗号資産取引による雑所得がある場合には、通常より丁寧に見られることになるのでしょう。

不動産所得の収入で新設された区分欄のうち「区分1」は、手引きによれば「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(措法41の4の3)の適用がある場合は、「1」を記入します」とありますので、これも国外中古建物が注視されていることの表れですね。

では、事業所得の「営業等」収入の区分、「農業」収入の区分、そして不動産所得の収入の「区分2」は何を注視しているのかというと、実は、帳簿の付け方なのです。これらの区分には「1」から「5」までの区分を記入するのですが、これは手引きで以下のように解説されています。

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電子帳簿保存法というと耳馴染みはないかもしれませんが、実は全事業者に影響が及びうるということを昨年お話ししました(結果的には2年間の猶予期間が設けられたということも昨年末にお話ししました)。

今回、こういった区分が設けられたということは、国税庁がどのように帳簿を付け、保存するのかということに関心を持っているということの表れです。もちろん弥生を使っていれば、少なくとも「2」(会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合)に該当しますので、国税庁から見ても、「ああちゃんとした帳簿付けをしていますね。よろしい。」ということになるものと思いますが(笑)。

申告書全体から見ればほんのわずかな変更点ですが、毎年確定申告書を睨んでくると、こんなことが浮かび上がってくるのです。職業病だと思いますが、なかなかマニアックなことは自覚しております(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:37 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月16日

増え続ける区分

いよいよ本日から確定申告が始まりました。朝一番でカスタマーセンターのメンバー全員にZoomで激励のメッセージを伝えたのですが、皆やる気満々です。お話しした通り、今回も新型コロナウイルス禍の影響で、簡易な手続きで個別に申告期限の延長が認められますが、あくまでも原則的な期限は3/15(火)。このため、お問合せとしても4月までダラダラ続くのではなく、2月後半から3月中旬にピークとなるのではないかと考えています。お客さまに早く確定申告を終え、ホッとしていただけるよう、しっかりサポートしていきます。

さて、前回は、今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししました。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少ないとお話ししました。数少ない変更点ですが、目立つのが区分欄の増加です。

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前回もご覧いただきましたが、こちらが今回(令和3年分)の確定申告書の様式です(正確には申告書Bの第一表)。収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄があることがわかります。

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一方でこちらは20年前、平成13年(2001年)分の確定申告書です。これを見ると、区分という欄はほとんどないことがわかります。様式は左右二段組みになっていますが、右側には2ヶ所区分欄が存在しているものの、左側には区分欄は存在していません。

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続いてこちらはぐっと今に近付いて平成27年分。区分という欄が少し増えています。右側に2つ増え、左側には新たに2ヶ所(給与所得、配偶者(特別)控除)の区分欄ができています。ここで改めて一番最初にお見せした令和3年分を見ると、特に左側で区分欄が増えていることがわかります。昨年(令和2年分)から今回(令和3年分)だけでも5ヶ所(事業収入で2ヶ所、不動産収入で2ヶ所、雑収入で1ヶ所)増えています。

なぜ区分が増えるのか、というと単純に言えば、税制が複雑化しているからです。税制が複雑化する一方で、申告書のページ数を増やせないことが区分欄の増加につながっています。

わかりやすい例で言えば、医療費控除欄にある区分ですが、これはセルフメディケーション税制に伴って生まれた区分です。医療費控除は、支払った医療費が一定の金額以上ある場合に認められる所得控除ですが、この特例として、支払った特定の医薬品の購入費が一定額(12,000円)を超える場合の控除を得られるという制度(セルフメディケーション税制)が平成29年分から認められるようになりました。

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の両方で控除を受けることはできず、どちらかを選ぶ必要があるのですが、そのどちらかを医療費控除欄に記載することになります。この際、セルフメディケーション税制の場合には、区分に「1」と記載することによって、セルフメディケーション税制の適用を受けていることを示すことになります。要は、医療費控除とセルフメディケーション控除という二つの行を作る代わりに、区分という欄が使われているということです。

(元)エンジニアとして、ツボにはまるのは、給与所得欄にある区分です。この区分はなぜか3つ(3マス)あります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、この区分は、特定支出控除を受けていることを示すものです。給与所得がある人は、個人事業主のように本を買ったり、会食をしたりということで自分の意思で経費を計上することは認められていません。そのかわり、必要経費に該当する金額ということで、給与所得控除というものが自動的に認められます。それでも、給与所得控除では収まりきらない経費もありうるということで、かなり厳しい条件のもとで認められるのが特定支出控除です(要件がかなり厳しいので、ほとんど使われることはないというのが実態ではありますが)。

特定支出控除には、9つの区分(例えば、区分4: 研修費や区分8: 資格取得費など)があるのですが、どの区分の適用を受けているのかを示すために、適用を受けている区分の番号を足した数字を、確定申告書の給与所得欄の区分に記載する必要があります。番号を足してどの区分の適用を受けているのがなぜわかるのか、と思いますが、実は、区分の番号は、「1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256」という一見脈略のない数字がふられています。わかりますか? そうです、これは2進数。ですから、足した数字が25であれば、これは区分1と区分8と区分16の適用を受けているということが一意で特定できるのです(要は9ビットのどの桁が1になっているかということです)。もうおわかりかと思いますが、9つの区分全ての適用を受けたとすると合計が「511」になりますから、給与所得欄の区分は3マスあるということです。

2進数の考え方で9つの区分を特定できるようにする仕組みは、個人的にはよく考えたなと思います。エンジニアであれば、ニヤリとすることは間違いないでしょう。ただまあ、正直わかりにくいですよね。

前置きが長くなりましたが、次回は、今回の申告書で追加になった区分についてお話しします。
posted by 岡本浩一郎 at 22:21 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月14日

間違い探し

いよいよ今週から確定申告の期間が始まるということで、毎年恒例にはなりますが、本ブログでも確定申告について熱く語ってみたいと思います。ということで、まずはこちらをご覧ください。今回の確定申告(令和3年分)の確定申告書の様式です。正確には確定申告書には申告書Bという標準版と申告書Aという簡易版がありますが、これは申告書Bの第一表(=1ページ目)になります。

(令和3年分) 2022021401.png

一方でこちらは令和2年分の様式。どこが違うでしょうか。

(令和2年分) 2021012901.png

昨年の令和2年分は、その前年の令和1年分と比べて、10年に一度のレベルの大幅変更でした。逆に今年は、昨年が大幅変更だっただけに、変更量としては小さめです。昨年がメジャーバージョンアップであれば、今年はマイナーバージョンアップと言ってよいかと思います。例年、様式が公表され次第、どこがどう変わっているかを徹底的に精査するのが、毎年の確定申告機能提供の第一歩となるのですが、今年は変更量が小さく安心しました。

とはいえ、ボリュームとして小さいとはいえども、変更は変更です。どこが変わっているかわかりますか?

パッと目に付くのは右上で、不自然な空白がありますね。そう、氏名の横です。そうです、ここは昨年までは押印欄でした。まだ記憶に新しいところですが、菅政権において意味のない押印をなくそうという動きがみられました。これはもちろん歓迎すべきことですし、実際に、一昨年12月には「提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、次に掲げる税務関係書類を除き、押印を要しないこととする」という方針も示されました。その一方で、おそらく作成のタイミングの問題だと思いますが、昨年の確定申告書については、まだ押印欄が残ったままでした。結局、昨年の確定申告書については、押印しなければならないのか、しなくてもいいのか宙ぶらりんな状態でした

今回の確定申告書については、晴れて押印欄がなくなり、押印が必要ないことが明確になりました。それでも、いかにも押印欄のスペースがぽっかり空いているのにはちょっと違和感がありますね。

押印欄はわかりやすいところですが、他にもよく見てみると区分という入力欄(例えば、収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄が追加されています)が増えているのがわかるかと思います。区分という入力欄は、かつてはほとんど使われていなかったのですが、ここ数年、税制が複雑化する & 求められる情報量が増える中で、格段に増えてきています。この区分については、次回もう少しお話ししたいと思います。
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2022年02月10日

確定申告に向けた準備

自分の会社の決算に目処が立ったということで、いよいよ私個人の確定申告の準備に取り掛かりたいと思います。とはいえ、いきなり確定申告書に着手するのではなく、まずは確定申告に必要な書類の整理から。

私の場合、まず整理するのは、生命保険料控除を受けるための生命保険料控除証明書と地震保険料控除を受けるための地震保険料控除証明書です。これらは一般的に秋に送られてくるのですが、その時点では確定申告までまだ時間があるが故に、いざ確定申告の準備というタイミングでは、あれ、どこに行ったのとなりがちです。そのため、数年前から確定申告準備用の書類ケースを用意してあり、届いたタイミングでそこに放り込むようにしています。この他、源泉徴収票など、確定申告で必要なものは、入手したタイミングでこの書類ケースに入れるようにしています。ということで、この書類ケースを確認すると、あったあった、ありました。

次は、医療費控除を受けるための医療費の領収書。これは、病院に行った際や、あるいは薬局で薬を買った際に領収書を入れる箱を、上記の確定申告準備用の書類ケースとは別に用意してあります。家族が病院に行った際や、あるいは薬局で薬を買った際には、領収書をここに入れておいてとお願いしてあるわけです(ちなみに、どこかに行ってしまいがちな病院の診察券もこの箱に入れてあります)。新型コロナウイルス禍で、出歩く機会が減ったこと、そしていつも感染対策を行っていることもあり、ここ2年間は驚くばかりに体調を崩すことがありません(例外は、トライアスロン出場前に体調を崩した時でしょうか)。このため、今回の医療費の領収書の枚数はかなり少なめ。良いことのはずですが、得られる控除が少ないのは微妙に残念です(苦笑)。

そして最後は、寄附金控除を受けるための寄附金の領収書。寄附金の領収書には、ふるさと納税の領収書も含まれます。医療費の領収書の枚数は減りましたが、ふるさと納税をそれなりに活用していることもあって、寄附金の領収書の枚数はそれなりです。

ただ、実は今回の確定申告から、ふるさと納税について、寄附先の自治体から発行される領収書を一枚一枚集める必要がなくなりました。もちろんこれまで通り、各自治体の領収書を集めてもいいのですが、もう一つの方法として、国税庁長官が指定した特定事業者が運営するふるさと納税サイトでの寄附について、その特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を利用できるようになりました。これはいい仕組みだと思います。特に一つのふるさと納税サイトでまとめて寄附をしている方だとだいぶ楽になるのではないかと思います。

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ということで、この寄附金控除に関する証明書をどのように入手するのか確認してみたのですが、その手続きはふるさと納税サイトによって違いがあるようです。この寄附金控除に関する証明書は紙とは限らず、電子データもあります(というよりは国としては電子データがおススメのようです)。例えば、ふるさとチョイスでは電子データが基本となっており、紙で必要な場合には、この電子データを国税庁が提供する「QRコード付証明書等作成システム」にアップロードして、PDFを生成するという一手間かかる仕組みになっています。これに対し、さとふるも電子データが基本ではありますが、申し込みをしておけば、さとふるから郵送で証明書が届くようにもできるようです。ちなみに、いずれの場合も、申し込みから証明書の発行には多少時間がかかるようです。ですので、申告期限ギリギリでは間に合わない可能性もありますから、早めに準備しておきたいところです。

私はどうするかというと、一部の寄附(特に返礼品を求めないもの)について、直接その自治体に連絡をとって寄附をしているケースが複数あります。昨年で言えば、岩手県、宮城県、福島県、横浜市、湯河原町に対する寄附がこれにあたります。この場合にはふるさと納税サイトを通していないので、ふるさと納税サイトによる寄附金控除に関する証明書ではカバーできません。そのため、従来通り各自治体からの領収書をとりまとめるか、あるいは組み合わせるのか、少し迷うところです。
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2022年02月03日

申告期限の事実上の延長

本日、今年の所得税の確定申告期限について、国税庁から発表がありました(pdf)。今年の所得税の確定申告期限は事実上一ヶ月間延長され、4/15(金)となります。実はこれは想定通り。というのは、昨年も申告期限が延長されましたが、それが発表になったのが2/2だったからです。つまり、今年もほぼ同じタイミングで発表になったということです。足元の新型コロナウイルス禍の状況を鑑みると、延長せざるを得ないだろうというのも、またその延長幅が一ヶ月であろうというのも、やはり想定通りです。

ただ、正確に言えば、昨年の延長と今年の延長では違いがあります。昨年は緊急事態宣言の期間が確定申告期間と重なるということで、無条件での延長でした。ですから、延長された期間内に提出する際には、特段の手続きは必要ありませんでした。これに対し、今年は、「新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方」のための手当てとして、簡易な方法で延長を申請できる、とされています。

要は昨年は緊急事態宣言があり、誰にとっても申告期限内に申告をすることが難しいであろうから、何ら手続きの必要がなく無条件の延長となった訳ですが、今年に関しては(おそらく現時点では緊急事態宣言が発出されていないからだと思いますが)、全体としての申告期限は変わらない、ただし、申告期限内に申告をすることが難しい人については、簡易な手続きで個別に延長を申請できるということになっています。延長ではありますが、無条件ではなく、条件付き、もっとも、誰でもができる簡易な手続きなので、「事実上の」延長と言えるかと思います。

手続きといっても、簡易な手続きということで、予めの申請は必要ありません。申告書を提出する際に、申告書の余白等に新型コロナウイルスの影響により延長を申請する旨を記載すればよいとされています。

具体的には、申告書を紙で提出する場合には、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載する必要があります。また、e-Taxで提出する場合には、特記事項として、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

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もちろん、やよいの青色申告 22でも、やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンラインでも特記事項への入力が可能になっています。本来の申告期限(3/15)から、(事実上の)延長後の期限(4/15)の間に申告される際には、特記事項への入力(紙の場合には、余白への記載)を忘れずに。

もっとも、当たり前ですが、本来の申告期限(3/15)までに申告を終える分には何の手続きも必要ありません。今回、申告期限の事実上の延長が認められたことは良いことだと思いますが、それで安心してずるずると先延ばしにするのではなく、できるものはさっさと終えてしまいましょう。
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2021年12月10日

与党税制改正大綱 2021

つい先ほど、与党税制改正大綱が公表されました。この先の税制がどのように変わっていくのか、毎年ワクワク(?)しながらその公表を待つのですが、今回は、全事業者に直ちに影響を与える内容が含まれているということもあって、かなりハラハラ(?)しながら公表を待っておりました。

全事業者に直ちに影響を与えるというのは、誇張ではありません(来年1月からですから、直ちにというのは少し誇張ですかね)。それは、本ブログでも取り上げてきている改正電子帳簿保存法に関するもの。その影響度を鑑みるとひっそりとという感じではありますが、大綱も終盤のP90「六 納税環境整備」「5 その他」に記載されていました。

(8)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用する。
(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする。

ああ、よかった。これで全事業者が泣いた、ではなく、全事業者がホッと来年の一月を迎えることができます。事前の報道でその可能性が示唆されていた事前の届け出も「手続を要せず」と明確にその必要性が否定されています。詳細は、今後、弥生の「電子帳簿保存法あんしんガイド」でお伝えしたいと思いますが、要はこの先2年間は、これまで通りの運用(紙出力して保存)でも問題はないということです。

もちろん、業務の効率化の観点で電子化、そしてデジタル化は進めるべきもの。来年1月という無理なスケジュールではなく、もう少し時間をかけながら、弥生はお客さまが無理なく対応でき、なおかつ業務効率化を実感できるようにしていきます。
posted by 岡本浩一郎 at 18:12 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年12月06日

さらに一歩前進

既にご存じの方も多いかと思いますが、今朝の日経新聞朝刊一面で「電子保存義務化 2年猶予」という記事が掲載されました。これは先月お話しした改正電子帳簿保存法(電帳法)に関するものです。記事によれば、「政府・与党は2022年1月に施行する電子帳簿保存法に2年の猶予期間を設ける」とのこと。

全事業者に影響があり、なおかつ来年1月には対応しなければならない、つまりあまりにも時間がないという改正電帳法の問題点については以前お話しした通りですが、それに対して先月半ばに国税庁のQ&Aが更新され、この中で、書面保存を継続しても直ちに青色申告の承認取り消しとはならないことが明確化され、一定程度解消されました。ただ、Q&Aというのはあくまでもガイドラインであり、法的な拘束力はありません。その点、今回報道された「近くまとめる22年度与党税制改正大綱に盛り込み、年内に関連の省令を改正する」というのはさらなる前進です。

とは言え、より具体的な内容については、早合点するのではなく、税制改正大綱を待ちたいと思います。今回の電帳法改正は大部分が要件緩和であり早期の施行が望まれるものですから、全体としての改正電帳法は予定通り来年1月に施行されるものと思います。この施行によって、電子取引に関する改正事項(具体的には適正な保存を担保する措置)に関しては、これまで認められていた措置(申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置)を廃止されるが、それが猶予される。つまり結果的にこれまで通り出力書面等を保存すれば問題はないということかと思います。

もっとも、その際にどういった条件が付くのかは明確になっていません(記事では事前に届け出が必要とも読める表現がありましたが、わざわざ届け出を求める必然性はあるでしょうか)。これらは例年通りであれば今週後半にも公表される与党税制改正大綱でより明らかになるでしょう。

そういった意味で、現段階では具体的な内容よりも、2年間という明確な期間が示されたということが非常に大きな前進だと思います。この2年間の中で、以前お話ししたより本質的な課題、1) 構造化デジタルデータによって業務の効率化を実現すべきという点、2) 保存したデータの移管が一定のルールで認められるべきという点、に確実に取り組みたいと考えています。
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2021年11月26日

コロナ禍での税務調査

日経で「シェアリングエコノミーなど申告漏れ201億円 国税庁」という記事が掲載されましたが、これは国税庁が公表した「令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」という資料に基づいたものです。この資料を見てみると、新型コロナウイルス禍によって、税務調査がどのような影響を受けたのかがはっきりわかり、なかなか興味深いです。

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まず端的にわかるのは、実地での税務調査の件数は減ったということ。今回の資料の対象期間は令和2事務年度(2020年7月〜2021年6月)となっていますが、一年前と比べて、実地調査は6万件から2.4万件と約6割減少しています。実地調査というのは、実地に臨場して行う調査ですから、接触そのものを避けなければならない環境下では例年よりも件数が減らざるを得なかったのかと思います。ただ一方で、納税者宅等に臨場することなく、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接による「簡易な接触」の件数は、37.2万件から47.8万件に増加しています。実地調査がやりにくい分、簡易な接触を増やしたということでしょう。結果的に簡易な接触も含めた広義での税務調査の件数は43.1万件から50.2万件にむしろ増えています。

調査対象となった50.2万件のうち、申告漏れ等の非違があった件数は27.9万件。つまり率で言えば55.6%。結構な確率で何らかの問題は見つかるということですね。特に実地調査では2.4万件中2.1万件、率で言えば87.4%というかなりの確率です。

ちなみに、私も税務調査(実地調査)を受けたことがありますが、結果はお咎めなし。無事に「更生決定等をすべきと認められない旨の通知書」を受け取ったことを本ブログでお話ししています。ですので、一度実地調査が入れば、何らかの問題が見つかる可能性は高いものの、決して100%ではないことは私が身をもって証明しています(笑)。

今回の資料では、トピックスとして、富裕層に対する調査状況、海外投資等を行っている個人に対する調査状況、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査状況、そして無申告者に対する調査状況を深掘りしています。要は税務署としてどの領域に特に目を光らせているか、ですね。海外投資等を行っている個人も含め富裕層というのはわかりやすいターゲットですし、そもそも申告すべきものを行っていない無申告者というのも同様です。その中で、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人について取り上げているのは注目に値するかと思います。

シェアリングエコノミー等というとわかりにくいですが、注記としてシェアリングビジネス・サービス、暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を総称した経済活動のこととされています。要はインターネットを介し、一般的には捕捉しにくい経済活動ということになります。

これらの領域については、重点的な税務調査の対象になり始めているということはこれまでも言われていましたが、今回の資料からも、税務署としてかなり本気で取り組んでいることがわかります。この領域での実地調査は1,071件、そのうち89.9%にあたる963件で申告漏れ等が指摘されています。一件当たりでは、申告漏れの所得金額は1,872万円、これに対して追徴税額は494万円だそうです。

一件当たりで1,872万円というと随分儲けているんだな、と思われるかもしれません。随分儲けている人だからこそ、実地調査を受けるんだろうとも思われるかもしれません。ただ、実はこれは一年分ではありません。私が調査を受けた時は3年分の所得に対する調査でしたし、一般的には5年程度の申告漏れは指摘されうるとされています。仮に3年分だとすると、一年600万円強ということになります。

これは(意図したかどうかは別として)申告漏れがあったとして、一年間何も言われなかったら安心していいという訳ではないということです。むしろ、怪しくても、何年間かは泳がせて、その後に税務調査に入るともいわれています。調査を行う立場からすると、一回の調査で一年分の申告漏れを指摘して終わりよりは、数年分の申告漏れを指摘した方が効率はいいですからね。

弥生をご利用の方はちゃんと申告をされている方ばかりなので、安心してこういった記事を書けますが(笑)、身に覚えがある方は、早めに自発的に申告されることをおススメします。
posted by 岡本浩一郎 at 18:17 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年11月17日

改正電子帳簿保存法の課題と解消の方向性

前回は来年一月に施行される改正電子帳簿保存法について強い懸念を抱いていること、それに対し直近で懸念を一部解消する動きがあったことをお話ししました。ここでの懸念は全事業者に影響があり、なおかつ来年1月には対応しなければならない、つまりあまりに時間がないことでした。この懸念については、国税庁のQ&Aによって、書面保存を継続しても直ちに青色申告の承認取り消しとはならないことが明確化され、一定程度解消されました。

しかし一方で、今回の改正電子帳簿保存法には、より本質的な課題もあります。それは、1) 全事業者に影響を与えるものの、ほとんどの事業者にとってメリットがないこと、そして2) データの移管の仕組みが整備されていないことです。これらはいずれも解消すべきですし、官民が協力すれば解消は可能だと考えています。

まず1)ですが、今回の改正電子帳簿保存法は、その大半が帳簿や証憑を電子的に保存したい事業者にとっての要件緩和であり、電子的保存を希望される方には明確なメリットがあります。しかし一方で、電子取引に関しては、これまで認められていた措置(電子取引の記録を紙に出力して保存すればいいとする措置)を廃止するものであり、これは全ての事業者に影響を与えます。しかもこの措置の廃止は何ら明確なメリットはありません。紙で出力しない代わりに保存すべきものとして想定されているデータは、PDFであったり、場合によって画面のスクリーンショットです。これらは構造化されたデータではない(画像のようなもの)ので、このデータを使って後続業務の自動化・効率化を実現することはできません。所詮紙の電子化に過ぎないということです。

本来は、売手は構造化されたデータを提供する、買手はそれを保存することにより、そのデータを経費精算や会計処理に直接的に活用できるようにすべきです。これによって、単なる紙の電子化ではなく、業務の効率化を実現できます。そういった意味では、今回の改正電子帳簿保存法は、買手に電子データとしての保存を義務付けている訳ですが、本来は、売手に構造化されたデジタルデータとしての提供を義務付ける(少なくとも促す)ことが先であるべきだと思います。

これは(画像ではなく)構造化されたデジタルデータとしての電子レシートの普及を図ることと同義です。2023年10月にはインボイス制度が導入されますが、この際の対象はいわゆるB2B取引だけではなく、B2C取引も含まれます。弥生はEIPA(電子インボイス推進協議会)の代表幹事として主にB2B取引で活用される適格請求書のデジタル化に取り組んでいますが、同時に、B2C取引で活用される簡易適格請求書(簡単に言えばインボイス制度の要件を満たしたレシート)のデジタル化も必要だと考えています。簡易適格請求書がデジタルで一般的に提供されるようになれば、買手としてそれを保存するだけではなく、その後の後続処理の効率化が実現できるはずです。

次に2)ですが、今回の改正電子帳簿保存法は一度電子的に保存したデータの移管を想定していません。結果として事業者の選択の余地を極端に狭めることになります。実務上は、当初は自社でファイルサーバーなどに保存していただけども、その後クラウドベースで保存するシステムを導入することも考えられ、その際には当然、自社で管理していたデータをクラウドのシステムに移管したいというニーズがあるはずです。あるいは、クラウドベースのシステムにしても、A社のシステムを利用し始めたものの、使い勝手が悪い、あるいはコストが高いなどの理由でB社のシステムに移行したい、その際にはA社で保存していたデータをB社のシステムに移管したいということもあるでしょう。

逆にデータから紙にせざるを得ないケースもあると考えています。具体的には事業を廃業する際です。事業を廃業するからといって、帳簿や証憑をすぐに廃棄していい訳ではありません。一般的には廃業後も7年間は保存しなければなりませんが、事業を廃業した以上、コストをかけてクラウド上に保管し続けることは現実的ではありません。このため、一定の条件下で、データを紙出力し、紙での保存を認める必要もあるのではないかと考えています。

これらのデータの移管については、今回の改正電子帳簿保存法で明示的に禁止されている訳ではありません。ただ、弥生から国税庁に問合せたところ、現時点では移管は原則として認められないという回答でした。もっとも、問題として捉えており、対応を考えているとのこと。

幸いにして1)にしても、2)にしても、解決できない課題ではありません。今回、直ちに青色申告の承認取り消しとはならないということが明確にされたことを活かし、官民連携で1)と2)の課題の解消を目指すべきだと考えています。1)と2)が解消されれば、事業者としても単に手間が増えるのではなく、デジタル化にとって業務効率化につながることになりますし、また、下手なシステムを導入してベンダーロックインに陥る懸念も解消されます。結果的に、事業者として安心して、むしろ積極的に対応しようとなるのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 23:01 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年11月15日

改正電子帳簿保存法

弥生は2023年10月に始まるインボイス制度に向けて、誰でもが容易に使える標準的な電子インボイスの仕組みを整備することにより、法令改正をむしろ業務効率化の機会にしようという取り組みを進めています。

一方で、実は来年1月にも全事業者に影響を与えうる法律が施行されることになっており、今のままでは事業者の対応が間に合わないと強く懸念していました。その法律とは、電子帳簿保存法(電帳法)です。電帳法とは、所得税法や消費税法といったメジャーどころと異なり、知る人ぞ知る法律かと思います。これは税務申告に必要な帳簿や証憑を電子的に保存したい場合に満たすべき要件を定めた法律であり、結果的に帳簿や証憑を電子的に保存したいという事業者のみに影響があるものでした。

しかし、実は来年1月に予定されている改正で、一部の事業者のみに影響があるものから、全ての事業者に影響が及びうるものとなっています。改正の多くは、電子的な保存の要件を緩和するものであり、その要件緩和を実際に活用するかどうかは事業者に委ねられています。しかし実は、改正のうち、電子取引に関する改正事項(具体的には適正な保存を担保する措置)に関しては、これまで認められていた措置(申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置)を廃止するものであり、全ての事業者に影響を与えるものです。これまではとりあえず何でも紙で保存していれば万能だったわけですが、来年1月以降は電子取引に関しては紙での保存ではなく、電子データとして保存しなければならなくなります。

電帳法という知る人ぞ知る法律が、いつの間にか全事業者に影響を与えうるものになっていたわけです。しかもその改正が施行されるのは来年1月。弥生としても事業者の皆さまに告知すべく色々と準備を進めてきたものの、事業者の対応として来年1月は到底間に合わないと非常に強い危機感を持っていました。

今回、弥生PAPカンファレンス 2021秋において、多くの弥生PAP会員から改めて強い懸念を共有いただいたことから、弥生として問題意識を共有する3社(*)と共同し、10月から11月にかけて、財務省および国税庁に働きかけを実施しました。この結果、幸いにして、懸念を一部解消する進展が見られました。

11月12日(金)に国税庁より「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)〜令和4年1月1日以後に保存等を開始する方〜」に関する「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(pdf)が公開され、この中で、以下のように記載されています。

補4 一問一答【電子取引関係】問 42
【補足説明】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務に関する今般の改正を契機として、電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合には、その事実をもって青色申告の承認が取り消され、税務調査においても経費として認められないことになるのではないかとの問合せがあります。
これらの取扱いについては、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。

誤解のないようにお話しすると、弥生が一回申し入れしただけで今回の対応が速やかになされたわけではありません。今回の電帳法改正は大部分が要件緩和であり、その中に一部義務化(措置の廃止)が含まれていたわけですが、財務省/国税庁としても要件緩和と義務化を同じ期間で施行させることに無理があったという認識を既にお持ちであったということかと思います。既にそういった問題認識をお持ちの中で、弥生ほかによる働きかけがあったことから、まずはQ&Aの形で速やかにご対応いただけたものと理解しています。

ひとまず事業者の皆さまが来年1月に向けて付け焼刃的かつ非合理的な対応を強いられる、もしくは、青色申告承認の取り消しの危機にさらされるということがなくなり、ほっとしています。ただ、電子化にとどまらず、業務の効率化につながるデジタル化は、本来着実に進められるべきものだと考えています。本来あるべき姿に向かって、弥生として引き続きフォローアップしています。

(*) ご賛同いただき、ご協力いただいたのは、SAPジャパン株式会社株式会社オービックビジネスコンサルタントピー・シー・エー株式会社の3社です。
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2021年09月24日

何がインボイス(適格請求書)なのか(その2)

前回は納品書と合算請求書(月締請求書)それぞれについて、何をもってインボイスとなるのかについてお話ししました。納品書や請求書という名称自体は実は何の意味もありません。名称によらず、[1] インボイスに記載が必要な事項が満たされており、仕入税額控除の適用ができる、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書である、ものがインボイスとなります。

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では、今度は前回と異なるパターンを見てみましょう。まずはこちら。これは前回の一つ目の例とほとんど同じです。名称は納品書。ただ、前回の例と異なるのは、前回は税額に関する記載がない(結果的に総請求額も記載されていない)のに対し、今回は税額に関する記載があり、総請求額も記載されているということです。

結果的にこの納品書は、インボイスに記載が必要な事項である、以下の6つを全て満たすことになります。

(1) 売手(適格請求書発行事業者)の名称および登録番号
(2) 取引年月日
(3) 取引内容(軽減税率の対象品目であればその旨を明示)
(4) 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
(5) 税率毎の消費税額
(6) 買手の名称

ですので、名称としては同じ納品書ですが、前回の例と異なり、今回の納品書はインボイスになりえます。インボイスです、と断定はせず、インボイスになりえます、というやや曖昧な言い方をしましたが、これはもう一つの条件である[2] 買手に支払いを求める文書であるかどうかで左右されます。名称としては納品書であっても、インボイスに記載が必要な情報が記載されており、この納品書をもって支払いを求めるという合意が売手と買手の間でなされていれば、これはインボイスになります。

いや、ちょっと待ってください。この納品書に対して、このような月単位でまとめた請求書が発行されていたらどうでしょうか。

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これは前回の二つ目の例と同じです。じゃあやっぱり、納品書は納品書であってインボイスではない、その代わりこの請求書がインボイスになるのでしょうか。

実は先ほどの納品書とこの請求書の組合せには問題があります。細かくはまた別途お話ししたいと思いますが、先ほどの納品書とこの請求書でそれぞれ税額の計算を行っているからです。インボイスでは、税率毎に端数処理は1回と決まっています。納品書と請求書でそれぞれ税額の計算を行うと税額に矛盾(一致しない)が発生しえます。前回の例では納品書では税額の計算を行っておらず、合算請求書でのみ税額の計算を行っていました。これであれば矛盾は発生しえないですし、端数処理は1回ですから問題はありません。

2021092402.png

今回の納品書の場合は、こんな「請求書」との組合せであれば問題ありません。

この「請求書」自体では税額の計算を行っていません。納品書で計算された税額を引用し、対象期間で集計しているだけです。ただ、このケースでは、この「請求書」はインボイスにはなりません。この場合は、納品書がインボイス([1] インボイスに記載が必要な事項が満たされており、仕入税額控除の適用ができる、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書である)、逆にこの「請求書」は、名称こそ請求書であっても、実態としては支払案内という位置付けになります。一定期間の間にこれだけの納品があり、それぞれに対し納品書(兼請求書)で請求済みです。ただ、念のために、期間合計を再度送付しますので、お支払いの程お願いします、というものです。つまりこれまでにお話ししてきた月まとめ請求書であり、インボイスではないということになります。

インボイス = 請求書という定義自体は必ずしも誤っている訳ではないのですが、その判断は名称ではなく、記載されている中身で判断することになります。今一度自社が発行している納品書/請求書にどういった情報が記載されているのか、何がインボイスに該当するのか、考えておきたいところです。
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2021年09月21日

何がインボイス(適格請求書)なのか(その1)

前回は、合算請求書(月締請求書)と支払案内(月まとめ請求書)の違いについてお話ししました。合算請求書がインボイスとなるのに対し、月まとめ請求の場合には、納品書がインボイスとなり、月まとめ「請求書」は実はインボイスではないということをお話ししました。月まとめ請求の場合には、月まとめ「請求書」は実はインボイスではない? 一体どういうことでしょうか。

インボイスというのは適格請求書の英語名称ですから、単純に考えれば、「請求書」という名前がついていればインボイス、そうでなければそれはインボイスではない、と判断しがちです。しかしそれは正しくありません。インボイスかどうかは、名称ではなく、どういった情報が記載されているか、また、その用途で決まります。

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まずは、一つ目の例を見てみましょう。B商事株式会社からA株式会社への9/15付けの納品書です。これは納品書であって、インボイスではありません。ただそれは納品書という名前だからではなく、インボイスに必要とされる記載事項が満たされていないからです。

インボイスに記載が必要な事項は、以下の通りです。

(1) 売手(適格請求書発行事業者)の名称および登録番号
(2) 取引年月日
(3) 取引内容(軽減税率の対象品目であればその旨を明示)
(4) 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
(5) 税率毎の消費税額
(6) 買手の名称

一つ目の例を見ていただくと、(1)/(2)/(3)/(4)/(6)については記載がありますが、(5) 税率毎の消費税額が記載されていません。ですからこの文書はインボイスとはなりませんし、この文書をもって仕入税額控除を適用することはできません。

この文書は、基本的に納品内容を買手に伝えるものであって、この文書をもって買手に支払いを求めるものではありません。支払いを求めるのであれば、消費税の額も記載し、その合計の支払いをしてもらわなければなりませんから。すなわち、この文書は、[1] インボイスに記載が必要な事項が満たされておらず、仕入税額控除の適用ができない、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書ではない、から、インボイスではありません。

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次に二つ目の例を見てみましょう。これはB商事株式会社からA株式会社への9月分の納品に対する請求書です。9月中の複数の納品から1つの請求書が作成されていますから、従前からお話ししている合算請求書(月締請求書)です。この文書は、先ほどご説明したインボイスに記載が必要な事項が全て記載されています。先ほどはなかった(5) 税率毎の消費税額も右下に記載されていますね。

また、この文書は買手に支払いを求めるものです。消費税の額も記載されており、支払うべき金額が明確になっています。すなわち、この文書は、[1] インボイスに記載が必要な事項が満たされており、仕入税額控除の適用ができる、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書である、から、インボイスとなります。

次回は月まとめ請求書について、なぜインボイスとならないのか、をお話しします。
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2021年04月15日

最終日 2021

今日は4/15(木)、いよいよ確定申告期間の最終日です。確定申告がまだ終わっていないという方、ラストスパートですよ。毎年最終日には、提出方法についてお話ししていますが、今年からは、青色申告特別控除でプラス10万円の控除が得られることもあり、何と言っても電子申告がおススメです。弥生であれば、簡単に電子申告を行えるe-Taxモジュールもご利用いただけます。

ただ、電子申告を行うためには事前準備(マイナンバーカードの取得など)があり、残念ながら、今日思い立って、今日電子申告という訳にはいきません。となると、税務署への持参か、郵送。持参はわざわざ行かなければならない訳ですから、基本は郵送がおススメです。ただし、郵送は今日の消印である必要があります。

郵送をする際、以前は夜遅くでも大型の郵便局の時間外窓口(ゆうゆう窓口)に持ち込み、今日の消印となることを確認して送付することができたのですが、ゆうゆう窓口の営業時間が新型コロナウイルス禍の影響で短縮されており、注意が必要です。私の最寄りでいえば、横浜中央郵便局になるのですが、確認したところ平日で21時までの受付のようです。確定申告書ではないのですが、私が昨年ゆうゆう窓口で郵便を出そうとしたところ、当時は19時終了となっており、途方にくれた覚えがあります。この4月から一部の局で21時までとなったようですが、郵送を考えている方は、予め最寄りの郵便局の受付時間を確認しておきましょう

万が一郵送が間に合わなかった場合には、税務署の時間外収受箱に、夜中のうちに投函するというのが最終手段でしょうか。あくまで最終手段であり、大丈夫であることを約束できるものではありませんが。

なお、新型コロナウイルス禍による個別の事情がある場合には、申告・納付期限の延長が個別で認められるようです。感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合はもちろんですが、感染症の患者に濃厚接触した疑いがあるため、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けた場合にも、申請すれば延長が認められるようです。この際には、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出する必要があります。

とは言え、よほどの事情がない限りは、期限である今日済ませたいところです。特に青色申告の場合には、折角のメリットである青色申告特別控除は期限内申告でないと認められません。ゴールは目の前。頑張ってください!

PS. 次回からは青色申告という方は、青色申告承認申請書もお忘れなく!
posted by 岡本浩一郎 at 13:37 | TrackBack(0) | 税金・法令