2019年09月13日

一体資産

先月、行きつけのお店で消費税率の引上げと軽減税率導入への準備が進んでおらず、心配だと書きました。このお店は割烹ですから、基本的に外食。外食については、前回お話ししたように、軽減税率の対象とはなりません。ですから少なくとも軽減税率の影響はない…と思いきや、そうではないのです。このお店では、煮豆や栗の渋皮煮(どちらも美味しいですよ)などを持ち帰り用に販売しているのですが、これはテイクアウトの扱いになりますから、軽減税率の対象となり、結果的に軽減税率への対応が必要になるのです。このお店のように、外食のお店でも、テイクアウトがあったり、あるいは出前などがあれば、外食自体は軽減税率の対象にはなりませんが、お店として軽減税率の影響はない、とはならないのです。

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我が家はもう何年もこのお店にお節をお願いしています。これがまあ、とんでもなく美味しい(数量限定なので、この記事が発端になって買えなくなると困ります、笑)。お節もテイクアウトですから、基本は軽減税率対象……なのですが、実は対象とならないケースもあります。弥生の消費税改正あんしんガイドでも解説していますが、重箱入りの高級お節は軽減税率の対象外となるケースがあります。

それはなぜか。重箱自体に価値がある場合、飲食料品とそれ以外の物品を組み合わせて「一体資産」として販売しているとされるからです。わかりやすい例が、おもちゃ付きのお菓子ですね。

このお店のお節は、しっかりとした白木の箱に詰めて販売されています。ただ、この箱に資産価値があるかというと、ないという理解でいいかと思います。要は、取っておくのが当然であれば資産価値があるということになりますし、基本的には使い捨て容器として捨てることが前提であれば、資産価値がないということになります。我が家の場合、最初はこの白木の箱を勿体ないと取ってあったのですが、何年かするうちに、結局使わないので、捨てるようになりました。ということは結局資産価値はないということですし、結果的に一体資産ではないということになります。

この点については、消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)では、「飲食料品の販売に際し使用される包装材料等が、その販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものであるときは、その包装材料等も含め『飲食料品の譲渡』に該当します」と解説されています。飲食料品の譲渡に該当するということは、軽減税率の対象となるということです。

ということで、お節を詰めて販売するのに一般的に使用される木の箱であれば、軽減税率対象ですし、それ自体に価値がある豪華な重箱であれば、一体資産として軽減税率の対象外となるということかと思います。この観点で言えば、通販で買うことができるフグ刺しについては、プラスチックの皿に乗ったものであれば軽減税率の対象。それ自体に価値がある有田焼の皿に乗ったフグ刺しは一体資産として軽減税率の対象外となりそうです(そもそも高級食品であるフグが軽減税率対象って、という声もありそうですが…)。

ただし、一体資産だから自動的に軽減税率の対象外となるわけではありません。一体資産であっても、1) 一体資産の価格が少額(税抜1万円以下)のものであり、2) 軽減税率の対象となる飲食料品が主たる要素を占める(2/3以上)場合には、軽減税率の対象外となります。ですから、おもちゃ付きのお菓子(税抜1万円以下)については、飲食料品の割合が2/3以上であれば、軽減税率対象である一方で、2/3未満であれば軽減税率対象外となります。具体的に言えば、ビックリマンチョコは軽減税率の対象、一方でミニカー付きのガム(←コンビニで見るとつい車種をチェックしてしまいます)は軽減税率の対象外となるようです。

この記事のために、改めて調べているのですが、実に複雑ですね。実務として、本当にこれが成り立つのか、正直、心配です。
posted by 岡本浩一郎 at 17:18 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年09月11日

テイクアウト

いよいよ10月に迫った軽減税率。前回も軽減税率の対象品について、お話ししました。軽減税率の対象となるのは、飲食料品と新聞。ただし、飲食料品については、酒類は対象外、また外食も対象外です。

ということで外食は対象外なのですが、ここで言う外食とは、店内で飲食する場合。ですから、同じスターバックスでも、そのまま店内で飲食する場合には、外食として軽減税率の対象外となる一方で、テイクアウトする場合には、通常の飲食料品(要はスーパーで缶コーヒーを買うのと同じ)扱いとなり、軽減税率の対象となります。

ただ、基本はテイクアウトだけれども、時間調整で店内で少しだけ休憩がてら飲むことってありますよね。スターバックスでは店内で飲む場合にはマグカップになることもありますが、私は途中で持ち帰ることもあるので、紙カップでお願いすることがほとんどです。この場合は、かなり微妙なのですが、基本的にはお客さまの申告を信じるしかない、ということになります。

フードコートですとか、コンビニのイートインコーナーも微妙です。政府広報によると、「フードコートでの飲食料品の提供は、テーブルやいす等が設置されたスペースに隣接する飲食店が、顧客にその飲食スペースで飲食させるサービスを提供するものであるため、「外食」にあたり、標準税率(10%)の適用対象となります。」とされています。逆に、フードコートから少し離れたベンチで食べた場合は、お店が飲食スペースを用意したわけではないということで、基本的には軽減税率の対象となります。このため、コンビニのイートインコーナーを名目上(?)廃止し、あくまでも休憩スペースです、とする可能性があるとか、ないとか。弥生の本社がある秋葉原UDXには、ファミリーマートが入っており、このファミリーマートにはかなりしっかりとしたイートインコーナー? 休憩スペース?があるのですが、10月以降どうなるのか、興味津々です。

お客さまの混乱を避けるという観点から、店内飲食とテイクアウトで税込の価格を合わせるという動きもあるようです。例えば、店内飲食は本体価格が800円に消費税10%で税込880円だとすると、テイクアウトは本体価格を815円として、これに軽減税率8%の消費税65円を足して税込880円に統一するという方法です。こちらの記事によると、同じ牛丼チェーンでも、すき屋と松屋は税込価格を統一する一方で、吉野家は本体価格を統一し、結果的に税込価格が別になる予定だそうです。

この税込価格統一は一定の理解はできますし、政府としても混乱を避けるという観点で認める模様ですが、個人的には、なんだかなあと思います。店内で飲食しないというのは、お店のリソースを使わないということですから、テイクアウトの価格が安くなるのは理解できるのですが、この価格調整は、逆にテイクアウトの方が本体価格が高くなるので、合理的な説明ができないと思います。本来は、生活に欠かせない物品について、消費税率を低く留め置くという軽減税率の趣旨からすると、同じものなのに、店内飲食とテイクアウトで本体価格を調整するのは、趣旨に反するように思うのですが…。それに、税込価格を統一したとしても、消費税率は実態に合わせて変えなければならないので、結局お客さまに店内飲食か、テイクアウトか聞く必要はあるんですけどね。

正直どうなることやら、というテイクアウト問題ですが、当初の混乱は避けられないように思います。消費者の立場では、少し時間が経てば、すぐに慣れるのかな、と思いますが、販売する側は、最初から実態に合わせて消費税率を変える必要がありますから、まずはどのケースで軽減税率の対象になるのか、しっかり理解して準備することが重要です。
posted by 岡本浩一郎 at 22:53 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年09月09日

軽減税率の対象品

昨晩の台風の直撃は凄かったですね。音がうるさくて寝るどころではありませんでした。実は今日は福岡への出張だったのですが…、6時間かけて何とか根性でたどり着きました。起床したのが5時、風雨がある程度収まったのを確認して家を出たのが7時。ただ、公共交通機関が全て不通ということもあり、羽田までの道路が大渋滞。通常30分で着く距離なのですが、結局2時半もかかりました。羽田空港に着いても、乗員も羽田空港に着けないということで飛行機が出発できず、結局離陸したのは11:00。福岡空港には12:30に着いたのですが、ゲートが空いていないということで、降機できたのは結局13:00。日本の交通インフラは精緻に組み上げられ、運用されているだけに、一旦混乱すると影響が大きく広がることを実感しました。

さて、前回は軽減税率の対象品について、お話ししました。軽減税率の対象となるのは、飲食料品と新聞。ただし、飲食料品については、酒類は対象外、また外食も対象外です。新聞も全てが対象になるのではなく、厳密には、「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」となります。

新聞はそれほど迷う余地はないのですが、飲食料品については、実際はかなり複雑な判断基準になります。例えば、みりん。みりんはどこの家にもある基本の調味料ということで、飲食料品であり、当然軽減税率の対象となるように思えますが、実はみりん(本みりん)は酒税法上の酒類となるため、ビールやワインといった一般的な酒類と同様に、軽減税率の対象外となります。ただ、似たような存在としてみりん風調味料というものがありますが、これは酒類の扱いではないので、軽減税率対象となります。一方でお酒を含む食品として例えばウイスキーボンボンがありますが、これはあくまでも食料品として軽減税率対象となります。

他には、ペットボトルの水と、水道水というのも難解です。ペットボトルの水は飲食料品に該当するので、軽減税率の対象。水道水も、生活に欠かせない物品について、消費税率を低く留め置くという軽減税率の趣旨からすると、当然対象になるように思えますが、定義上、飲食料品に該当しないので、実は軽減税率の対象外となります。水道水はお風呂にも使われますし、必ずしも飲むものではない、と考えればよいのでしょうか。

難解と言えば、栄養ドリンクやサプリメントなども注意が必要です。同じ「飲むもの」や「食べるもの」であっても、医薬品等に該当すると、逆に飲食料品ではないとなり、軽減税率の対象外となります。具体名で言えば、ユンケルリポビタンDは、基本的に医薬品等になるため、軽減税率対象外、一方で、レッドブルオロナミンCは医薬品等に該当しないため、飲食料品として軽減税率の対象となります。

正直、何が何やらという感じですね。とは言え、買う側は、お店で示された税率で買えばいいだけの話。ただ逆に、売る側としては、自分が売っている商品のうち、何が軽減税率となるのか、逆に対象外なのかをしっかりと分別する必要があります。

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ちなみに、日経電子版では今日から、「クイズで分かる軽減税率」という特集記事を掲載していますが、私は10問中7問正解にとどまりました。まあ、正直お恥ずかしい限りなのですが、逆に言えば、それなりにわかっていなければいけないはずの私でも、全問正解とはならない、それだけ複雑な制度ということです(言い訳ですかね、苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 18:44 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年09月05日

そもそも軽減税率とは

少し前からお話ししている軽減税率対策補助金ですが、購入および導入、さらに支払いの完了が9月30日までとなっている要件の緩和が図られるべきとお話ししました。色々とやり取りはあったのですが、自分で購入・導入する請求書管理システム(C-2型)については、残念ながら要件の緩和の対象外ということになりました。今回の要件緩和は、供給が潤滑に行われていないケースに対処するものであり、供給に問題が発生していないC-2型については、対象外ということでした。

ただし、9月30日の支払い完了について、従前はクレジットカードで支払い、口座引落しが10月になる場合はNGという判断だったのですが、今回、「申請者の銀行口座等からクレジットカードの引落しが補助金の申請期限である2019年12月16日までに完了したものが対象」となり、救われることになりました(こちらの手引き(PDF)のP32参照)。一方で、同じページには、「法人の場合は、法人カード、個人の場合は本人のカードであることとします」ともあり、法人の場合でも従業員が立替払いをすることが一般的なのに対し、あまり実態に即さない要件が入ってしまっているのは残念です。

上記に限らず、かなり細かい決まりがありますので、申請にあたっては、手引きをしっかり読み込むことをお勧めします。しかし、税金を使っての補助金支給だけに、色々と厳しくなるのはわかるのですが、あくまでも達成したいのは、ソフトウェアの導入によって軽減税率の準備を進めることのはずであり、もう少し何とかならないのかなと思います(関係者におかれては、限られた時間の中、最善は尽くしていただいているとは思うのですが)。

さすがに軽減税率対策補助金の話はこれぐらいにして、10月に向けてどういった準備を進めるべきかについてお話しをしていきたいと思います。

10月1日より、消費税率が10%に引き上げられると同時に、軽減税率制度が導入されます。税率の引上げは約5年前の2014年4月にも行われています(5%→8%、この時の引上げは実に17年振り)ので、比較的記憶に新しいところですし、これが原因で極端な混乱が起こることはないでしょう。ただ、問題は軽減税率。海外では普通に存在する制度ですが、日本では初めて。何がどうなって、それに対し何をすればいいのか、さっぱりわからないという方も多いと思いますし、それが故に一定の混乱も想定されます。

そもそも軽減税率とは何でしょうか。弥生の消費税改正あんしんガイドもご覧いただきたいのですが、「軽減税率とは、一般に適用される税率(標準税率)よりも低く設定される税率をいいます」。言葉の定義としてはまあこうなるのでしょうが、なぜそもそもこういった制度が導入されるのか。政府広報によると、「所得の低い方々に配慮する観点から」と書いてありますが、やや漠然としていますね。要は、生活に欠かせない物品について、消費税率を低く留め置くことによって、生活への配慮を行うということかと思います。

このため、軽減税率の対象は、生活に欠かせない物品に限られています。具体的には、飲食料品と新聞ということになります。ただし、飲食料品については、酒類は対象外、また外食も対象外です。酒類にせよ、外食にせよ、生活に欠かせないわけではないということでしょう。その観点でいうと、今の時代に、新聞が生活に欠かせないかというと正直微妙です。まあ、これは色々な力学が働いたのだと思いますが…。ただ、新聞も全てが対象になるのではなく、厳密には、「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」となります。ですので、駅で新聞を購入した場合には、軽減税率の対象にはなりません。また電子版も軽減税率の対象外とされています。

まずは概要ということで簡単に書いていますが、具体的にはもっとも複雑です。次回は飲食料品についてもう少し細かく、対象になるもの、対象にならないものを解説したいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:58 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年03月15日

提出編(その2、いよいよ最終日)

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弥生の札幌カスタマーセンターで昨年3月15日に撮影

長かった? あっという間だった? 確定申告期間も今日でいよいよ終わりです。既に提出したよ、という方はお疲れ様でした。逆にまだ終わらない(泣)という方はもう少しの辛抱、何とか乗り切りましょう。

一番避けたいのは、どうせもう間に合わないや、と諦めてしまうこと。青色申告にはメリットがあることは前回もお話ししましたが、最大のメリットである65万円の青色申告特別控除は、期限内に申告してこそ。逆に、期限後の申告になると、そのメリットがなくなり、税金が一気に増えるという恐ろしいことになります(こちらに体験談が…)。

でも、間に合わないよう(泣)という方はどうするか。なかなか表現が難しいですが、完璧を目指さないという考え方もありなのではないでしょうか。一旦できる範囲で申告書を作成し、提出してしまう。修正が必要であれば後日修正申告(税額が増える場合)もしくは更生の請求(税額が減る場合)ができるというのは法的に認められた手続きです。

提出編(その1)でお話ししましたが、提出方法は1) 電子申告、2) 税務署での提出、3) 郵送での提出の三通り。電子申告の場合は24:00きっかりに受付終了です。いざやってみたらうまく動かなかったというとダメージが大きいですから、事前に環境が整っているか確認しておくことをおススメします。郵送の場合は、本日の消印が必要です。こちらのページで「ご利用時間」を指定して検索することができますが、大規模な郵便局では24時まで受け付けています。本当にギリギリになった場合には、「今日の消印ですよね」と一声かけた方が確実かもしれません。大穴は、税務署への持参。午後5時以降は時間外収受箱への投函になりますが、24時過ぎでも大丈夫?かもしれません(保証はありませんので、あえてチャレンジしないでください、笑)。

なお、今日は前回お話しした通り、青色申告承認申請書の提出期限でもあります。これはサクっと作成して、申告書に同封しましょう。

また、今日は申告だけでなく、納付の期限でもあります。既に金融機関窓口での受付は終了していますが、クレジットカードによる納付サービスを利用するか、もしくは、振替納税を選択しましょう。振替納税を選択する場合、預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を確定申告書と同封しましょう。

さあ、泣いても笑っても今日限り。最後の最後まで諦めずに頑張ってください!
posted by 岡本浩一郎 at 15:53 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年03月11日

提出編(その1)

先月から始めた所得税確定申告の解説シリーズ。準備編、記帳編、そして申告書作成編を終え、いよいよ提出編です。私自身も無事先週末に申告書の準備が整い、今日提出することができました。ホッと一安心。

さて、できあがった申告書を提出するにあたっては、大きく、1) 電子申告、2) 税務署での提出、3) 郵送での提出、という3つの選択肢があります。

イマドキの時代ですから、もちろん電子申告でと言いたいところですが、電子申告ならではの一手間もあり、なかなか電子申告が当然とまでは言い切れないのが現状です。電子申告には、マイナンバーカードとICカードリーダライタが必要。これらは一度準備してしまえば翌年からはラクになる訳ですが、その一度がなかなか越えられないカベとなっています。

もっとも、今年からは、マイナンバーカードが普及するまでの暫定的対応という位置付けで、ID・パスワード方式という選択肢が用意されるようになりました。この方式では、税務署で本人確認を受けた上で発行されるID・パスワードを利用して電子申告が可能になります。しかし残念ながら、このID・パスワード方式は、国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」で最初から申告書を作成する場合にのみ利用できるということで、やよいの青色申告 19や、やよいの青色申告 オンラインで作成した決算書/申告書データをそのまま活用することができません。

結果的に、やよいの青色申告をご利用の場合には、マイナンバーカード方式のみが利用できることになります。ただ、マイナンバー方式も昨年までとは異なり、e-Taxの開始届出書の提出が不要になっていますので、これまでよりは簡便化されています。

やよいの青色申告 19(デスクトップアプリ)をご利用の場合には、e-Taxソフト(これ自体もデスクトップアプリ)と組み合わせて電子申告を行うことになります。一方で、やよいの青色申告 オンラインをご利用の場合には、e-Taxソフト(Web版)との組み合わせになります。前出の「確定申告書等作成コーナー」も、e-Taxソフトも、e-Taxソフト(Web版)も電子申告を行うための仕組みではあるのですが、それぞれ別物なので、ご注意ください(正直結構紛らわしいですよね)。

もう時間も限られるし、電子申告は来年から、という方は、2) 税務署での提出、3) 郵送での提出という二つのオプションになりますが、税務署での提出を選ぶ積極的理由はないと思います(オフィスの隣が税務署、だったら別ですが)。税務署で提出する場合、その場で提出を証明するための控えに受付印を押してくれるというのがメリットではありますが、郵送での提出の場合でも、控えと返送用の封筒(切手付き)を同封すれば、控えに受付印を押して返送してくれます。税務署までの往復の時間を考えると、郵送の方がよい時間の使い方なのではないかと思います。

なお、上記はあくまでも今回の申告での話。2021年の申告(2020年分の所得の申告)からは、電子申告の場合のみ青色申告特別控除が65万円になる(そうでない場合は55万円に減額)ため、納税額に明確な差がでることになります。それまでにいかに電子申告を当たり前のものとするか、弥生としてもしっかり対応しなければならないと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 20:30 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年03月06日

記帳編(その4)

先々週から始めた所得税確定申告の解説シリーズ。これまで、準備編、記帳編と進めてきましたが、今週末には申告書作成に取り掛かりたいところ。そのためにも、記帳はそろそろ終えたいところです。ということで、記帳編の最後は、帳簿付けする上で「あるある」な、これってどう帳簿に付けるの、の続編をお届けしたいと思います。

前回は、最もよくある質問である、これはどの勘定科目なの、についてお話ししました。端的に言えば、あまり厳密に拘る必要はありません。勘定科目の選択に悩んで帳簿付けの手を止めてしまうのではなく、悩んだら雑費でも構わないので、まずは一通り帳簿付けを終えてしまいましょう。

今回は、いくつかの支出について、そもそも帳簿にどう付けるの、という観点でお話ししたいと思います。

1) 帳簿に付けるが、一定の後処理が必要になるもの

個人事業主の方であれば、自宅で事業をしているという方も多いと思いますが、この場合の自宅賃料をどのように扱うか。これは一旦賃料を全額地代家賃として帳簿付けし、最後に地代家賃を、事業分と個人分に分解する処理を行います。これは家事按分という処理なのですが、結果的に地代家賃のうち経費として計上するのは事業分のみ、ということになります。

2) 帳簿に付けないが、申告書において申告するもの

医療費や生命保険料をどのように記帳するの、というのもよくある質問ですが、これらは事業上の経費としては認められていません。個人事業主は、「事業主」としての帽子と「個人」としての帽子を両方被っていることになりますが、医療費や生命保険料はあくまで「個人」に対して発生する支出であり、事業上の経費ではないからです。ですから、事業主としての帳簿に記帳する必要はない、ということになります。

ただ、医療費や生命保険料は、所得税上、一定の控除が認められます。医療費に関しては、医療費控除、生命保険料は生命保険料控除。ですので、帳簿に付ける必要はありませんが、領収書としてはまとめておき、所得税の確定申告書に記載することになります。

判断基準は上でお話ししたように、事業主としての支出(=事業上の経費)か、個人としての支出か、というもの。ですから、同じ保険料でも、事業で利用する設備にかけている損害保険の保険料は経費として計上できる(そのために帳簿に付ける)ことになります。昨日お話しした青色申告決算書上にデフォルトで「損害保険料」と記載されているのはこのためです。

3) 帳簿に付けないし、申告書において申告もしないもの

事業上の支出かもしれないが、支出の性格上経費として認められないものもあります。いわゆる罰金の類ですね。仕事のために車を運転しており、スピード違反で捕まったというケース。運転は仕事のためであり、そのために発生した支出だから経費としたいところですが、罰金という性格上、経費計上は認められていません。もちろん、所得税申告において控除として認められることもありません(災害で損害を受けた際に認められる雑損控除というものはありますが、災害の意味が異なります、笑)。

ちなみに、帳簿に付けないし、申告書において申告もしない、にある意味該当するのが、個人事業主自身の給料です。青色申告決算書上にデフォルトで「給料賃金」と表示されているので誤解されることがありますが、この給料賃金は、従業員に対して給料を支払った場合に該当するものです。

個人事業主にはそもそも給料という概念はありません。それによって生計を立てる収入という意味では、売上から経費を差し引いて得られる利益、つまり申告書上で言えば事業所得が給料に該当する存在となります。ですから、個人事業主自身への支払いは、帳簿上給料賃金として付けることもありませんし、申告書上給与所得として申告することもありません。

ただ、現実問題として事業用の銀行口座から生活費を払った場合はどうするのか。これは、「事業主貸」という勘定科目で処理します。つまり事業のおカネを事業主である個人に渡した、厳密に言えば、事業主の帽子を被った存在から、個人の某氏を被った存在に資金を渡した、という扱いになります。なお、勘定科目名に「貸」とはありますが、借りたから返す、という必要はありません。事業主貸および、逆に事業主から事業におカネを融通した場合の事業主借は、決算の中で自動的にクリアされます(その分、両者の差分が元入金に減算/加算されます)。

長かった記帳編もこれで終わり(ホッ)。次回からは申告書の作成に取り掛かります。
posted by 岡本浩一郎 at 19:53 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年02月23日

準備編(その2)

前回から始めた所得税確定申告の解説シリーズ。申告期限に向けて、準備編、記帳編、申告書作成編、提出編と順を追って解説していきます。実はこのシリーズ、私自身の確定申告と同期している(笑)ということで、珍しく週末の更新です。

今回は準備編のその2。個人事業主の申告では、まずは売上から経費を引いた利益(=事業所得)を算出し、それに他の収入を加算したり、あるいは税額計算上認められる控除を減算して、所得税の課税対象額を計算します。前回のその1では、事業所得を算出する(かつ、合法的に最小化する)ために、経費の領収書をしっかりと集めましょうとお話ししました。交通費など、領収書がないケースの対応法についてもお話ししました。

所得税を(言うまでもなく合法的に)最小化する上で、もう一つ重要なのが、控除をしっかりとゲットすること。控除というのは、所得を減らすことができる所得控除と、税額そのものを減らすことができる税額控除という二種類があります。所得税額を最小化する上でダイレクトに効くのは税額そのものを減らす税額控除ですが、認められている種類が多いのは所得控除。実際の申告で活用するのは所得控除がほとんどではないかと思います。

原則的に誰でも対象となるのが、社会保険料控除基礎控除。その次ぐらいにメジャーなのが、保険料控除でしょうか。

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保険料控除には生命保険料控除地震保険料控除の二種類があります。いずれも一定の条件を満たす保険料の分だけ、税額を計算するための所得から控除してくれるというもの。控除を受けるために必要な保険料控除証明書が毎年秋に保険会社から送られているはずですが、受け取ってから確定申告までに時間があるため、あれ、どこへ行っちゃったっけ、というのは「あるある」。この段階で一通り揃えておきましょう。どうしても見つからない場合には保険会社に再発行をお願いすることになりますが、一定の時間がかかるため、この段階で揃っているか確認しましょう。

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一定額(原則として10万円)以上の医療費を支払った場合に超過分の控除を受けられる医療費控除も比較的よく利用される控除かと思います。20代、独身ですと一定額を超えることは多くはないかと思いますが、家族のために支払った医療費も対象となるため、家族が増えると意外に「塵も積もれば」になっています。この段階でざっと集計し、一定額を超えているか確認しておきましょう。

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最近は寄附金控除を活用する方が増えているのではないかと思います。もちろん、ふるさと納税の影響ですね。これもしっかりと領収書を揃えておきましょう。また後日ふれたいと思いますが、寄附金は所得控除か税額控除かを選べる珍しい控除です。

事業所得以外がある場合には、その関係の書類も確認しておきましょう。基本はサラリーマン(給与所得)で副業で事業をしている、という場合には、給与所得の源泉徴収票が必要になります。

こうやってみると、かなりの数の書類ですよね。申告期限ぎりぎりになって、あれ、ない、どうしよう、とならないように、今週末で揃えておきましょう。さあ、来週はいよいよ帳簿付けに取り掛かりたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 13:21 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年02月20日

準備編(その1)

今週から始まった所得税の確定申告。本ブログでは今回から、準備編、記帳編、申告書作成編、提出編と順を追って解説していきたいと思います。期限までは1ヶ月を切っており、気がはやるとは思いますが、本ブログと同様なペースで進めていけば間に合うはず。

ということで、今回は準備編のその1。個人事業主の申告にあたっては、まずは売上から経費を引いた利益(申告においては事業所得と言います)を算出する必要があります。次に事業所得に他の収入を加算したり、あるいは税額計算上認められる控除を減算して、所得税の課税対象額を計算します。

事業所得を計算する、もちろん、その際には合法的に所得を最小化(=所得税額を最小化)するためには、経費を漏れなく計上することが重要です。つまり、確定申告の準備の第一歩となるのは、経費の領収書をキチンと集めること。事業の規模にもよりますが、一年分となると、領収書はそれなりなボリュームになるはず。単に集めて終わりではなく、日付順(月ごと)にまとめる、もしくは、用途別(会計的にに言えば勘定科目ごと)にまとめるといった工夫をすると帳簿付けの際にラクになります。日付順か、用途別かは好きなやり方で構いません。会計ソフトを使えば日付は自動的に並び替えられますので、あえて言えば用途別の方が効率的かもしれません。

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もっとも、領収書がないケースもあります。典型的なのは、日々の交通費。これは手書きでもエクセルでも何らかの出費を裏付けるメモがあれば大丈夫です。よくあるのは社内の経費精算用のフォームをそのまま使うケースですね。冠婚葬祭などで、領収書が出ない場合も同様です。さすがに受付で、領収書をください、とは言えません。これも、何らかの証拠があれば大丈夫。一番良いのは、交通費における経費精算用フォームのように、社内で記録するためのフォームを作り、例えば冠婚葬祭に際して受領した案内状などと共に記録・保存しておくことです。

領収書が出ないという意味では、銀行振込もそうですね。これは、振込の控えで代用可能です。ネットで振り込んだ場合には、振込完了画面を印刷しておきます。クレジットカードで定期的に決済されるような支払いで領収書が必ずしも発行されないもの、例えば、ISPや、ウェブサイトのホスティング、ドメイン登録などの費用はそのクレジットカードの明細書が領収書の代わりになります。

誤解されがちですが、こういった経費を証明する領収書は確定申告の際に添付/提出する必要はありません。ただ、帳簿をサクサクと付けるためにも、事前にキチンと揃えておきたいところです。

なお、売上(と源泉徴収額)を示すものには、支払調書がありますが、これも申告の際に添付/提出する必要はありません。支払調書が揃わないので、申告できないというのはよくある誤解ですので、お間違えなく。
posted by 岡本浩一郎 at 23:49 | TrackBack(0) | 税金・法令

2019年02月18日

いちばん得するスゴ技

いよいよ本日から、平成30年分の所得税の確定申告が始まりました。ただ実は今日からというのは税務署等での「所得税及び復興特別所得税の確定申告の相談及び申告書の受付」。これは週末の影響によるもので、e-taxであれば実は例年通り2/16から受付を開始済みです。もっと正確に言えば、還付申告は1月から受付開始となっていますので、確定申告はいつから、というのは一概には言いにくい部分があります。

もっとも一般的に気になるのは、いつまで。これは提出方法や還付かどうかによらず一律に3/15(金)となります(もっとも3/15の何時までという観点では差がありますが、これはまた追って)。

期限までは1ヶ月を切っており、気がはやる部分もあるかと思いますが、どうせ確定申告をするのであれば、極力トクをしたいという方に一読をおススメしたいのが、「ぶっちゃけ税理士が教える確定申告のいちばん得するスゴ技」という本。本ブログでも何度か登場いただいている税理士の松波先生の新著です。

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個人事業主の所得税は売上から経費を引いた利益(申告においては事業所得という表現になります)に連動しますので、所得税を合法的に最小化するためには、経費をいかに計上するかがポイントになってきます。

この種の経費を計上して節税しましょうという本は、これまでにも数多く存在しています。その中で本書が輝くのは、極めて実践的であること。類書はかなり過激か保守的かどちらかが多いように思います。過激(こんなものまで経費にできる、もっと言えば何でも経費にできる)というのは、もちろん本として目立つし、売れやすいからですね。一方、保守的(経費は事業に必要なものという一般論のみ)なのは、それが安全だからです。保守的であれば、経費にできると書いてあったじゃないか、と訴えられることもない。ただ、往々にして読者が本当に知りたいことに対して解を提示していないということになります。

どこまでが経費となるか。実は明快な答えはありません(本書の表現で言えば「グレー」)。そんな中で本書の特徴となるのは、こういったものは経費として認められた、逆にどういったケースは認められなかったという実践的な情報を提供していること。なおかつ、なぜそれが経費となるか/ならないかを考え方として示していることです。考え方はシンプルで「『いかに売上を得るのに必要であったか、事業に関係があったか」という根拠を示すことができるか」どうか。実にシンプルですが、実例を踏まえることで、なるほどそういうことか、という腹落ちができるようになっています。

中には今回の申告には間に合わず、来年に向けてという内容も含まれていますが、今年もまだ始まったばかり。今回の申告でメリットを享受することはできなくても、来年の申告では確実に「やっててよかった」となるかと思います。

個人的な感想としては、「根拠を示せるか」という一貫した考え方で裏打ちされているため、危うさはない(笑)ものの、実際はどうなのという読者の期待に応えるべく、結構攻めているな、というもの。まさにタイトルにある通り「ぶっちゃけ税理士」の面目躍如です。平易で表現でサクサク読めるのも特徴ですので、いざ申告書を仕上げる前に一読して損はないと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:14 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年10月05日

シンプルでわかりやすいのが一番

前回は、国税庁の消費税軽減税率制度に関するパンフレットを「わかりにくい」と突き放してしまいましたが、これはパンフレットの作り方の問題というよりは、そもそも制度自体が複雑だから。

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消費税率の引き上げも含め、増税の方向性にある中で、国としても、税制をしっかりと理解してもらおうという努力はしていると思います。税制がしっかり理解されてこそ、税負担の納得感が生まれる訳ですから。そういった意味で、今年6月に作成された「もっと知りたい税のこと」というパンフレットは比較的わかりやすく、かつコンパクトにまとまっていると思います。この冊子の8ページ目を見れば、平成に入ってから国の収入(税収)と支出(歳出)のバランスが大きく崩れはじめたことがよくわかりますし、同時に高齢化が進む中で勤労世代など特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担を分かち合うために消費税が重要になってきている(P6)といったことも理解できます。

一方で、本当の意味でわかりやすくするためには、そもそも制度としてシンプルであることが大事だと思いますが、現実の税制はそうなってはいません。むしろ以前も書いたように、逆の方向に行っているような気がします。例えば、平成30年度税制改正で決まった基礎控除の変動化。これまで基礎控除は一律、誰でも同じ金額でした。誰でもに認められるから「基礎」な訳です。しかし、今後(2020年から)は、合計所得金額2,400万円超で基礎控除額が逓減を始め、2,500万円を超えると基礎控除がなくなることになりました。つまり本来は誰にでも認められる基礎控除だけれど、実際には認められない人も出るということです。

基礎控除は所得控除であり、税率が高い人ほど税の低減効果が高い(例えば税率が10%の人にとっては3.8万円の低減効果があるのに対し、税率が40%の人には15.2万円の低減効果がある、つまり逆進性がある)ということが必ずしも公平ではない、という指摘自体はその通りだと思います。しかしそれであれば、基礎控除を所得控除(所得額から控除する)のではなく、税額控除(税額から控除する)にすればいい話です(あくまでも一つのやり方ですが)。例えば、基礎控除は「基礎」だけに誰にでも認められる、ただし、所得控除ではなく、税額控除(例えば4.8万円)とする。これであれば、シンプルでわかりやすいですよね。

実は今回の平成30年度税制改正の大元となっている与党による平成30年度税制改正大綱では、税額控除方式のメリットを認めています。しかし同時に、「現行の所得控除方式から変更した場合、負担の変動が急激なものとなりかねないことから」見送り、現行の所得控除方式の建て増しである「逓減・消失型の所得控除方式」を採用しています。

この建て増しの最たるものが、平成30年度税制改正で導入が決まった所得金額調整控除。これは、「子育てや介護に対して配慮する観点から」子育て世帯や介護世帯は「負担増が生じないよう措置を講ずる」として生まれた控除。乱暴に言ってしまうと、特定のケース(子育て世帯や介護世帯)に該当する場合の数字の辻褄合わせなので、かなり複雑な条件設定が必要になります。具体的には、「その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の100分の10相当額を、給与所得の金額から控除する」。

これをすっと理解できる人はいるのでしょうか(苦笑)。上で紹介した「もっと知りたい税のこと」でも、この所得金額調整控除は説明が難しいのか、「措置を講じています」という曖昧な表現に留まっています

会社を運営している中では、様々な業務上のルールが生まれます。そしてそれらがどんどん積み上がっていき、そのうち、誰も何故このルールなのか説明ができなくなっていく。だからこそ、定期的に業務の棚卸を行い、複雑性を排除する必要があります。そうすることによって、担当者が変わっても、会社を安定的に運営できるわけです。複雑な税制をいかに説明するかという努力も大事だとは思いますが、そもそも税制をいかにシンプルにするかという努力が必要なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:33 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年10月03日

一年後

今から一年後の2019年10月には、消費税率が10%に引き上げられると同時に、軽減税率制度が実施される予定です。既に法律としては成立している訳ですが、これまで2回に渡って延期されてきただけに、来年10月に本当に実施されるのか、現時点ではまだ不透明さが残ります。ただ、現在の経済/政治を取り巻く環境や各種の報道を見る限り、三度目の正直になるように見受けられます。

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最近では、国税庁から消費税軽減税率制度に関するパンフレット(pdf)が事業者に送付されており、いよいよ実施に向けて本格的に動き出したことを感じさせます。

ただ、消費税率10%はともかく、軽減税率に関しては、一年後の実施は、本当にやるの、というのが正直なところ。そもそも軽減税率に関しては、会計業界は猛反対。私も、得られるもの(軽減税率によってもたらされる効果)以上に失うもの(軽減税率を実施することによる社会的コスト)が圧倒的に大きいことから、個人的には明確に反対です。今からでも止めるのは遅くない、と思っています。

とはいえ、法律として定まっている以上、現実から目を背けるわけにはいきません。やる以上は、お客さまの業務に支障が出ないように何とか支えていくしかありません。先述のパンフレットも、率直に言ってわかりにくい。制度自体が複雑なので、どうやっても説明が難しくなってしまうのですが。弥生でも特設サイトで情報提供を行っていますが、どうやってわかりやすくお伝えするか、四苦八苦しています。

色々な事業者の方とお話ししていると、誤解があるな、と思うのは、軽減税率制度は自分には関係ないと思っている事業者の方が多いこと。確かに軽減税率の対象になるのは、主に飲食料品ですから、特に影響を受けるのは、飲食料品を販売する小売業/卸業などが中心になります。一方で、どんな事業者でも、来客時にお出しするために、お茶やお水などを購入していますよね。経費に占める割合は極小だと思いますが、それでもそれらを軽減税率対象として正しく処理しないと、結果として消費税の過少申告になってしまいます。

例えばお茶やお水に年間1万円の経費がかかっているとして、これを軽減税率として正しく処理しないと、200円(10%と8%の差額)だけ消費税を過少申告してしまうことになります。事業者からするとごく少額の消費税であれば、下手に厳密に区分する手間をかけるよりは、多めに払ってしまった方がトータルなコストで言えば安くつく、と考えるでしょう。ただ、実際には、厳密に区分しない限り、少なめに申告することになってしまう訳です。一方で税務署としても、200円消費税が過少ですよ、と追求することがコスト的に合理的かというと、明らかにそうではありませんが、かといって過少申告をよしとするわけにもいきません。

正直に言って、本当にやるの、はともかく、本当に実務として成立するの、というのが軽減税率制度の現状。しかしその実施に向けて残された時間は一年を切りました。お客さまの業務に支障がでないよう、何ができるのか。弥生の実力が問われると感じています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:46 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年03月14日

いよいよ明日が締切

今年の確定申告も明日3/15(木)が締切。ギリギリになった場合の対策について、毎年お話ししていますが、心の準備のために、今回は一日早めに。ただ、内容としては変わっていませんので、一年前の記事をご確認頂ければと思います。ポイントとしては、諦めるな、とりあえず出そう、でしょうか。

また明日は納税となった場合の納付の締切でもありますので、ご注意ください。昨年から利用可能となったクレジットカード納付、定番の振替納税など、ニーズに合った方法を選びましょう。

さらにさらに、明日は、今回まで白色申告だった方が次回の申告で青色申告を選ぶために必要となる青色申告承認申請書を出すための期限でもあります。青色申告がいかに有利かは本ブログでも何回も(しつこい?)お話ししていますので、ご参照ください

弥生が提供している「確定申告応援プロジェクト」で、少し前に、個人事業主の確定申告に関して実態調査を行ったところ、なかなか興味深い結果が出ていました。結果のサマリーとしては、

  1. 白色申告の人は自身の事業規模が小さいと青色申告を敬遠する傾向にある
  2. 白色申告の人は、青色申告のメリットを知ると白色申告から青色申告に変更する傾向がある
  3. 青色申告に変更しても難点はほぼない
詳細は是非確定申告応援プロジェクトでご確認頂きたいのですが、白色申告は自分にはtoo muchというのが、ほとんどの場合、思い込みであることをご理解頂けるかと思います。

青色申告という意味では、雑所得だとお話しした仮想通貨取引ですが、理論上は、事業所得になりえますし、事業所得であれば青色申告をすることも可能になります。先日ご紹介した国税庁の「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」という資料でも「例えば、その収入によって生計を立てていることが客観的に明らかであるなど、その仮想通貨取引が事業として行われていると認められる場合にも、その所得区分は事業所得となります」と記載されています。

ただ、「生計を立てていることが客観的に明らか」というのはそれなりにハードルは高いですし、逆にそこまで踏み込むのであれば、いっそのこと法人を設立して法人の事業として仮想通貨取引業を営むということも選択肢かと思います。法人税であれば累進税率ではありませんから、継続的に多額の利益が見込めるのであれば、所得税(個人)よりもメリットが大きくなります。

もっとも、個人で事業として営むにせよ、法人として営むにせよ、新しい事業領域であり、それが故に税金上の扱いも不透明な部分が多く、また流動的であることから、必ず税理士の先生に相談してから判断すべきだと思います。

さて、締切りまであと一日。ラストスパートです!
posted by 岡本浩一郎 at 17:39 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年03月13日

改めてふるさと納税の光と陰

今年の確定申告も締切(3/15(木))前の最後の週末が終わり、最終コーナーを回って最後のストレートというところでしょうか。弥生のお客さまの利用状況からも、無事に完了した方が一気に増えたことがわかります。利用状況を分析すると、青色申告の方は比較的早めに始めて余裕をもって終わる方が多い一方で、白色申告の方はギリギリねばって締切間際に一気に終える方が多いといった傾向(あくまでも傾向ですので、個々人はかなりばらつきますが)が見えます。

終わった方はお疲れ様でした & まだ終わっていない方はもう一頑張り、まだまだ応援しています!

さて、確定申告ネタということで、ふるさと納税のお話を少々。ふるさと納税というと盛り上がるのは年末にかけてですが、実際に節税メリットを享受するためには、(ワンストップ特例の適用を受けない限り)確定申告が必要になります。

確定申告では、寄附した金額を申告する訳ですが、実はもう一点考慮が必要なポイントがあります。それは多額の寄附を行い、またそれに伴って多額の返礼品を受け取った場合に、一時所得の申告が必要になるということ。例えば、2万円のふるさと納税を行い、1万円(相当)の返礼品を受け取った場合、この1万円が一時所得に該当するということです。

ただし、申告時に一時所得の金額を計算するにあたっては、

一時所得の金額 = [A: その年中の一時所得に係る総収入金額] - [B: その収入を得るために支出した金額の合計額] - 50万円

という計算式になっており、返礼品の合計額(およびその他の一時所得)が特別控除額である50万円を超えない限り、課税対象にはなりません(なお、返礼品の贈与は寄附の対価としてではなく別途の行為として行われていると位置付けられますので、寄附金は上記の計算式のBには該当しません)。仮に寄附金に対する返礼品の割合が50%だとすると、100万円寄附してようやくこのラインに達しますので、対象となる方は限られるものと思います。ただし、満期保険金を一時金で受領したなどの場合には、これも一時所得となり、あわせて50万円の特別控除額を超えるかどうかの判定になります。つまり、他に一時所得があった場合には、ふるさと納税の返礼品がそれほど大きな金額ではなくても、結果として特別控除額を超え、申告が必要になる可能性もありますので、要注意です。

一方で、一時所得として申告が必要になりうるほどに返礼品が出されるのは、どうなの、という論点もあるでしょう。これだけふるさと納税が広がってきた背景には返礼品の存在があるのは間違いないことだと思います。私自身もふるさと納税をする中で、まずは震災復興のための寄附を優先して行いますが、ここ数年は返礼品目当てのふるさと納税も行うようにしています。そういった中で、どういった自治体にどういった名産品があるのかを知るようになった(そして実際に、体感するようにもなった)ことは間違いなくふるさと納税のメリットだと思います。

一方で、ふるさと納税が返礼品競争に陥り、単なるお得なネット通販になりつつあるというのもまた事実です。この総務省のサイトでは、ふるさと納税の実績や各種の調査、自治体に向けた通知などが時系列でまとめられていますが、ふるさとに関心を持ってもらえるという「光」の面と、返礼品競争に陥っている/陥りかねないという「陰」の面のせめぎ合いが垣間見えます。

直近では昨年の4月1日に総務大臣名で、ふるさと納税の趣旨を鑑み、金銭類似性の高い返礼品や資産性の高い返礼品を「送付しないようにすること」、また、返礼割合については、「社会通念に照らし良識の範囲内のものとし、少なくとも、返礼品として3割を超える返礼割合のものを送付している地方団体においては、速やかに3割以下とすること」とかなり踏み込んだ(自治体向けの)通知が行われています。

あくまでも個人的な見解ですが、納税者の立場からすると、制度として認められている以上、返礼品の最大化を図ることは合理的なことだと思います。もちろん、ふるさと納税の趣旨に鑑み、ふるさとを応援することが大事ですし、その中で、特に災害復興などについては、返礼品がなくても優先させるべきだと思いますが。

納税者側の合理的な行動は変えられない以上、やはり自治体側で返礼品競争に歯止めをかけるべきですし、その観点からは、実質的な返礼品3割規制も、妥当なことだと思います。ふるさと納税がこれ以上過熱し、弊害ばかりが見えるようになってどこかで揺り戻し(極端な場合、制度の廃止)が避けられなくなるまで放置するのではなく、徐々に徐々に制度としてあるべき姿を目指していくべきだと考えています。今回は3割という通知が行われた訳ですが、これが段階的に2.5割、2割…となっていく、また、所得の高い人ほど、累進的にふるさと納税の枠が大きくなる仕組みも、どこかで見直しが必要でしょう。同時に、返礼品ではなく、集まった寄附をどのように使うのかにより注目が集まるようになっていくようになっていく。そうやって、一定の時間はかかりながらも、本当の意味でのふるさと納税になっていくのではないかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:36 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年03月09日

仮想通貨の確定申告(その2)

前回お話しした通り、仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、原則として、雑所得となります。単純に言えば、仮想通貨の売却金額から購入金額(および存在すれば必要経費)を引いて、利益額を算出し、それを雑所得の金額として申告することになります。

例えば、昨年中に1 BTCを500,000円で購入し、その後1,000,000円で売却した場合には、所得(利益)額が1,000,000 - 500,000 = 500,000円となるわけです。ここまではシンプルですね。ただ、何回かに分けて購入した、また、購入したうちの一部のみを売却した、といった場合には、計算は複雑になっていきます。この場合、基本的に移動平均法によって、売却した分に見合う取得費(要は原価)を計算することになります。具体的な計算ロジックは、スモビバで宮原先生が解説していますので、参考にしてみてください。

取得費(原価)を計算する方法には移動平均法の他に、総平均法という方式もあります。いずれもなかなか面倒ですが、実はこの種の計算は株式取引などでも発生します(株式取引の場合、総平均法を用いるとされています)。株式取引やFXなどの場合は、証券会社やFX業者がこういった計算を行い、所定の年間取引報告書を発行してくれるため、通常は自分で計算する必要がありません(さらに株式取引で特定口座を利用している場合には、源泉徴収によって申告分離課税が完了し、確定申告も不要になります)。これも前回のように、仮想通貨が急速に盛り上がった故に、制度が追いついていないという面もあるように思います。

もっとも、仮想通貨の場合には、複数の取引所を併用できる、自分で保管・管理することもできる、モノの購入にも利用できるといった意味で、取引を一元的に把握できる取引報告書を作りにくいという事情もありそうです。そこで今年に入ってから、仮想通貨の申告所得額を計算するためのツールが複数リリースされています。ざっと挙げてみると…


いずれも、取引所から取引履歴を取り込んで、損益計算ができるようになっています。あとは、算出された所得金額を確定申告書に記載すればいいということになります。

本当はこういったツールを利用比較しておススメしたいところですが、残念ながら私は仮想通貨を持っておらず、おススメができる状態にありません…。一つ言えるのは、最終的に申告につながるものですから、キチンと税理士の目が行き届いたサービスの方が確実だと思います。そういった意味で、あえて一つ挙げると、CryptoLinCは私も良く存じ上げている先生が自ら立ち上げた会社ですので、間違いはないだろうと思います。

さて、仮想通貨取引による所得金額が算出出来たところでどうするか、ですが、もちろん会計・申告ソフトをご利用頂いてもいいとは思いますが、残念ながらその必然性はありません。会計・申告ソフトは、帳簿を付けられることに価値がある訳ですが、仮想通貨取引による雑所得は、そこまで求められていませんから。給与所得と仮想通貨取引による雑所得だけという方は、ぶっちゃけ、国税庁が提供する確定申告書等作成コーナーでも十分だと思います。どうしても弥生を使いたいという方(笑)は、「やよいの白色申告 オンライン」でしたら永年無料ですから、宜しければどうぞ。

ただ、特に多額の利益が発生しているという場合には、本当は自ら申告するよりも、税理士に任せた方が安全だと思います。もっとも、さすがに今から依頼して引き受けてくれる税理士はいないと思いますので、一旦自分で出しておき、その後税理士に相談し、必要に応じ修正申告するというリスクマネジメントも必要かもしれません。

さあ、いよいよ申告締切前の最後の週末になります。弥生オンラインのアクセスもこの週末がピークになるのではないかと思います。弥生は皆さまが無事に申告を終えられるよう、全力で応援しています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:10 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年03月07日

仮想通貨の確定申告(その1)

3月に入って、確定申告も後半戦です(所得税の確定申告は3/15(木)が申告期限)。やよいの青色申告 18の販売本数も週ごとに着実に増えていますし、また、弥生オンライン(やよいの白色申告 オンライン/やよいの青色申告 オンライン)も顕著にアクセスが増えてきています。

さて、今年の確定申告での大きな話題と言えば、仮想通貨の確定申告。仮想通貨の代表格であるビットコイン(BTC)は2009年に運用が開始されていますので、もうそれなりな期間存在してきている訳ですが、昨年大きく値上がりしたこと(昨年初で1 BTCがUS$1,000以下だったものが、昨年末には$15,000前後に10倍以上値上がりした)を受け、税務上の扱いが注目されるようになりました。また、これを受けて、昨年に国税庁より仮想通貨の所得税上の取扱いが公表され、確定申告が必要であることが明確化されました。

こちら(pdf)は国税庁が昨年12月に公開した「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」という資料ですが、冒頭に書かれている通り、仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、原則として、雑所得となります。雑所得というのは、他の9種類の所得(事業所得や不動産所得、給与所得など)のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。

資産運用の手段としては、他に株式外国為替証拠金取引(FX)先物取引などがありますが、これらは、他の所得の金額と区分して税金を計算する「申告分離課税」という仕組みがあります。これらの申告分離課税は、所得税15%の税率に固定されています(この他、地方税5%および復興特別所得税が課せられます)。

これに対して、仮想通貨は雑所得として他の所得と合算の上、合計の所得金額に対して課税される総合課税となります。総合課税の場合は、最高で45%の所得税率(課税対象の所得金額が4,000万円以上)となりますから、地方税10%および復興特別所得税とあわせ、最大で利益の半分以上を課税されることになります。

こうやって見ると、仮想通貨は(少なくとも昨年は)大きく儲かった一方で、税制面では圧倒的に不利であることがわかります。ただ、これは税制が実態に追いつくまでの一過性の現象なのではないかと思います。FXには業者との相対取引になる店頭FXと取引所での取引となる取引所FXがありますが、かつては店頭FXが総合課税、取引所FXは申告分離課税と、税制上の扱いが異なっていました。しかし、これはFX取引の普及もあり、2012年に、申告分離課税に一本化されています。この例に倣えば、仮想通貨も、投機ではなく、資産運用の手段として定着するようであれば、申告分離課税として制度が整備されうるのではないかと思います。

とはいえ、少なくとも今年はまだ雑所得として申告し、総合課税を受ける必要があります。長くなってしまいましたが、次回には、雑所得としての申告について、もう少しお話ししてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:13 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年02月13日

いよいよ目前

2月も中盤ということで、いよいよ確定申告が間近に迫ってきました。今年の(所得税の)確定申告は、今週の金曜日、2月16日から3月15日(木)までです。

毎年のことですが、お客さまの申告のお手伝いに全力を尽くしつつ、自分の申告もしなければなりません。自分の分は、できるだけ申告が始まる前に終えようとは思っているのですが、ここ数年は結局申告期に入ってしまっています。

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私の場合は、給与所得ということになるので、売上も経費もしっかり帳簿をつけなければならないお客さまよりは申告はまだ簡単です。私の申告で手間がかかるのは、寄附金控除、保険料控除、医療費控除といった控除を受けるための証憑の整理。今年は、既にこれら証憑の整理は終えているので、ちょっと安心してしまっているところがありますが、油断することなく、今月中には申告を済ませたいな、と思っています。

申告の面ではまだラクと言える給与所得ですが、もし許されるのであれば、私自身は事業所得にしたいぐらいです。事業所得の場合は、売上に対し、経費をかなり自由に計上することは認められています(もちろん売上を上げるために必要な経費という大前提はありますが)。一方で、給与所得の場合は、経費を計上することができません。

給与所得の場合も、書籍を購入したり、会食で情報交換をしたりという経費はかかります。このため、「給与所得者が、勤務ないしは職務の遂行のために支出する費用を概算的に控除する」目的で給与所得控除という控除が認められています。ただ、この給与所得控除は近年顕著に減額されています。2012年までは、給与所得が増えていった際には、増分の5%は認められていた(つまり青天井だった)のですが、2013年から上限が設けられるようになり、その上限が245万円→230万円→220万円と段階的に引き下げられています(さらに今後は195万円まで下がることが既定路線となっています)。

もちろん、実際にそれだけ経費がかからないケースも多いでしょうが、ポケットマネーで賄うことの多い経営者の場合、この金額を上回ることもあるでしょう(私は確実に超えています、苦笑)。

本来的には、概算控除としての現行の給与所得控除と、実費を(帳簿をつける等の要件は必要でしょうが)認める実費型の給与所得控除のいずれかを選択できるようにすべきだと思います。ググっていたら、昭和61年10月の政府税制調査会の「税制の抜本的見直しについての答申」(pdf)で「しかしながら、給与所得者の不満の一因が、勤務に伴う費用の実額控除が認められず、源泉徴収によつて課税関係が終了し、納税義務の確定手続に参画する途がないことにあるとすれば、たとえ実額控除を選択する事例が少ないこととなつても、サラリーマンが確定申告を通じて自らの所得税の課税標準及び税額を確定させることができる途を拓くことは、公平感の維持、納税意識の形成の上でも重要なことと考える。このような見地から、勤務に伴う費用の実額控除と概算控除との選択制を導入することが適当である。」と書かれていますから、昔からある発想ではあるのですが。

実は、実際に経費がかかった場合には、(部分的に)控除を認めようという制度はあるにはあるのです。「給与所得者の特定支出控除」という控除ですが、実際にはこの特定支出控除は制約が大きく、実質的にはほとんど使えない制度です。長くなるので詳細は割愛しますが、実際に最も多く支出するであろう、書籍や交際費などは上限が65万円に限定されており、その上で、特定支出が給与所得の1/2を超えた場合に、その超えた分しか認められないため、そういった制度があることに意味はあっても、実際のメリットはほとんどありません。

そう考えると、申告の手間は確かにかかりますが、自分で経費を管理し、そしてそれを申告することによって合法的に節税できる事業所得(+不動産所得)の皆さんは、私からすると非常に羨ましい存在です。ましてや青色申告を選べば、使ってもいない経費分を青色申告特別控除として得られるのですからね。
posted by 岡本浩一郎 at 22:04 | TrackBack(0) | 税金・法令

2018年01月22日

今年もそろそろ

今日は東京で本格的な降雪。お昼までは雪は降っても積もらない状態でしたが、帰宅が気になる頃にはかなり積もり始めてきました。私は仕事が片付いた17時過ぎにオフィスを出て帰ってきましたが、遅れつつ & 混んではいたものの、無事に横浜まで帰ってくることができました。皆今日は可能な限り早くに帰るようにとアナウンスしたこともあり、18時までにはほとんど帰宅したようです。それでも、帰宅に苦労しつつも、ちょっとワクワクしてしまうのは、雪ならではですね(雪国からすると何のワクワクもないのでしょうが、笑)。

さて、1月も後半ということで、いよいよ確定申告の時期が迫ってきました。今年の(所得税の)確定申告は、2月16日(金)から3月15日(木)までです。還付申告の場合には、この期間より前に申告を行うことができますので、既に準備万端の方もいらっしゃるかもしれませんね。還付でない場合でも、3月15日までは意外にあっという間ですから、そろそろ準備を始めたいところです。

弥生では、毎年、最新の法令に基づいた申告ができるよう、この時期に申告機能のバージョンアップを提供しています。先週末にはデスクトップ製品向けに、平成29年分(=今回の申告向け)の確定申告モジュールを提供を開始しました。まずは、やよいの青色申告 18ご利用の方向けの提供を行っていますが、間もなく、弥生会計 18ご利用の方向けの提供も順次行っていきます。なお、オンライン製品(やよいの白色申告 オンライン/やよいの青色申告 オンライン)向けの平成29年分の確定申告機能については、少々遅くなって恐縮ですが、2月上旬の提供を予定しています。

今回の確定申告で新たに導入された制度が、セルフメディケーション税制。セルフメディケーション税制というのは、日頃から健康診断を受けるなど健康管理に取り組んでいる人が、特定の市販薬を購入して治療した際、その費用が控除対象になる制度です。対象の医薬品を年間1万2千円を超えて購入した際に制度の対象となり、最高で8万8千円の所得控除を受けることができます。

所得控除を受けられる(=所得税を下げることができる)という意味では、朗報なのですが、この制度は、従来からある医療費控除との排他適用になります。つまり両方を同時に享受することはできず、どちらかを選ぶ必要があります。また、セルフメディケーション税制については、日頃から健康診断を受けるなど健康管理に取り組んでいる必要があり、なおかつ取り組んでいることを証明しなければなりません。

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弥生では、所得税確定申告書の作成の際に、セルフメディケーション税制に対応していることはもちろん、弥生の法令改正情報サイトを通じて、セルフメディケーション税制とは何か、どういった薬が対象となるのか、医療費控除との関係は、本税制の適用を受けるために必要とされる健康管理の取り組みとは、といった情報も提供しています。

税金は社会を支えるために必要なものですが、一方で、無駄には払いたくないもの。制度が頻繁に変わる中でそれにキャッチアップすることは大変なことですが、弥生の製品/サービスを徹底的にご活用頂ければと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 20:56 | TrackBack(0) | 税金・法令

2017年12月15日

建て増しではなく、抜本的な対応を

昨日、与党の税制改正大綱が発表されました。内容としては概ね事前に報道されてきた通りで、大きなサプライズはありません。結果的には個人を軸に2,800億円の増税になるとのこと。衆院選では論点にならなかったのに、なぜいきなり増税が決まるのか、あるいは増税の負担が「取れるところ」に偏っている(いわゆる高所得者ということになりますが、実際に数字を見てみると、高所得者以上に狙い撃ちにされているのは喫煙者ですね)などの批判もあるようですが、ここではその観点でのコメントは差し控えます。

ただ、今回の大綱は、抜本的な対応(の第一歩)ではなく、建て増しに終わってしまっていることがとても残念です。今回の改正で、誰でもが控除を受けることができる基礎控除が10万円上がることになりますが、同時に、所得金額が2,400万円を超える人は減額、2,500万円を超える人はゼロというこれまでにない仕組みが導入されます。これは所得控除方式では、同じ控除額でも(実効税率が異なるので)所得が大きい人の方が控除による減税額が大きくなってしまう(要は逆進性がある)ことが問題とされたためです。

しかし、基礎控除の逆進性を問題とするのであれば、本来のあるべき姿は、所得を問わず同じ金額が控除される税額控除とすべきです(もっと言えば給付付き税額控除)。これに対し、今回の税制改正大綱は、税額控除方式のメリットを認めながらも、「現行の所得控除方式から変更した場合、負担の変動が急激なものとなりかねないことから」見送り、現行の所得控除方式の建て増しである「逓減・消失型の所得控除方式」を採用しています。

また、今回の大綱では、基礎控除が10万円上がるかわりに、給与所得控除が10万円下がることになっています。もっとも同時に、「子育てや介護に対して配慮する観点から」子育て世帯や介護世帯は「負担増が生じないよう措置を講ずる」としています。この趣旨自体には全く異論はないのですが、では子育て世帯のためにかつての政権で廃止された(年少)扶養控除を復活するのかと思いきや、「所得金額調整控除」という新しい控除が作り出されました。これも建て増し。

これで思い出すのが、住民税での調整控除ですね。これはかつて、税源移譲によって住民税の税率が10%に統一された際に、「所得税と市・県民税の人的控除額の差額に起因する負担増を調整するため」に導入されたものです。住民税は、納税者ではなく、地方自治体が計算して通知されるものだけに、この控除についてご存じない方が多いかと思いますが、この調整控除は数字の辻褄を合わせるためだけのものであり、必要以上に複雑な仕組みになっています。

いやいや、税金の計算が面倒臭くなると、会計ソフトメーカーや税理士には嬉しいんでしょ、と思われるかもしれません。そんなことはありません。事実として、事業面では確かに複雑な税制の方がプラスかもしれません。ただ、社会的コストを最小化するという意味で、税制は本来、可能な限りシンプルであるべきだと思っていますし、私がお付き合いさせて頂いている税理士の先生方も同じように考えています。

確かに、短期間で検討しなければならない、そして影響をでる人をできるだけ少なくするようにと考えると、今回のような「建て増し」にならざるを得ないことは理解できます。ただ、それを繰り返していけば、複雑怪奇で誰も理解できない税制になる一方です。誰も理解できない税制では自分が納めている税金が公平なものかどうか判断できなくなりますから、結果的に税制への不信感を高めることにつながります。少子高齢化の中で、ただでさえ負担を増やさざるを得ない日本で、それが本当に良いことだとは思えません。

丁寧に説明することが必要になったとしても、税制のあるべき姿をキチンと議論し、時間がかかったとしても、建て増しではなく、抜本的な対応を図っていくべきなのではないでしょうか。それこそが、税制への、ひいて言えば国への信頼を取り戻す正道だと思います。

色々と思うところをストレートに書いてしまいました(汗)。もちろん、今回の税制改正大綱が正式に法令化された暁には、弥生としてキチンと対応していきますので、ご安心ください。
posted by 岡本浩一郎 at 19:42 | TrackBack(0) | 税金・法令

2017年12月13日

額面通りには受け取れない

年末が近付き、今年も税制改正に関する報道が続いています。昨日は、日経で、「青色申告、電子なら控除10万円増 20年1月から」という報道がありました。「政府・与党は2020年1月から、自営業者や個人事業主が紙ではなく電子申告を利用した場合に、控除の金額を10万円増やすと決めた。会社員にとっての給与所得控除にあたる「青色申告特別控除」を対象にする」とのこと。

おっ、これはいいニュースと思ったのですが、よく読んでみると、額面通りには受け取れない話でした。

現在取りまとめが進められている与党の与党税制改正大綱では、2020年1月から、基礎控除を10万円引き上げ、48万円にするということが固まっています。基礎控除は基本的に誰にでも適用になりますから、これは原則的にすべての人が減税対象となることになります。ただし、給与所得のある人向けの給与所得控除は一律10万円の引き下げになるため、結果的に給与所得のある人はプラスマイナスなしということになります。逆にいえば、給与所得控除のない、フリーランス等の事業所得者は基礎控除10万円増になる減税効果だけが効くことになります。

しかし、実はここからが落とし穴なのですが、事業所得者のうち、青色申告をする人に適用される青色申告特別控除が10万円減額されるとのこと。つまり、青色申告特別控除も合わせて考えると実はプラスマイナスがなくなるということです。ただし、冒頭の報道の通り、電子申告をすれば控除額が10万円上乗せされるため、ここまでを合算すれば、再び控除額10万円増(=減税)になるということです。

つまりは、事業所得者は控除額10万円増によって減税になりうるが、それを実際に享受できるのは、青色申告で電子申告をした人のみ、ということになるようです。電子申告自体は、社会的コストを低減する上では有効な手段ですから、電子申告を推進すること自体には全く異論はないのですが、電子申告をしなければ減税を受けられないというやり方には、あまり賛成できません。

このやり方の矛盾が出るのは、白色申告との比較ですね。白色申告はもともと特別控除がありませんから、青色申告特別控除のように10万円減額することができません。つまり基礎控除の増額だけが効くことになり、白色申告の場合は、電子申告をしようが、しまいが、減税になるからです。つまり、国として推進しようとしている青色申告の人にのみ、電子申告でなければ減税にならないというペナルティを与えることになるわけです。(なお、現時点で明らかになっていることからの推測ですので、実際には白色申告にも何らかの調整が入るかもしれません。)

電子申告を推進すること自体に異論はないものの、正直使い勝手がいいと言えないのが現実。そういった中で、今回の施策のポイントは電子申告の使い勝手がどこまで改善されるか、ですね。実はこの増減税が実施される一年前(2019年1月)から、e-Taxの利用が簡便化されることになっており、これによって使い勝手が改善されることが期待されます。

この簡便化の方式としては、大きく分けて1)マイナンバーカードを利用する方式と、2)税務署で本人確認の上、ID/パスワードを取得する方式があります。現状のマイナンバーカードの普及状況を考えると、実際問題としてどこまで簡便になるのか不安はありますが、マイナンバーカードを必要としない方式2)も合わせ、これならe-Taxがいいね、となるか、期待したいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:44 | TrackBack(0) | 税金・法令