2023年03月07日

スマホPayでの納税

確定申告期間も終わりが見えてきました。今年の確定申告の期限は3/15(水)です。

さて、皆さん徐々に確定申告は進んできているとの前提で、先週はe-Taxでの申告についてお話しをしました。弥生であれば、「確定申告e-Taxオンライン」とスマホとマイナンバーカードさえあれば、簡単に申告を済ませることができます。ただ、ちょっと待ってください。紙での申告にせよ、e-Taxにせよ、申告書を送った/送信した段階でホッとしがちですが、実はそこで終わりではありません。

申告期限である3/15(水)までに済ませるべきことが二つあります。一つは、今年は白色申告だったという方が対象になりますが、所得税の青色申告承認申請書を提出すること。今年の3/15までに申請をしておけば、来年の確定申告(=今年分の所得の申告)は青色申告とすることができます。前回は、弥生の「起業・開業ナビ」の新サービスとして提供を開始した「弥生のかんたん開業届」では、開業届と一緒に青色申告承認申請書も簡単に作成できるとお話ししました。

もう一つ、これは白色申告でも青色申告でも共通ですが、納税を済ませること。申告期限は、納税の期限でもあります。フリーランスのライターのように、源泉徴収の対象になる売上が大半という場合には、還付の申告となることもありますから、そういった場合は還付を楽しみに待っていればいいということになります。しかし、納付の申告となった場合には、期限までにきっちりと耳を揃えて(苦笑)納付する必要があります(厳密に言えば、利子(税)はかかりますが、延納という選択肢もあります)。

納付は税務署や銀行等で行うことができますが、2017年からはクレジットカードでの納付もできるようになりました。クレジットカードであれば、ポイントも付くし、実際の支払いのタイミングも遅らせることができるということで、有力な納付手段と言いたいところですが、納付額の少なくとも0.83%という手数料が発生するため、ポイントの観点では実は微妙です。少なくとも0.83%と書きましたが、厳密には納付税額10,000円ごとに手数料が83円増えるようになっていますので、実際に0.83%になるのは、10,000円の倍数の時のみ。極端な例で言えば、10,001円の納税では、手数料は10,001円〜20,000円が一緒で167円となるので、実質的に1.67%(=167/10001)もの手数料となりますので、注意が必要です。また、国税のクレジットカード納付については、ポイントの対象外、あるいは還元率が低くなるというカードもありますのでさらに注意が必要です。

そういった中で、もう一つ選択肢になるかもしれないのが、今年の申告から選べるようになったスマホPayでの納税。PayPayやd払い、auPayといったスマホアプリの決済手段でも納付ができるようになりました。しかもこちらは決済手数料はかかりません。となると、スマホPay側のポイントで少しはおトクになりそうです(が、実際にポイント対象になるかどうかは、各スマホPayサービス側で確認した方がよいと思います)。ただ、一点難点があって、それは納付しようとする金額が30万円以下(かつ利用スマホPayの限度額以下)の場合にのみ利用できるということ。そういった意味で、使えるケースは限られるかもしれませんね(ちなみに私は数年前から自動車税の納付にスマホPayを活用しています)。

もっとも手数料もかからず、金額によらず、確実に実際の支払いを遅らせることができるという意味では、口座振替での納税が一番確実というのは変わりません。今年の場合、口座振替は4/24(月)となっていますから、一ヶ月以上支払いを延ばすことができます。なお、一度手続きをすれば原則として翌年以降も振替納税が続くようになっています。

さあ、申告期限まであと一週間ちょっと。ここまで来たらラストスパートですよ。
posted by 岡本浩一郎 at 22:15 | TrackBack(0) | 税金・法令

2023年02月24日

事業所得か雑所得(業務)か 2023

前々回は令和4年分と令和3年分の申告書について、どのような違いがあるのか、マニアックに(笑)語ってみました。項目が大きく変わった訳ではないものの、様式全体としては実は結構な変化量です、とお話ししました。

今回の確定申告で、一つ大きく変わるのは、事業所得と雑所得の扱い。二年前(令和2年分)から雑所得の中に「業務に係わるもの」という新しい区分が新設されました。国税庁の定義では、雑所得とは「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」とされています。この中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。

ただこの時点から、事業所得なのか、あるいはそれに該当せず雑所得(業務)となるのかの線引きはグレーな部分があると指摘をしてきました

さらに、業務に係る雑所得について、令和4年分(つまり今回の確定申告です)から求められることが格段に増えるというお話しもしました。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます(なお、ここでいう300万円/1,000万年を超えてというのは判断する対象年が前々年(今回で言えば令和2年分)なので、注意が必要です)。

それを見越してか、雑所得(業務)の行が追加された段階(令和2年分)から、雑所得(業務)の行には、区分欄が用意されていたものの、これまでは使われてきませんでした。自称確定申告書ウォッチャー(!?)として、昨年には来年(今回)からこの区分欄の記入が求められるだろうという予言をしていました。業務に係わる収入が300万円を超え、領収書等の保存(5年間)が求められる場合には「1」を、また収入が1,000万円を超え、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが求められる場合には「2」を記載しなさいとなるのでは、というのが私の予言です。

それでは今回実際にどうなったかと言うと、予言は概ねハズレ。この区分欄が使われるようになるというのはアタリですが、使われ方はハズレでした。正解は確定申告の手引き(pdf)を見るとわかりますが、「業務に係る雑所得の金額の計算上、現金主義の特例を適用する場合は」区分欄に「1」を記入する、でした。ちなみにこれは、雑所得(業務)の計算上、売上や経費を現金ベースで計上することを認める(例えば年末に売掛で売上を計上した場合には、その年の売上には含まれない)という特例に関するものです(収入金額が300万円以下の場合にのみ認められる特例です)。

また事業所得と雑所得の扱いについて、昨年夏に大きな進展があったことは本ブログでもお話しした通りです。昨年の夏に事業所得か雑所得かの判断において、1) 主たる所得か、主たる所得でないか、また、2) 収入が300万円超か、300万円以下かという二つの組合せで判断するというパブコメが実施され、大きな反響を呼びました。そして結果的に、当初案からは大きく変わり、帳簿が作成され保存されているかという判断ポイントに変わりました。結果的に、副業であっても、あるいは収入が300万円以下であっても、帳簿を作成し、保存していれば、事業所得と認められ得るということになりました。

重要なのは、この考え方は令和4年分(今回!)から適用されるということです。つまり、今回の申告において、本当に事業所得で良いのか(雑所得(業務)とすべきではないか)、あるいは逆に、本当に雑所得(業務)で良いのか(事業所得として認められうるのではないか)という点をしっかり考える必要があります。

有利なのは当然事業所得ということになりますが、昨年のパブコメを通じて、帳簿付けをしていれば事業所得と認められ得ることが明確になりました。ただ、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかにより判定する」という原則は変わっていません。そのため、これはあくまでも個人的な意見ですが、自分としてこれは事業であると自信をもって説明でき、なおかつ帳簿をしっかり付けているのであれば、事業所得で良いのではないかと考えています。

この際、開業届を出していないから、事業所得と認められないのでは、と気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、実は開業届を出さなくても特に罰則はありません。開業届を出していなくても、事業所得として最初に申告をするとそれが開業届の代わりになるというのが実態です。開業届を出したから事業所得と認められる訳でもありませんし、逆に開業届を出していないから事業所得として認められないという訳でもありません。

開業届よりむしろ重要なのは、所得税の青色申告承認申請書です。これを出さない限り青色申告は認められません。ですから、やはり基本は開業届と所得税の青色申告承認申請書をセットで提出するのが望ましいということは揺るぎません。

仮に、開業届は出していないけれど、事業として認められ得る実態がある、帳簿もちゃんと付けた、という方は今回は事業所得として白色申告し、さらに今回の申告時にあわせて所得税の青色申告承認申請書を提出し、来年こそはメリット山盛りの青色申告としたいところです。

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あ、今回はまず白色申告という方は、もちろん、やよいの白色申告 オンラインを是非どうぞ! フリープランであれば、全ての機能をずっと無料で使っていただけます。ということで、しっかりと宣伝で終わるのでした(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 18:31 | TrackBack(0) | 税金・法令

2023年02月20日

間違い探し 2023

先週木曜日から確定申告期間が始まり、最初の週末が過ぎました。まだ時間は十分にありますが、かと言って放置ではなく、ひとまず書類の整理から始めたいところです。

さて、確定申告期間ということで、毎年マニアックな方から期待されている(?)確定申告書について熱く語ってみたいと思います。ということでまずはこちらをご覧ください。今回の確定申告(令和4年分)の確定申告書(第一表)の様式です。

(令和4年分) 2023022001.png

一方でこちらは令和3年分の様式。どこが違うでしょうか。

(令和3年分) 2023022002.png

一昨年の令和2年分は、その前年の令和1年分と比べて、10年に一度のレベルの大幅変更でした。逆に今年は、昨年に続き、変更量としては小さめです。一昨年がメジャーバージョンアップであれば、昨年と今年はマイナーバージョンアップと言ってよいかと思います。少なくともパッと見は。ただ、よーく見ると、実は結構変わっています。

まず、これは予告されてきたことですが、今回の申告書から申告書A/Bという区分がなくなりました。もともと確定申告書には申告書Bという標準版と申告書Aという簡易版が存在しましたが、今回から申告書Bをもとにしたものに統一されました(簡単に言えば、申告書Aがなくなりました)。上の令和3年分の様式のヘッダーには「申告書B」と記載されていますが、令和4年分ではシンプルに「申告書」となっています。もともと事業所得は申告書Bでないと申告できませんので、弥生をご利用いただいているお客さまには影響はありません。

もう一つ、書式がなくなるという観点では、修正申告をするための申告書第五表「修正申告書(別表)」がなくなりました。これまでは、申告で間違っていた場合(より具体的に言えば、税額を実際より少なく申告していた場合)には、正しい申告内容に改めた申告書B第一表と、修正前の申告内容を記す申告書第五表をあわせて提出する必要がありました。しかし、冷静に考えれば、修正前の申告内容は既に税務署に申告されているわけですから、改めて提出する必然性はありません。

そのため、今回の確定申告から、申告書第五表を廃し、その代わり修正申告にかかわる最小限の情報を通常の申告書第一表に盛り込むことになりました。上の令和4年分の様式の右側の真ん中より少し下に「修正申告」にかかわる二行が追加されています。

必然性のない書式をなくすことは大賛成。ただ、ソフトウェア開発という観点では、地味ながら結構な影響があります。何ぶん申告書はスペース的にキツキツなので、修正申告の2行を追加するだけでも結構な影響が生まれます。この2行(+公的受取口座に関する行)を追加した分、右側一番下の整理欄のスペースが不足し、整理欄4行のうち、1行だけが左側に移動しています。また、整理欄の下にあった税理士の署名欄が消滅し、これは実は第二表(2ページ目)に移動しています。

整理欄のうち1行が左側に移動した分のスペースはどこで生み出されているかというと…。これは本当に間違い探しのレベルですが、わかりますか?

正解は収入金額等の欄で「利子」という行がなくなりました。もともと利子所得については、国内で発生する分は基本的に源泉徴収されて完結するため、確定申告書上で利子所得を記載するのは海外で発生した利子がある場合など、限定的です。また、利子所得の場合、収入金額 = 所得金額となるため、収入金額の行は不要とされた訳です。とはいえ、これまでの確定申告書は、収入の欄と所得の欄で呼応するようになっていましたので、スペースが足りない中での苦肉の策と見えなくもありません。利子の行がなくなったことによって、収入金額等の欄の各行に付与されている項番(ア)〜(シ)も、(エ)以降一つずつずれています。

細かい説明は避けますが、先ほどお話ししたように第一表から税理士の署名欄が押し出され、第二表に移動した関係で、今度は第二表でスペースを捻出するための細かい調整が入っています。

ということで、おわかりいただけたでしょうか。令和4年分の確定申告書として、中身としてはそこまで大きな変更が入った訳ではないのですが、様式としては実はメジャーバージョンアップ級に近い変更です。もちろんお客さまが支障なく申告できるようにすることが弥生の仕事ですから、キチンと対応済みですが。

行がずれたということでそれなりな開発量が発生するのは、紙の申告書だから。当面は難しいことは認識しつつも、いっそのこと全てがe-Taxになってくれればいいのにと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:38 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年09月02日

雑所得にも特別控除?

事業所得か雑所得かの判断基準に関するパブコメは8/31で締め切りとなりました。パブコメを受けてどのような結論になるのか興味津々です。ただ、先週末の段階で既に4,000件超の意見が寄せられていたということで、整理するのも時間がかかりそうですね。

これまでにもお話しした通り、私自身としては今回の改正については全体としては賛成です。事業所得と雑所得の境界線が曖昧だった中で、一つの判断基準が示され、どちらに該当するかの予見性が高まることはプラスだと考えているからです。一方で、今回示された、主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合についてのみ、反証がない限り雑所得という基準に関して、反証となり得る事例を示すべきだとも考えています。例えば副業だが例年は収入300万円以上であり、社会通念上事業と称するに至る程度になっている方が、新型コロナウイルス禍など外的な要因により一過性で収入が300万円未満となった場合。この場合、外形的には今回の判断基準では雑所得となりますが、事業所得として扱うべきだと思いますし、それが明示されるべきだと考えています。

副業を推進しようという動きもある中で、収入金額が 300 万円を超えない場合(かつ有効な反証がない場合)に税金上のメリットがない雑所得になることに対する反対の声もあるようです(というか報道によれば、そういった声が大きいのかと思われます)が、それであれば、雑所得にも一定の税制上の優遇措置を設けるという方向もありえるのではないでしょうか。事業所得でなおかつ青色申告の場合、1) 青色申告特別控除、2) 損失の繰越、3) 損失の他の所得との通算というメリットがありますが、例えば、雑所得についても一定の条件の下で特別控除を認める(逆に3)は認めない)という考え方もあるのではないかと思います。

以前お話ししましたが、業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます(ただし、逆に言えば、300万以下であれば領収書の保存すら求められないわけですから、雑所得と、帳簿の作成と証憑の保存が求められる事業所得とは大きく性格が異なることがわかるかと思います)。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。

上記も踏まえ、収入に関わらず、業務に係わる雑所得について、収支内訳書を作成し提出した場合には、特別控除として一定額の控除を認めるというのはどうでしょうか。収支内訳書は、もともと事業所得の白色申告の際に作成するものです。事業所得の白色申告について、2014年分から帳簿付けが義務化されていますが、これと足並みをそろえ、事業所得の白色申告および業務に係わる雑所得ともに、帳簿付けをして収支内訳書を提出すれば特別控除が認められるとなれば、やる気もおきるのではないでしょうか。

特別控除が認められるということは、納税者にとっては節税になるわけですから、国の税収としてはマイナスになるのではないかと思われるかもしれません。ただ、帳簿があることによって、より確からしい申告が可能になるわけですから、全体としては納税者も嬉しいし、国としても嬉しいとなり得るのではないかと思います。立場的に我田引水と見えるかもしれませんが(笑)、正しく帳簿を付けて正しく申告する人がトクをする仕組みのお手伝いをしたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:23 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年08月30日

事業所得か雑所得(業務)か、新たな展開(その2)

前回は、事業所得か雑所得かの判断基準について、国税庁より通達の一部改正の形で新しい基準(案)が示され、現在パブコメが募集されているとお話ししました。前回もお話ししたように、私個人としては本改正については全体としては賛成です。事業所得と雑所得の境界線が曖昧だった中で、一つの判断基準が示され、どちらに該当するかの予見性が高まることはプラスだと考えているからです。

前回整理したように、事業所得か雑所得かについて、縦軸に、その所得が主たる所得か、主たる所得でないか、横軸に収入が300万円以上か、300万円未満かというマトリックスで整理すると、以下のようになります。

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今回の一部改正で明確になるのは、右下の部分です。右下、つまり、主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合についてのみ、原則として(反証がない限り)雑所得ということです。

これを逆の視点から見れば、左上、つまり、主たる所得であり、かつ収入金額が300万円以上の場合には、特別な要因がない限り、事業所得となるのはもちろんですが、左下、つまり、主たる所得ではないが、収入金額が300万円以上の場合にも、そして右上、つまり、主たる所得だが、収入金額が300万円を超えない場合にも事業所得になり得るということです。ただし、左下/右上については、あくまでも社会通念上事業と称するに至る程度になれば事業所得になり得るということには注意が必要です。

もっとも、本来は左下/右上なのだけれども、一時的に右下になってしまうケースがあるというのが、今回の改正での一番の懸念点です。例えば、本来は左下のケース(副業だが通常は収入300万円以上)で、新型コロナウイルス禍など外的な要因により一過性で収入が300万円未満となった場合。これは外形的には右下になりますが、あくまでも一過性の要因として、左下と同等な扱いを受けるべきだと思います。事業所得(青色申告)のメリットの一つが損失の繰越ですが、新型コロナウイルス禍など外的な要因により一過性で収入が300万円未満となった場合に雑所得になってしまっては、このメリットが享受できず、踏んだり蹴ったりということになります。

もう一つは、本来は右上もしくは左上(いずれも主たる所得)だが、事業立ち上げ期につき結果的に右下に該当してしまう場合。わかりやすい例でいえば、給与所得者が10月から独立開業した場合、収入の多寡だけで見れば給与所得の方が主たる所得になってしまう可能性が高いかと思います。ただ、当人としてはあくまでも独立開業による所得で生計を立てるつもりなのだから、それは事業所得として扱うべきだということです。事業所得(青色申告)で損失の繰越が認められている背景には、事業を立ち上げた直後は収入が安定せず赤字になりやすいことがあるかと思います。だからこそ、開業当初の赤字の繰越(その後の黒字との相殺)が認められている訳です。これに対し、開業当初は主たる所得ではないから、雑所得となってしまっては、本来得られるべき赤字の繰越ができなくなってしまいます。

これらはいずれも、今回の改正案にある「反証」に該当するのだと思います。こういったケースも含め、右下だけれども事業所得として認められる「反証」にどういったものがあるのかについて、より明確にすべきだと考えています。

なお、以上は基本的には私の個人的な意見なのですが、弥生として同様な趣旨でコメントを提出する予定です。
posted by 岡本浩一郎 at 18:46 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年08月29日

事業所得か雑所得(業務)か、新たな展開(その1)

事業所得なのか、あるいはそれに該当せず雑所得(業務)となるのかの線引きについて、本ブログで何度かお話ししてきました。直近ではこの4月に「事業所得か雑所得(業務)か 2022」という記事を書きました。この線引きが曖昧であるということをお話ししてきたわけですが、それを一定程度明確化しようという動きが見えてきました。

これまでもお話ししていることですが、節税という観点では、事業所得の方が圧倒的に有利です。事業所得では、青色申告が認められており、結果的に最大65万円の青色申告特別控除が得られること、また、仮に事業所得で損失が発生した場合には、その損失を例えば給与所得から差し引くことができる(損益通算)など、明確なメリットが存在します。逆に雑所得は、青色申告特別控除的なものは存在しませんし、雑所得が損失であっても、他の所得と相殺することはできません。

しかし、メリットがあるから、何でもかんでも事業所得にできるかというと、そうではありません。事業所得であるかどうかは、社会通念上、事業を営んでいると認められるかどうかという実態で判断されます。実態で判断されるということで、その基準は良くも悪くも曖昧でした。

この曖昧性を多少なりとも改善しようと、国税庁が予定している「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正に関して、今月末の締切でパブリックコメント(パブコメ)が募集されています。もともと業界内ではそれなりに話題になっていましたが、パブコメの期限も近付く中で、メディアでも取り上げられるようになってきました。日経の記事では、「26日までに4,000件以上の意見が寄せられるなど、異例の関心の高さ」「大半が改正反対の趣旨の内容」と報道されています。

私個人としては、(意外かもしれませんが)本改正については全体としては賛成です。上でお話ししたように、事業所得と雑所得の境界線が曖昧だった中で、一つの判断基準が示され、どちらに該当するかの予見性が高まることはプラスだと考えています。

事業所得か雑所得かについて、縦軸に、その所得が主たる所得か、主たる所得でないか、横軸に収入が300万円以上か、300万円未満かというマトリックスで整理すると、以下のようになるかと思います。

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今回の一部改正のキモは、「その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします」という部分です。これはこのマトリックスの右下に該当します(「かつ」なので、右下だけに絞られます)。右下について(のみ)、原則として(反証がない限り)雑所得ということです。

逆に言えば、左下や右上が事業所得になり得る(少なくとも自動的に雑所得ではない)ことが示されたことには意味があると思います。左下で言えば、副業だから自動的に雑所得になるわけではなく、社会通念上事業と称するに至る程度であれば副業でも事業所得になり得る、そしてその収入基準が300万円であると示されたことになります。

今回のパブコメを受けて、副業を推進しようという動きもある中で、副業は全て雑所得というのはおかしい、という反応もあるようですが、そうではない、副業でも事業所得になり得るというのが私の理解です。正確に言えば、左下や右上は自動的に事業所得になるのではなく、あくまでも社会通念上事業と称するに至る程度になれば、事業所得になり得るということには注意が必要です。ここで社会通念上事業と称するに至る程度と判断する(あくまでも一つの材料として)収入が300万円という基準が示されたということになります。

今回のパブコメは、色々なところで波紋を呼んでおり、中には、年収300万円未満では副業とみなされない、だから副業禁止の会社でも年収300万円未満の範囲であれば「副業ごっこ」で副収入を得ることは問題ないはずだ、というどこをどう読めばそういう理解になるのか、というまで登場しています。

今回のパブコメに高い関心が寄せられていることはいいことだと思いますし、賛成も反対も色々な考えがあってしかるべきだと思います(だからこそパブコメの意味があるのだと思います)。ただ、その際には、予定されている改正の中身を正しく理解することが必要であることは言うまでもありません。

私個人としては全体に賛成だとお話ししましたが、若干懸念がないわけではありません。懸念というか、明確化が必要な点でしょうか。これらについて、次回お話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 15:45 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年05月06日

そこまでシンプルではなかった解法

年明けに、私が通っているスポーツクラブで、ロッカーの利用方法が変わったとお話ししました。会員証をプラスチックカードではなく、入館の都度スマホの画面で表示するようにする、という変更にともなって、ロッカーの利用に際し、プラスチックカードを差し込まなくてよいようになりました。

その実現方法がロッカーの大幅な仕様変更ではなく、全てのロッカーに予め会員証と同じものを差し込んでおくというシンプルな解法だったことが驚きだったということをお話ししました。

それから何ヶ月か経っていますが、実際のところシンプルな解法による問題も明らかになっているようです。どのような問題が発生しているのかというと…。

1) 一人で複数のロッカーを使う人が発生

以前は、ロッカーの使用に際し、ロッカーに会員証を差し込むようになっており、結果的に一人で複数のロッカーを利用することはできませんでした(会員証と同じ形状のプラスチックカードを偽造しない限り)。しかし、現状では会員証を差し込むという行為がなくなったことにより、一人でいくつでもロッカーを利用できるようになりました。ただ、私自身としては、一人で複数のロッカーを使う理由が見出せませんが。

2) ロッカーのカギを持ち帰ってしまう人が発生

以前は、ロッカーに会員証を差し込むとはじめて、ロッカーのカギを取り外せる(=ロッカーに施錠できる)ようになっていました。しかし、現状では会員証を差し込むという行為がなくなったことにより、自由にロッカーのカギをかけられるようになりました。例えば、気に入った位置のロッカーがあったとすると、そのカギを持ち帰ってしまうことによって、そのロッカーを事実上占有することができるようになりました。

なぜこれらの問題が発生していることがわかったかというと、これらの行為をやめてくださいという張り紙がされたからです(笑)。

正直何なんですかねえ、という感じです。どんな仕組みにせよ、その裏をかこうとする人はいるものです。それを防ごうとすると、より複雑な仕組みにせざるを得ない。シンプルな仕組みが望ましくても、なかなかシンプルな仕組みに徹しきれないというのも、また現実かと思います。

先日、相続したマンションで路線価などに基づいた不動産評価が低すぎるなどとして課税した国税当局の処分の妥当性が争われた訴訟で、国税当局の処分を適法とした最高裁判決が下され、話題になりました。

誰にとっても税金は多く払いたいものではありません。このため税制の穴を突こうとする人が現れ、それを防ごうと対策を講じる、それでもさらに穴を突こうとする、それを再び防ごうとする、の繰り返しで、税制がどんどんと複雑化してしまう。この繰り返しにはきりがないため、用意されているのが、国税当局の「伝家の宝刀」である「著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」という例外規定です。今回はこの伝家の宝刀の妥当性が問われた訴訟でした。

税制も本来はシンプルであり、誰にとってもわかりやすいことが一番のはずです。ただ、シンプルな解法も万能ではない。シンプルでありながら、ロッカーを占有するように/過度に節税が可能になるように、誰かだけがトクをすることを許さない公平な仕組み。言うは易しいが、現実はなかなか難しい。これは完全に私見になりますが、やはり基本はシンプルであるべきだと思います。シンプルな仕組みの穴を突く、裏をかく人も現れるのだと思いますが、何が許されるのかは、良識/良心で判断すべき、というのは理想主義にすぎるでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:17 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月21日

業務の区分欄

2020年(令和2年)分の所得税の確定申告書から雑所得の中に業務という区分(ここでいう区分は雑所得の中での「公的年金等」「業務」「その他」という分類の意味)が新設されました。またこの際には、新設された業務の行に区分欄(ここでいう区分は付加情報的な意味合い)が設けられました。

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ただ、実はこの業務の区分欄はこれまで記入不要とされてきました。しかし前回お話しした内容を踏まえると、来年の申告からはこの区分欄に記入が必要になってくるのではないかと推測できます。前回お話しした通り、来年の申告からは、業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存(5年間)が義務化され、また、1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられますが、例えば、前者の場合は区分欄に「1」を、後者の場合には区分欄に「2」を記載しなさい、といったようになるのではないかと思います。

厄介なのは、前回もお話しした通り、この判断の元となる収入は前々年の収入であるということです。つまり来年の申告(2022年(令和4年)分)であれば、2020年(令和2年)分が判断対象になることになります。

ここで勘のいい方はお気付きかと思います。そう、雑所得の中に業務という行ができたのが2020年(令和2年)分。2020年(令和2年)分の申告では業務を括りだして申告しているはずだから、その数字を見てくださいということです。つまり、2022年(令和4年)分の申告から領収書の保存や収支内訳書の作成が求められる、そのために、2020年(令和2年)分からしっかり仕込みがされていたということです。

もっともこれは当たり前と言えば当たり前。というのは、今回の領収書保存の義務化や収支内訳書の作成義務化は、令和2年度の税制改正(pdf)で定められたものだからです。つまり令和2年度の税制改正で決まったことが、まず2020年(令和2年)分から確定申告書に反映された。ただその段階では業務の区分欄は使われなかった。満を持して業務の区分欄が実際に使われるようになるのが、2022年(令和4年)分の確定申告(来年春)から、ということです。

要はだいぶ前から既にレールは敷かれていたということになりますが、今回の領収書保存の義務化や収支内訳書の作成義務化については、正直、現段階ではほとんど認知されていないと思いますので、注意が必要です。特に領収書の保存という意味では、今から心がけておかないと来年春の申告時の際に、ない!ということになりかねませんので。

ただ前回もお話ししましたが、雑所得で収入(売上)が300万円、ましてや1,000万円という方は、雑所得ではなく、事業所得として青色申告ができる状態を目指すべきなのではないかと思います。それはすなわち、営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められる状態を目指すということです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:08 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月19日

事業所得か雑所得(業務)か 2022

今年の確定申告期間は終了しました(ただし新型コロナウイルス感染症の影響が続き、申告等ができなかった場合には申請により個別に延長が認められる措置はあり)が、もう少しだけ確定申告の話題を。

昨年、確定申告書の雑所得の中に業務という区分を新設されたということをお話ししました。弥生のお客さまであれば馴染みのある事業所得ではなく、雑所得の一区分としての業務。以前お話ししたように、雑所得とは事業所得等、他の所得のいずれにも当たらない所得とされており、その中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。

実は、この業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。

雑所得には、税金が軽減されるなどの税務上のメリットはないのですが、一方で、帳簿付けも要らず、領収書の保存も要らずということで、申告が簡単というのがメリットでした。これが変わるということです。少し厄介なのは、業務に係わる収入が300万円(1,000万円)を超えた場合、というのは、実は今年分ではなく、前々年の数字が判断基準になります。ですので、そうか、今年はちょっと稼ぎを抑えるかと言っても、実は既に遅く、前々年である2000年の収入が300万円超であれば、来年春の確定申告に向けて、領収書の保存が必要になり、1,000万円超であれば、さらに収支内訳書の作成が必要になります。また、この判断基準は「収入」に基づいています。例えば、利益は50万円しかなくても、収入(売上)が300万円超であれば、領収書の保存が必要になります。

こうなってくると、雑所得ではなく、事業所得の方がいいのではないか、という考え方もあるかと思います。とくかくラクだったのが雑所得のメリット。それが変わった以上は、多少手間がかかっても事業所得(青色申告)で積極的に節税メリットを取りに行くというのもありかと。事業所得で青色申告であれば、最大65万円の青色申告特別控除が得られますから、圧倒的な節税メリットがあることはこれまでにもお話ししてきた通りです。

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難しいのは、雑所得と事業所得は自由に選べるわけではないということ。これも以前お話ししたことですが、事業所得として認められるためには、営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められる状態である必要があります。つまり、継続的に儲けるつもりで、儲ける一定の確からしさがある場合は事業所得になりうるということです。

それに対し、儲かったらラッキーぐらいのつもりの場合は、雑所得ということになります。ただ、収入が300万円超であれば事業として認められる可能性はあると思いますし、1,000万円超であれば、それはもう立派な事業のように思うのは私だけでしょうか(もちろん収入が1,000万円でも、原価が1,000万円超で常に赤字であれば、継続的に儲けるつもりがない、ということになるのでしょうが)。

今回、雑所得の手間が増えることによって、雑所得か事業所得というのは今後より大きな論点になっていきそうです。
posted by 岡本浩一郎 at 23:52 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月15日

いよいよ本当の最終日

確定申告の(個別延長後の)期限は4/15(金)。いよいよ本日となりました。また、e-Taxの接続障害で期限内に電子申告ができなかった場合には、その旨を申告書の特記事項へ記載することで、期限後の申告が認められていますが、その措置も本日、4/15(金)までとされています。

新型コロナウイルス感染症の影響で申告期限を個別に延長する場合も、e-Taxの接続障害で期限後に電子申告をする場合にも、特記事項に記載する必要があります(前者は「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」、後者は「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」)。詳細は前回お話しした通りとなりますので、ご確認ください。

なお、これまでは所得税の確定申告を念頭にお話ししてきましたが、消費税の確定申告については若干注意が必要です。消費税についても、新型コロナウイルス感染症の影響で申告期限を個別に延長することが認められていますが、e-Taxの接続障害はあくまでも所得税の確定申告期限で発生した問題であるため、これを理由にした消費税の確定申告期限延長は認められていません。

新型コロナウイルス感染症の影響で消費税の申告期限を個別に延長する場合には、申告書に記載する住所欄(建物名)に「(新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請)」と記載します。こちらも前回ご紹介した弥生のサポート情報でご説明しておりますので、ご確認ください。

また、これも前回お話しした通り、個別延長時には、申告日が納付期限日となりますので、注意が必要です。仮に金融機関で納付を予定している場合には、まず今日の営業時間内に納付を済ませてしまいましょう。期限ぎりぎりでの申告については、これまでにもお話ししてきていますが、郵送、税務署の時間外収受箱への投函、e-Tax、それぞれデッドラインとなる時間が異なります。今日中に申告を済ませられるよう、何をいつまでに行うか、再確認しておきましょう。

なお、タイトルは「本当の最終日」としていますが、4/16以降も新型コロナウイルス感染症の影響が続き、申告等ができなかった場合は、申告等ができるようになった日から2ヶ月以内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を所轄の税務署に提出することで、個別の延長が認められるようです。まさに今、新型コロナウイルス感染症の療養中であり、申告書作成ができないといった場合にはこの方法をとればいいですから、無理をする必要はありません。くれぐれもお大事に。
posted by 岡本浩一郎 at 12:03 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月13日

こちらもお忘れなく

確定申告の(個別延長後の)期限が4/15(金)ともう目の前に迫っています。また、e-Taxの接続障害で期限内に電子申告ができなかった場合には、その旨を申告書の特記事項へ記載することで、期限後の申告が認められていますが、その措置も4/15(金)までとされていますので、注意が必要です。

いずれの場合にも、申告書の特記事項に記載が必要になります。まずは、新型コロナウイルス感染症の影響で申告期限を個別に延長する場合。申告書を紙で提出する際に、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載する必要があります。また、e-Taxで提出するのであれば、特記事項として、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

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次にe-Taxの接続障害で期限後に申告をする場合。この場合は、紙での申告という選択肢はなく、e-Taxでの提出に限定されますが、この際にも、特記事項として「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

弥生製品でこれらの記載を行う方法については、こちら(やよいの青色申告 22やよいの青色申告 オンラインやよいの白色申告 オンライン)のサポート情報をご確認ください。

なお、一点ご注意いただきたいのは、これらは申告期限「および」納付期限の延長申請ということです。つまり、この方法によって、申告をした瞬間に、その日が申告期限となり、同時に、納付期限となります。ですから、金融機関で納付するつもりで、今日夕方に延長申請とともに申告をすると、その瞬間にその日が納付期限になる一方で、もう金融機関が営業していませんから、納付期限内に納税できないという「詰んだ」状態になります。

これを避けるためには、予め納税を済ませた上で延長申請および申告を行う、もしくは、常におススメなのは、預貯金口座からの振替納税とすることです。今回延長申請を行った方の預貯金口座からの振替日は、5/31(消費税に関しては5/26)となっています。

もっとも、新規に振替納税の利用を希望される方は、申告の日までに所轄の税務署へ「預貯金口座振替依頼書」を提出する必要があるため、やはり詰んでしまうのですが…。今日であれば、まだ2営業日ありますから、早々に預貯金口座振替依頼書を提出する、あるいは予め金融機関で納付するなど、打つ手はあります。これが最終日の4/15(金)になると本当に詰みかねないので、くれぐれもご注意ください。
posted by 岡本浩一郎 at 17:37 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年04月11日

そろそろ最後の追い込み

4月も中旬になりました。何かお忘れではありませんか? そう、確定申告の(個別延長後の)期限が4/15(金)ともうすぐそこまで迫っています。もともとの期限である3/15までに申告を済ませていない方は最後の追い込みが必要なタイミングです。ちなみに、e-Taxの接続障害で期限内に電子申告ができなかった場合には、その旨を申告書の特記事項へ記載することで、期限後の申告が認められていますが、その措置も4/15(金)までとされていますので、注意が必要です。

ところで申告と言えば、来年1月から申告書に大きな変化があります。とは言っても、本ブログを読んでいただいている方にはあまり影響はないと思いますが。

大きな変化と言いつつ、あまり影響はないとは、何なんだと思われるかもしれませんが、来年(2023年/令和5年)1月より、確定申告書Aが廃止され、確定申告書Bに統一されるのです。

ご存じの方も多いかと思いますが、所得税の確定申告書には申告書Aという様式と、申告書Bという様式が存在します。この二つのうち申告書Bが基本となり、給与所得だけではなく、事業所得や譲渡所得などすべての所得に対応しています。これに対し、申告書Aは、申告する所得が給与所得や公的年金等・その他の雑所得、総合課税の配当所得、一時所得のみの方が使用できる(要は会社員と年金受給世代向け)いわば簡易版です。

事業所得については申告書Bでしか対応していないため、弥生シリーズでは申告書Bの様式のみに対応しています。このため、弥生のお客さまへの影響はないということになります。

実は申告書Aと申告書Bの一本化への布石は少し前から打たれていました。2020年(2019年分/令和1年分)の申告書Bでは、一枚目(第一表)の左下にある所得から差し引かれる金額(所得控除)の項目が大きく見直しになりました。項目が新しく追加になったわけではないのですが、並びが大きく変わり、途中に「(10)から(20)までの計」という小計行が追加されました。これは実は申告書Bの所得控除の記入欄を申告書Aに合わせたものです。

つまり申告書Bの所得控除の記入欄を申告書Aに合わせ、より簡易的な記入(給与所得があり年末調整を受けた方で、年末調整で適用された控除のままでいいという方は、小計行だけ記載すれば、生命保険料控除などの内訳を書かなくてもよい)を認めるようにしたのが第一ステップ。それを受けての第二ステップということで、来年から申告書Aを申告書Bに吸収するということです。

これまで申告書Aと申告書Bの二つが存在し、国税庁として両方の準備が必要だったわけですが、来年からは一つだけ準備すればいいということになり、大きく省力化されることになります。国税庁の申告作成コーナーでは、必要な項目のみ記入する方式となり、紙の様式の重要性が相対的に下がってきました。結果的に、できるだけ簡素な様式で確定申告のハードルを下げるという役割を担ってきた申告書Aですが、その役割を終えたということなのかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:39 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年03月15日

波乱の最終日

今年もこの日がやってきました。そうです、今年の確定申告期限(正確にいえば所得税の期限)は本日までです(ただし、今年は新型コロナウイルス禍の影響を受け、簡易な手続きで申告期限の延長が認められています)。先週末から追い込みをかけてなんとか終わったという方も多いかと思います。

一方で、昨日e-Tax(電子申告)をしようとしてエラーになっている方もいらっしゃるのではないかと思います。既に報道されていますし、国税庁からもアナウンスされていますが、昨日より、国税庁のe-Taxシステムで接続障害が発生しています。やよいの青色申告 オンライン(やよいの白色申告 オンライン)もしくはやよいの青色申告 22でe-Taxしようとする際には、この国税庁のe-Taxシステムに接続を行うため、「e-Tax受付システムへのログイン時に致命的なエラーが発生しました」といったようなエラーが発生する可能性があります。

ある意味厄介なのは、100%の確率でエラーになるということではなく、エラーになるケース、エラーにならないケースが存在するようです。今朝の時点でも、国税庁から「断続的につながりづらい状態が発生しており、未だ障害原因の解明には至っておりません」と発表されています。弥生側から見えるエラーログや、お客さまからのお問合せ状況を見ても、障害はまだ続いていると判断しています。

一方で今日が最終日ということで、どうするか、ですが、国税庁からはこの e-Tax の障害により期限内の申告が困難な場合には、1) 本日中に書面により提出する、もしくは2) 個別に申告期限を延長して、後日提出するという二つの選択肢が提示されています。

確実に今日中に済ませる場合には1) 書面ですが、この場合、書面で提出しても、電子申告等の優遇措置が受けられるかどうかが判然としていません。e-Taxで申告をするつもりが、障害でe-Taxが使えずに書面で提出するのですから、優遇措置を適用すべきだと思いますが、その可否は現時点で明らかになっていません。

このため、弥生としては、2) e-Taxによる後日提出を推奨します。この場合には、申告書の特記事項欄に「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」である旨を記載した上で送信する必要があります(弥生製品での対応方法はこちらをご参照ください)。実は、これは新型コロナウイルス禍の影響で個別に申告期限の延長が認められる際と同じ方法です(こちらは、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載することになっています)。

では後日というのはいつなんだ、ということになりますが、国税庁から障害回復の一報があるまでは待った方がいいと思います。多くの方が送信できないと何回もリトライすることによって、トラフィックが通常より増え、結果的に障害回復の妨げになっているものと思われるからです。上記のように後日提出が認められた以上、一旦リトライを止めて、国税庁の障害回復を待ちたいと思います。弥生としても状況を継続的に確認し、情報を発信していきます。

なお、このような状況で、申告は済ませたはずだけれど、本当に申告が受け付けられているかどうか不安という方もいらっしゃるかと思いますが、メッセージボックスを確認すれば、申告が正常に受け付けられているかどうかの確認ができます。ただ、今回の障害でメッセージボックスの確認自体もできない状態です。こちらも障害が解消されてから、メッセージボックスを確認、万が一申告が正常に受け付けられていないようであれば、上記のように「e-Taxの障害による申告・納付期限延長申請」と補記した上で再度申告を行うことになるかと思います。

なお、もともとe-Taxではなく、紙での申告を予定していた方は、今回の障害によらず、本日が期限となります。一番簡単なのは、本日の消印で郵送することです。ただ、新型コロナウイルス禍の影響で、郵便局の夜間窓口の営業時間が短縮されていることが多いので、本日の消印での郵送を考えている方は、この段階で提出を予定している郵便局に電話し、何時までであれば本日の消印が得られるか確認しておくことをお勧めします。
posted by 岡本浩一郎 at 15:27 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月18日

透ける狙い

今週は今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししています。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少なめ。ただ少ない中でも、目立つのが区分欄の増加ということを前回お話ししました。近年区分が増えている背景には、税制の複雑化があるとも。

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もっとも今回追加された区分欄は全て申告書左上の「収入金額等」のエリアなのですが、このエリアでの追加には税制の複雑化という以上に、国税庁として何を注視しているかが表れているように思います。

わかりやすいのが、「雑」「その他」という行の区分欄ですね。雑所得がこれまで「公的年金等」と「その他」の2行だったものが、昨年の申告書から「公的年金等」「業務」「その他」の3行に分かれたのには、ここでいう業務に該当する「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」を今後はしっかりと見ていきますよという国税庁の意志の表れではないかということを昨年お話ししました

今回は「その他」の行に区分欄が新設された訳ですが、それではこの区分欄に何を記入するのかと手引き(pdf)を確認してみると、「個人年金保険に係る収入がある場合は「1」を、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」を、個人年金保険に係る収入及び暗号資産取引に係る収入の両方がある場合は「3」を記入します」とあります。暗号資産(仮想通貨)取引というと、国税庁が申告漏れや不正確な申告に目を光らせているのは周知の事実。これまでの申告書では、雑所得があることはわかっても、その内訳がどうなっているかは曖昧だった(厳密に言えば、第二表で所得の内訳を記入することは求められてはいましたが、この欄はややアバウトなので)のですが、今後はこの区分欄でビシッと特定されることになります。結果的に、暗号資産取引による雑所得がある場合には、通常より丁寧に見られることになるのでしょう。

不動産所得の収入で新設された区分欄のうち「区分1」は、手引きによれば「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(措法41の4の3)の適用がある場合は、「1」を記入します」とありますので、これも国外中古建物が注視されていることの表れですね。

では、事業所得の「営業等」収入の区分、「農業」収入の区分、そして不動産所得の収入の「区分2」は何を注視しているのかというと、実は、帳簿の付け方なのです。これらの区分には「1」から「5」までの区分を記入するのですが、これは手引きで以下のように解説されています。

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電子帳簿保存法というと耳馴染みはないかもしれませんが、実は全事業者に影響が及びうるということを昨年お話ししました(結果的には2年間の猶予期間が設けられたということも昨年末にお話ししました)。

今回、こういった区分が設けられたということは、国税庁がどのように帳簿を付け、保存するのかということに関心を持っているということの表れです。もちろん弥生を使っていれば、少なくとも「2」(会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合)に該当しますので、国税庁から見ても、「ああちゃんとした帳簿付けをしていますね。よろしい。」ということになるものと思いますが(笑)。

申告書全体から見ればほんのわずかな変更点ですが、毎年確定申告書を睨んでくると、こんなことが浮かび上がってくるのです。職業病だと思いますが、なかなかマニアックなことは自覚しております(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:37 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月16日

増え続ける区分

いよいよ本日から確定申告が始まりました。朝一番でカスタマーセンターのメンバー全員にZoomで激励のメッセージを伝えたのですが、皆やる気満々です。お話しした通り、今回も新型コロナウイルス禍の影響で、簡易な手続きで個別に申告期限の延長が認められますが、あくまでも原則的な期限は3/15(火)。このため、お問合せとしても4月までダラダラ続くのではなく、2月後半から3月中旬にピークとなるのではないかと考えています。お客さまに早く確定申告を終え、ホッとしていただけるよう、しっかりサポートしていきます。

さて、前回は、今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししました。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少ないとお話ししました。数少ない変更点ですが、目立つのが区分欄の増加です。

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前回もご覧いただきましたが、こちらが今回(令和3年分)の確定申告書の様式です(正確には申告書Bの第一表)。収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄があることがわかります。

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一方でこちらは20年前、平成13年(2001年)分の確定申告書です。これを見ると、区分という欄はほとんどないことがわかります。様式は左右二段組みになっていますが、右側には2ヶ所区分欄が存在しているものの、左側には区分欄は存在していません。

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続いてこちらはぐっと今に近付いて平成27年分。区分という欄が少し増えています。右側に2つ増え、左側には新たに2ヶ所(給与所得、配偶者(特別)控除)の区分欄ができています。ここで改めて一番最初にお見せした令和3年分を見ると、特に左側で区分欄が増えていることがわかります。昨年(令和2年分)から今回(令和3年分)だけでも5ヶ所(事業収入で2ヶ所、不動産収入で2ヶ所、雑収入で1ヶ所)増えています。

なぜ区分が増えるのか、というと単純に言えば、税制が複雑化しているからです。税制が複雑化する一方で、申告書のページ数を増やせないことが区分欄の増加につながっています。

わかりやすい例で言えば、医療費控除欄にある区分ですが、これはセルフメディケーション税制に伴って生まれた区分です。医療費控除は、支払った医療費が一定の金額以上ある場合に認められる所得控除ですが、この特例として、支払った特定の医薬品の購入費が一定額(12,000円)を超える場合の控除を得られるという制度(セルフメディケーション税制)が平成29年分から認められるようになりました。

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の両方で控除を受けることはできず、どちらかを選ぶ必要があるのですが、そのどちらかを医療費控除欄に記載することになります。この際、セルフメディケーション税制の場合には、区分に「1」と記載することによって、セルフメディケーション税制の適用を受けていることを示すことになります。要は、医療費控除とセルフメディケーション控除という二つの行を作る代わりに、区分という欄が使われているということです。

(元)エンジニアとして、ツボにはまるのは、給与所得欄にある区分です。この区分はなぜか3つ(3マス)あります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、この区分は、特定支出控除を受けていることを示すものです。給与所得がある人は、個人事業主のように本を買ったり、会食をしたりということで自分の意思で経費を計上することは認められていません。そのかわり、必要経費に該当する金額ということで、給与所得控除というものが自動的に認められます。それでも、給与所得控除では収まりきらない経費もありうるということで、かなり厳しい条件のもとで認められるのが特定支出控除です(要件がかなり厳しいので、ほとんど使われることはないというのが実態ではありますが)。

特定支出控除には、9つの区分(例えば、区分4: 研修費や区分8: 資格取得費など)があるのですが、どの区分の適用を受けているのかを示すために、適用を受けている区分の番号を足した数字を、確定申告書の給与所得欄の区分に記載する必要があります。番号を足してどの区分の適用を受けているのがなぜわかるのか、と思いますが、実は、区分の番号は、「1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256」という一見脈略のない数字がふられています。わかりますか? そうです、これは2進数。ですから、足した数字が25であれば、これは区分1と区分8と区分16の適用を受けているということが一意で特定できるのです(要は9ビットのどの桁が1になっているかということです)。もうおわかりかと思いますが、9つの区分全ての適用を受けたとすると合計が「511」になりますから、給与所得欄の区分は3マスあるということです。

2進数の考え方で9つの区分を特定できるようにする仕組みは、個人的にはよく考えたなと思います。エンジニアであれば、ニヤリとすることは間違いないでしょう。ただまあ、正直わかりにくいですよね。

前置きが長くなりましたが、次回は、今回の申告書で追加になった区分についてお話しします。
posted by 岡本浩一郎 at 22:21 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月14日

間違い探し

いよいよ今週から確定申告の期間が始まるということで、毎年恒例にはなりますが、本ブログでも確定申告について熱く語ってみたいと思います。ということで、まずはこちらをご覧ください。今回の確定申告(令和3年分)の確定申告書の様式です。正確には確定申告書には申告書Bという標準版と申告書Aという簡易版がありますが、これは申告書Bの第一表(=1ページ目)になります。

(令和3年分) 2022021401.png

一方でこちらは令和2年分の様式。どこが違うでしょうか。

(令和2年分) 2021012901.png

昨年の令和2年分は、その前年の令和1年分と比べて、10年に一度のレベルの大幅変更でした。逆に今年は、昨年が大幅変更だっただけに、変更量としては小さめです。昨年がメジャーバージョンアップであれば、今年はマイナーバージョンアップと言ってよいかと思います。例年、様式が公表され次第、どこがどう変わっているかを徹底的に精査するのが、毎年の確定申告機能提供の第一歩となるのですが、今年は変更量が小さく安心しました。

とはいえ、ボリュームとして小さいとはいえども、変更は変更です。どこが変わっているかわかりますか?

パッと目に付くのは右上で、不自然な空白がありますね。そう、氏名の横です。そうです、ここは昨年までは押印欄でした。まだ記憶に新しいところですが、菅政権において意味のない押印をなくそうという動きがみられました。これはもちろん歓迎すべきことですし、実際に、一昨年12月には「提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、次に掲げる税務関係書類を除き、押印を要しないこととする」という方針も示されました。その一方で、おそらく作成のタイミングの問題だと思いますが、昨年の確定申告書については、まだ押印欄が残ったままでした。結局、昨年の確定申告書については、押印しなければならないのか、しなくてもいいのか宙ぶらりんな状態でした

今回の確定申告書については、晴れて押印欄がなくなり、押印が必要ないことが明確になりました。それでも、いかにも押印欄のスペースがぽっかり空いているのにはちょっと違和感がありますね。

押印欄はわかりやすいところですが、他にもよく見てみると区分という入力欄(例えば、収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄が追加されています)が増えているのがわかるかと思います。区分という入力欄は、かつてはほとんど使われていなかったのですが、ここ数年、税制が複雑化する & 求められる情報量が増える中で、格段に増えてきています。この区分については、次回もう少しお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:40 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月10日

確定申告に向けた準備

自分の会社の決算に目処が立ったということで、いよいよ私個人の確定申告の準備に取り掛かりたいと思います。とはいえ、いきなり確定申告書に着手するのではなく、まずは確定申告に必要な書類の整理から。

私の場合、まず整理するのは、生命保険料控除を受けるための生命保険料控除証明書と地震保険料控除を受けるための地震保険料控除証明書です。これらは一般的に秋に送られてくるのですが、その時点では確定申告までまだ時間があるが故に、いざ確定申告の準備というタイミングでは、あれ、どこに行ったのとなりがちです。そのため、数年前から確定申告準備用の書類ケースを用意してあり、届いたタイミングでそこに放り込むようにしています。この他、源泉徴収票など、確定申告で必要なものは、入手したタイミングでこの書類ケースに入れるようにしています。ということで、この書類ケースを確認すると、あったあった、ありました。

次は、医療費控除を受けるための医療費の領収書。これは、病院に行った際や、あるいは薬局で薬を買った際に領収書を入れる箱を、上記の確定申告準備用の書類ケースとは別に用意してあります。家族が病院に行った際や、あるいは薬局で薬を買った際には、領収書をここに入れておいてとお願いしてあるわけです(ちなみに、どこかに行ってしまいがちな病院の診察券もこの箱に入れてあります)。新型コロナウイルス禍で、出歩く機会が減ったこと、そしていつも感染対策を行っていることもあり、ここ2年間は驚くばかりに体調を崩すことがありません(例外は、トライアスロン出場前に体調を崩した時でしょうか)。このため、今回の医療費の領収書の枚数はかなり少なめ。良いことのはずですが、得られる控除が少ないのは微妙に残念です(苦笑)。

そして最後は、寄附金控除を受けるための寄附金の領収書。寄附金の領収書には、ふるさと納税の領収書も含まれます。医療費の領収書の枚数は減りましたが、ふるさと納税をそれなりに活用していることもあって、寄附金の領収書の枚数はそれなりです。

ただ、実は今回の確定申告から、ふるさと納税について、寄附先の自治体から発行される領収書を一枚一枚集める必要がなくなりました。もちろんこれまで通り、各自治体の領収書を集めてもいいのですが、もう一つの方法として、国税庁長官が指定した特定事業者が運営するふるさと納税サイトでの寄附について、その特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を利用できるようになりました。これはいい仕組みだと思います。特に一つのふるさと納税サイトでまとめて寄附をしている方だとだいぶ楽になるのではないかと思います。

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ということで、この寄附金控除に関する証明書をどのように入手するのか確認してみたのですが、その手続きはふるさと納税サイトによって違いがあるようです。この寄附金控除に関する証明書は紙とは限らず、電子データもあります(というよりは国としては電子データがおススメのようです)。例えば、ふるさとチョイスでは電子データが基本となっており、紙で必要な場合には、この電子データを国税庁が提供する「QRコード付証明書等作成システム」にアップロードして、PDFを生成するという一手間かかる仕組みになっています。これに対し、さとふるも電子データが基本ではありますが、申し込みをしておけば、さとふるから郵送で証明書が届くようにもできるようです。ちなみに、いずれの場合も、申し込みから証明書の発行には多少時間がかかるようです。ですので、申告期限ギリギリでは間に合わない可能性もありますから、早めに準備しておきたいところです。

私はどうするかというと、一部の寄附(特に返礼品を求めないもの)について、直接その自治体に連絡をとって寄附をしているケースが複数あります。昨年で言えば、岩手県、宮城県、福島県、横浜市、湯河原町に対する寄附がこれにあたります。この場合にはふるさと納税サイトを通していないので、ふるさと納税サイトによる寄附金控除に関する証明書ではカバーできません。そのため、従来通り各自治体からの領収書をとりまとめるか、あるいは組み合わせるのか、少し迷うところです。
posted by 岡本浩一郎 at 21:57 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月03日

申告期限の事実上の延長

本日、今年の所得税の確定申告期限について、国税庁から発表がありました(pdf)。今年の所得税の確定申告期限は事実上一ヶ月間延長され、4/15(金)となります。実はこれは想定通り。というのは、昨年も申告期限が延長されましたが、それが発表になったのが2/2だったからです。つまり、今年もほぼ同じタイミングで発表になったということです。足元の新型コロナウイルス禍の状況を鑑みると、延長せざるを得ないだろうというのも、またその延長幅が一ヶ月であろうというのも、やはり想定通りです。

ただ、正確に言えば、昨年の延長と今年の延長では違いがあります。昨年は緊急事態宣言の期間が確定申告期間と重なるということで、無条件での延長でした。ですから、延長された期間内に提出する際には、特段の手続きは必要ありませんでした。これに対し、今年は、「新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方」のための手当てとして、簡易な方法で延長を申請できる、とされています。

要は昨年は緊急事態宣言があり、誰にとっても申告期限内に申告をすることが難しいであろうから、何ら手続きの必要がなく無条件の延長となった訳ですが、今年に関しては(おそらく現時点では緊急事態宣言が発出されていないからだと思いますが)、全体としての申告期限は変わらない、ただし、申告期限内に申告をすることが難しい人については、簡易な手続きで個別に延長を申請できるということになっています。延長ではありますが、無条件ではなく、条件付き、もっとも、誰でもができる簡易な手続きなので、「事実上の」延長と言えるかと思います。

手続きといっても、簡易な手続きということで、予めの申請は必要ありません。申告書を提出する際に、申告書の余白等に新型コロナウイルスの影響により延長を申請する旨を記載すればよいとされています。

具体的には、申告書を紙で提出する場合には、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載する必要があります。また、e-Taxで提出する場合には、特記事項として、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

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もちろん、やよいの青色申告 22でも、やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンラインでも特記事項への入力が可能になっています。本来の申告期限(3/15)から、(事実上の)延長後の期限(4/15)の間に申告される際には、特記事項への入力(紙の場合には、余白への記載)を忘れずに。

もっとも、当たり前ですが、本来の申告期限(3/15)までに申告を終える分には何の手続きも必要ありません。今回、申告期限の事実上の延長が認められたことは良いことだと思いますが、それで安心してずるずると先延ばしにするのではなく、できるものはさっさと終えてしまいましょう。
posted by 岡本浩一郎 at 20:19 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年12月10日

与党税制改正大綱 2021

つい先ほど、与党税制改正大綱が公表されました。この先の税制がどのように変わっていくのか、毎年ワクワク(?)しながらその公表を待つのですが、今回は、全事業者に直ちに影響を与える内容が含まれているということもあって、かなりハラハラ(?)しながら公表を待っておりました。

全事業者に直ちに影響を与えるというのは、誇張ではありません(来年1月からですから、直ちにというのは少し誇張ですかね)。それは、本ブログでも取り上げてきている改正電子帳簿保存法に関するもの。その影響度を鑑みるとひっそりとという感じではありますが、大綱も終盤のP90「六 納税環境整備」「5 その他」に記載されていました。

(8)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用する。
(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする。

ああ、よかった。これで全事業者が泣いた、ではなく、全事業者がホッと来年の一月を迎えることができます。事前の報道でその可能性が示唆されていた事前の届け出も「手続を要せず」と明確にその必要性が否定されています。詳細は、今後、弥生の「電子帳簿保存法あんしんガイド」でお伝えしたいと思いますが、要はこの先2年間は、これまで通りの運用(紙出力して保存)でも問題はないということです。

もちろん、業務の効率化の観点で電子化、そしてデジタル化は進めるべきもの。来年1月という無理なスケジュールではなく、もう少し時間をかけながら、弥生はお客さまが無理なく対応でき、なおかつ業務効率化を実感できるようにしていきます。
posted by 岡本浩一郎 at 18:12 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年12月06日

さらに一歩前進

既にご存じの方も多いかと思いますが、今朝の日経新聞朝刊一面で「電子保存義務化 2年猶予」という記事が掲載されました。これは先月お話しした改正電子帳簿保存法(電帳法)に関するものです。記事によれば、「政府・与党は2022年1月に施行する電子帳簿保存法に2年の猶予期間を設ける」とのこと。

全事業者に影響があり、なおかつ来年1月には対応しなければならない、つまりあまりにも時間がないという改正電帳法の問題点については以前お話しした通りですが、それに対して先月半ばに国税庁のQ&Aが更新され、この中で、書面保存を継続しても直ちに青色申告の承認取り消しとはならないことが明確化され、一定程度解消されました。ただ、Q&Aというのはあくまでもガイドラインであり、法的な拘束力はありません。その点、今回報道された「近くまとめる22年度与党税制改正大綱に盛り込み、年内に関連の省令を改正する」というのはさらなる前進です。

とは言え、より具体的な内容については、早合点するのではなく、税制改正大綱を待ちたいと思います。今回の電帳法改正は大部分が要件緩和であり早期の施行が望まれるものですから、全体としての改正電帳法は予定通り来年1月に施行されるものと思います。この施行によって、電子取引に関する改正事項(具体的には適正な保存を担保する措置)に関しては、これまで認められていた措置(申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置)を廃止されるが、それが猶予される。つまり結果的にこれまで通り出力書面等を保存すれば問題はないということかと思います。

もっとも、その際にどういった条件が付くのかは明確になっていません(記事では事前に届け出が必要とも読める表現がありましたが、わざわざ届け出を求める必然性はあるでしょうか)。これらは例年通りであれば今週後半にも公表される与党税制改正大綱でより明らかになるでしょう。

そういった意味で、現段階では具体的な内容よりも、2年間という明確な期間が示されたということが非常に大きな前進だと思います。この2年間の中で、以前お話ししたより本質的な課題、1) 構造化デジタルデータによって業務の効率化を実現すべきという点、2) 保存したデータの移管が一定のルールで認められるべきという点、に確実に取り組みたいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:28 | TrackBack(0) | 税金・法令