2023年02月22日

認定Peppol Service Provider

この度弥生のグループ会社であるアルトアは、日本におけるPeppolの管理局(Peppol Authority, PA)であるデジタル庁より、Peppol Service Providerとして認定を受けました

Peppolは、インターネット上でデジタルドキュメントをやり取りするためのグローバルな標準仕様です。元々は欧州発祥ですが、近年はシンガポールやオーストラリアなど欧州域外でも採用が進んでおり、Peppolをベースとしたデジタル経済圏の構築が進みつつあります。

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Peppolは4コーナーモデルと呼ばれるアーキテクチャを採用しています。コーナー(角)が4つあるから、4コーナー。各コーナーはC1, C2, C3, C4と呼ばれます。
  • Peppolユーザー(C1、C4)は、アクセスポイントを通じてPeppolネットワークに接続
  • デジタルインボイスの送り手(C1)はアクセスポイントC2にインボイスデータを送信
  • インボイスデータはアクセスポイントのC2からC3に転送される
  • 最後にC3から受け手(C4)にデジタルインボイスが送信される

単純に言ってしまえば、eメールに近い仕組みです。ユーザーは自分が契約しているプロバイダーに接続すれば、メールアドレスがわかっているどんな相手でもeメールを送ることができます。しかし実際問題として、eメールを送るにしても、あるいはPeppolでデジタルインボイスを送るにしても、この仕組みを理解している必要はありません。基本的には相手のアドレスさえ分かっていれば、届くようになっています。

ユーザーとしてその仕組みを理解する必要はないのですが、実際にその仕組みを担っているのが、アクセスポイントであるC2とC3です。PeppolにおいてC2/C3として機能するためには、その国の管理局からService Providerとしての認定を受け、管理局と契約を結び、契約で求められている義務を果たす必要があります。今回、弥生グループのアルトアがこの認定を受けることができました。

弥生として弥生のお客さまがPeppolを利用できるようにするためには、必ずしも自社(グループ)でPeppol Service Providerとなる必要性はありません。既にService Providerとして認定を受けている他社と契約し、その他社を通じてPeppolに接続すればいいからです。

しかし、Peppolはまだまだこれから発展する仕組みです。日本においてPeppolがどのように発展するか、それを管理するのはPAであるデジタル庁ですが、そのPAと直接的にやり取りできるのは、PAと直接的な契約関係にあるPeppol Service Providerに限定されます。今後とも弥生が日本におけるPeppolの普及に積極的に関わるためには、弥生グループとしてPeppol Service Providerとなるべきと判断しました。

また、弥生としては、弥生のお客さまが当たり前のようにPeppolを介してデジタルインボイスをやり取りし、業務を効率化できるようにしたいと考えています。そうなると、弥生のお客さまが発行する/受領するデジタルインボイスの数は相当な数になるはずです。取り扱うデジタルインボイスの量が増える中では、自社(グループ)としてアクセスポイントを運営する方がコストメリットがあると判断しました(逆にデジタルインボイスの量が少ないうちは、持ち出しになるということでもありますが、これは先行投資と割り切っています)。

お客さまがデジタルインボイスをやり取りする際に、アクセスポイントの存在を理解する必要はありません。しかし、弥生グループ自身がPeppol Service Providerとなること、それは弥生グループとしてデジタルインボイスの普及にコミットしていることと理解していただければと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:31 | TrackBack(0) | アルトア

2022年09月14日

マーケット・フィット

本日よりオリックス株式会社が提供するオンライン融資サービスの商品性が大きく変わりました。これまでは、金額が最大300万円、期間が最長1年間といういわゆる少額短期の融資に限定されていましたが、本日より金額が最大1,000万円、期間が最長5年間(法人の場合)と、融資を受ける方からすると大きく改善されました。また金利についても、従来の2.8%〜14.8%に対し、本日から1.8%〜5.8%とこちらも大きく改善されました。今回の商品性改定によって、より多くの事業者の方にこれはいいね、と言っていただき、ご活用いただけるようになるのではないかと思います。

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オリックスのオンライン融資サービスは、もともとアルトアが提供していたサービスを昨年移管したものであり、これまでは、アルトア提供時の商品性を引き継いでいました。2017年12月にアルトアが営業を開始した際に、少額短期という商品性でスタートしたのには大きく二つの理由がありました。まず一つ目は、新たなマーケットを開拓したいという想いです。圧倒的な利便性を提供することによって、必要な分を必要なタイミングで借りることができるようにしたい。一方で、融資する側の観点からは、AIの活用によって審査コストを下げることによって、従来は難しかった採算性を確保できるようにしたい。もう一つの理由としては、スタートアップであるアルトアの体力的にそこまでリスクを取れないという現実もありました。融資をするというのはリスクをとることですが、リスクを分散するためには、一件当たりの融資金額を限定せざるを得ませんし、また、リスクを限定するためには、融資の期間も短期に限定せざるを得ませんでした。

結果としては、アルトアのオンライン融資サービスについて、利用いただいた方からは、非常に高い評価をいただけたものの、なかなか利用する方を期待ほどには増やせませんでした。

オンライン融資サービスは、もともと米国で広がってきました。米国では、日本と比べ、小規模事業者は金融機関からの融資を受けにくく、その代替としてオンライン融資サービスへのニーズが顕在化しました。これに対し、日本は、手間と時間はかかるものの、金融機関や(公庫などの)公的機関から(海外から見れば圧倒的に)低い金利で長期の融資を受けられる。要は市場の違いが厳然としてあり、その中でアルトアは日本の市場で受け入れられる商品性を目指したものの、十分ではなかった(= 訴求できる層が限定されてしまった)ということです。

アルトアのオンライン融資サービスの商品性がマーケットとフィットしていないということが見えてきても、スタートアップとしてはできることに限界がありました。そういった背景もあり、昨年、融資事業はオリックスに移管するという判断に至りました。融資を行う(=リスクをとる)部分はリスクを取ることが事業である金融機関に任せ、アルトアはAIによる審査システムを提供することに特化しようという判断です。

そして今回、関連するオリックスメンバーの多大な努力もあり、オリックスオンライン融資サービスの商品性を圧倒的に改善することができました。これによってようやくアルトアが目指すオンライン融資サービスの「マーケット・フィット」が達成できると考えています。新型コロナウイルス禍の影響はなくなった訳ではありませんが、with コロナを前提に新たな資金需要が生まれてきています。今回商品性が大幅に改善されたオリックスオンライン融資サービスはそういった需要にお応えできるのではないかと考えています。申込み自体はオンラインで10分もあればできますから、是非一度試していただき、その圧倒的な利便性を実感いただければと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:50 | TrackBack(0) | アルトア

2021年11月01日

Speed on!

本日11/1より、りそな銀行のオンライン完結型の貸出商品りそなビジネスローン「Speed on!」において、「弥生会計」「弥生会計 オンライン」をご利用中のお客さまが、会計データを提出することで、りそな銀行に口座をお持ちでなくてもお申込みできるようになります。

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これは、アルトアの会計データ与信モデルをりそな銀行に提供することによって実現したものです。アルトアは、データとAIを活用したより高度な与信判断や、オンライン完結型のより利便性の高い融資の仕組みをパッケージ化されたサービス、LaaS(Lending as a Service)として提供していますが、このLaaSの第一号案件(グループ内であるオリックスへの提供を除き)となります。本ブログでも9/8にこの取組みについてお話ししていますが、いよいよ今日から正式なサービスが開始されたという訳です。

りそな銀行では従来からオンライン完結型の融資として「Speed on!」というサービスを提供してきていますが、これまではりそな銀行に口座があり、一定期間の預金取引があるお客さまのみが対象となっていました。しかし今日からは、りそな銀行の口座がない方でも、「弥生会計」「弥生会計 オンライン」をご利用であれば対象となります。お申込みはオンラインで、会計データを連携いただければ、最短3営業日でご入金が可能です。

「Speed on!」は銀行による融資商品ということで、これまでのアルトアによる融資やオリックスによる融資と比べて魅力的な商品性となっています。ご利用金額は1,000万円まで、融資期間は最長36ヶ月、そして気になる金利は年1.0%〜9.0%となっています。アルトアの融資では、最大300万円、最長1年間でしたから、これまでよりもより広いニーズにお応えできるのではないかと思います(もちろん、実際の融資判断はりそな銀行がAI審査モデルで行うことになり、融資をお約束できるものではありません)。

アルトアとしては、今後より多くの金融機関にアルトアのLaaSサービスを提供し、事業者にとってより利便性の高い融資を当たり前のものにしていきたいと考えています。そのためにも、まずはりそな銀行の「Speed on!」が多くの事業者にご利用いただけるよう、しっかりサポートしていきます。
posted by 岡本浩一郎 at 20:35 | TrackBack(0) | アルトア

2021年09月08日

アルトア与信モデルをりそな銀行へ

アルトア弥生オリックスの3社から本日同時にプレスリリースを行っていますが、このたび、アルトアの会計データ与信モデルをりそな銀行に提供することが決まりました。

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アルトアは、2017年12月に、会計データを利用し、AIで与信判断を行うオンライン融資サービスを開始しました。ただ、この時点から、アルトア自身が融資するだけではなく、金融機関がアルトアの与信エンジンを利用することによって、アルトアと同じような利便性の高い融資サービスを提供することが当たり前となることを目指して活動してきました。

これをアルトアでは、LaaS(Lending as a Service)と呼んでいます。LaaSとは、融資を提供する金融機関に対し、融資機能をサービスとして提供する仕組みです。アルトアは、データとAIを活用したより高度な与信判断や、オンライン完結型のより利便性の高い融資の仕組みをパッケージ化されたサービスとして提供します。

当初からLaaSを事業の柱の一つとして位置付け、様々な金融機関と協議を続けてきましたが、正直に言って、苦戦してきました。金融機関として大いに興味はあるものの、なかなか自行で採用するところまでは辿りつきませんでした。アルトアの取組みはいわゆるFinTechの一部をなすわけですが、一口にFinTechと言っても、金融機関から見て周辺領域(これまでにやったこともないし、知見もない)なのか、本丸なのか(これまでにもやってきたことであり、競争力の源泉として強いこだわりがある)で、採用に向けてのハードルが全く異なることを実感してきました。言うまでもなく、アルトアがサービスとして提供する「融資」は金融機関にとって、本丸中の本丸です。その本丸において、興味深いものの、目新しいものを採用してもらうことは当初想像していたより圧倒的に難しいことでした。

その間、アルトアは自社融資サービスを継続し、ある意味、実証実験を続けてきました。その中で新型コロナウイルス禍という未曾有の事態においても、しっかりと与信機能を発揮できるということも(意図せずではありますが)実証できました。

ただ、本ブログでもお話ししたように、アルトアの自社サービスはこの春に終了し、事業としてはグループであるオリックスに移管をしました。3年以上続けてきた自社融資サービスによって、充分な実績は積めたこと、また同時に、自社融資サービスとLaaSの二兎を追うのではなく、LaaSこそ事業の唯一の柱であると明確に位置付け、いわば背水の陣で臨むという判断です。

そして今回、ようやく、りそな銀行にアルトアの与信モデルを提供するという合意が得られ、発表をするに至りました。アルトアから移管した先となるオリックスを除くと、LaaSの第一号案件となります。個人的にはりそな銀行という、もともと与信モデルの開発能力に定評のある金融機関に認めていただいたことが最大の成果だと思います。りそな銀行は、日本銀行の金融高度化センターによるAIを活用した金融の高度化に関するワークショップでも「AIを活用した信用評価手法の現状とこれから」と題したプレゼンテーションを行っていることからわかるように、データとAIを活用した信用評価において先進的な取り組みを行ってきています。そのりそな銀行に、アルトアの与信モデルを評価いただき、りそな銀行の融資をさらに高度化させうるツールとして選んでいただいた訳ですから。

今回はまず提供に向けて合意したという発表です。実際にアルトアの与信モデルを活用したりそな銀行による融資サービスの開始は年内を予定しています。りそな銀行によるサービスがしっかりと立上り、事業者の方に利便性を実感していただけるように、しっかりとサポートしていきます。
posted by 岡本浩一郎 at 21:23 | TrackBack(0) | アルトア

2021年04月09日

オリックス オンライン融資サービス

本日11時より、オリックスは「オリックス オンライン融資サービス」を開始しました。サイトをご覧いただくと、どこかで見たことがあるような…。そうです、ほぼアルトアのサイトと同じ(笑)。一部コンテンツは割愛していますが、基本的にはこれまでのアルトアのサイトのままです。

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提供する融資の商品性も全く同じ。つまり、融資を実施する主体がアルトア株式会社から、オリックス株式会社に変わりますが、それ以外は何も変わらないということです。

融資を行う際には貸金業者としての登録が必要になりますが、これまでのアルトアの登録番号は「東京都知事 (2) 第31659号」。これに対してオリックスは「関東財務局長 (13) 第00152号」。カッコのなかは、貸金業者としての登録更新の数を示しています。つまりアルトアは2017年に新規登録し、それから1回登録更新をしているため、「(2)」。これに対しオリックスは「(13)」ですから、貸金業における経験の違いを如実に示しています。まず一旦はアルトアからオリックスへ、使い勝手も商品性もそのまま引き継ぎますが、今後はオリックスの経験を活かして、より多くのお客さまのニーズにあったサービスを提供できるようにしていきたいと考えています。

アルトアは、オンライン融資の仕組みを提供することによって、オリックスがより多くのお客さまのニーズにあったサービスを提供できるよう支援していきます。より多くのお客さまという意味では、弥生以外の会計ソフトへの対応も必要だと考えています。

今回のオリックス オンライン融資サービスの開始はアルトアの新たなステージの第一歩。アルトアが開発した仕組みを金融機関に提供すること自体は起業当時から想定してきたことですが、いざ実現しようとすると思った以上に大変でした(苦笑)。それでも今回、ようやく第二ステージの入口に立つことができました。今後は、今回サービスを開始したオリックス以外の金融機関でも同様のサービスを提供できるようにすることによって、会計データとAIによる新しい融資が当たり前の世界を作っていきたいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:27 | TrackBack(0) | アルトア

2021年04月08日

アルトアは次のステージへ

本日4/8 17時をもって、アルトアが提供してきた「アルトア オンライン融資サービス」の受付を終了することとなりました。既にお申込みをいただいているお客さまへの新規の融資、また、既にご利用いただいているお客さまへの増額借換の実行は5月上旬を持って終了します。

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え、終わり、と驚かれるかもしれませんが、もちろんそれだけではありません。明日4/9 11時より、新たにオリックスによる「オリックス オンライン融資サービス」を開始します。これからご利用になる方につきましては、是非「オリックス オンライン融資サービス」をご利用いただければと思います。

つまり今回、融資の提供主体をアルトアからオリックスに移管します。アルトアがオンライン融資サービスを開始したのは2017年12月。しかし当初からアルトアが目指してきたのは、自社が融資をすること自体ではなく、会計データとAIを活用し、小規模事業者がこれまでよりも容易に資金を調達できる環境を作ることでした。ただ、この時点では、会計データとAIで与信を行うことの実績がありません。実績がない中で、それが実現可能であるということを実証するためには、アルトア自身がやるしかないと判断しました。いわば身をもって証明してきた、ということです。

それから3年が経ちました。決してバラ色の結果とは言えませんし、ここ一年に関しては新型コロナウイルス禍の中での資金需要の変動に苦戦してきたのも事実です。それでも、会計データとAIで与信を行うことの実績は着実に積み重ねることができました。今回、アルトア自身としての経験値は十分に得られた、また、アルトアの経験値をもとにオリックスとしてもビジネスとして取り組むことができるという判断ができたことから、このタイミングで融資の提供主体をアルトアからオリックスに移管することになりました。

お客さまから見れば、商品性や利便性など、何ら変わりませんのでご安心ください。むしろ、もともと金融のプロフェッショナルであるオリックスが融資主体になることによって、今後アルトアではなかなか実現が難しかった、よりお客さまのニーズにあった商品性の改善などにも取り組めると考えています。

融資の主体はオリックスが担うということで、アルトアは、会計データとAIを活用し、小規模事業者がこれまでよりも容易に資金を調達できる「仕組み」を作るということに専念できます。今後もアルトアは、会計データとAIを組み合わせた与信システムをさらに磨き上げていきます。そして、小規模事業者が今回のオリックスはもちろん、複数の金融機関から利便性の高い融資を受けられるようになるよう、金融機関との協業を進めていきます。

色々な苦労はしつつも、アルトアとして会計データとAIで融資のあり方を変えられるということは実証することができました。いよいよアルトアは次のステージ、会計データとAIによる新しい融資が当たり前の世界を作るステージ、に進んでいきます。
posted by 岡本浩一郎 at 18:57 | TrackBack(0) | アルトア

2020年11月09日

米国における新型コロナウイルス危機(その5)

接戦だった米国大統領選挙ですが、開票が進み、ようやくジョー・バイデン氏が当選確実となりました。当選確実を受けた集会では、“I pledge to be a president who does not seek to divide, but unify, who doesn’t see red states and blue states, but only sees the United States"(「私は、赤の国や青の国といった見方ではなく、合衆国のために、分断ではなく結束を促す大統領であることを誓う」)という演説がとても象徴的だったように思います。現時点でバイデン氏の得票が7,500万票に対し、トランプ氏は7,100万票。その差は数%に過ぎません。バイデン氏も、トランプ氏の続投を期待した人たちの意思を無視できないでしょう。分断の「危機」が、多様性の中での連帯を深め、世界から尊敬される国として復活する「機会」になることを願っています。

危機の中から機会が生まれる。先月初に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしてきましたが、まさに危機の中から機会が生まれているように感じます。融資という分野については、危険が先行し、有力な二社が買収されたということをお話ししましたが、同時に、機会も生まれてきています。そのきっかけになったのが、前回にお話ししたPPPという公的支援プログラム。

社員が数百人というFinTech企業、Kabbageが、300,000件という膨大な件数のPPPを実行した。この件数は、Bank of America(BoA)に次ぐ全米第二位の実績だそうですが、社員数で比較すると、Kabbageが300名程度、それに対してBoAは200,000名以上だそうですから、実に700倍近い差があります。Kabbageはオンラインで完結するPPP申込プロセスを短期間で構築したからこそ、少人数でこれだけの実績を出せた。またその結果として、従来型の金融機関が救いきれないUnderbanked層を支える存在となっています。Kabbageはこの夏にAmerican Express(AMEX)によって買収されることが発表されていますが、こういった実績を踏まえ、まずまずの評価での買収となったようです。

もう一つ新型コロナウイルス危機が機会となっているのは、動的なデータの重要性が再認識されたということ。これだけの環境の激変の中では、過去のデータは参考になりません。昨年の決算書を見たところで、それは足元での業況を確認するためにはほとんど役に立ちません。そういった中で、取引データや会計データなど、動的なデータをリアルタイムに近い形で分析し、与信判断に役立てることの必要性は、LendIt USA 2020における共通認識となっていました。一口に新型コロナウイルス禍と言っても、業種や地域によって、その影響の出方は変わります。皆が一律にダメージを受けている訳ではありません。また、一時的にはダメージを受けても、既に回復軌道に乗っている事業者も存在します。では、どうやって、融資できる/すべき事業者を判断するのか。それには動的なデータを分析するしかありません。

大手二社が買収され、おそらく今後はさらにプレーヤーの合従連衡が進んでいく(これも共通認識となっていました)。ただ、今後、プレーヤーの顔ぶれは変わっても、動的なデータをAIで分析するという方向は揺らがない、むしろその必要性が明確になったのが、今回の新型コロナウイルス危機なのだと思います。

翻ってアルトア。日本におけるオンラインレンディングは、良くも悪くも米国ほどの市民権は得ていません。3月から4月にかけて、やはり駆け込み需要は見られましたが、規模としては限定的でした。5月以降は公的支援が行き渡るようになり、需要が減っていますが、もともと先行投資フェーズですから、どちらにしても赤字という意味で、事業の存続が急に危ぶまれる訳ではありません。一方で、新型コロナウイルス禍の終わりが見えない中で、動的なデータで事業者の現況を把握することの重要性は明らかになったと強く感じています。新型コロナウイルス危機を危険にするのか、機会にするのか。アルトアの真価が問われています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:29 | TrackBack(0) | アルトア

2020年11月04日

米国における新型コロナウイルス危機(その4)

今世界中が米国大統領選挙の開票を固唾をのんで見守っています。2016年も接戦でしたが、今回も接戦ですね。最終的に決着がつくまでには一波乱も二波乱もありそうです。WSJで"This Election Highlights How Divided the Nation Remains"(今回の選挙で、米国がいかに分断され続けているかが明確になった)という記事がありましたが、米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません。

ただ、どんな結果になるにせよ、米国のダイナミズムはそう簡単には失われないのだとも思っています。先月初に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話ししていますが、危機を危険だけでなく、機会にすることができているのも、米国ならではだと感じています。前回は、融資という分野については、危険が先行し、有力な二社が買収されたということをお話ししました。

ただ、融資という分野においても、機会もまた生まれています。そのきっかけになったのがPPPです。PPP、Paycheck Protection Program(給与保護プログラム)は、新型コロナウイルス禍に対する米国政府による中小事業者支援策として4月にスタートしました。PPPは、基本的には金利1%の融資なのですが、その資金を賃金、家賃等の支払いに充当した場合には、返済を免除されることになっています。日本でも雇用調整助成金(給与支払いを支援)、家賃支援給付金(家賃支払いを支援)、持続化給付金(事業全体を支援)と様々な事業者支援策が講じられていますが、これら全てを包含したような支援策といえます。

PPPは、4月に受付が開始され、8月8日に受付を終了しました。実績としては、5,460社のレンダー(金融機関)から、5,212,128件の融資が実行され、総額$525B(約55兆円!)が融資されたそうです。

ただ、PPPの滑り出しは問題含みでした。基本形としてはあくまでも融資ですから、PPPを受け付けるのは、金融機関。殺到する申込みに対して、金融機関がそれをさばけないことが大きな問題となりました。金融機関としては、従来からのお客さまを優先する、しかも、PPP対象となる事業者の中でも比較的大きな事業者が優先的に取り扱われていることが大きな問題となりました。実際、私が通っていたビジネススクールの卒業生メーリングリストでは、この時期、どの金融機関であればPPPを受け付けてもらえるかという情報交換が頻繁に行われていました。

この問題に対し、PPPを主管するSBA(U.S. Small Business Administration、米国中小企業庁)は、PPPの取扱いを金融機関だけでなく、FinTechプレーヤーにも認めるという英断を行いました。

ここで特に目覚ましい成果をおさめたのが、前回もお話ししたKabbageです。Kabbageでは、前々回にお話しした通り、自社での融資は停止したものの、その一方でオンラインで完結するPPP申込プロセスを短期間で構築し、圧倒的なボリュームのPPP申込みを受け付けました。PPPが終了した8月までに、実に300,000件のPPPローンを実行したそうです(提携金融機関経由の申込みも含む)。これはBank of America(BoA)に次ぐ、全米で第2位の実績となったとのこと。

特徴的なのは、BoAなどの従来型の金融機関でのPPPの1件当たりの金額が$100,000(約1050万円)を超える中で、Kabbageの平均金額は$30,000(約310万円)にも満たないということ。従来型の金融機関が従来からの比較的大きなお客さまを中心に対応したのに対し、KabbageのようなFinTechプレーヤーが従来型の金融機関が救いきれないUnderbanked層を支えたということが明確にわかる結果かと思います。

このようにKabbageをはじめとするオンラインレンダーが、短期間で効率よくお申込みを処理できる仕組みを構築し、実際に多くのPPPローンを手掛けたことは、オンラインレンダーならではの価値を示す結果になりました。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 23:52 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月29日

米国における新型コロナウイルス危機(その3)

前回に引き続き、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしたいと思います。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。一方で、融資という分野については、危険が先行しているということを前回お話ししました

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

そういった中で象徴的なM&Aが、この夏立て続けに発表されました。一つはEnovaによるOnDeckの買収、もう一つはAmerican Express(AMEX)によるKabbageの買収です。

EnovaによるOnDeckの買収は、正直に言って、追い込まれての買収という側面が強いかと思います。OnDeckは2014年12月に、オンラインレンダーとして初めて、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。上場時には$1.3B(約1,370億円 @ 105円/$)という時価総額だったOnDeckですが、業績は期待ほどには伸びず、近年は時価総額が低迷していました。今回Enovaによる買収の対価は$122M(約130億円)ということで、全盛期の1/10以下の評価で買収されたということになります。ただ、これが全て新型コロナウイルス禍によるものかというとそうではありません。もともと業績が低迷していたところに、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけたというのが正解だと思います。

ちなみに、Enovaという会社は私も初耳だったのですが、2000年代から消費者向けのローンをCashNetUSAといったブランドで提供してきた会社だそうです。Enova自身の時価総額は現時点で$600M(約630億円)弱ということで、かつては自分を上回る時価総額だった会社をこの機会にうまく飲み込んだということになります。ただ、米国経済の先行きが不透明な中ではかなり思い切った買収と言えるかと思います。

OnDeckのケースは、後ろ向きな側面が強いかと思いますが、AMEXによるKabbageの買収はそうとは言い切れない部分があります。KabbageはOnDeckとならぶ代表的なオンラインレンダーですが、OnDeckとは異なり、未上場のままでした。2017年にはソフトバンクによる出資を受け入れており、この際の評価額は$1.2B(約1,260億円)といわゆるユニコーンの一社でした。今回のAMEXによる買収は$850M(約900億円)と言われており、これだけを見れば、以前の評価額から下げての買収ということになります。もっとも、今回のAMEXによる買収にはKabbageの既存の貸出債権は含まれていない(その多くは既に証券化されているようですが)ため、それを含めた際のトータルでの評価額は判明していません。ただいずれにせよ、全盛期の1/10以下で買収されたOnDeckと比べれば、Kabbageはそれなりに高い評価をされて買収されたと言えるかと思います。

なぜOnDeckとKabbageで評価が分かれたのか。それはこの後にお話しする新型コロナウイルス禍によってもたらされた「機会」をどれだけ享受できる可能性があるかに密接にかかわっているように思えます。

それにしても、高い評価を受けることもあれば、一転低い評価を受けることもある資本市場ですが、評価が低くなった瞬間にすぐにM&Aの対象となるというのがいかにもアメリカだな、と思います。Kabbageの創業者は既に次のベンチャーを立ち上げているというのも、これもまたいかにもアメリカです。経済の先行きも政治の先行きも不透明な中でも株高が続いており、危うさも感じさせる米国市場ですが、このダイナミズムがある限り、一旦は屈むことはあったにせよ、時間はかかっても必ず盛り返すのだろうと思います。

次回は、いよいよ新型コロナウイルス禍によってもたらされた「機会」についてお話ししたいと思います。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 21:32 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月27日

米国における新型コロナウイルス危機(その2)

少し前に、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしました。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。

ただし、融資という分野については、危機が先行しています。新型コロナウイルス禍によって、景況が悪化する中で、KabbageOnDeckといったオンラインレンダーには、緊急避難的な資金繰りニーズによる申し込みが急増しました。ただ、Kabbageは「我々は"Emergency relief"(緊急救援)のために存在している訳ではない」ため、ニーズに応えられないということで、4月には融資をストップしました。また、OnDeckについても、「“Anticipatory” borrowing(先行きの悪化を予想しての駆け込み需要) が急増したが、応えきれるものではなく、4月中旬までに新規融資をストップした」とのことです。

これはオンラインレンダーに限ったことではありませんが、融資はその返済がなされる蓋然性が一定程度確保されているからこそ成り立つものです。特に米国では多くの事業者が事実上の活動停止に追い込まれる中で、返済がなされる蓋然性が確保できなくなりました。オンラインレンダーは、これまで、ややもすれば従来型の金融機関のサービスが行き届かない小規模事業者向けにサービスを提供してきました。いわば事業者版のUnderbanked(銀行に相手にしてもらえない層)の解消に価値を発揮してきたわけです。ただ、今回の経済環境の激変の中では、事業基盤がしっかりした事業者を多く抱えている大手銀行と比較し、事業基盤がぜい弱な小規模な事業者向けにサービスを提供しているオンラインレンダーは一番直接的に影響を受けたと言えます。

こういった状況の中で、米国においても公的な支援策が実行されました。これはもちろん必要なことですが、公的な支援策によって、事業者は一旦資金繰りに目処が立つ状況になり、そうなるとしばらくはそもそも融資の需要が減ることになります。

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

こんな中で、米国におけるメジャーなオンラインレンダーであるKabbage、OnDeckの両社とも買収されるということが発表されています。KabbageはAmerican Express(AMEX)によってOnDeckはEnovaによって買収されることが発表されています。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:30 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月09日

米国における新型コロナウイルス危機(その1)

先週参加したLendIt USA 2020ですが、お話しした通り新型コロナウイルス禍によってバーチャル開催となりました。日本では新型コロナウイルス禍は比較的落ち着いた状態に(今のところは)なっていますが、米国では新型コロナウイルス禍の収束の目処が立っておらず、米国経済全体に大きな影響が出ています。それはFinTechについても例外ではありません。

今回LendIt USAに参加して感じたのは、新型コロナウイルス禍はFinTechにとってまさに「危機」であるということ。これは私がいつも思っていることですが、危機は「危」と「機」の二文字、すなわち「危険」と「機会」で成り立っています。うまく乗り越えられなければ存在意義が問われる危険、一方で、進むべき方向を見極め、それに応じた方向転換をすることによって大きな成果を得られる機会、どちらにも転がりうるのが、今回の新型コロナウイルス危機であると考えています。

FinTechといっても、支払い/決済や、融資、資産運用など様々な分野が存在しますが、この中には新型コロナウイルス禍がまさに追い風になっている分野も存在します。例えば、オンラインショッピングの利用が広がる中で、支払い/決済に関するFinTechは大きな追い風を受けています。もともとデジタルの活用は日本よりも明らかに進んでいる米国ですが、その米国においても、今回の新型コロナウイルス禍によって、「デジタル・エコノミーへのシフトが5年から10年分の跳躍を遂げた」と言われています。今回のLendItでも登壇するパネリストによる「うちの親も遂にオンラインで買うようになった」といったコメントも複数見られました。ですから一口に支払い/決済といっても、リアルな店舗での利用が中心のSquareにとってはマイナス面がある一方で、オンラインでの利用が中心となるStripeは大いにプラスとなっているのではないでしょうか。

資産運用という観点では、3月には相場が大きく崩れたものの、4月には値段を戻し始め、夏には新型コロナウイルス禍前に近いところまで戻しています。金融緩和によるものであり、正直バブル感は否めませんが。米国でも特別定額給付金のような支援が実施されていますが、それをスマホ証券会社で投資に回すRobinhooder(名前はスマホ証券会社の代表格Robinhoodから)の存在が相場を押し上げる要因となっているとも言われています。そういった意味で資産運用という観点でも追い風と言えるかもしれません。

では融資という観点ではどうか。FinTech全体をカバーするカンファレンスとしてはMoney 20/20などいくつか存在しますが、LendIt USAはその名が示す通り、融資分野を中心としたカンファレンスです。だからこそ5回連続で参加してきている訳です。結論からお話しすると、融資分野においては、新型コロナウイルス禍はまさに危機です。危険でもあり、機会でもある。危険だけでもないし、機会だけでもない。何が危険で、何が機会なのか、次回お話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:32 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月07日

一人時差

去る10/1に内定式を開催したと書きましたが、実は私、この日はあまり本調子ではありませんでした。というのは、9/30から10/2の3日間、NY時間で仕事をしていたからです。正確には、9/29の夜からですね。

私が毎年参加しているLendIt USAというイベントがあるのですが、今年はもともと5月にNYで開催される予定でした。しかし、新型コロナウイルス禍を受け、3月中旬には、9/30からの開催に延期されました。ただこの時点ではまだリアル会場での開催の予定。その後の特にアメリカでの新型コロナウイルス禍の広がりを受け、6月末には、今年に関してはバーチャルイベントとすることが発表されました。

バーチャルイベントなので、出張しなくていいのは大きなプラス。例年は4日程度は出張するため、その期間を空けるためのスケジュール調整はそれなりに大変ですが、今年はその点気軽でした。ただ、バーチャルイベントといっても、どこかのリアルな時間に基づいてスケジュールが設定されます。今回は、元々の開催会場であるNY時間(米国東部標準時)。米国東部標準時は日本との時差が14時間(夏時間)。ほぼ完全に昼夜逆転です。このため、9/29の夜23:45に最初のセッションが始まり、終わるのが翌朝6:00というのスケジュールを3日間続けることになりました。

もちろん出張の際にもこの時差を乗り越えなければなりません。それでも出張の時は現地の太陽がありますから、例えば朝やお昼に日光を浴びることである程度体を慣らすことができます。しかし、今回のような一人時差の場合、回りが寝静まった真夜中に活動を開始し、空が明るくなってくる頃に活動終了となります。これは正直結構辛かったです。

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身体的には辛かったですが、内容的には参加して正解でした。新型コロナウイルス禍がアメリカのFinTechに、もっと言えば社会全体にどんな影響を与えたのか、よく理解することができました。メディア等でも色々な情報は伝わってきますが、やはり自分で情報を取りに行く、もっと言えば空気を感じ、肌感覚を得ると見えてくるものが変わってきます。もちろん、リアル開催と比べると、得られる肌感覚はだいぶ薄まってしまうのですが。それでもリアルタイムで参加すると、コメントや質問などをリアルタイムで見ることができるため、ある程度は空気を感じることができます。

逆に言えば、空気を感じることを目的としないのであれば、日本の普通の時間に録画を見る方が簡単ですね。今回のイベントは全て録画され、数日後に(イベント参加者に = 有料で)公開されています。

LendIt USAへの参加はこれで5回目。登壇者も見知った人が多く、懐かしく感じました。リアル開催だと現地で隙間時間に情報交換できるのですが、今回はそれができないのが残念。ただ、彼らが色々な困難に直面しつつも活躍していることを確認できたことは良かったと思います。次回は、今回のLendIt USA 2020で見えてきたことについて少しお話ししようと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:16 | TrackBack(0) | アルトア

2020年07月27日

アルトア 弥生オンライン対応

2017年12月にアルトアが弥生会計をご利用の法人のお客さま向けに融資を開始してから早2年半。本当にあっという間ですね。その後2018年12月には個人事業主のお客さま向けにも融資を開始しました。その後も、融資実行に際しての本人確認の手続きを改善(その1その2)なども行ってきました。

足元の動向で言えば、2020年3月には、お申込みがかなり増えました。新型コロナウイルス禍の影響が着実に広がる一方で、公的な支援が行き渡らず、事業者の方々の資金繰りが急速に悪化した時期です。そんな中、アルトアであれば最短即日で融資が可能ということで、お申込みが増えたものと考えています。

一方で、5月からはお申込みが明確に減りました。え、そんなこと書いてしまっていいの、と思われるかもしれませんが、事実ですからしょうがありません(笑)。これは、3月とは逆に、公的融資や、持続化給付金など、公的な支援がそれなりに行き渡る中で、一旦事業者の方々の資金繰りが安定したためだと考えています。実際、3月にお借入れいただいた方が、資金繰りの目処が立ったということで、5月や6月に繰り上げ返済されるケースが目立ちました。融資をする立場からすると、お申込みが減るというのはなかなか残念なものがありますが、一方でそれは足元でお客さまの資金繰りが(少なくとも一旦は)落ち着いているということで、お客さまにとってはいいことだと考えています。

今後も新型コロナウイルス禍は相当程度続くであろう中で、アルトアの事業としては第二フェーズに入っていかなければなりません。これまではアルトア自身によって、弥生の会計データを用い、オンラインで完結する利便性の高い融資が実際に成立することを、いわば実証実験をしてきました。しかし、新型コロナウイルスのような過去に例のないほどの巨大な影響をもたらすものの前では、アルトアだけでは圧倒的に力不足です。3月にはお申込みが増えたとはいえ、それは日本全国で資金を求めていた事業者の数からすると、ほんの僅かな割合に過ぎません。

第二フェーズでは、金融機関がアルトアのテクノロジーを活用し、アルトアと同等の利便性/即時性を提供できるようになることを改めて目指していきます。これは当初から計画してきたことですが、残念ながらまだ実現できていません。

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そのために必要になることの一つが、アルトアとして取り扱える会計データを広げること。実は今日から、これまでは弥生のデスクトップアプリをご利用の方のみが対象だったものから、弥生のクラウドアプリ(弥生会計 オンライン、やよいの青色申告 オンライン)をご利用の方もお申込みいただけるようになりました。これらはもっと早くに実現したかったのですが、何だかんだ時間がかかってしまいました。ただ、これはあくまでも通過点。今後は、弥生以外の会計ソフトにも対応していきます。

アルトアの親会社は、弥生ですが、弥生だけを見てビジネスをしている訳ではありません。アルトアが目指すのは、データとテクノロジーの力で事業者の資金繰りを円滑にすること。事業者の皆さんが弥生を使っていただいていることは嬉しいこと(実際に非常に多くの方にご利用頂いています)ですが、それによって利便性の高い融資を受けられるかどうかが左右されるべきではないと考えています。もちろん、利用者が極端に少ない会計ソフトに対応することは費用対効果的にも難しいという現実はありますが、一定以上のシェアのある会計ソフトには着実に対応していきたいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:00 | TrackBack(0) | アルトア

2020年03月19日

アルトアにできること

前回、新型コロナウイルス感染拡大を受けての政府による事業者支援の情報の取りまとめページをご紹介しました。前回ご紹介して以降も、昨日、そして本日と継続的に情報を更新しています。

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実は、ほぼ同様の内容をアルトアのウェブサイトでも発信しています。貸金業業者であるアルトアのサイトで、政府系とはいえ、別の融資をご紹介するなんて、と思われるかもしれません。

貸金業業者として、新型コロナウイルス禍の広がりによって、多くの事業者の業況が急速に悪化してきていることを肌身で感じています。率直に言って、非常に怖い状況です。このままいけば、貸倒れが急速に増えるかもしれない。アルトアは弥生発とは言え、アルトア自身はベンチャー。経営基盤が盤石とは言えません。こんな環境において一番安全なのは、貸さないこと。お店の入口のシャッターをガラガラと閉めてしまえば、少なくともこれからの貸し出しで貸倒れが起こることはありません。

ただ、それでは自己否定になってしまいます。かつて、金融機関は、晴れている時に傘を貸し、雨が降ったら傘を取り上げると言われることもありました。今はさすがにそんなことはないと思いますが、業況が良く、特に資金に困っていない時にお金を貸したがり、業況が悪くなった瞬間に融資を引き揚げる。お客さまのニーズよりも、自社の都合を優先する。

アルトアはこれまでの金融の常識に挑戦するために生まれました。そのアルトアがここで怖気づいて融資を止めてしまえば、金融の常識に挑戦するというのは所詮上辺だけの絵空事だったということになります。ですから、アルトアは、今日現在も、粛々と、これまで通りお申込みを受け付け、これまで通りの審査基準で融資を行っています。

ただ、正直今回の新型コロナウイルス禍は、多くの事業者に急速に影響を与えているという意味で、リーマンショックを超えるような経済的インパクトもありうると考えています。それだけの景気変動の中で、アルトアだけでお客さまを支え切ることはできません。アルトアは少額短期の融資であり、融資額は最大でも300万円です。新型コロナウイルス禍による影響が長引けば、これでは足らないというこも十分に想定できます。だからこそ、アルトアでも、事業者の皆さんがどんな支援を受けられるのか、情報を発信しています。

アルトアの強みは利便性であり、融資実行までのスピード。足元の資金繰りについては、しっかりとお手伝いできると考えています。同時に、これから先、何がどこまで続くかわからない中では、政府による支援策も活用できるものは積極的に活用していただきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:19 | TrackBack(0) | アルトア

2019年12月30日

年末まであるとあんしん

いよいよ今年も残すところ明日まで。弥生は先週金曜日で今年の営業を終了しましたが、アルトアに関しては、金融機関に準ずるということで、本日30日までの営業でした。

アルトアへのお申込みは着実に増えていますが、今月はやはり年末ということもあってか、お申込みが特に多かったように感じます。とはいえ、お申込みいただいたから、そのままご融資につながるとは限りません。アルトアでの審査でokとなった場合、その後一ヶ月間、お客さまのご都合の良いタイミングで、融資を実行していただくことができます。今月お申込みいただいて、今日までに融資実行になっていない方もそれなりの数いらっしゃいますが、年末の資金繰りに目途が立ったということかと思います。

アルトアの実績という観点では、融資を実行していただきたいのは本音ベースでは山々なのですが(笑)、アルトアからの融資なしでも、年末の資金繰りを乗り越えられたことは、お客さまにとって良いことだと思います。念のためのつもりでも、アルトアの審査でokを得ておけば、いざ資金繰りに困った際にすぐに融資を受けられる訳ですから、まさにアルトアならではの「あるとあんしん」を提供できていると自負しています。もともとアルトアとしても、お申込みすぐ融資がベストだとは考えておらず、いざという時のために、予めお申込みいただき、いくらぐらいの融資が可能か確認することによって、備えることをお勧めしています。

もちろん、年末の資金繰りが厳しいという中で、お申込みからすぐの融資実行によってお客さまのお手伝いができることも、アルトアの大きな価値です。実際に、昨日にお申込みいただき、本日融資実行になったお客さまもいらっしゃいました。一般的に言って、12月29日(日)に申し込んで、翌日の12月30日(月)に融資が実行できる事業性の融資は多くはありません。

本日までのお申込みの審査もすべて完了し、本日の融資実行にともなう送金もすべて完了しました。これでアルトアの本年の営業も無事終了です。まだまだ小さな存在ではありますが、「あるとあんしん」を事業者の皆さまにしっかりとお届けできた一年になったと考えています。来年はもっとも多くの方に「あるとあんしん」をお届けしたいと考えています。それでは、皆さま、良いお年をお迎えください。
posted by 岡本浩一郎 at 18:34 | TrackBack(0) | アルトア

2019年12月13日

二年間の実績

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今週、日本経済新聞でアルトアが大きく取り上げられました。正確に言えば、アルトアの事例の紹介。「従来の延長線上ではなく、不連続な変化が起きつつある現場を取材し、経済や社会、暮らしに及ぼす影響を探ります」という「Disruption 断絶の先に」特集の中で、今回は「デジタル金融の激震」というテーマで、「御社にもある隠れた信用力 中小救う資金繰り革命」というタイトルの記事で取り上げられました。まずは電子版で掲載され、その翌日に日経の本紙でも1ページを費やして掲載されました。とても素敵な写真と共に掲載されたのは、こちらのアルトアの「お客さまの声」でもご紹介しているインダスという会社の中澤社長です。

お客さまの声では、中澤社長の経歴とインダスの創業の経緯についてもご紹介していますが、実は中澤社長は金融機関のご出身です。金融のプロである中澤社長が、自ら事業者として小回りのきく融資として頼っていただいたのがアルトアである、というのが実に象徴的だと感じています(もちろんこれはお客さまの声のためにお話しをお伺いして初めて知ったことです)。もっとも、本ブログでもお話ししてきたことですが、アルトアとしては、アルトアの仕組みを金融機関に提供することで、日本全国の金融機関が小回りのきく融資を提供できるようにお手伝いをしたいと考えています。

なお、一点補足すると、日経の記事中では「数日の審査」とありますが、正確には、審査結果のお知らせ自体はお申込みをいただいた当日中にお返ししています。

以前もお話ししたことがありますが、アルトアの特徴はお客さまの満足度が高いこと。だからこそ、アルトアの事例紹介にもご協力いただけていますし、また今回のようにメディアの取材にもご協力いただけるわけです。それにしても、日経の本紙にここまで大きく写真入りで掲載されるとは思われなかったのではないかと思いますが(笑)。

満足度が高いことはとても嬉しいこと。アルトアとして、世の中にこれまでにない価値を提供できていると強く実感しています。一方で、アルトアが事業を継続し続けるためには、一人のお客さまを満足させて終わりではなく、多くのお客さまに価値を提供することによって、アルトア自身のビジネスを成立させることのできる規模を実現しなければなりません。

この観点では、前進はしているものの、まだまだ満足できるレベルにはありません。一週間前の12月6日で、アルトアはサービスを開始してからちょうど丸2年が経過しました。1年前には丸1年の実績として、「融資の実行件数は257件、そして累積での実行金額が4億6百万円」とお話ししました。丸2年経過では、融資の実行件数が847件、そして累積での実行金額が14億16百万円。1年前の実績の3倍を超える結果を出すことができています。ただ、これでは、決して十分ではありません。当然一定の時間は必要ですが、2倍、3倍といった規模感ではなく、10倍、100倍といった規模を達成しなければなりません。

課題はやはり認知。そもそもオンラインで融資というサービスが存在するということから、多くの事業者にご理解いただかなければなりません。今の時代で言えば、膨大な広告宣伝費を投入し、それこそTVコマーシャルで一気に認知を広めるというのも手なのかもしれません。それも完全に否定はしませんが、そういったやり方に本当に事業継続性があるのかどうか。弥生のDNAを受け継ぐアルトアとしては、やはり愚直に、お客さまに満足いただくことを第一に追求していきたいと思っています。それが今回の記事のように、アルトアの認知に、そしてそれが今後の実績につながっていくものと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:31 | TrackBack(0) | アルトア

2019年08月01日

あるとあんしん

本日よりアルトアでは、個人(法人の代表者の方、あるいは、個人事業主の方)の本人確認の手続きにオンラインで完結する新方式を導入しました

本人確認は、融資実行に先立って、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」という厳めしい名前の法律(省略して犯収法と呼ばれています)によって求められている手続きです。英語では"Know Your Customer"(お客さまのことを知る)、略してKYCと呼ばれます。

昨年の秋に犯収法の施行規則が見直しとなり、従来は郵送の手続きが必要だったものが、オンラインでその場で完結できる方式も利用できるようになりました(これをeKYCという言い方をします)。この2月には、まず法人の本人確認の手続きについて、アルトアが法定のオンラインサービス(一般財団法人民事法務協会が運営している登記情報提供サービス)によって登記情報の送信を受けることにより、お客さまによる手続きが一切不要となりました

そして今回は、個人の本人確認の手続きについて、スマホのアプリを使ってその場で完結できる方式の提供を開始しました(なお、従来通りの郵送による本人確認手続きも引き続き利用可能です)。これはTRUSTDOCKという本人確認のための仕組みを提供している会社との協業により実現したものです。

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今回、オンラインで完結する本人確認手続きを導入したことにより、初めてのお客さまでも、当日中の融資が可能になります。目安として言えば、平日午前中にお申込みいただき、その後の手続きが順調に進めば、その日の午後3時までの入金も可能ということです。

誤解のないようにお話しすると、即日で融資を受けなければならない状況に追い込まれることを勧めているわけではありません。資金調達は本来は計画的にすべきもの(そのためにも資金調達ナビを是非ご活用ください)。ただ、予定されていた取引先からの入金が遅れた、どうしようということはどの事業者でも起こりうること。そんな時に、最短で即日融資を受けることが可能という安心感を提供したいと思っています。

以前お話ししたことがありますが、「アルトア」という社名には「あるとあんしん」という意味も込められています。今回、最短即日での融資が可能になったことで、目指していた「あるとあんしん」にさらに一歩近付けたと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 15:31 | TrackBack(0) | アルトア

2019年06月19日

期待

先日お話しした通り、アルトアは2017年12月に営業を開始してから1年半。実績としては、2017年12月からの一年間の実績と、2018年12月からの半年間の実績がほぼ同レベルということで、着実に伸びていますし、足元の6月もかなりのペースで融資を実行できています。登山で言うとまだまだ2合目ぐらいの感覚ではありますが、山道を着実に登っているという手応えは感じています。

手応えと同時に感じているのは、期待。金融機関による従来型の融資は担保や代表者保証に依存し過ぎており、ちゃんと事業性を評価しないといけないと言われているものの、実際に事業性評価に基づいた融資はまだまだ普及したとは言えません。ある程度の事業規模の融資先であれば、担当者がじっくりと事業を理解し、評価するということは可能ですが、小規模の事業者となると、そこまで労力をかけても採算が取れないのが現実です。そういった中で、データとAIで事業性を評価するというアルトアのアプローチは、これまでの不可能を可能にするという意味で非常に期待されています。

そういった期待を背景に、様々な会議やカンファレンスでプレゼンの機会をいただけるようになりました。例えば、構造改革徹底推進会合。これは日本再興戦略に基づく構造改革その他の成長戦略の総ざらいを行い、成長戦略の更なる深化・加速化を図るために設置された会議体ですが、今年の2月に「中小企業・小規模事業者の生産性向上」をテーマとした分科会が開催され、中小事業者にこれまでにない利便性の高い融資を提供する取り組みとしてアルトアの事例を紹介しました(アルトア提出資料議事録)。

また、中小企業庁は、IT・クラウドサービスによる業務効率化はもちろん、様々な手段を用いて中小企業経営のスマート化を図り、我が国中小企業、ひいては、我が国産業全体の競争力を高めることを目的として、スマートSME研究会という研究会を開催していますが、5月に「資金調達を中心に、データの利活用・共有等がもたらす中小企業経営へのインパクト」というテーマで会合が開催され、この場でも、中小企業が既に持っているデータを活用することで円滑な資金調達を実現している取り組みとして、アルトアをご紹介しました(アルトア提出資料)。

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4月にパネラーとして参加したAI/SUMも「AIが金融におけるデジタル革命の潮流を起こす 〜ビジネスを変える〜」の好事例として、金融庁にお声がけいただいたものです。このパネルディスカッションは楽しかった!

共通して感じるのは、データとAIでこれまでの金融の「不可能」を「可能」に変えるということに対する熱い期待。もちろん決して容易なことではありません。何せこれまでは不可能だった、つまりそれだけの障壁が間違いなく存在するわけですから。ただ、それを変えるべきだと想う方が多く存在していることも事実。そういった方々から、ひょっとしたらこの会社なら変えられるのではないか、と期待され、応援していただいています。

アルトアはまだ2合目。頂上を見上げるとその道のりにクラクラしますが(笑)、何とかこの期待に応えたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:47 | TrackBack(0) | アルトア

2019年06月06日

アルトア一年半

今日で、2017年12月7日にアルトアが営業を開始してから、ちょうど1年半経ったことになります。1年経過した時点での結果については昨年12月に本ブログでもお話ししましたが、それから半年ということになります。ざっくり言えば、2017年12月からの一年間の実績と、2018年12月からの半年間の実績がほぼ同じレベルです。一年間の実績と半年間の実績が同じですから、ほぼ倍のペースということにはなりますが、一定の手応えは感じつつも、もっとできるはずだ、とも感じています。まだまだこんなものでは満足できません。

まだまだできていないこと、やるべきこと、やりたいことが山積み。

もちろん、一歩ずつではありますが、着実に前進はしています。昨日は、マーケティングチーム・与信モデル構築チームそれぞれと打合せがあったのですが、それぞれ着実な前進を感じる内容でした。マーケティングを通じて、アルトアをどう知っていただくのか、どうご利用いただくのかは、現状のアルトアにとって最大の課題です。正直まだ試行錯誤ではありますが、昨日の打合せはそんな試行錯誤の中でも一定の方向感を見出すことができる内容でした(詳しい内容までお話しできないのが残念、笑)。

与信モデル構築に関しては、営業を開始した一年半前には既に一定の結果は出していることになりますが、実際のところ、モデルは一度作って終わりではなく、継続的な改善こそが肝心です。アルトアでは、メインとなるモデルを2つ構築・運用していますが、両方とも、既に一度バージョンアップを行っています。現在は、二回目のバージョンアップに向けた準備を進めており、昨日は新バージョンの概要の説明がありました。これも詳しい内容まではお話しできないのですが、より高い精度でお客さまの現況を把握できるようになります。同時に嬉しいのは、営業開始に向けた準備をしていた2年前はまだまだよちよち歩きだったチームが、2年で大きく成長したということ。

ローマは一日にして成らず。引き続き、焦ることなく、しっかり一歩ずつ進み続けます。営業開始後2年となる今年12月には、しっかりとした手応えだけでなく、しっかりとした結果としてお話しできるようにしたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:55 | TrackBack(0) | アルトア

2019年04月22日

AI/SUM 2019

アルトアもそうですが、オンラインレンディングでは、一般的にデータ(アルトアの場合は会計データ)をAIで分析することによって、融資の可否を判断します。今月上旬に開催されたLendIt FinTech USA 2019でも、AIの活用は一つの大きなテーマとなっていました。ただ、イベント全体も落ち着いた感じでしたが、AIに関する議論もやや落ち着いたように感じられました。これは、AIが活用されていないということではなく、むしろAIの活用が当たり前になったということかと思います。

その中で印象に残ったのが、AIについて語る時に、必ず説明可能性(Explainability)について語られるようになったこと。AIの活用が進む中で、意図せぬ形で差別(金融の世界では金融排除)が起きるのではないかが懸念されており、それを避けるために、AIの判断ロジックを説明できることが重視されてきています。例えば、従来の融資において、(当然いいことではありませんが)人種によって融資の可否判断が影響を受けていた場合、その実績を学習したAIは、人種を可否判断に取り込んでしまう可能性があります。

AIというと、約2年前についに碁で人間のチャンピオンに完勝したとして今のブームの火付け役になったのがAlphaGo。AlphaGoが採用しているAIの手法はDeep Learning(深層学習, 以下DL)というものですが、DL(あるいはそのベースであるMachine Learning)はなぜそういった判断がされるのかが外からはわからない、いわゆるブラックボックスになります。碁のような勝負の場合には、勝てばいいので、必ずしも説明可能性は求められませんが、金融の場合はそうはいきません。そういった中で、今回のLendIt FinTech USA 2019では、説明可能性があるDLという技術が注目を集めていました。

もっとも、金融におけるAIはそもそもDLとは限りません。確かに、例えば画像から犬か猫かを判定するなど、構造化されていないデータに関してはDLが威力を発揮します。一方で、構造化されているデータについては、DLでない、よりトラディショナルな統計的アプローチでも十分性能を発揮でき、なおかつ説明可能性を確保できるからです。アルトアの場合は、扱うデータが会計データという構造化されているデータであること、また、説明可能性が必要であるという考えから、統計的なアプローチによるAIを採用しています。

AIといえば、今日から開催されているAI/SUM 2019(アイサム、Applied AI Summit)というイベントで登壇します。AI/SUMは、日本経済新聞社主催のAIを実社会・産業にどう適用するかにスポットをあてた日本最大級のグローバルAIカンファレンス。私は最終日となる4/24(水) 午前9:30-10:15の「AIが金融におけるデジタル革命の潮流を起こす 〜ビジネスを変える〜」というセッションにパネリストとして登壇します。

このセッションでは、金融庁の三輪フィンテック室長をモデレーターとして、実際にサービスを提供している3社および金融機関の有識者で熱くオンラインレンディングについて語ります。AI/SUMは一般チケットが10万円(!)と、私が登壇するセッションのためだけにチケットを買っていただくのは難しいと思いますが、既にチケットを購入済みという方がいらっしゃいましたら、是非当セッションにもご参加いただければ幸いです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:28 | TrackBack(0) | アルトア