2017年04月20日

金融機関とのパートナーシップ

先週末にようやく正式に発表することができたALT(アルト)。先週末の発表は、大きく2つのポイントがありました。一つ目は、弥生の子会社としてALTを設立し、オンラインレンディング事業を立ち上げるということ。ALTは、お申込みから融資の実行まで、基本的にインターネット上の手続きで完結する仕組みを提供します。これまでの融資と異なり、決算書などの資料提出や金融機関窓口への訪問などの煩雑な事務作業が不要となり、また短期間での融資実行が可能になります。

一方で、ALTは、金融機関からお客さまを奪うことを目的とはしていません。むしろ、お客さまから見ればこれまでにない利便性、同時に、金融機関から見れば圧倒的に融資コストを低減する仕組みを提供することによって、これまでは需要と供給がかみ合わなった小規模事業者向け融資をビジネスとして成立するようにしたいと考えています。実際に、ALTは大手地銀と提携し、金融機関におけるALTが提供する与信モデルの活用も視野に入れています。これが先週末の発表のもう一つのポイント。具体的には、ALTは、千葉銀行福岡銀行山口フィナンシャルグループ横浜銀行(50音順)という大手地銀と業務提携契約を締結しました。ALTが開発し、ALTが実践する新しい与信モデルを活用し、銀行が利便性の高いオンラインレンディングを実現できるように検討を進めていきます。

弥生を母体とするALTが実現したいのは、小規模事業者がこれまでよりも容易に資金を調達できる環境を作ること。まずはこの秋から、ALT自身が融資を行うことによって、その実現を目指します。しかし、ALTだけで日本全国津々浦々の事業者の皆さんの資金ニーズにお応えすることは現実的ではありません。お金を貸すというのは、ひょっとしたら貸したお金が返ってこないかもしれないというリスクをとること。ALT一社でそのリスクをとることはできません。

そのために、ALTは金融機関とのパートナーシップを積極的に構築し、多くの金融機関から利便性の高い融資を受けられる環境を作りたいと思っています。とはいえ、最初から多くの関係者を巻き込んでしまうと、船頭多くして舟山にのぼる、ということになりかねません。そのため、当初はFinTechに対して積極的な取り組みをされている4行(社)と提携し進めていくこととしました。来週には、パートナー金融機関からの最初の出向者もALTに参画する予定です(ワクワク)。

一方で、ごく一部の金融機関と閉じた関係にとどめるつもりはありません。幸いにして先週の発表以来、多くの金融機関からお問合せを頂いています。中期的には、より多くの金融機関とパートナーシップを組むことによって、文字通り日本全国津々浦々で利便性の高い融資を受けられるようにしていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 23:25 | TrackBack(0) | アルトア

2017年04月18日

ALTという名前

先週末にようやく正式に発表することができたALT。会社名はALT株式会社。昔は登記する際に、アルファベットの会社名は認められていませんでしたが、平成14年の商業登記規則等の改正によって、アルファベットの入った会社名もokとなりました。ただ、アルファベットの場合、何と読むか一意に定まらないという問題があります。エーエルティー?

正解はアルトです。これがどこから来ているかというと、英語のAlternative(代わりとなる、代替)から。5年ほど前から、米国ではAlternative Financeという言葉が使われるようになってきました。おカネを借りるのは銀行から、資本を集めるのは株式市場からというのを従来型の金融(Traditional Finance)とすると、インターネットを通じてこれまでにない形の資金調達を可能にするのが、代替金融(Alternative Finance)。新しい画期的な商品を生み出すための資金を広く一般から募るCrowd Funding(例えばKickstarter)や、インターネットを通じて資金の借り手と貸し手を結び付けるP2P Lending(例えばLending Club)など。

弥生はオリックスグループ入りする前からAlternative Financeの可能性を探っていましたが、本格的に検討が立ち上がったのが、2015年の末ぐらい。当初はP2P Lendingの事業化を検討していましたが、日本では法令の制約上、P2Pならではのメリットの実現が難しいこともあり、最終的には、今回発表したように、自分自身で融資を行うオンラインレンディング(さらには、与信モデルの金融機関への提供)というビジネスモデルで事業を立ち上げることとなりました。

検討を進めてきたプロジェクト名がProject ALT。このALTがそのまま会社名になったわけです。

しかし、ここまで読んで、「おや、以前言っていたことと矛盾してない?」という方、実にするどい。本ブログを相当ご愛読頂いているようで光栄です。確かに2015年最後のブログ投稿(要はこの頃から検討が本格化していたわけですが)で、「代替手段(Alternative)ではなく、これまでにない新たな価値(New Value)を生み出せるかどうか」と書いています。ちょっと便利になった程度の「もう一つの選択肢」ではダメで、「これまでにない新しい価値」を生み出さなければいけないと。

新たな価値は、生まれた当初は異端であり、傍流です。しかし、それが本当に新しい価値を提供できているのであれば、それはやがて本流になる。弥生であり、ALTは、今はまだ日本に存在していないAlternative Lendingを日本に根付かせ、パートナー金融機関とともに、それをAlternative(傍流)ではなく、Mainstream(本流)にしていきたいと思っています。

実は、ALTという社内はあくまでも仮の名前。サービスを開始するまでに、正式な名称に変更する予定です。では、正式な名称は、というと決まってはいないのですが(苦笑、絶賛募集中です)、それは「新たな価値」を示す名前でないといけないと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:53 | TrackBack(0) | アルトア

2017年04月14日

ALT始動

本日、弥生とオリックスは、会計ビッグデータを活用した新たな金融サービス「オンラインレンディング」の事業立ち上げについてプレスリリースしました。この新しい事業は、オリックスが持つ与信ノウハウ、弥生が持つ会計ビッグデータと協業先であるd.a.t.株式会社のAI技術を活用した新たな与信モデルを開発し、インターネットを通じて小規模事業者向けの融資を行うものです。

約2年前に弥生がオリックスグループ入りをする際から抱いていた構想をようやく形にすることができました。当時は"FinTech"という言葉がほとんど浸透しておらず、金融のオリックスとITの弥生というのは不思議な組み合わせだな、と思われた方も多いのではないかと思います。FinTechという言葉も定着した(むしろブームとしては沈静化してきているような気もしますが)今となっては、なぜオリックス+弥生なのか、ご理解頂けるのではないかと思います。

これは私個人としても何が何でも実現したい事業でした。弥生はこれまで長年にわたって、日本の小規模事業者に、会計ソフトを提供し続けてきました。会計ソフトは、事業者の現状を正確に把握するためのツール。いわば物差しです。会計ソフトという物差しを使うことによって、事業の現状を把握し、将来に向けてどういったアクションを取るべきか判断することができます。しかし、一方で、これまでは物差しで測った結果、このままでは資金繰りが苦しくなる、あるいは逆に、今ここで資金を投入して投資すれば事業を大きく成長させられる、といったことがわかっても、それに対して弥生が提供できる打ち手はありませんでした。

今回の取り組みは、測る道具としての物差しを提供するだけではなく、そこから生まれるアクションのための打ち手を提供しようとするものです。弥生は今、事業者のあらゆる悩みにお応えする事業コンシェルジュへの進化を図っていますが、その一環であることは言うまでもありません。

ただし、弥生が全ての事業者の全ての資金ニーズを満たすことではできません。事業コンシェルジュは、弥生だけで成り立つものではありません。会計業務は会計事務所とのパートナーシップを通じて、お客さまのニーズにお応えしようとしていますし、融資に関しては、やはりその道のプロである金融機関(銀行)とのパートナーシップによって、多くのお客さまのニーズにお応えしていきたいと考えています。今回、千葉銀行福岡銀行山口フィナンシャルグループ横浜銀行(50音順)という名だたる大手地銀と提携し、金融機関を通じたオンラインレンディングの実現を目指しています。

本事業の運営会社として、去る2月にALT(アルト)株式会社を設立しました。社長は私が弥生の社長と兼任で務めますが、私以外は既に6名が専任で活動を開始しています。そうです、2月2日に謎めいた記事を投稿しましたが、その時の写真から白塗りを取り除くとこうなります。

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今回こうやって発表できたことは大きな一歩ではありますが、実際にお客さまに価値を提供できるようになるにはまだまだいくつもハードルがあります。焦ることなく、一歩一歩着実に前に進んでいきたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 12:44 | TrackBack(0) | アルトア