2023年03月27日

最終出社

3/24(金)は、私にとって忘れられない一日となりました。これまでにお話ししたように、私は3月末をもって退任しますが、実は約1年前から3月末にプライベートでの旅行を予定しており、結果的に3/24が弥生の社長としての最終出社日になりました。

私の最終出社日の仕事は概ねオフィスの片付け。さすがに15年もやっていると、色々なものが溜まります(とはいえ片付けてみると90%はいらないものなんですけどね)。17時過ぎ、片付けも終わっていないのですが(苦笑)、チーム弥生の皆さんによる送別会を開催していただきました。新型コロナウイルス禍の影響を受けて約3年になりますが、弥生の本社にこれだけ人が集まったのは約3年ぶりになるのではないかと思います。もちろんリモート勤務や全国のチーム弥生もいますから、Zoomでつないでの送別会。

2023032701.jpg

私自身最後は泣くかと思いましたし、おそらくそれが期待されていたようにも思いますが、結果的には明るい送別会にすることができました。札幌や大阪でもそうですが、心のこもったプレゼントもいただき本当に嬉しかったです。ここ数年、Yosettiというオンラインの寄せ書きサービスを利用することが増えましたが、人数上限の300人を超えてしまったとか。私の人生の宝物になります。

2023032702.jpg

最後にご挨拶をする機会がありましたが、もうすでに多くのことを語り尽くしたため、最後に伝えたかったのは、ただ一つだけ。それはチーム弥生の皆への感謝の気持ちです。15年間、皆が支えてくれたからこそ、今の自分が、そして弥生があります。あれ、その場では泣かなかったのですが、今こうして書いていると少し涙ぐんでしまいます。本当に有難う。
posted by 岡本浩一郎 at 17:57 | TrackBack(0) | 弥生

2023年03月20日

圧倒的感謝

先週から会計事務所を中心に、今月末での退任のご挨拶にお伺いしています。いただく反応としては、びっくりしました、驚きました、というのが圧倒的です。確かに15年間やってきて、特にここ5年は、退任を匂わせるような発言を控えてきたというのもありますから、まだまだ続けるのではと思われていても不思議ではありません。

今回本当に有難いと感じているのは、訪問先の皆さんから、弥生にはずっと支えてきてもらった、という感謝を伝えていただけていること。感謝しなければならないのは、もとよりこちら側なのですが、それでも弥生があって良かったと言っていただけることは本当に嬉しく、有難いことです。事業者のお手伝いをという想いを弥生と共有するパートナーとして、一緒にお客さまを支えてきた会計事務所の皆さまには感謝しかありません。弥生PAP会員の数も12,000を超えるところまで増えており、全てのPAP会員をお伺いして直接お礼を申し上げられないのは残念ですが、それでも今後4月から5月にかけて全国の会計事務所をお伺いする予定です。なんでうちには来ないの、というパートナーの皆さま、担当営業にお申し付けいただければ、スケジュールを調整致します。複数拠点での利用など、より高度な案件の導入を支援いただいているビジネスパートナー(YBP)の皆さまにも本当にお世話になりました。インボイス需要でかなりお忙しい時期だと思いますが、4〜5月にお会いできることを楽しみにしております。

感謝したい方はまだまだいらっしゃいます。家電量販店の皆さま、弥生と家電量販店をつないでいただいているソフトバンクさん、家電量販店の売り場を見れば、ああやっぱり弥生がNo.1だよねという売り場作りをお任せしているフィールド・スタッフの皆さま、主要家電量販店の店頭でのお客さまのお手伝いをお願いしているデモ・スタッフの皆さま。クラウドアプリのお客さまは増えつつも、デスクトップアプリにもまだまだ根強いニーズがあります。同時に、スモールビジネス向けの会計ソフト、業務ソフトといえばやっぱり弥生だよね、というブランドは、日頃多くの方が利用される家電量販店において、弥生が明らかなNo.1としてブランドを確立できているからこそです。家電量販店は、地域に密着した私たちの生活に欠かせない生活インフラであるということは、新型コロナウイルス禍の中で再確認されたように思います。

そしてもちろん、お客さまにも感謝です。パートナーの数と比較しても2桁も規模が異なりますので、直接お礼を申し上げることは困難なのですが、お客さまなしには弥生は成り立ちません。弥生のビジネスの原動力であることは言うまでもありませんが、同時に私自身をドライブする原動力でもありました。私が弥生の社長に就任した2008年。その夏に始めて家電量販店の店頭(地元のヨドバシカメラ マルチメディア横浜店)に立ちましたが、一番最初に弥生会計 08 スタンダードをお買い上げいただいたお客さまのことは今でもよく覚えています。起業直後ということで、会計ソフトを買うかどうか迷われていましたが、私が弥生の社長であることをお話しすると、「これも何かのご縁だから」と即決し、お買い上げいただきました。私の指導役としてスタッフが同行していたのですが、彼の手前、実績を上げられて大変に助かりました(笑)。以降、何年にも渡って繁忙期を中心に家電量販店でのイベント等を開催してきましたが、多くのお客さまにご参加いただき、それが実は私自身の励みにもなりました。

起業イベントなど様々な機会でも多くのお客さまとお会いすることができました。今をときめく日本のユニコーン圧倒的No.1の某社(バレバレ?)の創業者には、「弥生しかないでしょ」と言っていただきました。おそらく今は事業の成長と共に弥生は卒業されていると思いますが、その成長を支えることができたことは弥生の誇りです。また、Twitterなどでも様々なお客さまとやり取りすることができました。

本来はお客さまへの感謝の念で締めくくるべきだと思うのですが、このような機会もありませんので、今回だけは我儘を言わせていただくと、何よりも誰よりも感謝したいのは、弥生の社員の皆さんです。皆さんなしには弥生のこの15年間はありませんでした。皆さんと共にチーム弥生の一員として、そして皆さんのリーダーとして一緒に15年間の航海を続けることができたことは、本当に幸せなことでした。私がチーム弥生に加わった時点での社員数は400名ちょっと。カスタマーセンターを中心に契約・派遣社員が多く、正社員はわずか160名ほどでした。それが直近では、社員数は900名強、うち正社員が700名強とチーム弥生は大きく強くなりました。

様々な形で弥生を支えていただいた皆さま、本当に有難うございました。今後とも弥生を宜しくお願い致します。
posted by 岡本浩一郎 at 14:49 | TrackBack(0) | 弥生

2023年03月17日

やり残したこと

道は永遠に平坦にならない。山を越えればまた山。弥生にとっての山道はまだまだ続くわけですが、正直にいってやり残したことも、それこそ山ほどあります。

代表的なところでは、弥生シリーズのさらなる進化。弥生シリーズには、デスクトップアプリ(現行は弥生 23 シリーズ)とクラウドアプリ(弥生オンライン)があります。位置付けとしては、さくさく使え、機能も充実しており、税理士といったプロにもご満足いただけるデスクトップアプリに対し、気軽に使い始めることができ、誰でも簡単に使えるクラウドアプリといった(あくまでも目安ですが)違いがあります。15年前には影も形もなかった弥生オンラインを0から立ち上げ、多くの方にご利用いただけるようになったことは大きな成果だと思っています。特に個人事業主の方を中心に、今や新規ユーザーはクラウドアプリの方がデスクトップアプリを上回るようになっています。

お客さまは多様であり、そのニーズも多様。その多様なニーズにお応えできるよう、デスクトップアプリとクラウドアプリという選択肢を提供する。ただ、実はこれは、これまでの技術の限界の裏返しでもありました。これまでの技術では、さくさく使え、機能も充実しており、税理士といったプロにもご満足いただける、ということと、気軽に使い始めることができ、誰でも簡単に使える、ということを両立させることができませんでした。しかし技術は着実に(というよりは加速度的に)進化しています。技術の進化とともに、将来的には、デスクトップアプリとクラウドアプリを一本化し、誰でもが気軽に使え、さくさくと動き、同時にプロにもご満足いただける機能を提供できる次世代の弥生シリーズを提供していきたいと考えています。

実は、昨年リリースしたリニューアル版のやよいの給与明細 オンラインはその嚆矢となる存在です。お話しした通り、リニューアル版のやよいの給与明細 オンラインは、これまでとは全く異なる新しいクラウドプラットフォームを採用しています。ただ、現状では弥生が提供する価値領域のほんの一部が次世代に進化したに過ぎません。カバーする領域を広げ、何より、これであればプロでも使えるとお墨付きをいただけるようにしなければなりません。これにはまだ一定の時間はかかりますし、結果的にやり残したところということになります。

あるいは、お客さまからは直接的には見えない弥生の土台となるシステムの進化。弥生では基幹システムとして、2007年に導入した販売管理システムを利用しています。一方で、サブスクリプションビジネスに最適化されたZuoraというシステムの導入も進めてきています。つまり現状では二つの基幹システムを併用しているということです。これもZuoraに一本化していくということで、その移行は徐々に進んできています。ただ、これも道半ば(正確にいえば半ばというよりは後半戦ですが)。やはりやり残したところです。

他にも色々とやり残したことはありますが、最大はやはりアルトアです。データとAIで金融のあり方を変える。やればやるほど、これは間違いなく金融のあり方を変えるとの確信は強まっています。そして今年10月からのインボイス制度を契機にしたデジタルインボイスの普及など、価値を生む源泉となるデジタルデータも着実に広がっていきます。金融機関へのサービス提供(Lending as a Service, LaaS)は、オリックスりそな銀行と進んできており、次の案件も秒読み段階(希望的観測)です。ただ、少なくとも現時点においては、ビジネスとして自立し、継続的な成長の目処が立ったかというと、それはまだであると言わざるを得ません。

やっぱりこう書いてくると、卒業していいのだろうかと思ってしまいます。本当にいいのだろうか。迷いがないといえば嘘になります。確かにやり残しはあります。ただ、全くの未着手というのは流石にありません。それぞれに着実に前進し、案件によって、芽吹き始めたところか、蕾が膨らんできているところかという差はあれども、やがては大輪の花が咲くでしょう。もちろん、自らの手で花を咲かせたいという想いもあるのは事実ですが、弥生にしてもアルトアにしてもGoing concernとして続いていくためには、どこかでバトンを渡さなければならない。それがいつなのか。もとより最初から決まった正解はありません。予め決まった正解はない以上、正解を選ぶのではなく、自分たちの行動によって、正解にするということなのだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 12:38 | TrackBack(0) | 弥生

2023年03月13日

15年間

前回お話ししたように、私は3/31をもって、弥生株式会社の代表取締役社長を退くこととしました。私が弥生の社長に就任したのが2008年4月。実に丸15年ということになります。早くバトンを渡さなければと思いつつ、山を登り続けてきたら、あっという間に15年経ってしまったというのが実感です。

私が弥生の社長に就任した2008年4月は、リーマンショックが今まさに起きつつあるという状況でした。弥生自体は堅調と言えば堅調でしたが、それまでの急成長から一転、成長の踊り場に差し掛かっていました。さらに前年の買収によって、多額の負債を背負った状態で、リーマンショックの大波を被ることになりました。今だからお話しできますが、2008年4月に社長に就任してからの最初の最優先課題は、金融機関に引き続き支えていただくことでした。弥生は堅調です、引き続き支えてください、とお願いする金融機関向けの説明会の中で、とある外資系金融機関の方に非常に失礼なことを言われたことを鮮明に覚えています。当時は腹が立ってしょうがなかったのですが、大人ですからぐっと我慢(笑)。ただ、今であればわかるのですが、その方は怖かったのだと思います。それまで自分が信じてきた世界が急速に壊れていく。その怖さが失礼な発言につながったのだと今だからこそ理解できます。幸いにして弥生の業績は褒められたものではないにせよ、大きく崩れることはない、少し時間はかかっても再び成長軌道に乗るだろう、ということを理解いただくことができ、金融機関の皆さんに引き続き支えていただくことができました。

その後明確な成長軌道に乗り始めたのが2010年。しかしその後、2011年3月11日は多くの方にとってもそうであるように、私にとっても一生忘れられない一日です。これまで体験したことのない揺れ。当時弥生の本社は神田にありましたが、天井から鉄筋が飛び出してギシギシと揺れ続けていたことを覚えています。当日は帰宅できず。夕方ぐらいまではまあしょうがないか、とのんびり構えていましたが、その後東北から入ってきた衝撃的な映像を目にして、これはとんでもないことになった、日本はどうなるんだろう、弥生はどうなるんだろう、と不安しかない状態で夜を明かしました。その後明らかになってきた原発危機の中で、家族を海外に逃がさないのか、と周りからも言われ、どうすべきか悩みました。

そういった意味で、2010年代の半ばから後半は比較的安定した事業環境でした。第2次安倍政権が2012年末に誕生し、政治が安定したということも大きいように思います。弥生の株主も2014年末にオリックスに変わり、大きな負債もなくなりました。クラウドアプリを続々とリリースすることもできました。

一方で、弥生にとっての良きライバルであるfreeeさんやMoneyForwardさんが登場したのもこの時期です。やっぱり楽はさせてもらえないということですね(笑)。先日freeeさんが10周年を迎えられたということで、その記念誌に協力をしたのですが、そこで私がfreeeさんの登場を予言していたことをお話ししました。これは紛れもない事実なのですが、とある取材で「今、もはや敵はいない。でもまた、やがてやってくると思っている。今はまだ名前も知らない会社が」とお話ししているのです。その後のfreeeさんやMoneyForwardさんの活躍は、弥生にとって大きな脅威ではありますが、一方で、デジタル化によって業務を効率化し、事業者が「お客さまに価値を提供する」という本当にやりたいことにもっと時間を割けるように、という想いでは実は同じ方向を向いていると考えています。

そしてこれはまだ記憶に新しいところですが、新型コロナウイルス禍が急速に広がった2020年、働き方も大きく変わらざるを得ませんでした。それでもお客さまを支え続けられるのか。ちょうど確定申告期でしたが、お客さまを支えるためにはカスタマーセンターを閉じるわけにはいかない。「あなたはお客さまを取るのか、従業員を取るのか」、と社内からも厳しい声がありました。新型コロナウイルス禍の中でもお客さまの事業が止まった訳ではない。むしろ、何をどうすればいいのか、お客さまも悩む中で、弥生へのお問合せはむしろ増えたということはお話ししたか通りです。

当初は変わらざるを得なかった働き方ですが、むしろ働き方をアップデートする機会になりました。今でも特に東京本社はリモート勤務が中心になっていますし、カスタマーセンターでの受電についても、必要があれば即座にリモートでの受電ができるようになっています。

思い返しても山また山。ただ山を登り続ける中で、より多くのお客さまにより多くの価値を提供できるようになりました。私が弥生の社長に就任した当時、ソフトウェア保守サービスのように継続的なサービスを提供しているお客さまの数は15万ちょっとでした。これに対し、直近では約90万のお客さまに対し、継続的に価値を提供しています。これには提供するソフトウェアがデスクトップアプリだけではなく、クラウドアプリにも広がったことも大きく影響しています。また、弥生が価値を提供する際のパートナーとなるパートナー会計事務所の数も3,500弱から直近では12,000を超えました

それでも、やはり道は永遠に平坦にならない。山を越えればまた山。弥生が成長すれば、それにともなって次に目指すべき山もさらに高くなるということです。
posted by 岡本浩一郎 at 19:17 | TrackBack(0) | 弥生

2023年03月09日

卒業

本日弥生からプレスリリースを行いましたが、私はこの度、3/31をもって、弥生株式会社の代表取締役 社長執行役員(およびアルトア株式会社の代表取締役社長)を退くこととしました。

私が弥生の社長に就任したのが2008年の4月。この3月で丸15年務めたということになります。私の弥生との関りの始まりは、2007年11月、コンサルタントとしてでした(その前は一ユーザーとして弥生に関わってきたので、それを含めれば23年近い付き合いということになります、笑)。コンサルタントとして弥生に関わって感じたのは、いい会社だけれども迷える会社でもある、ということ。当時の弥生は、それまでの急成長から一転、成長の踊り場に差し掛かっていました。そんなタイミングで社長として招聘されたのは、私にとっても人生の大きな転換点となりました。

招聘された際に言われたのは3年はやってほしいということ。私自身としても、引き受ける以上は途中で放り投げることはしない、だから3年は当たり前だと思っていました。一方で、まあでも5年ぐらいかな、とも思っていました。会社はGoing concern(永続が前提であるもの)であるのに対し、人はGoing concernではありません。ですから一人に極度に依存することは、場合によって害をなしかねない。適切なタイミングでバトンを渡していくことが自分の役割であると考えていました。実際に、このブログでも、社長の賞味期限ですとか、社長の引き際について色々とお話しをしてきました。それらはまさに自分事の悩みだったからです。

しかし言うは易く行うは難し。本ブログをまめにフォローいただいている方は、丸10年を前に一旦引き際発言撤回し、以降その種のお話しをしていないのをお気付きだったかもしれません。

経営者というのも奥深い商売で、一つの山を登るとまた次の山が見えてきます。ここでいう山は登る対象でもありますし、同時に、課題の「山」でもあります(苦笑)。実際問題、私自身これまでに二つほど大きな山を登り切ったと自負していますが、ホッとするのも束の間で、また次の山が見えてきてしまいます。バトンは渡さなければならない、でも、今ここでという訳にはいかない。この山を登り切って、道が平坦になったら渡そう。

15年間やってきてわかったのは、道は永遠に平坦にならないということです(笑)。山を越えればまた山。Going concernとして、より多くのお客さまにより多くの価値を届けようとすれば、そうならざるを得ない。

そう考えると、今このタイミングで、というのは理想解ではないかもしれませんが、一つの選択肢ではあると考えています。この10月にはいよいよインボイス制度がスタートします。インボイス制度という山に向けてまさに登山中。一方で、やることさえやれば、結果が約束されているタイミングでもあります。もちろんこのやることさえやれば、というのもまさに言うは易く行うは難しで、簡単だ、ですとか、楽だというつもりはありません。むしろ険しい道のりでしょう。それでもやることさえやれば、結果が約束されているタイミングというのはそう多くはありません。

今回の社長交代で、弥生の経営陣は40代半ばが中心と大きく若返ります。もちろん年齢だけが全てではありませんが、これから先、さらに変化が激しくなる世界においても、Going concernとして、さらなる山の頂を目指していくものと期待しています。
posted by 岡本浩一郎 at 15:55 | TrackBack(0) | 弥生

2023年03月02日

弥生のかんたん開業届

前々回は事業所得と雑所得の扱いについて熱く(!?)語ってみました。本ブログでも度々お話ししてきたトピックとなりますが、節税という観点では、事業所得は雑所得(業務)に対し、明らかに有利です。事業所得では、青色申告が認められており、結果的に最大65万円の青色申告特別控除が得られること、また、仮に事業所得で損失が発生した場合には、その損失を例えば給与所得から差し引くことができる(損益通算)など、明確なメリットが存在します。逆に雑所得は、青色申告特別控除的なものは存在しませんし、雑所得が損失であっても、他の所得と相殺することはできません。

しかし、メリットがあるから、何でもかんでも事業所得にできるかというと、そうではありません。事業所得であるかどうかは、社会通念上、事業を営んでいると認められるかどうかという実態で判断されます。実態で判断されるということで、その基準は良くも悪くも曖昧でした。その基準がある程度明確になったのが昨年のこと。パブコメを経て、帳簿が作成され保存されているかどうかが事業所得として認められるかの判断ポイントになるということが明らかになりました。結果的に、副業であっても、あるいは収入が300万円以下であっても、帳簿を作成し、保存していれば、事業所得と認められ得るということになりました。

この考え方は令和4年分(今回!)から適用されるため、今回の申告において、本当に事業所得で良いのか(雑所得(業務)とすべきではないか)、あるいは逆に、本当に雑所得(業務)で良いのか(事業所得として認められうるのではないか)という点をしっかり考える必要があるとお話ししました。あくまでも個人的意見ですが、自分なりにこれは事業であると自信をもって説明できるのであれば、今回の確定申告を機に、ちゃんと帳簿を付け、事業所得として申告するというのもありなのではないかと考えています。

一方で、開業届を出していなかった〜というケースも多いのかと思います。これに関しては、実は開業届を出さなくても特に罰則はなく、開業届を出していなくても、事業所得として最初に申告をするとそれが開業届の代わりになるというのが実態とお話ししました。開業届を出したから事業所得と認められる訳でもありませんし、逆に開業届を出していないから事業所得として認められないという訳でもありません。ですから開業届を出していないから、と諦める必要はありません。

2023030201.jpg

でも、やっぱり開業届を出してすっきりしたいところですよね。ということで、話が回りくどくなりましたが、実はこの度、開業届を簡単に作成できる「弥生のかんたん開業届」というサービスを始めました。従前から提供している「起業・開業ナビ」の新サービスということになります。これまでも、法人の設立に必要な書類を簡単に作成できる「弥生のかんたん会社設立」を提供してきましたが、法人での起業・開業だけでなく、個人事業主としての起業・開業もお手伝いします。

弥生のかんたん開業届の特徴は、単純に開業届だけを作成するわけではないこと。開業届自体は正直それほど複雑な書類でもありませんしね。開業届はもちろんですが、所得税の青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書などを同時に作成することができます。特に重要なのが所得税の青色申告承認申請書。事業所得のメリットの大部分は青色申告だからこそ得られるものです。今回の申告は白色申告であっても、このタイミングで青色申告承認申請書を提出しておけば、来年の申告(今年分の収入)からは晴れて青色申告とすることができます。
posted by 岡本浩一郎 at 17:30 | TrackBack(0) | 弥生

2023年02月28日

確定申告e-Taxオンライン

確定申告期間に入って、二週間弱が経ちました。2月も今日で終わり、明日からは3月ということで、確定申告期間も後半戦に入ります。少しずつでも準備を進めていれば、もうゴールが見えてきているのではないでしょうか。まだ着手していないというのんびりやさんは、さすがに着手するタイミングです。どうしても気が乗らない場合には、終わらないと帰れない(笑)という経費精算カフェのような場所を活用するのも手かもしれませんね。

着実に準備を進めてきた人であれば、申告書は完成し、あとは実際に申告するばかりという方も増えてきているのではないかと思います。申告する方法としては、紙で出力して提出するか、電子申告(e-Tax)で提出するか。おススメはやはりe-Taxです。

本ブログでこれまでも度々お話ししていることですが、2021(令和2)年の申告から、紙での提出か、e-Taxかで税額に差が出るようになりました。詳細はこの記事をご参照いただきたいのですが、紙での提出ではなく、e-Taxでの提出とした場合に、10万円多く控除が得られるようになります。ここでの控除はその額がそのまま税額から引かれるわけではないので、ピンとこないかもしれませんが、仮に所得税率を10%とすると(注: 所得税率は所得額によって変動します)、所得税は1万円下がることになります。手取りが1万円増えるわけですから、これは大きいですよね。また、これも本ブログでも度々お話ししていますが、青色申告特別控除は所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料を下げる効果もありますから、これはもうやらないと損と断言できるかと思います。

そうだよね、じゃあe-Taxといきたいところですが、e-Taxって面倒くさいんじゃないの、大変じゃないのと思われる方も多いかもしれません。確かにかつてのe-Taxはそれなりに敷居の高い物でした。しかし実は、弥生シリーズを使ってのe-Taxは、ここ数年で劇的に簡単になっています。

2019年までは弥生シリーズからe-Taxで申告する際には、国税庁が提供するe-Taxソフトをご利用いただいていました。しかし2020年に、弥生シリーズ向けに「確定申告e-Taxモジュール」を新たに自社開発し、提供開始しました。自信作でしたが、実際に、弥生でe-Taxがめちゃめちゃ簡単になったという評価を数多くいただきました。

ただ実はこの「確定申告e-Taxモジュール」はMacに対応できておらず、この時点ではMacをご利用の方には引き続き国税庁のe-Taxソフトをご利用いただく必要がありました。当然そのままではいけないということで、「確定申告e-Taxモジュール」のMac対応を進めていたのですが、技術面での検証を進める中で、もっとお客さまにとって利便性の高い方式が可能になったため、これまた新しい機能として「確定申告e-Taxオンライン」を開発し、提供を開始しました。これが昨年のことです。結果的に昨年の申告ではWindowsのお客さまは「確定申告e-Taxモジュール」、Macのお客さまは「確定申告e-Taxオンライン」をご利用いただくことになりました。

しかしこの二つを両方試していただくとわかるのですが、どちらが簡単かというと、後発ということもあって、「確定申告e-Taxオンライン」です。ということで、遠回りになってしまいましたが、今年の申告からは、WindowsでもMacでも「確定申告e-Taxオンライン」をご利用いただけるよう対応を行いました。

「確定申告e-Taxオンライン」の特徴は、マイナンバーカード(ICカード)を読み取るためのICカードリーダーが不要であるということ。ICカードリーダーの代わりに、皆さんがお使いのスマホを利用します。スマホに弥生が提供する「弥生 電子署名」アプリをインストールし、そのアプリからマイナンバーカードの情報を読み込むことによって、電子申告のデータに必要な電子署名を付与することが可能になっています。

2023022801.png

マイナポイントのために、ここ一年でマイナンバーカードを取得された方も多いと思います(もしまだという方は是非今日中に申請だけでいいので済ませましょう)。これを機にマイナンバーカードとお持ちのスマホと弥生シリーズでe-Taxにしてみませんか。「確定申告e-Taxオンライン」を使っていただければ、こんなに簡単なんだ、と良い意味で驚いていただけるはずです。
posted by 岡本浩一郎 at 17:34 | TrackBack(0) | 弥生

2023年02月16日

確定申告 2023 スタート

いよいよ本日から、2023年の確定申告期間が始まりました。申告の対象は2022年(令和4年)分の所得ということになります。今年の申告期限は3/15(水)まで(正確には所得税の申告期限が3/15までとなり、消費税については3/31までとなります)。

この3年間は新型コロナウイルス禍の影響を受け、申告期限が調整されてきました。コロナ1年目となる2020年はまさに感染が拡大しつつある中、申告期間中である2月末に無条件/一律での期限延長が発表されました。2年目となる2021年は、申告期間前となる2月頭にやはり無条件/一律での期限延長が発表されました

そして3年目となる2022年。新型コロナウイルス禍の影響は続いており、ほぼ無条件で期限延長が認められることになりました。ただし、新型コロナウイルス禍の社会的活動への影響は小さくなってきたことを踏まえ、一律での期限延長ではなく、申告書を提出する際に、申告書の余白等に新型コロナウイルスの影響により延長を申請する旨を記載をするという方式になりました。ただし新型コロナウイルスの影響と言いつつ、その具体的な内容までは問われませんでしたので、事実上の無条件。つまり3年目は無条件/個別となりました。

4年目となる今年はどうか。結論から言えば、今年も新型コロナウイルス感染症の影響があれば、申告期限の延長が認められます。今年も個別での延長の申請が必要となりますが、今年はさらに具体的な影響の記載が求められるため、条件付/個別ということになるかと思います。逆に言えば、昨年と同様な申告書上の文言の記載では認められませんので注意が必要です。

具体的には、所轄税務署長に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」(pdf)を申請し、その承認を受けることにより、その理由がやんだ日から2ヶ月以内の範囲で個別指定による期限延長が認められることになります。この申請書上で、具体的な被災状況を記載する必要がありますが、記載例として「令和5年3月 14 日に新型コロナウイルス感染症に感染し療養していたため、令和5年3月 15 日の期限までに申告・納付を行うことができなかった。」とあり、それなりに具体的な理由が求められることがわかります。今回の延長は広く認められるというよりは、個別かつ限定的ということになるのではないかと思います。

ちなみに、災害による申告、納付等の期限延長申請書というのはもともと存在する汎用的な申請書であり、新型コロナウイルス感染症が特別なものではなく、誰にでも発生しうる災害の一種と位置付けられたということです。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを2類から季節性インフルエンザなどと同じ5類にするという話が現在進行形で進められていますが、同じ発想なのかと思います。

前回お話ししたように今週月曜日は大阪、その後火曜日に札幌に移動し、確定申告期直前のカスタマーセンターの陣中見舞いを行ってきました。札幌からは昨晩戻ってきましたが、とても印象的だったのは、新千歳空港の賑わいが完全に復活していたこと。前回の札幌出張は昨年の11月末でしたが、その時点では空港でもまだ営業休止中のお店がポツポツ残っていました。今回は、どのお店も営業中ですし、なおかつ人も多く、(時間帯もあると思いますが)人気店には行列ができていました。いよいよ社会的・経済的活動も本格再開ですね。

さて、ということで、今回の確定申告期間は基本的には原則通りの一ヶ月間。ギリギリになって慌てたり、涙目にならないように計画的に進めましょう。やよいの白色申告 オンラインやよいの青色申告 オンラインやよいの青色申告 23、いずれも1月後半に今回の確定申告への対応を済ませ、準備万端です。カスタマーセンターのスタッフとともに皆さまの確定申告をしっかり支えていきます。
posted by 岡本浩一郎 at 11:33 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月30日

スマート証憑管理とPeppol

これまでお話ししてきたスマート証憑管理は、請求書や納品書、領収書など、事業者が受領する、そして発行する証憑を、画像データだけでなく、構造化されたデジタルデータとして一元管理できる仕組みです。

スマート証憑管理の本当の価値は、証憑を管理して終わるのではなく、証憑から仕訳を自動生成し、記帳業務を圧倒的に効率化することにあります。これからは、手での仕訳入力から、スマート証憑管理での証憑の確認・自動仕訳に。しかし、紙やPDFで受領した証憑では、AI-OCRの精度が100%でない以上、人の目による確認は必要となります。これでは、記帳業務を効率化することはできても、「圧倒的」な効率化と言えるかどうかは微妙なところです。

記帳業務を圧倒的に効率化するためにはどうすればいいのか。その解になるのが、「ボーン・デジタル」、最初からデジタルという発想です。発生源で生まれたデジタルデータは、事業者内だけでなく、事業者間も含めた業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。

最初からデジタルであれば、人の目による確認は不要となり、圧倒的な効率化が実現されます。インボイス制度において、これを実現するのが、Peppolです。インボイス制度で肝になるのは、何が適格請求書かを正確に判断すること。登録番号や取引年月日、税率など、必要とされる記載事項が満たされているかどうかを確認する必要があります。ただ、厄介なのは、例えば請求書上に登録番号の記載がなくても、例えば予め取引基本契約上で登録番号をやり取りしていれば、適格請求書として認められることもあるということです。また、日本では月締請求書が一般的であり、納品書に加えて、月締請求書がやり取りされますが、この際納品書上で税額の計算を行っており、月締請求書ではそれを列挙しているだけであれば、原則として納品書が適格請求書となります。一方で、納品書上では税額の計算は行っておらず、月締請求書で対象額を足し上げ、そこで初めて税額の計算を行っている場合(こちらが本来あるべき月締請求書です)は、原則として月締請求書が適格請求書になります。要は、ぱっと見では、どれが適格請求書となるか、判断がつかないことも多いということです。

2023013001.PNG

これに対し、デジタルインボイスであるPeppolにおいては、適格請求書と区分記載請求書は明確に区別され、混同することはありません。Peppolのメッセージでは、Invoice type codeという証憑の種別を示す情報がありますが、適格請求書のInvoice type codeは”380”と決まっています。一方で、今後区分記載請求書もPeppolでやり取りできるように仕様の検討が進められていますが、区分記載請求書のInvoice type codeは”380”以外となります。ですから、Invoice type codeさえ(機械が)見れば、その証憑が適格請求書かどうかは一瞬で、確実に判別できるようになっています。

いや、でも、よくわかっていない送信者が、適格請求書でないのにInvoice type codeに”380”を埋めた場合は? 実は、Peppolのメッセージ送信時には”Rules”に基づいたチェックがなされ、エラーがない状態でなければ送信できないようになっています。

例えば、aligned-ibr-jp-04というruleでは"An Invoice shall have the Seller tax identifier (ibt-031)."とされています。つまり、登録番号がない場合は、そもそも送信ができないということです。また、aligned-ibrp-045と046というruleでは、"Each tax breakdown (ibg-23) MUST have a tax category taxable amount (ibt-116)."、"Each tax breakdown (ibg-23) MUST have a tax category tax amount (ibt-117)."とされています。適格請求書で求められる記載事項の通り、税率ごとの対象額と税額がなければ、やはり送信することはできないのです。

また、aligned-ibrp-051-jpというruleでは、"Tax category tax amount (ibt-117) = tax category taxable amount (ibt-116) x (tax category rate (ibt-119) / 100), rounded to integer. The rounded result amount shall be between the floor and the ceiling."とされており、税率ごとに端数処理も考慮した上で、対象額×税率が税額となることが求められています。

Rulesの複雑化を避けるという観点から、ruleは必要最小限に絞り込まれており、(意識的にやれば)Peppolで不正な「適格請求書」を作成し、送信することが不可能という訳ではありません。それでも通常のケースでは、(機械が)適格請求書であることを自動で判別し、後続業務を自動処理できるようになっています。

アナログがある限り、人の目による確認は避けられず、効率化にも限界があります。それを乗り越え、機械による自動処理を実現し、圧倒的な効率化を実現するのが、「ボーン・デジタル」という考え方であり、デジタル・インボイスの仕組みであるPeppolです。

2023013002.PNG

昨年10月には、デジタル庁からいよいよPeppol BIS Standard Invoice JP PINT Version 1.0が公開され、日本におけるデジタルインボイス、Peppolはいよいよ実用化のステージに入りました。スマート証憑管理では、この春のPeppol対応、そしてそれによる圧倒的な効率化を実現していきます。
posted by 岡本浩一郎 at 23:10 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月27日

スマート証憑管理(その4)

これまでお話ししてきたスマート証憑管理は、請求書や納品書、領収書など、事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みです。一元管理といっても、画像データだけでなく、構造化されたデジタルデータを一元的に管理できることがポイントです。画像データは、画面に表示し目で確認することはできますが、そのままでは後続業務には活用できません。これに対し、スマート証憑管理では、構造化されたデジタルデータを活用し、後続業務をデジタルの力で効率化することができます。

具体的には、紙やPDFで受領した証憑から、AI-OCRという機能によって、証憑上の金額はもちろん、証憑番号、発行日、取引日、取引先名、登録番号、消費税率などの情報をデジタルデータとして抽出します。これらは、重要であり管理が必要な情報(いわばメタデータ)と位置付けられます。次に、このメタデータに基づいて、仕訳を自動生成します。この際、仕訳に必要な勘定科目については、弥生がこれまでにも提供してきているスマート取引取込のエンジンを活用し推論します。自動生成された仕訳は、弥生会計の仕訳日記帳などの画面で確認することが可能になります。また、自動生成された仕訳から証憑の画像を遡って確認することもできます。

2023012701.PNG

スマート証憑管理の本当の狙い。それは、証憑を管理して終わるのではなく、証憑から仕訳を自動生成し、記帳業務を圧倒的に効率化することにあります。これまでの会計ソフトのメインの画面は仕訳入力画面。仕訳をいかにサクサクと入力できるかが会計ソフトの評価を左右してきました。しかし、インボイス制度を機に、会計ソフトのメインとなる画面はこのスマート証憑管理になると考えていきます。手での仕訳入力から、スマート証憑管理での証憑の確認・自動仕訳に。

一方で、紙やPDFで受領した証憑では自ずと限界があります。なぜならば、AI-OCRによって、日付や金額等のメタデータを抽出する訳ですが、この精度は100%ではないからです。AI-OCRはAIを活用することによって、文字認識の精度を向上させているとお話ししましたが、それでも100%にはなりません。これまでお話ししたように、税率ごとの対価の額と税率ごとの消費税額の整合性などの検算も行うことによって、AI-OCRの読み取りエラーを検知し、可能な範囲で補正する仕組みも実装しています。それでも、100%ではない以上、人の目による確認は必要になります。

人の目による確認が必要になる以上、記帳業務を効率化することは可能ですが、それが「圧倒的」な効率化と言えるかどうかは微妙なところです。それでは、記帳業務を「圧倒的に」効率化するためにはどうすればいいのか。

2023012702.PNG

その解になるのが、「ボーン・デジタル」、最初からデジタルという発想です。「発生源で生まれたデジタルデータは、業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。事業者内、さらに事業者間の業務プロセスにおいて、紙などのアナログを経ず、一貫してデジタルとして取り扱う」。これは社会的システム・デジタル化研究会が提言してきていることです。(さらに続く)
posted by 岡本浩一郎 at 16:23 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月25日

スマート証憑管理(その3)

これまでにもお話ししてきたように、弥生は、インボイス制度と改正電子帳簿保存法に対応し、業務のデジタル化を促進する新サービス「スマート証憑管理」を1/5に正式リリースしました。

スマート証憑管理は、請求書や納品書、領収書など、事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みです。ただ、この際に、画像データではなく、構造化されたデジタルデータとして一元管理できることがポイントです。画像データは、画面に表示し目で確認することはできますが、そのままでは後続業務には活用できません。これに対し、スマート証憑管理では、構造化されたデジタルデータを活用し、後続業務をデジタルの力で効率化することができます。

このためには、紙やPDFで証憑を受領した際に、そこから重要であり管理が必要な情報(いわばメタデータ)を抽出する必要があります。スマート証憑管理ではAI-OCRによって、証憑上の金額はもちろん、証憑番号、発行日、取引日、取引先名、登録番号、消費税率など様々な情報をデジタルデータとして抽出することができます。

では、これらメタデータを何に活用するのか。わかりやすい部分では、検索が可能になります。画像データのままでは、「弥生商会」からの請求書を検索するといったことはできませんが、メタデータがあればそれをもとに検索が可能になります。ただ、それでは十分なメリットとは言えませんし、業務効率化というのもちょっと無理があります。確かに検索できるに越したことはありませんし、特に税務調査の際に税務署の方には重宝されるでしょう(実際問題として電子帳簿保存法でこういった検索性が求められているのはそのためです)。ただ、日頃会計業務を行っている側としては、そこまで嬉しい話ではありません。

一方で、これらメタデータを活用することで、仕訳を入力するという作業がなくなったらどうでしょう。それであれば今必要な作業がなくなる訳ですから、メリットを実感できますし、明らかな業務効率化が実現します。スマート証憑管理が実現するのは、仕訳入力を不要とすることによる業務効率化です。

具体的には、メタデータとして管理される日付や金額といった情報から、仕訳を自動生成します。でもちょっと待ってください。仕訳と言えば勘定科目。勘定科目はどのように特定するのでしょうか。実はこれは、弥生がこれまでにも提供してきているスマート取引取込の推論エンジンを活用します。スマート取引取込では銀行のインターネットバンキングの明細を取込み、これをもとに仕訳を自動生成します。この際には、明細上の摘要情報をもとに勘定科目を推論しますが、この仕組みをスマート証憑管理でも活用します。

この仕組みは2014年から提供していますが、2021年にはそれまでのベイズ推定による推論からニューラルネットワークによる新しい推論エンジンに大幅リニューアルしました(詳細はこちらをどうぞ)。前回、スマート証憑管理で採用したOCRエンジンはAI-OCRであり、AI(人工知能)を活用することによって、文字認識の精度を向上させたOCRエンジン、とお話ししましたが、画像からメタデータを抽出する際にも、そしてそのメタデータから仕訳を生成する際にも、AIが活用されているのです(当然それぞれ別個のAIエンジンになります)。

2023012501.PNG

自動生成された仕訳は、弥生会計の仕訳日記帳などの画面で確認することが可能です。またこの際、この仕訳のもととなっている取引の内容を確認したいという場合には、仕訳日記帳上の証憑ビューアーのボタンをクリックしていただければ、その証憑の画像イメージをその場で確認することが可能です。画像からメタデータを経由して仕訳が自動生成される訳ですが、同時に、自動生成された仕訳から遡って画像を確認することもできる訳です。仕訳からもとになった取引の証憑を確認できる機能は2021年に会計事務所向けにリリースした記帳代行支援サービスで提供を開始したものですが、とても好評です。

スマート証憑管理は、その名の通り、証憑を一元管理できる仕組み。ですが、その本当の狙いは、証憑から仕訳を自動生成し、記帳業務を圧倒的に効率化することにあります。
posted by 岡本浩一郎 at 18:10 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月23日

税制改正大綱セミナー

弥生では1週間後の1/30(月)に、会計事務所向けパートナープログラム「弥生PAP」の会員向けに、令和5年度税制改正大綱セミナーを開催します。この種のセミナーをこのタイミングで開催するのは弥生として初の試みです。

2023012301.png

そもそも税制改正大綱は、法令そのものではありません。税制に関する法令改正の方針を示すもの。現時点では令和5年度税制改正の大綱として昨年末に閣議決定されていますが、これをもとに財務省(国税)/総務省(地方税)が法案として国会に提出し、最終的には次期通常国会で審議・可決されてはじめて法令として成立することになります。そして法令として成立したものが、周知され、施行されることになります。

しかし今回の税制改正大綱には、この10月から施行される適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)の円滑な実施に向けた所要の措置が含まれています。今回の措置の内容も理解した上で、10月にはインボイス制度にしっかりと対応しなければならない。正直時間がありません。このため、一般事業者はともかく、事業者をアドバイスする立場の会計事務所には、税制改正大綱の段階からいち早く周知したいという財務省からの相談があり、今回のセミナーを開催することになりました。

今回のセミナーの特徴は、インボイス制度と電子帳簿保存法の両制度の財務省担当官より直接解説いただくこと。よくある質問などを踏まえた最新の情報を特別に解説いただきます。日程的には月末の30日と忙しいタイミングではありますが、Zoomでのライブ配信ですので、オフィスからの参加が可能です。既に700名近くのPAP会員にお申込みをいただいていますが、Zoomですから、まだまだキャパシティには余裕があります。

今後インボイス制度と電子帳簿保存法に確実に対応するためにも、是非本セミナーにご参加いただければと思います。プログラムのご案内とお申込みはこちらからどうぞ。
posted by 岡本浩一郎 at 22:06 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月19日

スマート証憑管理(その2)

前回は、弥生が1/5にリリースした、インボイス制度と改正電子帳簿保存法に対応し、業務のデジタル化を促進する新サービス「スマート証憑管理」についてお話ししました。

前回お話ししたように、スマート証憑管理は、請求書や納品書、領収書など、事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みです。ただ、この際に、画像データではなく、構造化されたデジタルデータとして一元管理できることがポイントです。

画像データは、その証憑を画面に表示し目で確認することはできますが、そのままでは後続業務には活用できません。例えば、受け取った請求書から、買掛の仕訳を記帳することになりますが、画像データだけであれば、請求書の画像を人間が画面上で目で確認して、会計処理のために改めて手で仕訳を入力するという処理になります。それでは業務の効率化にはならないことは自明かと思います。

それに対し、後続業務をデジタルの力で効率化することこそがスマート証憑管理の目指すところです。このためには、紙やPDFで証憑を受領した際に、そこから重要であり管理が必要な情報(いわばメタデータ)を抽出する必要があります。それを実現するのが、スマート証憑管理に組み込まれているAI-OCRです。OCRとは、光学文字認識のこと。弥生では2016年からレシートをOCRで処理し、その情報から仕訳を生成するスキャンデータ取込という機能を提供してきました。しかし、この際に利用したOCRは今となっては旧世代のOCRエンジン。扱える証憑はレシートに限られていましたし、また、読み取り精度もそれなりです。これに対し、AI-OCRはAI(人工知能)を活用することによって、文字認識の精度を向上させたOCRエンジンです。読み取り精度は旧世代に対し大きく向上していますし、扱える証憑もレシートだけでなく、請求書や納品書にも対応します。

2023011901.PNG

実際、スマート証憑管理ではAI-OCRによって、金額だけでなく、証憑番号、発行日、取引日、取引先名、登録番号、消費税率など様々な情報を読み取るようになっています。お分かりの方も多いかと思いますが、対象となる証憑が適格請求書の要件を満たすかどうかの判定に必要な情報をデジタルデータとして抽出できるようになっています。

AI-OCRによって抽出されたデジタルデータは、例えば登録番号が実在するか、有効かという検証にも活用されますし、また、税率ごとの対価の額と税率ごとの消費税額の整合性などの検算も行われるようになっています。つまりAI-OCRとその後の検証/検算ロジックによって、そのままでは活用できない画像データをデジタルデータに変換、それを用いて後続業務の効率化を実現しています。
posted by 岡本浩一郎 at 14:37 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月16日

スマート証憑管理

弥生は1/5から、インボイス制度と改正電子帳簿保存法に対応し、業務のデジタル化を促進する新サービス「スマート証憑管理(しょうひょうかんり)」を提供開始しました。このスマート証憑管理は、昨年からベータ版として提供していた「証憑管理サービス」を機能強化し、正式版として提供を開始したものです。

2023011601.PNG

まずはこのスマート証憑管理の位置付けですが、事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みとなります。事業者は仕入先から、納品書だったり、請求書だったり、あるいは領収書などの証憑を受領します。現在では紙やPDFで受領することがほとんどかと思いますが、今後はデジタルインボイスのようにデジタルデータとして受領することも増えていくでしょう。また事業者は得意先に対し、納品書だったり、請求書だったり、あるいは領収書を発行します。これも現在は紙やPDFが中心ですが、今後はデジタルデータとして発行することも増えていくでしょう。

スマート証憑管理は、これら事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みです。ただ、この際に、画像データではなく、構造化されたデジタルデータとして一元管理できることがポイントです。

約1年前に2022年1月から施行される改正電子帳簿保存法の課題についてお話ししたことがあります。PDFであったり、画面のスクリーンショットを保存しても、これらは構造化されたデータではない(画像のようなもの)ので、このデータを使って後続業務の自動化・効率化を実現することはできません。所詮紙の電子化に過ぎず、事業者にとってメリットがないとお話ししました。

スマート証憑管理は、画像データも保存はしますが、それだけではなく、構造化されたデジタルデータとして一元管理することができます。

2023011602.PNG

こちらがスマート証憑管理の画面イメージですが、画面右側に請求書の画像データが表示されていることがわかります。ただ同時に、画面中央部で証憑番号や取引日、取引先、登録番号なども表示されています。これは画像データである請求書に含まれる情報のうち、特に重要であり管理が必要な情報(いわばメタデータ)を構造化されたデジタルデータとして管理しているのです。

なぜこれらのメタデータを管理する必要があるのでしょうか。それはそれによって後続の業務が自動化することが可能になるからです。画像データのままであれば、それを人間が画面上で目で確認して、会計処理のために改めて手で仕訳を入力するという処理になります。それは明らかに効率が悪いですよね。それに対し、メタデータが管理されていれば、その情報をもとに、システムで自動で仕訳を生成することが可能になります。次回は、この点についてもう少しお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:28 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月06日

PAP12,000!

前回の新年のご挨拶でふれましたが、弥生の会計事務所向けパートナープログラム「弥生PAP(Professional Advisor Program)」の会員数が2022年11月末に12,019事務所となり、12,000事務所を突破しました。2019年12月末に10,000事務所を超え、2021年5月末には11,000事務所を超えましたから、引き続き約1年半で1,000事務所という安定したペースで会員数が増加しています。ある瞬間で言えばスピードが速まったり遅くなったりということはありますが、10年という時間軸で見れば、コンスタントに会員数が増加してきた、と書いたのが2021年6月のことですが、それが現在に至るまで続いているわけです。

2023010601.jpg

これまでにもお話ししていることですが、弥生PAP会員というのは弥生にとってのお客さまではなく弥生のパートナーの会員制度です。お客さまはあくまでも事業者の皆さん。お客さまの数は多いに越したことはありませんが、パートナーについては、数が増えることは嬉しいことではありますが、多ければ良いという訳でもありません。あくまでもパートナーとして、同じ想いを持ち、同じ方向を向き、行動できることこそが重要だと考えています。このことは弥生PAP会員向けに開催している弥生PAPカンファレンスでも毎回お話ししていることです(多分皆さん聞き飽きていると思います、笑)。だからこそ弥生PAPカンファレンスのように、弥生が何を考え、何を実現しようとしているかをお伝えする場が大事だと考えている訳です。

今年の10月にはインボイス制度がいよいよ始まりますが、これは弥生とパートナーである弥生PAP会員にとって大きな試金石になります。法令改正として渋々、最小限対応し、業務効率が悪化することを許容するのか、あるいは、法令改正として対応すると同時に、業務をデジタル化し、むしろ業務の効率化を実現する好機とするか。弥生はもちろん後者を目指していますし、弥生のパートナーである弥生PAP会員の皆さまもそうであって欲しいと思っています。ただそのためには、弥生が提供するソフトウェアを活用して、いかに業務効率化を実現できるのかを、まずは弥生から弥生PAP会員の皆さまにしっかりとお伝えしなければなりません。

昨日1/5に、弥生のインボイス制度対応(+改正電子帳簿保存法対応)の肝となるスマート証憑管理サービスをリリースすることができました。本ブログでも、このスマート証憑管理についてお話ししていきたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:27 | TrackBack(0) | 弥生

2023年01月04日

新年のご挨拶 2023

明けましておめでとうございます。

新春を迎え、皆さまにおかれましては健やかに新年を迎えられたことと、謹んでお慶び申し上げます。

2022年は不安定な世界情勢が続く中、日本においては急激な円安の進行など、社会全体が不安に包まれた一年であったかと思います。一方、足元を見た時、事業者にとっての大きなトピックの一つは2023年10月の開始まで1年を切ったインボイス制度が挙げられます。弥生は、デジタル庁が主導し、官民が連携して進めている、わが国のデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)の策定と普及に対して、当社が代表幹事法人を務めるデジタルインボイス推進協議会(略称 EIPA)の会員(203社・8名。2022年12月1日現在)各社とともに、民間の立場から支援と協力を行っています。

前述の取り組みに加え、弥生個社としてもインボイス制度対応を進めています。弥生は、インボイス制度と改正電帳法を、単なる法令改正ではなく、デジタル化による業務効率化の好機と捉えており、2023年1月5日に正式リリースする「スマート証憑管理」を起点にスモールビジネスの業務デジタル化を進め、圧倒的な業務効率化の実現を支援します。

弥生の2022年は近年稀にみる挑戦と変革の一年であったように思います。3月には株主が、これまでのオリックス株式会社から、コールバーグ・クラビス・ロバーツ・アンド・カンパニー・エルピー(以下、「KKR」)に変更となりました。KKRの支援を受けることで、今後の更なる成長を見据えた大胆な挑戦もできるようになり、経営者としても新たなチャレンジを楽しんでいます。また、弥生にとっての事業年度が変わる10月には新たな社外取締役として、元日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長の平野拓也氏を招聘しました

さまざまな変革がありながらも、かねてより掲げていた「事業コンシェルジュ」というビジョンであり、スモールビジネス事業者の皆さまのあらゆるフェーズを支える存在でありたいという想いは変わりません。これらは、2022年6月の「事業承継ナビ」、同年8月「弥生のあんしんM&A」という新サービスという形で結実させることができました。その他にも、クラウド確定申告ソフトにおける「Mac対応e-Tax機能」のリリースや「弥生の設立お任せサービス」の開始、そして「やよいの給与明細 オンライン」の大幅リニューアル版リリースなど、従来から提供してきたサービスにおいてもよりお客さまの利便性を向上させる大小さまざまな機能追加、リニューアルを積み重ねながら歩んできた1年でした。

これらの成果は弥生単独で成し遂げたものではなく、弥生を信頼し、ご利用いただいているお客さまと大切なパートナーの皆さまのご愛顧、ご支援の賜物と受け止め心より感謝しております。会計事務所向けパートナープログラムである弥生PAP会員は2022年11月に12,000事務所を突破し、国内最多の規模となっています。パートナーの皆さまと協力することで起業から事業承継まで、スモールビジネスの困りごとを全面的に支援する体制が整ったと自負しております。

2022年7月にテレビCMでお披露目することとなった「上を向いて歩くあなたと。」という新たなブランドメッセージには、業界のリーディングカンパニーとして、スモールビジネスの業務デジタル化を支援し、本業に集中できる環境をつくりたいという弥生の想いを込めています。

弥生は2023年も倦まず撓まず、スモールビジネスに寄り添い、時に国を含めたあらゆるステークホルダーを巻き込みながら挑戦を続けてまいります。

今年の干支(十二支) は「癸卯」です。「癸」は十干の最後の要素であり、雨や露など恵みの水の意を含むことから、生命が芽吹き成長していく状態を想起させます。また、「卯」はうさぎのように跳ねあがるということで株式相場でも縁起の良い年と言われています。2022年に蒔いた数々の種を大きく芽吹かせ、事業コンシェルジュとしてお客さまの跳躍を支える大樹のような存在であれるように、一層の挑戦と進化を続けてまいります。

末筆となりましたが、皆さまにとって本年が素晴らしい年となりますようお祈り申し上げるとともに、引き続き、弥生株式会社をご支援賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

弥生株式会社
代表取締役 社長執行役員
岡本 浩一郎
posted by 岡本浩一郎 at 10:19 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月28日

良いお年を 2022

弥生は今日で仕事納めです。一年が速く過ぎ去ると感じるのは毎年のことではありますが、実感としては時間の進みがますます速くなっており、まさにあっという間に過ぎ去った一年となりました。程度の差はあれ、今年も新型コロナウイルス禍の影響を受け続けたことが時間感覚を狂わせているのかもしれません(と思いたいだけで、単純に年をとったということなのかもしれません、苦笑)。

ただ、影響は受けつつも、やりたいことをできた一年でした。去年も同様なことを書きましたが、去年は果たせなかった海外渡航がついに実現しました。それもプライベートで3回、ビジネスで2回というなかなかのペースです。

プライベートのうち2回(LA, Hawai'i)は、もともと計画していたもの。残りの1回(Arkansas)はご縁があって急遽渡航することになったものです。いずれも帰国前のPCR検査もあり、気兼ねなく羽を伸ばすという訳にはいきませんでしたが、それでも久し振りに海外の空気を吸うことができたことは、待ち望んでいたことでした。真面目な面で言えば、急激な円安で日本の国力が失われていることを実感する機会にもなりました。

プライベートでは、今年の目標であったトライアスロンでのオリンピック・ディスタンスの完走を6月に果たし、その後10月にも再び完走することができました。また少し子どもっぽいので、あまり広くはお話ししていない趣味でも、目標を達成して今年を終えることができそうです。

ビジネスでの2回の海外渡航(Las Vegas, Singapore)は年の終わりに集中しましたが、これは帰国時の検疫の要件が緩和されたからこそ。どちらも非常に刺激になりましたし、内向きに閉じがちになっていた視野を再び広げる機会にもなりました。

海外だけではなく、国内の出張も支障なくできるようになりました。空港も一転混み合うようになってきましたね(特に福岡が大変なことになっているようです)。年2回、全国7会場で開催する弥生PAPカンファレンス(開催レポート#1, #2)の全参加を果たすこともできました。もっともあくまでも必要最小限といったところで、以前のように年間40回といったペースにはとても及びません。とはいえ、Zoomによって、離れたところでもより簡単にコミュニケーションをとれるようになっただけに、対面でお話しすることの価値も上がったように思います。

本ブログのネタとして書きやすいという大人の事情があり、ビジネスというと出張の話が多くなってしまうのですが、もちろん出張ばかりしているわけではありません。お客さまの事業を支援するという観点で、起業・開業ナビの機能強化を図ったり、新たに事業承継のお手伝いを始めたり。もちろん業務を支援するという観点でも、インボイス対応の核となる証憑管理サービスの提供を開始し、また、新たなクラウドプラットフォームを採用してやよいの給与明細 オンラインの完全リニューアルを果たしました。ここには到底書ききれませんが、この一年間でリリースした新サービスや新機能のボリュームは過去最高レベルです。

こうやって書いてみると、あっという間の一年と言いつつも、それなりに濃厚な一年だったということを実感できます。ただ、十分かというと全く十分とは言えません。この春には新しい株主を迎え、できることが圧倒的に広がっている中で、その機会を十分に活かしきれていないと感じています。もっともっと圧倒的なスピードで変化し、進化しなければなりません。

今年は、一向に終わりが見えないウクライナでの戦争を目の当たりにし、平和が当たり前のものではないことを実感しました。当たり前と思っていたことが当たり前でなくなる時代の中で、自分に何ができるのか、何をすべきなのか、そういったことも改めて考えなければならないと思っています。

では皆さま、良いお年をお迎えください。
posted by 岡本浩一郎 at 11:39 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月23日

Building a Roadmap to SaaS

前回お話ししたように、Las Vegasで開催されたAWSのre:Inventに参加したことは、テクノロジーの今とこれからについて改めて考える非常に良い機会になりました。ただ、実はre:Inventに参加する目的はこれだけではありませんでした。

本当の目的は、Executive Summitの1セッションにスピーカーとして参加すること。最初は、いわゆるプレゼンだと思って気軽に引き受けたのですが、実際には"Building a Roadmap to SaaS"というテーマのパネルディスカッションに、パネリストとして参加することになりました。私は英語に不自由しませんし、プレゼンであれば事前の準備ができるので、全く問題はありません。そんな私でも、パネルディスカッションは即興性が求められるだけに、英語ではなかなか気が重い(苦笑)のですが、ポジティブに考えれば、プレゼンと違い本格的な準備は不要です。実際問題として、出発直前までバタバタしており、準備の時間は全くありませんでした。

かなり準備不足で臨んだ本番ですが、最近は英語でコミュニケーションを取る機会が減っているにしては、まずまずの出来だったかと思います。まあ、とりあえずパネルディスカッションで大事なのは笑いを取るところなので(笑)、それはしっかりと(複数回!)笑わせることができました。笑いの部分は脇に置いていても、弥生のクラウドジャーニーの第三幕(第一幕は2012年から、第二幕は2014年から、そして第三幕は2022年から)に至るまでの過程、何を考えてきたのか、をしっかりと伝えることができたのかなと思います。

2022122301.jpg 笑いをとったど(1回目)
2022122302.jpg 笑いをとったど(2回目)
2022122303.jpg 最後に全員で記念撮影

他のパネリストはGitLabのCMO&CSO、PreciselyのCTO、ExasolのCTOという錚々たるメンバー。他のパネリストの皆さんの発言も非常に参考になりましたし(やはり課題意識は共通)、とても楽しかったというのが感想です。

実はもう一つの目的があり、それは今回re:Inventに参加した社員6名をおもてなしすること。色々とハプニングもあり、事前の想定通りにはいきませんでしたが、到着後のお昼にはIn-N-Out Burgerを食べ、翌日夜にはRuth's Chris Steak HouseでFilet/Sirloin/Ribeyeという三種類のステーキを食べ比べ(お勘定は相当な金額でした、苦笑)、その後は皆でBlue Man Groupを鑑賞し、まずまず楽しんでいただけたのではないかと思います。

ちなみに、現在進行形で進んでいる弥生 Advent Calendar 2022でもre:Invent訪問記が掲載されています(噂では3回シリーズものになるとか)。また、1/26に予定されているもくテクはAWS re:Invent 2022 参加報告会として開催するそうなので、ご関心がある方はこちらも是非。

あ、本当の目的としてLas Vegasだけにカジノを想定していた方にはごめんなさい。私は人生が最大のギャンブルだと思っているので、ちまちました賭け事には興味がないのです(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 19:41 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月14日

幸先詣

11月末から12月頭にかけてLas Vegas(あ、これまではどこには明言していませんでしたが)、そして先週はSingaporeと二週間連続での海外出張となりました。Las Vegasは気温1ケタ台の冬(イメージと違うかもしれませんが、砂漠なので冬は寒いのです)に対して、Singaporeは30度近くの常夏とかなり変化に富んだ二週間となりました。

そしてふと気が付いてみると師走のしかも中旬。最終週はゆっくりと来し方行く末を考えたいとなると、実質今週と来週で終わりです。年齢と共に一年が早くなり、新型コロナウイルス禍の中ではもはや時間がワープする感覚ですが、それにしても今年一年は早かったと思います。

ということで、今週/来週は少し落ち着いて仕事を片付け、良い形で新年を迎えられるようにしたいと思います(と言いつつ今週金曜日は年内最終の出張があったりしますが)。一方で、新年を良い形で迎えられるよう、今年のうちに先取りできることもある、ということで、実は今日、幸先詣で神田明神に行ってきました。

2022121401.jpg
写真撮影の時のみマスクを外しています。

幸先詣(さいさきもうで)というと耳馴染みはないと思いますが、新型コロナウイルス禍の中で、ソーシャルディスタンス確保のために、年越し前、つまり年内に早めに参拝をすることを社寺が推奨するものだそうです。2020年に福岡県内の神社がはじめて提唱し、福岡県神社庁が勧奨したということです。

実は、新型コロナウイルス禍真っただ中の2020年12月、先手必勝ということで、年内に参拝を済ませました。新年の神田明神の混み具合は、超過密。でも、例年、弥生のためでもありますが、それ以上に、弥生のお客さまのため、日本の中小事業者の皆さんの繁栄をお祈りしていますから、お参りしないわけにもいかない。ということで、まだ人の少ない年内に参拝しようということになりました。結果的に大正解だったのは本ブログでもお話しした通りです。これはいいということで、2021年も年内に参拝。そして今年も、となった訳です。

年内に参拝というのはまだまだ一般的でないかと思いますが、実はもう幸先詣という名前までついていることを初めて知りました。日本人は初詣は神社で、結婚式はキリスト教、亡くなったら仏教と宗教に対する拘りがないと言われます(あくまでも一般論です)。拘りがないというと否定的な言い方になってしまいますが、こういった形で時代に合った形でお参りの形も変わっていく、その融通が利くところは日本の良さでもあるのではないかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:22 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月02日

弥生PAPカンファレンス 2022秋 開催レポート

10/20から開催してきた会計事務所向けのカンファレンス、弥生PAPカンファレンス 2022 秋ですが、11/24のオンライン開催(3回目)で無事終了しました。全国7会場、オンライン開催3回を1ヶ月ちょいでやり遂げたということになります。正直大変ではありましたが、その大変さに見合うだけの成果は得られたと考えています。

6月に開催した前回のカンファレンス(これも全国7会場、オンライン3回)では、参加者(メディアや関係者等を除く)が2,000名を越えたとお話ししました。今回は、3,000名越えとまではいきませんでしたが、かなり3,000名に近いところにまでいきました。会場での参加も100名以上増えていますが、やはりインパクトが大きいのがオンラインでの参加です。今回もオンラインでは3回開催しましたが、うち1回目が1,000名弱、2回目が1,000名超となりました。オンライン開催は一般的に初回が一番参加者が多く、以降は参加者が減っていくのですが、今回は2回目が最多の参加者という結果になりました。

3,000名近くの方にご参加いただけた背景には、今回のメインテーマであるインボイス制度について、制度開始まで一年を切り、会計事務所の関心がより高まっており、なおかつ、その関心はより具体的な点にまで広がってきたことがあると感じています。今回のカンファレンスで弥生が目指したのは、インボイス制度において、インボイスの受領から記帳まで、どのようなオペレーションとなるのか、具体的な感触を持っていただくこと。参加した方にいただいたアンケート結果を見ても、この狙いは概ね達成できたのではないかと考えています。

もっとも、良くも悪くも今回のカンファレンスに参加いただけたのは、3,000名弱。弥生PAPの会員数は12,000弱ですから、1/4に過ぎません。カンファレンスという仕組み上、時間の制約はありますし、参加したかったけど都合がつかなかったという方もいらっしゃるのではないかと思います。また、事務所内で1名は参加したけれども、本当は事務所内の皆でしっかり理解したいということもあるかと思います。

2022120201.png

そのため、弥生ではカンファレンスの開催レポートを作成し、公開しています。今回の弥生PAPカンファレンス 2022秋の開催レポートについては、11/30に無事公開することができました(終了から一週間での公開ですから、結構頑張りました)。開催レポートは概要だけではなく、オンライン開催時のビデオそのものを見れるようになっています。しかも再生速度を1.0倍から2.0倍まで変えることができますし、チャプターも設定されているので、必要な部分だけを簡単に見ることもできます。

また、一連の開催でいただいたご質問とその回答もまとめて公開しています。特にオンライン開催の際には多くのご質問をいただいており、結果的に100問以上のQ&Aとなっています。

心配なのは、開催レポートでここまで丁寧にやると、これはもうPAPカンファレンスそのものには参加しなくてもいいのでは、とならないかということ(苦笑)。実際問題、再生速度の変更など、事後の方が便利な部分もありますから。ただ、会場開催の空気感的なものまでは伝えることはできませんし、また、開催前後や休憩中などに私やスタッフに直接いただいた質問などはカバーできていません。また、オンライン開催にご参加いただければその場で直接ご質問いただけますが、開催レポートでは既になされた質問への回答を確認することはできても、新たに質問をすることはできません。

カンファレンスを企画・開催する立場としては、やはり直接的な参加者を増やしたい。でも一番大事なのは、弥生としてのメッセージを多くの会計事務所パートナーにしっかり伝えるということ。ですから、開催レポートでも伝わるのであれば、それはそれでいいのだと思います。しっかり伝えるために、会場での参加、オンラインでの参加、開催レポートでの確認という選択肢を提供することが大事なのだと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:44 | TrackBack(0) | 弥生