2010年08月12日
SVSMブラッシュアップミーティング
以前も書いたことですが、この種のお金を出して起業支援というプログラムは、往々にして、税金のばらまきに終わり、後には何も残らないということになりがちです。そうさせないための一つのステップが今回の「ブラッシュアップミーティング」。これは最終選考に先立ち、応募者とメンターで事業計画をブラッシュアップし、その実現可能性を高めようというものです。
今回、第一期のエントリーは7/12に締め切られ、117件の応募があったということです。この応募に対し、7/24に一次選考会が行われ、42件が残りました。今回この42件を対象に、事業計画のブラッシュアップを実施し、次のステップとして最終選考会が9/26に開催され、そこで30件が支援対象として決定することになります。
今回私は、2件の事業計画のブラッシュアップのお手伝いをさせて頂いたのですが、既に117件から42件に絞り込まれていることもあり、レベルが高く、どう付加価値を付けるのかが難しいぐらいでした。ただ、社会的インパクトを生み出す「社会起業」ということで、どちらかと言えば、事業としての採算性、さらにその先にある継続性の観点がやや弱いとは感じましたので、その点を中心にいくつかアドバイスさせて頂きました。お手伝いさせて頂いた以上、この2件には確実に最終選考を勝ち残って頂きたいと思いますが、他の案件のお手伝いをした弥生スタッフによれば、全般的にレベルは高いということで、どうなるか、最後までわかりません。
一方で、本プロジェクトの本番は実は最終選考が終わってから。事業が本当に立ち上がり、社会的なインパクトを生み出せるようになるまで、共に歩いて行くのが本プロジェクト。その経過は本ブログでも随時取り上げていきたいと思います。ちなみに、第二期は今年11月頃の募集を予定しているということなので、第一期に応募し損ねたという方もまだチャンスはあります。
2010年07月14日
起業って高リスク?
でも、起業は本当にリスクが高いのでしょうか? 新しいことを始めるわけですから、低くはないですね。ただ、必ずしも高いとは言い切れないと考えています。私がビジネススクールで学んだことのうち、今でも大事にしているのが「皆、起業といえば、リスクを取ることだと思っている。でも、それは正しくない。起業はリスクを取ることではなく、リスクを管理することだ」(Entrepreneurship is not about taking risks. It is about managing risks)ということ。何か新しいことをやるとして、100のリスクをとって実現するのと、10のリスクをとって実現するのと、どちらが良いか。答えは明らかですよね。同じことをやるのに、いかにリスクを最小化するか、それが起業の秘訣です。
特に大企業で勤めていた方が起業する際には、プライドとの戦いになります。それなりの立地に、それなりに見栄えのするオフィスを構えたい。スタッフもそれなりに揃えたい。でも、それらは全てリスク。本当に取るべきリスクなのかを考える必要があります。プライドを捨ててでも、自宅で自分ひとりで起業する。そして事業がある程度軌道に乗ってきた段階で、オフィスを本格的に構える。そして本当に必要になったら、人を正社員として迎える。それが、リスクを「取る」のではなく、リスクを「管理」する、ということです。
起業はリスクが高いのかを考える上でもう一つ重要なのは、では起業しなければリスクは低いのか? 30〜40年前までの高度成長期であれば、日本は急速に成長し、それにつれて多くの会社も黙っていても成長することができました。会社が成長すれば、社内でポジションも自動的に生まれてくる。だから新入社員で入った人は黙っていても定年まで何らかのポジションが用意されました。
残念ながら、今は違います。私も現役の経営者として、弥生という会社を成長させ、スタッフが自分の将来を託せる会社であり続けられるように日々努力しています。しかし、日本の経済全体が伸びない中では、下手をすればゼロサムゲーム。お陰様で弥生は多くのお客様に支持して頂いており、明るい将来を描くことができていますが、全ての会社がそこまで恵まれているわけではありません。
果たして自分の会社に自分の一生(少なくとも60〜65歳まで)を託すことができるのか。
私が新卒で最初に入社した会社は野村総合研究所です。入社はバブル採用の最後のタイミングでしたから、内定を取るのに苦労はしない時代でしたし、会社で何を達成したいという具体的な想いもなく、「まあ、それなりに頑張れば、社長にはなれなくても、役員ぐらいにはなれるだろう」と、今から考えればあまりに浅薄な考えで入社しました。その私の甘い考えを打ち砕いたのが、山一證券の自主廃業でした。1997年の11月ですから、留学から日本に帰ってきた直後のことです。山一證券と言えば、泣く子も黙る四大証券の一角。誰でもが知っている一流企業でした。そして、実際に自主廃業するその直前まで、業界内の誰もが最終的には何とか救済されるだろうと思っていました。
それがある日、あっけなく自主廃業。守ってくれるはずの会社はあっという間に消滅してしまいました。会社はもちろん、従業員を守りたいと思っています。それが会社の存在意義の大きな一つですから。でも、どんなに大きな会社でも、一流と言われる会社でも、なくなってしまうこともある。確かに、会社は守ってくれるかもしれない。でも守りきれないこともある。そう悟った時、自分の人生を会社に託すのか、あるいは自分で自分の人生を切り開くのか。変な言い方ですが、私は山一證券のお陰で、自分の人生は自分で決めようと考えました。
もちろん、既存の会社が全てダメではありません(野村総研は今でもいい会社です、育てて頂いたことを感謝しております)。また、起業が誰にでも向いているとも言えないでしょう。ただ、起業しなければリスクはない、あるいは低いか、というとそうは言い切れないと思うのです。
結局起業するも、起業しないも、変化する社会の中で生きていく上では、リスクを完全に排除することはできません。そうなると、本当に考えるべき問題は、起業はリスクが高いかどうか、ではなく、リスクを取るか取らないか、でもなく、リスクをどう管理するか、なのではないでしょうか。
2010年07月13日
起業とリスク
Q: 全体的に、私はリスクを取ることを厭わない (In general, I am willing to take risks)
案の定という結果ですね。実はこの日本の39%は調査対象国(36ヶ国)の中でも最低です。逆に米国はダントツのトップ。やはり日本はリスク回避志向が強く、従って起業志向も低いということになります。JP 39% (強く同意+同意)
CN 65%
US 82%
CY 73%
SK 50%
しかし、ここで一つの疑問が。本当に起業ってリスクが高いんでしょうか。これは今回の起業意向調査には含まれていないのですが、次回は、起業とリスクについて、私の考えをお話ししてみたいと思います。
2010年07月08日
起業と参議院選挙
最近本ブログで取り上げている欧州委員会によるグローバルな起業意向調査では、冒頭にこういった記述があります。
The development of entrepreneurship has important benefits, both economically and socially. Entrepreneurship is not only a driving force for job creation, competitiveness and growth; it also contributes to personal fulfilment and the achievement of social objectives. ... That is why the EU considers that it has a duty to encourage entrepreneurial initiatives and unlock the growth potential of its businesses and citizens.
起業を促進することは、経済的な観点でも社会的な観点でも重要な効用がある。起業は、単に雇用の創出や、(国や社会の)競争力と成長の原動力であるだけでなく、個人としての達成感や社会的な目的の達成に貢献するものである。(中略) だからこそ、欧州連合は、起業を促進し、(欧州の)ビジネスや市民の成長力を解き放つ責務があると考えている。
さて、日本はどうでしょうか。日本では、民主党が昨年の衆院選の際のマニフェストに「中小企業の技術開発を促進する制度の導入など総合的な起業支援策を講じることによって、「100 万社起業」を目指す。」と明記していました。これは結構画期的なことなのではないかと思うのですが、今週の日曜日に迫った参院選の民主党マニフェストでは、残念ながら、起業に関する直接的な表現はなくなっているようです。他の党のマニフェスト/公約等もざっと見てみたのですが、起業にフォーカスしてというのを見つけることはできませんでした。その代わり、というわけではないのですが、中小企業支援に関しては、各党それぞれ主張があるようです。
今度の参院選は、日本の将来を決める重要な選挙。どの党に投票するかは、Yahoo!やGoogleなどの特集サイトで研究して頂くとして、何よりも重要なのは、投票すること。私ももちろん、行きます、選挙。どの党に投票するか、まだ結構悩んでますけど。
2010年07月07日
起業と教育
今回、総合的な質問である「起業か、サラリーマンか」という質問に対して、日本(JP)の起業志向は39%。逆に最も高かったのが、中国(CN)で71%(!!)。起業といえばアメリカの米国(US)が55%。EU加盟27ヶ国の中で最も高かったのがキプロス(CY)の66%、逆に最も低かったのがスロバキア(SK)の26%。この5ヶ国で起業と教育の関連性を検証してみます。
Q: 起業か、サラリーマンか (The choice of status: self-employed or employee)
JP 起業(self-employed) 39%
CN 起業71%
US 起業55%
CY 起業66%
SK 起業26%
Q: My school education helped me to develop a sense of initiative - a sort of entrepreneurial attitude (私の学校教育は私の自主性 - ある種の起業家精神 - を養う手助けをしてくれた)
JP 47% (強く同意+同意、以下同様)
CN 68%
US 73%
CY 64%
SK 39%
やはり、起業志向の高いCN/US/CYでは学校教育の影響が強く、逆に起業志向の低いJP/SKでは学校教育の影響が相対的に低いですね。
教育に関する質問はいくつかありますが、あと二つご紹介。
Q: My school education gave me skills and know-how that enable me to run a business (私の学校教育は、事業を運営するためのスキルとノウハウを教えてくれた)
やはり同様の傾向です。ここでは米国の教育制度の充実が数字にも表れているようです。逆に中国はまだ足りないと見られているのかと思います。JP 32% (強く同意+同意、以下同様)
CN 53%
US 67%
CY 55%
SK 30%
Q: My school education made me interested to become an entrepreneur (私の学校教育のお陰で起業家であることに興味を持つことができた)
USでも51%ですから、学校教育だけで起業家への関心が生まれるわけではないのでしょうが、やはりこの割合が高い程起業志向が高い傾向は一緒です。JP 22% (強く同意+同意、以下同様)
CN 57%
US 51%
CY 35%
SK 24%
自らを振り返っても、やはり学校で起業に関する意識を持ったことはないような気がします。何せ大学卒業段階では、私も「まあ社長にはならなくても、役員ぐらいにはなれるかな」という漠然とした意識で大企業に就職したクチですから。私の場合は、仕事を通じて海外のベンチャーと接する機会があったこと、そして決定的だったのが、アメリカのビジネススクールで起業熱に侵されたこと、という幸運もありました。
日本のためにも、このままではいけない、ということで、弥生は法政大学などで起業家向け教育のお手伝いを始めていますが、まだまだ足りません。起業に興味を持つきっかけを、そして起業したい人が必要なスキルとノウハウを学べる場が必要だと痛感しています。
2010年07月06日
起業したい人 日本は39%どまり
ようやく時間ができたので、ちょっと調べてみました。この調査は欧州委員会によるもので、調査自体は昨年末に行われ、欧州委員会によって6/4に発表されたようです。なぜ欧州委員会が、という疑問がすぐに浮かびますが、この調査はそもそもアメリカに比べ起業が活発でないという欧州の問題意識を背景に行われているようです。要は、アメリカと欧州の比較によって、欧州の起業が活発でない要因を明らかにし、手を打ちましょうということです。これは、調査レポート(pdf)の最初の行にも、"One of the main challenges facing EU Member States is the need to boost entrepreneurship."(EU加盟国の主要な課題の一つは、起業を促進すること)と明確に書かれています。
この調査自体は2000年から行われていたのですが、今回の調査から、アジアの3ヶ国 - 日本、韓国、中国が対象に加えられました。で、欧州と日本の比較は、と言うと、そこまでの差ではありません。EU27ヶ国の平均で、サラリーマンより起業という割合が45%、対して日本は39%です。一方で、中国の結果は71%でした。この結果から冒頭のような報道タイトルになったわけですが、もともとの目的である欧州とその他の国の比較という観点からすると、極端な差はないという方が正解のような気がします(まあ両方とも低いということではありますが)。
今回の調査では、日本にとって本当に正確な数値になったのかやや疑問に思える点もあります。一つは"Self-employed"という表現。直訳すれば自営業ですが、この調査の趣旨は個人事業に限定されるものではなく、起業といった方が正しいと思います。「自営業を選びますか? サラリーマンを選びますか?」という質問だったのか、「起業したいですか? サラリーマンが良いですか?」という質問だったのかによって結果は微妙に変わってきそうです(残念ながら、自営業というのは日本語では、個人事業や商店主というイメージが強いかと)。また調査の期間が昨年の12/14から1/6という微妙な期間というのも気がかりです(ちなみに、他国は基本的に11/12〜12/15)。
上記のように若干の懸念はありますが、このレポート(pdf)、201ページという大作だけのこともあり、非常に興味深いです。次回から、何回かにわけて、個人的な発見を皆さんと共有させて頂きたいと思っています。
2010年07月05日
仕切り直し
これを受けて、日本証券業協会では、「改正規則の施行日を7 月20 日と予定しておりましたがこれを延期することとし、本案の取扱いも含め、適切な未公開株詐欺の未然防止に向けた対応についてあらためて議論することといたしました。」ということで、一旦仕切り直しという扱いになったようです。
ネット上のムーブメントはネット上だけで終息してしまうことも多いのが現実ですが、今回は多くの方の熱い想いに支えられ、ひとまず悪い方向で結論が出ることを防げたのは、非常に大きな一歩だと思います。特に、磯崎哲也事務所の磯崎哲也さん、そしてインフォテリアの平野洋一郎さんの力は大きかった、と感謝しています。とはいえ、まだ仕切り直しであり、最終的な結論が出ているわけではないので、油断は禁物ですね。今回の件が、単なる表現の問題なのか、それともベンチャーの実態が見えていないが故の問題だったのかは注視していく必要があります。後者だとすると、まだ一悶着はあるでしょうから。
「起業」「ベンチャー」という言葉のイメージは人により様々です(これまで、色々とありましたしね...)。ただやはり、「起業」「ベンチャー」が尊敬され、応援される国にならない限り、日本の未来は大変厳しいと考えています。今後も一個人、そして弥生として起業/ベンチャーの応援を続けていきますが、多くの同志もいらっしゃることがわかってちょっと嬉しくなった一件でした。
2010年07月01日
『有価証券の引受け等に関する規則』等の一部改正に対する意見
『有価証券の引受け等に関する規則』等の一部改正に対する意見
@ 岡本 浩一郎
A xxxx@yayoi-kk.co.jp, 03-xxxx-xxxx
B 弥生株式会社
C 「有価証券の引受け等に関する規則」第3条の2
D 本改正に反対します。
E
本改正は、あくまで貴協会の会員に対する規則であり、いわゆる自主規制の改正という位置付けではありますが、日本において上場(株式公開)するためには、必ず貴協会の会員による引受けを得る必要があることから、実質的に、上場前に個人投資家から出資を受けた未公開企業の、日本における上場を禁止する効果があるものと理解しております。これは、日本経済が低迷を続ける中で、その経済活性化のためには、起業を奨励し、いわゆるベンチャー企業を支援しようという日本国としての国家戦略に反しかねないと考えております。
もちろん、未公開株詐欺事件の社会的影響を軽視するものではありませんが、当該事件を防ぐために、本来推奨すべき起業家への投資の道を事実上閉じることはあまりに乱暴な規制であると考えます。本改正がそのまま成立すれば、まさに悪貨が良貨を駆逐しかねない危機であると考えます。ベンチャー企業にとっては、起業家自身やその家族だけでなく、友人やその他個人投資家(いわゆるエンジェル投資家)も欠かすことのできない事業資金の源です。この観点で言えば、個人投資家による未公開企業への投資は、推奨すべきものでありこそすれ、禁止すべきではありません。
すなわち、上場前の個人投資家から出資を原則として禁止し、例外を認めるのではなく、原則は認め、問題となりうるケースを明示的に禁止すべきだと考えております。あくまでも例えばにはなりますが、「引受会員は、上場発行者以外の発行者が新規公開『予定日から遡って6ヶ月以内』に」といった表現とすることによって、原則は認められるが、公開前6ヶ月以内に関してのみ禁止とすることが可能だと思慮致します。また、このような表記は、「未公開会社が上場『直前』に不適切な自己募集を行うことがないことを制度的に担保する」という未公開株式の投資勧誘による被害防止対応連絡協議会による「未公開株式の投資勧誘による被害防止に向けた具体的な方策について」報告書にまさしく合致するものであると思慮致します。
また、仮に本改正がそのまま成立しても、改正の趣旨である未公開株詐欺事件の防止には実効性が極めて低いことも申し添えさせて頂きます。改めて申し上げる必要もないと思いますが、未公開株詐欺事件の関係者の目的は上場ではありません。すなわち、もとより上場を目指していない事件関係者にとっては、上場禁止が何ら影響を与えることはありません。本改正を広く一般に周知することで、そもそも上場を目指している企業が上場前に出資を募ることはありえないという認識を醸成するということを意図されているのであると拝察致しますが、それであれば、本改正に頼らずとも、こういった詐欺事件に注意すべきということを周知し、詐欺もありうるという認識を醸成することで十分に代替が可能です。
なお、上場前に個人投資家から出資を受けた未公開企業の、日本における上場を禁止する効果があるという懸念は、「有価証券の引受け等に関する規則」に関する細則の一部改正、具体的には、第2条4「その他本協会が第1号から第3号に準ずると認めたとき」によって排除されるという見方もあるかと理解致しますが、本条項は極めて曖昧であり、解釈の一意性が確保されません。貴協会の判断によって日本全国多数の未公開会社の運命が左右されるというのは、貴協会にとっても重すぎる責務ではないかと思慮致します。
2010年06月30日
ソーシャルベンチャー・スタートアップマーケット第一期募集中
このプログラムは、次代を担う起業家型リーダーの育成を手掛けているETIC.が、内閣府・地域社会雇用創造事業交付金事業の採択を受けた「ソーシャルビジネスエコシステム創出プロジェクト」の一環として立ち上げたものです。と言うと何やら複雑ですが、要は、起業家を支援するためのプロジェクト。本プログラムでは、事業立上げのために最大500万円の支援金を受け取ることができ、なおかつ、先輩起業家や専門家によるアドバイスなどを受けることができます。詳細はETIC.のウェブサイトをご参照下さい。
ソーシャルビジネスということで、対象となるのは慈善事業のようなものだけという印象もあるかもしれませんが、そんなことはありません。事業と言う手法を通じて社会に良い影響を与えようとするのが、ソーシャルビジネスです。一方で、かの松下幸之助翁が言われたように、「企業は、本業を通じて社会に貢献する」ものです。つまり、どんな企業であれ、本質的にはソーシャルビジネスであるべきものです。もちろん、個人的なお金儲けだけを考えているのではダメだと思いますが、お客様を喜ばせることもある意味立派な社会貢献。どんな事業を考えているにせよ、是非本プログラムにチャレンジして頂きたいと思います。本プログラムに向けて、「自分は何を成し遂げたいのか」「自分のやりたい事業は社会にどんなインパクトをもたらすのか」をじっくり考えるのも非常に良い機会だと思います。
一点注意が必要なのは、本プログラムは、応募段階でまだ法人化していない方が対象となります。これは、そもそもが「雇用の創造」を目的とした内閣府の事業だからという大人の事情もあるようですが... ただ、ETIC.では、ほぼ同時期に法人も含めて支援対象となる社会起業塾イニシアティブも募集中(7/12締切)ですので、法人の場合にはこちらに応募頂ければと思います。
あえて辛辣に言えば、この種のプログラムは往々にして、税金のばらまき、そして後には何も残らないということになりがちです。しかし、本プログラムはそうあってはならないと思いますし、サポーター制度など、そうならないための仕掛けが用意されています。私個人もそして会社としての弥生も本プログラムのサポーターとして、社会を変えようという情熱を持った方のお手伝いをさせて頂きたいと考えています。先週の水曜日もプレイベントがあり、参加してきたのですが、実に熱かったです。本プログラムを通じて、多くの方にお会いできる、そして一緒に社会を変えていけることを楽しみにしています。
2010年06月29日
そもそも何のために改正するのか - 「有価証券の引受け等に関する規則」
さて、今回の改正(案)のきっかけになったのは、未公開株詐欺事件というのは前回も書きました。これに対して、東京証券取引所や金融庁、警察庁などがメンバーとなって未公開株式の投資勧誘による被害防止対応連絡協議会が設立され、この協議会がこの1月に「未公開株式の投資勧誘による被害防止に向けた具体的な方策について」という報告書を出しています。この報告書が今回の改正(案)につながったものと思われますが、改めて見ると、報告書で言われていることと、今回の改正(案)のギャップが顕著です。
報告書では、啓蒙活動や、相談窓口の開設などを検討しており、さらに、自主規制規則との関連という観点から、「上場を直前に控えた会社が募集を行うことは反社会的勢力等の入り込む可能性を拡大させるため、上場直前に一般の消費者向けに広く募集が行われることは基本的にはあり得ない。こうしたことを周知することが未公開株勧誘被害の未然防止には有効であり、未公開会社が上場直前に不適切な自己募集を行うことがないことを制度的に担保するために、自主規制規則における対応を検討する必要がある」と記載されています(報告書4.の(3))。
これを受けて、5. 具体的施策として、「B その他 • 本協会において、無登録業者や発行会社による不適切な投資勧誘を排除するため、株式の自己募集や未公開会社の社債にかかる協会規則を検討する。【同2 月以降】」となっています。
そして、本協会、すなわち、日本証券業協会が策定した改正(案)が今回のこちら。注意して頂きたいのは、報告書4.の(3)では、「上場直前に不適切な自己募集を行うことがないことを制度的に担保」として「直前」と明示的に書いてあるにもかかわらず、本改正(案)では、期限の限定がされていないということ。「新規公開前に」とありますが、これでは起業直後から上場までの全てを含むことになってしまいます。これが例えば、「新規公開予定の6ヶ月以内に」ということだったら、全く違ったと思うのですが。
ネット上でどなたかが書かれていましたが、そもそも詐欺を目的としているケースでは、上場を目指しているわけではもとよりないので、本規則改正によって影響を受けることはない。一方で将来的に上場を夢見て、頑張っている起業家には大きな影響を与えます。既に起業し、2年後の上場を目指している、でも過去に友人に株式を増資を引き受けてもらった、といったようなケースでは、(額面通り適用すれば)上場の道そのものを閉じてしまうわけです。
幸いにして、本改正(案)に対する懸念の声は既に相当数寄せられているようで、このまま改正される見込みは低くなってきているようです。ただ、まだ結論は出ていませんので、やはり一人でも多くの方にパブリック・コメント募集に応えて頂きたいと思います。
「有価証券の引受け等に関する規則」問題 - ブログ記事一覧
先日ご紹介した日本証券業協会による「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正(案)ですが、ネット上で着実に懸念の声が広がっています。基本的には、一人ひとりが自分で判断し、パブリックコメントに応じて頂ければと思いますが、参考までに目についたブログ記事をまとめておきます。(6/29&6/30追記しました。)
- [jp]日本からエンジェル投資家がいなくなる? 日本証券業協会のパブコメ問題 (Ryuichi Nishida氏, 6/22) http://jp.techcrunch.com/archives/20100622jsda-public-commen/
- 日本証券業協会が「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正についてのパブリックコメント募集中 (平田大治氏, 6/22) http://uva.jp/dh/mt/archives/005228.html
- 「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正について(案)について (econ-all氏, 6/22) http://ameblo.jp/econ-all/entry-10570345213.html
- 日本証券業協会 新規公開前に行われる不適切な自己募集を規制するための「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正について (吉澤尚弁護士, 6/22) http://nay-law.sblo.jp/article/39093314.html
- 「有価証券の引受け等に関する規則」の改正案に反対します (インフォテリア平野洋一郎氏、6/24) http://blogs.itmedia.co.jp/pina/2010/06/post-5bea.html
- パブリックコメント書いた [日本証券業協会の『有価証券の引受け等に関する規則』等の一部改正に対する意見] (樋口 理氏, 6/24) http://www.higuchi.com/item/579
- 「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正に反対 (弥生 岡本浩一郎, 6/25) http://yayoiplus.sblo.jp/article/39156935.html
- さらに個人投資家を減らす暴挙に出る官僚たちの夏 (堀江貴文氏, 6/25)
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10573564989.html - 日本証券業協会のアレ (moonmile氏, 6/26) http://www.moonmile.net/blog/archives/939
日本証券業協会のアレ(図解編)(moonmile氏, 6/28) http://www.moonmile.net/blog/archives/965 - 「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正に対する意見 (中央大学 大杉 兼一教授, 6/29) http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50912412.html
- 「有価証券の引受け等に関する規則」の改正案のパブコメについて (Fumi Yamazaki氏, 6/29) http://fumit.blogspot.com/2010/06/blog-post_29.html
- 個人から出資を受けたらIPOできなくなる日本証券業協会の規則変更に大反対します (磯崎哲也氏, 6/29) http://www.tez.com/blog/archives/001648.html
- そもそも何のために改正するのか - 「有価証券の引受け等に関する規則」 (弥生 岡本浩一郎, 6/29) http://yayoiplus.sblo.jp/article/39337112.html
- 「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正について (丸山宏氏, 6/30) https://japan.cnet.com/blog/maruyama/2010/06/30/entry_27040838/
そしてついに、本件が日本経済新聞にも掲載されました。6/30朝刊に掲載されましたが、電子版での該当記事がこちらです。
- 日証協、上場前の個人出資禁止案 VB育成に足かせも (日本経済新聞, 6/30朝刊)
2010年06月25日
「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正に反対
インフォテリアの平野さんのブログで知ったのですが、日本証券業協会で「有価証券の引受け等に関する規則」が起業家にとって望ましくない方向に改正されようとしているとのこと。「有価証券の引受け等に関する規則」というと分かりにくいのですが、要は上場に際して適用されるルールです。現在この規則の改正(案)が公開され、パブリック・コメント募集中となっています。
内容としては、平野さんのブログも見て頂きたいのですが、簡単に言えば、ベンチャー企業が上場前に個人投資家から出資を受けた場合には、原則として上場を認めない、というものです。最近問題になっている未公開株詐欺事件を防ぐため、ということですが、その問題意識自体は妥当だと思うものの、それを防ぐために、ベンチャー企業への個人投資家からの出資を(上場の道を閉じることによって、事実上)認めないというのはあまりに乱暴であると考えています。まさに悪貨が良貨を駆逐しかねない危機であると感じています。
この改正(案)は、多くの起業家の将来の上場の夢を破壊するに等しいことです。もちろん、起業家のゴールが必ず上場である必要はありません。むしろ上場は例外中の例外。年間の法人起業数が10万社前後であるのに対し、上場数は、ピークである2000年でも年間204社です。ただ、結果として上場するかどうかは別として、それを夢見ることは自由であるべきですし、その選択肢は確保されているべきです。
この改正(案)には、適用除外が細則で設けられていますので、これをもって問題ないという見方もあるでしょう。しかし、起業家を応援し、日本の経済を活性化させるためには、ベンチャー企業とそれを支援する個人投資家をバックアップする必要こそあれ、妨げるべきではありません。平野さんが言われる通り、例外はあるが原則禁止というアプローチ自体大きな誤りであると考えます。
百歩譲って(譲るべきではないですが)、原則禁止で例外で対応するとしても、この改正(案)の例外には大きな問題があります。上場が認められる例外は以下のように規定されています。
1 株券、新株予約権証券、新株予約権付社債券及び社債券の募集につき有価証券届出書を提出していたとき。
2 株券、新株予約権証券、新株予約権付社債券及び社債券を発行した時点において発行者が有価証券報告書を提出していたとき。
3 株券、新株予約権証券、新株予約権付社債券及び社債券について発行者の株主、役員及びその親族並びに従業員及びその親族に対してのみ募集又は私募を行っていたとき。
4 その他本協会が第1号から第3号に準ずると認めたとき。
そもそも有価証券届出書や有価証券報告書が何たるものかピンとこない方も多いと思いますので、実例を。このEDINETのサイトで、下の方で「有価証券報告書等」の閲覧をクリックします。次に検索画面で提出者EDINETコードにE03520を、そして、下の方の書類種別で「有価証券届出書」もしくは「有価証券報告書」を選びます(いずれも、マザーズ上場のトレジャーファクトリーの資料です。野坂さんちょっと拝借しました&大船店開店おめでとうございます)。見て頂ければわかると思いますが、まだまだ小さいベンチャー企業が作成するにはあまりにも負担が重い書類です(上記の有価証券届出書で直近の公募にあたって提出されたものは、有価証券報告書を組み込む形になっていますので、一見シンプルですが、新規公開時のものを見て頂ければボリューム感はつかめるでしょう)。外部に作成を依頼したとしても、数百万円は確実にかかるでしょう。
そもそも、有価証券届出書や有価証券報告書は、小さいベンチャー企業が、小規模の増資を行う際に提出することは求められていませんし、想定もされていません。有価証券届出書を誰が提出すべきと規定されているかは、関東財務局のサイトに詳しいのですが、簡単に言えば、一億円以上の増資をする際に提出せよとされている資料です。ちなみに1,000万円から1億円未満の場合には、有価証券通知書を提出することが義務付けられています。有価証券通知書の様式はこちらです。これであればまだ納得はいきますが、今回の改正(案)で要求されているのは、有価証券通知書ではなく、1億円以上の増資で必要とされている有価証券届出書です。
では、有価証券報告書はといえば、同じく関東財務局のサイトに情報がありますが、提出を義務付けられているのは、上場会社や株主が1,000人以上いるような会社です。すなわち、小さなベンチャー企業が提出を義務付けられているわけではありません(し、内容を見て頂ければ到底作成できないこともお分かり頂けるでしょう)。
となると、残るは、3の既存株主/役員/従業員/親族。しかし、これでは友人は含まれませんし、一般の個人投資家も含まれません。私がビジネススクールで叩き込まれたのは、ベンチャー企業にとって資金のソースは、まず自分。私が自分の会社を起業した際には、それほど資金ニーズの高くないコンサルティング業ということもあって自己資金で全て賄いました。しかし、それで足りない場合は? それは、F&F - Friends and Familyです。家族からの出資ももちろん大事ですが、それと同様に友人も重要な出資者です。順番で言えば、自分 > F&F >>> Angel Investor >>>>>>>> VC。しかし、この3の規定では友人に増資を引き受けてもらうことは事実上できなくなります。ましてや、一般の個人投資家も。昨今個人投資家によるベンチャー投資を促進するために、エンジェル税制(税金上のメリット)が徐々に強化されていますが、これは全く逆行する動きです。
おそらく、そこらへんは4の本協会が認めた時でカバーされるという見方もありますが、認められるかどうかは全く保証されたことではありません。そもそも恣意性を排除するためにも、「認めた時」に該当するようなケースは最小化すべきです。
論点の整理をしますが、まず、起業は国を挙げて応援すべきものであるのに対し、@個人による増資の引き受けを事実上禁止するというのは適切でないということ。A例外規定で抜け道を作るとしても、小さなベンチャー企業が友人や個人投資家に増資を引き受けてもらう道は閉ざされてしまうということ。
ここまで自分なりに調べてみたのですが、もともと上場の専門家ではありませんし、ひょっとしたら、認識に誤りがあるかもしれません。今回のパブリックコメントの締め切りは7/1(木)ということで、時間は大変に限られますが、本ブログやTwitterを通じて皆さんの意見も伺ってみたいと思います。その上で、7/1に間に合うように意見をまとめて日本証券業協会に提出したいと思います。
本件に関しては、平田大治さんもブログを書かれており、Twitterのハッシュタグとして#jsdaを提案されています。私もTwitter上で、税理士/会計士の先生方など色々な方のご意見を聞いてみたいと思っています。
2010年06月16日
法政大学での講義
この10年で、起業に至るまでの情報は豊富に手に入るようになりましたが、起業してから「どう生き延びるのか」に関する情報は未だ十分ではありません。弥生として何かできるのではないかということで、例えば、ETIC.での弥生起業会計塾や、横浜ベンチャーポートでの「社長1年生のためのお金にまつわる講座」(全12回)などの開催のお手伝いをしてきました。
こういった起業のスキル、そして起業後のサバイバルのスキルを身につける場として、今後は教育機関、特に大学との協業を進めたいと考えています。その一環として、先般はあきない総研の吉田さんが招聘教授をされている関西学院大学で、私なりの起業論をお話しさせて頂きました。今回は、法政大学経営学部の田路先生の「起業先進国に学ぶベンチャー経営と政策」講座において、「日本の起業環境」を実務家に講義して欲しいという依頼を頂戴し、税理士の八木橋先生をご紹介させて頂きました。
実は八木橋先生は、税理士としての仕事に加え、自らも「感動連鎖」というベンチャー(moomeというブランドのハイヤー会社)を立ち上げている真っ最中。税理士という立場で多くのベンチャーを見てきた経験、そして、自分自身の経験を踏まえ、どういった起業家が成功しやすいか、成功するためのポイントといったお話しをされました。土曜日の講座にもかかわらず、出席者は70名程度ととても熱気あふれる講座になりました(八木橋先生のブログ記事はこちら)。
さらに、7月には法政大学大学院(ビジネススクール) 会計コースで、実務家ワークショップのゲスト講師として先般ご紹介させて頂いた松波先生に「起業家・中小企業の会計実務」というテーマで講義を行って頂く予定です。
このような講義も含め、起業や中小企業の経営に関して、もっともっと情報発信をしていきたいと考えています。講座/講師をお探しの大学の皆さま、何かありましたら、是非お声掛けください。中小企業を元気にしたいと願っている税理士・会計士の先生と、弥生が協力し、様々なご要望にお応えしたいと考えています。
2010年05月28日
ひきこもりのための株式会社の創り方
この記事は、「株式会社の作り方と、基本的な開業準備について、『ひきこもり気質でインターネット大好きな人』向けに情報を公開します」ということで、極力インターネットを活用して、株式会社の設立に至るプロセスを詳細に解説しています。非常に面白いですし、参考になります。
私は弥生の社長に就任する前は、約8年間ほど自分で起業した経営コンサルティング会社を経営していました。起業したのは2000年。私も登記用の書類作成など、設立の手続きはほとんど自分でやったのですが、当時よりも随分とインターネットで賄える部分が増えているんですね。一方で、e-taxとeLTAXでの使い勝手の違いなど、電子政府システムの「こなれ方」という意味ではまだまだ。私にとっても新たな勉強になりました。
私の時は、本を頼りに、法務局等で色々質問しながら何とかした(お役所って、サービスが決して良いとは言えませんが、下手に出て聞くと、意外に??丁寧に教えてくれるんですよね)のですが、今はこういった情報がインターネットで豊富に手に入るのは素晴らしいことだと思います。今は資本金1円でも起業できますし、本当に思い立ったら誰でもいつでもできる時代です。冗談半分ですが、社長になるために一番簡単なのは? それは自分で起業すること。今回の記事に書かれているような手続きを踏めば、誰でも即、社長になれます!
ただ、一番重要なのは、起業してから、いかに生き延びるか。この部分に関しては、今でも決して情報が豊富とは言えません。弥生としてはこういった部分での情報発信を行っていきたいと思っています。
2010年04月20日
お客様からのお誘い
そういった意味で、起業する際に、既に一定の売上/お客様を確保できているのはとても望ましいことです。今自分が在籍している会社/組織のお客様からお誘い頂いて、それをきっかけに起業するというのは、望ましいパターンといえるでしょう。実は、私がボストン コンサルティング グループを卒業し、自分でリアルソリューションズという経営コンサルティング会社を立ち上げたのもこのパターンでした。「岡本さん、このプロジェクト、今後は我々の力で進めていかなきゃいけない。ただ、正直自信がない。独立して手伝ってくれないか」。それまでコンサルタントとして独立して起業するという選択はほとんど考えていなかったのですが、こう言って頂いて「なるほど、そういった選択肢もあるんだ」とえらく納得した覚えがあります。自分の理想とするコンサルティングとのギャップを感じつつ、いつかは起業したいと思っていた自分にとっては降ってわいたチャンス。そこから先はあっという間でした。
ただし、こういったパターンは望ましいといっても、いくつか注意すべき点があります。一つは、お客様が何を求めて誘ってくれているのかということ。お客様が自分の力を評価して、この人でなければできない、この人だからこそお願いしたい、と思って頂いている場合は問題ありません。ただ、中には単純に会社に委託するよりも、個人に委託した方が安くあがるし、小回りもきくから、という狙いで誘ってこられるお客様もいらっしゃいます。当然のことながら、この場合は慎重に考える必要があります。単純に安いから、であれば、別の安いオプションが見つかればそちらに切り替えられても何の不思議もありません。
お客様が何を求めているかは、次の仕事/プロジェクトを見つけやすいかにも直結します。力を評価されているのであれば、次の仕事/プロジェクトを見つけることは比較的容易でしょうし、それこそお客様が紹介してくれることもあります。それに対し、売りが安さだけであれば、次の仕事/プロジェクトを見つけることはそれほど容易ではないでしょう。どんどん単価を下げて安売りをすれば別ですが、その帰結は自ずと明らかかと思います。
注意すべきもう一点は、今所属している会社/組織との関係。今のお客様から誘われるということは、同じ、もしくは非常に近いフィールドで競合することになります。どんな業界も意外に狭いですから、今所属している会社/組織との関係を悪化させることは決して望ましいことではありません。下手をすれば、あいつは信頼できないという評価になってしまい、それこそ次の仕事/プロジェクトを獲得する際の障害になる可能性もあります。この点に関しては、決して簡単ではないのですが、独立することの必要性、必然性、それがお互いのためになることを認めてもらい、暖かく送り出してもらえるように努力はすべきだと思います。
私の場合は、幸いにして私の持っている力(特にIT戦略面でのスキル)をお客様にも、元いた会社にも認めてもらうことができました。結局、お誘い頂いた会社には様々なプロジェクトで約5年間お手伝いを継続させて頂くことができ、起業家としての私の土台を作ることができました。また、独立しての一番最初のプロジェクトは元いた会社との合同プロジェクトとして頂き、その次のフェーズから私の会社で単独受注する形として頂きました。このような形で、独立を認めて頂いたことには本当に感謝しています。
お客様からお声をかけて頂いた時。まずは評価して頂いたことを心から感謝しましょう。間違いなくチャンス。ただ同時に、お客様にお力添え頂いて起業はできたとしても、その後事業をキチンと継続することができるのか、冷静になって考えることも忘れないようにしましょう。起業そのものは通過点。事業として継続してこそ本当の意味での起業家だと思います。
2010年04月16日
就職 or 起業
世間では、来年4月の入社に向けた就職活動も真っ盛り(弥生も募集中です!)。電車にのっていても、いかにも就活中といった人が多いですね(だいたいスーツがしっくりきていないので...)。Twitter上も就活に関するつぶやきが溢れています。ただ、その中で気になるのが、「就活がうまくいかなかったら、起業するか」といったつぶやき。
先日若手起業家ネットワーク(YEN)の交流会にゲスト参加したのですが、そこで学生の方から「いつか起業したいのですが、まずは就職して経験を積む方が良いか、学生時代から起業した方が良いか、どう思いますか」という質問を受けました。一般的には、やはり経験を積んだ方が起業後の成功率はあがりますから、まずは就職して経験を積み、ネットワークや資金を作ることをお勧めします。ただ、起業を成功させる上で一番重要なのは、自分の想い。ですから、何がなんでもこれをやりたい、しかもそれが今しかできないのであれば、学生のうちに起業することも選択肢でしょう、と答えました。
大事なのは、自分の想い。それだけに「就活がうまくいかなかったら、起業するか」というつぶやきには違和感を覚えます。就活は大変だと思いますし、現実を一旦脇に置いての、他愛のない発言だとは思いますが。
就活中の皆さん、頑張って下さい。人生は長いですから、まずは経験を積みましょう。一方で、自分の強い意志で就活を選ばず、起業を目指す皆さん、頑張って下さい。決して容易ではない道ですが、強く望めば道は必ず拓けます。
2010年04月07日
堀江貴文さんの「起業してほぼ確実に成功する方法」考
自分なりに考えることもあり、折角なのでブログに書いてみることにしました。堀江さんは元親会社の元社長ということで、若干遠慮しがちですが(笑、なお、弥生株式会社は2007年秋にライブドアから売却されており、現在は資本関係はありません)。私は現在弥生の社長を務めさせて頂いていますが、残念ながら弥生を起業したわけではありません(なんせ弥生のルーツは30年以上前まで遡りますので)。ただ、弥生の社長になる前は、2000年に自分の会社を起業し、8年間経営しておりましたので、起業に関して多少は語れるかと思います。
堀江さんの記事は論点として大きく二点にまとめることができるかと思います。一点目は、「自分の好きな商売ではなく確実に上手くいく商売から始めたほうがいい」ということ。具体的には、「利益率の高い商売」「在庫を持たない商売」といった4つの条件を満たす商売から始めたほうがいいということ。二点目は、こういった商売であっても、成功するためには、「睡眠時間以外のほぼ全てを仕事に使ってい」るべきだということ。
基本的に、堀江さんの言うことは正しいと思います。一方で、起業 = 必ずこの二つを満たすべき、では必ずしもないかな、と。
まず一点目ですが、起業はあくまでも自分が達成したいことを実現するための「手段」です。起業自体を目的として、何をやってもいいんだけど、という場合には、確かに堀江さんの言われる4条件を満たした方が成功の確率は上がります。私が起業したのはコンサルティング会社で、ドンピシャでこの4条件を満たしています。私がそれなりにやってこれたのも、これら条件を満たしていたお陰もあると思います。ただ、私は4条件を満たすからコンサルティング会社を立ち上げたというわけではありません。
やはり最初にあるべきは、自分がやりたいこと、実現したいこと(=起業の目的)。仮に自分がやりたいこと、実現したいことがこの4条件を満たさなかったら、諦めるべきでしょうか? 起業して挫けそうになることもありますが、そんな時に支えてくれるのは、やはり自分の想いです。ただ、条件からはずれれば難易度があがるのは事実ですから、より一層の準備と努力は必要になるでしょう。
二点目に関してですが、仕事に集中することは必要だと思います。一方で、友達と会うことはネットワークを広げることにつながりますし、風呂に入っている間に悩んでいた課題への解をひらめくこともあります。実際に私の場合も、クライアントの開拓に際しては、友人のネットワークに大いに助けられました。逆に、自分の仕事には直接つながらなくても、友人を手伝うこともしてきました。
もっとも、そういった時にも仕事のことは常に頭にあります。物理的に仕事に時間を割いているわけでなくても、常に考えているという意味では、睡眠時間以外のほぼ全てを仕事に使っているということもできるかもしれません(考えているという意味では睡眠中に出てくることも珍しくありません)。
こうやって改めて書いてみると、堀江さんの言われる「起業してほぼ確実に成功する方法」は確かにその通りですね。この二点を守れば、起業をほぼ確実に成功させることはできるでしょう。私の場合は、この二点をそれなりに満たしていたので、まあそこそこ生き延びることができました(が、堀江さんのように急速に成長できていないのは、それなりだからかも、笑)。ただ、起業に唯一絶対の解はありません。起業を志す一人一人にそれぞれの起業のあるべき姿があるのだと思います。
2010年03月05日
起業イベント花盛り
まず今日は、あきない総研の「Katanaオフィス渋谷」のオープニングパーティ。あきない総研とは、既に起業支援サービスである「Katana」でご一緒させて頂いており、Katana会員向けに弥生会計を特別パックとして提供しています。お陰様でこのサービスは大変好評です。
今回は新しいレンタルオフィスを渋谷に出されるということです。10年前に私が起業した際は、レンタルオフィスというと外資系の高いサービスしかなく、結果的に自宅での起業(+外部に秘書サービスを依頼)となりました。起業する際は、いかにリスクを最小化するかが鍵ですから、今であればレンタルオフィスを使うと思います。
そして明日は、NPO法人ETIC.のEntrepreneur Gathering。「社会を変えていく、新しい価値の創造にチャレンジする起業家、リーダーが集う創発の場」ということで、私もお昼のセッションから参加させて頂きます。このイベントにはMidnight Sessionという、旅館に場を移して夜通し議論するという変わった企画もあります。さすがに体力的に夜通しはきついので、こちらは終電までの参加を予定しております。
自分で事業を立ち上げた経験(苦労、とも言う)、そしてそこから弥生の社長に就任した経験(ご縁、とも言う)を多くの方と共有させて頂きたいと考えていますし、同時に、参加者の皆さんのエネルギーを頂きたいと考えています。
そして来週月曜日は、BRIDGE 2010。昨年11月のBRIDGE 2009は残念ながらスケジュールがあわず参加できなかったのですが、今回は楽しみにしています。このイベントの立役者である本荘さんにはいつもお世話になっています。
このブログを読んで頂いている方には、起業したばかり、あるいはこれから起業を考えているという方もいらっしゃると思います。是非こういったイベントでお会いできたらいいなあ、と思っています。
2010年01月27日
「今こそ起業のチャンス」
内容は記事をご覧頂きたいのですが、シリコンバレーは「めちゃくちゃ」になっていると同時に、「戦略的転換点」という「大きな変化のうねりが起きている」とのこと。そしてそのうねりに乗るべく、多くの起業家が生まれているようです。もともと、旧来型の産業が停滞する中で新しい産業を生み出してきたシリコンバレーですが、その伝統は健在のようです。
実際、スタンフォードのビジネススクールでも起業する割合が例年の2倍に増えているとのこと。日本語でも「危機」の「機」は「機会」の「機」という表現もしますが、こういった難しい環境だからこそ起業のチャンスは広がるという見方は、アメリカでは多いようです。スタンフォードのMBAホルダーはともかく、一般的には雇用環境が厳しい、すなわち会社を辞めざるを得なかったからやむなく起業という後ろ向きな解釈も成り立つのでしょうが、どうせ新しいことをやるのであれば、自分で納得のいくことを選びたいという前向きな考えの方が強いのではないかと思います。個人的経験ですが、アメリカ人の友人と話すと、いつかは"Be my own boss" (=独立して自分で全部決められる立場になる)と言う人がとても多いように思います。その機会が来たということなのではないでしょうか。
この記事を読みつつ思い出したのが、昨年の夏に日経新聞に掲載されていた記事。内容は、フランスで起業が相次ぎ2009年は前年を50%以上上回る見通し、というものでした。これも雇用環境の影響はあるのでしょうが、やはりどうせやるなら、という面も強いのではないでしょうか。
これは自説になりますが、起業 = 高リスクでは決してないと考えています。むしろ、起業は自分で決められる余地が大きいだけに、下手な会社に転職するよりもリスクを低減することも可能だと考えています。これについては、話が長くなりますから、またの機会に。
店頭に立っていると、自ら事業を立上げ、初めての青色申告というお客様ともお会いする機会が多くあります。そんなお客様には、やるぞという意気込みと、どうすればという不安が同居していることを感じます。弥生として、そういったお客様の不安を解消し、事業を成功に導くお手伝いをしていきたいと考えています。
2010年01月22日
愛知県の女性起業家
実は昨日、イベント開催の準備でビックカメラ 名古屋駅西店をお伺いしたのですが、その際に青色申告ソフトを検討されているという女性の方にお話しする機会がありました。青色申告をしなければ、そのためには帳簿をつけないと、と思いつつも、何をどうやってという段階で悩んでいらっしゃる様子。できればイベントにお越し頂きたいところですが、さすがに「また明日お越し下さい」とは言えませんので、イベントの内容を短縮版でご説明しました。
10分ほどご説明した結果、「なるほど、こうやればいいんですね。大体イメージがつかめました」とご納得頂き、やよいの青色申告をお買い上げ頂きました。とても嬉しいことなのですが、同時に、まだまだ情報発信が足りていないのではとの反省も。ソフトをどう使うのかというだけでなく、青色申告自体どうすれば良いのか、という情報発信を心がけていますが、「昔からの夢を実現」されつつある方々が青色申告で躓かないように、もっともっとやるべきことがありそうです。