2021年05月28日

事業継続力と競争力を高めるデジタル化

前々回前回2021年版中小企業白書を題材にお話ししてきました。今回の中小企業白書は、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」が大きなテーマになっており、デジタル化が「事業継続力と競争力を高める」としています。

実は、今回の中小企業白書で一番ご紹介したいのは、P242にある、事例2-1-9: 株式会社トオセヨという「トランザクションレンディングを活用し、資金繰りに余裕を持たせる企業」の事例です。はい、そうです、トオセヨさんはアルトアのお客さまです。アルトアのオンライン融資サービスは行政機関からも注目されており、今回の中小企業白書でその事例を紹介したいということで、アルトアからご紹介したという経緯があります。

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「そうした中、利用していた会計ソフト「弥生会計」からメールで案内を受けたのが、アルトア株式会社のオンライン融資サービス(以下、「アルトア」という。)であった。申込みに当たっては「弥生会計」の会計データだけ用意すればよく、面談も不要で、金融機関に比べて融資も迅速だという。24 時間インターネット上から申し込めるので、店を閉めた後の夜間の時間を使って利用できるのも大きなメリット。同サービスを活用して手元資金に余裕を持たせることで、本業に集中できるようになった。」

前回は、デジタルで懇親会のあり方を変えたnonpi foodboxというサービスを紹介しつつ、同時に、「誤解のないように申し上げると、何でもかんでもデリバリーすればいいとは思っていません。またデジタルはあくまでも有効なツールであって、全てがデジタルであるべきだとも思いません」とお話ししました。外に食べに行く飲食店がなくなり、全てがデリバリーになってしまったら、それこそ味気のない世界です。飲食店には、普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びがあります。

もっとも、だからといってデジタルは無縁ということではありません。むしろ、普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びを最大化するために、デジタルをどう活用するか。トオセヨさんの場合には、お客さまに楽しい時間や美味しいものを提供することに精一杯で、金融機関に相談に行くことも難しかった。そこで24時間インターネット上から申し込めるアルトアを活用したわけです。アルトアであれば、改めて書類を用意する必要もなく、日頃から記帳している会計データさえあればいい。これもデジタルを活用して事業継続力を高めた好例ではないでしょうか。


個人的に残念なのは、行きたい行きたいと思いつつ、新型コロナウイルス禍の影響で未だにトオセヨさんのお店(「満月」)にお伺いできていないこと。そう言っているそばから、緊急事態宣言が延長という報道があり、ため息が出ます。現状の新型コロナウイルス禍の状況を鑑みると、しっかりとした対策が必要であることに異論はありません。ただ、感染者増加に対する直接的な対策である医療体制の強化、また、感染者増加を未然に防ぐワクチン接種になかなか有効な手を打てていない中で、結果的に飲食店を中心として一部の事業者にばかり過大な負担を強いる策が本当に妥当なのかは疑問に感じています。
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2021年05月26日

危機を乗り越える力

前回2021年版中小企業白書についてお話ししましたが、今回の中小企業白書は、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」が大きなテーマになっています。

市場に大きな変化(おそらくは不可逆な変化)が起きている中で、事業のあり方を見直せるかどうか。私が印象に残っているのが、オンライン飲み会用のケータリングです。弥生でも、ここ一年間はHalf Year Meetingや社員総会などで皆が物理的に集まることができていませんし、それに伴ってBeer Bustを開催することもできていません。昨年秋にCS本部総会を開催する際には、ホテルの宴会場を利用できないことは自明だったものの、例年お世話になっているだけに、多少なりとも貢献できればということで、ホテルにせめて食事を気の利いたお弁当のような形で数百人分用意してもらえないか聞いてみました。

私がホテルの経営者であれば、即答でもちろん喜んで、と回答するところですが、実際には、対応できないという返答でした。食べ物だけに食中毒の心配もあり、ホテル外では品質を担保できないという判断だったのかもしれません。ただ、それ以上に、我々はホテルだから、ホテルの中で最高のサービスを提供するのが、我々の仕事というある意味の思い込みがあったのではないでしょうか。

ホテルには断られましたが、人事総務部で引き受けてくれるところを一生懸命探し、CS本部総会でも社員総会でも、皆が同じ食事をするという経験を共有することができました。最近ではnonpi foodboxというオンライン飲み会に特化したフードデリバリーが好評で、弥生でも各部署のオンライン飲み会で利用するようになっています。このサービスは、デジタルで懇親会のあり方を変えたいい例だと思います。

誤解のないように申し上げると、何でもかんでもデリバリーすればいいとは思っていません。またデジタルはあくまでも有効なツールであって、全てがデジタルであるべきだとも思いません。実際問題として、あくまで私個人の感想ですが、最近は色々な部署でnonpi foodboxを利用するため、私個人としては少々飽き気味です(苦笑)。でも、おそらくまだまだ進化するサービスだと思いますし、その際にデジタルは大きな武器になるでしょう。

一方で、既存のホテルや飲食店が全て駆逐されることもないでしょう。やはり普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びは絶対的に存在しますから。ただ、これまでもこうやってきたから、と漫然と同じことを続けることが成り立たなくなっていくのだと思います。ホテルやお店に拘るのであれば、空間だったり、雰囲気だったり、あるいは素材の新鮮さだったり、ホテルやお店である「必然性」をよりはっきりと示していかないといけないのだと思います。

そのためにもデジタルは有効な武器になるはずです。デジタルを活用することによって、業務を効率化する、そして時間を「必然性」を示すために使えるようにすることによって。
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2021年02月08日

税理士特集

前回はダイヤモンド・オンラインの「税理士サバイバル」という特集の一環で、私の取材記事が掲載されたことをお話ししました。ちなみにこの特集は紙面では本日発売の週刊ダイヤモンドに掲載されているのですが、紙面では1)会計士、2)コンサル、3)税理士の豪華3本立てとなっており、私の記事はページ数の関係でマルっと割愛されたようです(泣)。

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このような税理士特集は様々な雑誌で年に一回ぐらい組まれます。多くは、クラウドが来た、RPAが来た、税理士の仕事はなくなる、税理士の未来は暗い、という(言葉を選ばずに言えば)煽り記事。税理士という「士業」であり、独占業務を持っていることに対する妬みが根底にあるのではないかと思うぐらい極端な論調の記事も珍しくありません。

今回の特集に関しては、「クラウド&RPAの大波襲来」といったいかにも煽り的な部分もあるのですが(これまでにもお話ししているように、クラウドもRPAも所詮道具でしかないので)、それでも全体としては、この種の特集の中では比較的客観的に書かれていると思っています。実際、取材の際にも、意外に(失礼!?)客観的に見ていらっしゃるな、と感じました。

そもそも税理士には多様性があり、差別化の仕方、競合優位性の築き方は一つではありません(そこは規模を追求せざるを得ない監査法人と大きく異なります)。私の記事でも「税理士の先生方の生き残り策は、経営コンサルタントとして経営者の心理カウンセラーのごとく悩みを聞いてアドバイスすることや、税の種類に特化するという方法もあるでしょう。勝ち筋はたくさんあると思います」とお話ししています。それに呼応してということではないのでしょうが、特集の一つとして「税理士8タイプ生体図鑑」という異なる戦略が描かれています。注文を付ければ、「街の税理士」に対し、やや否定的に書かれているのはひっかかりますが。街の税理士は、いわば事業者のかかりつけ医。ここに書かれたような後ろ向きな街の税理士ももちろんいますが、前向きな街の税理士も沢山います。

ということで、この種の特集の中では、比較的読み甲斐があるのではないかと思います。税理士の先生方の感想も聞いてみたいところですね。

ところで、記事中で税理士法人ベリーベストがRPAの活用事例として紹介されています。ただ、税理士の先生方ならお分かりいただけるかと思いますが、会計ソフトから税務申告ソフトへの転記をRPAでというのもいいのですが、より重要なのは、会計ソフトへの入力の効率化です。この点に関しては、実は2018年秋のPAPカンファレンスで、税理士法人ベリーベスト代表の岸先生に記帳代行センターの立上げとスマート取引取込の活用について講演いただいています。

こちらのPAPカンファレンス開催レポートでは講演の概要がまとめられており、講演資料もダウンロード(PAPログインが必要)できますので、是非ご覧になってください。
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2021年01月26日

「電動車」の定義

先週、私が昨年秋に「電動車」を購入したと書きました。先般菅総理が、「2050年カーボンニュートラル」を改めて宣言し、そのための施策の一つとして、「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現」することを表明されましたが、それを先取りしたことになります。

ただ、ここでいう電動車とは一体どんなクルマを含むのでしょうか、あるいは含まないのでしょうか。そこに混乱があり、それが前回お話ししたトヨタの豊田社長の「反旗」(というよりも抗議)につながっています。電動車について語る前に、電動車とは何かをしっかりと定義する必要があります。

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電動車と聞いて真っ先に思い浮かぶのは電気自動車(EV)でしょうね。メーカーで言えば、テスラ。電気モーターとバッテリーを搭載しており、バッテリーに蓄積された電気で電気モーターを駆動して走ります。未来のイメージはありますが、まだまだ圧倒的少数派です。

一方で、電動車を「駆動用の電気モーターを搭載している」と定義すると、いわゆるハイブリッド自動車(HV)まで含まれることになります。HVといえばトヨタ、そしてトヨタのHVと言えばプリウス(実際にはトヨタのほとんどの車種でHVが用意されていますが)。街中を一杯走っているプリウスは、この定義であれば立派な電動車ということになります。

EVとHV、この間には、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)が存在します。PHEVは、エンジン(内燃機関)と電気モーターの両方を搭載しており、石油燃料でも、電気でも、あるいはそれらを組み合わせて走ることができます。PHEVはHVと何が違うの、というのはよくある疑問ですが、HVはエンジンが主で、電気モーターはその補助にすぎません。このため、電気だけで走ることはできない(マイルドHV)、もしくは、電気で走れても発進時などごくわずかな距離に限られます(ストロングHV)。先ほど例に挙げたプリウスはここでいうストロングHVです。一方で、プリウスにはプリウスPHVというPHEVの車種も存在します。PHEVは外部からの給電ができ、なおかつ、その電力を貯める比較的大きなバッテリーを搭載しているため、それなりの距離を電気モーターだけで走ることができます。

逆にどんな定義でも電動に当てはまらないのが、内燃機関自動車です。内燃機関のことをInternal Combustion Engineということから、ICEという略称が使われます。正確に定義すれば、HVもPHEVも、ICEを搭載していますから、ICE「のみ」車と表現すべきなのかもしれません。

今回の日本の動きは海外の動きを追従するものですが、将来的なICE禁止について、昨年秋に具体的な動きを見せたのが、イギリス。ジョンソン首相が「緑の産業革命」の一環として2030年にHV含めICEの新車販売を禁止、2035年にはPHEVも禁止し、純粋なEVのみとすることを発表しています。つまり2035年には(あくまでもそれ以降の新車販売になりますが)EV 100%。

では、菅総理が表明した「電動車100%」で言う電動車の範囲は? 実はこれは明確には定義されていないのですが、一般的にEV/PHEV/HVと言われています。つまりエンジンを主、電気モーターは従であるHVも電動車に含まれる訳です。逆に言えば、日本において「ガソリン車廃止」という言い方は不正確ですし、非常に誤解を招く表現です。豊田社長が抗議をしたのもまさにこのポイントです。

ちなみに前回もお話ししましたが、今回私が購入したのはPHEV。現実主義者の私らしく(?)、EVとHVのいいとこどりを狙った訳です(しかしこれはどっちつかずで中途半端とも言えるのですが)。私自身はPHEVを選択し実際に3ヶ月近く乗ってみて、そしてまた購入してから(遅い!)色々と調べるにつけ、電動の良さも実感していますし、同時に課題もまた実感しています。結論から言えば、私は豊田社長と同様に、電動化は目指すべき、ただし拙速にではなく、日本という市場にあわせた方法と時間軸で、と考えています。
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2021年01月20日

2035年電動車100%

1/18に行われた施政方針演説の中で、菅総理大臣は、「2050年カーボンニュートラル」を改めて宣言し、そのための施策の一つとして、「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現」することを表明しました。「2050年カーボンニュートラル」自体はこの場が初ではなく、昨年10月の所信表明演説で既に宣言されていましたし、電動車へのシフトも昨年末に公表された「グリーン成長戦略」で「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる」とされていましたが、「2035年」という明確な期限を菅総理ご自身が表明したことには大きな意味があると思います。

一方で、2030年代半ばまでガソリン車廃止という報道が続く中で、トヨタの豊田社長が言葉を選びながらも、電動化 = ガソリン車廃止という見方に「『反旗』を翻した」ことも話題になりました。

これは実は他人事には思えない部分があります。数年前の「クラウド会計ブーム」を思い起こすからです。とにかく電動にせねば、とにかくクラウドにせねば。似ていませんか。ただ、電動もクラウドも手段でしかありません。電動は温室効果ガスを減らし温暖化を防ぐという目的のための手段。クラウドは業務を効率化し、事業を成功させるという目的のための手段。そういった手段がいつの間にか目的化することはありがちではありますが、当事者としては複雑な思いです。

誤解のないように申し上げると、手段としてのクラウドには弥生は大賛成です。弥生は既に10年以上前からデータをクラウドに保管し、どこからでもアクセスできる仕組みを提供していますし(そういう意味ではトヨタはハイブリッド車であるプリウスをもう20年以上前から手掛けていますから本当にすごいことだと思います)、現在最もクラウドが浸透している個人事業主向けのクラウド会計ソフトでは過半のシェアを占めるNo.1です。それでも、いつの間にかクラウドが目的化する、クラウドであればよくわからないけれど問題は解決するという短絡的な思考には抵抗を覚えます。ですから、電動化でありクラウドがメディアにもてはやされている中でそういう姿勢を見せることは賢明ではないのかもしれませんが、豊田社長のフラストレーションはとてもよく理解できます。

ちなみに私は2050年カーボンニュートラル自体には賛成です。決して容易なことではないですが、目指すべきことだと思います。だからという訳ではないのですが、実は昨年秋に電動車を購入しました。電動車にも色々ある(これが混乱のもとなのですが)のですが、プラグインハイブリッド(PHEV)というものです。エンジンでも走れるし、電気モーターでも走れる。現時点の日本においてはこれが最適解だと思い、PHEVを選択しました。

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それから約2ヶ月半、約1,400km走りましたが、電動車のいい面も実感する一方で、その課題もひしひしと実感しています。とてもいい面もありますし、個人的には気に入っていますが、このままでは普及は難しいだろうな、というのが正直な感想です。今後電動車を検討される方も増えてくるでしょうし、電動車のメリット/デメリットについて少しずつお話ししてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:44 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年05月29日

インフラが必要とされなくなる時

少し前に通勤定期をどうしよう、というお話しをしました。私の今の通勤定期が5月末までなのですが、これまでリモートワークを続けている、さらに今後も一定程度リモートワークが続く中で、いつも通りに更新するかどうか。前回は、「一旦は6ヶ月定期を買うのだと思います」と書きましたが、その後もう少し考え、このタイミングでは買わない、ということにしました。

前回お話しした通り、「週3日の通勤であれば何とかトントン」。あくまでも個人的にですが、週3日出勤で週2日はリモートワークというあたりがまずまずいいバランスかなと感じていることもあって、一旦は買うかなと判断しました。ただ、ここには出張が考慮されていません。以前お話ししましたが、昨年の私の出張の回数は42回、日数にして67日、宿泊日数が38泊でした。実際には、これからは出張は減るのだと思います。その必要性は改めて問われることになるでしょう。ただゼロにはならない。減るにしても一定程度は出張があるとすると、オフィスへの出勤は週3日を切ることになります。また実際問題として、引き続きリモートワーク推奨としている中で、具体的なオフィス出勤の予定もない中で、今買わなくてもという現実的な判断もあります。

これはあくまでも私の個人的な判断ですが、皆が通勤定期を買わなくなったらどうなるか。これは鉄道会社にとっては恐ろしいシナリオだと思います。私は常々、JR東日本は素晴らしい会社だと思ってきました。羨ましいとも。単なる鉄道会社に終わるのではなく、Suicaという電子マネーを普及させ、駅ビルを高付加価値化し、そこに経済圏を生む(地元横浜でも、念願の駅ビルが間もなくオープンする予定です)。しかし、そもそも人が電車に乗らなくなったら。定期券は都度買うよりも割引になっていますが、前払いですから、キャッシュフロー的には大きなプラスになっているはずです。JR東日本に勤務している友人もいるので、非常に複雑な気分ですが、今回の新型コロナウイルスは社会のあり方に大きな変革をもたらしており、それは下手をすれば会社の土台を揺るがしかねないということを改めて感じます。

翻って弥生はどうか。弥生も、JR東日本とは規模感が全く違いますが、事業者のインフラであると自負しています。ただ、そのインフラ自体が必要とされなくなったら。これからはオフィスだけなく、ホームオフィス、サテライトオフィスとロケーションフリー化が進む中で、これまでと同様のオフィスに縛られたインフラであり続ければ、必要のないものとなってしまうかもしれません。幸いにして弥生は、クラウドアプリケーション(弥生オンライン)も提供していますし、デスクトップアプリケーション向けにもクラウドストレージ(弥生ドライブ)を提供しており、どこからでも業務を継続できるようになっています。ただ、物事の前提が大きく変わりつつある中で、弥生の提供する価値が引き続き必要とされることを、当たり前と思ってはいけないのだと思います。

これまでの当たり前が当たり前ではなくなる。新型コロナウイルスはそれだけ大きな変革をもたらそうとしています。
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2020年05月27日

さらなる支援策

月曜日の緊急事態宣言解除に関する記者会見の中で、安倍総理は、「感染を抑えながら完全なる日常を取り戻していくための道のりは、かなりの時間を要する」、「その出口に向かって、この険しい道のりを皆さんと共に乗り越えていく。事業と雇用は何としても守り抜いていく」と決意表明されました。この決意が反映された第2次補正予算案が今日閣議決定されました。その柱は、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた企業の資金繰り支援の拡大。

政府系や民間の金融機関を通じた実質無利子・無担保融資など、従来から動いている施策の枠の拡大だけでなく、事業者の家賃支払いを支援する「家賃支援給付金」、休業手当を受けられない労働者に対する給付となる「新型コロナ対応休業支援金(仮称)」など、追加の施策もこの予算には正式に盛り込まれました。

家賃支援の対象は、1ヶ月の売上高が前年同月比5割以上の減少か、連続3ヶ月間で3割以上減少した事業者。前者の条件は基本的に持続化給付金と同じですから、持続化給付金の対象となった事業者はこの支援策も対象になると考えていいのではないかと思います。対象となった場合には、原則として家賃の2/3(月額の上限が法人50万円、個人事業主25万円)を6ヶ月分給付を受けられるようです。つまり最大300万円(複数店舗の場合には、最大600万円)。これは非常に大きいですね。家賃と言えば、固定費としてとても大きい存在ですから、この支援は非常に有効だと感じます。

本ブログでは以前、雇用調整助成金についてお話ししました。新型コロナウイルスの影響など、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、従業員に対して一時的に休業を指示した場合には、従業員の生活を保護するため、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。雇用調整助成金は、この休業手当の支払いに対し、事業者に助成する制度です。これまで段階的に助成率が引上げとなっており、また申請に非常に手間がかかるということで、申請の手続の簡素化も進められています。しかし、1日あたりの上限額が8,330円では低すぎるという声が強かったのですが、今回、1日あたりの上限額が15,000円に引き上げられました。

一方で、この休業手当が(少なくとも速やかに)支払われないケースが現実問題としてあることから、従業員が直接申請することによって、休業手当に相当する支援金を直接受け取れる、いわば雇用調整助成金のバックアップの仕組みとして用意されるのが、新型コロナ対応休業支援金(仮称)です。

一つひとつの施策はとても喜ばしいものではあるのですが、施策が増え続け、また個々の施策の条件も頻繁に更新されるため、事業者の方が自分に適した施策を見つけることがますます難しくなっています。弥生では、3月から「新型コロナウイルスに伴う支援情報」を整理して発信しています(今回の新しい支援策の情報も、制度が具体化するタイミングで追加します)。4月には大幅なリニューアルをしたばかりなのですが、増え続ける情報をよりわかりやすくお伝えできるよう、さらに知恵を絞らないといけないと感じています。

なお、念のためですが、特に法人を中心に、顧問の会計事務所がある場合には、まずは顧問の会計事務所に相談すべきです。どの会計事務所も、お客さまである事業者の資金繰りを支援するために、必死で戦っています。ある先生は、お客さまの支援が優先で、ご自身の確定申告をいまだに済ませていないとのこと。4/22の時点での話でしたが、さすがにもう終えられたのでしょうか > O先生。
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2020年04月06日

プランB

4月に入って一週間弱。新型コロナウイルス禍が広がる中、資金繰りの一つの山場である3月末を何とか超えたと思ったものの、4月に入っても事態は好転していません。報道によると明日にも緊急事態宣言が出されるのではということで、事態はむしろ悪化しているようにも見えますし、先の見通しが描けない状況です。

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先週金曜日は友人と行きつけの神田のイタリアンに行く予定だったのですが、状況を鑑みてとりやめ、その代わりに持ち帰りを用意していただきました。持ち帰りで美味しい食事を食べられることになった家族は大喜び。これもお気に入りのお店を支えるひとつの方法かと思います。ちなみに、外食を予定していた友人とは今晩これからリモート飲み会の予定です(笑)。

ただ、事態がまだ長引くだろうという判断のもとで、苦渋の決断をする事業者の方も出てきています。特に飲食業で顕著ですが、当面営業を休止するお店が増えつつあります。制約を受けつつも事業を継続するのをプランAとすると、一旦事業を休止するのはプランBと言えるでしょうか。判断の分かれ道は、営業を継続することによって多少なりともプラスに働くかどうか。特に飲食業の場合には、食材の仕入れがあり、(使いきれない分も含めての)仕入れ > 売上になりかねないため、事業を継続することが傷口を広げることにもなりかねません。

神田のお店も、今日/明日のランチ営業で食材を消費した上で、水曜日から一週間ほど営業を休止するとのこと。周りのお店でも、休業が増えてきたとのこと。本当に苦渋の決断だと思います。ただ、長い目で見れば、ここで出血を一旦抑えるのは有効な選択肢かもしれません。

お店を休むということで、その間は従業員の方には有給休暇をとってもらうという手もありますが、こういった事態を受け、国による最大限の支援体制が用意されています。それが雇用調整助成金。経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、従業員に対して一時的に休業を指示した場合には、従業員の生活を保護するため、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。雇用調整助成金は、この休業手当の支払いに対し、事業者に助成する制度です。制度自体は従前からあるものですが、今回、新型コロナウイルスの影響を受けている事業者については、助成率が最大で9/10(90%)にまで引き上げられています。ただし、1日あたり一人8,330円という金額の上限があります。例えば、平均賃金が10,000円で休業手当を最低限の60%支給した場合には、10,000円×60%×9/10=5,400円の支給額になり、15,000円に対し、80%支給した場合には、計算上は15,000円×80%×9/10=10,800円となりますが実際には金額上限を超えるため8,330円の支給額ということになります。

休業が短く終われば有給休暇の消化でもよいと思いますが、ある程度続くことを考えると、折角国の支援を受けられるのですから、この制度の活用も検討すべきだと思います(雇用調整助成金は支給限度日数は100日となっています)。通常は休業の事前の届け出が必要なのが、今回は事後提出でも構わないのも大きなポイントですね。

もちろん通常通り営業を継続できるのが望ましいとは思いますが、休業によって、仕入れを止め、なおかつ雇用調整助成金で人件費をある程度賄うことによって出血を止めるのも、長い目で見れば有効な選択肢となりうるかと思います。残る大きな費用項目である家賃に関しても、家主と交渉する余地はあるかもしれません(少なくとも支払いを待ってもらう、は交渉してもいいのではないかと思います)。

雇用調整助成金も含め、既に様々な支援策が用意されています。弥生ではこれらの情報を可能な限り網羅したページを作成し、継続的に更新しています。どんな可能性があるのか、一度ご確認頂ければと思います。
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2020年03月17日

早めの備えを

前回は確定申告を早めに終えましょうというお話しをしましたので、今回も「早め」というと同じ話と捉えられるかもしれません。しかし、今回は早めの「備え」の話です。

日本では新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がる状況にはなっておらず、感染拡大が比較的抑制されているように見受けられます。ただ、それは様々な活動の抑制によって成り立っているのも事実。東京ディズニーリゾートは結局1ヶ月以上に渡って休園するようで、私が経営者だったらと思うと、本当に目まいがするような状況です(政府からの要請もあったのでしょうが、それにしても本当に勇気のある判断だと思います)。東京ディズニーリゾートのように休園とまではいかず、営業は続けていても、外出を控え、活動を自粛するムードの中で、いつもよりもお客さまが目立って減っているお店も多いのではないかと思います。

事業者にとっては本当に厳しい状況です。なおさら厳しいのは、終わりが見えないということ。1~2週間の集客減であれば、少し頑張れば取り返すこともできるかもしれない。しかし、今回の新型コロナウイルス禍で非常に難しいのは、その終わりが現時点では全く見通せないということです。

そういった中では、最悪の事態、すなわち、現状がこの先も当面は続くという想定で備えるべきです。それも速やかに。事業にとっての血液はキャッシュ(現預金)。帳簿上は黒字であっても、現預金が尽きれば、事業を続けることはできません。仮に今はまだ現預金に余裕があるとしても、この先3ヶ月間、ひょっとしたらもっと長い期間に渡って経済活動の停滞が続いたらどうでしょうか。それでもびくともしない事業者はかなり稀なのではないでしょうか。

もちろん政府も危機感を持っており、現在様々な支援策が講じられています。休日も含めて経営全般について相談できる窓口も用意されていますし、小学校等の臨時休業等により、仕事を休まざるをえなくなった方への支援、あるいは新たにテレワークを導入し、又は特別休暇の規定を整備した中小企業事業主に対する助成金なども用意されています。さらに、まさが今が佳境の個人事業主の所得税/消費税の確定申告についても、申告期限の延長だけではなく、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な場合には、納税そのものの猶予制度も用意されています。

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様々な支援策があるが故に全体を把握しにくい状況ですが、弥生ではこれらの情報を可能な限り網羅したページを作成し、公開しています。手遅れになる前に、まずはどんな可能性があるのか、一度ご確認頂ければと思います。弥生では今後も情報収集を続け、情報をアップデートしていきます。

弥生も情報発信を続けていきますが、事業者それぞれの個別の事情を踏まえ、最適な方策を一緒に考えてくれるのが、会計事務所です。備えは早めに。顧問の会計事務所にも早めに相談することをお勧めします。
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2020年03月02日

経済を回し続けよう

先週末は越後湯沢までスキーに行ってきました。毎年泊っているお気に入りの定宿でのんびり、ランチは毎年楽しみにしているイタリアン(つまりスキー自体は二の次ということです、笑)。我が家にとっては恒例行事です。

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ただ、今回は明らかに空いています。ゲレンデはガラガラとは言いませんが、快適と言える程度の人出。往復は新幹線で、特に帰りは毎年満席になるのですが、今回はかなり空席が目立ちました。今年は雪不足という事情もあり、確かに例年と比べると雪は明らかに少ない(それでも気持ちよく滑れるコンディションでしたが)。しかし足元で影響が大きいのは、新型コロナウイルスのようです。政府により学校の休校要請がされる状況とあって、外出を避ける影響が出ているようです。

先週には、これもひいきの神田のイタリアンにお邪魔したのですが、予約のキャンセルが多く出ており、目に見えて数字が悪化しているとのこと。累計で100人近いキャンセルが出ているそうですから、それは影響が出ますよね。念のためですが、このお店の味もサービスもこれまでと全く変わらず、私自身はゆっくりと美味しいものを堪能させてもらいました。

こういった現象は、東日本大震災の時もありました。計画停電もあり、ガソリンや日常物資の供給も十分でない中で、とにかくモノを買い込んで家に籠る。皆不安でしたし、何よりも余震の懸念もありましたから、これ自体否定される話ではありません。今回も、自分の感染を防ぐため、また感染の急拡大を防ぐためにも、不要不急な外出は控えるべき、ということを否定するつもりはありません。

ただ、皆がその方向に走ってしまえば、別の生き物が存亡の危機に立たされます。それは、全国津々浦々の事業者の皆さんであり、ひいていえば日本経済。この勢いで日本全体が自粛モード一色になれば、日本の経済が止まってしまうという危機感を持っています。

だからと言って、何も考えずに外に出て、好きなように振る舞えという訳ではありません。新型コロナウイルス感染による致死率は高齢者や基礎疾患のある方で明確に高い傾向がありますから、こういった方や同居の家族は可能な範囲で外出を控えるべきだと思います。また、現時点で最も怖いのは、治療を要する感染症患者が急増することによって、医療システムが維持できなくなることですから、誰であっても、新型コロナウイルスに限らず、普通の風邪やインフルエンザも含めて、感染しないように十分な注意が必要です。

あくまでその上で、ですが、むしろ意識して外に出て、積極的にお金を使うことも必要なのではないでしょうか。大人数での宴会では、どうしても距離が狭くなるのでリスクが高いのであれば、この機会に少人数でゆったり、じっくりと話しましょう。

一方、事業者としても、この荒波がいつ終わるのかは見通せない中で、波風が過ぎるのをただ待つだけではなく、生き残りに向けて、しっかりと備えましょう。可能な範囲で手元資金を厚めに維持しましょう。今すぐに借り入れる必要はなくても、必要な時に、どこから借り入れできるか、準備はしておきましょう。

既に国からも資金繰り支援策が発表されています。国による支援策は、こちらの経済産業省がまとめているページが参考になると思います。
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2020年01月28日

ついにゲット!

昨日1/27朝に自転車で(寒かった…)地元の神奈川区役所へ。予約は9:30だったのですが、気合が入っていたためか9:20頃には到着。幸いにして、9:30まで待たずともすぐに受付してもらえました。これはすぐに終わるかも、と淡い期待を抱いたものの、持参した書類(交付通知書と通知カード)の確認と本人確認後はしばらく待つことに。それなりに待った後に暗証番号(パスワード)の設定作業を行い、ようやくマイナンバーカードを手にすることができました。

暗証番号は、タッチパネルを使い、自分で入力します。マイナンバーカードに設定される暗証番号は、(1)署名用電子証明書/(2)利用者証明用電子証明書/(3)住民基本台帳用/(4)券面事項入力補助用の4種類。(1)署名用電子証明書の暗証番号は、「インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用します」ということで、代表例がe-Taxです。(2)利用者証明用電子証明書の暗証番号は「インターネットサイトやキオスク端末等にログイン等をする際に利用します」ということで、代表例で言えばマイナポータルにログインする際に利用するようです。では、(3)/(4)はというと…、正直よくわかりません。

(1)は、「英数字6 文字以上 16 文字以下。英字は大文字のAからZまで、数字は0から9までが利用でき、いずれも1つ以上が必要」となっています。いわゆる一般的なパスワードの様式ですが、英字小文字が使えないのは驚きました。タッチパネルで入力させる際に、大文字と小文字を使い分けるのが難しいという判断なのでしょうか。より強力なパスワードということで、記号など使える文字種を増やす方向にある中で、(ダメとはいいませんが)ちょっとどうなのかな、と思います。

(2)/(3)/(4)は、数字4桁。「同じ暗証番号を設定することもできます」とのことですが、実際に設定する際には、デフォルトでは、同じ番号を使うようになっていましたので、「希望する場合には別々の暗証番号を設定することもできます」という方が正しいように思います。私自身はどうしようかと思ったのですが、(3)/(4)をどういったケースで使うのか見えない中で、別々に設定しても忘れるだけと判断し、今回は三つとも同じ番号としました。

結局マイナンバーカードを受領したのは9:50前。都合30分ぐらいはかかったことになります。政府としては、全国民にマイナンバーカードを持たせたいようですが、肝心な交付がこのスピードだと、皆に行き届くのはいつになるのやら、という感じです。もっとも、交付の際に本人確認がきちんとされることが大前提ですから、とにかく早ければいいということでもないと思いますが。

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ということで、私のマイナンバーカードはこちら。噂の(笑)マイナンバー自体は見えなくする目隠しスリーブに入れて渡されます(マイナンバーは右側(下側)の写真の磁気ストライプの下の灰色目隠しの下に記載されています)。一方で、注意が必要なのは、右側(下側)の写真の左下にある模様。この写真ではマスキングしていますが、実際にはQRコードが印刷されています。このQRコードの正体はマイナンバーそのもの。スマホで読み取ればまさに個人番号そのものですから、調子にのって、そのまま写真を公開しないように気を付ける必要があります。数字のマイナンバーは目隠ししつつ、QRコードは目隠ししない理由はこちらだそうです。うーん、わかったようなわからないような、という感じです。

個人的には、そもそもマイナンバーはIDであって、パスワードではない以上、マイナンバーを隠す必要自体がないと考えています。ただ、立場上あまり無茶をできないので(苦笑)、今回の写真は目隠しした状態です。

計1ヶ月半と長かったマイナンバーカード取得の旅もこれで終わりですが(笑)、実際の旅はこれから。そう、いよいよ確定申告の時期が近付いてきました。既に弥生では、デスクトップアプリは先週に、クラウドアプリは今日から、2019年(令和1年)分の確定申告機能を提供開始しています。来月からは、今回取得したマイナンバーカードを利用して、実際の申告書作成とe-Taxによる電子申告をレポートしてみたいと思います。
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2020年01月24日

通知カードがない!場合

今年の確定申告に向けて、弥生の社内でe-Taxで申告しようというキャンペーンを行っています。あくまでも私が個人的に言っているだけで、何の強制力もありませんが(笑)。取締役のIさんは、やる気はあるようですが、マイナンバーカードの通知カードが見当たらないとのこと。以前本ブログで、「これ(通知カード)が送付されたのが、2015年の秋ごろ。もう4年も前ですから、『あれどこに行ったっけ?』という方も多そうですね」と書きましたが、まさにこのケース。そういえば引越しもありましたから、引越し荷物のどこかに紛れ込んだのでしょうか。

ということで、通知カードがない場合にどうするか、について調べてみました。方法としては二つ。一つ目は、市区町村の窓口で交付申請書を新たに発行してもらう方法。二つ目は、「手書き交付申請書」を使用して申請する方法です。

一つ目ですが、横浜市の場合、住んでいる区の区役所戸籍課窓口に本人または同一世帯の方、本人の代理人が行けば、交付申請書を新たに発行してもらえるようです。この際には、本人確認書類が必要になるとのこと(+代理人の場合には委任状)。この交付申請書には、個別の申請書IDが記載されるため、以前お話ししたようなPC/スマホでの申請や街中の証明写真機での申請が可能になります。

二つ目の手書き交付申請書は、こちらからダウンロードすることができます(PDF)。

[注意喚起] ただ、本ブログのように個人で運営しているブログ等で、直接PDFファイルなどにリンクされているものをそのまま使うのは、一般的に言って危険です。悪意を持ったブログ運営者が不正なPDFファイルに誘導する可能性もありますし、ブログ運営者には悪意がなくても、第三者によってPDFファイルが置き換えられている可能性もゼロではありません。例えば、今回のPDFファイルで言えば、申請書送り先を偽の住所に置き換えて、個人情報を詐取する可能性もあります。このようなケースでは自分で「マイナンバーカード 手書き交付申請書」などと検索し、素性が明らかになっている正規のサイトからダウンロードすることが望ましいです。

この手書き交付申請書を見ればわかりますが、この申請書を埋めるためには、肝心のマイナンバー(個人番号)を記載する必要があります。でもマイナンバーが…、通知カードがないとわからない…、となりそうですが、大丈夫。自分のマイナンバーを知りたいという場合に、住民票(の写し)をマイナンバー記載入りで発行してもらうことです。ただし、住民票には何も指定しなければマイナンバーは記載されませんので、マイナンバーの記載をリクエストする必要があります。

まあ、正直どちらにしても面倒くさいですね。とりあえず今週末通知カードの発掘を試みて、ダメだったら上記のいずれかではどうでしょうか > Iさん。
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2020年01月22日

中小企業の財務改善ノウハウ

本ブログでもご紹介した「借入は減らすな!」「その節税が会社を殺す」を執筆された松波先生が「税理士が知っておきたい中小企業の財務改善ノウハウ」という新著を出されました。これまでの二冊はキャッチーなタイトルでしたが、今回は、地味と言えば地味な(失礼!)タイトル。今回は、資金調達相談士協会の先生方の共著で、松波先生は編著および監修ということから、これまでとは少しトーンが異なるようです。

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明確に異なるのは、想定する読者。これまでは経営者に向けた内容でしたが、今回は、「税理士が知っておきたい」というリードが示すように、会計事務所向け。実際に内容は、難しいとは言いませんが、結構ディープです。

本書の前半は、顧問先の意思決定をどうサポートするかにフォーカスしています。前半でそうそうと頷くのは、「経営者としては、『経営判断に使うため』の財務諸表を作ってほしい」というくだり。経営者にとって、財務諸表は手段に過ぎません。目的は事業をすること、そのために経営判断をすること。本書では、経営者の意思決定に使える月次試算表作成の具体的なノウハウが語られています。

経営者の意思決定に使えるためには、実態を正確に反映している必要があります。実態をいかに正確に反映するか。よくありがちな誤解としては、実態を表すために勘定科目を細かく設定すること。例えば、新聞図書費ではなく、新聞は新聞費、本は書籍費にわける。そうすると確かに厳格ではありますが、費用の性格としてあまり変わりませんから、正直意味がありません。一方で、一般的な交通費と通勤費はどうか。後者は実質的に人件費ですから、これは分ける意味があります。本書では必要以上に勘定科目を増やさないことを説きます。むしろ大事なのは、継続性をもって、同様な経費が同じ勘定科目で計上されること。

実態を正確に反映するという観点で本書が一番拘っているのは、売上とそれに対する費用を月次ベースでしっかりと対応させるというところでしょう。当たり前といえば、当たり前の話ではありますが、本書では減価償却費も月次ベースで計上すべきと説きます。設備負担が重くない業種については、そこまでやる必要はないようにも思いますが、確かに設備負担が重い製造業において、月次ベースで収益状況を可能な限り正確に実態を把握するとなると、その意味があるのではないかと思います。

また、会計基準より意思決定を優先しようというくだりは、会計の原理主義的な方からすると眉をひそめそうな気もしますが(笑)、会計は何のためなのかを考えれば、合理的な判断だと感じます。

実態を正確に反映した財務諸表だからこそ、経営者の意思決定にも使えるし、金融機関への交渉にも活用できます。本書の後半は資金調達をどうサポートするかにフォーカスしています。資金調達のサポートは、資金調達相談士協会が得意とするところですし、松波先生の十八番とも言える領域。そういった意味では、特に後半は、これまでの二冊を踏まえ、さらに内容を実務的に、具体的にしたものと言えます。

本書は、広く会計事務所の方におススメしたいと思います。ここまで経営者のニーズにしっかりと向き合ってより高い付加価値を提供する会計事務所が増えれば、より健全な、もっと言えば生き残れる事業者はもっと増えるはずです。ただ、あえて言えば、これだけの付加価値を提供するには、手間もかかります。ですから、薄利多売ではなく、付加価値に見合う対価をしっかりいただく(逆にそれができないお客さまはお断りする)という経営判断がなければ成り立たないとも思います。

本書は一般の法人の経理担当者にもおススメしたいと思います。会計業務が徐々にではありますが自動化する中で、経理担当者の仕事はなくなるのか。そんなことはありません。社長の右腕として資金繰りを、もっと言えば事業そのものを支えていく。そのヒントが本書には詰まっているように感じます。
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2019年12月20日

FACTFULNESS(その2)

前回FACTFULNESSという本についてお話ししました。

人はもともと自分の見たいものを見てしまいます。良いはずだ、良くあって欲しいという思いが強ければ、あるデータ群を見ても、良い部分だけが見えてしまうし、逆に、状況が悪いのでないかという不安が強ければ、悪い部分が目立ってしまう(昔話で言えば、柳もお化けに見えてしまう)。要は自分自分のフィルターを通して物事を見ているということです。

今回、本書を通じて、人間は悪いものや怖いものを見てしまう傾向が強いということを再認識しました。本書で言うところのNegativity InstinctやFear Instinctです。特にFear Instinctは人間の進化の過程を考えると、ある意味自然とも言えるものです。怖いと感じ、それを避けてきたからこそ生き延びることができた。これらのフィルターが組み合わさることによって、世界は全体として大きく改善してきているにも関わらず、それが正しく認識されていない。それが明瞭に出るのが、冒頭の12問に対するあまりに低い正答率です。

もちろん、全てにおいて改善している訳ではないし、世界に問題はまだまだ残っています。ただ、正しく課題をとらえ、最適な打ち手を講じるためには、良い面も悪い面も可能な限り正しく把握する必要があります。

重要なのは、フィルターや罠の存在を意識し、冷徹に数字を見極めるということ。一方で、この本が素晴らしいのは、数字だけでもダメだと言い切っていること。なぜならば、数字自体が誤っている可能性も否定できないから。本書(原書)P191で著者は、以下のように語っています。

I don't love numbers.  I am a huge, huge fan of data, but I don't love it.  It has its limits.
(私は数字を愛してはいない。私はデータの大、大、大ファンだけれども、盲目的に愛することはない。なぜならば、データには自ずと限界があるから。)

この後に続く、かつてのモザンビークの大統領、Pascoal Mocumbi氏のエピソード - GDPの数字は見てはいるけれども、必ずしも正確ではない、その代わりに年に一回行われるパレードで皆が何を履いているか、そして国中を回る中で、建築がどのように進んでいるかを注視している - は非常に示唆に富みます。

数値(統計)が必ずしも正確ではないのは、発展途上国ではよくあること。現場をしっかりと見る方が、よほど正しい状況を把握できるかもしれない(もちろん、一部だけを見て全部同じと思わないといった注意は必要です)。現代のビジネスにおいても、希望する全ての数字が入手できるわけではありません。そんな中では、数字を妄信するのではなく、まず何らかの方法(多くの場合は現場を見ること)によって、現実を理解するように努めることが必要です。

The world cannot be understood without numbers, and it cannot be understood with numbers alone.  Love numbers for what they tell you about real lives.
(世界は数字なしには正確に理解することはできないし、数字だけで正確に理解することもできない。数字が現実の人生を正しく語っていることを愛そう。)

ビジネスという観点でも様々な学びがありますし、世界を正しく理解し、自らと周囲の人生をより良い方向に向けるためにもとても有益な本だと思います。
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2019年12月18日

FACTFULNESS(その1)

オーストラリアへの出発前の成田空港の書店で、ふと手にとったのが、「FACTFULNESS」という本。日本でも今年前半に話題になりました。軽い気持ちで買ったのですが、読んでみると、なるほど話題になるだけのいい本です。

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読み始めると、最初に12(+1)問の質問に答えることになります。例えば、「世界中の低所得国において、小学校を卒業する女の子の割合は?」という質問。選択肢はA: 20%、B: 40%、C: 60%。世界中で同じ質問をしたところ、国によって正答率にバラつきが見られるものの、どの国でも正答率が極めて低かったそうです。平均すると12問中2問のみ正解。回答は3択ですから、ランダムに答えれば正答率は33.3%のはず。つまり、人間はランダムに選ぶであろうチンパンジーにも劣っているということになります。人間はたまたま間違えているのではなく、何らかの構造的な要因で間違えている。

本書では、人間が構造的に間違える理由を、人間が無意識に持っている10種類の傾向で解説します。例えば、こちらは先進国、あちらは後進国のように、物事を二分して考えがちなGap Instinct、良いことより、悪いことの方に目が行ってしまうNegativity Instinctなど。

詳しくは是非本書を読んでいただきたいのですが、日頃から自分が考えていること、気を付けていることが実例をもって明確に、かつ平易に語られており、そうそう、と頷くポイントが多々ありました。例えば、グラフの縦軸の罠や平均値の罠。例えば、本書(原書)P40には、アメリカでSATという(日本で言えばセンター試験のような)テストを受けた男女の数学の平均値をプロットした図が示されています。1965年からずっと、男性の方が女性を明らかに上回っています。このグラフをもって、男性の方が女性よりも数学が得意だ、という結論が導けそうです。ただ、よく見てみると、このグラフの縦軸は0スタートではないため、差が極端に強調されています。絶対的な数値で言えば、直近の2016年の数値で男性が527、女性が496ですから、その差は約6%に過ぎません。ですから、男性の方が女性よりも数学が得意だという、二分化をしたがるGap Instinctによって生まれがちな一般化には無理があることがわかります。

とはいえ、平均値で男性は527、女性が496という差があるのは事実。ただ、この2016年の得点の分布を男女別にプロットしてみる(P41)と、面白い真実が見えてきます。男性と女性の分布はほとんど重なり合っていますが、女性の方が約500点を中心としたきれいな釣鐘カーブになっているのに対し、男性は600点から800点を取る優秀層の存在により、若干ですが、右側に偏ったカーブになっています。結果的に単純に平均を出せば男性の方が女性を上回る訳ですが、実際には標準的な人で言えば、男性も女性もほとんど変わらないということになります。平均値は分布を示さないという平均値の罠の一つの例と言えるかと思います。

身近な(?)平均値の罠の実例と言えば、アルトアの融資実績。アルトアが融資する際の平均金利は実績として約8%なのですが、実は8%台の方はあまり多くありません。アルトアの金利は会計データをAIで分析して得られたスコアによって決まりますが、実際の分布で見てみると、4~5%を中心とした一山、そして10%前後を中心としたよりなだらかな一山で構成された非対称のフタコブラクダになっているのです。物事の分散はだいたい釣鐘カーブになっており、平均付近が一番多いという思い込みも、人間が構造的に間違える要因の一つでしょう。

ちなみに、グラフの縦軸の罠は本ブログのこちらで、あまり突っ込んで書けてはいませんが、平均値の罠については、こちらで少し触れています。
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2019年12月04日

電子化からデジタル化へ

今日午前中に、ヤヨイヒロバでとある勉強会の第一回目を開催しました。まだその具体的な内容やメンバーについてはお話しできないのですが、驚くほど充実したメンバーです。この業界に多少は知見はある人が聞けば100人が100人驚くであろう豪華な顔ぶれ。正直、自分でもよくここまでの方々に参加していただくことができたな、と感動しています(笑)。

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税の電子申告(e-Tax)が始まったのが、2004年のこと。もう15年以上経過したことになりますが、電子申告は着実に普及しています。また社会保険の手続きなども、電子申請が徐々に広がりつつあります。

ただ、これらはあくまでも電子化であり、デジタル化ではありません。ん、電子化とデジタル化って、何が違うんだ、と思いますよね。現時点ではあくまでも個人的な定義なのですが、電子化というのは、あくまでも紙を電子化するということ。その前提となる業務は、紙が前提になったままです。つまり業務のあり方は変えずに、媒体だけを電子データにしたのが電子化。一方で、業務のあり方自体も見直すのがデジタル化と定義しています。

昨今事業のDX、デジタルトランスフォーメーションの必要性が叫ばれています。ご承知の方も多いと思いますが、これはもっとITを活用しましょう、や、Webで商品を売りましょう(どちらも手段が変わっただけ)といった単純な話ではありません。デジタルを前提とし、組織や業務のあり方、もっと言えば事業のあり方まで変えていこうというのがDXです。電子化≠デジタル化、という考え方にも相通じるものがあるのではないでしょうか。もっとも、DXという用語もややバズワード的でこの先が心配ではありますが(笑)。

弥生が事業者のお手伝いをしている確定申告や年末調整、あるいは社会保険の手続き。これらは全て昭和の時代の仕組みです。あくまでも紙を前提とした仕組み。それこそ当初はコンピュータを使うこともできなかった時代の仕組みです。確かにこれらの業務の電子化は進んできましたが、デジタル化は進んでいません。

そんな問題意識を色々な方にお話ししたところ、官民を問わず賛同していただく方が多く、今回、皆で何ができるかを考えようという勉強会が立ち上がりました。極めて大きなテーマですし、短期的に成果が出るとも思っていませんが、一歩ずつ前に進めていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:36 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年11月22日

会計事務所の生産性

今週水曜日は福岡でPAPカンファレンスの千秋楽。10/16の仙台を皮切りに、ちょうど5週間で仙台、札幌、東京、大阪、名古屋、広島、福岡の7会場で開催。その合間にオーストラリアへの出張もあり、また新製品の発表会もあり、なかなか慌ただしい一ヶ月ちょっとでした。体調を崩すこともなく、また、今回は全会場(+オーストラリア+製品発表日)とも天気に恵まれ、雨男疑惑が晴れた(?)ことが何気に一番嬉しいかもしれません。

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今回のPAPカンファレンスのテーマは会計事務所の生産性。このテーマの第一人者ということで、名南経営コンサルティング亀井さんに基調講演をお願いしました。結果的に亀井さんにもこの強行軍にお付き合いいただいてしまったことになり、感謝、感謝です。

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会計事務所は基本的にはサービス業ということで、製造業と異なり、生産性という概念が馴染まないようにも思えますが、実際には、サービス業でも生産性の考えは非常に重要です。生産性は、何かを生産する時の効率性を意味しますから、「生産性 =  成果 / 投入リソース」と表現することができます。ただ、この式のままでは直接的に働きかけることが難しいので、

生産性 = (有効時間 / 労働時間) × (付加価値 / 有効時間)

と分解します。こうすると、時間効率と(生産した付加価値をそれによって得られる対価で表すとして)時間単価の二つの要素があることがわかります。ここまでは一般的な話ですが、亀井さんのお話しが実践的だと感じたのは、ここから。

まず時間効率ですが、亀井さんによれば、会計事務所は一般的に稼働率(有効時間の割合)は十分に高いのだそうです。ただ一方で、過去の成果を処理する時間や何の成果も生まない時間に(ある意味で無駄に)費やされている時間も多いとのこと。稼働率を無理に上げようとするよりは、無駄な時間を削減し、その分、将来につながるいわば投資の時間に充てるべきとのことでした。

時間単価については、目安とすべき時間単価をはっきりと述べられていました。この目安を下回っているようであれば、目安まで引き上げる努力をすべきとのこと。上記のように、時間単価は、付加価値を表す対価 / 有効時間という割り算で示されますから、時間単価を上げるためには、分母を下げる、もしくは、分子を上げる必要があります。つまり、同じ付加価値を生むために必要とされる時間を削減する、もしくは、付加価値に対して得られる対価を引き上げる努力をする(もちろん両方もあり)。

何にどう時間を割いているという現状把握をどう進めるのか、また現状把握を踏まえ、分母の低減や分子の増加などをどのような順番でどのように進めるのか、これまで数多くの会計事務所と向き合ってきたからこそ得られる実践的なノウハウがみっちりと詰まった一時間でした。個人的には、最初から完璧を求めないといった点は特にうんうんと頷けるところでした。

残念ながら今回PAPカンファレンスに参加できなかったという場合には、こちらの本でじっくり語られていますので、是非どうぞ。

実際には、会計事務所の価値のあり方は多様ですし、付加価値の定義も様々だと思います。そういった意味で、今回のお話が全ての会計事務所に全く同じように適合するとは言えません。ただ、実践の方法は様々だとしても、生産性を考えることは必要ですし、その一つのフレームワークとしては非常に参考になるのではないかと思います。
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2019年11月06日

システムトラブル

先週前半はオーストラリア出張でした。月曜日はシドニー、火曜日と水曜日はメルボルン。シドニーでは、中心部から30分ほど離れた郊外での打合せのため、空港でレンタカーを借ります。今回は、朝7時前に到着。入国審査/荷物のピックアップを経て、8時前にはレンタカーの事務所へ。まだ朝早いので、他にはお客さまはいません。ラッキー。

レンタカー会社の会員になっているので、免許証の確認など最低限のやり取りですぐに出発できるはずなのですが、今回は様子が普段と異なります。どうも話を聞いてみると、システムがダウンしているとのこと。こんな時のために、という訳ではないのですが、予約情報を印刷して持参しているため、それを見せると、クルマ自体は用意できている模様。ただ、借り出しの手続きを紙で行う必要があるとのこと。

見ていると、こちらの予約情報を参照しながら、所定の用紙に手で記入していきます。それなりの時間をかけて手書きで書類が出来上がったところで、こちらが確認してサインして手続きは完了。30分はかかったでしょうか。国際線ターミナル、かつ、まだ朝比較的早めの時間ですので、待ちもなく、何とか支障のない時間で手続きを済ませることができましたが、これがピークの時間だったらと思うと、ぞっとします。

ただ、このようなシステムトラブルは決して珍しくはない模様。係員は大変なんだよ、とぼやきつつ、それなりに慣れた感じでしたし、実際に、こんな時のために紙が用意され、それで実際に処理ができていました。

その時に思い出したのが、昨年のオーストラリア出張。深夜便での帰国だったので、街中で夕食を済ませ、夜10時ぐらいに空港に向かおうとした時のこと。タクシーをつかまえると、カードが使えず現金払いになるがいいか、と確認されました。何でもカードの処理センターが止まっているとのこと。そういえば、食事の際にもカードが使えないと言われ、慌ててATMで現金を下ろしたのですが、同じ原因だったようです。

ITが生活のあらゆる面を支えている中で、システムトラブルが与える影響は格段に広がりつつあります。ただ、私自身はシステムを提供する側だからこそ、システムを問題なく運営することの大事さは十分に理解しつつ、そこに完璧さを求めるべきでもないと考えています。なぜならば、完璧さを求めることは、コストの圧倒的な増加につながるからです。コストを2倍投入して、信頼性が2倍に向上するのであれば、それは合理性がありますし、やるべきこと。一方で、信頼性99.9%から信頼性99.99%、さらには99.999%に向上させようとすると、コストは爆発的に増加します。

どれだけのコストをかけて、どこまでの信頼性を要求すべきかは、用途によって異なります。つまり、これが常に正しいという絶対解はありません。ただ、いずれにせよ100%はありえません。そうであれば、やみくもにコストをかけて極限まで100%に近付けることを目指すよりも、100%でないことを前提にバックアップの策を用意したほうが合理的なのではないかと考えています。

この話には余談があります。今回の最終日も深夜便での帰国ということで、やはり10時頃にタクシーで空港へ。今回は、カードも無事使えたのですが、いざ空港に着いてみると、見たこともないような行列になっています。

話を聞くと入出国審査のシステムが全面的にダウンしており、チェックインの手続きができないとのこと。それでもあるところから行列が進み始めました。自分がカウンターにたどり着いたところで聞いたところ、システムでの審査をやめ(システムを切り離し)、人手での確認プロセスに切り替えたとのこと。結果的にいつもよりはだいぶ並ぶ時間は長かったのですが、無事に搭乗することができ、フライトもほぼ予定通りの時間での出発となりました。

もちろんシステムにトラブルがないのが一番。私たち自身も、システムを提供する立場として、トラブルがないように万全を期しています。ただ、100%はあり得ない中で、それでもどれだけコストをかけてでも100%を目指すのか、あるいは、いざという時の代替を考えるのか。日本は100%に拘る傾向が強いと思いますし、それも頭から否定されることではないと思います。一方で、オーストラリアの、問題はあるもの、問題があれば代替手段、という割り切りも一つの考え方なのではないでしょうか。
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2019年08月21日

キャッシュレス・消費者還元事業

消費税率の10%への引上げと軽減税率への準備を進めなければならないと書きましたが、ひとまず優先していただきたいのが、キャッシュレス・消費者還元事業への登録です。これは、2019年10月から2020年6月までの期間、本事業に登録済みの中小・小規模事業者で商品・サービスをキャッシュレスで購入すると、基本的に5%分のポイントが還元されるというものです。

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ここでいうキャッシュレスとは、最近はやり(というよりもバブルな気もしますが)のQRコード決済ももちろん含まれますが、クレジットカードやSuicaなどの電子マネーでの支払いも含まれます。

誤解されることがありますが、この事業は軽減税率に対する対策事業ではなく、消費税率10%への引上げによる景気悪化を防ぐための施策なので、ポイント還元となる商品・サービスは多岐にわたります(軽減税率のように飲食料品に限られるわけではありません)。7月末で既に登録が済んでいる事業者のリストが公開されていますが、この手の施策への感度が高いのか、いわゆる電気店が多いように見受けられます。もちろん電気店に限られるということではなく、一般的な小売店から飲食店、サービス業までが対象となりえます。

なかには、会計事務所で本事業への登録を済ませたという事例もあるようです(笑)。会計事務所は一般的に毎月の顧問契約で、支払いは口座引落しが多いかと思いますが、場合によってスポットでのコンサル契約の支払いをキャッシュレスとすれば、ポイント還元もありえることになりますね。

ただ、注意が必要なのがポイント還元を受けるためには、事業者側での事前の登録が必要となるということ。実は10月から対象となるためには、7月末までに登録を、と呼びかけられていました。これからの登録で10月に間に合うかどうかはわかりませんが、おそらくこれから駆け込み的に登録が増えるでしょうし、そうなれば登録がずるずると遅れる可能性もありますので、一日も早く登録を済ませてしまうことをお勧めします。

残念ながらこの制度が限られた準備期間の中で進めてられていることもあり、何をどうすればいいのか、情報は十分とは言えません。事業者向けのWebサイトがこちらですが、まだ「よくあるお問い合わせ」も公開されていません。問い合わせ窓口も用意されているようですが、いずれにせよ登録自体は利用している決済事業者を通じてになるということですので、直接決済事業者に問い合わせをするのが手っ取り早いのではないかと思います。対象となる中小・小規模事業者の定義、また還元対象となる商品・サービスに関しても注意が必要なので、ひとまず決済事業者に問い合わせてみることをお勧めします。

現時点でクレジットカード等の支払いを受け付けていない場合は、PaypayやLINE Payなど、この機会に自分でも使ってみてもいいかなと思える決済方法についてまずは調べてみると良いのではないでしょうか。

情報不足は消費者向けも同じで、5%還元というのがクレジットカード利用でこれまで得られていたポイント(ですとかマイル)とは別に5%となるのか、あるいは、それらも込みでの5%となるのか、判然としません。おそらく走りながら色々と明らかになってくるのだと思いますが、この還元事業が期間限定だけに混乱が収束した頃には還元も終わりとならないか少々心配です。
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2019年06月26日

会社は株主のもの?

会社は誰のものか。ビジネススクールで当然のこととして教え込まれるのは、「会社は株主のものである」。ただ、これは日本人としてはすんなりとは受け入れがたい部分があります。会社は株主のための金儲けの道具なのか、あるいは、会社はお客さまに価値を提供し、ひいては社会に価値を提供するための公器なのか。さらに日本の場合には、従業員という疑似的家族、多くが従業員出身である経営者も含めて「自分たち」のものであるという意識も強いかと思います。

それでも資本主義の原理からは、会社は株主のものであるということを明確にした、という意味で今回のLIXILの株主総会は大きな転換点になるような気がします。会社の舵取りを担う取締役は株主が選任する。教科書的には当たり前のことですが、日本においてはこれまでほとんどの場合、会社側(現経営陣)が選定した取締役候補を株主総会で当たり前のように追認することが多かったのも事実。それが、今回のLIXILの株主総会では、会社側(創業家主導)と前経営者(瀬戸さん)それぞれが取締役候補を提案し、その一人ひとりを株主が選ぶということになりました。結果的に瀬戸さん陣営が取締役会の過半を占め、瀬戸さんがCEOに復帰するという劇的な結果となりました。

ただ、会社は100%株主のものかと言い切れるかというと、私はそう単純ではないと思っています。会社はある意味においてはお客さまのものでもあるし、また、従業員のものでもある。これらは矛盾する概念ではなく、むしろこれらを同時に成立させるからこそ、良い会社として存在しうるのだと思います。従業員がオーナーシップを持ち、「自分の会社」という誇りと愛着を持つからこそ、良い製品やサービスを提供できる。お客さまがそれら製品やサービスを良いものだと判断し、利用していただけるからお金をいただくことができる。そしてお客さまにお金をお支払いただくことによって、売上と利益が生まれ、結果的に株価や配当という形で株主に還元することができる。これらは全てつながっています。

そういった意味で、今回の一連の騒動は、資本市場の原理として、株主が一義的には会社のオーナーであるということを明確に示せたという意味では意義がありますが、一方でLIXILの今後という意味では、大きなダメージが残っているのではないでしょうか。この8ヶ月間の騒動は、お客さまからの信頼、あるいは従業員の誇りや愛着という意味では極めて大きなダメージだと思います。株価や配当という形で株主に報いるだけでなく、(むしろそのためにも)従業員の誇りや愛着、そしてお客さまからの信頼をどう取り戻すのか。課題は多いと思いますが、プロ経営者が本当の意味で企業を変革に導き結果を残したという良い事例となるよう、是非頑張っていただきたいと思っています。
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