2018年08月28日

サマータイム (その2)

昨今導入の是非の議論が活発化しているサマータイムについて、前回は、ITの観点からは東京オリンピックに向けてという時間軸での導入は現実的ではないとお話ししました。弥生が提供しているアプリケーションは、内部的には絶対時間(UTCに変換できるシステム時刻)で管理されており、理論的にはサマータイムが導入されても動作するはずです。ただし、本当に理論通り動作するかはまた別の話。例えば弥生給与はタイムカードの仕組みと連動することができますが、サマータイムの終わりで時間を1時間戻すタイミングで退勤した場合、打刻された退勤時間は1時間進んだ時間なのか、1時間戻った時間なのか、どうやって判断するのか。外部の仕組みとも連動しながら、想定される通り動作するかは全て検証が必要ですし、それだけでも相当な工数が見込まれます。

もう一つのオプションとして、サマータイムは導入せずに、始業時間/終業時間などを皆一斉にずらす、というのもありでしょうか。例えば、4月から9月は、会社の始業時間は9時から8時に、店舗の開店時間は10時から9時にずらすなど。ただ、皆一斉にずらすとなると、法律で義務付けでもしない限り、難しそうです。もっとも、学校の登校時間は法律で決めることができるかもしれませんが、会社の始業時間や店舗の開店時間は本来自由に決められるはずですから、法律で義務付けることが妥当なのかどうか。

仮に皆で一斉にずらすとしても、今度は表示の問題があります。会社の始業時間はともかく、店舗の開店時間/閉店時間は店舗に表示されているのが普通ですから、これを全て書き換える。また、当然通勤のための公共交通機関も、9時に向けて本数を最大化するのではなく、8時に向けて本数を最大化しなければなりません。ダイヤとしては1時間単純にずらすとしても、時刻表などは全て書き換えになります。こう考えてみると、うーん、やはりあまり現実的ではありませんね。

東京オリンピックの暑さ対策という観点で残されたオプションは、競技の時間をずらすこと。それであれば日常生活への影響はありません。競技開始を朝5時とか、あるいは夜8時のように、日中を避ける。これでも、見る人は見る、というのは先般のサッカーW杯が証明したように思います(笑)。もともと昨今の国際的大会では、放映権の関係で、競技を行う現地の時間よりは、多く放映権を支払う消費地(やはり米国でしょうか)で見やすい時間が優先される傾向にありますから、日本の一般的な時間帯にこだわる必要もないように思います(もっとも、例えば米国で見やすい時間帯ということで、結果的に日本の真昼間になるようでしたら問題ですね)。

ただ、実は私個人としてはサマータイムに賛成です。あくまでも個人として、であって、弥生の社長という立場は反映されていませんが(笑)。それは、Daylight Saving Timeという正式名称が示すように、太陽を有効に活用できるから。太陽が早く上る季節は、早めに起床して、早めに仕事を開始し、そして、まだ太陽があるうちに早めに仕事を終える。私自身の米国での経験では、確かに時間を進める/遅らせるというのは面倒ですし、生活のリズム的にも若干の調整は必要です。ただ、それ以上に、太陽のある時間を有効に活用できるというのは大きなメリット。特に何をするということはなくても、仕事を終えた時/家に帰った時にまだ日があるというだけで、ウキウキします。

もちろん東京オリンピックに向けての実現は到底現実的ではありませんので、東京オリンピックというよりは、その先をにらんで、サマータイム/Daylight Saving Timeの導入の是非が議論されるといいなと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:36 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月24日

サマータイム (その1)

サマータイム導入の議論がにわかに盛り上がっています。きっかけはあと2年に迫った東京オリンピック。確かに普通に生活するだけでもバテバテなのに、この暑さの中で限界まで運動することには危険性すら感じます。

全体的な反応としては、やはり反対論が多いようですね。もっとも多くは時間をある時1時間進める/戻すなんてやったこともないし大変そうという、変わることに対する抵抗感のようにも見えます。一方で、IT業界からは切実な反対論が出ています。サマータイムへの切り替え時に時間を1時間進めることで、存在しない時間ができ、また、サマータイム終了時に1時間戻すことで同じ時間が生まれてしまいます。前者はまだ何とかなりますが、問題は後者です。時刻はトランザクションの前後関係の管理に使われますが、サマータイム終了直前の取引と、サマータイム終了直後(時間が1時間戻った後)の取引を単純に時刻で比較すれば、順番が逆転しかねないからです。これはシステムの根幹に関わる大問題です。

とはいえ、海外ではサマータイムは一般的に行われている訳で、もちろんシステム上の解決法は存在します。それは、絶対的な軸を採用すること。時刻で言えば、UTC(協定世界時)を採用することです。もともと米国の場合は一つの国の中で時差があり、LAの午後5時は、NYの午後7時より遅い、つまりローカルタイムを時刻の比較には使えません。ですから、システムの内部的にはUTCという絶対的な時間で管理するようになっています。つまりLAの午後5時(サマータイム)はUTCで翌日の午前0時、NY(サマータイム)の午後7時はUTCで午後11時、ですからUTC同士で比較すれば、LAの午後5時はNYの午後7時より遅いと正しく順番を判定することができます。

ちなみにほとんどのコンピュータの時刻は既にUTCベースになっています。具体的には、内部的にはUTCで管理しており、それを表示する際にローカルタイムに合わせるようになっています(厳密にはUTCそのものではなく、UTCに変換できるシステム時刻で管理しています)。ですから、日本でサマータイムを導入しても、突然PCの動作がおかしくなるということはありません。問題はアプリケーションで、アプリケーションのロジックの中で、ローカルタイムベースでの管理・比較するケースが存在します。

これはある意味元号と西暦の関係に似ています。元号では、昭和30年と平成30年で「30年」が被ってしまいますから、年だけでの前後関係の比較はできません。それが西暦であれば1955年と2018年と前後関係の比較が可能になります。年に関しても、かつては元号で管理しているアプリケーションも存在していましたが、平成になった際に問題が認識され、既に西暦による管理が当然になっています。だからこそ、この先予定される改元は、そこまでの大ごとにはならないのです(以前お話ししたように、出力という観点では改修が必要になりますが、システムの根幹部分にまでは手を入れずに済むようになっています)。

現実問題として、東京オリンピックまでにありとあらゆるアプリケーションをUTCベースの管理にする(既にUTCベースになっているとしても、検証は必要です)というのは不可能でしょう。ですから、残念ながら東京オリンピックに向けてサマータイムを導入するというのは現実的とは思えません。
posted by 岡本浩一郎 at 17:29 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月22日

キャッシュレス in the US

先週は夏休みで米国にいましたが、昨今キャッシュレスの話に関わっていることもあり、キャッシュレス化の状況について観察してきました(命の洗濯と言いつつ、仕事も忘れないのは好きだからでしょうか)。以前もご紹介したキャッシュレス・ビジョンによると、2015年時点での米国のキャッシュレス決済比率は45.0%。これはキャッシュレス化の先頭集団とまでは言えなくとも、同時点で18.4%の日本とは大きな差があります。

2018082201.JPG
(イメージ画像、笑)

今回の観察結果ですが、残念ながら(?)意外にまだまだ現金は活躍しているな、ということ。むろん、日本に比べるとクレジットカード/デビットカードで支払う人が圧倒的に多いのですが、それでも、観察していると、意外に現金で支払っている人もいることがわかります。傾向としてはやはりお歳を召した方が多いように思いますし、また日本と米国で異なる事情としてクレジットカードを作れない人が多いという背景もあるのかもしれません。

夏休みということで日本人の観光客も多かったのですが、やはり(?)現金で支払っている人が多い印象でした。日本でも現金で払っているので、海外でもそのまま現金で、ということでしょうか。私は日本では一定額以上はクレジットカード、それ以下は現金派ですが、海外では可能な限りクレジットカードです。その理由の一つは小銭の扱いが不要になること。日本円は慣れ親しんでいますから、どれが何円というのはパッと分かりますが、米ドルに関しては(2年間住んだ私でも)エーっと、どれが10セント(Dime)だっけと少し考えてしまいます。米ドルもそうですが、海外では25セント(Quarter)など日本と違う単位の硬貨があることも一因でしょうね。クレジットカードでは小銭の扱いが一切不要になりますから、その点ラクです。今回も日本から持参した数十セントの硬貨は結局使わずじまいでした。

一方で、米国の場合は現金がないと困るシーンも確実に存在します。それはチップ。荷物を運んでもらったり、クルマを出してもらったり、部屋を掃除してもらったり(ちなみに、一番チップの金額が大きいのはレストランでの支払い時ですが、これは飲食代と合わせてクレジットカードで支払うことができます)。クレジットカードがありますから$100札はいらなくても、チップのためには$1札がそれなりな枚数常時必要になります。私の場合、ホテルにチェックインする際に一定額を$1札に両替してもらうように心掛けています。

これはキャッシュレス化が進む上でどうなるんでしょうか。チップも例えばQRコードで支払えるようになるのか(ただチップはさりげなくスマートに渡すものなのに、スマートフォンでQRコードをかざすというのもどうかと思いますが)。チップ用のアプリというのも存在するようですが、あまり普及しているようには見受けられません。はたまた、キャッシュレス化の進展とともに、チップという習慣がなくなっていくのか(その分サービス料という形で一律で課金するのもありかと)。

逆に言えるのは、チップという習慣がない分、本来は日本の方がキャッシュレス化が進んでもおかしくはないということですね。短期間で世界最高レベルのキャッシュレス決済比率を目指すというのはあまり現実感はありませんが、米国レベルであれば十分可能なのではないかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:43 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月26日

キャッシュレス化の光と影

キャッシュレス化を推進すべき(ただし課題は大きい)と書いてきましたが、では、私自身のキャッシュレス度はどうかというと、うーん、キャッシュレス化率は50%ぐらいでしょうか。ただ、一定額以上の支払いはほぼキャッシュレス(クレジットカード)なので、金額ベースで言えばキャッシュレス化率80%ぐらいにはなっているのではないかと思います。

そんな私ですが、先日思わぬことで一日間完全キャッシュレス生活を強いられることになりました。急用で出かけることになったのですが、急用過ぎたこともあって、財布を忘れるという失態(念のためですが、普段はそういったことはありません、笑)。持っているのはiPhoneのみ。気が付いたのは家を出て30分後で既に時間的に引き返せない状態。えーい、何とかなるか、と思ってそのまま出かけました。結論的に言えば、(ほぼ)何とかなりました。その気になれば、キャッシュレスで何とかなるものです。むろん、ちゃんとSuicaが使えるよね、と事前に確認したり、普段よりは少し気を使いましたが。

ただ、実は一つだけキャッシュレスでは何ともならないものがありました。冠婚葬祭に関わるものは、キャッシュレスとはいきません(人から借りるはめになりました)。少し前の日経新聞で「キャッシュレス先進国スウェーデンの光と影」という記事がありましたが、記事にもある通り、キャッシュレス化の影の部分にどう対処するかは大きな課題だと感じます。記事中に「長男のクリスマスのお祝いに日本のお年玉のように現金を渡そうと銀行の窓口に現金を引き出しにいったら、現金が不足していて1クローナ紙幣100枚しかおろすことができなかった。日本円にすると約1,300円」とありますが、銀行にそれだけの現金しかないというのは驚きです。既にキャッシュレス化が進んだスウェーデンとまだまだこれからの日本では状況は異なりますが、「やはり現金でないと」という用途があることは事実かと思います。

結果的に誰かを決済のネットワークから排除することにならないか、というのも、キャッシュレス化で慎重に考えるべきポイントです。上述の記事でも、やはりスウェーデンで「90歳になる祖母も困った経験をした。最近、自分の洋服を買おうとしたら、お店で受け付けてもらえず買い物ができなかったのだ」とありますが、これは当然日本でも起こりうる話です。ある意味近い話としては、最近は中国でキャッシュレス化が進んでいるために、中国を訪問する外国人にはむしろ不便になっているということを聞きます。

あまり話題にはなりませんが、障碍者の方にとってキャッシュレスがどのようなインパクトを持つのかも慎重に考えるべきかと思います。コインは大きさと形で識別がつくようになっていますし、あまり意識することはありませんが、紙幣にも識別マークがついています。

もちろん、今のままがいいと言うつもりはありません。そもそも今のように汎用的に利用できる紙幣が日本で普及したのはせいぜい150年前のこと。今の常識は、ここ150年ほどの常識に過ぎません。お年玉やお祝儀の常識も時代と共に変わっていくでしょう。とはいえ、キャッシュレス化の「光」だけではなく、「影」の部分もキチンと認識し、現実的な対処を考えていくべきだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:16 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月24日

キャッシュレス化の方策

前回は、キャッシュレス化の意義はある一方で、実際に推進する上ではカベが存在するとお話ししました。キャッシュレス支払いができるお店でも現金を好むという消費者側のカベと、キャッシュレス支払いを受けられる設備はあるお店でも、実際には現金での支払いを好む店舗側のカベ。なおかつ、これらのカベは一方を崩そうとすると、他方のカベをさらに高くする可能性があると。

例えば、消費者側のインセンティブを増やそうとポイントによる還元を増せば、店舗側の手数料を増やすことにつながり、結果的に、店舗側のカベ(ディスインセンティブ)を増やしかねないというジレンマがある訳です。

このジレンマを解消する、もっと言えば、社会的な仕組みを大転換するためには、やはり国の役割が大きいのではないかと考えています。ヒントは韓国にあります。実は韓国は、世界でも有数の(というよりトップの)キャッシュレス先進国。少し前にもお話ししたように、2015年時点での日本のキャッシュレス決済比率が18.4%なのに対し、韓国は実に89.1%です。キャッシュレス・ビジョンでも解説されていますが、韓国では1999年から2002年というごく短期間のうちに、クレジットカード発行枚数を2.7倍に、そしてクレジットカード利用金額を6.9倍に急拡大させることに成功しました。

その方策は是非キャッシュレス・ビジョン(P14)をご覧いただきたいのですが、個人的に注目しているのが、年間クレジットカード利用額の20%の所得控除を認めるという制度(ただし、上限あり)。何と、クレジットカードで支払うとそのうちの一定額が税金を計算する上での控除対象となる(=節税になる)のです。つまりクレジットカードで支払うことに対して、店舗側に代わって、国がインセンティブを提供している訳です。これであれば、ジレンマに陥らないですよね。

とはいえ、それでは国にとってのメリットは何なのか? 国にとってのメリットがなければ、インセンティブを出す意味がありません。色々な解釈が成り立つと思いますが、この韓国のクレジットカード支払い推進には、1) 消費の活性化、2)脱税の防止という二つの目的があったと言われています。この時期は韓国では通貨危機からの脱出を図っている時期であり、消費を活性化させるためには手段を問わずという状況だったのかもしれません(ただ、この反面、2000年以降家計負債が増え続けていることが韓国経済のリスクとも言われています)。

興味深いのが、脱税の防止という目的です。上述の所得控除を認めるために、クレジットカードで支払いをする度に、それがデータとして国に送信されるという仕組みになっています。つまり、消費者にクレジットカード支払いのインセンティブを提供することによって、一定の税収減は許容しつつ、脱税を防止することによって、全体として税収を増加させようということです。

ちなみに、韓国では2005年には現金領収書という制度が導入され、現金での支払いの際にも売上データは国に送信されるようになっています(この場合も消費者には所得控除というインセンティブがあります)。現金支払いではレバレッジという消費の活性化効果はありませんから、明らかに脱税の防止が目的になっています。

弥生は事業者の味方ですから、単純に事業者の税負担が増えるだけの制度には賛成できませんが、そもそもの話として課税は公正であるべきです。理想的に言えば、売上がデータとして捕捉されることによって公正な課税がなされ、同時に徴税コストが下がるのであれば、それを税額の控除や、もっと言えば税率の引き下げのような形で事業者に還元されるべきだと考えています。

しかし、残念ながら日本の税制は建て増しに終始しがち。ですから、この種の制度が短期間で導入されることは考えにくいでしょう。ただ、人口も減少し、より効率的な社会運営が求められる中で、単純にキャッシュレス決済比率を多少向上させるという発想ではなく、社会的な仕組みを大きく作りかえるぐらいの覚悟が必要なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 16:47 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月20日

キャッシュレス化のカベ

APIの話とキャッシュレスの話を行ったり来たりしていますが、今日はキャッシュレスについて。前回は、キャッシュレス化の意義についてお話ししました。キャッシュレス化の意義の一つは社会的なコストを下げること。そしてもう一つの大きな柱は、キャッシュレス化によって、データを収集し、新たな価値を生み出すこと。

だからこそ、キャッシュレス化を推進すべき。この方向性自体には私は全く異論ありません。ただ、その方法論となると、なかなか一筋縄ではいかないと考えています。よく言われることとして、日本ではクレジットカード(や電子マネー等)が使えないお店が多い、だからキャッシュレス化が進まない。これを打破するために、キャッシュレス支払いを処理する端末(CAT端末など)の導入費用を補助し、お店のクレジットカード等の受け入れを促すべき、といった議論があります。

このロジック自体、必ずしも間違ってはいないと思いますが、それだけで全てが解決するほど単純ではありません。

確かにカード等を使えない店舗の存在がキャッシュレス化へのハードルとなっているのは事実ですが、一方、カード等を使える店舗でも現金を選ぶお客さまが相当に多いという現実を無視するわけにはいきません。代表例が百貨店ですが、一般的に百貨店はクレジットカード支払いができるようになっていますし、種類にはよりますが、電子マネーを利用できることも珍しくはありません。つまり、キャッシュレス・レディー。にもかかわらず、現金で支払う方が多い。その理由は様々でしょう。現金に対する信頼か、拘りか、あるいは、キャッシュレスに対する不安なのか抵抗感なのか、はたまた、単純にこれまでの習慣を変えたくないのか。

これらの消費者側のカベに向き合わないことには、キャッシュレス化が大きく進むことはないでしょう。

同時に、店舗側のカベにも向き合う必要があります。店舗側のカベは、クレジットカード支払いを受けられる店舗であっても、現実には現金払いを好むという事実。よくありますよね。ランチは現金支払いのみとか、このお得なプランは現金払いに限るとか。店舗側の事情もよくわかります。クレジットカードの取扱手数料は一般的に3%前後と言われますが、特に利幅の薄い業態において、決して無視できないコストです。また、資金繰りの面でも現金で払ってもらった方が有利。こういった事情がある中で、単純にCAT端末の導入費用の補助を行っても、CAT端末自体は導入されるかもしれませんが、実際のキャッシュレス支払いは進みません。

今後キャッシュレス化を推進する上では、こういったカベに対する打ち手を積み重ねる必要があります。難しいのは、消費者側のカベに対する打ち手が、結果的に店舗側のカベを高くすることにつながりかねないということ。

消費者側のカベを崩すための一つの打ち手として、ポイントのようなインセンティブを強化することが考えられます。クレジットカード払いであれば、x%分のポイントが溜まるといったような。1%でもチリが積もれば山となるですが、これが例えば5%や10%になれば、クレジットカード払いを選ぶ消費者は確実に増えるでしょう。

しかし、です。これらポイントは何もないところから生まれる訳ではありません。消費者にインセンティブを提供するためには、当然、その原資が必要。そしてその原資は通常、店舗側にかかる手数料から賄われます。つまり、消費者側のインセンティブを増やそうとすれば、店舗側の手数料を増やすことによって、店舗側のカベ(ディスインセンティブ)を増やしかねないというジレンマがある訳です。

逆に店舗側のカベを崩すために手数料を下げようとすれば、当然消費者に提供するインセンティブを削る必要があります。これもまたジレンマ。

キャッシュレス化の意義は確かにありますし、だからこそキャッシュレス化は推進すべき。実際問題として、何もしなかったとしても、キャッシュレス支払の割合はじわじわと増えていくでしょう。ただ、短い時間軸の中でキャッシュレス化を急速に進めようとすると、正直なかなか難しいと感じています。

もっとも、あくまでも個人的に、ですが、策はあると思っています。このジレンマを解消するためには、国の役割が大きいと思っています。CAT端末の導入補助といった小手先ではなく、もっと大きな仕組みが必要だと考えています。その具体策についてはまた改めて。
posted by 岡本浩一郎 at 18:04 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月13日

なぜキャッシュレスなのか

日本は現金社会。逆に言えば、キャッシュレス化が進んでいないと言われます。日本のキャッシュレス決済比率(= キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷国の家計最終消費支出)は2015年で18.4%。お隣の韓国の89.1%は別格としても、イギリスやアメリカなどが50%前後ですから、キャッシュレス化という観点で大きく出遅れていることは事実かと思います。

一方で、この事実自体は、日本の長所を表しています。日本では偽札が問題になることはほとんどありませんし、盗難にあうリスクも諸外国と比べれば圧倒的に低い。そしてATMが全国津々浦々に存在し、いつでも現金を引き出すことができる。他国では、現金に対する信頼が低い、あるいは現金を持ち歩くことがリスクとみなされる、あるいは、現金を入手する手間が大きいといった要因があるからこそ、キャッシュレス決済が進んだという事情があります。つまり日本でキャッシュレス化が進まないのは、現金決済が安心で、利便性が高いから。これ自体はむしろ褒められるべきですよね。

ただ、現金社会であるために、実は社会全体として大きなコストが発生しています。野村総合研究所の試算では、現金支払のインフラを維持するために、社会全体として年間1兆円を超えるコストが発生しています。わかりやすいところでは、現金(紙幣・貨幣)の製造コストですが、これらは650億円に過ぎません。コストが大きくかかっているのは、ATMを設置し、維持・運営するコスト(合計で7,000億円近く)や小売店舗で現金を管理するための人件費(レジ締めなど、5,000億円)。みずほフィナンシャルグループでは、間接的な費用まで含めれば、コストは約8兆円に達すると試算しています。

確かに現金は、便利です。24時間365日、どこでもおろせるし、どこでも使える。しかしそのためには、膨大なコストがかかっているということです。一方で日本の人口は明確に減少を始めており、これまでは意識もされなかった社会的コストが徐々に問題として顕在化してきています。わかりやすいところでいえば、店舗のレジを担当するスタッフを確保することも難しくなってきています。

また、現金決済では、誰がどこでいつ、何にいくら支払ったのかを追跡することが困難です。現金決済ならではの匿名性は、長所といえば長所ですが、誰がどこでいつ、何にいくら支払ったのかをデータとして分析することによって、新しい価値を生み出すという観点からは大きな障壁です。データ分析を通じて、お客さまの行動を可視化することにより、お客さまにより良い商品やサービスを提供する。

しかし、行動が可視化されることに気味の悪さがあるのは事実です。データを入手し、お客さまに新たな価値を提供したいというのは、製品/サービスを提供する側の一方的な想い(いわばサプライヤーズ・ロジック)であり、それをお客さまがどう思うのかは別問題です。お客さまに納得頂くためには、どんなデータがどのように扱われ、それがお客さまにとってどんなメリットにつながるのかをしっかりと示す必要があるでしょう。

つまり、キャッシュレス化の意義の一つは社会的なコストを下げること。そしてもう一つの大きな柱は、キャッシュレス化によって、データを収集し、新たな価値を生み出すこと。とはいえ、現実にキャッシュレス化を進めるためには、まだまだ超えなければいけないカベが複数存在しています。カベの正体とその傾向と対策についてはまた次回に。
posted by 岡本浩一郎 at 23:33 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月11日

キャッシュレス・ビジョン

少し前に「キャッシュレス・ビジョン」の策定にかかわったとお話ししました。もともと昨年の秋から、クレジットカード会社におけるAPIのあり方を検討する「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」の委員として活動してきました。その成果は、クレジットカードデータ利用に係るAPIガイドラインとして4/11に経済産業省から公表されています。

ただ、API(特に金融機関のデータを受け取る参照系API)は、既に完了した取引の結果をデータとして受け取るに過ぎません。もちろんそれはそれで価値はあるのですが、取引そのものがどうあるべきか、もっと視野を広げるべきではないか、という提言があり、検討会のスコープを広げることになりました。APIで取引の結果をデータ(=デジタル)で受け取ることはできても、取引自体(特に小売取引)がお札や小銭での支払い(=アナログ)のままでは、本当の意味での利便性向上や効率化にはなりません。取引のあり方そのものを見直そう、より具体的に言えば、諸外国と比較しても低いキャッシュレス取引の割合をどのように増やしていくかを考えよう、とスコープが飛躍的に広くなったという経緯があります。

結果的に、「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」と、APIの名前が入る検討会でありながらも、実際にはキャッシュレスの推進について議論した時間の方が圧倒的に長かったような気がします(笑)。そしてその成果として作成したのが、やはり4/11に経済産業省から公表されたキャッシュレス・ビジョンという訳です。

そしてこのキャッシュレス・ビジョンを産官学が連携して具現化するために、つい先日、キャッシュレス推進協議会という組織が発足しました。弥生はこの協議会の初期メンバーとして、今後もかかわっていきます。目に見えませんし、それが故になかなか実感できるものではありませんが、日本人が当たり前のように享受している現金という仕組みの維持には、実は膨大な社会的コストがかかっています。社会全体の効率を考える上で、キャッシュレス化は避けて通ることはできません。

もっとも、キャッシュレス化は少し掛け声をかければすんなり進むほど単純ではないとも思っています。私自身、一定額以上の支払いはほとんどクレジットカードですが、少額は逆にほとんど現金です。キャッシュレスの是非については、個人的に色々と思うところがありますが、長くなりますので、またの機会にじっくりとお話ししたいと思います。

また、弥生(とそのお客さま)という観点からは、支払い手段としてのキャッシュレスももちろんなのですが、その結果をデジタルでどう受け取れるようにするのか(電子レシートやカード会社API)を着実に進めていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:35 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年05月23日

新元号は来年4月公表

先週、政府は来年5月1日に切り替わる新元号について、同年4月1日の公表を想定して準備を進めると発表しました。日経では、「新元号公表、改元1カ月前に システム改修対応促す」との見出しで記事となりました。

しかし、この見出しに違和感を感じたのは私だけでないはず。特にIT業界の人は等しく、「エッ?」と思われたのではないでしょうか。半年前に公表するからシステム改修の対応を、であればまだわかりますが、1ヶ月前で、改修せよと言われても。

システムで新元号に対応する範囲は大きく入力系と出力系に分かれます。入力系は、新元号で日付を入力できるようにする対応。出力系は、新元号で帳票等を出力できるようにする対応。一定の条件の下で、入力系の対応は相対的に容易ですし、ある程度見切りで準備を進めることもできます。一定の条件とは、明治以降と同様に、漢字二文字であること、また、頭文字がM(明治)/T(大正)/S(昭和)/H(平成)以外であること。漢字二文字はほぼ間違いないと思っていますが、万が一頭文字が重なったら結構大変です。

より大変なのは出力系。元号表記で出力する帳票一つ一つで対応が必要になります。弥生が提供する製品/サービスでは50以上の帳票で対応が必要になることがわかっています(なおかつ、デスクトップの弥生会計とクラウドの弥生会計 オンラインでは原則としてそれぞれでの対応が必要となります)。これも漢字二文字という前提に立てばある程度の事前準備はできますが、最終的には全帳票、実際に出力して確認し、必要に応じて調整する必要があります。また、元号をそのまま出すのではなく、選択肢から選んで丸で囲むといったような帳票については、新元号の発表だけでなく、新元号対応となった帳票の発表を待つ必要があります。

もともとはカレンダーの印刷が間に合わない等々の理由で、それなりに前倒しで発表されるという見通しもあったのですが、天皇陛下の在位30年記念式典をふまえ、式典(来年2月24日)以降で新元号を公表する検討が進められていました。今回は、「早く公表すると、国民の関心が新天皇に向かい、いまの天皇陛下を軽んじることになりかねない」との指摘があった、ということで、公表時期を可能な限り実際の改元に近づけることになったようです。

元号が単なる年号でなく、象徴的なものであることは異論はありません。「平成」も(それ以前の元号もそうですが)日本としてありたい姿を示す象徴だと考えています。そういった観点では、早めに新元号を公表すべきでないという考え方は理解できます。そもそも昭和天皇が崩御された際には、(当然のことですが)事後での新元号発表となりましたから、事前にわかること自体が異例です。

ただ、これだけIT化が進んだ中(それこそ30年前とは比較になりません)で、システムとして処理すべき対象が明らかにならないのは大きな課題です。いっそのこと、元号は純粋に象徴として位置付け、業務や日常生活で使用する年号はすべて西暦に統一した方がいいのではないでしょうか。以前も書きましたが、弥生としても、官公庁が西暦表示に変えて頂けるのであれば、喜んでそれに対応したいと思います。

象徴と位置付けるのであれば、事前に公表する必要性もないですし、新しい天皇陛下の即位と共に、新たな時代の幕開けを純粋に喜ぶことができると思うのですが。
posted by 岡本浩一郎 at 18:12 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年05月17日

その節税が会社を殺す

以前ご紹介した借入は減らすな!」の松波先生が新著を出されたということで、早速読んでみました。今回のタイトルは、「その節税が会社を殺す」。副題が「お金に強い社長がコッソリやっている節税 & 資金繰りの裏ルール31」、「カネ回りを強くして突然死を防げ」となかなか刺激的です。

2018051701.JPG

本書は、冒頭から「世の『定説』『定番』とされる節税のほぼすべてが無駄、無意味」であり、「むしろ逆効果、経営に悪い影響しかもたらさない」とズバッと核心をついています。実際、よく言われる節税策のほとんどは、課税されるタイミングをずらすだけ。確かに、今期支払う税金は減っても、将来どこかのタイミングで同じような額を税金として支払うのであれば、節税したという自己満足は得られても、実質的な意味はありません。むしろ最悪の場合、どこかで税法が変わり、トータルで見るとむしろ負担増になってしまうケースすらありえます。

世の中で言われる節税策の多くに意味がないこと自体は、実は良識ある税理士の先生方の多くが語られていることです。その仕組みについては、吉澤先生の解説がとてもわかりやすいと思います(こちらとか、こちらとか、こちらとか)。

ただ、意味がない = プラスもマイナスもない、であればまだマシです。私もこの本を読んで改めて気付かされましたが、実際のところは、マイナスの方が大きいというのがこの本で主張です。というのは、手元資金を減らしてしまうから。

本書の冒頭に、よくある節税策である生命保険を活用して1,000万円の利益を圧縮する事例が乗っています。利益が1,000万円あるとすると、これにかかる法人税は約265万円。これに対して、生命保険に入って1,000万円の保険料を支払うと、利益を大きく圧縮することができ(保険料の半額を当期の経費に計上できる保険の場合、利益額は500万円に圧縮)、その分、支払う法人税を大きく減らすことができます。

確かに、当期の節税にはなるでしょう(が、将来的に結局は税金を支払うことになるのは上でお話しした通り)。しかし、本当の問題は、手元資金。利益はそのままで素直に税金を払っていれば、約735万円の資金が手元に残るはずです。一方で、保険に加入した場合には…。そうです、保険料として支払ってしまっているために、手元には1銭も残っていないんですね。

事業が順調に拡大し、手元資金がドンドンと積み上がるような状況であれば問題はないかもしれません。しかし現実には、本書でもたびたび語られているように、実際には、「売上が増えてもお金は増えない」のです。売上を上げるためには、仕入れが必要になったり、あるいは人を増やすことによって人件費が増えたり。そして支出は多くの場合、売上より前に発生します。また、売上が上がっても、すぐに手元資金として回収できる訳ではありません。売掛金として数ヶ月後にようやく回収できる。しかし、その時にさらに売上を上げるために仕入れを行えば、その資金もすぐに消えてしまいます。ですから、どこかで売上を上げることをやめて資金の回収に徹するのでもない限り、売上が増えてもなかなか手元資金は増えないのです。

業績が良い、結構な利益が上がった、よし節税しようとなると、結果的に手元資金を削ってしまうことになる。そこに業績が良いからこその資金ニーズが加わると、余裕があったはずなのに、実際には、資金繰りに四苦八苦することになりかねません。

資金繰りに四苦八苦するようになれば、どうしても短期的や保守的な考え方になってしまう。そして良かったはずの業績がいつの間にか下降線をたどってしまい、資金繰りはますます苦しくなってしまう。

そうならないために、本書は、何よりもまず手元資金に余裕を持たせることの必要性を説いています。目標としては月商の3ヶ月分の手元資金を持つこと。そしてそれだけの手元資金を確保するためにも、銀行からの融資を積極的に活用すべきだ、とも。

本書の後半は、銀行から融資を受ける上で、どのように始め、どのように広げていくかを具体的に説明しています。これは前著の「借入は減らすな!」にも通じる部分ですが、本書では銀行との付き合いの始め方、広げ方をより具体的に説明しています。

ほとんどの事業者は多かれ少なかれ銀行に対し苦手意識を持っています。ただ、相手の行動パターンを理解すれば、付き合い方もわかってきます。事業をする上では、おカネとの付き合いは避けられません。そしてそのおカネとうまく付き合うためには、銀行とうまく付き合っていくことが必要です。節税という言葉が大好きな人、また、銀行に対し苦手意識をお持ちの方にこそ、読んで頂きたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:59 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年03月20日

PROFIT FIRST

会計の考え方では、売上から経費を引いた残りが利益、すなわち、「売上 - 経費 = 利益」。

2018032001.JPG

当たり前のようにも見えますが、この会計原則は、「あなたのビジネスを殺す」とかなりショッキングな表現で始まるのが、この度ダイヤモンド社から出版された「PROFIT FIRST / お金を増やす技術」。従来の会計原則に囚われていると、一にも二にも売上を最大化することに注力してしまう。そして、売上を最大化するためには、費用をどんどんとかけるべき。結果として、利益はあったらラッキーの「残り物」の扱いになってしまう。本来は利益こそ達成すべきものであり、売上はその手段に過ぎないのに。

この本では、「売上 - 利益 = 経費」という式をプロフィットファーストの公式として提示しています。まずは、利益があって、利益を確保した上で使えるのが経費。左辺と右辺の項目を入れ替えているだけなので、数学的にはまちがっていませんが、正直違和感はありますね。ただ、本来達成したいのは利益であるということを考えると、実はこう考えるのが正しいのかもしれません。

実はこのやり方は、決して目新しいものではありません。家計をやり繰りする中で、収入からまず一定額を貯蓄としてより分け、 次に残額を家賃や食費、交際費など用途別に分けて封筒に入れて管理。そして支出はその封筒から行う。封筒分け貯蓄法とでもいうのでしょうか。実践しているかどうかは別として、この方法はよく知られていますよね。ちなみに、このサイトでは家計について書かれていますが、貯蓄したいけどできない人の計算式として、「収入 - 支出 = 貯蓄」、貯蓄に成功している人の計算式として「収入 - 貯蓄 = 支出」と書かれています。これはプロフィットファーストの公式と全く一緒ですね。

そういった意味で、発想として全く新しい訳ではないのですが、これを事業という観点でいかに定着させるかについて実績的なノウハウが詰まっているのが、本書の大きな特徴です。事業規模別に目安となる利益/オーナーの給料/税金の率(そしてこれらを引いて残るのが事業経費の率)を目標配分率(TAPs, Target Allocation Percentages)として示し、現状の配分比率(CAPs, Current Allocation Percentages)からどう段階的にTAPsに近付けるのか、そしてそれを実践するために、複数の銀行口座をどのように活用するのかを具体的に説明しています。

弥生の場合、売上に対し、人件費がどの程度の割合、広告宣伝費がどの程度の割合という目安がはっきりと確立されています。この目安に従って予算を組み、そこから大きくはずれないように運営していれば、確実に決まったレベルの利益は達成できるようになっています。プロフィットファーストの公式通りとは言わないまでも、プロフィットファーストの考え方を結果としてある程度実践できているように思います。

本書では、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というパーキンソンの第2の法則がたびたび紹介されています。一生懸命売上を上げているのに、手元にはさっぱりお金が残らない、とお悩みの方には是非読んで頂きたい一冊です。

プロフィットファーストが全てにおいて有効か、というとまだそこまではわかりません。弥生が昨年立ち上げたアルトアに関しては、まだまだビジネスモデルを確立しようと模索している最中であり、売上に対して適切な配分比率はまださっぱり見えていません。また、弥生のようにビジネスモデルの変革期において、場合によって一時的に利益を犠牲にすることの是非についても、明確な答えはないように思います。

そういった意味で、ある程度ビジネスモデルが固まっている方が適用はしやすいのかと思います。それこそもともとFL比率のような概念のある飲食業などは、プロフィットファーストがはまりやすい業種でしょうね。

また本書で示されているTAPsは基本的には米国の数字なので、今後日本でもプロフィットファーストが普及する中で、日本に最適化された(なおかつ業容や業種に応じた)TAPsが確立されてくると、ますます導入しやすくなるのではないかと思います。

近藤先生、日本におけるプロフィットファーストプロフェッショナルズの第一号として、今後活躍に期待しています!
posted by 岡本浩一郎 at 18:17 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年02月07日

仮想「通貨」か、仮想「資産」か

半年ほど前に私はビットコインについて懐疑的、と書きましたが、ビットコイン狂騒曲はまだ続いています。

前回書いた際(昨年の9月20日)のビットコインの価格はUS$4,000弱。それが12月には$19,000程度にまで上昇しました。前回は、「分散投資の観点からは、大化けを狙って自分の金融資産の1/100ぐらい(=万が一価値がゼロになっても困らない範囲で)をビットコインに割り当てることはありだと思います。念のためですが、決して推奨するわけではありませんし、私自身はその予定もありませんが」と書きました。実際に私は買っていないのですが、やはり人間ですから、やっぱり買っておけばよかったかな、と少し思ったのも事実。

しかし、12月後半に最高値をつけて以降は乱高下を繰り返しつつも、下落基調となっており、直近では$8,000前後となっているようです。NEMの一件もありますし、中国マネーを引き付けていたTetherの問題が指摘され、またICO(Intial Coin Offering, 仮想通貨を用いた資金調達)に対する規制が厳しくなるなど、市場としてはネガティブな話題が多いように思います。それでも、一気に崩壊していないのは、一定の需要があるからなのでしょう。

私は引き続き、懐疑派、ただやりたい人は自己責任でやればいいというスタンスですが、そもそも仮想「通貨」という表現が、誤解を招いているのではないか、と思っています。仮想通貨という表現はCryptocurrencyという欧米での表現から来ています(直訳すれば暗号通貨でしょうが)。ですから間違っているとは言えないのですが、今の実態は「通貨」ではないと感じます。もともとビットコインは、決済コストが低い、だからこそ次世代の通貨になりうると言われていましたが、ビットコインブームの中で決済コストは上昇の一途で、今や安いとは全く言えない状態です。

冷静に考えれば、これだけ価格が変動してはそもそも通貨としての機能を果しえません。ビットコインがどんどん値上がりするのであれば、買い物に利用してしまってはむしろ損。持ち続けた方がいい。つまり、通貨は基本的にその価値が(一定の時間軸の中では変動しつつも)日々の生活の中では安定しているからこそ通貨として機能するわけです。

そういった意味では、現状のビットコインは、仮想「通貨」というより、仮想「資産」という表現が適切なのではないでしょうか。資産だからこそ、値上がりを期待するわけです。またビットコインには裏付けになる資産は全くなく、あくまでも純粋に需給関係で値段が決まるもの。今日の$8,000は明日の$20,000かもしれないし、明日の$20,000は明後日の$2,000かも(あるいは$200,000かも)しれない。最終的に、日本円やUSドルといったHard Currencyに換わるまでは、あくまでもバーチャルな資産です。

ただ、Hard Currencyになった瞬間に出てくるのが、税金の問題。まさにホットなトピックですが、これについては、今度ふれてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:07 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年01月31日

サブちゃんの行方

日経でも報道されていましたので、正式な情報だと思うのですが、この春に、あの「サザエさん」のスポンサーが変わるとのこと。サザエさんと言えば、東芝ですが、経営再建のために、スポンサーを降板することが、昨年の秋に発表されていました。今回、新たなスポンサーが報道された訳ですが、それがなんとAmazon(アマゾンジャパン)西松屋チェーン、そして大和ハウス工業とのこと。

なかでも、Amazonは、ここ20年近く、日本の消費生活を大きく変えてきた(そしてこれからも変えるであろう)存在。東芝は、昭和において日本の消費生活を大きく変えてきた存在ですから、ある意味時代にあったスポンサー交代のようにも思えますが、一方で、頑ななまでに昭和の生活を維持しているサザエさん一家の生活にどんな変化があるのか、とても心配です。残念ながら、最近はサザエさんは見ていないのですが、黒電話やブラウン管TVはまだ健在なのでしょうか。その黒電話がスマホになったり、ブラウン管TVが有機EL TVになったりするのでしょうか。もっと進んで、Amazon Fire TVで映画を見たり、Amazon Echoで音楽を聴いたり?

個人的に一番心配なのは、サブちゃんの行く末です。サブちゃんって誰だっけという方はこちらをご覧ください。そう、三河屋さんの御用聞きですね。

私は、たまに大学などで会計に関する講義をすることがあるのですが、その際に未払金の概念を説明するときに登場するのが、サブちゃんなのです。

2018013101.png

「皆さん、サザエさんのサブちゃんは知っていますよね。サブちゃんは、勝手口からビールを配達しますが、あの時に代金を受け取っていません。あれは、『つけ』といって、後で一ヶ月分をまとめて、おそらくフネさんが払っているんですよ。」「『つけ』は、会計の用語では、未払金と言います。」

そもそも最近は「つけ」という用語すら知らない人がほとんど。そういった中で、未払金を理解してもらうためにはとても重宝する存在なのです(なお、この話は、皆さんが気軽に使っているかもしれないクレジットカードも未払金なんですよ、使い方には注意しましょう、と続きます)。

サブちゃんの代わりに、Amazonの配達(Amazon Fresh?)が来るようになるのか、はたまたサブちゃんがAmazonに華麗な転職を果たすのか、先行きを注目したいと思います。あくまでもスポンサーなので、内容に影響を及ぼすことはないとは思いますが、映画の世界では、スポンサーの商品を映画に登場させる「プロダクトプレイスメント」が普通に行われる時代なので、どうなんでしょうね。

それにしても、スポンサーの交代が新聞記事になるとは、改めてサザエさんはお化け番組だな、と思います。サザエさんもいつまでも時代の変化を免れることはできないと思いますが、自分の子どもが見る間は昔懐かしい昭和の時代をとどめてほしいな、というのが個人的想いです。
posted by 岡本浩一郎 at 20:05 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年01月18日

紺とグレー

1月も後半ということで、これが最後の新年ネタになるかと思います。新年には、賀詞交歓会や銀行での新年の挨拶など、いわゆる経営者が集まる場が多くなります。そういった場に参加するたびに、日本の経営者が、(年齢的に)シニアな男性で占められていることを実感します。色で言えば、紺とグレーでしょうか。

私がそういった場に参加するようになったのは、10年前に弥生の社長になってからです。当時、あまりの「紺とグレー」に驚いたことを鮮明に覚えています。その時代は、まだ身も心も若かったですから(相対的に、笑)。それから10年近く経ちましたが、「紺とグレー」は全く変わっていません。逆に私自身が「紺とグレー」の世界に染まってきたような…。

むろん年をとっていることが悪いこと、とは思いません。積み重ねた経験は間違いなく強みになるでしょう。私も10年前と比較して、経験値という意味では飛躍的に成長できたと自負しています。

一方で、変化の激しい時代においては、経験値だけでは勝てません。経験に縛られすぎれば、むしろマイナスに作用することもあるでしょう。特に弥生の場合はIT業界ですから、過去の成功体験を、あえて自ら捨てることも必要です。また、(何が伝統的なのかは曖昧ですが)伝統的価値観や、(表現が難しいですが)男性的価値感だけでは、通用しない世界になってきているとも感じます。

これは顰蹙を買うであろう発言であることは承知の上ですが、かつてないほど変化の激しい時代にあって、それを牽引する経営者が「紺とグレー」の集団のままで本当に良いのでしょうか。そう言っている自分が「紺とグレー」の世界に染まりつつあることを感じるだけに、焦りを感じる今日この頃です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:22 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年11月17日

Moxyに行ってみた

先週大阪に出張した際に、できたばかりのホテル、モクシー大阪本町に泊まってみました。以前も本ブログで少しだけお話ししたことがありますが、私の夢はホテル経営。20代の頃から、いつかは究極のサービス業であるホテルを経営したいと言い続けてきました。そんなこともあって、出張にせよ、休暇にせよ、ホテル(旅館)に泊まることは好きです。

出張の前にホテルを探していたところたまたま発見したのですが、「2014 年、モクシー・ミラノのオープンからスタートしたモクシー・ホテルは、ミレニアル世代を主要ターゲットとする、マリオット・インターナショナルの新たなブランドです。節約志向の旅行者向けブティックホテルというコンセプトの下、スタイリッシュなデザインとリーズナブルな価格で利用できるサービスを組み合わせた革新的なブランドとして、テクノロジー志向の客室、活気あふれるロビースペース、現代風でいて温かなおもてなしが揃い、心のこもった、快適でエネルギッシュなホテルライフをご提供いたします」。私自身はMarriottはよく利用しますし、何よりも面白そうなので行ってみないと、ということで早速行ってまいりました。

2017111701.JPG

実は、モクシー・ホテルは、11月に東京の錦糸町と大阪の本町に同時オープンしたばかり。ということで、正直まだオペレーションがこなれていない感はあり、まだ評価には早いかなと感じました。まあ、そもそも飲み会の後でチェックインしたのが11時過ぎ、翌朝は早々に帰宅するために朝6時過ぎにチェックアウトということで、キチンと評価できる程には滞在していません(苦笑)。

ただ、これはこれで面白いな、と思いました。1FはMoxy Bar & Loungeというバー/レストランスペースになっており、とてもお洒落なスペース。そしてその一部がチェックインカウンターになっています。スタッフの恰好も、お洒落なバーのスタッフという感じで、いわゆるホテルマン(ウーマン)のイメージとはかけ離れています。

個人的には、Marriottが現状に甘んじるのではなく、世代の変化に合わせ新たな試みをしていることに共感します。これはホテルでも自動車でも、そしてITでも同じですが、ブランドを信頼して頂けるコアな顧客層があること自体はいいことですが、お客さまも当然お歳を召される訳で、気が付いたらいつの間にか時代遅れになりかねません。新たな顧客層向けに、新しい価値を提案していく。成功が保証されるものではありませんが、企業が長年に渡って価値を提供し続けるためには、(コア顧客層向けの価値はキチンと維持しつつも)チャレンジしていかなければならないと思います。

ちなみにこのホテルは、もともとオフィスだったビルを丸ごとホテルに改装したそうで、その観点でもなかなか興味深かったです。インバウンドを含め宿泊需要が増える中で、多少価値の下がってきたオフィスビルをコンバートする、というのは今後も増えそうです(20年のオリンピック以降は需要が続くか心配ですが)。

で、私がMoxyにもう一度泊まるか、ですが、どうしても泊まりたい、とはならないまでも、泊まってもいいかな、と思っています。もう少しオペレーションが落ち着いた段階で、もう少しゆっくり泊まってみたいですね。

もっと詳しいレビューはオープン初日に宿泊された方の記事がありましたので、こちらをどうぞ。
posted by 岡本浩一郎 at 17:22 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年08月28日

サンプリングバイアス

少し前に「コンビニの支払い、4割が現金派」という調査結果が公表されていました。この調査によると、コンビニで買い物する際に、現金で支払う人が37.9%、電子マネーが29.8%、クレジットカード・デビットカードが29.4%とのこと。この結果に対し、あるブロガーが「コンビニで現金使う人ってバカなのかな」と発言して、話題になりました。この他にも「コンビニで現金使う人ってバカではなく『迷惑』」という発言も話題に。

個人の選択の問題なので、バカといった表現は全く適切ではないと思います(まあ、炎上商法ですね)。ただ、私が注目したのは実は別のポイント。電子マネーとクレジットカード(非現金)で約6割。これってむしろ結構高く感じませんか? 日本は現金社会と言われますが、非現金で約6割であれば、もはや現金社会とは言えないのでは?

個人が支払いをする際の決済手段のシェアについては、クレディセゾンが経済産業省他の数字をもとに推計している数字が引用されることが多いようです。2015年度(本pdfのP36)は、現金の割合が49.5%(前年対比2.4pt減)。それに対し、クレジットカードは16.0%(+1.1pt)、デビットカードが0.2%(±0.0pt)プリペイドと電子マネーで5.6%(+0.9pt)。合計しても、21.8%にしかなりません。このシェアの数字には、振込・口座振替、ペイジーといったコンビニでの買い物には利用されない手段も含まれているので、その分を一旦除外して計算し直すと、現金が69.4%、非現金(クレジットカード/デビットカード/電子マネー)で30.6%という割合になります。個人的には、むしろこれくらいの割合が妥当かな、と感じます。

もう少し具体的に言えば、職場にあるコンビニは、ビル内に大手のクレジットカード会社が入居していることもあり(?)、非現金の率が高いような気がしますが、自宅近くのコンビニは現金の方が多いように感じます。もちろん、非現金の割合が高まっていることは間違いなく事実だと思いますが、それでも、現金が4割、非現金が6割と言われると、さすがに違和感を感じます。

だいぶまわりくどく前置きしてしまいましたが、私は、冒頭の調査にはだいぶサンプリングバイアスが入っているのではないかな、と感じました。調査の際の対象者と、母集団にずれが発生しているのではないか、ということです。よく読んでみると、この調査は「クレジットカードを保有している」「会員」に対し、インターネットを通じて行われているとのこと。対象がクレジットカード保有者に限られていますから、この調査では現金率が低く、非現金率が高く出るのは当たり前のこと(ちなみに、JCB調査(pdf)によればクレジットカードの保有率は約8割とのこと)。会員が対象ということで、その年齢構成や年齢分布も結果に影響を与えているのではないでしょうか。

弥生でも様々な調査を継続的に行っていますが、サンプリングバイアスには苦労しています。代表的なところでは、クラウドの利用意向。インターネット調査でのクラウド利用意向と、電話等を通じた調査でのクラウド利用意向にはかなり大きなずれが出ます。調査の際には、つい見たい現実を見てしまう(結果を自分に都合よく解釈してしまう)ものですが、調査の前提・手法も含めてキチンと設計しないと、実は誤った結論に飛びついていた、ということになりかねませんので、注意が必要です。
posted by 岡本浩一郎 at 19:03 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年04月10日

メガトレンド

前回、BCG経営コンセプト(市場創造編構造改革編)という二冊の本をご紹介しました。内容の解説は私にとって荷が重いので、是非実際にお読み頂ければと書いたのですが、一点だけもう少し掘り下げてみたいとと思います。それは、市場創造編のP121でコラムとして紹介されている「メガトレンド」。

事業環境が劇的に変化する中で、将来の予測が難しくなってきています。そんな中で、どうせ将来を見通せないからと中期経営計画の策定をやめる会社もあるようですが、将来の予測が難しくなってきているからこそ、不確実な将来に備え、適応力を高めることが必要です。そのために有効な手法のひとつがシナリオプランニングであり、そのシナリオを作成する上では、「世の中の大きな変化を正確にとらえ、自社のビジネスにあてはめて考えることが重要」となります。

世の中の構造的な変化、それが「メガトレンド」です。「10〜20年の長期スパンにわたり非常に高い確からしさで発生することが予見される、非連続かつ不可逆な変化の潮流」。今日/明日を変えるものではないが、深いところで確実に人や社会のあり方、ビジネスのあり方を変える大きな流れ。

ちょうど今日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、長期的な日本の人口を予測する「将来推計人口」を公表しました。今から約50年後の2065年の日本の人口は、15年比3割減の8,808万人という試算。これでも近年の30〜40歳代の出生率の実績が前回推計より上昇していることを踏まえ、若干の上方修正だそうです。とはいえ、50年後には日本の人口が今より3割も減少しているというのは、将来のビジネス環境を考えると途轍もない程の影響をもたらします。単純に言って市場が3割も目減りすれば、多くの事業は成り立ちません(実際には、高齢者向けなど伸びる市場もあるでしょうし、採算性の悪い事業者が淘汰されることによって、残存者利益が生じるといったこともあるでしょうが)。

ただ、この人口減少というメガトレンドは今日/明日の市場、あるいは、今期の売上に直接的に影響があるわけではありません。そういった意味で無視するのは容易ですが、企業の将来戦略を考える上では、むしろ出発点として考えるべきです。

弥生の経営を考える上でも、こういったメガトレンドが出発点になっています。人口が減っていく中で労働集約型の業務がどうなっていくのか。今は人を採用することが比較的容易でも、5年後、10年後に同様とは限りません。ITの力を活用し、お客さまの業務をどのように効率化するか(もちろん弥生自身の業務も効率化する必要があります)。最近は、なんでもかんでもAI(Artificial Intelligence, 人工知能)と言われるので(コンピュータで処理するものは全て?)、やや食傷気味ですが、こういった技術を活用して、人間がやらなくてもよい業務を自動化し、逆にそれによって人間がやるべき業務に集中できるようにするべきだと考えています。

もちろんITは手段でしかありませんし、個人的には今の極端なAI万能論は行き過ぎで、そう遠からずAIバブル(?)が崩壊することもあるのではないかと考えていますが、それでも、本質的に価値を提供できる技術は残り、私たちの生活であり、業務を大きく変えていくでしょう。

弥生がクラウドに取り組むのも、流行りだからではなく、それが中央集中への回帰というメガトレンドだからと考えているからです。ただ、クラウドもあくまでも手段に過ぎませんから、クラウドという中央集中ならではの管理効率の高さと、ローカルの使い勝手の良さの組み合わせを目指すべきだと考えています。

弥生がなぜクラウドに取り組んでいるのか、その裏にどういったメガトレンドを見ているのか、については、本ブログでお話ししたつもりだったのですが、今確認してみるとキチンとお話しした記事はないようなので、また改めて書いてみたいと思います。AIについても、また機会をみてお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:25 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年04月06日

BCG経営コンセプト

少し前に、「BCGのワザ」という記事を書きました。プレゼンの資料作成テクニックはボストン コンサルティング グループ(BCG)で学んだ、というもの。

これはこれで事実なのですが、BCGの価値はプレゼンや資料じゃないだろ、という突っ込みが内輪から入りそうです(苦笑)。はい、その通りです。前回の記事でも、経営コンサルティング会社にとって本当の成果物は、お客さまの業績であり、プレゼンではない、と書きました。プレゼンはあくまでも手段である、と。

本当の成果物は、お客さまの業績。そういった観点から、かつては正論を言うだけと見られがちだった戦略コンサルティングファームも、実践に力点を置くようになっています。Make It Happen。お客さまの進むべき道を提言するだけではなく、その際に必要となる改革をお客さまと共に実行する。どんなに価値のある戦略であったとしても、それが実行・実現されない限り、価値はありません。実際、私自身も経営者として、より多くの時間を割いているのは、圧倒的に「実行」、Make It Happenです。

一方で、正しい道を向いていない限り、どんなに頑張って実行したところで、結果につながらないのも事実。仮にマクロ的な力によって、どんどん市場が縮小しているような状況であれば、その市場の中でどんなにもがいたとしても結果にはつながりません。この場合は、市場の定義をどう変えるかを考えるべき。

つまり、何だかんだ言って戦略は大事。もちろん実行も大事。

2017040601.jpg

BCGがその名の示す通りボストンで生まれたのが1963年。東京オフィスができたのが1966年。昨年2016年はBCG東京オフィスの50周年でした。この機会をあわせて、出版されたのが、BCG経営コンセプト 市場創造編BCG経営コンセプト 構造改革編という2冊の本。前者は内田さん、後者は菅野さんといずれも私がBCG在籍中にお世話になった大先輩です。お二人は既にBCGを卒業され、今はお二人とも早稲田大学ビジネススクールの教授です。

内容の解説は私にとって荷が重い(苦笑)ので、是非実際にお読み頂ければと思うのですが、この二冊は二つの意味で味わうことができると思います。

一つはBCGが提唱する経営コンセプトであり経営戦略の進化を理解するという意味で。BCGはその誕生から、戦略に特化したコンサルティングファームとして実績をあげてきました。「エクスペリエンス・カーブ」「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」などの経営コンセプトは、経営戦略をかじったことのある人であれば一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。これらの経営コンセプトは時代の流れを超え、今でも有効です。同時に、グローバル化やデジタル化といった時代の波にあわせ、新たな経営コンセプトも生まれてきています。こういったBCGの経営コンセプトの進化を理解するというのが一つの味わい方。

もう一つはBCG自体の進化を理解するという意味で。BCGもそれ自体が会社ですから、生き残りのためには進化が必要。戦略コンサルティングファームでも、かつての成功モデルを粛々と繰り返しているだけでは継続的な成功は実現できません。BCGの提供する価値は、かつては戦略でとどまっていたものが、やがて、実行にまで広がり、そして今、戦略、実行に加え、コンサルが一緒にいるからこそ実行できるのではなく、自社で戦略を立案・実行し、成果をあげられる組織能力の構築(Enablement)にまで広がってきています。つまりBCG自体も明確な戦略を持ち、進化してきたからこそ今があるわけです。

本当のBCGの「ワザ」を是非ご堪能下さい。
posted by 岡本浩一郎 at 18:35 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年03月24日

BCGのワザ

私は社内/社外を問わず、年間かなりの数のプレゼンテーションを行っています。最近はスタッフが作るプレゼンの質が上がり、多少手を入れて使うことも増えてきましたが、それでも多くは自分で作成しています。プレゼンのテクニックなり、プレゼンの資料作成テクニックをどこで学んだのか、と聞かれることがありますが、前者については、自分の経験から自分自身で編み出したもの。一方で、後者に関しては、前々職であるボストン コンサルティング グループ(BCG)で学んだことが一番大きいと考えています。

誤解を受けがちですが、経営コンサルティング会社にとって本当の成果物は、お客さまの業績であり、プレゼンではありません。ただ一方で、プレゼンは、お客さまにメッセージを明確に伝え、お客さまが自分事として動けるようにするために非常に重要な手段です。それだけにプレゼンに関する拘りは徹底していますし、徹底して叩き込まれます。苦しみながらようやく作ったプレゼンを全てボツにされることも珍しいことではありません。

プレゼンでよく陥りがちなのは、伝えたいことが多すぎ、かつ整理されていないため、結果的に何を伝えたいのかが曖昧になってしまうこと。プレゼンの鉄則は、ワンスライド・ワンメッセージ。一枚のスライドで伝えるメッセージは一つに絞ること。当然メッセージも、徹底的に考え抜かれたものである必要があります。「あなたのメッセージはクリスタライズされていません」というダメ出しは、私と同時期にBCGに在籍した人は一度は聞いたことがあるフレーズです。クリスタライズ、そのまま訳せば結晶化となるかと思いますが、ファクトをもとに徹底に考え抜かれた結果としてインサイト(洞察)という次元に昇華された、という意味合いです。

2017032401.jpg

クリスタライズというところはなかなか難易度は高いですが、BCGの資料作成ワザに関しては、以前も本ブログで少しご紹介した奥秋さんが広く世間に発信されています。この度、「効率よく作れて、パッと伝わる一番シンプルな資料作成術」という本を監修し、出版されたとのこと。拝読しましたが、資料作成のツボであり、コツが簡潔によくまとまっているかと思います。以前出版された「プレゼン資料作成のツボとコツがゼッタイにわかる本」がプレゼン作成の実践編だとすると、今回の本はプレゼンだけではなく、報告書やレポートなどにも活用できる入門編。来る4月には新入社員が入社し、新入社員研修が始まるかと思いますが、新入社員向けの研修資料としても最適なのではないかと思います。

余談ですが、その人が作ったプレゼンを見るだけで、ああ、この人はBCG出身なんだな、とわかります。当然フォーマットなどは別ですが、プレゼンの「匂い」でわかってしまいます。それだけ、BCGのワザが染みついているんでしょうね。
posted by 岡本浩一郎 at 13:12 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年01月18日

辞めませんか?

年賀状について書いた「辞めます」に続いて、釣りタイトルの第二弾です(笑)。

天皇陛下の退位について、議論はまだまだ尽くされていませんが、2019年1月1日に皇太子さまが新天皇に即位し、同時に元号を改める検討に入ったと報道されています。この通りに進めば(まだまだ紆余曲折はありそうですが)、平成は30年までとなり、2019年からは新しい元号が始まることになります。新しい元号が何になるのか興味深いところですが、業務ソフトを提供する立場からすると、早めに決めてもらえると有難いのが正直なところ。むろん、弥生会計/弥生会計 オンラインをはじめとして、新元号への対応を行う必要があるからです。

ということで、もちろん対応は行うのですが、この機会に提言したいのは、実務上はもう元号の利用を辞めませんか、ということ。誤解のないように付け加えると、元号そのものはあっていいと思いますし、日本の文化の大事な一部ですから、あるべきだ、とも思います。しかし、それを日常生活や、ビジネスの現場で使う必要はないのではないでしょうか。

実際問題として、民間企業での実務では、ほとんど西暦中心になっているかと思います。一方で、元号から抜けられていないのが、官公庁向けの書類。弥生会計 17では平成28年分所得税確定申告に対応していますし、弥生給与では平成28年分年末調整に対応しています。これらは対象となっている業務が元号で表記されている以上、弥生としても同様な表記をせざるを得ません。しかし、実際問題として平成28年分と言われても、昨年なのか、今年なのか、はたまた来年なのかピンと来ないのは私だけでしょうか。

年数の経過を考える上でも(わかりやすい例で言えば年齢の計算)、昭和と平成だけであれば何とかなっても、昭和+平成+新元号となるともはやパッとは計算できません。私自身については、昭和と平成だけでもパッと計算できず、必ず西暦に変換して計算しています(そういう人、多いですよね)。

ただでさえ日本は生産性が低い、人口が減る中で生産性を上げる必要があると言われる中で、こういった慣習についても予断を持たずに見直すべきなのではないでしょうか。さすがにこれは年賀状のように、辞めますと自分だけで決められる話ではありませんので、社会的な議論が必要だと思いますし、その上で、元号のヘビーユーザーである官公庁に率先して変えて頂ければと思っています。弥生としても、官公庁が西暦表示に変えて頂けるのであれば、喜んでそれに対応したいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:50 | TrackBack(0) | ビジネス