2020年05月29日

インフラが必要とされなくなる時

少し前に通勤定期をどうしよう、というお話しをしました。私の今の通勤定期が5月末までなのですが、これまでリモートワークを続けている、さらに今後も一定程度リモートワークが続く中で、いつも通りに更新するかどうか。前回は、「一旦は6ヶ月定期を買うのだと思います」と書きましたが、その後もう少し考え、このタイミングでは買わない、ということにしました。

前回お話しした通り、「週3日の通勤であれば何とかトントン」。あくまでも個人的にですが、週3日出勤で週2日はリモートワークというあたりがまずまずいいバランスかなと感じていることもあって、一旦は買うかなと判断しました。ただ、ここには出張が考慮されていません。以前お話ししましたが、昨年の私の出張の回数は42回、日数にして67日、宿泊日数が38泊でした。実際には、これからは出張は減るのだと思います。その必要性は改めて問われることになるでしょう。ただゼロにはならない。減るにしても一定程度は出張があるとすると、オフィスへの出勤は週3日を切ることになります。また実際問題として、引き続きリモートワーク推奨としている中で、具体的なオフィス出勤の予定もない中で、今買わなくてもという現実的な判断もあります。

これはあくまでも私の個人的な判断ですが、皆が通勤定期を買わなくなったらどうなるか。これは鉄道会社にとっては恐ろしいシナリオだと思います。私は常々、JR東日本は素晴らしい会社だと思ってきました。羨ましいとも。単なる鉄道会社に終わるのではなく、Suicaという電子マネーを普及させ、駅ビルを高付加価値化し、そこに経済圏を生む(地元横浜でも、念願の駅ビルが間もなくオープンする予定です)。しかし、そもそも人が電車に乗らなくなったら。定期券は都度買うよりも割引になっていますが、前払いですから、キャッシュフロー的には大きなプラスになっているはずです。JR東日本に勤務している友人もいるので、非常に複雑な気分ですが、今回の新型コロナウイルスは社会のあり方に大きな変革をもたらしており、それは下手をすれば会社の土台を揺るがしかねないということを改めて感じます。

翻って弥生はどうか。弥生も、JR東日本とは規模感が全く違いますが、事業者のインフラであると自負しています。ただ、そのインフラ自体が必要とされなくなったら。これからはオフィスだけなく、ホームオフィス、サテライトオフィスとロケーションフリー化が進む中で、これまでと同様のオフィスに縛られたインフラであり続ければ、必要のないものとなってしまうかもしれません。幸いにして弥生は、クラウドアプリケーション(弥生オンライン)も提供していますし、デスクトップアプリケーション向けにもクラウドストレージ(弥生ドライブ)を提供しており、どこからでも業務を継続できるようになっています。ただ、物事の前提が大きく変わりつつある中で、弥生の提供する価値が引き続き必要とされることを、当たり前と思ってはいけないのだと思います。

これまでの当たり前が当たり前ではなくなる。新型コロナウイルスはそれだけ大きな変革をもたらそうとしています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:06 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年05月27日

さらなる支援策

月曜日の緊急事態宣言解除に関する記者会見の中で、安倍総理は、「感染を抑えながら完全なる日常を取り戻していくための道のりは、かなりの時間を要する」、「その出口に向かって、この険しい道のりを皆さんと共に乗り越えていく。事業と雇用は何としても守り抜いていく」と決意表明されました。この決意が反映された第2次補正予算案が今日閣議決定されました。その柱は、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた企業の資金繰り支援の拡大。

政府系や民間の金融機関を通じた実質無利子・無担保融資など、従来から動いている施策の枠の拡大だけでなく、事業者の家賃支払いを支援する「家賃支援給付金」、休業手当を受けられない労働者に対する給付となる「新型コロナ対応休業支援金(仮称)」など、追加の施策もこの予算には正式に盛り込まれました。

家賃支援の対象は、1ヶ月の売上高が前年同月比5割以上の減少か、連続3ヶ月間で3割以上減少した事業者。前者の条件は基本的に持続化給付金と同じですから、持続化給付金の対象となった事業者はこの支援策も対象になると考えていいのではないかと思います。対象となった場合には、原則として家賃の2/3(月額の上限が法人50万円、個人事業主25万円)を6ヶ月分給付を受けられるようです。つまり最大300万円(複数店舗の場合には、最大600万円)。これは非常に大きいですね。家賃と言えば、固定費としてとても大きい存在ですから、この支援は非常に有効だと感じます。

本ブログでは以前、雇用調整助成金についてお話ししました。新型コロナウイルスの影響など、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、従業員に対して一時的に休業を指示した場合には、従業員の生活を保護するため、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。雇用調整助成金は、この休業手当の支払いに対し、事業者に助成する制度です。これまで段階的に助成率が引上げとなっており、また申請に非常に手間がかかるということで、申請の手続の簡素化も進められています。しかし、1日あたりの上限額が8,330円では低すぎるという声が強かったのですが、今回、1日あたりの上限額が15,000円に引き上げられました。

一方で、この休業手当が(少なくとも速やかに)支払われないケースが現実問題としてあることから、従業員が直接申請することによって、休業手当に相当する支援金を直接受け取れる、いわば雇用調整助成金のバックアップの仕組みとして用意されるのが、新型コロナ対応休業支援金(仮称)です。

一つひとつの施策はとても喜ばしいものではあるのですが、施策が増え続け、また個々の施策の条件も頻繁に更新されるため、事業者の方が自分に適した施策を見つけることがますます難しくなっています。弥生では、3月から「新型コロナウイルスに伴う支援情報」を整理して発信しています(今回の新しい支援策の情報も、制度が具体化するタイミングで追加します)。4月には大幅なリニューアルをしたばかりなのですが、増え続ける情報をよりわかりやすくお伝えできるよう、さらに知恵を絞らないといけないと感じています。

なお、念のためですが、特に法人を中心に、顧問の会計事務所がある場合には、まずは顧問の会計事務所に相談すべきです。どの会計事務所も、お客さまである事業者の資金繰りを支援するために、必死で戦っています。ある先生は、お客さまの支援が優先で、ご自身の確定申告をいまだに済ませていないとのこと。4/22の時点での話でしたが、さすがにもう終えられたのでしょうか > O先生。
posted by 岡本浩一郎 at 23:10 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年04月06日

プランB

4月に入って一週間弱。新型コロナウイルス禍が広がる中、資金繰りの一つの山場である3月末を何とか超えたと思ったものの、4月に入っても事態は好転していません。報道によると明日にも緊急事態宣言が出されるのではということで、事態はむしろ悪化しているようにも見えますし、先の見通しが描けない状況です。

2020040601.jpg

先週金曜日は友人と行きつけの神田のイタリアンに行く予定だったのですが、状況を鑑みてとりやめ、その代わりに持ち帰りを用意していただきました。持ち帰りで美味しい食事を食べられることになった家族は大喜び。これもお気に入りのお店を支えるひとつの方法かと思います。ちなみに、外食を予定していた友人とは今晩これからリモート飲み会の予定です(笑)。

ただ、事態がまだ長引くだろうという判断のもとで、苦渋の決断をする事業者の方も出てきています。特に飲食業で顕著ですが、当面営業を休止するお店が増えつつあります。制約を受けつつも事業を継続するのをプランAとすると、一旦事業を休止するのはプランBと言えるでしょうか。判断の分かれ道は、営業を継続することによって多少なりともプラスに働くかどうか。特に飲食業の場合には、食材の仕入れがあり、(使いきれない分も含めての)仕入れ > 売上になりかねないため、事業を継続することが傷口を広げることにもなりかねません。

神田のお店も、今日/明日のランチ営業で食材を消費した上で、水曜日から一週間ほど営業を休止するとのこと。周りのお店でも、休業が増えてきたとのこと。本当に苦渋の決断だと思います。ただ、長い目で見れば、ここで出血を一旦抑えるのは有効な選択肢かもしれません。

お店を休むということで、その間は従業員の方には有給休暇をとってもらうという手もありますが、こういった事態を受け、国による最大限の支援体制が用意されています。それが雇用調整助成金。経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、従業員に対して一時的に休業を指示した場合には、従業員の生活を保護するため、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。雇用調整助成金は、この休業手当の支払いに対し、事業者に助成する制度です。制度自体は従前からあるものですが、今回、新型コロナウイルスの影響を受けている事業者については、助成率が最大で9/10(90%)にまで引き上げられています。ただし、1日あたり一人8,330円という金額の上限があります。例えば、平均賃金が10,000円で休業手当を最低限の60%支給した場合には、10,000円×60%×9/10=5,400円の支給額になり、15,000円に対し、80%支給した場合には、計算上は15,000円×80%×9/10=10,800円となりますが実際には金額上限を超えるため8,330円の支給額ということになります。

休業が短く終われば有給休暇の消化でもよいと思いますが、ある程度続くことを考えると、折角国の支援を受けられるのですから、この制度の活用も検討すべきだと思います(雇用調整助成金は支給限度日数は100日となっています)。通常は休業の事前の届け出が必要なのが、今回は事後提出でも構わないのも大きなポイントですね。

もちろん通常通り営業を継続できるのが望ましいとは思いますが、休業によって、仕入れを止め、なおかつ雇用調整助成金で人件費をある程度賄うことによって出血を止めるのも、長い目で見れば有効な選択肢となりうるかと思います。残る大きな費用項目である家賃に関しても、家主と交渉する余地はあるかもしれません(少なくとも支払いを待ってもらう、は交渉してもいいのではないかと思います)。

雇用調整助成金も含め、既に様々な支援策が用意されています。弥生ではこれらの情報を可能な限り網羅したページを作成し、継続的に更新しています。どんな可能性があるのか、一度ご確認頂ければと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:22 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年03月17日

早めの備えを

前回は確定申告を早めに終えましょうというお話しをしましたので、今回も「早め」というと同じ話と捉えられるかもしれません。しかし、今回は早めの「備え」の話です。

日本では新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がる状況にはなっておらず、感染拡大が比較的抑制されているように見受けられます。ただ、それは様々な活動の抑制によって成り立っているのも事実。東京ディズニーリゾートは結局1ヶ月以上に渡って休園するようで、私が経営者だったらと思うと、本当に目まいがするような状況です(政府からの要請もあったのでしょうが、それにしても本当に勇気のある判断だと思います)。東京ディズニーリゾートのように休園とまではいかず、営業は続けていても、外出を控え、活動を自粛するムードの中で、いつもよりもお客さまが目立って減っているお店も多いのではないかと思います。

事業者にとっては本当に厳しい状況です。なおさら厳しいのは、終わりが見えないということ。1~2週間の集客減であれば、少し頑張れば取り返すこともできるかもしれない。しかし、今回の新型コロナウイルス禍で非常に難しいのは、その終わりが現時点では全く見通せないということです。

そういった中では、最悪の事態、すなわち、現状がこの先も当面は続くという想定で備えるべきです。それも速やかに。事業にとっての血液はキャッシュ(現預金)。帳簿上は黒字であっても、現預金が尽きれば、事業を続けることはできません。仮に今はまだ現預金に余裕があるとしても、この先3ヶ月間、ひょっとしたらもっと長い期間に渡って経済活動の停滞が続いたらどうでしょうか。それでもびくともしない事業者はかなり稀なのではないでしょうか。

もちろん政府も危機感を持っており、現在様々な支援策が講じられています。休日も含めて経営全般について相談できる窓口も用意されていますし、小学校等の臨時休業等により、仕事を休まざるをえなくなった方への支援、あるいは新たにテレワークを導入し、又は特別休暇の規定を整備した中小企業事業主に対する助成金なども用意されています。さらに、まさが今が佳境の個人事業主の所得税/消費税の確定申告についても、申告期限の延長だけではなく、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な場合には、納税そのものの猶予制度も用意されています。

2020031701.png

様々な支援策があるが故に全体を把握しにくい状況ですが、弥生ではこれらの情報を可能な限り網羅したページを作成し、公開しています。手遅れになる前に、まずはどんな可能性があるのか、一度ご確認頂ければと思います。弥生では今後も情報収集を続け、情報をアップデートしていきます。

弥生も情報発信を続けていきますが、事業者それぞれの個別の事情を踏まえ、最適な方策を一緒に考えてくれるのが、会計事務所です。備えは早めに。顧問の会計事務所にも早めに相談することをお勧めします。
posted by 岡本浩一郎 at 20:52 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年03月02日

経済を回し続けよう

先週末は越後湯沢までスキーに行ってきました。毎年泊っているお気に入りの定宿でのんびり、ランチは毎年楽しみにしているイタリアン(つまりスキー自体は二の次ということです、笑)。我が家にとっては恒例行事です。

2020030201.jpg

ただ、今回は明らかに空いています。ゲレンデはガラガラとは言いませんが、快適と言える程度の人出。往復は新幹線で、特に帰りは毎年満席になるのですが、今回はかなり空席が目立ちました。今年は雪不足という事情もあり、確かに例年と比べると雪は明らかに少ない(それでも気持ちよく滑れるコンディションでしたが)。しかし足元で影響が大きいのは、新型コロナウイルスのようです。政府により学校の休校要請がされる状況とあって、外出を避ける影響が出ているようです。

先週には、これもひいきの神田のイタリアンにお邪魔したのですが、予約のキャンセルが多く出ており、目に見えて数字が悪化しているとのこと。累計で100人近いキャンセルが出ているそうですから、それは影響が出ますよね。念のためですが、このお店の味もサービスもこれまでと全く変わらず、私自身はゆっくりと美味しいものを堪能させてもらいました。

こういった現象は、東日本大震災の時もありました。計画停電もあり、ガソリンや日常物資の供給も十分でない中で、とにかくモノを買い込んで家に籠る。皆不安でしたし、何よりも余震の懸念もありましたから、これ自体否定される話ではありません。今回も、自分の感染を防ぐため、また感染の急拡大を防ぐためにも、不要不急な外出は控えるべき、ということを否定するつもりはありません。

ただ、皆がその方向に走ってしまえば、別の生き物が存亡の危機に立たされます。それは、全国津々浦々の事業者の皆さんであり、ひいていえば日本経済。この勢いで日本全体が自粛モード一色になれば、日本の経済が止まってしまうという危機感を持っています。

だからと言って、何も考えずに外に出て、好きなように振る舞えという訳ではありません。新型コロナウイルス感染による致死率は高齢者や基礎疾患のある方で明確に高い傾向がありますから、こういった方や同居の家族は可能な範囲で外出を控えるべきだと思います。また、現時点で最も怖いのは、治療を要する感染症患者が急増することによって、医療システムが維持できなくなることですから、誰であっても、新型コロナウイルスに限らず、普通の風邪やインフルエンザも含めて、感染しないように十分な注意が必要です。

あくまでその上で、ですが、むしろ意識して外に出て、積極的にお金を使うことも必要なのではないでしょうか。大人数での宴会では、どうしても距離が狭くなるのでリスクが高いのであれば、この機会に少人数でゆったり、じっくりと話しましょう。

一方、事業者としても、この荒波がいつ終わるのかは見通せない中で、波風が過ぎるのをただ待つだけではなく、生き残りに向けて、しっかりと備えましょう。可能な範囲で手元資金を厚めに維持しましょう。今すぐに借り入れる必要はなくても、必要な時に、どこから借り入れできるか、準備はしておきましょう。

既に国からも資金繰り支援策が発表されています。国による支援策は、こちらの経済産業省がまとめているページが参考になると思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:15 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年01月28日

ついにゲット!

昨日1/27朝に自転車で(寒かった…)地元の神奈川区役所へ。予約は9:30だったのですが、気合が入っていたためか9:20頃には到着。幸いにして、9:30まで待たずともすぐに受付してもらえました。これはすぐに終わるかも、と淡い期待を抱いたものの、持参した書類(交付通知書と通知カード)の確認と本人確認後はしばらく待つことに。それなりに待った後に暗証番号(パスワード)の設定作業を行い、ようやくマイナンバーカードを手にすることができました。

暗証番号は、タッチパネルを使い、自分で入力します。マイナンバーカードに設定される暗証番号は、(1)署名用電子証明書/(2)利用者証明用電子証明書/(3)住民基本台帳用/(4)券面事項入力補助用の4種類。(1)署名用電子証明書の暗証番号は、「インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用します」ということで、代表例がe-Taxです。(2)利用者証明用電子証明書の暗証番号は「インターネットサイトやキオスク端末等にログイン等をする際に利用します」ということで、代表例で言えばマイナポータルにログインする際に利用するようです。では、(3)/(4)はというと…、正直よくわかりません。

(1)は、「英数字6 文字以上 16 文字以下。英字は大文字のAからZまで、数字は0から9までが利用でき、いずれも1つ以上が必要」となっています。いわゆる一般的なパスワードの様式ですが、英字小文字が使えないのは驚きました。タッチパネルで入力させる際に、大文字と小文字を使い分けるのが難しいという判断なのでしょうか。より強力なパスワードということで、記号など使える文字種を増やす方向にある中で、(ダメとはいいませんが)ちょっとどうなのかな、と思います。

(2)/(3)/(4)は、数字4桁。「同じ暗証番号を設定することもできます」とのことですが、実際に設定する際には、デフォルトでは、同じ番号を使うようになっていましたので、「希望する場合には別々の暗証番号を設定することもできます」という方が正しいように思います。私自身はどうしようかと思ったのですが、(3)/(4)をどういったケースで使うのか見えない中で、別々に設定しても忘れるだけと判断し、今回は三つとも同じ番号としました。

結局マイナンバーカードを受領したのは9:50前。都合30分ぐらいはかかったことになります。政府としては、全国民にマイナンバーカードを持たせたいようですが、肝心な交付がこのスピードだと、皆に行き届くのはいつになるのやら、という感じです。もっとも、交付の際に本人確認がきちんとされることが大前提ですから、とにかく早ければいいということでもないと思いますが。

2020012801.jpg2020012802.jpg

ということで、私のマイナンバーカードはこちら。噂の(笑)マイナンバー自体は見えなくする目隠しスリーブに入れて渡されます(マイナンバーは右側(下側)の写真の磁気ストライプの下の灰色目隠しの下に記載されています)。一方で、注意が必要なのは、右側(下側)の写真の左下にある模様。この写真ではマスキングしていますが、実際にはQRコードが印刷されています。このQRコードの正体はマイナンバーそのもの。スマホで読み取ればまさに個人番号そのものですから、調子にのって、そのまま写真を公開しないように気を付ける必要があります。数字のマイナンバーは目隠ししつつ、QRコードは目隠ししない理由はこちらだそうです。うーん、わかったようなわからないような、という感じです。

個人的には、そもそもマイナンバーはIDであって、パスワードではない以上、マイナンバーを隠す必要自体がないと考えています。ただ、立場上あまり無茶をできないので(苦笑)、今回の写真は目隠しした状態です。

計1ヶ月半と長かったマイナンバーカード取得の旅もこれで終わりですが(笑)、実際の旅はこれから。そう、いよいよ確定申告の時期が近付いてきました。既に弥生では、デスクトップアプリは先週に、クラウドアプリは今日から、2019年(令和1年)分の確定申告機能を提供開始しています。来月からは、今回取得したマイナンバーカードを利用して、実際の申告書作成とe-Taxによる電子申告をレポートしてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 15:45 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年01月24日

通知カードがない!場合

今年の確定申告に向けて、弥生の社内でe-Taxで申告しようというキャンペーンを行っています。あくまでも私が個人的に言っているだけで、何の強制力もありませんが(笑)。取締役のIさんは、やる気はあるようですが、マイナンバーカードの通知カードが見当たらないとのこと。以前本ブログで、「これ(通知カード)が送付されたのが、2015年の秋ごろ。もう4年も前ですから、『あれどこに行ったっけ?』という方も多そうですね」と書きましたが、まさにこのケース。そういえば引越しもありましたから、引越し荷物のどこかに紛れ込んだのでしょうか。

ということで、通知カードがない場合にどうするか、について調べてみました。方法としては二つ。一つ目は、市区町村の窓口で交付申請書を新たに発行してもらう方法。二つ目は、「手書き交付申請書」を使用して申請する方法です。

一つ目ですが、横浜市の場合、住んでいる区の区役所戸籍課窓口に本人または同一世帯の方、本人の代理人が行けば、交付申請書を新たに発行してもらえるようです。この際には、本人確認書類が必要になるとのこと(+代理人の場合には委任状)。この交付申請書には、個別の申請書IDが記載されるため、以前お話ししたようなPC/スマホでの申請や街中の証明写真機での申請が可能になります。

二つ目の手書き交付申請書は、こちらからダウンロードすることができます(PDF)。

[注意喚起] ただ、本ブログのように個人で運営しているブログ等で、直接PDFファイルなどにリンクされているものをそのまま使うのは、一般的に言って危険です。悪意を持ったブログ運営者が不正なPDFファイルに誘導する可能性もありますし、ブログ運営者には悪意がなくても、第三者によってPDFファイルが置き換えられている可能性もゼロではありません。例えば、今回のPDFファイルで言えば、申請書送り先を偽の住所に置き換えて、個人情報を詐取する可能性もあります。このようなケースでは自分で「マイナンバーカード 手書き交付申請書」などと検索し、素性が明らかになっている正規のサイトからダウンロードすることが望ましいです。

この手書き交付申請書を見ればわかりますが、この申請書を埋めるためには、肝心のマイナンバー(個人番号)を記載する必要があります。でもマイナンバーが…、通知カードがないとわからない…、となりそうですが、大丈夫。自分のマイナンバーを知りたいという場合に、住民票(の写し)をマイナンバー記載入りで発行してもらうことです。ただし、住民票には何も指定しなければマイナンバーは記載されませんので、マイナンバーの記載をリクエストする必要があります。

まあ、正直どちらにしても面倒くさいですね。とりあえず今週末通知カードの発掘を試みて、ダメだったら上記のいずれかではどうでしょうか > Iさん。
posted by 岡本浩一郎 at 18:22 | TrackBack(0) | ビジネス

2020年01月22日

中小企業の財務改善ノウハウ

本ブログでもご紹介した「借入は減らすな!」「その節税が会社を殺す」を執筆された松波先生が「税理士が知っておきたい中小企業の財務改善ノウハウ」という新著を出されました。これまでの二冊はキャッチーなタイトルでしたが、今回は、地味と言えば地味な(失礼!)タイトル。今回は、資金調達相談士協会の先生方の共著で、松波先生は編著および監修ということから、これまでとは少しトーンが異なるようです。

2020012201.jpg

明確に異なるのは、想定する読者。これまでは経営者に向けた内容でしたが、今回は、「税理士が知っておきたい」というリードが示すように、会計事務所向け。実際に内容は、難しいとは言いませんが、結構ディープです。

本書の前半は、顧問先の意思決定をどうサポートするかにフォーカスしています。前半でそうそうと頷くのは、「経営者としては、『経営判断に使うため』の財務諸表を作ってほしい」というくだり。経営者にとって、財務諸表は手段に過ぎません。目的は事業をすること、そのために経営判断をすること。本書では、経営者の意思決定に使える月次試算表作成の具体的なノウハウが語られています。

経営者の意思決定に使えるためには、実態を正確に反映している必要があります。実態をいかに正確に反映するか。よくありがちな誤解としては、実態を表すために勘定科目を細かく設定すること。例えば、新聞図書費ではなく、新聞は新聞費、本は書籍費にわける。そうすると確かに厳格ではありますが、費用の性格としてあまり変わりませんから、正直意味がありません。一方で、一般的な交通費と通勤費はどうか。後者は実質的に人件費ですから、これは分ける意味があります。本書では必要以上に勘定科目を増やさないことを説きます。むしろ大事なのは、継続性をもって、同様な経費が同じ勘定科目で計上されること。

実態を正確に反映するという観点で本書が一番拘っているのは、売上とそれに対する費用を月次ベースでしっかりと対応させるというところでしょう。当たり前といえば、当たり前の話ではありますが、本書では減価償却費も月次ベースで計上すべきと説きます。設備負担が重くない業種については、そこまでやる必要はないようにも思いますが、確かに設備負担が重い製造業において、月次ベースで収益状況を可能な限り正確に実態を把握するとなると、その意味があるのではないかと思います。

また、会計基準より意思決定を優先しようというくだりは、会計の原理主義的な方からすると眉をひそめそうな気もしますが(笑)、会計は何のためなのかを考えれば、合理的な判断だと感じます。

実態を正確に反映した財務諸表だからこそ、経営者の意思決定にも使えるし、金融機関への交渉にも活用できます。本書の後半は資金調達をどうサポートするかにフォーカスしています。資金調達のサポートは、資金調達相談士協会が得意とするところですし、松波先生の十八番とも言える領域。そういった意味では、特に後半は、これまでの二冊を踏まえ、さらに内容を実務的に、具体的にしたものと言えます。

本書は、広く会計事務所の方におススメしたいと思います。ここまで経営者のニーズにしっかりと向き合ってより高い付加価値を提供する会計事務所が増えれば、より健全な、もっと言えば生き残れる事業者はもっと増えるはずです。ただ、あえて言えば、これだけの付加価値を提供するには、手間もかかります。ですから、薄利多売ではなく、付加価値に見合う対価をしっかりいただく(逆にそれができないお客さまはお断りする)という経営判断がなければ成り立たないとも思います。

本書は一般の法人の経理担当者にもおススメしたいと思います。会計業務が徐々にではありますが自動化する中で、経理担当者の仕事はなくなるのか。そんなことはありません。社長の右腕として資金繰りを、もっと言えば事業そのものを支えていく。そのヒントが本書には詰まっているように感じます。
posted by 岡本浩一郎 at 18:09 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年12月20日

FACTFULNESS(その2)

前回FACTFULNESSという本についてお話ししました。

人はもともと自分の見たいものを見てしまいます。良いはずだ、良くあって欲しいという思いが強ければ、あるデータ群を見ても、良い部分だけが見えてしまうし、逆に、状況が悪いのでないかという不安が強ければ、悪い部分が目立ってしまう(昔話で言えば、柳もお化けに見えてしまう)。要は自分自分のフィルターを通して物事を見ているということです。

今回、本書を通じて、人間は悪いものや怖いものを見てしまう傾向が強いということを再認識しました。本書で言うところのNegativity InstinctやFear Instinctです。特にFear Instinctは人間の進化の過程を考えると、ある意味自然とも言えるものです。怖いと感じ、それを避けてきたからこそ生き延びることができた。これらのフィルターが組み合わさることによって、世界は全体として大きく改善してきているにも関わらず、それが正しく認識されていない。それが明瞭に出るのが、冒頭の12問に対するあまりに低い正答率です。

もちろん、全てにおいて改善している訳ではないし、世界に問題はまだまだ残っています。ただ、正しく課題をとらえ、最適な打ち手を講じるためには、良い面も悪い面も可能な限り正しく把握する必要があります。

重要なのは、フィルターや罠の存在を意識し、冷徹に数字を見極めるということ。一方で、この本が素晴らしいのは、数字だけでもダメだと言い切っていること。なぜならば、数字自体が誤っている可能性も否定できないから。本書(原書)P191で著者は、以下のように語っています。

I don't love numbers.  I am a huge, huge fan of data, but I don't love it.  It has its limits.
(私は数字を愛してはいない。私はデータの大、大、大ファンだけれども、盲目的に愛することはない。なぜならば、データには自ずと限界があるから。)

この後に続く、かつてのモザンビークの大統領、Pascoal Mocumbi氏のエピソード - GDPの数字は見てはいるけれども、必ずしも正確ではない、その代わりに年に一回行われるパレードで皆が何を履いているか、そして国中を回る中で、建築がどのように進んでいるかを注視している - は非常に示唆に富みます。

数値(統計)が必ずしも正確ではないのは、発展途上国ではよくあること。現場をしっかりと見る方が、よほど正しい状況を把握できるかもしれない(もちろん、一部だけを見て全部同じと思わないといった注意は必要です)。現代のビジネスにおいても、希望する全ての数字が入手できるわけではありません。そんな中では、数字を妄信するのではなく、まず何らかの方法(多くの場合は現場を見ること)によって、現実を理解するように努めることが必要です。

The world cannot be understood without numbers, and it cannot be understood with numbers alone.  Love numbers for what they tell you about real lives.
(世界は数字なしには正確に理解することはできないし、数字だけで正確に理解することもできない。数字が現実の人生を正しく語っていることを愛そう。)

ビジネスという観点でも様々な学びがありますし、世界を正しく理解し、自らと周囲の人生をより良い方向に向けるためにもとても有益な本だと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:06 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年12月18日

FACTFULNESS(その1)

オーストラリアへの出発前の成田空港の書店で、ふと手にとったのが、「FACTFULNESS」という本。日本でも今年前半に話題になりました。軽い気持ちで買ったのですが、読んでみると、なるほど話題になるだけのいい本です。

2019121801.jpg

読み始めると、最初に12(+1)問の質問に答えることになります。例えば、「世界中の低所得国において、小学校を卒業する女の子の割合は?」という質問。選択肢はA: 20%、B: 40%、C: 60%。世界中で同じ質問をしたところ、国によって正答率にバラつきが見られるものの、どの国でも正答率が極めて低かったそうです。平均すると12問中2問のみ正解。回答は3択ですから、ランダムに答えれば正答率は33.3%のはず。つまり、人間はランダムに選ぶであろうチンパンジーにも劣っているということになります。人間はたまたま間違えているのではなく、何らかの構造的な要因で間違えている。

本書では、人間が構造的に間違える理由を、人間が無意識に持っている10種類の傾向で解説します。例えば、こちらは先進国、あちらは後進国のように、物事を二分して考えがちなGap Instinct、良いことより、悪いことの方に目が行ってしまうNegativity Instinctなど。

詳しくは是非本書を読んでいただきたいのですが、日頃から自分が考えていること、気を付けていることが実例をもって明確に、かつ平易に語られており、そうそう、と頷くポイントが多々ありました。例えば、グラフの縦軸の罠や平均値の罠。例えば、本書(原書)P40には、アメリカでSATという(日本で言えばセンター試験のような)テストを受けた男女の数学の平均値をプロットした図が示されています。1965年からずっと、男性の方が女性を明らかに上回っています。このグラフをもって、男性の方が女性よりも数学が得意だ、という結論が導けそうです。ただ、よく見てみると、このグラフの縦軸は0スタートではないため、差が極端に強調されています。絶対的な数値で言えば、直近の2016年の数値で男性が527、女性が496ですから、その差は約6%に過ぎません。ですから、男性の方が女性よりも数学が得意だという、二分化をしたがるGap Instinctによって生まれがちな一般化には無理があることがわかります。

とはいえ、平均値で男性は527、女性が496という差があるのは事実。ただ、この2016年の得点の分布を男女別にプロットしてみる(P41)と、面白い真実が見えてきます。男性と女性の分布はほとんど重なり合っていますが、女性の方が約500点を中心としたきれいな釣鐘カーブになっているのに対し、男性は600点から800点を取る優秀層の存在により、若干ですが、右側に偏ったカーブになっています。結果的に単純に平均を出せば男性の方が女性を上回る訳ですが、実際には標準的な人で言えば、男性も女性もほとんど変わらないということになります。平均値は分布を示さないという平均値の罠の一つの例と言えるかと思います。

身近な(?)平均値の罠の実例と言えば、アルトアの融資実績。アルトアが融資する際の平均金利は実績として約8%なのですが、実は8%台の方はあまり多くありません。アルトアの金利は会計データをAIで分析して得られたスコアによって決まりますが、実際の分布で見てみると、4~5%を中心とした一山、そして10%前後を中心としたよりなだらかな一山で構成された非対称のフタコブラクダになっているのです。物事の分散はだいたい釣鐘カーブになっており、平均付近が一番多いという思い込みも、人間が構造的に間違える要因の一つでしょう。

ちなみに、グラフの縦軸の罠は本ブログのこちらで、あまり突っ込んで書けてはいませんが、平均値の罠については、こちらで少し触れています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:27 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年12月04日

電子化からデジタル化へ

今日午前中に、ヤヨイヒロバでとある勉強会の第一回目を開催しました。まだその具体的な内容やメンバーについてはお話しできないのですが、驚くほど充実したメンバーです。この業界に多少は知見はある人が聞けば100人が100人驚くであろう豪華な顔ぶれ。正直、自分でもよくここまでの方々に参加していただくことができたな、と感動しています(笑)。

2019120401.jpg

税の電子申告(e-Tax)が始まったのが、2004年のこと。もう15年以上経過したことになりますが、電子申告は着実に普及しています。また社会保険の手続きなども、電子申請が徐々に広がりつつあります。

ただ、これらはあくまでも電子化であり、デジタル化ではありません。ん、電子化とデジタル化って、何が違うんだ、と思いますよね。現時点ではあくまでも個人的な定義なのですが、電子化というのは、あくまでも紙を電子化するということ。その前提となる業務は、紙が前提になったままです。つまり業務のあり方は変えずに、媒体だけを電子データにしたのが電子化。一方で、業務のあり方自体も見直すのがデジタル化と定義しています。

昨今事業のDX、デジタルトランスフォーメーションの必要性が叫ばれています。ご承知の方も多いと思いますが、これはもっとITを活用しましょう、や、Webで商品を売りましょう(どちらも手段が変わっただけ)といった単純な話ではありません。デジタルを前提とし、組織や業務のあり方、もっと言えば事業のあり方まで変えていこうというのがDXです。電子化≠デジタル化、という考え方にも相通じるものがあるのではないでしょうか。もっとも、DXという用語もややバズワード的でこの先が心配ではありますが(笑)。

弥生が事業者のお手伝いをしている確定申告や年末調整、あるいは社会保険の手続き。これらは全て昭和の時代の仕組みです。あくまでも紙を前提とした仕組み。それこそ当初はコンピュータを使うこともできなかった時代の仕組みです。確かにこれらの業務の電子化は進んできましたが、デジタル化は進んでいません。

そんな問題意識を色々な方にお話ししたところ、官民を問わず賛同していただく方が多く、今回、皆で何ができるかを考えようという勉強会が立ち上がりました。極めて大きなテーマですし、短期的に成果が出るとも思っていませんが、一歩ずつ前に進めていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:36 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年11月22日

会計事務所の生産性

今週水曜日は福岡でPAPカンファレンスの千秋楽。10/16の仙台を皮切りに、ちょうど5週間で仙台、札幌、東京、大阪、名古屋、広島、福岡の7会場で開催。その合間にオーストラリアへの出張もあり、また新製品の発表会もあり、なかなか慌ただしい一ヶ月ちょっとでした。体調を崩すこともなく、また、今回は全会場(+オーストラリア+製品発表日)とも天気に恵まれ、雨男疑惑が晴れた(?)ことが何気に一番嬉しいかもしれません。

2019112201.jpg

今回のPAPカンファレンスのテーマは会計事務所の生産性。このテーマの第一人者ということで、名南経営コンサルティング亀井さんに基調講演をお願いしました。結果的に亀井さんにもこの強行軍にお付き合いいただいてしまったことになり、感謝、感謝です。

2019112201.png

会計事務所は基本的にはサービス業ということで、製造業と異なり、生産性という概念が馴染まないようにも思えますが、実際には、サービス業でも生産性の考えは非常に重要です。生産性は、何かを生産する時の効率性を意味しますから、「生産性 =  成果 / 投入リソース」と表現することができます。ただ、この式のままでは直接的に働きかけることが難しいので、

生産性 = (有効時間 / 労働時間) × (付加価値 / 有効時間)

と分解します。こうすると、時間効率と(生産した付加価値をそれによって得られる対価で表すとして)時間単価の二つの要素があることがわかります。ここまでは一般的な話ですが、亀井さんのお話しが実践的だと感じたのは、ここから。

まず時間効率ですが、亀井さんによれば、会計事務所は一般的に稼働率(有効時間の割合)は十分に高いのだそうです。ただ一方で、過去の成果を処理する時間や何の成果も生まない時間に(ある意味で無駄に)費やされている時間も多いとのこと。稼働率を無理に上げようとするよりは、無駄な時間を削減し、その分、将来につながるいわば投資の時間に充てるべきとのことでした。

時間単価については、目安とすべき時間単価をはっきりと述べられていました。この目安を下回っているようであれば、目安まで引き上げる努力をすべきとのこと。上記のように、時間単価は、付加価値を表す対価 / 有効時間という割り算で示されますから、時間単価を上げるためには、分母を下げる、もしくは、分子を上げる必要があります。つまり、同じ付加価値を生むために必要とされる時間を削減する、もしくは、付加価値に対して得られる対価を引き上げる努力をする(もちろん両方もあり)。

何にどう時間を割いているという現状把握をどう進めるのか、また現状把握を踏まえ、分母の低減や分子の増加などをどのような順番でどのように進めるのか、これまで数多くの会計事務所と向き合ってきたからこそ得られる実践的なノウハウがみっちりと詰まった一時間でした。個人的には、最初から完璧を求めないといった点は特にうんうんと頷けるところでした。

残念ながら今回PAPカンファレンスに参加できなかったという場合には、こちらの本でじっくり語られていますので、是非どうぞ。

実際には、会計事務所の価値のあり方は多様ですし、付加価値の定義も様々だと思います。そういった意味で、今回のお話が全ての会計事務所に全く同じように適合するとは言えません。ただ、実践の方法は様々だとしても、生産性を考えることは必要ですし、その一つのフレームワークとしては非常に参考になるのではないかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:12 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年11月06日

システムトラブル

先週前半はオーストラリア出張でした。月曜日はシドニー、火曜日と水曜日はメルボルン。シドニーでは、中心部から30分ほど離れた郊外での打合せのため、空港でレンタカーを借ります。今回は、朝7時前に到着。入国審査/荷物のピックアップを経て、8時前にはレンタカーの事務所へ。まだ朝早いので、他にはお客さまはいません。ラッキー。

レンタカー会社の会員になっているので、免許証の確認など最低限のやり取りですぐに出発できるはずなのですが、今回は様子が普段と異なります。どうも話を聞いてみると、システムがダウンしているとのこと。こんな時のために、という訳ではないのですが、予約情報を印刷して持参しているため、それを見せると、クルマ自体は用意できている模様。ただ、借り出しの手続きを紙で行う必要があるとのこと。

見ていると、こちらの予約情報を参照しながら、所定の用紙に手で記入していきます。それなりの時間をかけて手書きで書類が出来上がったところで、こちらが確認してサインして手続きは完了。30分はかかったでしょうか。国際線ターミナル、かつ、まだ朝比較的早めの時間ですので、待ちもなく、何とか支障のない時間で手続きを済ませることができましたが、これがピークの時間だったらと思うと、ぞっとします。

ただ、このようなシステムトラブルは決して珍しくはない模様。係員は大変なんだよ、とぼやきつつ、それなりに慣れた感じでしたし、実際に、こんな時のために紙が用意され、それで実際に処理ができていました。

その時に思い出したのが、昨年のオーストラリア出張。深夜便での帰国だったので、街中で夕食を済ませ、夜10時ぐらいに空港に向かおうとした時のこと。タクシーをつかまえると、カードが使えず現金払いになるがいいか、と確認されました。何でもカードの処理センターが止まっているとのこと。そういえば、食事の際にもカードが使えないと言われ、慌ててATMで現金を下ろしたのですが、同じ原因だったようです。

ITが生活のあらゆる面を支えている中で、システムトラブルが与える影響は格段に広がりつつあります。ただ、私自身はシステムを提供する側だからこそ、システムを問題なく運営することの大事さは十分に理解しつつ、そこに完璧さを求めるべきでもないと考えています。なぜならば、完璧さを求めることは、コストの圧倒的な増加につながるからです。コストを2倍投入して、信頼性が2倍に向上するのであれば、それは合理性がありますし、やるべきこと。一方で、信頼性99.9%から信頼性99.99%、さらには99.999%に向上させようとすると、コストは爆発的に増加します。

どれだけのコストをかけて、どこまでの信頼性を要求すべきかは、用途によって異なります。つまり、これが常に正しいという絶対解はありません。ただ、いずれにせよ100%はありえません。そうであれば、やみくもにコストをかけて極限まで100%に近付けることを目指すよりも、100%でないことを前提にバックアップの策を用意したほうが合理的なのではないかと考えています。

この話には余談があります。今回の最終日も深夜便での帰国ということで、やはり10時頃にタクシーで空港へ。今回は、カードも無事使えたのですが、いざ空港に着いてみると、見たこともないような行列になっています。

話を聞くと入出国審査のシステムが全面的にダウンしており、チェックインの手続きができないとのこと。それでもあるところから行列が進み始めました。自分がカウンターにたどり着いたところで聞いたところ、システムでの審査をやめ(システムを切り離し)、人手での確認プロセスに切り替えたとのこと。結果的にいつもよりはだいぶ並ぶ時間は長かったのですが、無事に搭乗することができ、フライトもほぼ予定通りの時間での出発となりました。

もちろんシステムにトラブルがないのが一番。私たち自身も、システムを提供する立場として、トラブルがないように万全を期しています。ただ、100%はあり得ない中で、それでもどれだけコストをかけてでも100%を目指すのか、あるいは、いざという時の代替を考えるのか。日本は100%に拘る傾向が強いと思いますし、それも頭から否定されることではないと思います。一方で、オーストラリアの、問題はあるもの、問題があれば代替手段、という割り切りも一つの考え方なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 18:01 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年08月21日

キャッシュレス・消費者還元事業

消費税率の10%への引上げと軽減税率への準備を進めなければならないと書きましたが、ひとまず優先していただきたいのが、キャッシュレス・消費者還元事業への登録です。これは、2019年10月から2020年6月までの期間、本事業に登録済みの中小・小規模事業者で商品・サービスをキャッシュレスで購入すると、基本的に5%分のポイントが還元されるというものです。

2019082102.png

ここでいうキャッシュレスとは、最近はやり(というよりもバブルな気もしますが)のQRコード決済ももちろん含まれますが、クレジットカードやSuicaなどの電子マネーでの支払いも含まれます。

誤解されることがありますが、この事業は軽減税率に対する対策事業ではなく、消費税率10%への引上げによる景気悪化を防ぐための施策なので、ポイント還元となる商品・サービスは多岐にわたります(軽減税率のように飲食料品に限られるわけではありません)。7月末で既に登録が済んでいる事業者のリストが公開されていますが、この手の施策への感度が高いのか、いわゆる電気店が多いように見受けられます。もちろん電気店に限られるということではなく、一般的な小売店から飲食店、サービス業までが対象となりえます。

なかには、会計事務所で本事業への登録を済ませたという事例もあるようです(笑)。会計事務所は一般的に毎月の顧問契約で、支払いは口座引落しが多いかと思いますが、場合によってスポットでのコンサル契約の支払いをキャッシュレスとすれば、ポイント還元もありえることになりますね。

ただ、注意が必要なのがポイント還元を受けるためには、事業者側での事前の登録が必要となるということ。実は10月から対象となるためには、7月末までに登録を、と呼びかけられていました。これからの登録で10月に間に合うかどうかはわかりませんが、おそらくこれから駆け込み的に登録が増えるでしょうし、そうなれば登録がずるずると遅れる可能性もありますので、一日も早く登録を済ませてしまうことをお勧めします。

残念ながらこの制度が限られた準備期間の中で進めてられていることもあり、何をどうすればいいのか、情報は十分とは言えません。事業者向けのWebサイトがこちらですが、まだ「よくあるお問い合わせ」も公開されていません。問い合わせ窓口も用意されているようですが、いずれにせよ登録自体は利用している決済事業者を通じてになるということですので、直接決済事業者に問い合わせをするのが手っ取り早いのではないかと思います。対象となる中小・小規模事業者の定義、また還元対象となる商品・サービスに関しても注意が必要なので、ひとまず決済事業者に問い合わせてみることをお勧めします。

現時点でクレジットカード等の支払いを受け付けていない場合は、PaypayやLINE Payなど、この機会に自分でも使ってみてもいいかなと思える決済方法についてまずは調べてみると良いのではないでしょうか。

情報不足は消費者向けも同じで、5%還元というのがクレジットカード利用でこれまで得られていたポイント(ですとかマイル)とは別に5%となるのか、あるいは、それらも込みでの5%となるのか、判然としません。おそらく走りながら色々と明らかになってくるのだと思いますが、この還元事業が期間限定だけに混乱が収束した頃には還元も終わりとならないか少々心配です。
posted by 岡本浩一郎 at 18:27 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年06月26日

会社は株主のもの?

会社は誰のものか。ビジネススクールで当然のこととして教え込まれるのは、「会社は株主のものである」。ただ、これは日本人としてはすんなりとは受け入れがたい部分があります。会社は株主のための金儲けの道具なのか、あるいは、会社はお客さまに価値を提供し、ひいては社会に価値を提供するための公器なのか。さらに日本の場合には、従業員という疑似的家族、多くが従業員出身である経営者も含めて「自分たち」のものであるという意識も強いかと思います。

それでも資本主義の原理からは、会社は株主のものであるということを明確にした、という意味で今回のLIXILの株主総会は大きな転換点になるような気がします。会社の舵取りを担う取締役は株主が選任する。教科書的には当たり前のことですが、日本においてはこれまでほとんどの場合、会社側(現経営陣)が選定した取締役候補を株主総会で当たり前のように追認することが多かったのも事実。それが、今回のLIXILの株主総会では、会社側(創業家主導)と前経営者(瀬戸さん)それぞれが取締役候補を提案し、その一人ひとりを株主が選ぶということになりました。結果的に瀬戸さん陣営が取締役会の過半を占め、瀬戸さんがCEOに復帰するという劇的な結果となりました。

ただ、会社は100%株主のものかと言い切れるかというと、私はそう単純ではないと思っています。会社はある意味においてはお客さまのものでもあるし、また、従業員のものでもある。これらは矛盾する概念ではなく、むしろこれらを同時に成立させるからこそ、良い会社として存在しうるのだと思います。従業員がオーナーシップを持ち、「自分の会社」という誇りと愛着を持つからこそ、良い製品やサービスを提供できる。お客さまがそれら製品やサービスを良いものだと判断し、利用していただけるからお金をいただくことができる。そしてお客さまにお金をお支払いただくことによって、売上と利益が生まれ、結果的に株価や配当という形で株主に還元することができる。これらは全てつながっています。

そういった意味で、今回の一連の騒動は、資本市場の原理として、株主が一義的には会社のオーナーであるということを明確に示せたという意味では意義がありますが、一方でLIXILの今後という意味では、大きなダメージが残っているのではないでしょうか。この8ヶ月間の騒動は、お客さまからの信頼、あるいは従業員の誇りや愛着という意味では極めて大きなダメージだと思います。株価や配当という形で株主に報いるだけでなく、(むしろそのためにも)従業員の誇りや愛着、そしてお客さまからの信頼をどう取り戻すのか。課題は多いと思いますが、プロ経営者が本当の意味で企業を変革に導き結果を残したという良い事例となるよう、是非頑張っていただきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:34 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年01月25日

右脳思考

私がBCG(ボストン コンサルティング グループ)時代にお世話になった内田さん(現在は早稲田大学ビジネススクール教授)が出された新著が「右脳思考」。タイトルでピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、「仮説思考」、「論点思考」に続く、「思考シリーズ」の新作ということになります。

2019012501.jpg

ただ、前作2作に関しては、「BCG流 問題発見・解決の発想法」そして「BCG流 問題設定の技術」と「BCG流」の看板がありましたが、今回はBCG流は封印(?)。それもそのはずで「ロジカルシンキングの限界を超える観・感・勘のススメ」「優れたビジネスマンは勘で仕事する」と優秀を自認する経営コンサルタントであれば目を剥きそうなコピーです。

私は、理系出身(僭越ながら内田さんの後輩) & ビジネススクール修了 & 経営コンサルタント出身なので、ロジックの塊と思われがちです。本書で言えば、「左脳型」ということになります。ただ、私は実際にはかなり「右脳型」。もちろんロジックは大事ですが、それ以上に、想いやストーリーを重視しています。もっともこれがはっきりしてきたのは、やはり弥生の社長になってからでしょうか。ロジックは大事だけれども、それだけでは人は動きません。自分自身はもちろん、社員みなを動かすのは想いやストーリーだと思っています。

ロジックは成功させるための必要条件だけれども、十分条件ではありません。社内で提案があり、それがロジカルだとしても、そこに提案者の想いがなければ答えはノーです。どんなにロジックを積み上げても、100%の成功を保証することはできません(仮に100%の成功が保証されているのであれば既に誰かがやっているはず)。学生時代の試験と違って、100%の正解はない。むしろ大事なのは、自らの行動によって、いかに正解とするか、成功させるか。その時に必要なのはやり抜こうとする想いです(以前も「正解なんてない」という記事でもお話ししました)。そういった意味でロジックが弱い/想いは強い提案と、ロジックは強い/想いは弱い提案とどちらがいいかと言えば、前者です。ロジックは補強できますが、想いはなかなか補強できません。

もう一つ、ロジックとしては成り立っているけれど、答えがノーになりがちなパターンは、大きな流れを見失っているケースでしょうか。ある一定の範囲内においては、ロジック的に正しいけれど、大きな視野で見ると最適ではない、というケース。むろんリソースが無限大であれば、ありとあらゆることに手を出すこともありでしょうが、実際にはリソースが限られますから、できるだけ大きな成果を出せる領域に絞り込んでいく必要があります。その時に必要なのは時代の流れを読み、ストーリーとして組み立てる力です。

流れの裏には必ずそれを動かす要因があるので、実はロジカルではあるのですが、必ずしもわかりやすい調査データがある訳ではないので、パッと見、感覚や勘に見えてしまう。私が弥生の社長に就任した際に、弥生はクラウドに取り組むと宣言しました(当時はSaaSという言い方しかありませんでしたが)。周りからは、流行りにのっている、ですとか、ノリで言っていると見られていても全く不思議ではありませんが、テクノロジーの流れを踏まえれば、私としては当然の判断でした。BCG的に言えば、メガトレンドとなるでしょうか。

最終的にアウトプットを生むためには必要なのは、やり抜く力。そしてそのやり抜く力を生むためには、左脳(ロジック)だけではなく、右脳(観・感・勘)も必要です。左脳と右脳のキャッチボールで実効性のあるビジネスプランを構築し、それを自らの意志で(自らを腹落ちさせ)やり抜く。本書は、ロジックに自信のない方はもちろん、ロジックに自信のある方にとっても、ブレークスルーのきっかけになりうるのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:06 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年12月18日

PayPay祭り

既に終わってしまったので、ややタイミングを逸した気がしますが、私もPayPay祭りに参戦しました。11月の終わり頃に20%還元、総額で100億円を還元という太っ腹なキャンペーンを知り、これは利用せねばと、キャンペーン開始前の週末にアプリをインストール。キャンペーン開始(12月4日)を待ちわびていました。

弥生の本社は秋葉原ですから、家電量販店は選びたい放題ですが、オフィスのすぐ隣にはビックカメラがあります。朝から行きたいのをぐっと我慢して、仕事が終わったところでビックカメラに。フロアによっては、だいぶ長い行列ができていました。私が目指したフロアの行列はそこまで長くはなくて一安心。お目当てのものを見つけて、早速レジに並びます。待つことしばしでようやくお会計。

結構ドキドキしながらPayPayアプリを立ち上げて、お店のバーコードを読み込み。ただ…何回もタイムアウト…。当日のお昼も取引が集中し、サービスが中断したようですが、夜になってもサービス中断とはいかないまでも、パフォーマンスが劣化していたようです。そうこうしているうちに、レジに並ぶ人も増え、背中に刺さる視線に耐え切れなくなってきたところで、ようやく支払処理を済ませることができました。その場で20%還元も確認できて、ホクホクです。ちなみに週後半には、ファミリーマートでも使ってみましたが、この時はサクッと支払い完了。昼夜を問わず突貫で取引処理能力を引き上げたのかもしれませんね。

2018121801.PNG

100億円というと一般的には巨額ですが、何十万?/何百万?の人が還元を受ければ、あっという間だろうなと思っていました。個人的には、週末の12月9日ぐらいには終わるかなと思っていましたが、実際には、12月13日で終了。「皆様に予想を上回るご愛顧をいただきまして」とのこと。

もっとも問題は、キャンペーン終了後も利用が続くかどうか。実際問題私は、キャンペーン終了後一回も使っていません(スミマセン…)。使ってみての感想としては、うーん、これだったら操作もいらないSuicaの方がいいな、というのが正直な感想。ただ、Suicaの場合、お店側の対応コストが重く、だから使えるところが限られる訳で、PayPayのようなQRコード決済の場合、どこまで利用できるところを増やせるかが鍵を握るような気がします。

そういった意味で、今回のキャンペーンで一つ工夫されていると感じるのは、20%の還元が行われるのが、即時ではなく、翌月の10日(前後)ということ。私は今回、総額で14,000円ぐらいの還元を受けたのですが、これが使えるのは実際にポイントが付与される来年1月以降。即時還元であればその20%ですぐにもう一度買い物をすることによって、実質的な還元を増やせてしまうという課題を避けたかったというのもあるのだと思いますが、一定期間に渡って繰り返し利用してもらう、結果的に利用を定着化させることを狙っているのかな、と思います。

それにしても、10日間で100億円を還元となると、取引額では(抽選で全額キャッシュバックになった人も考慮すると)400億円ぐらいにはなったのでしょうから、日本のキャッシュレス市場においては、歴史的な出来事と言っていいかと思います。さすがソフトバンクですね。
posted by 岡本浩一郎 at 19:34 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年11月28日

プロ経営者の賞味期限

以前、社長の賞味期限という記事を書いたことがありますが、今回はプロ経営者の賞味期限というお題で。私はプロ経営者として取り上げられたことがあると本ブログでも2回ほどお話ししたことがあります(その1, その2)。プロ経営者の定義は色々ありうるかと思いますが、外部から招かれて(時には全く異なる業種から)、「企業を変革に導き結果を残すことのできる経営者」という意味では、私は結果という意味ではまだまだだとは思いますが、(僭越だとは思いますが)プロ経営者としての自覚と誇りは持っています。

そんな私が気になるニュースが相次ぎました。RIZAPでの松本COOの退任LIXILグループでの瀬戸CEOの退任、そして極めつけは日産でのゴーン会長の逮捕/解任。いずれも私とは次元の違うプロ経営者ですが、やはり気になります。松本さんに関しては、その後RIZAPが買収した子会社の業績不振により赤字転落することを発表する中で、グループの構造改革に専念するためということが判明し、必ずしも一部報道にあったようなプロ経営者を生かし切れず、ではないことがわかってきました。

一方で、(LIXILの)瀬戸さんに関しては、正直悔しいだろうな、と心中を察してしまいます。プロ経営者として「席を譲れと言われれば譲る」と公言されてきた瀬戸さんですが、プロ経営者といっても、結果を出すためには一定の時間は必要です。出血を止めることは短期間でできても、再成長軌道に乗せるためには一定の時間が必要。私の場合も、これは結果につながってきた、と実感できるまでには2年かかっています。弥生の規模でもそうですから、LIXILグループという巨体ではもっと時間がかかっても不思議ではありません。瀬戸さんは就任されてから3年弱。戦線を縮小するなど、前向きではない、それでも必要な手を打ってきて、ようやく結果につながるという段階で引導を渡されるのは本意ではないでしょう。ある意味、創業家が汚れ仕事だけを瀬戸さんにまかせて、これからという時に「美味しいとこ取り」をしたと見られても不思議ではないと思います(ちょっと言い過ぎですかね…)。

他方、衝撃的なのはゴーンさん。まだ実際に何が起こったのかは明らかではありませんから、憶測で物を言うことは控えたいと思います。ただ、様々な報道を見ている中で、ゴーンさんが半ば神格化していた、ということは事実なのではないかと思います。ゴーンさんが日産のCOOに就任したのが1999年、CEOに就任したのが2001年。経営危機に瀕していた日産を立て直し、ルノー・日産・三菱アライアンスによって世界最大の自動車メーカーの座を争えるまでにしたという功績を否定することはできないでしょう。ただ、そんなゴーンさんも20年近く経営権を握っている中で、(それが犯罪となるのかどうかは別として)当人にとっての当り前が世間の常識とかけ離れてしまう、そして神格化した存在を周りが止められない、ということが起こりうるのかと思います。

3年では短すぎる、でも20年だと長すぎる。社長の賞味期限も難しいですが、プロ経営者の賞味期限はより難しいですね。良くも悪くも(それこそ死ぬまで)自分の納得のいくまで続けることのできる創業者と違い、プロ経営者は結果を出して次にバトンを渡すことがミッション。この記事の「『自分がいなければ立ちゆかない』は業績ではない」(元記事では、"Mr Ghosn might look at Renault's and Nissan's share prices as evidence that he is indispensable. But the best bosses do not regard that as an achievement.")が身に沁みます。
posted by 岡本浩一郎 at 19:20 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月28日

サマータイム (その2)

昨今導入の是非の議論が活発化しているサマータイムについて、前回は、ITの観点からは東京オリンピックに向けてという時間軸での導入は現実的ではないとお話ししました。弥生が提供しているアプリケーションは、内部的には絶対時間(UTCに変換できるシステム時刻)で管理されており、理論的にはサマータイムが導入されても動作するはずです。ただし、本当に理論通り動作するかはまた別の話。例えば弥生給与はタイムカードの仕組みと連動することができますが、サマータイムの終わりで時間を1時間戻すタイミングで退勤した場合、打刻された退勤時間は1時間進んだ時間なのか、1時間戻った時間なのか、どうやって判断するのか。外部の仕組みとも連動しながら、想定される通り動作するかは全て検証が必要ですし、それだけでも相当な工数が見込まれます。

もう一つのオプションとして、サマータイムは導入せずに、始業時間/終業時間などを皆一斉にずらす、というのもありでしょうか。例えば、4月から9月は、会社の始業時間は9時から8時に、店舗の開店時間は10時から9時にずらすなど。ただ、皆一斉にずらすとなると、法律で義務付けでもしない限り、難しそうです。もっとも、学校の登校時間は法律で決めることができるかもしれませんが、会社の始業時間や店舗の開店時間は本来自由に決められるはずですから、法律で義務付けることが妥当なのかどうか。

仮に皆で一斉にずらすとしても、今度は表示の問題があります。会社の始業時間はともかく、店舗の開店時間/閉店時間は店舗に表示されているのが普通ですから、これを全て書き換える。また、当然通勤のための公共交通機関も、9時に向けて本数を最大化するのではなく、8時に向けて本数を最大化しなければなりません。ダイヤとしては1時間単純にずらすとしても、時刻表などは全て書き換えになります。こう考えてみると、うーん、やはりあまり現実的ではありませんね。

東京オリンピックの暑さ対策という観点で残されたオプションは、競技の時間をずらすこと。それであれば日常生活への影響はありません。競技開始を朝5時とか、あるいは夜8時のように、日中を避ける。これでも、見る人は見る、というのは先般のサッカーW杯が証明したように思います(笑)。もともと昨今の国際的大会では、放映権の関係で、競技を行う現地の時間よりは、多く放映権を支払う消費地(やはり米国でしょうか)で見やすい時間が優先される傾向にありますから、日本の一般的な時間帯にこだわる必要もないように思います(もっとも、例えば米国で見やすい時間帯ということで、結果的に日本の真昼間になるようでしたら問題ですね)。

ただ、実は私個人としてはサマータイムに賛成です。あくまでも個人として、であって、弥生の社長という立場は反映されていませんが(笑)。それは、Daylight Saving Timeという正式名称が示すように、太陽を有効に活用できるから。太陽が早く上る季節は、早めに起床して、早めに仕事を開始し、そして、まだ太陽があるうちに早めに仕事を終える。私自身の米国での経験では、確かに時間を進める/遅らせるというのは面倒ですし、生活のリズム的にも若干の調整は必要です。ただ、それ以上に、太陽のある時間を有効に活用できるというのは大きなメリット。特に何をするということはなくても、仕事を終えた時/家に帰った時にまだ日があるというだけで、ウキウキします。

もちろん東京オリンピックに向けての実現は到底現実的ではありませんので、東京オリンピックというよりは、その先をにらんで、サマータイム/Daylight Saving Timeの導入の是非が議論されるといいなと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:36 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月24日

サマータイム (その1)

サマータイム導入の議論がにわかに盛り上がっています。きっかけはあと2年に迫った東京オリンピック。確かに普通に生活するだけでもバテバテなのに、この暑さの中で限界まで運動することには危険性すら感じます。

全体的な反応としては、やはり反対論が多いようですね。もっとも多くは時間をある時1時間進める/戻すなんてやったこともないし大変そうという、変わることに対する抵抗感のようにも見えます。一方で、IT業界からは切実な反対論が出ています。サマータイムへの切り替え時に時間を1時間進めることで、存在しない時間ができ、また、サマータイム終了時に1時間戻すことで同じ時間が生まれてしまいます。前者はまだ何とかなりますが、問題は後者です。時刻はトランザクションの前後関係の管理に使われますが、サマータイム終了直前の取引と、サマータイム終了直後(時間が1時間戻った後)の取引を単純に時刻で比較すれば、順番が逆転しかねないからです。これはシステムの根幹に関わる大問題です。

とはいえ、海外ではサマータイムは一般的に行われている訳で、もちろんシステム上の解決法は存在します。それは、絶対的な軸を採用すること。時刻で言えば、UTC(協定世界時)を採用することです。もともと米国の場合は一つの国の中で時差があり、LAの午後5時は、NYの午後7時より遅い、つまりローカルタイムを時刻の比較には使えません。ですから、システムの内部的にはUTCという絶対的な時間で管理するようになっています。つまりLAの午後5時(サマータイム)はUTCで翌日の午前0時、NY(サマータイム)の午後7時はUTCで午後11時、ですからUTC同士で比較すれば、LAの午後5時はNYの午後7時より遅いと正しく順番を判定することができます。

ちなみにほとんどのコンピュータの時刻は既にUTCベースになっています。具体的には、内部的にはUTCで管理しており、それを表示する際にローカルタイムに合わせるようになっています(厳密にはUTCそのものではなく、UTCに変換できるシステム時刻で管理しています)。ですから、日本でサマータイムを導入しても、突然PCの動作がおかしくなるということはありません。問題はアプリケーションで、アプリケーションのロジックの中で、ローカルタイムベースでの管理・比較するケースが存在します。

これはある意味元号と西暦の関係に似ています。元号では、昭和30年と平成30年で「30年」が被ってしまいますから、年だけでの前後関係の比較はできません。それが西暦であれば1955年と2018年と前後関係の比較が可能になります。年に関しても、かつては元号で管理しているアプリケーションも存在していましたが、平成になった際に問題が認識され、既に西暦による管理が当然になっています。だからこそ、この先予定される改元は、そこまでの大ごとにはならないのです(以前お話ししたように、出力という観点では改修が必要になりますが、システムの根幹部分にまでは手を入れずに済むようになっています)。

現実問題として、東京オリンピックまでにありとあらゆるアプリケーションをUTCベースの管理にする(既にUTCベースになっているとしても、検証は必要です)というのは不可能でしょう。ですから、残念ながら東京オリンピックに向けてサマータイムを導入するというのは現実的とは思えません。
posted by 岡本浩一郎 at 17:29 | TrackBack(0) | ビジネス