2019年08月21日

キャッシュレス・消費者還元事業

消費税率の10%への引上げと軽減税率への準備を進めなければならないと書きましたが、ひとまず優先していただきたいのが、キャッシュレス・消費者還元事業への登録です。これは、2019年10月から2020年6月までの期間、本事業に登録済みの中小・小規模事業者で商品・サービスをキャッシュレスで購入すると、基本的に5%分のポイントが還元されるというものです。

2019082102.png

ここでいうキャッシュレスとは、最近はやり(というよりもバブルな気もしますが)のQRコード決済ももちろん含まれますが、クレジットカードやSuicaなどの電子マネーでの支払いも含まれます。

誤解されることがありますが、この事業は軽減税率に対する対策事業ではなく、消費税率10%への引上げによる景気悪化を防ぐための施策なので、ポイント還元となる商品・サービスは多岐にわたります(軽減税率のように飲食料品に限られるわけではありません)。7月末で既に登録が済んでいる事業者のリストが公開されていますが、この手の施策への感度が高いのか、いわゆる電気店が多いように見受けられます。もちろん電気店に限られるということではなく、一般的な小売店から飲食店、サービス業までが対象となりえます。

なかには、会計事務所で本事業への登録を済ませたという事例もあるようです(笑)。会計事務所は一般的に毎月の顧問契約で、支払いは口座引落しが多いかと思いますが、場合によってスポットでのコンサル契約の支払いをキャッシュレスとすれば、ポイント還元もありえることになりますね。

ただ、注意が必要なのがポイント還元を受けるためには、事業者側での事前の登録が必要となるということ。実は10月から対象となるためには、7月末までに登録を、と呼びかけられていました。これからの登録で10月に間に合うかどうかはわかりませんが、おそらくこれから駆け込み的に登録が増えるでしょうし、そうなれば登録がずるずると遅れる可能性もありますので、一日も早く登録を済ませてしまうことをお勧めします。

残念ながらこの制度が限られた準備期間の中で進めてられていることもあり、何をどうすればいいのか、情報は十分とは言えません。事業者向けのWebサイトがこちらですが、まだ「よくあるお問い合わせ」も公開されていません。問い合わせ窓口も用意されているようですが、いずれにせよ登録自体は利用している決済事業者を通じてになるということですので、直接決済事業者に問い合わせをするのが手っ取り早いのではないかと思います。対象となる中小・小規模事業者の定義、また還元対象となる商品・サービスに関しても注意が必要なので、ひとまず決済事業者に問い合わせてみることをお勧めします。

現時点でクレジットカード等の支払いを受け付けていない場合は、PaypayやLINE Payなど、この機会に自分でも使ってみてもいいかなと思える決済方法についてまずは調べてみると良いのではないでしょうか。

情報不足は消費者向けも同じで、5%還元というのがクレジットカード利用でこれまで得られていたポイント(ですとかマイル)とは別に5%となるのか、あるいは、それらも込みでの5%となるのか、判然としません。おそらく走りながら色々と明らかになってくるのだと思いますが、この還元事業が期間限定だけに混乱が収束した頃には還元も終わりとならないか少々心配です。
posted by 岡本浩一郎 at 18:27 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年06月26日

会社は株主のもの?

会社は誰のものか。ビジネススクールで当然のこととして教え込まれるのは、「会社は株主のものである」。ただ、これは日本人としてはすんなりとは受け入れがたい部分があります。会社は株主のための金儲けの道具なのか、あるいは、会社はお客さまに価値を提供し、ひいては社会に価値を提供するための公器なのか。さらに日本の場合には、従業員という疑似的家族、多くが従業員出身である経営者も含めて「自分たち」のものであるという意識も強いかと思います。

それでも資本主義の原理からは、会社は株主のものであるということを明確にした、という意味で今回のLIXILの株主総会は大きな転換点になるような気がします。会社の舵取りを担う取締役は株主が選任する。教科書的には当たり前のことですが、日本においてはこれまでほとんどの場合、会社側(現経営陣)が選定した取締役候補を株主総会で当たり前のように追認することが多かったのも事実。それが、今回のLIXILの株主総会では、会社側(創業家主導)と前経営者(瀬戸さん)それぞれが取締役候補を提案し、その一人ひとりを株主が選ぶということになりました。結果的に瀬戸さん陣営が取締役会の過半を占め、瀬戸さんがCEOに復帰するという劇的な結果となりました。

ただ、会社は100%株主のものかと言い切れるかというと、私はそう単純ではないと思っています。会社はある意味においてはお客さまのものでもあるし、また、従業員のものでもある。これらは矛盾する概念ではなく、むしろこれらを同時に成立させるからこそ、良い会社として存在しうるのだと思います。従業員がオーナーシップを持ち、「自分の会社」という誇りと愛着を持つからこそ、良い製品やサービスを提供できる。お客さまがそれら製品やサービスを良いものだと判断し、利用していただけるからお金をいただくことができる。そしてお客さまにお金をお支払いただくことによって、売上と利益が生まれ、結果的に株価や配当という形で株主に還元することができる。これらは全てつながっています。

そういった意味で、今回の一連の騒動は、資本市場の原理として、株主が一義的には会社のオーナーであるということを明確に示せたという意味では意義がありますが、一方でLIXILの今後という意味では、大きなダメージが残っているのではないでしょうか。この8ヶ月間の騒動は、お客さまからの信頼、あるいは従業員の誇りや愛着という意味では極めて大きなダメージだと思います。株価や配当という形で株主に報いるだけでなく、(むしろそのためにも)従業員の誇りや愛着、そしてお客さまからの信頼をどう取り戻すのか。課題は多いと思いますが、プロ経営者が本当の意味で企業を変革に導き結果を残したという良い事例となるよう、是非頑張っていただきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:34 | TrackBack(0) | ビジネス

2019年01月25日

右脳思考

私がBCG(ボストン コンサルティング グループ)時代にお世話になった内田さん(現在は早稲田大学ビジネススクール教授)が出された新著が「右脳思考」。タイトルでピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、「仮説思考」、「論点思考」に続く、「思考シリーズ」の新作ということになります。

2019012501.jpg

ただ、前作2作に関しては、「BCG流 問題発見・解決の発想法」そして「BCG流 問題設定の技術」と「BCG流」の看板がありましたが、今回はBCG流は封印(?)。それもそのはずで「ロジカルシンキングの限界を超える観・感・勘のススメ」「優れたビジネスマンは勘で仕事する」と優秀を自認する経営コンサルタントであれば目を剥きそうなコピーです。

私は、理系出身(僭越ながら内田さんの後輩) & ビジネススクール修了 & 経営コンサルタント出身なので、ロジックの塊と思われがちです。本書で言えば、「左脳型」ということになります。ただ、私は実際にはかなり「右脳型」。もちろんロジックは大事ですが、それ以上に、想いやストーリーを重視しています。もっともこれがはっきりしてきたのは、やはり弥生の社長になってからでしょうか。ロジックは大事だけれども、それだけでは人は動きません。自分自身はもちろん、社員みなを動かすのは想いやストーリーだと思っています。

ロジックは成功させるための必要条件だけれども、十分条件ではありません。社内で提案があり、それがロジカルだとしても、そこに提案者の想いがなければ答えはノーです。どんなにロジックを積み上げても、100%の成功を保証することはできません(仮に100%の成功が保証されているのであれば既に誰かがやっているはず)。学生時代の試験と違って、100%の正解はない。むしろ大事なのは、自らの行動によって、いかに正解とするか、成功させるか。その時に必要なのはやり抜こうとする想いです(以前も「正解なんてない」という記事でもお話ししました)。そういった意味でロジックが弱い/想いは強い提案と、ロジックは強い/想いは弱い提案とどちらがいいかと言えば、前者です。ロジックは補強できますが、想いはなかなか補強できません。

もう一つ、ロジックとしては成り立っているけれど、答えがノーになりがちなパターンは、大きな流れを見失っているケースでしょうか。ある一定の範囲内においては、ロジック的に正しいけれど、大きな視野で見ると最適ではない、というケース。むろんリソースが無限大であれば、ありとあらゆることに手を出すこともありでしょうが、実際にはリソースが限られますから、できるだけ大きな成果を出せる領域に絞り込んでいく必要があります。その時に必要なのは時代の流れを読み、ストーリーとして組み立てる力です。

流れの裏には必ずそれを動かす要因があるので、実はロジカルではあるのですが、必ずしもわかりやすい調査データがある訳ではないので、パッと見、感覚や勘に見えてしまう。私が弥生の社長に就任した際に、弥生はクラウドに取り組むと宣言しました(当時はSaaSという言い方しかありませんでしたが)。周りからは、流行りにのっている、ですとか、ノリで言っていると見られていても全く不思議ではありませんが、テクノロジーの流れを踏まえれば、私としては当然の判断でした。BCG的に言えば、メガトレンドとなるでしょうか。

最終的にアウトプットを生むためには必要なのは、やり抜く力。そしてそのやり抜く力を生むためには、左脳(ロジック)だけではなく、右脳(観・感・勘)も必要です。左脳と右脳のキャッチボールで実効性のあるビジネスプランを構築し、それを自らの意志で(自らを腹落ちさせ)やり抜く。本書は、ロジックに自信のない方はもちろん、ロジックに自信のある方にとっても、ブレークスルーのきっかけになりうるのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:06 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年12月18日

PayPay祭り

既に終わってしまったので、ややタイミングを逸した気がしますが、私もPayPay祭りに参戦しました。11月の終わり頃に20%還元、総額で100億円を還元という太っ腹なキャンペーンを知り、これは利用せねばと、キャンペーン開始前の週末にアプリをインストール。キャンペーン開始(12月4日)を待ちわびていました。

弥生の本社は秋葉原ですから、家電量販店は選びたい放題ですが、オフィスのすぐ隣にはビックカメラがあります。朝から行きたいのをぐっと我慢して、仕事が終わったところでビックカメラに。フロアによっては、だいぶ長い行列ができていました。私が目指したフロアの行列はそこまで長くはなくて一安心。お目当てのものを見つけて、早速レジに並びます。待つことしばしでようやくお会計。

結構ドキドキしながらPayPayアプリを立ち上げて、お店のバーコードを読み込み。ただ…何回もタイムアウト…。当日のお昼も取引が集中し、サービスが中断したようですが、夜になってもサービス中断とはいかないまでも、パフォーマンスが劣化していたようです。そうこうしているうちに、レジに並ぶ人も増え、背中に刺さる視線に耐え切れなくなってきたところで、ようやく支払処理を済ませることができました。その場で20%還元も確認できて、ホクホクです。ちなみに週後半には、ファミリーマートでも使ってみましたが、この時はサクッと支払い完了。昼夜を問わず突貫で取引処理能力を引き上げたのかもしれませんね。

2018121801.PNG

100億円というと一般的には巨額ですが、何十万?/何百万?の人が還元を受ければ、あっという間だろうなと思っていました。個人的には、週末の12月9日ぐらいには終わるかなと思っていましたが、実際には、12月13日で終了。「皆様に予想を上回るご愛顧をいただきまして」とのこと。

もっとも問題は、キャンペーン終了後も利用が続くかどうか。実際問題私は、キャンペーン終了後一回も使っていません(スミマセン…)。使ってみての感想としては、うーん、これだったら操作もいらないSuicaの方がいいな、というのが正直な感想。ただ、Suicaの場合、お店側の対応コストが重く、だから使えるところが限られる訳で、PayPayのようなQRコード決済の場合、どこまで利用できるところを増やせるかが鍵を握るような気がします。

そういった意味で、今回のキャンペーンで一つ工夫されていると感じるのは、20%の還元が行われるのが、即時ではなく、翌月の10日(前後)ということ。私は今回、総額で14,000円ぐらいの還元を受けたのですが、これが使えるのは実際にポイントが付与される来年1月以降。即時還元であればその20%ですぐにもう一度買い物をすることによって、実質的な還元を増やせてしまうという課題を避けたかったというのもあるのだと思いますが、一定期間に渡って繰り返し利用してもらう、結果的に利用を定着化させることを狙っているのかな、と思います。

それにしても、10日間で100億円を還元となると、取引額では(抽選で全額キャッシュバックになった人も考慮すると)400億円ぐらいにはなったのでしょうから、日本のキャッシュレス市場においては、歴史的な出来事と言っていいかと思います。さすがソフトバンクですね。
posted by 岡本浩一郎 at 19:34 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年11月28日

プロ経営者の賞味期限

以前、社長の賞味期限という記事を書いたことがありますが、今回はプロ経営者の賞味期限というお題で。私はプロ経営者として取り上げられたことがあると本ブログでも2回ほどお話ししたことがあります(その1, その2)。プロ経営者の定義は色々ありうるかと思いますが、外部から招かれて(時には全く異なる業種から)、「企業を変革に導き結果を残すことのできる経営者」という意味では、私は結果という意味ではまだまだだとは思いますが、(僭越だとは思いますが)プロ経営者としての自覚と誇りは持っています。

そんな私が気になるニュースが相次ぎました。RIZAPでの松本COOの退任LIXILグループでの瀬戸CEOの退任、そして極めつけは日産でのゴーン会長の逮捕/解任。いずれも私とは次元の違うプロ経営者ですが、やはり気になります。松本さんに関しては、その後RIZAPが買収した子会社の業績不振により赤字転落することを発表する中で、グループの構造改革に専念するためということが判明し、必ずしも一部報道にあったようなプロ経営者を生かし切れず、ではないことがわかってきました。

一方で、(LIXILの)瀬戸さんに関しては、正直悔しいだろうな、と心中を察してしまいます。プロ経営者として「席を譲れと言われれば譲る」と公言されてきた瀬戸さんですが、プロ経営者といっても、結果を出すためには一定の時間は必要です。出血を止めることは短期間でできても、再成長軌道に乗せるためには一定の時間が必要。私の場合も、これは結果につながってきた、と実感できるまでには2年かかっています。弥生の規模でもそうですから、LIXILグループという巨体ではもっと時間がかかっても不思議ではありません。瀬戸さんは就任されてから3年弱。戦線を縮小するなど、前向きではない、それでも必要な手を打ってきて、ようやく結果につながるという段階で引導を渡されるのは本意ではないでしょう。ある意味、創業家が汚れ仕事だけを瀬戸さんにまかせて、これからという時に「美味しいとこ取り」をしたと見られても不思議ではないと思います(ちょっと言い過ぎですかね…)。

他方、衝撃的なのはゴーンさん。まだ実際に何が起こったのかは明らかではありませんから、憶測で物を言うことは控えたいと思います。ただ、様々な報道を見ている中で、ゴーンさんが半ば神格化していた、ということは事実なのではないかと思います。ゴーンさんが日産のCOOに就任したのが1999年、CEOに就任したのが2001年。経営危機に瀕していた日産を立て直し、ルノー・日産・三菱アライアンスによって世界最大の自動車メーカーの座を争えるまでにしたという功績を否定することはできないでしょう。ただ、そんなゴーンさんも20年近く経営権を握っている中で、(それが犯罪となるのかどうかは別として)当人にとっての当り前が世間の常識とかけ離れてしまう、そして神格化した存在を周りが止められない、ということが起こりうるのかと思います。

3年では短すぎる、でも20年だと長すぎる。社長の賞味期限も難しいですが、プロ経営者の賞味期限はより難しいですね。良くも悪くも(それこそ死ぬまで)自分の納得のいくまで続けることのできる創業者と違い、プロ経営者は結果を出して次にバトンを渡すことがミッション。この記事の「『自分がいなければ立ちゆかない』は業績ではない」(元記事では、"Mr Ghosn might look at Renault's and Nissan's share prices as evidence that he is indispensable. But the best bosses do not regard that as an achievement.")が身に沁みます。
posted by 岡本浩一郎 at 19:20 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月28日

サマータイム (その2)

昨今導入の是非の議論が活発化しているサマータイムについて、前回は、ITの観点からは東京オリンピックに向けてという時間軸での導入は現実的ではないとお話ししました。弥生が提供しているアプリケーションは、内部的には絶対時間(UTCに変換できるシステム時刻)で管理されており、理論的にはサマータイムが導入されても動作するはずです。ただし、本当に理論通り動作するかはまた別の話。例えば弥生給与はタイムカードの仕組みと連動することができますが、サマータイムの終わりで時間を1時間戻すタイミングで退勤した場合、打刻された退勤時間は1時間進んだ時間なのか、1時間戻った時間なのか、どうやって判断するのか。外部の仕組みとも連動しながら、想定される通り動作するかは全て検証が必要ですし、それだけでも相当な工数が見込まれます。

もう一つのオプションとして、サマータイムは導入せずに、始業時間/終業時間などを皆一斉にずらす、というのもありでしょうか。例えば、4月から9月は、会社の始業時間は9時から8時に、店舗の開店時間は10時から9時にずらすなど。ただ、皆一斉にずらすとなると、法律で義務付けでもしない限り、難しそうです。もっとも、学校の登校時間は法律で決めることができるかもしれませんが、会社の始業時間や店舗の開店時間は本来自由に決められるはずですから、法律で義務付けることが妥当なのかどうか。

仮に皆で一斉にずらすとしても、今度は表示の問題があります。会社の始業時間はともかく、店舗の開店時間/閉店時間は店舗に表示されているのが普通ですから、これを全て書き換える。また、当然通勤のための公共交通機関も、9時に向けて本数を最大化するのではなく、8時に向けて本数を最大化しなければなりません。ダイヤとしては1時間単純にずらすとしても、時刻表などは全て書き換えになります。こう考えてみると、うーん、やはりあまり現実的ではありませんね。

東京オリンピックの暑さ対策という観点で残されたオプションは、競技の時間をずらすこと。それであれば日常生活への影響はありません。競技開始を朝5時とか、あるいは夜8時のように、日中を避ける。これでも、見る人は見る、というのは先般のサッカーW杯が証明したように思います(笑)。もともと昨今の国際的大会では、放映権の関係で、競技を行う現地の時間よりは、多く放映権を支払う消費地(やはり米国でしょうか)で見やすい時間が優先される傾向にありますから、日本の一般的な時間帯にこだわる必要もないように思います(もっとも、例えば米国で見やすい時間帯ということで、結果的に日本の真昼間になるようでしたら問題ですね)。

ただ、実は私個人としてはサマータイムに賛成です。あくまでも個人として、であって、弥生の社長という立場は反映されていませんが(笑)。それは、Daylight Saving Timeという正式名称が示すように、太陽を有効に活用できるから。太陽が早く上る季節は、早めに起床して、早めに仕事を開始し、そして、まだ太陽があるうちに早めに仕事を終える。私自身の米国での経験では、確かに時間を進める/遅らせるというのは面倒ですし、生活のリズム的にも若干の調整は必要です。ただ、それ以上に、太陽のある時間を有効に活用できるというのは大きなメリット。特に何をするということはなくても、仕事を終えた時/家に帰った時にまだ日があるというだけで、ウキウキします。

もちろん東京オリンピックに向けての実現は到底現実的ではありませんので、東京オリンピックというよりは、その先をにらんで、サマータイム/Daylight Saving Timeの導入の是非が議論されるといいなと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:36 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月24日

サマータイム (その1)

サマータイム導入の議論がにわかに盛り上がっています。きっかけはあと2年に迫った東京オリンピック。確かに普通に生活するだけでもバテバテなのに、この暑さの中で限界まで運動することには危険性すら感じます。

全体的な反応としては、やはり反対論が多いようですね。もっとも多くは時間をある時1時間進める/戻すなんてやったこともないし大変そうという、変わることに対する抵抗感のようにも見えます。一方で、IT業界からは切実な反対論が出ています。サマータイムへの切り替え時に時間を1時間進めることで、存在しない時間ができ、また、サマータイム終了時に1時間戻すことで同じ時間が生まれてしまいます。前者はまだ何とかなりますが、問題は後者です。時刻はトランザクションの前後関係の管理に使われますが、サマータイム終了直前の取引と、サマータイム終了直後(時間が1時間戻った後)の取引を単純に時刻で比較すれば、順番が逆転しかねないからです。これはシステムの根幹に関わる大問題です。

とはいえ、海外ではサマータイムは一般的に行われている訳で、もちろんシステム上の解決法は存在します。それは、絶対的な軸を採用すること。時刻で言えば、UTC(協定世界時)を採用することです。もともと米国の場合は一つの国の中で時差があり、LAの午後5時は、NYの午後7時より遅い、つまりローカルタイムを時刻の比較には使えません。ですから、システムの内部的にはUTCという絶対的な時間で管理するようになっています。つまりLAの午後5時(サマータイム)はUTCで翌日の午前0時、NY(サマータイム)の午後7時はUTCで午後11時、ですからUTC同士で比較すれば、LAの午後5時はNYの午後7時より遅いと正しく順番を判定することができます。

ちなみにほとんどのコンピュータの時刻は既にUTCベースになっています。具体的には、内部的にはUTCで管理しており、それを表示する際にローカルタイムに合わせるようになっています(厳密にはUTCそのものではなく、UTCに変換できるシステム時刻で管理しています)。ですから、日本でサマータイムを導入しても、突然PCの動作がおかしくなるということはありません。問題はアプリケーションで、アプリケーションのロジックの中で、ローカルタイムベースでの管理・比較するケースが存在します。

これはある意味元号と西暦の関係に似ています。元号では、昭和30年と平成30年で「30年」が被ってしまいますから、年だけでの前後関係の比較はできません。それが西暦であれば1955年と2018年と前後関係の比較が可能になります。年に関しても、かつては元号で管理しているアプリケーションも存在していましたが、平成になった際に問題が認識され、既に西暦による管理が当然になっています。だからこそ、この先予定される改元は、そこまでの大ごとにはならないのです(以前お話ししたように、出力という観点では改修が必要になりますが、システムの根幹部分にまでは手を入れずに済むようになっています)。

現実問題として、東京オリンピックまでにありとあらゆるアプリケーションをUTCベースの管理にする(既にUTCベースになっているとしても、検証は必要です)というのは不可能でしょう。ですから、残念ながら東京オリンピックに向けてサマータイムを導入するというのは現実的とは思えません。
posted by 岡本浩一郎 at 17:29 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年08月22日

キャッシュレス in the US

先週は夏休みで米国にいましたが、昨今キャッシュレスの話に関わっていることもあり、キャッシュレス化の状況について観察してきました(命の洗濯と言いつつ、仕事も忘れないのは好きだからでしょうか)。以前もご紹介したキャッシュレス・ビジョンによると、2015年時点での米国のキャッシュレス決済比率は45.0%。これはキャッシュレス化の先頭集団とまでは言えなくとも、同時点で18.4%の日本とは大きな差があります。

2018082201.JPG
(イメージ画像、笑)

今回の観察結果ですが、残念ながら(?)意外にまだまだ現金は活躍しているな、ということ。むろん、日本に比べるとクレジットカード/デビットカードで支払う人が圧倒的に多いのですが、それでも、観察していると、意外に現金で支払っている人もいることがわかります。傾向としてはやはりお歳を召した方が多いように思いますし、また日本と米国で異なる事情としてクレジットカードを作れない人が多いという背景もあるのかもしれません。

夏休みということで日本人の観光客も多かったのですが、やはり(?)現金で支払っている人が多い印象でした。日本でも現金で払っているので、海外でもそのまま現金で、ということでしょうか。私は日本では一定額以上はクレジットカード、それ以下は現金派ですが、海外では可能な限りクレジットカードです。その理由の一つは小銭の扱いが不要になること。日本円は慣れ親しんでいますから、どれが何円というのはパッと分かりますが、米ドルに関しては(2年間住んだ私でも)エーっと、どれが10セント(Dime)だっけと少し考えてしまいます。米ドルもそうですが、海外では25セント(Quarter)など日本と違う単位の硬貨があることも一因でしょうね。クレジットカードでは小銭の扱いが一切不要になりますから、その点ラクです。今回も日本から持参した数十セントの硬貨は結局使わずじまいでした。

一方で、米国の場合は現金がないと困るシーンも確実に存在します。それはチップ。荷物を運んでもらったり、クルマを出してもらったり、部屋を掃除してもらったり(ちなみに、一番チップの金額が大きいのはレストランでの支払い時ですが、これは飲食代と合わせてクレジットカードで支払うことができます)。クレジットカードがありますから$100札はいらなくても、チップのためには$1札がそれなりな枚数常時必要になります。私の場合、ホテルにチェックインする際に一定額を$1札に両替してもらうように心掛けています。

これはキャッシュレス化が進む上でどうなるんでしょうか。チップも例えばQRコードで支払えるようになるのか(ただチップはさりげなくスマートに渡すものなのに、スマートフォンでQRコードをかざすというのもどうかと思いますが)。チップ用のアプリというのも存在するようですが、あまり普及しているようには見受けられません。はたまた、キャッシュレス化の進展とともに、チップという習慣がなくなっていくのか(その分サービス料という形で一律で課金するのもありかと)。

逆に言えるのは、チップという習慣がない分、本来は日本の方がキャッシュレス化が進んでもおかしくはないということですね。短期間で世界最高レベルのキャッシュレス決済比率を目指すというのはあまり現実感はありませんが、米国レベルであれば十分可能なのではないかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:43 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月26日

キャッシュレス化の光と影

キャッシュレス化を推進すべき(ただし課題は大きい)と書いてきましたが、では、私自身のキャッシュレス度はどうかというと、うーん、キャッシュレス化率は50%ぐらいでしょうか。ただ、一定額以上の支払いはほぼキャッシュレス(クレジットカード)なので、金額ベースで言えばキャッシュレス化率80%ぐらいにはなっているのではないかと思います。

そんな私ですが、先日思わぬことで一日間完全キャッシュレス生活を強いられることになりました。急用で出かけることになったのですが、急用過ぎたこともあって、財布を忘れるという失態(念のためですが、普段はそういったことはありません、笑)。持っているのはiPhoneのみ。気が付いたのは家を出て30分後で既に時間的に引き返せない状態。えーい、何とかなるか、と思ってそのまま出かけました。結論的に言えば、(ほぼ)何とかなりました。その気になれば、キャッシュレスで何とかなるものです。むろん、ちゃんとSuicaが使えるよね、と事前に確認したり、普段よりは少し気を使いましたが。

ただ、実は一つだけキャッシュレスでは何ともならないものがありました。冠婚葬祭に関わるものは、キャッシュレスとはいきません(人から借りるはめになりました)。少し前の日経新聞で「キャッシュレス先進国スウェーデンの光と影」という記事がありましたが、記事にもある通り、キャッシュレス化の影の部分にどう対処するかは大きな課題だと感じます。記事中に「長男のクリスマスのお祝いに日本のお年玉のように現金を渡そうと銀行の窓口に現金を引き出しにいったら、現金が不足していて1クローナ紙幣100枚しかおろすことができなかった。日本円にすると約1,300円」とありますが、銀行にそれだけの現金しかないというのは驚きです。既にキャッシュレス化が進んだスウェーデンとまだまだこれからの日本では状況は異なりますが、「やはり現金でないと」という用途があることは事実かと思います。

結果的に誰かを決済のネットワークから排除することにならないか、というのも、キャッシュレス化で慎重に考えるべきポイントです。上述の記事でも、やはりスウェーデンで「90歳になる祖母も困った経験をした。最近、自分の洋服を買おうとしたら、お店で受け付けてもらえず買い物ができなかったのだ」とありますが、これは当然日本でも起こりうる話です。ある意味近い話としては、最近は中国でキャッシュレス化が進んでいるために、中国を訪問する外国人にはむしろ不便になっているということを聞きます。

あまり話題にはなりませんが、障碍者の方にとってキャッシュレスがどのようなインパクトを持つのかも慎重に考えるべきかと思います。コインは大きさと形で識別がつくようになっていますし、あまり意識することはありませんが、紙幣にも識別マークがついています。

もちろん、今のままがいいと言うつもりはありません。そもそも今のように汎用的に利用できる紙幣が日本で普及したのはせいぜい150年前のこと。今の常識は、ここ150年ほどの常識に過ぎません。お年玉やお祝儀の常識も時代と共に変わっていくでしょう。とはいえ、キャッシュレス化の「光」だけではなく、「影」の部分もキチンと認識し、現実的な対処を考えていくべきだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:16 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月24日

キャッシュレス化の方策

前回は、キャッシュレス化の意義はある一方で、実際に推進する上ではカベが存在するとお話ししました。キャッシュレス支払いができるお店でも現金を好むという消費者側のカベと、キャッシュレス支払いを受けられる設備はあるお店でも、実際には現金での支払いを好む店舗側のカベ。なおかつ、これらのカベは一方を崩そうとすると、他方のカベをさらに高くする可能性があると。

例えば、消費者側のインセンティブを増やそうとポイントによる還元を増せば、店舗側の手数料を増やすことにつながり、結果的に、店舗側のカベ(ディスインセンティブ)を増やしかねないというジレンマがある訳です。

このジレンマを解消する、もっと言えば、社会的な仕組みを大転換するためには、やはり国の役割が大きいのではないかと考えています。ヒントは韓国にあります。実は韓国は、世界でも有数の(というよりトップの)キャッシュレス先進国。少し前にもお話ししたように、2015年時点での日本のキャッシュレス決済比率が18.4%なのに対し、韓国は実に89.1%です。キャッシュレス・ビジョンでも解説されていますが、韓国では1999年から2002年というごく短期間のうちに、クレジットカード発行枚数を2.7倍に、そしてクレジットカード利用金額を6.9倍に急拡大させることに成功しました。

その方策は是非キャッシュレス・ビジョン(P14)をご覧いただきたいのですが、個人的に注目しているのが、年間クレジットカード利用額の20%の所得控除を認めるという制度(ただし、上限あり)。何と、クレジットカードで支払うとそのうちの一定額が税金を計算する上での控除対象となる(=節税になる)のです。つまりクレジットカードで支払うことに対して、店舗側に代わって、国がインセンティブを提供している訳です。これであれば、ジレンマに陥らないですよね。

とはいえ、それでは国にとってのメリットは何なのか? 国にとってのメリットがなければ、インセンティブを出す意味がありません。色々な解釈が成り立つと思いますが、この韓国のクレジットカード支払い推進には、1) 消費の活性化、2)脱税の防止という二つの目的があったと言われています。この時期は韓国では通貨危機からの脱出を図っている時期であり、消費を活性化させるためには手段を問わずという状況だったのかもしれません(ただ、この反面、2000年以降家計負債が増え続けていることが韓国経済のリスクとも言われています)。

興味深いのが、脱税の防止という目的です。上述の所得控除を認めるために、クレジットカードで支払いをする度に、それがデータとして国に送信されるという仕組みになっています。つまり、消費者にクレジットカード支払いのインセンティブを提供することによって、一定の税収減は許容しつつ、脱税を防止することによって、全体として税収を増加させようということです。

ちなみに、韓国では2005年には現金領収書という制度が導入され、現金での支払いの際にも売上データは国に送信されるようになっています(この場合も消費者には所得控除というインセンティブがあります)。現金支払いではレバレッジという消費の活性化効果はありませんから、明らかに脱税の防止が目的になっています。

弥生は事業者の味方ですから、単純に事業者の税負担が増えるだけの制度には賛成できませんが、そもそもの話として課税は公正であるべきです。理想的に言えば、売上がデータとして捕捉されることによって公正な課税がなされ、同時に徴税コストが下がるのであれば、それを税額の控除や、もっと言えば税率の引き下げのような形で事業者に還元されるべきだと考えています。

しかし、残念ながら日本の税制は建て増しに終始しがち。ですから、この種の制度が短期間で導入されることは考えにくいでしょう。ただ、人口も減少し、より効率的な社会運営が求められる中で、単純にキャッシュレス決済比率を多少向上させるという発想ではなく、社会的な仕組みを大きく作りかえるぐらいの覚悟が必要なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 16:47 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月20日

キャッシュレス化のカベ

APIの話とキャッシュレスの話を行ったり来たりしていますが、今日はキャッシュレスについて。前回は、キャッシュレス化の意義についてお話ししました。キャッシュレス化の意義の一つは社会的なコストを下げること。そしてもう一つの大きな柱は、キャッシュレス化によって、データを収集し、新たな価値を生み出すこと。

だからこそ、キャッシュレス化を推進すべき。この方向性自体には私は全く異論ありません。ただ、その方法論となると、なかなか一筋縄ではいかないと考えています。よく言われることとして、日本ではクレジットカード(や電子マネー等)が使えないお店が多い、だからキャッシュレス化が進まない。これを打破するために、キャッシュレス支払いを処理する端末(CAT端末など)の導入費用を補助し、お店のクレジットカード等の受け入れを促すべき、といった議論があります。

このロジック自体、必ずしも間違ってはいないと思いますが、それだけで全てが解決するほど単純ではありません。

確かにカード等を使えない店舗の存在がキャッシュレス化へのハードルとなっているのは事実ですが、一方、カード等を使える店舗でも現金を選ぶお客さまが相当に多いという現実を無視するわけにはいきません。代表例が百貨店ですが、一般的に百貨店はクレジットカード支払いができるようになっていますし、種類にはよりますが、電子マネーを利用できることも珍しくはありません。つまり、キャッシュレス・レディー。にもかかわらず、現金で支払う方が多い。その理由は様々でしょう。現金に対する信頼か、拘りか、あるいは、キャッシュレスに対する不安なのか抵抗感なのか、はたまた、単純にこれまでの習慣を変えたくないのか。

これらの消費者側のカベに向き合わないことには、キャッシュレス化が大きく進むことはないでしょう。

同時に、店舗側のカベにも向き合う必要があります。店舗側のカベは、クレジットカード支払いを受けられる店舗であっても、現実には現金払いを好むという事実。よくありますよね。ランチは現金支払いのみとか、このお得なプランは現金払いに限るとか。店舗側の事情もよくわかります。クレジットカードの取扱手数料は一般的に3%前後と言われますが、特に利幅の薄い業態において、決して無視できないコストです。また、資金繰りの面でも現金で払ってもらった方が有利。こういった事情がある中で、単純にCAT端末の導入費用の補助を行っても、CAT端末自体は導入されるかもしれませんが、実際のキャッシュレス支払いは進みません。

今後キャッシュレス化を推進する上では、こういったカベに対する打ち手を積み重ねる必要があります。難しいのは、消費者側のカベに対する打ち手が、結果的に店舗側のカベを高くすることにつながりかねないということ。

消費者側のカベを崩すための一つの打ち手として、ポイントのようなインセンティブを強化することが考えられます。クレジットカード払いであれば、x%分のポイントが溜まるといったような。1%でもチリが積もれば山となるですが、これが例えば5%や10%になれば、クレジットカード払いを選ぶ消費者は確実に増えるでしょう。

しかし、です。これらポイントは何もないところから生まれる訳ではありません。消費者にインセンティブを提供するためには、当然、その原資が必要。そしてその原資は通常、店舗側にかかる手数料から賄われます。つまり、消費者側のインセンティブを増やそうとすれば、店舗側の手数料を増やすことによって、店舗側のカベ(ディスインセンティブ)を増やしかねないというジレンマがある訳です。

逆に店舗側のカベを崩すために手数料を下げようとすれば、当然消費者に提供するインセンティブを削る必要があります。これもまたジレンマ。

キャッシュレス化の意義は確かにありますし、だからこそキャッシュレス化は推進すべき。実際問題として、何もしなかったとしても、キャッシュレス支払の割合はじわじわと増えていくでしょう。ただ、短い時間軸の中でキャッシュレス化を急速に進めようとすると、正直なかなか難しいと感じています。

もっとも、あくまでも個人的に、ですが、策はあると思っています。このジレンマを解消するためには、国の役割が大きいと思っています。CAT端末の導入補助といった小手先ではなく、もっと大きな仕組みが必要だと考えています。その具体策についてはまた改めて。
posted by 岡本浩一郎 at 18:04 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月13日

なぜキャッシュレスなのか

日本は現金社会。逆に言えば、キャッシュレス化が進んでいないと言われます。日本のキャッシュレス決済比率(= キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷国の家計最終消費支出)は2015年で18.4%。お隣の韓国の89.1%は別格としても、イギリスやアメリカなどが50%前後ですから、キャッシュレス化という観点で大きく出遅れていることは事実かと思います。

一方で、この事実自体は、日本の長所を表しています。日本では偽札が問題になることはほとんどありませんし、盗難にあうリスクも諸外国と比べれば圧倒的に低い。そしてATMが全国津々浦々に存在し、いつでも現金を引き出すことができる。他国では、現金に対する信頼が低い、あるいは現金を持ち歩くことがリスクとみなされる、あるいは、現金を入手する手間が大きいといった要因があるからこそ、キャッシュレス決済が進んだという事情があります。つまり日本でキャッシュレス化が進まないのは、現金決済が安心で、利便性が高いから。これ自体はむしろ褒められるべきですよね。

ただ、現金社会であるために、実は社会全体として大きなコストが発生しています。野村総合研究所の試算では、現金支払のインフラを維持するために、社会全体として年間1兆円を超えるコストが発生しています。わかりやすいところでは、現金(紙幣・貨幣)の製造コストですが、これらは650億円に過ぎません。コストが大きくかかっているのは、ATMを設置し、維持・運営するコスト(合計で7,000億円近く)や小売店舗で現金を管理するための人件費(レジ締めなど、5,000億円)。みずほフィナンシャルグループでは、間接的な費用まで含めれば、コストは約8兆円に達すると試算しています。

確かに現金は、便利です。24時間365日、どこでもおろせるし、どこでも使える。しかしそのためには、膨大なコストがかかっているということです。一方で日本の人口は明確に減少を始めており、これまでは意識もされなかった社会的コストが徐々に問題として顕在化してきています。わかりやすいところでいえば、店舗のレジを担当するスタッフを確保することも難しくなってきています。

また、現金決済では、誰がどこでいつ、何にいくら支払ったのかを追跡することが困難です。現金決済ならではの匿名性は、長所といえば長所ですが、誰がどこでいつ、何にいくら支払ったのかをデータとして分析することによって、新しい価値を生み出すという観点からは大きな障壁です。データ分析を通じて、お客さまの行動を可視化することにより、お客さまにより良い商品やサービスを提供する。

しかし、行動が可視化されることに気味の悪さがあるのは事実です。データを入手し、お客さまに新たな価値を提供したいというのは、製品/サービスを提供する側の一方的な想い(いわばサプライヤーズ・ロジック)であり、それをお客さまがどう思うのかは別問題です。お客さまに納得頂くためには、どんなデータがどのように扱われ、それがお客さまにとってどんなメリットにつながるのかをしっかりと示す必要があるでしょう。

つまり、キャッシュレス化の意義の一つは社会的なコストを下げること。そしてもう一つの大きな柱は、キャッシュレス化によって、データを収集し、新たな価値を生み出すこと。とはいえ、現実にキャッシュレス化を進めるためには、まだまだ超えなければいけないカベが複数存在しています。カベの正体とその傾向と対策についてはまた次回に。
posted by 岡本浩一郎 at 23:33 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年07月11日

キャッシュレス・ビジョン

少し前に「キャッシュレス・ビジョン」の策定にかかわったとお話ししました。もともと昨年の秋から、クレジットカード会社におけるAPIのあり方を検討する「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」の委員として活動してきました。その成果は、クレジットカードデータ利用に係るAPIガイドラインとして4/11に経済産業省から公表されています。

ただ、API(特に金融機関のデータを受け取る参照系API)は、既に完了した取引の結果をデータとして受け取るに過ぎません。もちろんそれはそれで価値はあるのですが、取引そのものがどうあるべきか、もっと視野を広げるべきではないか、という提言があり、検討会のスコープを広げることになりました。APIで取引の結果をデータ(=デジタル)で受け取ることはできても、取引自体(特に小売取引)がお札や小銭での支払い(=アナログ)のままでは、本当の意味での利便性向上や効率化にはなりません。取引のあり方そのものを見直そう、より具体的に言えば、諸外国と比較しても低いキャッシュレス取引の割合をどのように増やしていくかを考えよう、とスコープが飛躍的に広くなったという経緯があります。

結果的に、「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」と、APIの名前が入る検討会でありながらも、実際にはキャッシュレスの推進について議論した時間の方が圧倒的に長かったような気がします(笑)。そしてその成果として作成したのが、やはり4/11に経済産業省から公表されたキャッシュレス・ビジョンという訳です。

そしてこのキャッシュレス・ビジョンを産官学が連携して具現化するために、つい先日、キャッシュレス推進協議会という組織が発足しました。弥生はこの協議会の初期メンバーとして、今後もかかわっていきます。目に見えませんし、それが故になかなか実感できるものではありませんが、日本人が当たり前のように享受している現金という仕組みの維持には、実は膨大な社会的コストがかかっています。社会全体の効率を考える上で、キャッシュレス化は避けて通ることはできません。

もっとも、キャッシュレス化は少し掛け声をかければすんなり進むほど単純ではないとも思っています。私自身、一定額以上の支払いはほとんどクレジットカードですが、少額は逆にほとんど現金です。キャッシュレスの是非については、個人的に色々と思うところがありますが、長くなりますので、またの機会にじっくりとお話ししたいと思います。

また、弥生(とそのお客さま)という観点からは、支払い手段としてのキャッシュレスももちろんなのですが、その結果をデジタルでどう受け取れるようにするのか(電子レシートやカード会社API)を着実に進めていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:35 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年05月23日

新元号は来年4月公表

先週、政府は来年5月1日に切り替わる新元号について、同年4月1日の公表を想定して準備を進めると発表しました。日経では、「新元号公表、改元1カ月前に システム改修対応促す」との見出しで記事となりました。

しかし、この見出しに違和感を感じたのは私だけでないはず。特にIT業界の人は等しく、「エッ?」と思われたのではないでしょうか。半年前に公表するからシステム改修の対応を、であればまだわかりますが、1ヶ月前で、改修せよと言われても。

システムで新元号に対応する範囲は大きく入力系と出力系に分かれます。入力系は、新元号で日付を入力できるようにする対応。出力系は、新元号で帳票等を出力できるようにする対応。一定の条件の下で、入力系の対応は相対的に容易ですし、ある程度見切りで準備を進めることもできます。一定の条件とは、明治以降と同様に、漢字二文字であること、また、頭文字がM(明治)/T(大正)/S(昭和)/H(平成)以外であること。漢字二文字はほぼ間違いないと思っていますが、万が一頭文字が重なったら結構大変です。

より大変なのは出力系。元号表記で出力する帳票一つ一つで対応が必要になります。弥生が提供する製品/サービスでは50以上の帳票で対応が必要になることがわかっています(なおかつ、デスクトップの弥生会計とクラウドの弥生会計 オンラインでは原則としてそれぞれでの対応が必要となります)。これも漢字二文字という前提に立てばある程度の事前準備はできますが、最終的には全帳票、実際に出力して確認し、必要に応じて調整する必要があります。また、元号をそのまま出すのではなく、選択肢から選んで丸で囲むといったような帳票については、新元号の発表だけでなく、新元号対応となった帳票の発表を待つ必要があります。

もともとはカレンダーの印刷が間に合わない等々の理由で、それなりに前倒しで発表されるという見通しもあったのですが、天皇陛下の在位30年記念式典をふまえ、式典(来年2月24日)以降で新元号を公表する検討が進められていました。今回は、「早く公表すると、国民の関心が新天皇に向かい、いまの天皇陛下を軽んじることになりかねない」との指摘があった、ということで、公表時期を可能な限り実際の改元に近づけることになったようです。

元号が単なる年号でなく、象徴的なものであることは異論はありません。「平成」も(それ以前の元号もそうですが)日本としてありたい姿を示す象徴だと考えています。そういった観点では、早めに新元号を公表すべきでないという考え方は理解できます。そもそも昭和天皇が崩御された際には、(当然のことですが)事後での新元号発表となりましたから、事前にわかること自体が異例です。

ただ、これだけIT化が進んだ中(それこそ30年前とは比較になりません)で、システムとして処理すべき対象が明らかにならないのは大きな課題です。いっそのこと、元号は純粋に象徴として位置付け、業務や日常生活で使用する年号はすべて西暦に統一した方がいいのではないでしょうか。以前も書きましたが、弥生としても、官公庁が西暦表示に変えて頂けるのであれば、喜んでそれに対応したいと思います。

象徴と位置付けるのであれば、事前に公表する必要性もないですし、新しい天皇陛下の即位と共に、新たな時代の幕開けを純粋に喜ぶことができると思うのですが。
posted by 岡本浩一郎 at 18:12 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年05月17日

その節税が会社を殺す

以前ご紹介した借入は減らすな!」の松波先生が新著を出されたということで、早速読んでみました。今回のタイトルは、「その節税が会社を殺す」。副題が「お金に強い社長がコッソリやっている節税 & 資金繰りの裏ルール31」、「カネ回りを強くして突然死を防げ」となかなか刺激的です。

2018051701.JPG

本書は、冒頭から「世の『定説』『定番』とされる節税のほぼすべてが無駄、無意味」であり、「むしろ逆効果、経営に悪い影響しかもたらさない」とズバッと核心をついています。実際、よく言われる節税策のほとんどは、課税されるタイミングをずらすだけ。確かに、今期支払う税金は減っても、将来どこかのタイミングで同じような額を税金として支払うのであれば、節税したという自己満足は得られても、実質的な意味はありません。むしろ最悪の場合、どこかで税法が変わり、トータルで見るとむしろ負担増になってしまうケースすらありえます。

世の中で言われる節税策の多くに意味がないこと自体は、実は良識ある税理士の先生方の多くが語られていることです。その仕組みについては、吉澤先生の解説がとてもわかりやすいと思います(こちらとか、こちらとか、こちらとか)。

ただ、意味がない = プラスもマイナスもない、であればまだマシです。私もこの本を読んで改めて気付かされましたが、実際のところは、マイナスの方が大きいというのがこの本で主張です。というのは、手元資金を減らしてしまうから。

本書の冒頭に、よくある節税策である生命保険を活用して1,000万円の利益を圧縮する事例が乗っています。利益が1,000万円あるとすると、これにかかる法人税は約265万円。これに対して、生命保険に入って1,000万円の保険料を支払うと、利益を大きく圧縮することができ(保険料の半額を当期の経費に計上できる保険の場合、利益額は500万円に圧縮)、その分、支払う法人税を大きく減らすことができます。

確かに、当期の節税にはなるでしょう(が、将来的に結局は税金を支払うことになるのは上でお話しした通り)。しかし、本当の問題は、手元資金。利益はそのままで素直に税金を払っていれば、約735万円の資金が手元に残るはずです。一方で、保険に加入した場合には…。そうです、保険料として支払ってしまっているために、手元には1銭も残っていないんですね。

事業が順調に拡大し、手元資金がドンドンと積み上がるような状況であれば問題はないかもしれません。しかし現実には、本書でもたびたび語られているように、実際には、「売上が増えてもお金は増えない」のです。売上を上げるためには、仕入れが必要になったり、あるいは人を増やすことによって人件費が増えたり。そして支出は多くの場合、売上より前に発生します。また、売上が上がっても、すぐに手元資金として回収できる訳ではありません。売掛金として数ヶ月後にようやく回収できる。しかし、その時にさらに売上を上げるために仕入れを行えば、その資金もすぐに消えてしまいます。ですから、どこかで売上を上げることをやめて資金の回収に徹するのでもない限り、売上が増えてもなかなか手元資金は増えないのです。

業績が良い、結構な利益が上がった、よし節税しようとなると、結果的に手元資金を削ってしまうことになる。そこに業績が良いからこその資金ニーズが加わると、余裕があったはずなのに、実際には、資金繰りに四苦八苦することになりかねません。

資金繰りに四苦八苦するようになれば、どうしても短期的や保守的な考え方になってしまう。そして良かったはずの業績がいつの間にか下降線をたどってしまい、資金繰りはますます苦しくなってしまう。

そうならないために、本書は、何よりもまず手元資金に余裕を持たせることの必要性を説いています。目標としては月商の3ヶ月分の手元資金を持つこと。そしてそれだけの手元資金を確保するためにも、銀行からの融資を積極的に活用すべきだ、とも。

本書の後半は、銀行から融資を受ける上で、どのように始め、どのように広げていくかを具体的に説明しています。これは前著の「借入は減らすな!」にも通じる部分ですが、本書では銀行との付き合いの始め方、広げ方をより具体的に説明しています。

ほとんどの事業者は多かれ少なかれ銀行に対し苦手意識を持っています。ただ、相手の行動パターンを理解すれば、付き合い方もわかってきます。事業をする上では、おカネとの付き合いは避けられません。そしてそのおカネとうまく付き合うためには、銀行とうまく付き合っていくことが必要です。節税という言葉が大好きな人、また、銀行に対し苦手意識をお持ちの方にこそ、読んで頂きたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:59 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年03月20日

PROFIT FIRST

会計の考え方では、売上から経費を引いた残りが利益、すなわち、「売上 - 経費 = 利益」。

2018032001.JPG

当たり前のようにも見えますが、この会計原則は、「あなたのビジネスを殺す」とかなりショッキングな表現で始まるのが、この度ダイヤモンド社から出版された「PROFIT FIRST / お金を増やす技術」。従来の会計原則に囚われていると、一にも二にも売上を最大化することに注力してしまう。そして、売上を最大化するためには、費用をどんどんとかけるべき。結果として、利益はあったらラッキーの「残り物」の扱いになってしまう。本来は利益こそ達成すべきものであり、売上はその手段に過ぎないのに。

この本では、「売上 - 利益 = 経費」という式をプロフィットファーストの公式として提示しています。まずは、利益があって、利益を確保した上で使えるのが経費。左辺と右辺の項目を入れ替えているだけなので、数学的にはまちがっていませんが、正直違和感はありますね。ただ、本来達成したいのは利益であるということを考えると、実はこう考えるのが正しいのかもしれません。

実はこのやり方は、決して目新しいものではありません。家計をやり繰りする中で、収入からまず一定額を貯蓄としてより分け、 次に残額を家賃や食費、交際費など用途別に分けて封筒に入れて管理。そして支出はその封筒から行う。封筒分け貯蓄法とでもいうのでしょうか。実践しているかどうかは別として、この方法はよく知られていますよね。ちなみに、このサイトでは家計について書かれていますが、貯蓄したいけどできない人の計算式として、「収入 - 支出 = 貯蓄」、貯蓄に成功している人の計算式として「収入 - 貯蓄 = 支出」と書かれています。これはプロフィットファーストの公式と全く一緒ですね。

そういった意味で、発想として全く新しい訳ではないのですが、これを事業という観点でいかに定着させるかについて実績的なノウハウが詰まっているのが、本書の大きな特徴です。事業規模別に目安となる利益/オーナーの給料/税金の率(そしてこれらを引いて残るのが事業経費の率)を目標配分率(TAPs, Target Allocation Percentages)として示し、現状の配分比率(CAPs, Current Allocation Percentages)からどう段階的にTAPsに近付けるのか、そしてそれを実践するために、複数の銀行口座をどのように活用するのかを具体的に説明しています。

弥生の場合、売上に対し、人件費がどの程度の割合、広告宣伝費がどの程度の割合という目安がはっきりと確立されています。この目安に従って予算を組み、そこから大きくはずれないように運営していれば、確実に決まったレベルの利益は達成できるようになっています。プロフィットファーストの公式通りとは言わないまでも、プロフィットファーストの考え方を結果としてある程度実践できているように思います。

本書では、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というパーキンソンの第2の法則がたびたび紹介されています。一生懸命売上を上げているのに、手元にはさっぱりお金が残らない、とお悩みの方には是非読んで頂きたい一冊です。

プロフィットファーストが全てにおいて有効か、というとまだそこまではわかりません。弥生が昨年立ち上げたアルトアに関しては、まだまだビジネスモデルを確立しようと模索している最中であり、売上に対して適切な配分比率はまださっぱり見えていません。また、弥生のようにビジネスモデルの変革期において、場合によって一時的に利益を犠牲にすることの是非についても、明確な答えはないように思います。

そういった意味で、ある程度ビジネスモデルが固まっている方が適用はしやすいのかと思います。それこそもともとFL比率のような概念のある飲食業などは、プロフィットファーストがはまりやすい業種でしょうね。

また本書で示されているTAPsは基本的には米国の数字なので、今後日本でもプロフィットファーストが普及する中で、日本に最適化された(なおかつ業容や業種に応じた)TAPsが確立されてくると、ますます導入しやすくなるのではないかと思います。

近藤先生、日本におけるプロフィットファーストプロフェッショナルズの第一号として、今後活躍に期待しています!
posted by 岡本浩一郎 at 18:17 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年02月07日

仮想「通貨」か、仮想「資産」か

半年ほど前に私はビットコインについて懐疑的、と書きましたが、ビットコイン狂騒曲はまだ続いています。

前回書いた際(昨年の9月20日)のビットコインの価格はUS$4,000弱。それが12月には$19,000程度にまで上昇しました。前回は、「分散投資の観点からは、大化けを狙って自分の金融資産の1/100ぐらい(=万が一価値がゼロになっても困らない範囲で)をビットコインに割り当てることはありだと思います。念のためですが、決して推奨するわけではありませんし、私自身はその予定もありませんが」と書きました。実際に私は買っていないのですが、やはり人間ですから、やっぱり買っておけばよかったかな、と少し思ったのも事実。

しかし、12月後半に最高値をつけて以降は乱高下を繰り返しつつも、下落基調となっており、直近では$8,000前後となっているようです。NEMの一件もありますし、中国マネーを引き付けていたTetherの問題が指摘され、またICO(Intial Coin Offering, 仮想通貨を用いた資金調達)に対する規制が厳しくなるなど、市場としてはネガティブな話題が多いように思います。それでも、一気に崩壊していないのは、一定の需要があるからなのでしょう。

私は引き続き、懐疑派、ただやりたい人は自己責任でやればいいというスタンスですが、そもそも仮想「通貨」という表現が、誤解を招いているのではないか、と思っています。仮想通貨という表現はCryptocurrencyという欧米での表現から来ています(直訳すれば暗号通貨でしょうが)。ですから間違っているとは言えないのですが、今の実態は「通貨」ではないと感じます。もともとビットコインは、決済コストが低い、だからこそ次世代の通貨になりうると言われていましたが、ビットコインブームの中で決済コストは上昇の一途で、今や安いとは全く言えない状態です。

冷静に考えれば、これだけ価格が変動してはそもそも通貨としての機能を果しえません。ビットコインがどんどん値上がりするのであれば、買い物に利用してしまってはむしろ損。持ち続けた方がいい。つまり、通貨は基本的にその価値が(一定の時間軸の中では変動しつつも)日々の生活の中では安定しているからこそ通貨として機能するわけです。

そういった意味では、現状のビットコインは、仮想「通貨」というより、仮想「資産」という表現が適切なのではないでしょうか。資産だからこそ、値上がりを期待するわけです。またビットコインには裏付けになる資産は全くなく、あくまでも純粋に需給関係で値段が決まるもの。今日の$8,000は明日の$20,000かもしれないし、明日の$20,000は明後日の$2,000かも(あるいは$200,000かも)しれない。最終的に、日本円やUSドルといったHard Currencyに換わるまでは、あくまでもバーチャルな資産です。

ただ、Hard Currencyになった瞬間に出てくるのが、税金の問題。まさにホットなトピックですが、これについては、今度ふれてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:07 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年01月31日

サブちゃんの行方

日経でも報道されていましたので、正式な情報だと思うのですが、この春に、あの「サザエさん」のスポンサーが変わるとのこと。サザエさんと言えば、東芝ですが、経営再建のために、スポンサーを降板することが、昨年の秋に発表されていました。今回、新たなスポンサーが報道された訳ですが、それがなんとAmazon(アマゾンジャパン)西松屋チェーン、そして大和ハウス工業とのこと。

なかでも、Amazonは、ここ20年近く、日本の消費生活を大きく変えてきた(そしてこれからも変えるであろう)存在。東芝は、昭和において日本の消費生活を大きく変えてきた存在ですから、ある意味時代にあったスポンサー交代のようにも思えますが、一方で、頑ななまでに昭和の生活を維持しているサザエさん一家の生活にどんな変化があるのか、とても心配です。残念ながら、最近はサザエさんは見ていないのですが、黒電話やブラウン管TVはまだ健在なのでしょうか。その黒電話がスマホになったり、ブラウン管TVが有機EL TVになったりするのでしょうか。もっと進んで、Amazon Fire TVで映画を見たり、Amazon Echoで音楽を聴いたり?

個人的に一番心配なのは、サブちゃんの行く末です。サブちゃんって誰だっけという方はこちらをご覧ください。そう、三河屋さんの御用聞きですね。

私は、たまに大学などで会計に関する講義をすることがあるのですが、その際に未払金の概念を説明するときに登場するのが、サブちゃんなのです。

2018013101.png

「皆さん、サザエさんのサブちゃんは知っていますよね。サブちゃんは、勝手口からビールを配達しますが、あの時に代金を受け取っていません。あれは、『つけ』といって、後で一ヶ月分をまとめて、おそらくフネさんが払っているんですよ。」「『つけ』は、会計の用語では、未払金と言います。」

そもそも最近は「つけ」という用語すら知らない人がほとんど。そういった中で、未払金を理解してもらうためにはとても重宝する存在なのです(なお、この話は、皆さんが気軽に使っているかもしれないクレジットカードも未払金なんですよ、使い方には注意しましょう、と続きます)。

サブちゃんの代わりに、Amazonの配達(Amazon Fresh?)が来るようになるのか、はたまたサブちゃんがAmazonに華麗な転職を果たすのか、先行きを注目したいと思います。あくまでもスポンサーなので、内容に影響を及ぼすことはないとは思いますが、映画の世界では、スポンサーの商品を映画に登場させる「プロダクトプレイスメント」が普通に行われる時代なので、どうなんでしょうね。

それにしても、スポンサーの交代が新聞記事になるとは、改めてサザエさんはお化け番組だな、と思います。サザエさんもいつまでも時代の変化を免れることはできないと思いますが、自分の子どもが見る間は昔懐かしい昭和の時代をとどめてほしいな、というのが個人的想いです。
posted by 岡本浩一郎 at 20:05 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年01月18日

紺とグレー

1月も後半ということで、これが最後の新年ネタになるかと思います。新年には、賀詞交歓会や銀行での新年の挨拶など、いわゆる経営者が集まる場が多くなります。そういった場に参加するたびに、日本の経営者が、(年齢的に)シニアな男性で占められていることを実感します。色で言えば、紺とグレーでしょうか。

私がそういった場に参加するようになったのは、10年前に弥生の社長になってからです。当時、あまりの「紺とグレー」に驚いたことを鮮明に覚えています。その時代は、まだ身も心も若かったですから(相対的に、笑)。それから10年近く経ちましたが、「紺とグレー」は全く変わっていません。逆に私自身が「紺とグレー」の世界に染まってきたような…。

むろん年をとっていることが悪いこと、とは思いません。積み重ねた経験は間違いなく強みになるでしょう。私も10年前と比較して、経験値という意味では飛躍的に成長できたと自負しています。

一方で、変化の激しい時代においては、経験値だけでは勝てません。経験に縛られすぎれば、むしろマイナスに作用することもあるでしょう。特に弥生の場合はIT業界ですから、過去の成功体験を、あえて自ら捨てることも必要です。また、(何が伝統的なのかは曖昧ですが)伝統的価値観や、(表現が難しいですが)男性的価値感だけでは、通用しない世界になってきているとも感じます。

これは顰蹙を買うであろう発言であることは承知の上ですが、かつてないほど変化の激しい時代にあって、それを牽引する経営者が「紺とグレー」の集団のままで本当に良いのでしょうか。そう言っている自分が「紺とグレー」の世界に染まりつつあることを感じるだけに、焦りを感じる今日この頃です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:22 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年11月17日

Moxyに行ってみた

先週大阪に出張した際に、できたばかりのホテル、モクシー大阪本町に泊まってみました。以前も本ブログで少しだけお話ししたことがありますが、私の夢はホテル経営。20代の頃から、いつかは究極のサービス業であるホテルを経営したいと言い続けてきました。そんなこともあって、出張にせよ、休暇にせよ、ホテル(旅館)に泊まることは好きです。

出張の前にホテルを探していたところたまたま発見したのですが、「2014 年、モクシー・ミラノのオープンからスタートしたモクシー・ホテルは、ミレニアル世代を主要ターゲットとする、マリオット・インターナショナルの新たなブランドです。節約志向の旅行者向けブティックホテルというコンセプトの下、スタイリッシュなデザインとリーズナブルな価格で利用できるサービスを組み合わせた革新的なブランドとして、テクノロジー志向の客室、活気あふれるロビースペース、現代風でいて温かなおもてなしが揃い、心のこもった、快適でエネルギッシュなホテルライフをご提供いたします」。私自身はMarriottはよく利用しますし、何よりも面白そうなので行ってみないと、ということで早速行ってまいりました。

2017111701.JPG

実は、モクシー・ホテルは、11月に東京の錦糸町と大阪の本町に同時オープンしたばかり。ということで、正直まだオペレーションがこなれていない感はあり、まだ評価には早いかなと感じました。まあ、そもそも飲み会の後でチェックインしたのが11時過ぎ、翌朝は早々に帰宅するために朝6時過ぎにチェックアウトということで、キチンと評価できる程には滞在していません(苦笑)。

ただ、これはこれで面白いな、と思いました。1FはMoxy Bar & Loungeというバー/レストランスペースになっており、とてもお洒落なスペース。そしてその一部がチェックインカウンターになっています。スタッフの恰好も、お洒落なバーのスタッフという感じで、いわゆるホテルマン(ウーマン)のイメージとはかけ離れています。

個人的には、Marriottが現状に甘んじるのではなく、世代の変化に合わせ新たな試みをしていることに共感します。これはホテルでも自動車でも、そしてITでも同じですが、ブランドを信頼して頂けるコアな顧客層があること自体はいいことですが、お客さまも当然お歳を召される訳で、気が付いたらいつの間にか時代遅れになりかねません。新たな顧客層向けに、新しい価値を提案していく。成功が保証されるものではありませんが、企業が長年に渡って価値を提供し続けるためには、(コア顧客層向けの価値はキチンと維持しつつも)チャレンジしていかなければならないと思います。

ちなみにこのホテルは、もともとオフィスだったビルを丸ごとホテルに改装したそうで、その観点でもなかなか興味深かったです。インバウンドを含め宿泊需要が増える中で、多少価値の下がってきたオフィスビルをコンバートする、というのは今後も増えそうです(20年のオリンピック以降は需要が続くか心配ですが)。

で、私がMoxyにもう一度泊まるか、ですが、どうしても泊まりたい、とはならないまでも、泊まってもいいかな、と思っています。もう少しオペレーションが落ち着いた段階で、もう少しゆっくり泊まってみたいですね。

もっと詳しいレビューはオープン初日に宿泊された方の記事がありましたので、こちらをどうぞ。
posted by 岡本浩一郎 at 17:22 | TrackBack(0) | ビジネス