2018年07月13日

なぜキャッシュレスなのか

日本は現金社会。逆に言えば、キャッシュレス化が進んでいないと言われます。日本のキャッシュレス決済比率(= キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷国の家計最終消費支出)は2015年で18.4%。お隣の韓国の89.1%は別格としても、イギリスやアメリカなどが50%前後ですから、キャッシュレス化という観点で大きく出遅れていることは事実かと思います。

一方で、この事実自体は、日本の長所を表しています。日本では偽札が問題になることはほとんどありませんし、盗難にあうリスクも諸外国と比べれば圧倒的に低い。そしてATMが全国津々浦々に存在し、いつでも現金を引き出すことができる。他国では、現金に対する信頼が低い、あるいは現金を持ち歩くことがリスクとみなされる、あるいは、現金を入手する手間が大きいといった要因があるからこそ、キャッシュレス決済が進んだという事情があります。つまり日本でキャッシュレス化が進まないのは、現金決済が安心で、利便性が高いから。これ自体はむしろ褒められるべきですよね。

ただ、現金社会であるために、実は社会全体として大きなコストが発生しています。野村総合研究所の試算では、現金支払のインフラを維持するために、社会全体として年間1兆円を超えるコストが発生しています。わかりやすいところでは、現金(紙幣・貨幣)の製造コストですが、これらは650億円に過ぎません。コストが大きくかかっているのは、ATMを設置し、維持・運営するコスト(合計で7,000億円近く)や小売店舗で現金を管理するための人件費(レジ締めなど、5,000億円)。みずほフィナンシャルグループでは、間接的な費用まで含めれば、コストは約8兆円に達すると試算しています。

確かに現金は、便利です。24時間365日、どこでもおろせるし、どこでも使える。しかしそのためには、膨大なコストがかかっているということです。一方で日本の人口は明確に減少を始めており、これまでは意識もされなかった社会的コストが徐々に問題として顕在化してきています。わかりやすいところでいえば、店舗のレジを担当するスタッフを確保することも難しくなってきています。

また、現金決済では、誰がどこでいつ、何にいくら支払ったのかを追跡することが困難です。現金決済ならではの匿名性は、長所といえば長所ですが、誰がどこでいつ、何にいくら支払ったのかをデータとして分析することによって、新しい価値を生み出すという観点からは大きな障壁です。データ分析を通じて、お客さまの行動を可視化することにより、お客さまにより良い商品やサービスを提供する。

しかし、行動が可視化されることに気味の悪さがあるのは事実です。データを入手し、お客さまに新たな価値を提供したいというのは、製品/サービスを提供する側の一方的な想い(いわばサプライヤーズ・ロジック)であり、それをお客さまがどう思うのかは別問題です。お客さまに納得頂くためには、どんなデータがどのように扱われ、それがお客さまにとってどんなメリットにつながるのかをしっかりと示す必要があるでしょう。

つまり、キャッシュレス化の意義の一つは社会的なコストを下げること。そしてもう一つの大きな柱は、キャッシュレス化によって、データを収集し、新たな価値を生み出すこと。とはいえ、現実にキャッシュレス化を進めるためには、まだまだ超えなければいけないカベが複数存在しています。カベの正体とその傾向と対策についてはまた次回に。
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2018年07月11日

キャッシュレス・ビジョン

少し前に「キャッシュレス・ビジョン」の策定にかかわったとお話ししました。もともと昨年の秋から、クレジットカード会社におけるAPIのあり方を検討する「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」の委員として活動してきました。その成果は、クレジットカードデータ利用に係るAPIガイドラインとして4/11に経済産業省から公表されています。

ただ、API(特に金融機関のデータを受け取る参照系API)は、既に完了した取引の結果をデータとして受け取るに過ぎません。もちろんそれはそれで価値はあるのですが、取引そのものがどうあるべきか、もっと視野を広げるべきではないか、という提言があり、検討会のスコープを広げることになりました。APIで取引の結果をデータ(=デジタル)で受け取ることはできても、取引自体(特に小売取引)がお札や小銭での支払い(=アナログ)のままでは、本当の意味での利便性向上や効率化にはなりません。取引のあり方そのものを見直そう、より具体的に言えば、諸外国と比較しても低いキャッシュレス取引の割合をどのように増やしていくかを考えよう、とスコープが飛躍的に広くなったという経緯があります。

結果的に、「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」と、APIの名前が入る検討会でありながらも、実際にはキャッシュレスの推進について議論した時間の方が圧倒的に長かったような気がします(笑)。そしてその成果として作成したのが、やはり4/11に経済産業省から公表されたキャッシュレス・ビジョンという訳です。

そしてこのキャッシュレス・ビジョンを産官学が連携して具現化するために、つい先日、キャッシュレス推進協議会という組織が発足しました。弥生はこの協議会の初期メンバーとして、今後もかかわっていきます。目に見えませんし、それが故になかなか実感できるものではありませんが、日本人が当たり前のように享受している現金という仕組みの維持には、実は膨大な社会的コストがかかっています。社会全体の効率を考える上で、キャッシュレス化は避けて通ることはできません。

もっとも、キャッシュレス化は少し掛け声をかければすんなり進むほど単純ではないとも思っています。私自身、一定額以上の支払いはほとんどクレジットカードですが、少額は逆にほとんど現金です。キャッシュレスの是非については、個人的に色々と思うところがありますが、長くなりますので、またの機会にじっくりとお話ししたいと思います。

また、弥生(とそのお客さま)という観点からは、支払い手段としてのキャッシュレスももちろんなのですが、その結果をデジタルでどう受け取れるようにするのか(電子レシートやカード会社API)を着実に進めていきたいと思っています。
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2018年05月23日

新元号は来年4月公表

先週、政府は来年5月1日に切り替わる新元号について、同年4月1日の公表を想定して準備を進めると発表しました。日経では、「新元号公表、改元1カ月前に システム改修対応促す」との見出しで記事となりました。

しかし、この見出しに違和感を感じたのは私だけでないはず。特にIT業界の人は等しく、「エッ?」と思われたのではないでしょうか。半年前に公表するからシステム改修の対応を、であればまだわかりますが、1ヶ月前で、改修せよと言われても。

システムで新元号に対応する範囲は大きく入力系と出力系に分かれます。入力系は、新元号で日付を入力できるようにする対応。出力系は、新元号で帳票等を出力できるようにする対応。一定の条件の下で、入力系の対応は相対的に容易ですし、ある程度見切りで準備を進めることもできます。一定の条件とは、明治以降と同様に、漢字二文字であること、また、頭文字がM(明治)/T(大正)/S(昭和)/H(平成)以外であること。漢字二文字はほぼ間違いないと思っていますが、万が一頭文字が重なったら結構大変です。

より大変なのは出力系。元号表記で出力する帳票一つ一つで対応が必要になります。弥生が提供する製品/サービスでは50以上の帳票で対応が必要になることがわかっています(なおかつ、デスクトップの弥生会計とクラウドの弥生会計 オンラインでは原則としてそれぞれでの対応が必要となります)。これも漢字二文字という前提に立てばある程度の事前準備はできますが、最終的には全帳票、実際に出力して確認し、必要に応じて調整する必要があります。また、元号をそのまま出すのではなく、選択肢から選んで丸で囲むといったような帳票については、新元号の発表だけでなく、新元号対応となった帳票の発表を待つ必要があります。

もともとはカレンダーの印刷が間に合わない等々の理由で、それなりに前倒しで発表されるという見通しもあったのですが、天皇陛下の在位30年記念式典をふまえ、式典(来年2月24日)以降で新元号を公表する検討が進められていました。今回は、「早く公表すると、国民の関心が新天皇に向かい、いまの天皇陛下を軽んじることになりかねない」との指摘があった、ということで、公表時期を可能な限り実際の改元に近づけることになったようです。

元号が単なる年号でなく、象徴的なものであることは異論はありません。「平成」も(それ以前の元号もそうですが)日本としてありたい姿を示す象徴だと考えています。そういった観点では、早めに新元号を公表すべきでないという考え方は理解できます。そもそも昭和天皇が崩御された際には、(当然のことですが)事後での新元号発表となりましたから、事前にわかること自体が異例です。

ただ、これだけIT化が進んだ中(それこそ30年前とは比較になりません)で、システムとして処理すべき対象が明らかにならないのは大きな課題です。いっそのこと、元号は純粋に象徴として位置付け、業務や日常生活で使用する年号はすべて西暦に統一した方がいいのではないでしょうか。以前も書きましたが、弥生としても、官公庁が西暦表示に変えて頂けるのであれば、喜んでそれに対応したいと思います。

象徴と位置付けるのであれば、事前に公表する必要性もないですし、新しい天皇陛下の即位と共に、新たな時代の幕開けを純粋に喜ぶことができると思うのですが。
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2018年05月17日

その節税が会社を殺す

以前ご紹介した借入は減らすな!」の松波先生が新著を出されたということで、早速読んでみました。今回のタイトルは、「その節税が会社を殺す」。副題が「お金に強い社長がコッソリやっている節税 & 資金繰りの裏ルール31」、「カネ回りを強くして突然死を防げ」となかなか刺激的です。

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本書は、冒頭から「世の『定説』『定番』とされる節税のほぼすべてが無駄、無意味」であり、「むしろ逆効果、経営に悪い影響しかもたらさない」とズバッと核心をついています。実際、よく言われる節税策のほとんどは、課税されるタイミングをずらすだけ。確かに、今期支払う税金は減っても、将来どこかのタイミングで同じような額を税金として支払うのであれば、節税したという自己満足は得られても、実質的な意味はありません。むしろ最悪の場合、どこかで税法が変わり、トータルで見るとむしろ負担増になってしまうケースすらありえます。

世の中で言われる節税策の多くに意味がないこと自体は、実は良識ある税理士の先生方の多くが語られていることです。その仕組みについては、吉澤先生の解説がとてもわかりやすいと思います(こちらとか、こちらとか、こちらとか)。

ただ、意味がない = プラスもマイナスもない、であればまだマシです。私もこの本を読んで改めて気付かされましたが、実際のところは、マイナスの方が大きいというのがこの本で主張です。というのは、手元資金を減らしてしまうから。

本書の冒頭に、よくある節税策である生命保険を活用して1,000万円の利益を圧縮する事例が乗っています。利益が1,000万円あるとすると、これにかかる法人税は約265万円。これに対して、生命保険に入って1,000万円の保険料を支払うと、利益を大きく圧縮することができ(保険料の半額を当期の経費に計上できる保険の場合、利益額は500万円に圧縮)、その分、支払う法人税を大きく減らすことができます。

確かに、当期の節税にはなるでしょう(が、将来的に結局は税金を支払うことになるのは上でお話しした通り)。しかし、本当の問題は、手元資金。利益はそのままで素直に税金を払っていれば、約735万円の資金が手元に残るはずです。一方で、保険に加入した場合には…。そうです、保険料として支払ってしまっているために、手元には1銭も残っていないんですね。

事業が順調に拡大し、手元資金がドンドンと積み上がるような状況であれば問題はないかもしれません。しかし現実には、本書でもたびたび語られているように、実際には、「売上が増えてもお金は増えない」のです。売上を上げるためには、仕入れが必要になったり、あるいは人を増やすことによって人件費が増えたり。そして支出は多くの場合、売上より前に発生します。また、売上が上がっても、すぐに手元資金として回収できる訳ではありません。売掛金として数ヶ月後にようやく回収できる。しかし、その時にさらに売上を上げるために仕入れを行えば、その資金もすぐに消えてしまいます。ですから、どこかで売上を上げることをやめて資金の回収に徹するのでもない限り、売上が増えてもなかなか手元資金は増えないのです。

業績が良い、結構な利益が上がった、よし節税しようとなると、結果的に手元資金を削ってしまうことになる。そこに業績が良いからこその資金ニーズが加わると、余裕があったはずなのに、実際には、資金繰りに四苦八苦することになりかねません。

資金繰りに四苦八苦するようになれば、どうしても短期的や保守的な考え方になってしまう。そして良かったはずの業績がいつの間にか下降線をたどってしまい、資金繰りはますます苦しくなってしまう。

そうならないために、本書は、何よりもまず手元資金に余裕を持たせることの必要性を説いています。目標としては月商の3ヶ月分の手元資金を持つこと。そしてそれだけの手元資金を確保するためにも、銀行からの融資を積極的に活用すべきだ、とも。

本書の後半は、銀行から融資を受ける上で、どのように始め、どのように広げていくかを具体的に説明しています。これは前著の「借入は減らすな!」にも通じる部分ですが、本書では銀行との付き合いの始め方、広げ方をより具体的に説明しています。

ほとんどの事業者は多かれ少なかれ銀行に対し苦手意識を持っています。ただ、相手の行動パターンを理解すれば、付き合い方もわかってきます。事業をする上では、おカネとの付き合いは避けられません。そしてそのおカネとうまく付き合うためには、銀行とうまく付き合っていくことが必要です。節税という言葉が大好きな人、また、銀行に対し苦手意識をお持ちの方にこそ、読んで頂きたいと思います。
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2018年03月20日

PROFIT FIRST

会計の考え方では、売上から経費を引いた残りが利益、すなわち、「売上 - 経費 = 利益」。

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当たり前のようにも見えますが、この会計原則は、「あなたのビジネスを殺す」とかなりショッキングな表現で始まるのが、この度ダイヤモンド社から出版された「PROFIT FIRST / お金を増やす技術」。従来の会計原則に囚われていると、一にも二にも売上を最大化することに注力してしまう。そして、売上を最大化するためには、費用をどんどんとかけるべき。結果として、利益はあったらラッキーの「残り物」の扱いになってしまう。本来は利益こそ達成すべきものであり、売上はその手段に過ぎないのに。

この本では、「売上 - 利益 = 経費」という式をプロフィットファーストの公式として提示しています。まずは、利益があって、利益を確保した上で使えるのが経費。左辺と右辺の項目を入れ替えているだけなので、数学的にはまちがっていませんが、正直違和感はありますね。ただ、本来達成したいのは利益であるということを考えると、実はこう考えるのが正しいのかもしれません。

実はこのやり方は、決して目新しいものではありません。家計をやり繰りする中で、収入からまず一定額を貯蓄としてより分け、 次に残額を家賃や食費、交際費など用途別に分けて封筒に入れて管理。そして支出はその封筒から行う。封筒分け貯蓄法とでもいうのでしょうか。実践しているかどうかは別として、この方法はよく知られていますよね。ちなみに、このサイトでは家計について書かれていますが、貯蓄したいけどできない人の計算式として、「収入 - 支出 = 貯蓄」、貯蓄に成功している人の計算式として「収入 - 貯蓄 = 支出」と書かれています。これはプロフィットファーストの公式と全く一緒ですね。

そういった意味で、発想として全く新しい訳ではないのですが、これを事業という観点でいかに定着させるかについて実績的なノウハウが詰まっているのが、本書の大きな特徴です。事業規模別に目安となる利益/オーナーの給料/税金の率(そしてこれらを引いて残るのが事業経費の率)を目標配分率(TAPs, Target Allocation Percentages)として示し、現状の配分比率(CAPs, Current Allocation Percentages)からどう段階的にTAPsに近付けるのか、そしてそれを実践するために、複数の銀行口座をどのように活用するのかを具体的に説明しています。

弥生の場合、売上に対し、人件費がどの程度の割合、広告宣伝費がどの程度の割合という目安がはっきりと確立されています。この目安に従って予算を組み、そこから大きくはずれないように運営していれば、確実に決まったレベルの利益は達成できるようになっています。プロフィットファーストの公式通りとは言わないまでも、プロフィットファーストの考え方を結果としてある程度実践できているように思います。

本書では、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というパーキンソンの第2の法則がたびたび紹介されています。一生懸命売上を上げているのに、手元にはさっぱりお金が残らない、とお悩みの方には是非読んで頂きたい一冊です。

プロフィットファーストが全てにおいて有効か、というとまだそこまではわかりません。弥生が昨年立ち上げたアルトアに関しては、まだまだビジネスモデルを確立しようと模索している最中であり、売上に対して適切な配分比率はまださっぱり見えていません。また、弥生のようにビジネスモデルの変革期において、場合によって一時的に利益を犠牲にすることの是非についても、明確な答えはないように思います。

そういった意味で、ある程度ビジネスモデルが固まっている方が適用はしやすいのかと思います。それこそもともとFL比率のような概念のある飲食業などは、プロフィットファーストがはまりやすい業種でしょうね。

また本書で示されているTAPsは基本的には米国の数字なので、今後日本でもプロフィットファーストが普及する中で、日本に最適化された(なおかつ業容や業種に応じた)TAPsが確立されてくると、ますます導入しやすくなるのではないかと思います。

近藤先生、日本におけるプロフィットファーストプロフェッショナルズの第一号として、今後活躍に期待しています!
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2018年02月07日

仮想「通貨」か、仮想「資産」か

半年ほど前に私はビットコインについて懐疑的、と書きましたが、ビットコイン狂騒曲はまだ続いています。

前回書いた際(昨年の9月20日)のビットコインの価格はUS$4,000弱。それが12月には$19,000程度にまで上昇しました。前回は、「分散投資の観点からは、大化けを狙って自分の金融資産の1/100ぐらい(=万が一価値がゼロになっても困らない範囲で)をビットコインに割り当てることはありだと思います。念のためですが、決して推奨するわけではありませんし、私自身はその予定もありませんが」と書きました。実際に私は買っていないのですが、やはり人間ですから、やっぱり買っておけばよかったかな、と少し思ったのも事実。

しかし、12月後半に最高値をつけて以降は乱高下を繰り返しつつも、下落基調となっており、直近では$8,000前後となっているようです。NEMの一件もありますし、中国マネーを引き付けていたTetherの問題が指摘され、またICO(Intial Coin Offering, 仮想通貨を用いた資金調達)に対する規制が厳しくなるなど、市場としてはネガティブな話題が多いように思います。それでも、一気に崩壊していないのは、一定の需要があるからなのでしょう。

私は引き続き、懐疑派、ただやりたい人は自己責任でやればいいというスタンスですが、そもそも仮想「通貨」という表現が、誤解を招いているのではないか、と思っています。仮想通貨という表現はCryptocurrencyという欧米での表現から来ています(直訳すれば暗号通貨でしょうが)。ですから間違っているとは言えないのですが、今の実態は「通貨」ではないと感じます。もともとビットコインは、決済コストが低い、だからこそ次世代の通貨になりうると言われていましたが、ビットコインブームの中で決済コストは上昇の一途で、今や安いとは全く言えない状態です。

冷静に考えれば、これだけ価格が変動してはそもそも通貨としての機能を果しえません。ビットコインがどんどん値上がりするのであれば、買い物に利用してしまってはむしろ損。持ち続けた方がいい。つまり、通貨は基本的にその価値が(一定の時間軸の中では変動しつつも)日々の生活の中では安定しているからこそ通貨として機能するわけです。

そういった意味では、現状のビットコインは、仮想「通貨」というより、仮想「資産」という表現が適切なのではないでしょうか。資産だからこそ、値上がりを期待するわけです。またビットコインには裏付けになる資産は全くなく、あくまでも純粋に需給関係で値段が決まるもの。今日の$8,000は明日の$20,000かもしれないし、明日の$20,000は明後日の$2,000かも(あるいは$200,000かも)しれない。最終的に、日本円やUSドルといったHard Currencyに換わるまでは、あくまでもバーチャルな資産です。

ただ、Hard Currencyになった瞬間に出てくるのが、税金の問題。まさにホットなトピックですが、これについては、今度ふれてみたいと思います。
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2018年01月31日

サブちゃんの行方

日経でも報道されていましたので、正式な情報だと思うのですが、この春に、あの「サザエさん」のスポンサーが変わるとのこと。サザエさんと言えば、東芝ですが、経営再建のために、スポンサーを降板することが、昨年の秋に発表されていました。今回、新たなスポンサーが報道された訳ですが、それがなんとAmazon(アマゾンジャパン)西松屋チェーン、そして大和ハウス工業とのこと。

なかでも、Amazonは、ここ20年近く、日本の消費生活を大きく変えてきた(そしてこれからも変えるであろう)存在。東芝は、昭和において日本の消費生活を大きく変えてきた存在ですから、ある意味時代にあったスポンサー交代のようにも思えますが、一方で、頑ななまでに昭和の生活を維持しているサザエさん一家の生活にどんな変化があるのか、とても心配です。残念ながら、最近はサザエさんは見ていないのですが、黒電話やブラウン管TVはまだ健在なのでしょうか。その黒電話がスマホになったり、ブラウン管TVが有機EL TVになったりするのでしょうか。もっと進んで、Amazon Fire TVで映画を見たり、Amazon Echoで音楽を聴いたり?

個人的に一番心配なのは、サブちゃんの行く末です。サブちゃんって誰だっけという方はこちらをご覧ください。そう、三河屋さんの御用聞きですね。

私は、たまに大学などで会計に関する講義をすることがあるのですが、その際に未払金の概念を説明するときに登場するのが、サブちゃんなのです。

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「皆さん、サザエさんのサブちゃんは知っていますよね。サブちゃんは、勝手口からビールを配達しますが、あの時に代金を受け取っていません。あれは、『つけ』といって、後で一ヶ月分をまとめて、おそらくフネさんが払っているんですよ。」「『つけ』は、会計の用語では、未払金と言います。」

そもそも最近は「つけ」という用語すら知らない人がほとんど。そういった中で、未払金を理解してもらうためにはとても重宝する存在なのです(なお、この話は、皆さんが気軽に使っているかもしれないクレジットカードも未払金なんですよ、使い方には注意しましょう、と続きます)。

サブちゃんの代わりに、Amazonの配達(Amazon Fresh?)が来るようになるのか、はたまたサブちゃんがAmazonに華麗な転職を果たすのか、先行きを注目したいと思います。あくまでもスポンサーなので、内容に影響を及ぼすことはないとは思いますが、映画の世界では、スポンサーの商品を映画に登場させる「プロダクトプレイスメント」が普通に行われる時代なので、どうなんでしょうね。

それにしても、スポンサーの交代が新聞記事になるとは、改めてサザエさんはお化け番組だな、と思います。サザエさんもいつまでも時代の変化を免れることはできないと思いますが、自分の子どもが見る間は昔懐かしい昭和の時代をとどめてほしいな、というのが個人的想いです。
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2018年01月18日

紺とグレー

1月も後半ということで、これが最後の新年ネタになるかと思います。新年には、賀詞交歓会や銀行での新年の挨拶など、いわゆる経営者が集まる場が多くなります。そういった場に参加するたびに、日本の経営者が、(年齢的に)シニアな男性で占められていることを実感します。色で言えば、紺とグレーでしょうか。

私がそういった場に参加するようになったのは、10年前に弥生の社長になってからです。当時、あまりの「紺とグレー」に驚いたことを鮮明に覚えています。その時代は、まだ身も心も若かったですから(相対的に、笑)。それから10年近く経ちましたが、「紺とグレー」は全く変わっていません。逆に私自身が「紺とグレー」の世界に染まってきたような…。

むろん年をとっていることが悪いこと、とは思いません。積み重ねた経験は間違いなく強みになるでしょう。私も10年前と比較して、経験値という意味では飛躍的に成長できたと自負しています。

一方で、変化の激しい時代においては、経験値だけでは勝てません。経験に縛られすぎれば、むしろマイナスに作用することもあるでしょう。特に弥生の場合はIT業界ですから、過去の成功体験を、あえて自ら捨てることも必要です。また、(何が伝統的なのかは曖昧ですが)伝統的価値観や、(表現が難しいですが)男性的価値感だけでは、通用しない世界になってきているとも感じます。

これは顰蹙を買うであろう発言であることは承知の上ですが、かつてないほど変化の激しい時代にあって、それを牽引する経営者が「紺とグレー」の集団のままで本当に良いのでしょうか。そう言っている自分が「紺とグレー」の世界に染まりつつあることを感じるだけに、焦りを感じる今日この頃です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:22 | TrackBack(0) | ビジネス

2017年11月17日

Moxyに行ってみた

先週大阪に出張した際に、できたばかりのホテル、モクシー大阪本町に泊まってみました。以前も本ブログで少しだけお話ししたことがありますが、私の夢はホテル経営。20代の頃から、いつかは究極のサービス業であるホテルを経営したいと言い続けてきました。そんなこともあって、出張にせよ、休暇にせよ、ホテル(旅館)に泊まることは好きです。

出張の前にホテルを探していたところたまたま発見したのですが、「2014 年、モクシー・ミラノのオープンからスタートしたモクシー・ホテルは、ミレニアル世代を主要ターゲットとする、マリオット・インターナショナルの新たなブランドです。節約志向の旅行者向けブティックホテルというコンセプトの下、スタイリッシュなデザインとリーズナブルな価格で利用できるサービスを組み合わせた革新的なブランドとして、テクノロジー志向の客室、活気あふれるロビースペース、現代風でいて温かなおもてなしが揃い、心のこもった、快適でエネルギッシュなホテルライフをご提供いたします」。私自身はMarriottはよく利用しますし、何よりも面白そうなので行ってみないと、ということで早速行ってまいりました。

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実は、モクシー・ホテルは、11月に東京の錦糸町と大阪の本町に同時オープンしたばかり。ということで、正直まだオペレーションがこなれていない感はあり、まだ評価には早いかなと感じました。まあ、そもそも飲み会の後でチェックインしたのが11時過ぎ、翌朝は早々に帰宅するために朝6時過ぎにチェックアウトということで、キチンと評価できる程には滞在していません(苦笑)。

ただ、これはこれで面白いな、と思いました。1FはMoxy Bar & Loungeというバー/レストランスペースになっており、とてもお洒落なスペース。そしてその一部がチェックインカウンターになっています。スタッフの恰好も、お洒落なバーのスタッフという感じで、いわゆるホテルマン(ウーマン)のイメージとはかけ離れています。

個人的には、Marriottが現状に甘んじるのではなく、世代の変化に合わせ新たな試みをしていることに共感します。これはホテルでも自動車でも、そしてITでも同じですが、ブランドを信頼して頂けるコアな顧客層があること自体はいいことですが、お客さまも当然お歳を召される訳で、気が付いたらいつの間にか時代遅れになりかねません。新たな顧客層向けに、新しい価値を提案していく。成功が保証されるものではありませんが、企業が長年に渡って価値を提供し続けるためには、(コア顧客層向けの価値はキチンと維持しつつも)チャレンジしていかなければならないと思います。

ちなみにこのホテルは、もともとオフィスだったビルを丸ごとホテルに改装したそうで、その観点でもなかなか興味深かったです。インバウンドを含め宿泊需要が増える中で、多少価値の下がってきたオフィスビルをコンバートする、というのは今後も増えそうです(20年のオリンピック以降は需要が続くか心配ですが)。

で、私がMoxyにもう一度泊まるか、ですが、どうしても泊まりたい、とはならないまでも、泊まってもいいかな、と思っています。もう少しオペレーションが落ち着いた段階で、もう少しゆっくり泊まってみたいですね。

もっと詳しいレビューはオープン初日に宿泊された方の記事がありましたので、こちらをどうぞ。
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2017年08月28日

サンプリングバイアス

少し前に「コンビニの支払い、4割が現金派」という調査結果が公表されていました。この調査によると、コンビニで買い物する際に、現金で支払う人が37.9%、電子マネーが29.8%、クレジットカード・デビットカードが29.4%とのこと。この結果に対し、あるブロガーが「コンビニで現金使う人ってバカなのかな」と発言して、話題になりました。この他にも「コンビニで現金使う人ってバカではなく『迷惑』」という発言も話題に。

個人の選択の問題なので、バカといった表現は全く適切ではないと思います(まあ、炎上商法ですね)。ただ、私が注目したのは実は別のポイント。電子マネーとクレジットカード(非現金)で約6割。これってむしろ結構高く感じませんか? 日本は現金社会と言われますが、非現金で約6割であれば、もはや現金社会とは言えないのでは?

個人が支払いをする際の決済手段のシェアについては、クレディセゾンが経済産業省他の数字をもとに推計している数字が引用されることが多いようです。2015年度(本pdfのP36)は、現金の割合が49.5%(前年対比2.4pt減)。それに対し、クレジットカードは16.0%(+1.1pt)、デビットカードが0.2%(±0.0pt)プリペイドと電子マネーで5.6%(+0.9pt)。合計しても、21.8%にしかなりません。このシェアの数字には、振込・口座振替、ペイジーといったコンビニでの買い物には利用されない手段も含まれているので、その分を一旦除外して計算し直すと、現金が69.4%、非現金(クレジットカード/デビットカード/電子マネー)で30.6%という割合になります。個人的には、むしろこれくらいの割合が妥当かな、と感じます。

もう少し具体的に言えば、職場にあるコンビニは、ビル内に大手のクレジットカード会社が入居していることもあり(?)、非現金の率が高いような気がしますが、自宅近くのコンビニは現金の方が多いように感じます。もちろん、非現金の割合が高まっていることは間違いなく事実だと思いますが、それでも、現金が4割、非現金が6割と言われると、さすがに違和感を感じます。

だいぶまわりくどく前置きしてしまいましたが、私は、冒頭の調査にはだいぶサンプリングバイアスが入っているのではないかな、と感じました。調査の際の対象者と、母集団にずれが発生しているのではないか、ということです。よく読んでみると、この調査は「クレジットカードを保有している」「会員」に対し、インターネットを通じて行われているとのこと。対象がクレジットカード保有者に限られていますから、この調査では現金率が低く、非現金率が高く出るのは当たり前のこと(ちなみに、JCB調査(pdf)によればクレジットカードの保有率は約8割とのこと)。会員が対象ということで、その年齢構成や年齢分布も結果に影響を与えているのではないでしょうか。

弥生でも様々な調査を継続的に行っていますが、サンプリングバイアスには苦労しています。代表的なところでは、クラウドの利用意向。インターネット調査でのクラウド利用意向と、電話等を通じた調査でのクラウド利用意向にはかなり大きなずれが出ます。調査の際には、つい見たい現実を見てしまう(結果を自分に都合よく解釈してしまう)ものですが、調査の前提・手法も含めてキチンと設計しないと、実は誤った結論に飛びついていた、ということになりかねませんので、注意が必要です。
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2017年04月10日

メガトレンド

前回、BCG経営コンセプト(市場創造編構造改革編)という二冊の本をご紹介しました。内容の解説は私にとって荷が重いので、是非実際にお読み頂ければと書いたのですが、一点だけもう少し掘り下げてみたいとと思います。それは、市場創造編のP121でコラムとして紹介されている「メガトレンド」。

事業環境が劇的に変化する中で、将来の予測が難しくなってきています。そんな中で、どうせ将来を見通せないからと中期経営計画の策定をやめる会社もあるようですが、将来の予測が難しくなってきているからこそ、不確実な将来に備え、適応力を高めることが必要です。そのために有効な手法のひとつがシナリオプランニングであり、そのシナリオを作成する上では、「世の中の大きな変化を正確にとらえ、自社のビジネスにあてはめて考えることが重要」となります。

世の中の構造的な変化、それが「メガトレンド」です。「10〜20年の長期スパンにわたり非常に高い確からしさで発生することが予見される、非連続かつ不可逆な変化の潮流」。今日/明日を変えるものではないが、深いところで確実に人や社会のあり方、ビジネスのあり方を変える大きな流れ。

ちょうど今日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、長期的な日本の人口を予測する「将来推計人口」を公表しました。今から約50年後の2065年の日本の人口は、15年比3割減の8,808万人という試算。これでも近年の30〜40歳代の出生率の実績が前回推計より上昇していることを踏まえ、若干の上方修正だそうです。とはいえ、50年後には日本の人口が今より3割も減少しているというのは、将来のビジネス環境を考えると途轍もない程の影響をもたらします。単純に言って市場が3割も目減りすれば、多くの事業は成り立ちません(実際には、高齢者向けなど伸びる市場もあるでしょうし、採算性の悪い事業者が淘汰されることによって、残存者利益が生じるといったこともあるでしょうが)。

ただ、この人口減少というメガトレンドは今日/明日の市場、あるいは、今期の売上に直接的に影響があるわけではありません。そういった意味で無視するのは容易ですが、企業の将来戦略を考える上では、むしろ出発点として考えるべきです。

弥生の経営を考える上でも、こういったメガトレンドが出発点になっています。人口が減っていく中で労働集約型の業務がどうなっていくのか。今は人を採用することが比較的容易でも、5年後、10年後に同様とは限りません。ITの力を活用し、お客さまの業務をどのように効率化するか(もちろん弥生自身の業務も効率化する必要があります)。最近は、なんでもかんでもAI(Artificial Intelligence, 人工知能)と言われるので(コンピュータで処理するものは全て?)、やや食傷気味ですが、こういった技術を活用して、人間がやらなくてもよい業務を自動化し、逆にそれによって人間がやるべき業務に集中できるようにするべきだと考えています。

もちろんITは手段でしかありませんし、個人的には今の極端なAI万能論は行き過ぎで、そう遠からずAIバブル(?)が崩壊することもあるのではないかと考えていますが、それでも、本質的に価値を提供できる技術は残り、私たちの生活であり、業務を大きく変えていくでしょう。

弥生がクラウドに取り組むのも、流行りだからではなく、それが中央集中への回帰というメガトレンドだからと考えているからです。ただ、クラウドもあくまでも手段に過ぎませんから、クラウドという中央集中ならではの管理効率の高さと、ローカルの使い勝手の良さの組み合わせを目指すべきだと考えています。

弥生がなぜクラウドに取り組んでいるのか、その裏にどういったメガトレンドを見ているのか、については、本ブログでお話ししたつもりだったのですが、今確認してみるとキチンとお話しした記事はないようなので、また改めて書いてみたいと思います。AIについても、また機会をみてお話ししたいと思います。
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2017年04月06日

BCG経営コンセプト

少し前に、「BCGのワザ」という記事を書きました。プレゼンの資料作成テクニックはボストン コンサルティング グループ(BCG)で学んだ、というもの。

これはこれで事実なのですが、BCGの価値はプレゼンや資料じゃないだろ、という突っ込みが内輪から入りそうです(苦笑)。はい、その通りです。前回の記事でも、経営コンサルティング会社にとって本当の成果物は、お客さまの業績であり、プレゼンではない、と書きました。プレゼンはあくまでも手段である、と。

本当の成果物は、お客さまの業績。そういった観点から、かつては正論を言うだけと見られがちだった戦略コンサルティングファームも、実践に力点を置くようになっています。Make It Happen。お客さまの進むべき道を提言するだけではなく、その際に必要となる改革をお客さまと共に実行する。どんなに価値のある戦略であったとしても、それが実行・実現されない限り、価値はありません。実際、私自身も経営者として、より多くの時間を割いているのは、圧倒的に「実行」、Make It Happenです。

一方で、正しい道を向いていない限り、どんなに頑張って実行したところで、結果につながらないのも事実。仮にマクロ的な力によって、どんどん市場が縮小しているような状況であれば、その市場の中でどんなにもがいたとしても結果にはつながりません。この場合は、市場の定義をどう変えるかを考えるべき。

つまり、何だかんだ言って戦略は大事。もちろん実行も大事。

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BCGがその名の示す通りボストンで生まれたのが1963年。東京オフィスができたのが1966年。昨年2016年はBCG東京オフィスの50周年でした。この機会をあわせて、出版されたのが、BCG経営コンセプト 市場創造編BCG経営コンセプト 構造改革編という2冊の本。前者は内田さん、後者は菅野さんといずれも私がBCG在籍中にお世話になった大先輩です。お二人は既にBCGを卒業され、今はお二人とも早稲田大学ビジネススクールの教授です。

内容の解説は私にとって荷が重い(苦笑)ので、是非実際にお読み頂ければと思うのですが、この二冊は二つの意味で味わうことができると思います。

一つはBCGが提唱する経営コンセプトであり経営戦略の進化を理解するという意味で。BCGはその誕生から、戦略に特化したコンサルティングファームとして実績をあげてきました。「エクスペリエンス・カーブ」「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」などの経営コンセプトは、経営戦略をかじったことのある人であれば一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。これらの経営コンセプトは時代の流れを超え、今でも有効です。同時に、グローバル化やデジタル化といった時代の波にあわせ、新たな経営コンセプトも生まれてきています。こういったBCGの経営コンセプトの進化を理解するというのが一つの味わい方。

もう一つはBCG自体の進化を理解するという意味で。BCGもそれ自体が会社ですから、生き残りのためには進化が必要。戦略コンサルティングファームでも、かつての成功モデルを粛々と繰り返しているだけでは継続的な成功は実現できません。BCGの提供する価値は、かつては戦略でとどまっていたものが、やがて、実行にまで広がり、そして今、戦略、実行に加え、コンサルが一緒にいるからこそ実行できるのではなく、自社で戦略を立案・実行し、成果をあげられる組織能力の構築(Enablement)にまで広がってきています。つまりBCG自体も明確な戦略を持ち、進化してきたからこそ今があるわけです。

本当のBCGの「ワザ」を是非ご堪能下さい。
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2017年03月24日

BCGのワザ

私は社内/社外を問わず、年間かなりの数のプレゼンテーションを行っています。最近はスタッフが作るプレゼンの質が上がり、多少手を入れて使うことも増えてきましたが、それでも多くは自分で作成しています。プレゼンのテクニックなり、プレゼンの資料作成テクニックをどこで学んだのか、と聞かれることがありますが、前者については、自分の経験から自分自身で編み出したもの。一方で、後者に関しては、前々職であるボストン コンサルティング グループ(BCG)で学んだことが一番大きいと考えています。

誤解を受けがちですが、経営コンサルティング会社にとって本当の成果物は、お客さまの業績であり、プレゼンではありません。ただ一方で、プレゼンは、お客さまにメッセージを明確に伝え、お客さまが自分事として動けるようにするために非常に重要な手段です。それだけにプレゼンに関する拘りは徹底していますし、徹底して叩き込まれます。苦しみながらようやく作ったプレゼンを全てボツにされることも珍しいことではありません。

プレゼンでよく陥りがちなのは、伝えたいことが多すぎ、かつ整理されていないため、結果的に何を伝えたいのかが曖昧になってしまうこと。プレゼンの鉄則は、ワンスライド・ワンメッセージ。一枚のスライドで伝えるメッセージは一つに絞ること。当然メッセージも、徹底的に考え抜かれたものである必要があります。「あなたのメッセージはクリスタライズされていません」というダメ出しは、私と同時期にBCGに在籍した人は一度は聞いたことがあるフレーズです。クリスタライズ、そのまま訳せば結晶化となるかと思いますが、ファクトをもとに徹底に考え抜かれた結果としてインサイト(洞察)という次元に昇華された、という意味合いです。

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クリスタライズというところはなかなか難易度は高いですが、BCGの資料作成ワザに関しては、以前も本ブログで少しご紹介した奥秋さんが広く世間に発信されています。この度、「効率よく作れて、パッと伝わる一番シンプルな資料作成術」という本を監修し、出版されたとのこと。拝読しましたが、資料作成のツボであり、コツが簡潔によくまとまっているかと思います。以前出版された「プレゼン資料作成のツボとコツがゼッタイにわかる本」がプレゼン作成の実践編だとすると、今回の本はプレゼンだけではなく、報告書やレポートなどにも活用できる入門編。来る4月には新入社員が入社し、新入社員研修が始まるかと思いますが、新入社員向けの研修資料としても最適なのではないかと思います。

余談ですが、その人が作ったプレゼンを見るだけで、ああ、この人はBCG出身なんだな、とわかります。当然フォーマットなどは別ですが、プレゼンの「匂い」でわかってしまいます。それだけ、BCGのワザが染みついているんでしょうね。
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2017年01月18日

辞めませんか?

年賀状について書いた「辞めます」に続いて、釣りタイトルの第二弾です(笑)。

天皇陛下の退位について、議論はまだまだ尽くされていませんが、2019年1月1日に皇太子さまが新天皇に即位し、同時に元号を改める検討に入ったと報道されています。この通りに進めば(まだまだ紆余曲折はありそうですが)、平成は30年までとなり、2019年からは新しい元号が始まることになります。新しい元号が何になるのか興味深いところですが、業務ソフトを提供する立場からすると、早めに決めてもらえると有難いのが正直なところ。むろん、弥生会計/弥生会計 オンラインをはじめとして、新元号への対応を行う必要があるからです。

ということで、もちろん対応は行うのですが、この機会に提言したいのは、実務上はもう元号の利用を辞めませんか、ということ。誤解のないように付け加えると、元号そのものはあっていいと思いますし、日本の文化の大事な一部ですから、あるべきだ、とも思います。しかし、それを日常生活や、ビジネスの現場で使う必要はないのではないでしょうか。

実際問題として、民間企業での実務では、ほとんど西暦中心になっているかと思います。一方で、元号から抜けられていないのが、官公庁向けの書類。弥生会計 17では平成28年分所得税確定申告に対応していますし、弥生給与では平成28年分年末調整に対応しています。これらは対象となっている業務が元号で表記されている以上、弥生としても同様な表記をせざるを得ません。しかし、実際問題として平成28年分と言われても、昨年なのか、今年なのか、はたまた来年なのかピンと来ないのは私だけでしょうか。

年数の経過を考える上でも(わかりやすい例で言えば年齢の計算)、昭和と平成だけであれば何とかなっても、昭和+平成+新元号となるともはやパッとは計算できません。私自身については、昭和と平成だけでもパッと計算できず、必ず西暦に変換して計算しています(そういう人、多いですよね)。

ただでさえ日本は生産性が低い、人口が減る中で生産性を上げる必要があると言われる中で、こういった慣習についても予断を持たずに見直すべきなのではないでしょうか。さすがにこれは年賀状のように、辞めますと自分だけで決められる話ではありませんので、社会的な議論が必要だと思いますし、その上で、元号のヘビーユーザーである官公庁に率先して変えて頂ければと思っています。弥生としても、官公庁が西暦表示に変えて頂けるのであれば、喜んでそれに対応したいと思います。
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2016年11月28日

年収が高い人ほど歩くスピードが速い? (解説編)

前回ご紹介した「年収が高い人ほど歩くスピードが速く、せっかちである」というリリースについて、本当に因果関係が存在しているのかという問題提起をしました。年収が高くなると本当に歩くスピードが上がるのか、はたまた、歩くスピードが上がると年収が高くなるのか。前回は、これはおそらく疑似相関であろうということをお話ししました

疑似相関であろうというヒントは、調査対象にありました。調査対象は、「ムーヴバンド3」の利用者のうちアンケートに回答した1,229人 (男性: 735人/女性: 494人、年齢:19歳から77歳)とのこと。つまり男女、老若が混在しているという事です。

容易に想像できますが、身長差がある分、男性の方が女性より歩くスピードは速い。そして、事実として、男性の方が女性より平均年収は高い。国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査」(直近は平成27年分、pdf)によると、1年を通じて勤務した給与所得者のうち、男性の平均給与は521万円、一方で女性の平均給与は276万円と実に2倍近い差があります。男女での年収格差の是非はともかく(もちろん個人的には問題だと考えていますし、弥生では単純に男性だから年収が高いとか、女性だから低いといったことはありませんが)、事実としてこれだけの差があるのです。

これだけの差がある中で、男女を混在して年収と歩くスピードを相関させることの無理はご理解頂けるでしょう。男性は(一般的に)女性より背が高く、従って歩幅が大きく、歩くスピードも速め、そして歩くスピードと直接の因果関係はないが、年収も高め。一方で、女性は(一般的に)男性より背が低く、従って歩幅が小さく、歩くスピードも遅め、そして、年収も低め。

なお、念のためですが、より厳密に言えば、女性であることが直接的な原因として年収が低くなるという単純な話ではなく、女性の方が勤続年数が短い、女性の方がいわゆる非正規雇用の率が高いといった複数の要因が年収の違いにつながっているものと思います。

男女を混在させたのと同様な問題は老若が混在していることにもありそうです。上記の民間給与実態統計調査[年齢階層別の平均給与]を見れば、60歳を越えると年収がガクンと下がることがわかります。一般的に言えば、60歳を越えて年齢を重ねれば歩くスピードは遅くなってきます。そしてそれと直接的な因果関係はないものの、60歳を超えると平均年収も下がる。

では、本来はどのような分析をすべきだったのでしょうか。まずは、母集団として(年収分布という意味で)特性の異なる男女を一緒にするのでなく、分割すべきだと思います。男性だけを母集団として、あるいは女性だけを母集団として、年収が高い人ほど歩くスピードが速いということを示せれば、そこには何らかの因果関係があると考えることもできたはずです。老若に関しても、いわゆる現役世代と引退世代で分けて分析すべきでしょうね。

もっとも、注意が必要なのは、リリースの「年収が高い人ほど歩くスピードが速く、せっかちである」ということ自体は誤りではありません。「〜という傾向がある」ぐらいは書くべきだと思いますが、リリースでは、年収と歩くスピードで「因果関係がある」とは言及していないからです。本文をよく読んでみれば「早歩きをすれば、年収があがる、というわけではありませんが」とも記載されています。

つまり、あくまでも、これを読んだ人が勝手に因果関係を想像してしまうということです。ただ、率直に言って、因果関係を想像させる書き方だとも思いますが。本件は無害だとは思いますが、最近は様々な情報が溢れる中で、ある意味似たような印象操作がそれなりにあるように感じています。書かれていることを鵜呑みにするのではなく、自分なりに「なぜ」を考える姿勢が必要とされているように思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:20 | TrackBack(0) | ビジネス

2016年11月25日

年収が高い人ほど歩くスピードが速い?

ちょっと前に、NTTドコモ(ドコモ・ヘルスケア)が、「年収が高い人ほど歩くスピードが速く、せっかちであることが判明!?年収1,000万円以上の人は平均年収の人より約1.2倍速で歩いている」というプレスリリースを出していました。「ムーヴバンド3」というデバイスを利用している人へのアンケートおよび歩行に関するデータを用いて、年収と歩行速度の関係を調査したところ、なんと(!)、「年収が高い人ほど歩くスピードが速く、せっかちである」という結論に至ったのだそうです。

このリリース中にある「年収ごとの平均歩行速度」というグラフを見ると、確かに、年収が上がるにつれて、平均歩行速度が上昇しているように見えます。年収が100万円未満の場合は2.46km/hだったものが、年収が1,000万円以上になると3.13km/h。

単純に考えれば、歩く速度を上げれば、年収も上がる!?と考えてしまいます。例えば、年収が400万円以上500万円未満の人(平均歩行速度が2.69km/h)が、頑張って歩く速度を3.13km/hまで上げれば年収も1,000万円以上にまで上がる? 歩く速度を上げると、より有効に時間を使うことができ、それが年収増につながるのでしょうか? とはいえ、例えば一日7.5km(歩幅75cm×10,000歩)歩くとして、平均歩行速度が2.69km/hから3.13km/hに上がったとしても所要時間は23.5分しかかわりません。23.5分の余剰時間が年収倍増につながる?

普通は何かおかしいな、と感じられるかと思います。まず、一つ目の突っ込みどころとして、原因と結果を取り違えている可能性があります。原因が歩行速度で、結果が年収であれば、確かに歩く速度を上げれば年収も上がることになります。ただ、因果関係が逆で、原因が年収で、結果が歩行速度(年収が高い人ほど忙しいから歩く速度も上がる?)であれば、頑張って歩く速度を上げても、残念ながら年収は上がらないことになります。

二つ目の突っ込みどころとしては、そもそも因果関係が存在しているのか。実際問題として、これは因果関係が存在しない、疑似相関の可能性が高いのではないかと思います。

疑似相関の説明でよく見る例としては、アイスクリームの売上と溺死者の数の相関関係。アイスクリームの売上が最も高い時期には、プールでの溺死事故も最も多い。ということは、アイスクリームの売上増が溺死増の原因ではないか? アイスクリームを食べると、幸せな気分になり、気を緩めるから溺死者が増える? でもまあ、普通に考えれば、そんな因果関係はないことはわかりますよね。より妥当な説明としては、夏の暑さがこの二つの事象の共通の原因であるというもの。暑くなると、アイスクリームの売り上げが上がる。また、プールに行く人も増えて、結果的にプールでの溺死事故も増える。ただ、アイスクリームの売上と溺死増には直接的な因果関係はありません。

さて、それでは歩く速度と年収の関係の裏にある、本当の因果関係は何でしょうか。ちょっと長くなったので、私の見解はまた次回。
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2016年11月04日

G1経営者会議

昨日11/3は祝日ですが、終日、G1経営者会議というカンファレンスに参加しました。G1は、グロービスの堀さんが中心に立ち上げた組織(一般社団法人)で、次世代を担うリーダー層が集い、学び、議論する場として、G1サミットが2009年から開催されています。

今回私が参加したのは、「G1経営者会議」。「日本経済の中枢を担う代表的企業のリーダーが集い、混迷と停滞の打破を目指す」ことを目的に2012年から開催されています。私自身が「日本経済の中枢を担う代表的企業のリーダー」というのはかなり無理がある気がしますが、折角お声掛け頂いたまたとない機会ですので、天気の良い秋の祝日を費やして(苦笑)参加してきました。

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プログラムは、朝9時からの全体会からスタートし、複数の分科会を経て、夕方5時過ぎの全体会まで、みっちり一日。その後は懇親会。

分科会は同時に開催される中から一つ選ぶのですが、当然これでしょ、と容易に選べる時もあれば、どれにするか結構悩むこともあります。今回、結構悩んで選んだ分科会で思わぬ発見がありました。

ここしばらく、全く新しい事業を立ち上げる準備を進めているのですが、この事業を具現化するためにはどうしても越えなければならないハードルがあります。ハードルがあるからこそ、有望な新事業になりえるわけですが、このハードルはなかなかの難問。今回参加した分科会では、解を見出せたわけではありませんが、一つ糸口を掴めたような気がしています。ああ、今日参加することになったのは、この糸口を見つけるためだったんだな、と心の中でガッツポーズ。

経営者として、やろうと思えば、いくらでも仕事はある(作れる)訳ですが、目の前の仕事に忙殺されていては見えなくなるものもあります。日常と異なる環境で、日常と異なることを考えるからこそ見えてくるものもあります。今後も、こういった機会は意識して作っていきたいと思っています。

PS. ちなみに田端さんが衝撃を受けた分科会には参加しておりません(笑)。
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2016年08月16日

夏休みの宿題

弥生カスタマーセンターは本日まで夏期休業を頂いています。新しい祝日、山の日とカレンダーにも恵まれての6連休。最終日の今頃はサザエさん症候群になっているスタッフも多いような気はしますが(人間ですから、笑)、リフレッシュして明日からは元気にお客さまのお問合せにお応えしたいと思います。

夏休みと言えば、宿題。宿題と言えば、読書感想文ということで、こちら。

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池井戸 潤氏の最新作「陸王」。買ってから少し放置していましたが、読み始めたら500ページ越えもあっという間でした。池井戸氏といえば、代表作は半沢直樹シリーズ。ミーハーではありますが、半沢直樹シリーズから入り、それ以前の作品も一通り読破し、今は最新作が出るのを楽しみにし
ています。

元々は銀行マンが主人公の作品が多く、それはそれで銀行の方とのお付き合いも多い中で面白かったのですが、下町ロケットシリーズや本作のように中小企業の社長が主人公の作品は相当感情移入してしまいます。

実際に会社経営をしている立場からすると、ちょっと出来過ぎじゃないの、とか、いやー、それはちょっと、と思う部分もあるのですが、これはあくまでもエンターテイメントですから。そしてエンターテイメントとして、中小企業経営の苦しさと同時に楽しさ、醍醐味を広く一般に伝えるという意味で、とても素晴らしい作品だと思います。

エンターテイメントであって、経営書ではない。これを読んだからと言って経営ができる訳でもない。ただ、逆に経営書には書いていない本当に大事なことが表現されていますし、だからこそ多くの人に読まれるのだと思います。

それは会社を動かすのは、人であるということ、そして人を動かすのは想いであるということ。弥生はソフトウェアとサービスの会社ですが、それを作り、動かしているのは、人。そしてその人を動かすのは、想いです。それは弥生のお客さまである中小企業、個人事業主も同じです。

今回の陸王もまさに池井戸節全開でした。次作も期待しています。
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2016年03月17日

経歴詐称が話題になっていますが、実は私、5年前に一緒にラジオ出演したことがあります。当時はマスコミへの出演はほぼこのラジオ番組だけだったのではないでしょうか。生放送で一時間弱もご一緒しますから、どんな方だろうとプロフィール等を調べ、うーん、と思った記憶があります(こちらも経営コンサル出身ですから、ピンと来る来ないはあります)。ただ、ラジオのパーソナリティとしてはとても素晴らしい方でした。私のような素人をうまく盛り上げて、さすがの仕切りだな、というのが私の感想。

何せテレビを見ないので、その後ここまで活躍されていたというのは正直認識していませんでしたが、大活躍だったのですね。残念ながら、今回明らかになったことには言い訳の余地はありません。ただ、あえて言えば、周りはどうだったのでしょうか。薄々わかっていたけど、ビジネスになるから何も言わなかったのではないか、あるいは、華々しい経歴を安直に活用したいがために、ろくにバックグラウンドチェックをしなかったのではないか。本人の責任であることは確かですが、周りにうまく使われてしまったのではないか、そんな気がしてなりません。

ちなみに、私の経歴には一切の詐称はございませんので、念のため(笑)。遊び呆けていたせいで、東大の卒業はかなりギリギリでしたが。研究室からは、これ以上在席させてもろくに研究しないので、さっさと卒業させる、とされたのは紛れもない事実です(苦笑)。

ただ、ビジネスをしていると、嘘をつきたい誘惑にかられます。自分を大きく見せたい時。思った程の成果が得られない時。ちょっとぐらいだから、数字を作ってもいいんではないか。今は結果が出ていなくても、すぐに盛り返す。どうせすぐに追い付く。しかし、思った程の成果が得られないのには理由がありますから、願いに反してすぐに追い付くことは叶いません。そうなると、さらに数字を盛らなければならない。成長を演出するために嘘を付いていると、もっともっとハードルが上がっていく。右肩上がりの成長を演出するために、さらに嘘を重ねていく。そして現実と嘘のギャップがどんどん広がっていく。でもギャップが広がれば広がるほど、嘘を認めることができなくなる。

おそらく最初は「嘘」という意識はないのでしょう。ちょっと数字を盛るだけ。でも、それは間違いなく嘘の始まりですし、やがては取り返しがつかなくなっていく。周りもわかっていても、嘘の方が都合がいいから何も言わない、むしろさらなる嘘を煽っていく。

一つ確かなのは、真実はいつか明らかになるということ。だからこそ、弥生も私も、このブログのタイトル通り、「愚直」に拘り続けたいと思っています。
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2016年01月08日

復活劇

日経ビジネスオンラインで、「復活TASAKI、さらば『ダサい真珠』」という記事が掲載されています。実は弥生とTASAKIには共通点があります。それは、ちょっと前まで、MBKパートナーズという投資ファンドが株主であったこと。弥生は一昨年の12月にオリックスグループ入りし、MBK学校を一足先に卒業しましたが、記事中にも書かれている通り、TASAKIもMBK学校からの卒業(=持ち分の売却)を始めています。

詳細は是非記事をお読みいただきたいのですが、「TASAKIのこれまでの復活劇は、ブランド再生の王道を、教科書通りに実践したとも言える。実際、最近の取締役会では、こんな言葉が交わされているという。『何でこんな当たり前のことを自分たちでできなかったのだろうか』」という下りが印象的でした。

弥生はさらなる成長を目指すステージ、TASAKIは再生のステージと、置かれているステージは異なりましたが、同じMBK学校の仲間として、比較的近いところから、TASAKIの再生の歩みを見てきました。正直に言って、最初は半信半疑。本当にうまくいくのかな、と。記事中でもMBKの池田さんが「正直、最初の1〜2年は数字が上がらず、やきもきした」と素直に語っていますが、私も同様に感じていました。

ただ、今こうやって振返ってみると、MBKに招聘されて、TASAKIの社長に就任した田島さんには最初から答えが見えていたのでしょう。タクーン・パニクガル氏をクリエーティブ・ディレクターに登用したこと、そしてその大胆なデザインをそのまま商品化したことも含め、打ち手がその後着実に結果につながっている様はあっぱれとしか言いようがないです。

まずは教科書通り、当たり前のことを当たり前にやる。これは弥生の成長の中でも実践してきたことです。TASAKIもある意味、冷静に考えれば当たり前のことをしっかりやってきた。ただ、TASAKIの復活は、それだけではないし、誰にでもできることではないと感じています。田島さんの先見性/リーダーシップと、COOである小川さんの実行力、そして株主であるMBKの理解(辛抱?)が組み合わさって初めてここまで来れた。教科書通りとも言えるし、同時にこれからの教科書に乗せたくなるような見事な復活劇です。
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