2013年09月24日

オプション(続き)

前回は航空券の買い方を例に、オプションという価値を買うことの意味についてお話ししました。ただ、色々な人とお話しすると意外にこれを実践している人は少ないようです。キャンセル料は、必要な際に割安に乗れるというオプションの対価ですが、何となく、キャンセル料 = 何も価値を得ていないのに払わなければいけないコスト = 損というイメージがあり、損をしたくないという心理が働いているような気がします。

ある意味似ているのは、保険かもしれませんね。特に掛け捨ての保険の場合、無事故で終われば、保険料は(見た目上)何も生まずに「掛け捨て」となります。これも万が一の際の価値を買っているということになりますから、決して捨てているわけではないのですが、何となく掛け捨てよりも何かが残る貯蓄型を選ぶ方も多いようです。もっとも昨今はこれまでよりも色々と考えて保険に入る方も増えていますから、従来よりも掛け捨ての割合が増えているのではないでしょうか。ちなみに私は、保険は必要最小限のリスクヘッジと割り切っているので、基本は掛け捨てです。

キャンセル料を払うのを避ける理由でもう一つありそうなのは、「航空会社に悪い」という感覚。キャンセル料を払ったとしても予約していたものをキャンセルするのは悪いと感じてしまう。

この点に関して言えば、航空会社の方が一枚も二枚も上手なので、気にする必要はないというのが私の考えです。航空会社にとっては、一定の確率でキャンセルが発生するのは織り込み済みですし、そのため、通常は(需要さえあれば)座席数以上に航空券を発売しています。最近は航空券も需要に応じた値付けが定着しており、残りの座席数が少なくなれば、割安の運賃も早々になくなるようになっています。割安の運賃をキャンセルされても、乗りたい人がいるのであれば、今度は普通運賃でうまるわけですから、航空会社から見ると、キャンセル料 + 普通運賃を得られることになり、むしろ有難いと言えます。逆に乗りたい人がいないのであれば、もとより空席になってもしょうがないわけで、少なくともキャンセル料が得られるだけマシという考え方ができます。

もっとも、キャンセルすることがわかった段階で早目に連絡する、ということはやはり必要ですね。早目にわかればそれだけ航空会社として調整も容易になりますので。

この間知ったのですが、ユナイテッド航空ではFarelockというサービスがあります。これは、「フェアロックをご利用いただくと、予約した運賃を保留し、後日お支払いいただけます。ご購入までの間、旅行代金の値上がりやフライトが満席になることを心配する必要がなく、ご安心いただけます」という仕組み。一定の費用を払えば、一定期間、席が確保され、運賃も保証されるわけですから、これはまさしく、オプションを買っているということです。航空会社にとっても、ビジネスとして意味があるからこそ積極的にオプションを売っているわけです。
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2013年09月18日

オプション

BCGの先輩である鈴木貴博さんの「戦略思考トレーニング」「戦略思考トレーニング 2」に刺激されたわけではないのですが、今日はクイズを一つ。戦略思考というレベルではないのですが…

今週金曜日は午前中に都内で打合せがあるが、その後なるべく早めに札幌に移動したい。打合せは12時に終わる予定で、そこから羽田空港に移動すればギリギリ13時のフライトに間に合うはず。ただ、打合せの終了時間が今一つ読めない。何時のどんなチケットを買うべきか。

稚拙な問題でお恥ずかしいですが、最も安全な解は何回でも予約の変更ができる普通運賃でしょう。とりあえず最も確度の高い時間のフライトで予約し、必要であれば予約を変更すればいい。もうちょっとおトクにという観点では、往復運賃や2回分となるビジネスきっぷという選択もありますね。

一方で、運賃の安さという観点では、数日前までに購入する割引運賃(JALであれば特便割引、ANAであれば特割)の方がかなり有利。ただ、これらの運賃は基本的に予約の変更ができません。だから、今回のお題のように、時間が読めない場合には不向き?

これは必ずしもそうとは言えません。なぜならば、一定の確率でのキャンセル料の支払いを見込んだ上でも割引運賃の方がおトクというケースが往々にしてあるからです。例えば、割引運賃が20,000円(キャンセル料2,000円)、普通運賃が30,000円で、50%の確率で割引運賃の便に乗れるとすると、乗れる確率は50%でその場合のコストは20,000円、逆に乗れなかった場合(残る50%)はキャンセル料+乗ることになった便の普通運賃で2,000円+30,000円=32,000円。期待値で言えば、0.5*20,000+0.5*32,000=26,000円となり、何も考えずに普通運賃を買うよりもおトクとなります。

さらに言えば、13:00のANAか、13:30のJALか、どちらかには乗れるはず、という場合には、それぞれの割引運賃を買っておくという手もあります。この場合は乗らなかったどちらかでキャンセル料が発生することは確実ですが、期待値は(それぞれの確率が50%だとして)、0.5*(20,000+2,000)+0.5*(20,000+2,000)=22,000円となり、普通運賃を買うよりも確実におトクになります。

特に後者のケースで分かりやすいのですが、これは2,000円で2便のどちらかに割安で乗れるという「オプション」を買っているということです。このキャンセル料2,000円を無駄ガネと見るのか、オプションという価値を買っていると見るのかは人によって分かれそうですが、純粋に経済的観点で見れば有効なおカネの使い方と言えます。

わかりやすく航空券の例でお話ししていますが、これはビジネス全般に通じることです。誰から見てもどうなるのかがはっきりわかってからでは収益の機会が失われて(あるいは大きく損なわれて)しまいます。どうなるかわからない状況にこそ、大きな収益の機会があるわけです。ただ、何も考えずにエイやっでは単なるギャンブル。何がどれぐらいの確度で起こり得るか、また起こった事象ごとの収益の見通しを可能な限り見通す努力をした上で、あえてオプションを買うことは経営者として必要なことだと考えています。

弥生は何を企んでいるのかと勘繰られそうな記事ですが、あまり他意はありません(笑)。つい先日、上記のようにどのチケットを買うかという判断を迫られただけなのですが… ただ、航空券の例で言えば、割を食うのは航空会社なんじゃないの、という突っ込みを受けそうなので、それはまた次回。
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2013年07月18日

BCGマフィア

昨日は、BCG(ボストン コンサルティング グループ)のOB仲間である斎藤さんがアクサダイレクト生命の社長に就任したお祝いということで、BCGのOBが集まっての飲み会がありました(企画はこれも最近カフェ・カンパニーの専務に就任された柴野さん)。テーマとしては社長同志ということで、社長/役員クラスとして活躍しているBCG OB中心に20名程集まっての楽しい場となりました。

昔は戦略コンサルティングファームからの卒業後のキャリアパスというと、他のコンサルティング会社への転職もしくは自分でコンサルティング会社を起業するというパターンが多かったように思うのですが(私もBCGからの卒業後自分でコンサル会社を起業しましたので、後者のパターンですね)、最近はいわゆる事業会社で活躍する方も増えてきました。

今回参加した中でも、業種は金融(今回の主役であるアクサダイレクト生命の斎藤さん)もあれば、不動産(スターマイカの水永さん)、製造業(日本オイルポンプの中尾さん、SHICATAの後藤さん)、IT(USENの中村さん、弥生の私)と様々。USENのように社歴50年以上の会社もあれば、最近起業したベンチャーまで様々です。

業種や規模の違いはあっても、トップとして日頃走り続けている中での悩みには共通項が多く、遠慮なく話せる仲間はとても貴重です。折しも、週刊東洋経済で「マッキンゼー学校」という特集が組まれ「各界に広がるマッキンゼー・マフィア 130人」という記事が掲載されたばかりなのですが、我々も負けていられないねと意気投合。マッキンゼー特集が東洋経済なら、BCG特集はダイヤモンドさんいかがでしょう(違)。

固い結束力でBCGマフィアを名乗れるように(?)、OB同士の交流の機会は今後も積極的に持っていきたいですね。とりあえず次回は、ネット生保の2大プレーヤーであるライフネット生命の岩瀬さん(6月に社長COOに就任)とアクサダイレクト生命の斎藤さんの激論会でも企画してみたいと思います。
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2013年06月12日

英語で講義

先月末からオープン・イノベーションの話を続けてきましたが、長くなってきたので(まだ続きます…)、箸休め的な話題でも。

先週月曜日に立教大学にお邪魔して、講義を行ってきました。これまで法政大学関西学院大学、さらにはモード学園で起業、会計、さらには弥生自身などのテーマで講義を行ってきましたが、立教大学は初めてです。池袋にあるキャンパスにお邪魔したのは初めてですが、ヨーロッパ調の雰囲気のある建物もある一方で、新しくて快適な建物もあり、なかなか素敵なところでした。

立教も初なのですが、実はもう一つの初が。今回は私自身初の英語での講義でした。講座は経営学部の松永助教のBilingual Business Projectというもので、クライアント企業向けに新たなビジネスのプランを策定するというものです。Bilingualということで、授業は全て英語です。今回のクライアント企業もピアソン桐原というイギリス系のメディア/出版会社(ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ピアソンはFinancial Timesの発行元です)。

私の役割は、学生が用意してきたビジネスプランを講評するというもの。ただ、一方的な講評では学びにつながらないので、まずは簡単にプレゼンをしてもらい、それに対し、学生同士でのディスカッション、さらに私からの質問やフィードバック、そして最後に新規事業を考える上で参考になるフレームワークについて少々説明という形で組み立てました。良くも悪くも大学生のビジネスプラン(なおかつ講座としてもまだ道半ば)なので、全体的に甘い部分が多いのですが、頭ごなしに否定しても何も始まりません。良い部分を引き出すと同時に、どういった観点で考えるべきかのヒントを受け取ってもらえるように意識して進めました。

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一応UCLAのビジネススクールは修了していますので、英語には困らないのですが、日頃使う機会は限られていますし、なおかつ、プレゼン/シナリオなしでの講義なので、実のところ結構緊張していました(告白)。ただ、監督役の松永先生にもうまく誘導して頂き、何とか大役をこなすことができました。終わってみれば、楽しいし、もっと話したい!

学生の皆さんはとても熱心に取り組まれていることがよく伝わって来ましたし、発表されたプランの中には、結構筋のいい提案もあり、今後が楽しみです。

それにしても英語での講座があったり、インターンの機会も多くあったり(弥生も受け入れています)、今時の大学生は羨ましいですね。でも、一番羨ましいのは教室にエアコンがあることかもしれません。アテンドして頂いた学生さんに、昔の大学は教室にエアコンなんてなかったと言ったところ驚かれました(笑)。
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2013年05月24日

フィルターに注意

新聞を読もう、ただ、新聞を読む上では、もう一歩踏み込んで理解しようとお話ししてきました。自分が見たいように物事を見てしまう自らのフィルター、同時に、書き手によるフィルターの存在を理解した上で、できるだけ正確に理解する努力をする必要があります。特に、前回の記事でお話しした通り、グラフはパッと見で誤った理解をしてしまう(自らのフィルター)ことも多いのですが、それ以上に、意図的に見え方を変えることも多い(書き手によるフィルター)ので要注意です。

書き手によるフィルターという観点で、一つ事例を紹介したいと思います。今日(5/24)の日本経済新聞の朝刊(4ページ、政治面)で、「中小スーパー団体『消費税10%で導入を』 軽減税率巡り 」という記事がありました。自民党と公明党が23日、生活必需品の消費税率をほかの品目に比べ低くする軽減税率を協議する調査委員会を開き、小売業界など5団体から意見を聞いたという記事なのですが、「中小スーパー団体「消費税10%で導入を」 軽減税率巡り 」という見出しに誤りはないものの、記事全体を正確に表しているとは言えません。

というのは、記事の本文を読んで頂ければわかるのですが、この委員会では5団体から意見を聞いています。このうち4団体は、『事務負担が増える』『税収が減る』などの理由で反対の意見を述べたそうです。ただ、このうちの1団体、日本チェーンストア協会は『将来は必要だが、10%までは単一税率でいくべきだ』という意見だったそうです。

5団体のうち、唯一1団体、新日本スーパーマーケット協会のみが、「消費者の利点が大きいとして、税率が10%に上がる予定の2015年10月に軽減税率を導入するよう訴えた」そうです。この記事の見出しは、この部分だけを取り上げています(そして見出しの内容として誤っているわけではありません)。

しかし、この委員会では軽減税率導入を訴えたのは5団体中1団体だったということで、少数意見だったわけですから、記事の内容を集約した見出しとして適切だったかどうかというと、正直疑問符が付きます。記事の内容を可能な限り中立的に集約したとすると、「小売業界など5団体 軽減税率巡り意見が分かれる」とすべきなのではないかと思います。

ご存知の方も多いと思いますが、新聞各社は、新聞に軽減税率を適用すべきと主張しています。その意向が今回の記事の見出しに反映されたと考えるのはうがった見方でしょうか。

だから新聞は信頼できない、という気は一切ありません。書き手によるフィルターが生まれるのは、新聞だけに限った話ではなく、TVなどでも全く同じ現象がありますし(スポンサーに対する配慮などもあるようですね…)、ネットのメディアもフィルターから無縁ではありません。ソーシャルメディアにもやはりフィルターがありますし、むしろ個人発信だからこそ、遠慮なく個人の意向が反映されていることが多いように感じます。そういう意味では本ブログも私によるフィルターがかかっています(軽減税率に対する私の意見は本記事には極力反映はしていないつもりですが)。

重要なのは、どんなメディアに接するにせよ、そこに書き手によるフィルターがあるということを認識し、自分なりにフィルターを排除して理解をするということかと思います。

ただ、そこにどんなフィルターがあるのかを理解するためには、とにかく多くの情報に接する必要があります。自らの社会への窓を広げる必要があります。だからこそ新聞を読みましょう、まずは。広い分野で、より多くの情報に接し、それを理解する努力をし、経験を積みましょう。
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2013年05月22日

グラフに注意

新聞を読もう、新聞を読む上では、もう一歩踏み込んで理解しようという話の続きです。早速ですが、次のグラフを見て下さい。

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どう見えますか? この5年間で激減? では、次のグラフも見て下さい。続きを読む
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2013年05月20日

もう一歩踏み込んで読もう(その2)

前回は、全く同じ事実であっても、書き方によっては全く違ったように見えるとお話ししましたが、せっかくなので、もう一つの例を。

「国保:都道府県移管なら、負担増減3万円超??厚労省試算」

「国保保険料、移管なら上げも」

現在は市町村単位で運営されている国民健康保険を都道府県単位での運営に移管した場合、都道府県内で保険料が平準化されるため、保険料が大幅に変動する市町村が発生するという記事なのですが、今回は一つ目が毎日新聞、二つ目が日本経済新聞です。この比較では、毎日が「増減」とあって増えることもあれば、減ることもあると示唆しています(が、前段が「負担」とあるので、どうしても「増」の印象が強くなりますね)。一方で、日経は「上げ」とあるので、増加部分だけに着目しています。

この運営移管案は、運営を都道府県単位にすることによって、運営効率を上げ、少しでも保険料を下げられるようにするという狙いもありますが、都道府県内で保険料が平準化されることにもなりますので、結果的に保険料が増加する市町村もあれば、保険料が減少する市町村があって当然なのです。そういう意味では、この記事に関しては、毎日の方が「増減」と両方あることを明記した上で、「3万円超」という変動額を主に取り上げている分、より中立的かもしれません。

本文においても、毎日は負担増になるケース(三宅島)と、負担減になるケース(千代田区)を併記していますが、日経は負担増になるケース(三宅島など)のみを取り上げ、「実際に保険料を上げることになれば反発が強まるのは確実だ」と結んでいます。もともと国民健康保険などの社会保険の負担が重い(かつさらに重くなってきている)という背景の中で、やはり「増える」方が強調されがちになっているのではないかと思います。

ちなみに前回と今回の事例では、日本経済新聞と毎日新聞を比較し、また、題材としてパナソニックを取り上げていますが、特に他意はありませんので、念のため(たまたま先週出張した際にホテルで配られた新聞が毎日新聞で、同じ日の帰りの飛行機で読んだ日本経済新聞との対比が面白い事例として記憶に残った以上でも以下でもありません)。
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2013年05月17日

もう一歩踏み込んで読もう(その1)

前回は、新聞を読もうとお話ししました。新聞を読むことによって社会に対する自分の窓を広げる効果があると。

一方で、新聞を読む際には気を付けて頂きたいことがあります。それはもう一歩踏み込んで理解すること。例えば、以下の二つの見出しを見比べてみて下さい。

「パナソニック黒字転換へ 今期最終、3年ぶり リストラ寄与 前期は7500億円赤字に」

「パナソニック:3月期の赤字7500億円」

両方とも同じ5月11日(土)の記事ですが、一つ目は日本経済新聞の、二つ目は毎日新聞の見出しです。実は言っていることは同じなのですが、見出しだけ見れば、全く逆のメッセージに見えるのではないでしょうか。日経の見出しは今期は黒字転換、すなわち最悪期は脱したと読めますし、一方で毎日の見出しは、3月期は巨額な赤字、まだまだ出口が見えないと読めます。すなわち、日経はどちらかというとポジティブに、毎日はどちらかというとネガティブに見えます。

誤解のないように申し上げると、日経の方がいいとか、毎日がいいとかということを言いたいわけではありません。全く同じ事実であっても、書き方によっては全く違ったように見えるということです。だからこそ、記事を単純に、額面通り受け入れるのではなく、自分なりに咀嚼して、自分なりに理解する必要があるということです。

人にはどうしても、自分が見たいように物事をみる「くせ」があります。コップに水が半分入っている時に、コップに水が半分「もある」、と見るのか、コップに水が半分「しかない」と見るのか。毎日新聞の記事は、実は本文には「しかし、14年3月期は最終利益500億円と3年ぶりの黒字転換を見込む。」と書いてあるのですが、見出しで「ああ、やっぱりパナソニックは厳しいんだな」と思ってしまうと、「黒字転換」の部分がほとんど印象に残らなくなってしまう可能性があります。

自分が見たいように物事をみる「くせ」は、物を書くときにも同様に現れます。人が書く以上、どうしてもその人の意思が書いたものに反映されるのです。パナソニックは最悪期を脱したと思っていれば、あるいは、脱して欲しいという思いがあれば、書き方も自然とポジティブになりますし、逆に、パナソニックの先行きはまだまだ厳しいと思っていれば、ネガティブな書き方になります。もちろん、スペースの関係で、充分に書ききれず、結果的に一面的な書き方になってしまうということもあるでしょう。

読み手としては、自分が見たいように物事を見てしまう自らのフィルター、同時に、書き手によるフィルターの存在を理解した上で、できるだけ正確に理解する努力をする必要があります。
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2013年05月14日

新聞を読もう

早いもので5月も中旬。マーケティング本部の新卒社員はGW明けから現場に配属となりました(開発側は今月はまだプログラミング研修があります)。新卒採用もすっかり定着し、毎年新卒社員が加わることは当たり前のことになってきましたが、やはり実際に配属され、フレッシュな顔が加わるのは全体へのいい刺激になりますね。

以前書いた「正解なんてない」という記事が結構好評だったので、本ブログで、たまには新人に向けたメッセージも織り交ぜていこうと思っています。今回は新聞について。

社会人になったからには、ちゃんと新聞を読まないととよく言われますね(もっとも最近は就職活動の一環として読み込んでいる人も多いのでしょうか)。私も全くそう思います。

正直に言えば、私もかつてはそれほど熱心に読んでいたわけではありませんでした。それが変わったのは、アメリカに留学した時。留学をさせてもらっていた会社の親心で、アメリカでも日本経済新聞(とWall Street Jounal)を読んでいました。私は、もともと海外志向が強く、それほど日本に対する執着は強くなかったのですが、現実に英語の世界に埋もれると、唯一の日本メディアがとても新鮮で、隅から隅まで読むようになりました(当時はインターネットもまだまだ普及の初期で、ネットで十分な情報が得られる環境ではありませんでした)。

一旦読むようになると、日本に帰ってきてからも読むことが習慣になりましたし、むしろ読まないと物足りない気分になるようになりました。今でも朝は30分程度はかけて読み込んでいます(トイレで読むことに家族の顰蹙を買っていますが)。

今はインターネットで実に様々な情報が入ります。だから新聞なんてもういらない、という声も耳にしますが、私はそうは思いません。新聞のメリットは関心の幅を広げられること。インターネットで色々見ている限りは、どうしても自分の関心のある領域の情報に偏ってしまいます。誰かがキュレートした情報を見れば十分といっても、結局自分が関心のある誰かが選んだ情報になりますから、自ずと偏りが生じます。それに対して新聞は、最初から最後まで一通り読むことによって、それまでは関心のなかった領域でも何か起きているのか、ざっとわかるようになりますし、逆にわかるようになると、関心も湧いてきます。

政治に関心がなくても、まずは新聞で政治面を読んでみる。読んでいるうちに色々と理解が進み、理解が進むことによって関心も生まれる。そういった意味で、新聞を一通り読むことによって、社会に対する自分の窓を広げる効果があると感じています。

だまされたと思ってまずは一年間、じっくりと読んでみて下さい。関心の幅が大きく広がることを実感できると思います。

ただ、新聞を読む、イコール、書かれていることをそのまま鵜呑みにする、ではありません。書かれていることを自分なりに咀嚼することが必要です。これについてはまた次回。
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2013年04月25日

正解なんてない

今日は4月に入社した新卒社員の課題発表会があり、そこでちょっとお話ししたのですが、時間も限られていたので、この場でも。

いわゆる勉強(特にテストを伴うもの)には必ず正解が存在します。正解がないとテストにならないですしね。ただ、それなりな期間ビジネスを経験してきて痛感するのは、ビジネスには正解なんてないということ。

ビジネスには、正解なんてありません。絶対的な正解なんてないし、絶対的な不正解もありません。絶対的な正解のように見えても、やる気がない人であれば成功はしない。あるいは、誰から見ても絶対的な正解であれば、皆やるでしょうから、皆が同じようにやることから利益は生まれません。絶対的な不正解のように見えても、本当にやる気がある人が(正しく)取り組めば必ず成功します。絶対的に不正解に見えるのであれば、他にやる人もいないでしょうから、成功した暁のリターンは大きいでしょう。

私も一応、コンサル出身なので、数字はとても重視しています。まあそれこそ社長ですし、社内で最も数字重視でなければいけないような気がします。ただ、正直分析なんて、できるように見せたければできるように、できないように見せたければできないように、いくらでも角度を変えて見せたり、加工することが可能です(ここだけの話ですよ、笑)。私の経験上、できないというのはほとんどの場合、言い訳です。よくよく聞いてみると、やりたくない、リスクを取りたくないというのが本音だったり。

正解か、正解でないかではなく、心の底からやりたいと思えるか。

それが一番重要なこと。やりたいのであれば、出来る方法を考える。もちろん、そのために数字はとても重要な指標です。できること/できないことを証明するために数字があるのではなく、まずやりたいことが最初にあって、それを最も効率的に、確実に実現するために数字を活用する。数字は手段を定義するものであって、目的を定義するものではない、とも言えるでしょう。それでは、目的を定義するのは何か。それは意志であり、夢だと考えています。
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2013年03月21日

借入は減らすな!

確定申告期間も終わり、学校も春休みに入り、桜も間もなく満開。一気に春爛漫という感じですが、一部の中小企業にとってこの3月末はターニングポイントになります。平成21年(2009年)にスタートして、その後延長が繰り返されてきた中小企業金融円滑化法がいよいよこの3月末で終了します。これによって、借入の返済が困難になり(一部)返済を猶予してもらっていた中小企業の倒産等が続く可能性があると言われています。もっとも、銀行の方とお話しする限り、金融円滑化法が終了しても、銀行としての姿勢が極端に変わることはないということで、誰がどう見ても事業の継続可能性がないという場合を除き、中小企業が途端にバタバタ倒れるということはないと考えています。

ただ、中期的に言えば、銀行の融資姿勢がこれまで以上に厳しくなりうるのは事実かと思います。つまり、これまで以上に銀行と賢く付き合う必要があるということです(ここで言う銀行には信用金庫なども含む)。そういった意味で、時宜にかなった本が以前本ブログでもご紹介したことのある税理士の松波先生が出版された「借入は減らすな!」という本です。

この本は、借入が返済できなくて困っているという中小企業よりも、借入はできるだけしたくないという中小企業の方に読んで頂きたいと思います。本書で解説されている「おカネの借り方、返し方」は極めて正攻法ですので、良くも悪くも、金融円滑化法が終了するから、いよいよヤバいという会社には向いていません。むしろ、起業したんだけど、まだ銀行と付き合ったことがない、銀行との付き合いは最小限にしたいと思っている会社にこそ役に立つかと思います。

本書の冒頭でも書かれている通り、銀行からの借入で会社はつぶれません。つぶれるのは、あくまでも現預金が尽きた時です。そういった意味では、現預金のバッファーを確保するという意味で、借入は避けるべきものではなく、むしろ戦略的に活用すべき武器と言えます。ただ、日本人は全体として、借金はよくない、借りたものはさっさと返そうという意識がありますね。個人の立場ではそれは基本的には正解だと思うのですが、事業や会社という立場では正解ではありません。

それでは戦略的に借入を行おうと言っても、どの銀行でもホイホイ貸してくれるほど甘くはありません。本書では、最初にどういった銀行と付き合うべきか、そこからどのように取引銀行を広げていくべきか、また借入の種類をどのように(保証協会付融資からプロパー融資へ)変えていくのかといった実践的なノウハウが詰まっています。

私がかつて自分の会社を起業した時は、一般的に資金繰りが楽なコンサルティング業だったこともあり、銀行からの借入なしで済ませてしまいました。そこには何となく借金は嫌だな、という意識があったことは否定できません。ただ、事業をある程度大きくしようとすれば、借入は避けて通れませんし、むしろ戦略的に活用すべきもの。当時の私がこの本を読んでいたら、考え方が相当変わっただろうな、と思います。おススメです。
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2012年12月07日

small is?

弥生のお客さまは、中小企業、個人事業主、起業家の皆さんです。中小企業といっても、中よりは小。もちろんケースバイケースで、従業員が数百名の会社でご利用頂いているケースも珍しくはないのですが、やはり多いのは一人から10名ぐらいの小規模事業です。言い方によっては、零細企業となるのかもしれません。ただ、零細企業というと、どうしても否定的なイメージがありますね。

ちょっと面白いブログ記事がありました。Business Zoneというウェブメディアの編集者Dan Martinさんが書いたものですが、Danさんと、Twitterの創業者であるJack DorseyさんとのTwitter上でのやり取りを基にしたものです。やり取りのきっかけは、Jackさんが「どんなビジネスであっても、"small"(あるいは"big")と呼ばれたくないはずだ。街中にあるビジネスでも、グローバルに展開したいと思っているかもしれない。買い物はローカルで、考えはグローバルに。」とツイートしたことです。これにDanさんが「smallと呼ばれて悪いことなんかないよ。多くのビジネスがそう呼ばれても別に悪い気はしていない。」と返信。

この後もやり取りが続くのですが、Jackさんの考えとしては、"small"は、"dismissive"(軽蔑的)で"limiting"(制約的)だから、良い表現ではないということのようです。これはまさしく日本語での零細企業のニュアンスですね。

一方で、Danさんとしては、small (business)という表現にそういった否定的な意味はないとしています。私の感覚としてもこちらの意見に賛成ですが、どう受け取るかは人によりますから、なかなか難しいですね。ただ、小さいことが悪いことではないというのは、JackさんもDanさんも共通の意見だと思います。むしろ小さいことの強み(意思決定の早さですとか)もあります。弥生としては、ポジティブな意味で、small businessのお手伝いをしていきたいと考えています。
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2012年05月18日

言葉力

一ヶ月ほど前に、コマツ会長の坂根さんのお話を聞く機会がありました。UCバークレー(UCB)日本同窓会主催の「知の広場」というイベントです。私自身はUCLA卒業ですが、同じUC(Unversity of California)ということもあり、UCLA同窓会とUCB同窓会はイベントの相互乗り入れを頻繁に行っています(ちなみに、一般的にこの種のイベントは閉鎖的ではなく、関心がある方であれば誰でも参加可能ということが普通です)。

当日は東洋経済の本社ビルにある経済倶楽部という(ちょっとクラシックな感じの)会場でしたが、多くの方が参加されていました。それもそのはずで、坂根さんは最近の経済界きっての論客と言われており、講演会はあっという間に満席になるそうです。

とても楽しみにして参加したイベントでしたが、期待以上でした。内容としては、坂根さんの著書「言葉力が人を動かす」と多分にオーバーラップしているのですが、話のわかりやすさ、着眼点の鋭さ、ロジックの明解さ、どれをとってもさすがに一流の経営者は違うと感じさせられました。まさに坂根さんの仰る「言葉力」を実感します。

坂根さんは言葉力を「話術のことではない」、「リーダーの言葉によって多くの人を本当に大事な問題に気づかせ、そちらに向かせ、そして彼らに汗と知恵を出してもらう力のこと」と定義しています。ここから、坂根さんは言葉力を「見る」力、「語る」力、そして「実行する」力に分解しています。「見る」力、「語る」力、そして「実行する」力の三つを大切にするというのは、日頃から私自身が意識をしていることであり、そういった意味で非常に勇気づけられました。誤解のないように言えば、これまで「見る」力、「語る」力、そして「実行する」力とはっきりと整理できていたわけではありません。日頃自分が考えていたこと、意識していたことがすっきりと整理され目の前に見えた、「ああ、そうなんだよ、やりたかったのは、こういうことなんだよ」と膝を打つ感じと言えばいいでしょうか。

意識はしていたとはいえ、私自身の「見る」力、「語る」力、そして「実行する」力を振り返ると、正直まだまだだと感じさせられます。実際に、坂根さんの講演は話術としても素晴らしかったのですが、私がそれ以上に感銘したのは坂根さんの着眼点の鋭さでした。見る力ですね。日本国内だけではなくグローバルの視点でというのは今や当たり前になりつつありますが、単純に今見えている現象だけでなく、その裏にある大きな流れに着目し、そこからこの先何が起こりうるのかを考えていく。時には地球が生まれてからの46億年のという時間軸の中で今とこれからを考える。

この三つの力の中で言えば、比較的自信があるのは、実行する力でしょうか。坂根さんの著書でMBAホルダーを若干揶揄している部分がありますが、それは的外れではなく、単純にビジネススクールで学んだだけでは、表層的な「見る」と「語る」だけに終わりかねない危険性を持っています。「見る」「語る」をもっと深められるかと同時に、キチンと自分のこととして率先して動けるかどうか。私自身がMBAホルダーだけに、逆にここの部分を特に意識してやろうと心がけています。

ただ、まだまだ圧倒的に修練が足りません。それでも、自分が目指している方向が間違っていないこと、そして自分の今を振り返れただけでも本当によい機会となりました。坂根さん、そしてUCB日本同窓会の皆さま、有難うございました。
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2012年05月03日

リスクについて考える

ETIC.のイベントなどでちょこちょことご一緒させて頂いている孫 泰蔵さんがブログでリスクについて書いています。とても良い内容ですので、ぜひご覧ください。孫さんのブログは、記事一つ一つが深いです。拙ブログのようにさらっと読む感じではなく、記事を読むたびに色々と考えさせられます。

羽生さんの「もし人生を自動車の運転に例えるとするなら、年齢を重ねるほどアクセルをふんだほうがいいと思います。なぜなら年齢を重ねるとブレーキのかけ方がわかってくるので、ブレーキが効き過ぎる傾向になるからです。」という言葉に私も考えさせられました。私なりにも解釈を広げさせていただくと、これは年をとって、それなりに業績やら成果やらが積み重なってくると、リスクをとって得るものよりも、失うものが多いように「思えてしまう」ということにもつながるのではないかと思います。

将棋に限らずチャンピオンを目指す人は、その時点ではタイトルという失うものがないですから、果敢にリスクを取ることができます。一方で、いざチャンピオンになったらどうか。勝ったらタイトルを維持できますが、負ければタイトルを失う。そう考えると果敢に勝ちにいくのではなく、とにかく負けないことを目指すようになっても不思議ではありません。あっというような勝ち方はしないけれど、何とか負けない。場合によってのらりくらりとかわしながら、引き分けを目指すという手もあるかも知れません。ただ、こういった勝負の世界では、負けないという姿勢だけではチャンピオンを守り続けることは難しいでしょう。

お陰さまで弥生は前期に過去最高の業績を達成することができました。それではその次は? リスクをとって次なる高みを目指すのか、まあ、こんなものだと思うのか。次の高みを目指すためにはリスクをとらねばならず、それがうまくいかなければ、せっかくここまで積み上げてきたものを失うかもしれません。一方で、年齢を重ねて「ブレーキのかけ方」はわかってきていますから、リスクをとらないでも、だいたいこの程度の結果を、まあ数年間は維持することはできます。

現状に甘んじることは容易です。ですからついついそちらを選びたくなります。ただ、世の中がとてつもないスピードで進化している中での現状維持は後退以外の何物でもありません。確かに数年は何とか現状維持できるかもしれませんが、現状維持が長引けば長引くほど、その先に明るい未来を描くことは困難になります。あれ…、ということは、リスクをとると今ここまで達成したものが失われてしまうかも、という認識自体が誤っているということです。リスクをとらなくても何年後かには失われてしまうものであれば、本来はリスクをとることによるデメリットでは必ずしもない(リスクが顕在化しうるタイミングを変えているだけで、リスクそのものが変わっているわけではない)。

これまでにしたことがないこと、人と違う何かをすることによるリスク、そしてそれが顕在化した時のデメリットは大きく見えます。ただ、そのデメリットが本当にそのリスクをとることによって生まれるものなのかを今一度冷静に考える必要があります。これは私の経験則ですが、実はそのリスクをとろうがとるまいが、いずれにせよそう遠からず発生するデメリット、というケースが多いような気がします。

羽生さんの言葉は、表面上は、年齢を重ねると人間は保守的になりがちなので、と理解できます。ただ、その表裏一体で、年齢を重ねたからこそうまくリスクを取れるようになっている、とも言えます。年齢(より正確には経験)を重ねたメリット。それはリスクの目利きができ、リスクをうまく管理できるようになることです。アクセルの踏むべきポイントがわかっている、ということですね。以前本ブログでも書きましたが、"Risk is not to take but to manage"。孫さんの記事でも"Manageable"というのが一つのキーワードになっていますね。リスクを取るということは、どんなリスクでも無条件で取るということではありません。むしろ取らないで済むリスクは取らない。何らかの方法で排除できるリスクは排除し、どうしても取るべきリスクを取る。経験を重ねることのメリットは、どのリスクは排除できるか、どのリスクは取るべきかという目利きの精度が上がるということです。

逆に経験を積んでいなければ? それは孫さんも書いているようにリスクを徹底的に洗い出して、それが何を意味するのか、考え抜くしかありません。そしてその積み重ねがリスクの目利き能力につながります。

私自身は? うーん、まだまだですね。それなりに経験は積んできていますので、ある程度の目利きはできますが、正直、この分野は終わりのない修練だと感じています。ただ、言えることは、私も会社としての弥生も取るべきリスクを決して恐れることはないということ。リスクをうまく管理することによって、10年後も30年後も日本の中小企業・個人事業主・起業家の皆さんの事業のインフラであり続けられるよう進化したいと思っています。
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2012年02月20日

Windows 8と7とVistaと

本ブログでも何回か取り上げている次期Windows。Windows 8は仮称だと思っていたら、既に正式名称になっているようですね。というのも、先週、WindowsのブログでWindows 8の正式なロゴが発表されていました。この記事で歴代のWindowsのロゴを見ることができますが、Windows 8のロゴは原点回帰で、そのまんまWindows(窓)のイメージです。

まだ正式発表はされていませんが、この2月末にWindows 8の一般向けのプレビューが公開されると言われています。そして、発売は年内。Windows 7が(2009年)10月22日の発売でしたので、同じようなタイミングとの見方が多いようです。ただ、Windows 8の大きな売りであるARMアーキテクチャー向けのWindows 8はリリース遅れるとの噂もあり、まだまだ目を離せない状況です。

Windows 8が注目を集める一方で、先週末はWindows 7とWindows Vistaが注目を集めていました。というのも、ひっそりとサポート期間の延長が発表されたためです。もともと、Windows 7とWindows Vistaではコンシューマー向け製品のサポート期間が短く設定されており、特にWindows Vistaではコンシューマー向け製品であるStarter/Home Basic/Home Premium/Ultimateのサポート終了が今年の4月10日に迫っていました。Windows 7についても、今現在家電量販店の店頭で沢山売られているPC(Home Premiumなどコンシューマー向け)のサポート終了が2015年1月となっており、今買ってもサポートが3年未満に終了という、常識的にあり得ない状態になっていました。今回の延長措置により、ビジネス向けコンシューマー向けを問わず、Windows Vistaは2017年4月11日まで、Windows 7は2020年1月14日までサポートが提供されることになりました。

弥生のお客さまは中小企業、個人事業主、起業家ですから、PCも家電量販店で買われるケースが多く、このサポート終了は深刻な問題と捉えていました。このため、弥生からも日本マイクロソフトにサポート終了ポリシーの見直しについて働き掛けを行ってきました。さすがに、弥生の力で今回の見直しが行われたということは100%ないと思いますが、同様の問題意識を持っていた人が多く、マイクロソフト自身も問題として捉えていたということかと思います。

一方で、確実にサポート終了の日が迫るのがWindows XP。こちらは過去の措置により、2014年4月8日までサポートが延長されていますが、今回の措置ではさらなる延長はありませんでした。これで、XPから7への移行に拍車がかかりそうです。
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2012年01月31日

ハドソン

昨日/今日と札幌に来ています。ということで、札幌にまつわる話を少々。

札幌と言えば、知る人ぞ知るITベンチャーの集積地(サッポロバレーとも呼ばれるようです)。最近では、初音ミクが大ヒットしたクリプトン・フューチャー・メディアが有名ですね。ただ、ITベンチャー集積地としての札幌の歴史は長く、それこそパソコンの黎明期には、札幌は時代の先端にいました。

札幌のITベンチャーとして特に有名なのはハドソンBUGですね。そのハドソンがなくなるというニュースがネタフルで取り上げられていました。正確に言えば、会社としてコナミデジタルエンタテインメイントに吸収されるとのこと。ブランドとしての「ハドソン」は残るとのことですが、会社としては消滅するようです。

ハドソンというとファミコン向けのソフトで有名です(ちょっと通な選択ですが、サラダの国のトマト姫とか、笑)。ファミコン名人の高橋名人を覚えていらっしゃる方も多いかと思います。ただ、私にとってのハドソンは、私のかつての愛機シャープのX1用のBASIC、Hu-BASICです。私のパソコンの歴史はハードはシャープ、ソフトはハドソンによって形成されたわけです。本Blogで1年ちょっと前に取り上げましたが、そんなシャープもパソコン事業から撤退。そしてこの3月で、ブランドとしては残るものの、会社としてのハドソンが消滅。

本当に歴史を感じますね。つい先日は世界最大の写真フィルムメーカー、コダックが連邦破産法チャプター11を申請し、事実上倒産しました。コダックの設立は1880年で、実に130年以上の歴史を持つわけですが、そのコダックも、カメラのデジタル化の流れには逆らえなかったわけです。一方で、同じように写真フィルムメーカーであった富士フイルムは、今でも元気です。元気というよりも超優良企業。写真フィルムの技術を液晶ディスプレイ用の偏光層保護フィルムに応用したり、さらには化粧品の技術に応用するなどして多角化の成功しました。

ちなみにハドソンの創業は1973年ですが、最初は(当時良くある話ですが)アマチュア無線ショップとしてスタートし、1978年にパソコンソフトの開発・販売を開始したそうです。この1978年というのは、今の弥生のルーツの一つである「日本オールシステムズ」が設立された年でもあります。この頃がパソコンの本格活用の黎明期というわけですね。

コダックになくて、富士フィルムにあったものは何か。ハドソンの少し後を歩んできた弥生にとって、決して他人ごとではありません。
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2011年11月18日

未公開株詐欺と「悪貨と良貨」

前回はオリンパスという一つの悪意ある事例がきっかけになって、多くの真面目にやっている会社に「必要のない」足かせが科されるようでは本末転倒だ、と書きましたが、最近私が危惧しているのが、増加している未公開株詐欺が起業に与える影響です。未公開株詐欺が起きない、広がらないように対策を行うことは当然必要なことだと思いますが、その結果、真面目に起業しようとしている人に悪影響を与えるようでは、やはり本末転倒ではないでしょうか。

最近の日本経済新聞で、ある銀行では新規設立法人の口座開設には支店長面接が必須になっているという記事がありました。その理由は未公開株詐欺。未公開株詐欺では、(おそらくは実態のない)法人の口座が資金の振込先になっているため、法人の口座開設に対し、キチンとした審査をするようにという指導が出ているようです。

改めて調べてみたところ、例えば昨年の9月13日付で、三菱東京UFJ銀行が「法人口座を開設されるお客さまへ」というタイトルで、口座開設の手続きが厳格になり、「口座開設をお断りすること」があるというお知らせを出しています。さらに、今年の10月31日にはゆうちょ銀行がより踏み込んだお知らせを出しています。ここでは「警察庁からの要請もあって」と明確に書かれています。

誤解がないように申し上げると、法人口座を開設するにあたって、一定の書類が必要とされることは当然のことだと思います。お尋ねなり、面接も一概に否定するつもりはありません。ただ、これが「疑わしきは罰する」、すなわち、お眼鏡に適わなければ口座開設を認めないといったような運用になりかねないことを危惧しています。一般的に金融機関は保守的ですし、後で問題が発生して色々言われるよりは、とりあえずリスクを排除しておくということになれば、こんなところで起業の芽を摘みかねません(もちろん、ちょっとやそっとの障壁にめげていては起業は成功しないのも事実ですが、お客さまの開拓から資金調達まで様々なチャレンジがある中で、わざわざもう一つ大きな障壁を設けるべきでしょうか?)。

言うまでもなく、未公開株詐欺を防ぐことはとても重要ですし、社会として取り組まなければなりません。ただ、新規設立法人の口座開設を難しくすることが適切な対策なのか、というと疑問を感じざるを得ません。それ以前に、素性の定かでない儲け話にはのらない、お金を振り込む前にキチンと確認するという当たり前のことを徹底的に広報するのが第一なのではないでしょうか。

以前、やはり未公開株詐欺対策として「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正が検討され、(私も含め)多くの方の反対によって改正が見送りになりましたが、今回の銀行口座開設審査にも、本筋でないところで対策を行う(結果として割を食うのはちゃんとやっている人)という同じ「匂い」を感じてしまいます。

そういう意味では、「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正に対し、同じように反対の姿勢を明確にされた磯崎さんが読売オンラインの「未公開株詐欺を防ぐシンプルな方法」という記事で、至極まっとうな対策を提案されています。これは私見ですが、磯崎さんの提案の方がよっぽど効果があるように思うのですが…

posted by 岡本浩一郎 at 17:58 | TrackBack(0) | ビジネス

2011年11月16日

悪貨が良貨を駆逐する?

月曜日にオリンパスの件について書きました。オリンパスは世界的に活躍している会社だけに、この件は海外でも注目されているようです。最近は海外の方とお話しする機会も多いのですが、やはり皆さんこの件の展開を注視されているようです。

危惧されるのが、日本企業はだいたいこういった不正を行っているのではないかと思われ、世界中の投資家から敬遠されるようになること。ただ、冷静に考えれば米国でもエンロンという巨大事件がありましたし、直近でもMFグローバルという金融会社で顧客資産が行方不明になっていると問題になっています。つまり、決して日本固有の事象ではありません。もちろん、だから許されるわけではありませんが。

他にはない、と言い切るのは難しいですが、仮にあるとすれば、今回の事件がその他の件が明るみにでるきっかけになるでしょうし、そうなって欲しいと思います。

おそらく監査のあり方や、社外取締役の義務化など、制度面での議論も進むのではないかと思います。これらの議論は当然必要なことだと思いますが、企業は放っておくと悪いことをするから、それを何が何でも防げる仕組みにといった極端な方向に進まないことを願っています。特に上場している企業にとって、安心して投資してもらえるように、正しい情報が適切なタイミングで開示される仕組みを整備することはもちろん必要ですし、重要です。ただ、そういった仕組みが事業の推進自体の大きな足かせとなるようでは本末転倒だと考えています。

一つの悪意ある事例が、多くの真面目にやっている会社に必要のない足かせを科すようであれば、悪貨が良貨を駆逐してしまうことになりかねません。ちょっと話がずれますが、悪貨が良貨を駆逐するという意味で、未公開株詐欺の対策のあり方についても危惧しています。ちょっと長くなってきましたので、この点についてはまた次回に。
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2011年11月14日

オリンパス

最近世間を賑わせているオリンパス。しばらく前に、英国人社長が解任になった際には、単なるお家騒動かと思っていました。日本企業の経営がグローバルになってきたとはいえ、やはり日本流 vs. 欧米流で揉めたかと(それにしても就任して半年はあまりにも…、ですが)。

ただ、買収を仲介した会社への不当に高い(と思われる)手数料、さらに、不当に高い(と思われる)金額での企業買収が明るみにでると、さすがに何かがおかしいと感じた方が多かったのではないかと思います。私は経営陣が仲介会社にうまくやられたぐらいに考えていました。しかしさらに、損失先送りの穴埋めだったという突然の発表。まさに事実は小説よりも奇なり、そのものですね(おそらくこの事件を題材にした本も数多く出版されるでしょう)。

なぜ/どうやってここまで事実が隠し通されてきたのかはこれから明らかになるでしょうが、会計は一定のルールに則って行われる以上、逆にそのルールを悪用することも不可能ではないということかと思います。ただ、本当にわかりようがなかったかというと微妙ですね。会計的な数字として成立させることはできても、どこかに無理のある数字が発生しますので。

今回の事件に絡んで、よく山一證券自主廃業の映像が流れますが、これは本ブログでも書いた通り、私の人生を変えた事件でした。今回のオリンパスの場合は、本業(特に内視鏡)は順調ということで、山一證券のような事態にはならないと思いますが、それでも働いている方は辛いかと思います。個人的にも、オリンパスの一眼レフカメラを使っていることもあり、頑張って復活して欲しいと願っています。

余談ですが、弥生はこういったことはありませんので、念のため。何かを隠しようにも、隠すために使う有価証券を一切所有していませんので(笑)。
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2011年07月22日

1,000日

このブログでたまにでてくる数字シリーズ。今回は1,000日です。これまでに出てきた、500,000件は弥生のカスタマーセンターに半年間で寄せられるお問い合わせの数、4,000会員は弥生のパートナーである会計事務所(PAP会員)の数でした。では、今回の1,000日は?

この1,000日は弥生自身の数字ではありません。しかし、弥生にとっても、そしてお客さまにとってもとても重要な数字です。この1,000日というのは、Windows XPのサポート終了(EoL - End of Life)までに残された日数です。正確には7月13日の時点で1,000日でしたので、本日時点では既に991日と、着実にカウントダウンが進んでいます。この数字が0になる日、すなわち、2014年4月8日にWindows XPに対するセキュリティパッチやホットフィックスの提供が終了します。新種のセキュリティリスクが日々発生している現代にあっては、これはこの日以降、Windows XPを使い続けることはできないということです。

Windows XPはここまでPCが普及する立役者となった素晴らしいOSだと思います。派手ではないけれど、キチンと安定して動くOS。ただ、残念ながら、セキュリティ問題がここまで拡大する以前のOSですから、直近のOSと同等の堅牢性は有していません。また、Microsoftにとっても、Windows XPをサポートをしつつ、Windows Vista, Windows 7, そして来年のWindows "8"を開発し、サポートしていくことは多大な負担になっていることも事実です(別の言い方をすれば、Microsoftほどの大企業だからこそ、ここまでサポートを続けてこれたということだと思います)。そういった観点では、Windows XPのサポートはどこかで終了せざるを得ませんし、いよいよその日が近付いてきたということです。

ちなみに、このXP EoL問題は先週のWPC 2011の基調講演でも取り上げられていました。3日目の基調講演で登壇したMicrosoftのNo.2 (COO) Kevin Turner氏の話はとてもストレートで聞いていて面白かったのですが、Turner氏はこの1,000日問題を取り上げ、Windows XPは"DEAD"(死んだ)と明言していました(ちなみに、Office 2003とIE6も同様にDEADという扱いです。こちらの記事にそのスライドが掲載されています)。


弥生では、このXP EoL問題に対し、極めて大きい問題意識を持っています。いわゆる大企業であれば、IT部門もあり、当然この問題を把握し、いつまでにどうするという策を練っているでしょう。しかし、弥生のお客さまである中小企業や個人事業主の場合、それなりの規模のIT部門が存在するケースは少ないですし、PCがいつまで使える、新しいPCにどうやって移行するかと考えている方は少数です。一方で、現実問題として、最近ではWindows 7をご利用の方が急速に増えてきたものの、現時点ではWindows XPを利用されている方がやはり過半数です。

お客さまが直前になって慌てる必要のないよう、弥生は自らの責任としてこの問題をお客さまにお伝えし、お客さまが余裕を持って準備できるようにしていきたいと考えています。まず手始めとして、この記事をお読み頂いている方で現在XPを利用されている方は、是非Windows 7への移行をご検討下さるようお願い致します。
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