2021年03月11日

Build Back Better

東日本大震災の発生からちょうど10年が経ちました。亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまに謹んでお悔みを申し上げます。また、いまだ復興のただ中におられる方々には心よりお見舞い申し上げます。

本ブログを始めたのは2009年12月ですから、10年前の記事も残っています。当日21:10にアップしたブログ記事を見てみると、その段階では被害の全容がまだまだ見えていなかったことがわかります。10年前は秋葉原に引越す前の神田のオフィスでしたが、天井から鉄筋が飛び出して、長い時間ギシギシいっていたこと、帰宅する手段がなく、夜は自分のオフィスでUstreamでNHKに釘付けになっていたことを覚えています。

比較するものではありませんが、約一年前は、新型コロナウイルス禍が日本でも徐々に広がり、学校の休校など社会に影響が出てきたタイミングです。残念ながら、一年後の今も、ワクチンの接種が始まる一方で、変異種が広がり、新型コロナウイルス禍の収束は見通すことができていません。

大震災にしても、新型コロナウイルス禍にしても、災厄に耐え忍ぶことは日本の強みだと思います。大震災の翌日、ようやく動き出した電車を色々と乗り継いで帰路に着きましたが、どこでも皆秩序を保って行動していました。必要であれば、文句も言わず何時間でも並ぶ。新型コロナウイルス禍でも、ここまでマスク着用を徹底していることが、諸外国ほどには感染者数が爆増していないことにつながっているのではないでしょうか。日本の緊急事態宣言は、強制力はほとんどありませんが、それでも確実に行動の自粛につながっています。

耐え忍ぶことは日本の強み。一方で、正直、喉元を過ぎれば熱さを忘れやすいという部分もあるように思います。大震災は日本が大きく変わるきっかけになる、新たな始まりになると思いました。もちろん、変わった部分はありますが、ふと振り返ってみると、いつの間にか良くも悪くも日常に戻り、根本的には変わっていないように思います。新型コロナウイルス禍に対しても、今でこそ危機感はありますが、ワクチンが奏功し、感染が収束すれば、いつの間にかもとの日常に戻ってしまうのかもしれません。

でも、それでいいのでしょうか。単純に耐え忍ぶ(Survive/Endure)だけではない。もとに戻す(Build Back)だけでもない。災厄の中で見えてきた私たちの社会の課題から目をそらすことなく、災厄が過ぎ去った後も、課題に取り組み続けることによって、より良い社会を作る。Build Back Better.

どんな課題にどのように取り組むのかは、人によると思います。それぞれの関心や強みを活かしたBuild Back Better。新型コロナウイルス禍は日本のデジタル敗戦とも言われています。テクノロジーを生業とする者として、足元だけでなく、この先5年10年、時間はかかっても着実にデジタル化による社会の変革を実現することが私に与えられた課題だと感じています。
posted by 岡本浩一郎 at 21:56 | TrackBack(0) | その他

2020年12月10日

データから見るGoToトラベル

前回ご紹介した「GoToトラベル」を利用している人は新型コロナウイルスへの感染リスクが高いとする東京大学などの研究チームによる調査結果ですが、政治の世界でもかなり話題になっているようです。ただ、相関関係なのか、因果関係なのか、で解釈がだいぶ分かれているようです。

津川先生ご自身が、「Go To トラベル事業の利用者は非利用者よりも新型コロナに感染するリスクが高いことを示して」いるという相関関係を認める一方で、「Go To トラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない」とも書かれているんですけどね。この種の話は、それぞれの人が自分が見たい真実を見出いがちということなのかと思います。見たい真実ではなく、本当の真実を見出すためには、データをしっかり見る必要があります。

今回の調査の一部のデータが論文中で記載されていますが、これはなかなか興味深いです。例えば、GoToトラベルへの参加者(N=3,289)では、大学卒以上が60.0%。これに対して非参加者(N=22,193)では、大学卒以上が48.3%。P値(統計的に有意な差があるかどうかを測る指標、小さいほど有意に差がある)が<0.001ですから、確実に差があります。収入が高位層に属する人が参加者は34.8%、非参加者が20.7%。経営者(Employer)である割合が参加者は34.8%に対し、非参加者が3.4%。

単純に言えば、やはり経済的に余裕のある人ほどGoToトラベルを活用しているという傾向があるということかと思います。これを政策として金持ち優遇と見るか、あるいは、補助という呼び水によってお金をどんどん使ってもらうのが目的だからむしろ狙い通りと見るか。

私は基本的に後者という理解です。ただ、金持ち優遇に見えることが心情的に許せないということも理解できます。もっとも健康状態に関するデータを見ると、また複雑な事情が見えてきます。この調査では基礎疾患の有無も調査しているのですが、これを見る限り、GoToトラベル参加者は羨ましいとは言えないように思います。

過体重に該当する方が、参加者26.9%、非参加者19.4%(P値0.04)。P値がやや大きくなっていくので、有意差という意味では少し弱くなっていきますが、高血圧が参加者32.6%、非参加者26.5%。糖尿病が参加者15.7%、非参加者9.9%。喘息が参加者19.7%、非参加者13.2%。心疾患が参加者12.2%、非参加者5.8%。

健康状態という観点でも差がありそうですよね。経済的に余裕があるのは、必ずしもいいことではないのかもしれません(苦笑)。まあ、これも疑似相関なのか、あるいは、相関があるとしてもどんな因果関係なのか、冷静に見極める必要がある訳ですが。
posted by 岡本浩一郎 at 23:42 | TrackBack(0) | その他

2020年12月08日

GoToトラベルと新型コロナウイルス

「GoToトラベル」を利用している人は新型コロナウイルスへの感染リスクが高いとする東京大学などの研究チームによる調査結果が話題になっています。新型コロナウイルスの検査陽性者数が増えているのはGoToトラベルの影響ではないか、とも言われている中で、ほらやっぱり、という受け止め方も多いようです。

ただ、注意しなければならないのは、「GoToトラベルを利用している人は新型コロナウイルスへの感染リスクが高い」ということと、「GoToトラベルが新型コロナウイルス感染拡大の要因になっている」ということはイコールではないということです。また、疑り深い私としては、そもそもこの調査の正当性も気になります。例えば、GoToトラベルを利用する人は高齢者が多い、と同時に、高齢者は感染リスクが高いという関係があると、GoToトラベルを利用する人は感染リスクが高いという必ずしも正しくない因果関係を導き出してしまう可能性があります。以前、「年収が高い人ほど歩くスピードが速い?」という突っ込みどころ満載のリリースを例にお話ししたことがありますが、疑似相関である可能性があるからです。

こういう時は原典にあたってみようということで、調べてみたところ、この調査は、宮脇敦士氏(東京大学大学院医学系研究科)、田淵貴大氏(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部)、遠又靖丈氏(神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)、津川友介氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校[UCLA])によって構成される共同研究チームによるものだそうです。

津川先生のブログを読んでみると、さすがに「年収が高い人ほど歩くスピードが速い?」ほどの安直な分析ではありませんでした(査読が終わっていないとはいえ、アカデミックな論文なので、まあそれはそうですよね)。「性別・年齢・社会経済状態・健康状態などの影響を統計的に取り除いた」とありますので、母集団の偏りは排除したもののようです。津川先生のブログでは、「Go To トラベル事業の利用者は非利用者よりも新型コロナに感染するリスクが高いことを示して」いると同時に、「Go To トラベル事業が新型コロナ感染拡大に寄与している可能性があることを示唆しています」と記されています。感染拡大への寄与はあくまでも可能性ということです。実際、この研究の限界として、「Go To トラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない」とも明確に記載されています(その他の課題も明確に記載されています)。

個人的には、「GoToトラベルを利用している人は新型コロナウイルスへの感染リスクが高い」のは当たり前だと思います。家にこもっているよりは、外に出て活動する(特に旅行の場合、食事も基本的に外食とならざるを得ない)方が、感染リスクが高くなるのは当然のことではないでしょうか。逆に、「GoToトラベルが新型コロナウイルス感染拡大の要因になっている」については、主要因かどうかは言い切れないものの、一定の要因になっていることも当たり前と言えば当たり前だと思います。人々が家にこもった状態よりは、旅行する人が多い方が感染拡大はしやすい。

結局は程度問題なのかと思います。そもそもGoToトラベルであり、その他のGoToも含めて、感染リスクをゼロにすることは目指していないはずです。感染リスクをゼロにするのであれば、皆が家にこもるのが一番。でもそれでは日本経済が壊滅的な打撃を受けかねない。そうならないよう、感染リスクを極力下げながらも、人が行動し、経済を回す。ですからGoToが主要因として感染が爆発し、制御できない状態になることはもちろん許容できませんが、一定程度の感染につながることは本来織り込み済みではないでしょうか(なかなか公言しにくいことだとは思いますが)。

そういった意味で、今回の調査は、なかなか興味深い結果だと思います。今回の分析で意外とも言える結果は、「GoToトラベルの利用経験による有症率の違いは、65歳以上の高齢者よりも、65歳未満の非高齢者で顕著」だったということ。これには、「高齢者の方が新型コロナ感染を恐れているため、たとえ旅行をしても慎重に行動し、その結果として感染リスクを増加させていなかった」という仮説が提示されています。とすると、高齢者に自粛を要請するのは実は的外れなのかもしれません。津川先生もGoToトラベルがダメだと言っている訳ではありません。「感染者数の抑制のためには、対象者の設定や利用のルールなどについて検討することが期待されます」と。今回の調査にも色々と限界はありますが、定量的なデータを活用し、ゼロイチではなく、最適解を見出そうとすることが大事なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 23:36 | TrackBack(0) | その他

2020年11月06日

青の国と赤の国

開票が進む米国大統領選挙ですが、まだ最終結果は見えていません。バイデン氏がリーチとも見えますが、開票はまだ続いており、バイデン氏が勝ったとされるアリゾナ州においてトランプ氏が僅差に迫る(このため、アリゾナ州についてはバイデン氏を当確とするメディアとまだ判断はできないとするメディアで判断が分かれているようです)、その一方で、トランプ氏優位だったジョージア州で開票率99.0%の段階でバイデン氏が僅か2,000票以内に迫るなど全く予断を許さない状況です。

前回は「米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません」と書きましたが、より詳細に見てみると実はもっと複雑です。WSJ(Wall Street Journal)で今回の選挙の特集記事が公開されていますが、記事の地図内の州をクリックしてみると、その州内の郡単位で青(民主党優勢)なのか赤(共和党優勢)なのかを見ることができます。上でお話ししたアリゾナ州やジョージア州を見てみると、アリゾナ州では、PhoenixのあるMaricopa郡やTucsonのあるPima郡は青(民主党優勢)であるのに対し、それ以外の郡には赤(共和党優勢)も目立ちます。ジョージア州に関しては、Atlantaおよびその近郊は明確に青、それ以外は赤に染まっている地域が目立ちます。

つまり、州レベルで言えば、東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」というのは大きな傾向としてはその通りなのですが、実際には州の中にも、都市部の「青の国」、逆に地方の「赤の国」という対立構造が生まれているのです。

私の両親はだいぶ昔にテキサス州のHoustonに住んでいたのですが、4年前の選挙でトランプ氏が選ばれたことを信じらないと言っていました。両親がかつて見ていた、成熟した大人の国のイメージからはかけ離れていたのかと思います。ただ、これもテキサス州の中を見てみると、何が起こっているのか見えてきます。Houston, Dallas, San Antonio, Austinという都市部は青、一方で地方(面積でいえば80%程度)は赤で埋め尽くされています。つまりHoustonに暮らしていて見える米国と、地方に暮らしていて見える米国は異なるのだと思います。私自身も4年前にまさかという感想を本ブログに残していますが、青の国のカリフォルニア、しかも都市部に暮らしていたからこそ、本当の米国の姿が見えていなかったのかと思います。

もっとも、青の国と赤の国の対立構造はここ10年〜20年で顕著になってきたのだと思います。これは、グローバル経済/IT経済が広がる中で、そのメリットを受けやすい人と、メリットを受けにくい人という意味での差が大きくなったということもあるでしょうし、また、それがソーシャルメディアを通じて目に見えるように(場合によっては、真実ではなくても、真実以上の説得力を持つように)なってきたということもあるのでしょう。

日本が同質社会であるのに対し、米国は多様性の国と言われます。米国は多様性を強みにしてきた国です。それが今、多様性を認めるのではなく、お互いに相容れない対立構造を深めつつあるように見えることに憂慮しています。ましてやその一因が自分も関わっているITの力にあるのかもしれないというのは非常に複雑な思いです。一方で、米国は危機を機会にしてきた国でもあります。今回の選挙の結果がどうなるのかはまだわかりませんが、どういった結果になるにせよ、多様性の中での連帯を深める方向に進むことを願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:30 | TrackBack(0) | その他

2020年08月25日

レジ袋有料化

デジタル化に関する比較的固い話が続いているので、たまには少し柔らかめの話でも。既に皆さまご承知のことと思いますが、この7月1日から、レジ袋の有料化が始まりました。

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レジ袋の有料化を受けて、私が持ち歩くようになったのが、こちら。Sea to Summitというアウトドア用品メーカーのUltra-Sil Nano Shopping Bagというエコバッグです。MyXというアウトドアショップ(おススメです)で見かけて購入しました。ご覧の通り非常に小さく、持ち歩くのが簡単。カジュアルな格好であれば、ポケットに入れておいても気になりません。重さは30gしかありません。

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一方で、これをひらくと、容量25リッターのエコバッグになります。結構色々なものを入れても大丈夫。メーカーによると20kgはいけるそうです。20kgと言えば、2リッターのペットボトル10本分ということになります。この種のバッグでは、ひらくのは簡単だけど畳むのが意外に手間というケースも多いのですが、このバッグの場合、畳んだ時に外側となる小袋に無造作に突っ込んでいくだけです。

ということで、結構お気に入りで持ち歩いているのですが、ちょっとした買い物の時(家からちょっとコンビニに行く時ですとか、会社でお昼にお惣菜を買いに行く時)には、しまった持ってこなかったということが多いです。これも慣れの問題でしょうか。

ところで、レジ袋の有料化は何のためなのでしょうか。プラスチックの使用量を削減するため? ゴミを減らすため?

経済産業省の広報資料(pdf)によると、「海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの解決に向けた第一歩として、プラスチック製買物袋の有料化を通じて、マイバッグの持参など、消費者のライフスタイルの変革を促すことが目的です」とされています。またこちらのwebサイトでは、「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」ともされています。

これはなかなかに微妙な表現で、考えることや、ライフスタイルを変えることが目的だけれども、これによって海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化が解消する一助になるとは言っていないのです。

私自身で言うと、これまでレジ袋はもらっていましたが、それらは多くはゴミ袋として活用していました。横浜市はかなり真面目にゴミの分別をおこなっている(pdf)こともあり、分別してゴミを出すためにそれなりの数の袋が必要になります。今回、レジ袋が有料化され、レジ袋をもらわないことによって、ゴミ袋が足りなくなり、それは別途買うことになりました。ということは、少なくとも私のケースで言えば、プラスチック袋の使用量はあまり変わっていないのです。また、特に日本においては、海洋プラスチックごみは比較的少ない(ましてやその中に占めるレジ袋はもっと少ない)とされており、問題がないという気はないのですが、レジ袋の有料化は海洋プラスチックごみ問題の解消にはほとんどつながらないというのが実態かと思います。要は、(意味がないとは言いませんが)直接的な効果としては限られる、だからこそ「本当に必要かを考える」「ライフスタイルを見直す」というふわっとした目的になっているのかと思います。

今回少し調べてみてなるほどな、と思ったのが、レジ袋の有料化は国際的な動きですが、その背景にあるのは、ゴミ問題というよりは、脱石油社会へのシフトがあるということ。「プラスチック容器やレジ袋といった石油由来の資源のみならず、発電目的での利用など、あらゆる分野において脱石油を進めるというのが国際社会の流れ」。レジ袋の有料化が全く意味がないとは言いません。ただ、国際社会の流れを踏まえると、レジ袋の有料化だけをやってもしょうがないんですよね。レジ袋の有料化を一つの手段として、本当に目指すことは何なのか、それがもっとしっかりと議論され、発信されるべきなのではないかと思います。

あれ、少し柔らかめの話のはずが、結局固い話に着地してしまいました。これも性格でしょうか(苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:51 | TrackBack(0) | その他

2020年04月20日

判断をすること、そして責任をとること

先週金曜日4/17に、安倍総理が記者会見を開催し、緊急事態宣言の区域を日本全国へ拡大することについての説明をされると同時に、全国民を対象に、一律に1人当たり10万円の給付を行うことも表明されました。これまでは、収入が著しく減少し厳しい状況にある家庭に限って、1世帯当たり30万円を給付する措置が予定されていましたが、これを撤回し、一律の給付へと大きく舵を切ったことになります。

私が素晴らしいな、と感じたのは、30万円給付の条件設定が複雑であるがゆえに、本来求められるべき速やかな給付が困難であるということを見極めた段階で、自らの責任論につながることも覚悟した上で、速やかに軌道修正したこと。今、私たちが直面している状況は、誰にとっても未知の領域です。もっとしっかり備えるべきだったという指摘自体は肯定されるにしても、準備不足だった以上は、現状を冷静に、可能な限り正確に把握し、その時点で最善と思われる判断をするしかありません。その中で状況が変わったのであれば、朝令暮改と言われようが、判断を改める必要があります。

ただ、それは言うほど容易ではありません。人間は自分の判断が正しいと思い込みたいものですし、認知バイアスによって、自分の判断に都合が悪い情報を無視したり、軽んじてしまうことも起きます。また、仮に自分の判断が正しくないと認識したとしても、自らの権力を損ねる可能性があるのであれば、誤っているとしても、自分の判断に固執することも不思議なことではありません。

そういった中で、その時点で最善と思われる判断をする。そしてその責任をとる。私がもう一つ素晴らしいと感じたのは、「ここに至ったプロセスにおいて混乱を招いてしまったことについては、私自身の責任であり、国民の皆様に心からおわびを申し上げたいと思います」と明言されたこと。

もともとどんなやり方にも完璧解はありません。本当に困っている人にこそお金が届くようにと条件を複雑にすれば、給付を受ける方の手間も含め、コストが膨らんでいきますし、何よりも、求められるスピード感を実現できません。今回の一律給付に関しては、特に困っていない人にも給付が必要なのか、という指摘は避けられないでしょう。ただ、スピード感が最優先だとすると、妥当な方法だと考えます。完璧解ではないけれども、妥当な解。そして妥当な解をより良いものにするのは、国民も協力できるはずです。一律給付であっても、給付を辞退することもできるし、寄付することもできる。

ええ格好しいと思われてしまうかもしれませんが、私(の家族3人分)については、今回決まった一律給付を辞退、もしくは適切な先に寄附することを宣言したいと思います。

今回の記事について色々とご批判を受けるかもしれません(広報担当に怒られる気が、笑)。私は本ブログで政治的な発言は避けるようにしていますし、基本的には誰々だから/何々党だから全面的に賛成ということはなく、あくまでも是々非々だと思っています。ただ、今回の安倍総理の判断は緊急事態における日本のリーダーとして素晴らしいものだと感じています。私も安倍総理のように1億人以上の未来を左右しうる重い判断ではないにせよ、この未知の領域の中で、日々迷いながら判断しています。その時点で最善の判断をすること、そしてその責任をとること。それがリーダーの仕事だと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:47 | TrackBack(0) | その他

2020年03月04日

正しく恐れよう

新型コロナウイルス感染拡大のニュースが続いています。ここ一週間では、韓国、イタリア、イランでの感染者拡大が顕著になっており、この三ヶ国では判明している感染者数が2,000人を超えました(韓国は5,000人超)。アメリカでもまだ数は少ないものの、感染者数が徐々に増えており、危機感が増しているようです(対岸の火事だった状況から一転、日用品の買いだめなども起きているようです)。

現時点で、日本で確認されている感染者数は特殊環境であるダイアモンド・プリンセスを除けば300人弱と比較的小幅な増加に留まっています。学校の休校措置など日本の取り組みの是非について、色々な見解があるかと思いますが、一定の感染拡大は止められないものの、その増加のペースを極力抑えるという観点では一定の成果を上げているように見えます。

それでも、色々な報道に接し、不安に思うのは当然のことだと思います。一方で、ただただ不安である、というのではなく、正しく恐れることが重要ではないでしょうか。出発点となるのは、これまでに見えてきている事実です。それは、新型コロナウイルス感染による致死率は、SARSやMERSなどの過去に脅威となった感染症と比較して、決して高くないということ。まだはっきりと断言はできませんが、これまでにも私たちが対処してきたインフルエンザと大きくは変わらないレベルではないかと言われています。であるとすると、無闇に恐れる必要はないはずです。インフルエンザにかかりたくないのと同様に、新型コロナウイルスにかかりたくはない。一方で、かかったとしても、(批判を受けうる表現だとは思いますが)大したことではない。

もちろん、今後新型コロナウイルスが変異し、結果的に致死率が上がる可能性もありますから、手放しで安心すべきではありません。また、前回もお話ししたように、新型コロナウイルス感染による致死率は高齢者や基礎疾患のある方で明確に高い傾向があります(これはインフルエンザでも同様です)から、こういった方や同居の家族については、細心の注意が必要だと思います。これも前回もお話ししたことですが、現時点で最も怖いのは、治療を要する感染症患者が急増することによって、医療システムが維持できなくなることです。重度の感染症の場合、どこの病院でも対処できる訳ではありません。現時点で日本全国には2,000床超の感染症病床しかありません。今後これを5,000床超にまで拡大するとのことですが、このキャパシティの中に重症患者の数を抑える必要があります。そのために、ここ1〜2週間に感染拡大をどこまで抑えられるかどうかが重要なわけですし、個別の取り組みの是非については色々な見解があるにせよ、日本政府の取り組みは総体として正しいと個人的には考えています。

ただ、国民に正しい危機感を醸成することは必要だと思いますが、あくまでも無闇に恐れるのではなく、正しく恐れるべきということを、もっとはっきりと打ち出してほしいとは思っています。

その観点で、私が素晴らしいと思うのが、シンガポールのリー・シェンロン首相のメッセージです。原文はこちらで、こちらには日本語に翻訳されたものがあります。

まずは、感染はしやすいが、致死率はインフルエンザに近いということをはっきりと述べています。

The new coronavirus is similar to SARS, but with two important differences. First, the new virus is more infectious than SARS. Therefore it is harder to stop it from spreading. Second, the new virus is much less dangerous than SARS. About 10 per cent of those who caught SARS died. With the new virus, outside of Hubei province, the mortality rate is so far only 0.2 per cent. In comparison, seasonal influenza has a death rate of 0.1 per cent. So in terms of mortality, the new virus is much closer to influenza than SARS. (原文)
新しいコロナウイルスはSARSに似ていますが、2つの重要な違いがあります。 まず、新しいウイルスは、SARSより感染力があります。 したがって、拡大を止めることはより困難です。 第二に、新しいウイルスはSARSよりもはるかに危険性が低いです。 SARSにかかった人の致死率は約10%でした。 湖北省以外では、致死率はこれまでのところわずか0.2パーセントです。 これに対して、季節性インフルエンザの致死率は0.1%です。 したがって、致死率の観点から見ると、新しいウイルスはSARSよりもインフルエンザにはるかに近いです。(上で紹介した日本語訳に一部加筆)

上述のように必要以上に恐れることはないことをはっきりと示しながら、私たちができることもはっきりと示しています。

Whatever the situation, we can each do our part. One, observe personal hygiene - wash your hands often, and avoid touching your eyes or face unnecessarily. Two...
状況がどうであれ、私たちはそれぞれ自分の役割を果たすことができます。 1つ目は、個人の衛生状態を保つこと。頻繁に手を洗い、目や顔に不必要に触れないようにしてください。 2つ目は...

私が特にこれは素晴らしいと思ったのは、以下のくだりです。

If the numbers keep growing, at some point we will have to reconsider our strategy. If the virus is widespread, it is futile to try to trace every contact. If we still hospitalise and isolate every suspect case, our hospitals will be overwhelmed. At that point, provided that the fatality rate stays low like flu, we should shift our approach.
(感染源が不明な)ケースが増え続ける場合、ある時点で戦略を再考する必要があります。 ウイルスが拡散している場合、すべて接触先を追跡することは無益です。 それらすべてを入院させ、疑わしい患者すべてを隔離したら、病院はキャパシティオーバーになります。 その時点で、新しいウィルスの致死率がインフルエンザのように低いままであれば、我々の戦略を変更する必要があります。

今後感染が広がり続ければ、あくまでも致死率が低いままであればという条件付きですが、私たちはインフルエンザと同様にこの新しい感染症と付き合っていかなければならないかもしれない。その可能性をしっかりと示しています。今はまだそこには至っていないけれども、そうなる可能性を予め提示することによって、正しく恐れ、冷静に対処することを促しています。

驚くべきは、このメッセージが、昨日今日発信されたのではなく、約1ヶ月前となる2月8日に発信されていることですね。日本はこうだけれども、シンガポールは、といった比較をしたい訳ではありません。ただ、リー・シェンロン首相が発信しているように、正しく恐れること、そして自分たちができることをしっかりやることが重要だと思っています。

Let us stay united and resolute in this new coronavirus outbreak. Take sensible precautions, help one another, stay calm, and carry on with our lives.
新型コロナウイルスの流行に、団結して対峙していきましょう。 予防策を講じ、助け合い、落ち着いて、日常生活を続けていきましょう。
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2019年08月09日

Facebookバイアス

オリンピック観戦チケットの第一次抽選の結果が発表されたのは、6月20日のこと。私はラッキーにも当選(といっても10競技30枚申し込んで当選は1競技3枚)したのですが、家族でもう一人申し込んでいた分は見事にハズレ。この時点では、家族での当選確率から、全体でも当選確率は1/2ぐらいだったのかなと思っていました。その後Facebookなどでの悲喜こもごもの声を見ていると、どうも1/2(=50%)などではないことが見えてきました。それでも、まあ1/3(=33.3%)ぐらいかな、と。

昨日から急遽行われることになった追加抽選の受付が始まりましたが、これに合わせてようやく第一次抽選の時の数字が公開されました。それによると、512万人が申し込み、96万人が当選したとのこと。つまり当選確率は18.75%だったことになります。想像以上に厳しい戦いだったということがようやく数字面でも確認された訳です。

私がFacebookを見て推測した当選確率は、当選した人の方が「当選した!!」と発信する可能性が高いというバイアスを考慮できていなかったということかと思います。経営者の人の当選確率が高いな、やはり運の強い人が多いのか、なんてことも一瞬思ったのですが、もちろんそんなことはなく、私のFacebook友達の経営者割合が高い(なおかつ経営者は当選した、という自慢好きかも、笑)というバイアスによるものかと思います。

人間は自分の見たい現実を見る、と言われますが、FacebookなどのSNSを見て、それが現実と思ってしまうのは危うさをはらんでいるように感じます。前回のアメリカ大統領選挙でも大きな問題となりましたが、来年に予定される選挙でもさらに大きな問題になるのでしょう。

そういった中で大切なのは、客観的な情報、できれば定量的な情報をもとに判断すること。その意味では、今回の東京オリンピックのチケット販売は色々と問題があると感じます。何せ情報が開示されない。

そもそも今回の東京オリンピックのチケットで全部で何枚あるのでしょうか。公式な発表はされていないようですが、一部メディアでは「招致段階の計画で全体の販売枚数は約780万枚だとしているが、関係者によると、最終的な販売枚数は900万枚超になる見通し」と報道されています。仮に900万枚だとすると、今回追加販売される68万枚を含めても390万枚。まだ半分以上は残っていることになりますが、実際にはどうなのでしょう。

全体が何枚で、第一次抽選で何枚、第二次抽選で何枚の販売を見込んでいるのか、高額であることが話題になっているホスピタリティパッケージにどれぐらいまわされるのか。海外での販売にどれぐらい割り当てる予定なのか。数字が明らかになっていれば、当選の確率がどれぐらいになりうるのかある程度推測ができますし、それに基づいて申し込むかどうかの判断もできます。そういった情報がないまま、終わった後に初めて数字が公開されるのは、なんだか無用に煽られているような気がします。もろもろ調整の余地を残したいなど、数字を明かしたくない理由でもあるのでしょうか。万人から注目されるイベントだけに、できるだけオープンに進めるべきだと思うのですが。
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2019年07月24日

Brexit、またの名は

イギリス保守党の新党首としてBoris Johnson氏が選出され、今日にもイギリスの首相に就任するそうです。本来は3月末の予定だったイギリスのEU離脱は、方向性が定まらないままに一旦10月末までということで延期されていますが、これでいよいよ10月末での離脱に向かって動きそうです。しかもJohnson氏のこれまでの言動からすると、合意なしでの強硬離脱もありえそうです。

先日イギリスを訪問したことは本ブログでもお話ししましたが、その際に、気になっていたのはこのBrexit。Brexitで観光客が減ったり、あるいは経済に明らかな変調をきたしているのではないか、という懸念を抱いていたのですが、これは思いっきりはずれ。観光地は観光客であふれ、景気が悪いという印象は全くありませんでした。ある意味、何の変化も感じられない。いつも通り。

イギリスの同業者との会食の際に、あまりに平然と物事が動いているけど、どうなっているの、とかなり不躾な質問をしたのですが、曰く「もう我々は政治に呆れかえって何も感じなくなっているんだよ」とのこと。噛み合わない議論ばかりで一向に明確な方向性を出せない政治家に呆れており、もう何も期待していない。民間は民間でできることを粛々とやるしかない、ということのようでした。

一つ面白いなと思ったのは、イギリスの政府関係の方とお話しした時。その方は"Brexit"ではなく、"EU Exit"という表現をしていました。"Brexit"はイギリス(Britain)がEUを離脱するという事実を表す第三者的な表現なのですが、"EU Exit"はイギリスが自分の意志でEUを離脱するんだという主観を感じる表現です。この"EU Exit"という表現がどこまで一般的なのか(その方固有なのか、あるいは、イギリスの政府関係者はそういった表現をするのか)はわからなかったのですが、なるほど人によって見方は変わるものですね。

Brexit、またの名をEU Exitがどうなるのかは、わかりません(どうなるにせよ、さすがに合意なしは避けるべきだと思いますが)。ただ、それ以上に、ここまでの政治不信はイギリスの将来にとって非常に大きな課題を突き付けていると感じました。

翻って日本。先日の参議院議員選挙の結果について、人によってとらえ方は異なると思いますが、個人的には、ひとまずは与党に国の運営を任せつつも、将来については、党を越えてしっかりと議論してもらいたいという(私も含め)国民の政治への期待を感じるものでした。日本も課題は山積みですが、世界がこれだけ揺れている中で、政治が安定していることは大きなアドバンテージだと感じています。
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2019年07月19日

アンダードッグ vs. バンドワゴン

今週末は参議院議員通常選挙。各種報道によると、与党が比較的優位に立っているようです。ただ、ここで気になるのが、アンダードッグ効果。一方が勝ちそうだと、逆に負けそうな方に投票する人が増え、結果的に、思ったほどの勝ち負けの差がでないというもの。弱い立場に同情してしまう判官びいきという見方もできますが、実際には同情というよりも、極端な勝ちを避けようとする現実的なバランス感覚の表れではないかなと思います。

このアンダードッグ効果は昔から存在すると言われていましたが、むしろ最近では、勝ち馬に乗るというバンドワゴン効果が出ることもあるようです。日経のこの記事によると、「衆院は1996年に導入された小選挙区制では1人しか当選しないため、有権者は自分の投票が議席に反映されない『死に票』になるのを嫌がり、勝ちそうな政党に極端に振れやすい傾向があるとされる」とのこと。なるほど。

ちなみに、弥生が圧倒的No. 1である理由の一つはこのバンドワゴン効果です。業務ソフトは趣味のものではなく、業務のために(やや微妙な言い方ですが)やむを得ず使うもの。それだけに失敗したくないし、確実に使えるものを選ぶ傾向が強くでます。結果的に、周りでもみんなが使っている、そして会計事務所からも推奨されている弥生が選ばれるという訳です。あ、もちろん、もともといいものだと評価いただいているからこそ、みんなが使っているし、推奨もされる訳です。あくまでもいいものだからこそ、自己強化が効きやすいということですね。

閑話休題。今回の選挙は果たしてどのような力学が働き、どのような結果になるのか。いずれにせよ、国民として、子供を持つ親として、小さい力ながらも、選挙権をしっかりと行使したいと思います。

それにしても、秋葉原は選挙カーが多く、この期間中はかなりうるさいことには閉口します。本人が乗って、しっかりとした主張をしているのであれば尊重すべきだと思いますが、音楽を流して、名前を連呼するだけというのは勘弁してほしい。静かな週明けが待ち遠しいです。

PS. 今回初めて知りましたが、数年前に公職選挙法が改正され、投票所には子どもと行けるようになったのですね。以前は投票所に一緒に入ることは幼児などしか認められていなかったのですが、18歳未満はokになったようです。これはとてもいいことだと思います。今週末は娘と一緒に投票しに行きたいと思います。
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2019年03月26日

それでいいの?

今回の記事は書くべきか書くまいか結構悩んだのですが、確定申告期が終わり、営業妨害と言われることもないタイミングだと思いますので、少し躊躇いながらも書くことにしました。

今年の所得税確定申告の解説シリーズでは、たびたび、「やっかいな法令を理解する必要はなく、画面の誘導に従って情報を入力すれば、自然と正しい申告書が作成できるようになっています。これなら初めての青色申告でも安心ですよね」といった趣旨のことをお話ししています。これは弥生では当たり前の話。ただ、弥生で当たり前だから他社でも当たり前かというとそうではありません。むしろ他社ではそうではないケースがあるので、「弥生なら当たり前」と強調してきたわけです。

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例えば確定申告書を作成するためのこの画面。これは弥生の画面ではありません。あえて特定個所を切り抜いており、見難くて申し訳ありません(どのソフトか特定はしたくないので…)。具体的には配偶者(特別)控除を記入するための画面です。配偶者(特別)控除は今回の確定申告から複雑さが増したのですが、この画面では明らかに矛盾した入力がなされています。控除として「配偶者控除」(配偶者特別控除でなく)が選ばれつつ、配偶者の合計所得金額は100万円と入力され、また、配偶者控除もしくは配偶者特別控除の金額が38万円になっています。

配偶者の所得が100万円の場合には、配偶者控除は適用できません。一定の条件下では、配偶者特別控除には該当しますが、その場合の控除額は26万円になります。つまり、このソフトで申告書を作成すると、明らかに誤った申告をしかねないということです。ひょっとしたら、このソフトの言い分としては、「お客さまが入力した通りに出力しており、誤りがあってもそれはお客さまの責任」ということなのかもしれませんが。

参考までに弥生の場合には、(本人の所得と)配偶者の所得から、配偶者控除もしくは配偶者特別控除に該当するのかどうか、また該当する場合にはその金額まで自動計算します。法令に関する知識が十分ではないお客さまであっても、自然と正しい申告書にできるようにするのが、弥生基準。そうでなければ、業務ソフトとしての存在価値を問われると考えています。ですから、先ほどのソフトの仕様は、弥生の基準で言えば「不具合」です。

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さらに、こちらは扶養控除を記入するための画面です。本来は扶養控除の対象とならない16歳未満の家族をお客さまが入力してしまうと、そのまま扶養控除として計算されてしまいます。参考までに弥生の場合には、まずご家族の情報を入力いただき、年齢等を踏まえて扶養控除に該当するかどうかをソフトが自動で判断します(扶養控除には該当しない一方で、住民税に関する事項で記入が必要になるため、そちらには自動で出力します)。

余談ですが、この入力画面で、これも完全にありえない入力がされていることにお気付きでしょうか。そう、2月31日というあり得ない日付が入力されていますね(笑)。これももちろん、弥生であれば不具合です。

うーん、やはり書いていても気持ちのいいものではないですね。下手をすれば(しなくても?)悪口ですし。ただ、実はもう4年前に、なぜ弥生では当たり前なことが、他社で当たり前でないのか、ということを指摘しています(こちらとか、こちらとか)。「これだけ書けば、さすがに業界的に当たり前になることを期待し」ていたのですが、4年経っても残念ながら変わっていません(正確に言えば、一社はかなりの改善が見られたのですが、一社はほぼ改善が見られず)。今回、かなり具体的に書いてみましたので、さすがに来年の申告期までにはあるべき形になっていることを期待しています。
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2018年09月03日

英語のコツ

前回は、この夏に読んだ二冊の本をご紹介しました。池井戸潤氏の最新作「下町ロケット ゴースト」とDan Brown氏の最新作「Origin」。Originは大事にじっくり読み進めていましたが、残念ながら先週末についに読み終えてしまいました。私がひょっとしたらこういう真相なのではと想像していた方向をさらに上回る、うわー、そうきたか、というエンディング。Dan Brown氏の次回作が今から楽しみですが、おそらく数年後になるのでしょう。

Originは通勤の電車や出張時の飛行機など、すき間時間で読み進めていたのですが、飛行機でCAさんに、英語の本を読んでいるんですね、とお声掛け頂きました。同時に、英語の本を読んでみたいのだけれど、何がおすすめですか、と質問を頂きました。私の回答としては、好きな本であればなんでもいいですよ、というもの。初めて英語の本を読む際には、日本語で読んだことのある、好きな本を読むと、ストーリーもわかっている分、読みやすいのではないかと思います。

以前も書きましたが、英語の本を読む上での一つのコツは、わからない単語にあまり拘らないこと。わからない単語があるからといって、いちいちその意味を調べていると、本を読むペースが乱れてしまいますし、本のストーリーに没入することができません。多くの場合は、流れからだいたいこんな意味かなと推測できると思いますし、そもそも子どもの頃に本を読んでいた時も、わからない単語って普通にありましたよね。

もう一つのコツ、これは本を読む時以上に、会話をする時に有用なのですが、日本語として理解しようとしないこと。英語を頭の中で日本語に翻訳し、返事は日本語で考えてそれを頭の中で英語に翻訳するとなると、スムーズな会話にはなりません。英語は英語のまま理解できるようになると、本を読むにせよ、会話をするにせよ圧倒的にレベルが上がります。例えば、"Dog"とあれば、それを"犬"と日本語に置き換えるのではなく、頭の中で"Dog"をイメージする。

例えば、Originの最初のページで"When the train reached the mountaintop, Kirsch saw a solitary figure waiting for him on the platform."という一文があります。これを「列車が山頂に辿り着こうという時…」と翻訳してから理解するのではなく、Trainがmountaintopにある駅のplatformに辿り着く情景を頭の中に思い浮かべることができるようになると、読み進むペースは格段に上がるはずです。これは説明が難しいですし、聞いたからと言ってすぐにできるようになる訳ではありませんが、英語を英語のまま理解する、ということを意識してみるといいと思います。
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2017年08月15日

通勤ラッシュ

世の中はお盆休みの真っ只中。弥生もカスタマーセンターでは、昨日から明日まで夏季休業とさせて頂いています。東京本社については、任意の時期に夏季休暇をとるようになっていますが、7月に早めに休暇を取った人も多いようで、お盆の時期は通常通りの営業です。

ちなみにALTも任意の時期に夏季休暇をとるようになっています。設立以来初の夏を迎えており、サービス開始に向けてやるべきことが山積みではありますが、ONとOFFをキチンと両立させることをポリシーとしているため、全員キチンと夏季休暇を取得の予定です。

お盆の時期に働くメリットは、電車が空いていること。昨日今日はやや早めに出勤したこともあり、いつもは満員の電車も座れるほど。お盆の期間に限らず、いつもこんな混み具合(空き具合?)であれば、通勤も楽なのにな、と思います。毎日のことですから、通勤は生活の質に大きな影響がありますよね。

通勤ラッシュを避けるという意味では、東京都が音頭を取って、通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらす働き方改革のひとつとして「時差Biz」という取り組みが先月行われました。この取り組み自体の意義は認めつつも、通勤者が単純に多少前/後ろにずらすのではなかなか効果がないように思います。というのは、(路線によると思いますが)多少前/後ろにずらしても、その分列車の運行本数が減ってしまうので、結果的に車内密度があまり変わらないから。

私が通勤で主に乗っているのはJRの東海道線ですが、8時前後のピーク時は3分に1本の運行。一方で、7時台前半や9時台になると6分に一本程度に頻度が下がってしまいます。このため、時間当たりの利用者数が減っても、列車の頻度減少で相殺されてあまり密度は変わらないということになってしまいます。では、5時台とか6時台とか、もっと思いっ切り早くすれば、とも思いますが、この時間帯はさらに運行の頻度が下がってしまうので、私の経験上からはあまり空いているようには感じません。正確に言えば、押し合いへし合いにならない程度の密度低下はありますが、今回のお盆の通勤のように余裕はないので、わざわざ頑張って前倒しするだけのメリットが感じられません。

この問題を解決するためには、JRなり、私鉄にオフピーク時にもっと増発してほしいところです。もっとも、鉄道会社も民間企業で収益の最大化が命題ですから難しいところですね。鉄道会社の収益を維持しつつ、どう通勤ラッシュを緩和するか。リモートワークのようにそもそも需要を減らすアプローチもありですが、そうすると鉄道会社の収益は減ってしまいます(でも、一週間に一度のリモートワークで、通勤定期を買い続ける限りは減らない?)。折角座って通勤できるこの時期に、頭の体操としてちょっと考えてみたいところです。
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2016年08月21日

リオ・オリンピック

珍しく週末の更新です。いよいよフィナーレが近付いてきたリオ・オリンピック。実のところ、個人的には当初はあまり関心がなかったのですが、ちょこちょこと見ているうちに、結構盛り上がってきました。もちろん、メダルラッシュの後押しもあります(要は単にミーハーと言うことでしょうか)。

もう少しで終わってしまう思うと、寂しい気もしますが、4年後、いよいよ東京でのオリンピック開催に思いを馳せるのも一興かと思います。8年前の北京オリンピックは弥生の社長に就任したばかりで、正直オリンピックを観戦して楽しむというような余裕はありませんでした(ほとんど記憶に残っていません)。ロンドンの時は多少は余裕があったはずですが、やっぱりあまり記憶に残っていません(単純に記憶力が低いだけかも)。今から4年後、東京でオリンピックが開催される際に、自分や家族がどうしているのか想像するとワクワクしますね。

さて、今回は過去最高のメダルラッシュとなったわけですが、次回はどうか。いわゆる地元メリットがありますから、その点は確実に有利に働きそうです。

個人的に興味があるのが、何大会にも渡って活躍している選手のいる競技の次回。今回で言えば、女子レスリングの伊調選手や吉田選手が4大会連続の出場。それだけ圧倒的に強い選手がいることによって、その後輩たちは、代表選手が一人に限られるような国際大会で貴重な経験を積む経験が限られている可能性があります。何大会にも渡って圧倒的な結果を出してきたスーパースターが(仮に)引退をしたとして、後輩たちは同じように活躍できるのか。ある意味で、本ブログでも時たま取り上げている経営者の長期政権の弊害に近い問題が起こりうるのではないか。スーパー経営者が活躍すればするほど、会社はスーパー経営者依存になり、スーパー経営者の穴を埋めることが難しくなる。

もっとも、組織として人を育てることができていれば、これはあてはまりません。女子レスリングの場合、全部で5名がメダルを獲得している訳ですから、後者に該当している可能性も高いと思います。全員が至学館という大学在籍/出身ということ、川合選手が伊調選手と同一階級を避けるために階級を上げ、それでも優勝していることなどを踏まえると、個人の高い能力はもちろんなのですが、個々の能力を開花させる組織的な育成の仕組みがあるのではないでしょうか。だとすると、東京も相当期待できそうですね。
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2016年04月18日

自分にできること

この度の熊本県熊本地方を震源とする地震で被災されました皆さまに、心よりお見舞い申しあげます。

私は先週金曜日は資料作成で帰宅が遅くなってしまい、自宅に着いたのが夜中の0:30頃。その後遅い夕食をのんびり食べ終わったころに明確な揺れを感じました。こちらでも地震か、と思ったものの、それが再び熊本での大規模地震だとわかったのはTVを見てのこと、さらにそれが実は本震であったことは翌朝知りました。明確な終わりが見えないだけに、被災地の皆さまは、さぞ不安を感じられていらっしゃるのではないかと思います。

弥生では、福岡に営業所がありますが、大きな影響はなく、普段通りに活動を続けています。また、熊本県で家電量販店を回っているスタッフの安全も確認できていますが、熊本地方のパートナーの皆さんの安否を全て確認することができておらず、心配しております。

こういった時に何ができるのか、自問します。被災地で何かできることはないか。それは東日本大震災の時も何度となく自問したことです。これに唯一無二の正解はないと思いますが、やはり、一人ひとりが自分にできることを一生懸命やるということなのではないかと思います。弥生の社長として、日本全国の中小企業、個人事業主、起業家の皆さんの事業を支える続けることが、私が最もやるべきこと。また、日本の経済がキチンと回っていくためにも、自粛するのではなく、普段通りの生活を続けたいと思っています。

一方で、普段通りの生活を続けながらも、できることはあります。被災地/被災者の皆さんのことを想うことはもちろんですが、足元の救護活動のためはもちろん、この先に必要となってくる被災地での生活再建のために、義援金や寄附金は必要です。熊本県では、「被害を受けられた被災者を支援するための義援金」を募集しています。

ちなみに、義援金と寄附金では違いがあることをご存知でしょうか。以前もお話ししたことがありますが、一般に被災地の自治体向けの寄附には、「義援金」としての寄附と、「寄附金」としての寄附があります。義援金は、自治体に対する寄附の形をとりますが、その後、被災された方に配分されます。寄附金は、自治体が復興活動などを進める上で、自治体の判断で使えるお金となります。これらは明確に区別されており、必要となる手続きも異なります。つまり、寄附がどのように活用されるのかが異なるということです。

上でお話しした熊本県が募集しているのは、義援金。同様に日本赤十字社でも「平成28年熊本地震災害義援金」、熊本県共同募金会や中央共同募金会(いわゆる赤い羽根ですね)でも「平成28年熊本地震義援金」を募集しています。いずれも義援金で、なおかつ、東日本大震災の時と同様に、地方公共団体に対する寄附金に該当(すなわちふるさと納税と同様の扱い)になるようです(日本赤十字の方は確認できないのですが、共同募金会については、「税制上の優遇措置対象(地方公共団体に対する寄附金に該当)となります」と明記されています。逆に共同募金会がその扱いになるのであれば、日本赤十字の義援金も同様な扱いになるはずかと思います)。

一方で、これまでにも実施されていたふるさと納税(多くの場合で返礼品があるもの)については、義援金ではなく、寄附金の扱いになるかと思いますので、救護活動や復興活動に活用されることになるかと思います。また、現地で活動を行っているNPO団体(例えば、私が定期的に寄附を行っている中では、難民を助ける会)向けの寄附は被災者支援活動の活動資金となるケースが多いようです(この場合は、NPO団体向けの寄附金税制が適用されます)。

もちろんのことながら、義援金と寄附金のどちらがいいという話ではありません。ただ、せっかく寄附するのですから、どういった形で活用されるのかを理解した上で、それに合った寄附先を選ぶといいのではないかと思います。
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2015年09月16日

国勢調査とマイナンバー

我が家にも国勢調査票(正確に言えば、インターネット回答の利用案内)がやってきました。

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今年は国勢調査の年。国勢調査は、ほぼ一世紀前となる1920年が第一回目で、「国内の人口や世帯の実態を明らかにするため、統計法という法律に基づいて、5年に一度実施され」、今回が20回目になるそうです。今回の国勢調査では、インターネットでの回答を全面的に推進することが大きなトピック。9月10日から9月20日までがインターネット回答の期間とされ、その後、インターネット回答のなかった世帯向けのみに改めてこれまでと同様の紙の調査票を配布するのだそうです。

インターネット回答を推進するのは、効率性の観点から非常に良いことだと思うのですが、インターネット回答用のID/パスワードの配布方法にやや難があったようです。本来は、個別の住戸を訪問し、手渡しが基本なのですが、マンションなどで最初からポストに投函されている、さらには、ポストからはみ出ているので、盗まれかねないという指摘が相次ぎました

私の家も、ポストに投函されていました。もっとも、不在にしていたからという可能性もありますし、少なくとも私の場合は、ポストに全て入っていたので、盗られる心配はありませんでしたが。

インターネットでの回答自体は15分ほどで終了し、躓くこともありませんでした。入力も簡単ですし、何よりも回答の集計も格段にラクになります。これは国全体としての効率性向上としては素晴らしい取組みだと思います。

難を言えば、回答用のサイトのアドレス(http://www.e-kokusei.go.jp/)を手打ちにさせるのは「?」と思いました。これは、「検索サービスを悪用したフィッシング詐欺被害を防ぐため」だそうです。うーん、それであればSEOをキチンとやった方がいいような気もしますが。ただ、最大の課題は、やはりインターネット回答用のID/パスワードの配布方法でしょう。これまで国勢調査は調査票を一戸一戸配るという方法が続いてきましたので、その流れで今回の方法なのでしょうが、回答もインターネットになる時代、もう少し効率的にできないか、とは思います。

ふと思ったのですが、今回に関してはマイナンバーの通知と絡めるというやり方もあったように思います。ご承知のように、この10月からはマイナンバーの通知が始まります。この通知は、市区町村から、原則として住民票に登録されている住所あてにマイナンバーが記載された「通知カード」を送ることによって行われますが、この通知と一緒に国勢調査の資料を送ることもできたのではないでしょうか。通知カードは簡易書留で送られることになっていますから、個別に配布するよりも格段に安全なはずです。

もちろん現実的には、国勢調査は調査期日が10月1日午前零時現在、一方はマイナンバーは10月1日から通知開始という時間のずれの問題ですとか、国勢調査は世帯にしらみつぶしに配布するのに対し、マイナンバーは住民票の情報が基(つまり住民票を移していない場合や住民登録をしていない場合にずれる)ですとか、国勢調査は総務省だけどマイナンバーは内閣府という所管の差ですとか、やらない理由をあげるのは簡単です。

ただ一方で国勢調査もマイナンバーも膨大な労力(=税金)がかかることは事実。今回の国勢調査のインターネット回答は大きな一歩だと思いますが、将来的には、省庁を超えて様々な業務が統一的に行われ、より行政の効率化を図れればと思います(本来はそのためのマイナンバー、ですよね)。
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2015年09月02日

「学力」の経済学

先日友人に話したところ、結構喰い付きが良かったので、本ブログでもご紹介すると、最近読んでかなり面白いと感じたのが、『「学力」の経済学』という本です。著者は教育経済学者の中室先生。教育経済学というと耳慣れないですが、「教育経済学は、教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野」だそうです。

教育に関する定説として、例えば、ご褒美で釣っては「いけない」といったものがありますが、この本では、実験から得られた事実(エビデンス)を基に、定説が必ずしも正しいとは限らないことを証明します。例えば、ご褒美で釣っても「よい」。むろんどんなご褒美でもいいという訳ではありませんが、キチンと考えられたご褒美は勉強の楽しさを失わせることなく、学力を向上させうることがわかっています。

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この本を読んで思い出したのが、去年、BCG時代の同僚がこれはいいと推奨していたのをきっかけに読んだ「成功する子 失敗する子」という本(原題は"How Children Succeed")。この本も同じ教育経済学に基づいた本です。ただし、こちらの著者は経済学者ではなく、ポール・タフさんというジャーナリスト。格差社会と言われるアメリカで、何が子供の成功をもたらすのかを、父親になった著者が探求します。

興味深いのは、中室先生も、ポール・タフさんも、人生の成功で重要なのは実は認知能力(要はテストの成績)ではなく、非認知能力である、と明言していること。もちろん認知能力が高くて悪いということはありませんが、人生の成功により影響を持つのは「『忍耐力がある』とか、『社会性がある』とか、『意欲的である』といった、人間の気質や性格的な特徴のようなもの」である非認知能力。いわゆる「頭の良さ」よりも、「生きる力」。特に重要とされるのが、Grit、やりぬく力です。

両方とも極めて興味深いので、関心がある方には両方をお勧めしたいですが、親として何ができるかを考える上では、「成功する子 失敗する子」の方が得られるものが多いように感じます。一方で、制度としての教育について考える上では『「学力」の経済学』がお勧めです。「少人数学級」には効果はあるが、十分な費用対効果が得られない、から始まって、日本の教育の平等主義の弊害、さらには、教員免許の必要性はないのではないかという教育関係者から見ておそらくはタブーであろうトピックまでを明快に語る様は爽快ですらあります。それほど厚い本ではないので、表面的な説明に終わっているのがちょっと残念ですが(だからこそ気軽に読めるということにもなりますが)、根拠のない一般的常識や、経験則によるのではなく、エビデンス(科学的根拠)に基づいているだけに説得力があります。

ところで、二冊とも非認知能力の重要性を明言していると書きましたが、実はこれは当たり前で、両方ともシカゴ大学のヘックマン教授の研究を基にしているから。実は、この『「学力」の経済学』と前後して、当のヘックマン教授の著書「幼児教育の経済学」が翻訳・出版されたようです(原題は"Giving Kids a Fair Chance")。これはまだ未読なのですが、是非読んでみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:20 | TrackBack(0) | その他

2015年06月03日

スマートな分煙

秋葉原UDXに移るに際し、ヤヨイドオリも含め、様々な新しい取組みを行いました。総じて言えば、やってよかったと思いますし、大満足。今回ご紹介する設備も導入してよかったと思う一つです。

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これはクリーンエアという会社の分煙キャビン。これがヤヨイドオリの一画に設置されています。これは結構スゴい設備です。写真の通り、オープンなのですが、煙を全てキャビン内で吸引して処理する仕組みになっています。実際、全く臭いません。

私は正直に言って、煙草が苦手です。生まれてこの方、吸ったことがありません。嗜みとして葉巻を吸うことはありますが、結構むせてしまいます(笑)。もちろん、煙草が好きな人がいることもわかりますし、お酒の席では周りが煙草を吸っても気にしません。ただ、煙草を吸わないこともあって、煙草の臭いには敏感です。私の場合、半径20m内ぐらいの臭いを敏感に感じてしまいます。しかし、このクリーンエアがあれば、その私でも全く気になりません。

前の本社である神田では、5Fの一区画に喫煙室がありました。新本社である秋葉原UDXでも、実はビル全体の共用部である5Fに喫煙室があります。当初はそこを使ってもらえばいいと考えていましたが、色々と協議した結果、弥生のオフィスの中にも喫煙スペースを設けることとしました。理由は二つあって、一つは共用部の喫煙室に行って帰るだけで結構な時間のロスになること、またもう一つは、喫煙室の中が煙モクモクなために、煙草の臭いが、帰ってきた後も付きまとうこと。

ただ、単純に喫煙室を作るのは、結構場所も必要ですし、芸がない。ちょうど、どのオフィスにするか内覧をしている中で出会ったのが、このクリーンエアです。ある会社のオフィスに設置されており、実際にそこで煙草を吸われていたのですが、そばにいても全く臭わない。正直驚きました。

このクリーンエアは、もともとスウェーデンで煙草を吸わない人によって開発されたのだそうです。これはおススメです。気持ちよく分煙できるというのが最大のメリットですが、もう一つのメリットは、今誰が吸っているのかが可視化できること。閉じられた喫煙室だと、ブラックボックス化してしまい、今誰々さんがどこにいるのかわからなくなってしまいますが、このキャビンだと一目瞭然です。

あえて難点を言えば、月々のメンテナンス費用がそれなりにかかること。言い方を変えれば、ビジネスとしてもよく考えられています。ただ、メリットを考えると、導入の価値はあると感じています。
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2013年09月09日

東京オリンピック

2020年の東京でのオリンピック開催が決まりました。今の日本にとって、とても素晴らしいニュースだと思いますし、個人的にも早くもワクワクしています。

正直に言えば、前回(16年大会)の招致活動の際にはかなり醒めた目で見ていました。日本で開催するよりも、国の発展過程において大きなステップとしてオリンピックを活用できる国の方がいいのではないかと。前回の東京オリンピック(1964年)は、敗戦からの急速な復興を成し遂げた日本にとって、さらなる発展への大きなステップになりました。最近で言えば、2008年の北京(中国)がいい例ですし、前回決まったリオデジャネイロもブラジルにとって大きなステップとなるでしょう。その観点で言えば、今回はイスタンブールが妥当だったように思います。

ただ、前回とは違い、今回は、是非東京で開催したいと思うようになりました。何故か、と改めて考えてみると、2011年の東日本大震災が大きなきっかけになっているような気がします。東日本大震災は、甚大な被害をもたらしましたし、まだそこからの復興の途上にあります。ただ、同時に、東日本大震災は(誤解を恐れずに言えば)日本という国の素晴らしさを私たち自身はもちろん、国際的にも再認識するきっかけになりました。

あれだけの災害から、社会的な混乱を招くことなく、立ち直った日本(被災地の復興はまだまだこれからですし、原発の問題もありますが、日本全体として言えば)。それは私たちが想いを一つにしたからこそできたことです。そういった意味で、東日本大震災は、私たちにもまだまだできるんだ、ということを思い起こさせてくれたような気がします。

東京開催決定を受けて、安倍総理が、「15年間続いたデフレや縮み志向の経済を五輪開催を起爆剤に払拭していきたい」と仰られましたが、確かに私たちは「縮み志向」に囚われていたような気がします。所詮日本は峠を越えた国、これから発展する国に道を譲って…

東京オリンピックによって、日本が再び10%の高成長軌道に乗ることはないでしょう。ただ、成熟した国の一つのあり方を世界に示すことはできるのではないかと思います。経済一辺倒ではなく、国民の幸せ、国際社会への貢献、そして何よりも地球環境との融和をバランスさせた皆が住んでみたいと思う国(そういう意味では原発問題が明らかに最大の課題です)。2020年、日本がどのような国になっているかが本当に楽しみですし、それが少しでも良いものになっているように個人的にも努力したいと思います。2020年、東京でのオリンピックは本当に素晴らしかったと全世界の人に思ってもらえるように。

PS. 今回譲ってもらったというわけではないのですが、2024年は、やはりイスタンブールで初のイスラム圏での開催となるといいなと思っています。
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2013年07月23日

ネット選挙

日曜日の参議院議員通常選挙は概ね事前予想通りの結果となりました。今回はネット選挙運動が解禁されて初の国政選挙となりましたが、事前に言われていた程にはネットの存在感はなかったと言われています。複数の政党が主にネット上でのみ活動するネット候補を擁立しましたが、結果は期待外れ。また、産経新聞によると、ネット上での情報発信(選挙期間中のツイッター、フェイスブック、ブログの総件数)が多かった候補トップ10は全員落選だったそうです。

今回はネット選挙運動が解禁といっても、一般人の目からは「?」な制約も多く(SNSのメッセージはokだけど、電子メール送信はダメですとか)、ネットを充分に活用しきれなかったという面もあると思いますが、やはり現時点ではネットだけで投票につなげるのは難しいのでしょうね。これまで通りのリアルでの選挙運動があり、それをネットで補強するのはありでも、ネットだけでは投票にはなかなかつながらない。

一方で、今回はネット選挙運動の負の側面、すなわち、ネガティブキャンペーンも目立ったようです。もっともこれはアメリカではTV広告でバンバンやっていますし、ネットだからということでもないのでしょうが…

色々と課題も見えてきた選挙でのネット活用ですが、今後回数を重ねるにつれ、より活用され、当たり前のものになっていくのだと思います。一時的や、部分的には負の側面があっても、うまく使いこなすことによって正の側面をどこまで引き出すことができるか。

個人的には、いつかは、ネット選挙運動ではなく、ネット選挙、すなわち、ネットで投票できるようになって欲しいと思っています。もちろんこれも課題を挙げれば山ほどありますが、越えられないカベではないでしょう。低下傾向にある投票率を引き上げることができるでしょうし、もっと言えば、今とは異なる投票方式を可能にすると考えています。例えば、今のように政党や候補者に投票するだけではなく、日本にとって重要な選択肢についても投票を行い、国民の意志を示す(普通の選挙と国民投票をセットでやるようなイメージですね)。

ネット選挙の究極は毎回国民投票によって国としての意思決定を行う直接民主制でしょうね。ただ、国民の声はどうしてもその時の風潮に流されがちな部分もありますし、直接民主制になれば全ての問題が解決するとも思えません(下手をすれば衆愚政治になる可能性もあります)。やはり、私たちの代表者である国会議員が、大局観に基づいた意志決定を行うことによって、「この人たちに任せて良かった」と思えるような政治であって欲しいなと思います。宜しくお願い致します > 国会議員の皆さま。
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