2021年05月24日

2021年版中小企業白書

2021年版中小企業白書が4/23に公表されました。中小企業庁は毎年、中小企業基本法に基づき、中小企業白書を作成し、公表しています。2021年版の特色としては、「新型コロナウイルス感染症が中小企業・小規模事業者に与えた影響や、この危機を乗り越えるために重要な取組として、事業環境の変化を踏まえた事業の見直し、デジタル化、事業承継・M&Aに関する取組等について、豊富な事例を交えながら調査・分析を行いました」とのことです。

中小企業白書は、中小企業の動向を多岐に渡る観点から分析していますが、今回興味深いのは、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」(第2部)として、「事業継続力と競争力を高めるデジタル化」(第2章)に着目しているところです。

「新型コロナウイルス感染症の流行は、企業を事業継続の危機にさらすとともに、我が国においてデジタル化の重要性を再認識させた。第2-2-1 図は、感染症流行前後のデジタル化に対する意識の変化を示したものである。これを見ると、全産業では、感染症流行後において『事業方針上の優先順位は高い』若しくは『事業方針上の優先順位はやや高い』と回答する割合が6割を超えている。」(P. 320)

感染症流行前はデジタル化の優先順位が高い/やや高いの割合が46%だったものが、感染症流行後は62%にまで上昇しています。感染症が流行する中で、お客さまにリーチするためのデジタル、また同時に、感染リスクを低減するためのデジタルの必要性が改めて認識されたということかと思います。

ただ、デジタル化というのは、単純にIT化すればいいというものではありません。以前も本ブログでお話ししましたが、業務のあり方は変えずに、媒体だけを電子データにしたのが電子化、一方で、業務のあり方自体も見直すのがデジタル化だと考えています。ただ、昨今は、ITツールを使えばすぐデジタル化、あるいはDX(Digital Transformation)というITベンダーにとって都合のいい使われ方が多いようにも思います。もちろんITを活用すること自体は必要なことですが、事業や業務まで見直さなければ、本当のデジタルの力を引き出したことにはなりません。

もっともこれは中小企業白書もわかっていて、DXには(狭義の)DX・デジタル化(Digitalization)・電子化(Digitization)の三段階があるとしつつ、この白書ではあえてこの3つを全て含むとしています。確かに中小企業においては、まだまだITを活用するところから始めなければならない事業者も多く存在しますからね。ただ弥生としては、ITを使えばよし、ではなく、その先、デジタルを前提として事業や業務まで見直し、競争力を高め、事業継続力を高めるというところまでお手伝いをしていきたいと思っています。

弥生の考えるDXについては、弥生の公式noteでもお話ししていますので、是非この機会に弥生の公式noteもご覧ください(「スキ」をしていただくと担当者も喜びます)。

完全に蛇足ですが、中小企業白書の「本報告は、閣議決定を経て国会に提出する年次報告であり、表題は元号表記となっているが、本文中の『中小企業の動向』に関する分析に関しては、経済活動において西暦表記が用いられることが多いこと、海外データとの比較が必要となる部分もあること、グラフにおいては西暦表記の方がなじみやすいと考えられることから、原則として西暦表記を用いている」というのに手放しで大賛成です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:52 | TrackBack(0) | 業務

2021年05月18日

インボイスの便乗商法に注意

2023年10月開始のインボイス制度に向けて、昨年7月に電子インボイス推進協議会(EIPA)を立上げ、活動を進めています。弥生は言い出しっぺということもあり、代表幹事を務めており、私自身も自分の時間の25%ぐらいはEIPAの活動に費やしています。

昨年12月には平井卓也デジタル改革担当大臣を訪問し、Peppol(ペポル)と呼ばれる国際規格をベースとして、日本標準仕様を策定し、日本における電子インボイスの普及を図るべきと提言し、平井大臣からは全面的な賛同をいただけました。今年1月からは、業務ソフトウェアベンダー数社から精鋭が集まり、Peppolをベースとした日本標準仕様について日々議論を行っています(私もほとんどの打合せに参加していますが、本当にいいチームです)。日本標準仕様の完成までにはまだ時間もかかりますが、今年半ばにはもう少し具体的に成果をお示しできるかと思います。

そんな中で、とてもびっくりする、そしてとても悲しい気持ちになる出来事がありました。私はFacebookで様々な税理士の方とやり取りさせていただいているのですが、ある先生がこんな投稿をされていました。

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弊所クライアントに下記のようなメールが届きました。インボイス制度と電子化は関係のないお話しです。ある意味、詐欺メールですので気を付けてください。
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今回、〇〇〇株式会社様へ、新たな税額控除についてのご連絡になります。
2023年から電子での請求書に対して、税額控除されるのはご存知でしたでしょうか?
すでに対策済みの企業様もいらっしゃいますが、まだ対策がお済でない企業様が多かったので、勝手ながらご連絡させていただきました。
ご請求書の電子化がまだでしたら、このままだと適格請求書発行事業者【インボイス制度】に認定されなくなります。その結果、仕入れ税額控除が受けられなくなり、消費税の負担が増してしまいます。

これはこの先生が言われる通り、ある意味詐欺メールです。「2023年から電子での請求書に対して(のみ)、税額控除される」ということはありませんし、「ご請求書の電子化がまだでしたら、このままだと適格請求書発行事業者【インボイス制度】に認定されなくなります」というのも事実ではありません。

事実としては、2023年10月からは法的要件を満たしていれば、電子での請求書でも仕入税額控除は認められるようになりますが、これは紙の請求書に加えて、ということです。また、仕入税額控除ではなく、一定のIT投資に対して税額控除が認められる制度は従前からあります。しかし、それは汎用的な投資促進税制であり、電子での請求書に固有のものではありません。また、この10月から予定されている適格請求書発行事業者としての登録を行わなければ、2023年10月以降、請求書を受領した側が仕入税額控除を受けられなくなります(免税事業者からの仕入税額控除については、一定の経過措置あり)。しかし、請求書の電子化と適格請求書発行事業者として認められるかどうかには一切の関係性はありません。

つまり、部分だけ取れば嘘とは言い切れない部分もありますが、全体としては明らかに誤解を招き、自社のビジネスにつなげようという意思を持ったものです。詐欺的な便乗商法と言っていいかと思います。

EIPAは、日本の事業者が法令であるインボイス制度に確実に対応できるように、そしてそれ以上に、事業者の業務をデジタル化することによって、業務の圧倒的効率化を実現するために、多くの会員が全て手弁当で活動しています。結果的にそれは会員各社のビジネスにとってプラスになることは期待されますが、それはあくまでもお客さまである事業者の皆さまが法令対応ができ、そして業務効率化を実感できて初めて正当化されることだと考えています。

今回のメールの発信者はEIPAの会員企業ではないことは確認していますし、仮にEIPAの会員企業がこのような事実に基づかない便乗商法を行った場合は、会則で定められた除名基準に該当しうるものと考えています。

世の中には様々なビジネスがありますし、ビジネスには基本的には貴賤はないと考えています。しかし、世の中には、人を欺いてまで儲けようとする人たちがいるのはとても残念なことです。ある意味、インボイス制度はそれだけ注目されるものとも言えるのかもしれません。EIPAでは誰もが廉価に電子インボイスを活用し、業務効率化を実現できるように、まずは日本標準仕様の策定に注力しますが、こういった便乗商法を防ぐためにも、電子インボイスに関する正しい広報活動にも力を入れていきたいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:22 | TrackBack(0) | 業務

2020年03月13日

今週末のご予定は

例年であれば、確定申告期間の終了までわずか。今週末が最後の追い込みとなるはずです。ただ、既にお話しした通り、今年に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、確定申告期間が4月16日(木)まで一ヶ月間延長されています。本来は3月31日(火)までとなる消費税の確定申告期間も同じく4月16日(木)まで延長となっています。

また、例年、確定申告期間とあわせて期限が設定されている手続きについても、4月16日(木)まで延長されるようです。代表例は、毎年本ブログでもお話ししている所得税の青色申告承認申請ですね。今年は白色申告だけれど、来年の申告は青色申告にしてがっつり節税するぞ、という場合には、この承認申請を行っておく必要があります。

本来3月16日は、申告の期限であると同時に、所得税の納付の期限でもあるのですが、納付の期限についても、4月16日(木)まで延長になっています。納付を口座振替で行う(おススメです)場合には、元々4月21日(火)だった振替日が、5月15日(金)にに延長されます(消費税は4月23日(木)から5月19日(火)に延長)。

ということで、ざっくり言って全体に一か月間延びましたということになります。今週末は追い込みではなく、まだまだ余裕という感じでしょうか(笑)。

皆さんが、やった〜延長か、じゃあしばらく放置しようとなっているのは、データとしてはっきりと見えています(笑)。例年、やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン(弥生オンライン)は1月から新規ユーザーがグッと増え、それが3月の確定申告期限まで続きます。興味深いのが青色申告は3月10日ぐらいにピークを迎えるのですが、白色申告は本当に申告期限ギリギリまで新規ユーザーのサインアップが続くということ。やはり白色申告は、ギリギリになって着手する方も多いということでしょうか。

今期もお陰さまで弥生オンラインは多くの新規ユーザーにサインアップいただいています。以前、弥生オンラインの数字が読めるようになったと書いたことがありますが、見込み通りのペースで、新規ユーザーのサインアップが続いていました。そう、申告期限延長が発表になるまでは。

申告期限延長が発表された瞬間に新規ユーザーのサインアップのペースがガクンと下がりました(苦笑)。またまたわかりやすいのが、白色申告の方が落ち幅が大きいということです。もちろん、新たなる期限となる4月16日に向けては、トータルでの新規ユーザー数は見込みを達成できると思いますし、期間が延びた分、総数としても若干増えうるとは思っています。ということで、弥生として困ったということではないのですが、それにしても実にわかりやすい。

延長自体は必要なことですし(弥生としても延長の働きかけをしようとしていました)、延長されて良かったと思います。ただ、単純な問題の先送りになってしまうのはいかがなものかと。気が付いたら4月10日過ぎで、どうしよう、となるのが容易に想像できてしまいます。

ここはやはり、心に余裕を持ちつつも、少しずつでもしっかりと進めておきたいところです。今週末、少しでもいいので、進めませんか?
posted by 岡本浩一郎 at 19:42 | TrackBack(0) | 業務

2019年12月06日

年末調整って本当に必要?

12月は、弥生のカスタマーセンターへのお問合せが顕著に増加する月。そう、年末調整に関するお問合せが激増するためです。もう既にお問合せが増え始めていますが、来週には一段と増え、再来週からその翌週にかけてピークを迎えるのではないかと思います。ただでさえ忙しい年末に、一年に一回の業務が重なり、事業者の方にとっては実にしんどい時期となります。弥生は、お客さまがこの時期を乗り越えられるよう、お問合せにしっかりと対応していきます。

もっとも、最近私が考えているのが、そもそもこの年末調整という業務自体が要るのだろうか、ということ。給与所得は毎月の支払い時点で源泉徴収が行われるものの、これはあくまでも概算であるため、最終的にはどこかで調整が必要。最終的な調整が必要であり、それが年末調整ということはもちろん理解しているのですが、それが今の形の年末調整である必要があるのでしょうか。

年末調整の起源は昭和22年にまで遡ります。戦後、税制が大きく見直され、国が税金を計算し、課税する賦課課税という考え方から、国民が自ら税金を計算、申告し、納税する、申告納税という考え方に大きく舵が切られました。ただ、この申告納税がうまく機能するためには、国民が税金の仕組みをよく理解し、なおかつ、必要な計算をできることが必要です。しかし、これまで求められていなかったことをいきなりやれというのはなかなか難しい。そこで国が着目したのが、給与の支払い元である事業者です。事業者であれば、ある程度税金を理解し、必要な事務処理、計算もできるのではないか。

つまり、年末調整という業務は戦後、税金のあり方が大きく変わる中で、事業者に押し付けられた業務です。実際、これは非常にうまく機能しました。特に戦後、いわゆる会社勤めの人が激増する中で、給与所得から非常に効率的に徴税できる仕組みは欠かせないものでした。

ただ、税制が非常に複雑化する中で、年末調整の業務もまた、非常に複雑化してきています。それが特に顕著になったのが、昨年の配偶者(特別)控除の見直し。来年には基礎控除も見直しになりますし、細かいつじつまを合わせるための所得金額調整控除が新設されます。もはや普通の人が理解できる範疇を超えつつあると感じています。

もちろん、弥生給与のようなソフトウェアを利用することによって、一定程度は業務の効率化が図られています。言い方を変えれば、もはやソフトウェアを利用せずに年末調整を行うこと自体が困難になってきています。ただ、これは前回お話しした電子化に過ぎません。紙の業務の一部を電子化しているに過ぎない。

これからの時代においては、デジタルを前提として年末調整業務そのものを見直すべきなのではないでしょうか。事業者は引き続き、従業員から年末調整に必要な情報を収集する、ただしデジタルデータとして。そしてそのデジタルデータをもとに事業者ではなく、行政が一元的に計算をすることも、今の技術では十分に可能です。デジタルを前提として業務のあり方自体も見直す。それがデジタル化です。

上でお話ししたように、年末調整業務は紙を前提とした昭和の仕組みです。平成の時代においても、それを電子化して何とか処理してきた。ただ、令和という新しい時代においては、もはや昭和の仕組みを根本から見直すべきなのではないでしょうか。業務のあり方自体を見直し、本当の意味でのデジタル化を図るべきなのではないでしょうか。

残念ながら、これは現時点では夢物語に過ぎません。それでも、問題意識を持った人が声をあげ、行動を積み重ねれば、いつかは変えることができると信じています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:45 | TrackBack(0) | 業務

2019年09月17日

価格の見直し

いよいよ後2週間にせまった消費税率の10%への引上げと軽減税率の導入。弥生のカスタマーセンターでもお問合せ件数が顕著に増えてきています。

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10月1日を前に、改めてしっかりと考えておきたいのは、自社の商品やサービスの価格をどうするか、ということ。わかりやすいのは、消費税率の引上げ分をそのまま価格に転嫁するというもの。もともと税抜きでの価格表示をしている場合には単純明快で、本体価格が1,000円だとして、消費税率が8%の時は、本体価格1,000円+消費税80円、合計1,080円だったものを、消費税率が10%になるのにあわせ、本体価格1,000円+消費税100円、合計1,100円とするというパターンです。もともと、商品の値札を税抜き表示にしている場合は、値札の対応も不要ですし、合計金額に円単位の端数がでやすいという欠点こそありますが、一番一般的な対応方法かと思います。

これに対し、悩ましいのが税込みで価格表示をしている場合。例えば、税込価格で980円という商品があるとすると、これは消費税率8%時は本体価格908円+消費税72円という内訳になります。これを消費税率10%に単純にすると、本体価格はそのままで本体価格908円+消費税90円で998円という価格になります。おそらくもともとの980円という価格設定は、心理的障壁である1,000円を超えたくないということと、10円単位の価格設定にしたいという二つの狙いがあったのではないかと思いますが、前者の1,000円未満は維持できたものの、円単位の価格設定になってしまい、釣り銭が面倒になってしまいます。

逆に980円という税込価格を維持しようとすると、消費税率10%時には、本体価格が891円+消費税89円で合計980円ということになり、本体価格が908円から891円に、17円、率で言って約2%の値引きをしていることになります。たかが2%と言うなかれ。もともと利幅の大きい業種ではそれほど影響は感じないかもしれませんが、(少し古いデータですが)卸売業の平均売上高営業利益率は1.1%、小売業では2.1%ですから、これらの業種では何も考えずに税込価格を維持しようとすると、途端に収支トントンかあるいは赤字に転落しかねないということです。

もちろん色々と検討した結果、税込価格を据え置くということであれば、いいと思うのです。それも経営判断ですから。ただ、何も考えずに、まあどうにかなるだろうという安易な気持ちで税込価格を据え置くというのは避けるべきだと思います。

とはいえ、価格はキリよく10円単位にしたいし、(1,000円といった)大台も超えたくないなといった場合はどうすればいいのでしょうか。この場合は、メリハリをつけるというのも一つの手かと思います。スーパーマーケットでは冷凍食品、ドラッグストアーではトイレットペーパーのように、多少採算度外視でも客寄せのために戦略的な値付けをする商品がありますが、そういった商品は価格を据え置き、一方で、それ以外の商品はしっかりと消費税分を価格転嫁するという考え方です。

中には、うちは免税事業者だから関係ないよ、という方もいらっしゃるかもしれません。免税事業者だから、消費税は関係ないと。これは実は大いなる誤解。確かに、免税業者であれば売上から消費税を納付する必要はないのですが、とはいえ、仕入れ時に消費税を支払っていますよね。そしてその仕入れ時に支払っている消費税額は10月に入ると、基本的には増えるはずなのです。わかりやすいところでは、どんな事業者でも、何らかの水道光熱費がかかっているはずですが、その水道光熱費は消費税率10%がそのまま価格転嫁されるはずです。つまり、コストが増えるということですから、程度は別として、一定程度は売価を調整しないと、利益を圧迫することになります。

どんな事業においても、価格をどうするかは極めて重要。一方で、一度設定した価格をなかなか変えにくいのも事実。だからこそ、このタイミングで、改めて価格をどうするか、しっかりと考えたいところです。
posted by 岡本浩一郎 at 23:24 | TrackBack(0) | 業務

2019年08月29日

懸念点と疑問点(その2)

軽減税率対策補助金は、軽減税率に対応するためのレジや請求書管理システムなどで2019年9月30日(月)までに「導入または改修を終え支払いを完了したものが補助対象」であるとお話ししました。軽減税率に対応するためですから、軽減税率が始まる前、すなわち9月中に導入を済ませましょうというのは、もちろんそうあるべきではあるものの、実際にはかなり無理があると感じています。8月も終わりに近づき、今からレジの契約をしても、9月末までに導入が完了しないケースが考えられますし、ましてや支払いも10月に入る可能性もあります。

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と思っていたところ、上記の要件を緩和するという通達がなされました。「契約等の手続きが完了」していることを条件とする、逆に言えば、導入や支払いが10月以降になっても対象となりうるとのこと。来た、やはり手が打たれたかと思ったのですが、実は肩透かし。読めばわかりますが、この通達はあくまでも軽減税率対応レジのみを念頭に置いて記載されています。実際、弥生でこれまで確認している範囲では、お客さまが自ら購入し導入する請求書管理パッケージ(弥生製品では弥生販売、やよいの見積・納品・請求書が該当)については、本通達の対象外であるとのこと。なおかつなぜそういった差が設けられたのか、その理由も判然としません。

当たり前の話ですが、そもそも事業者間の取引は掛売になることが一般的です。つまり、契約・導入が9月末までであっても、支払いが10月以降となることは一般的に想定しえます。今回に限って9月末までに前倒しで払えばいいではないか、というのは事業者の実態を無視した暴論です。事業者にとって資金繰りは生命線であり、掛売によって支払いを可能な限り遅らせることは当然の常識。補助金のために、わざわざ支払いを前倒しすることは、結果的に中小事業者の資金繰りを悪化させることになります。そもそもこの補助金の目的自体が軽減税率制度の円滑な実施を図ることですから、事業者の資金繰りを悪化させることはまさに本末転倒になります。これは対象がレジであろうが、請求書管理システムであろうが変わりません。

これではあまりに不合理ということで、軽減税率対策補助金のすべての対象製品について、同じような要件緩和がされるよう働きかけをしようと思っています。どういった結論になるのかはわかりませんが、やれるだけのことはやってみようと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:58 | TrackBack(0) | 業務

2019年08月27日

懸念点と疑問点

消費税率の10%への引上げと軽減税率への準備を進めなければならないということで、前々回はキャッシュレス・消費者還元事業について、前回は軽減税率対策補助金についてお話をしました。いずれも10月を待つことなく早めの行動が必要です。これらについて、私なりに懸念点と疑問点があり、可能な範囲で確認してみました。

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まずキャッシュレス・消費者還元事業についてですが、懸念点としては、事業者の方が契約している決済事業者は必ずしも一つではないということ。問合せ窓口に確認したところ、ポイント還元の対象事業者としての登録は決済事業者ごとに必要ということです。つまり、例えばクレジットカードで2社と加盟店契約をしており、また電子マネーで1社、QRコード決済で2社と加盟店契約をしている場合、決済事業者それぞれに対し、合計5回の登録が必要になるということです。

正確に言えば、まずはどこか1社の決済事業者に連絡をして、加盟店IDを発行してもらうことになります。その後この加盟店IDを残りの4社の決済事業者に伝え、それぞれで対象事業者として登録をしてもらう必要があるそうです。仮にQRコード決済で1社の登録を漏らしてしまった場合は、クレジットカード決済はポイント還元の対象になる一方で、漏らしてしまったQRコード決済のみポイント還元の対象外になってしまいますので、注意が必要です。細かいことを言えば、決済事業者単位で登録がなされるので、クレジットカードは10月1日から還元対象だけれども、電子マネーは登録が遅れ、10月末からということも起こりうるのが何とも悩ましいところです。

次に軽減税率対策補助金についてですが、前回もお話ししたように、2019年9月30日までに導入した場合に対象となります。ただし、厳密には、「導入または改修を終え支払いを完了したものが補助対象となります」となっています。つまり、発注したというだけでは不十分で、導入が完了していること、なおかつ、支払いが完了していることとされています。

疑問点としては支払いに関する判断ですね。例えば9月頭に発注し、9月中に導入が完了、しかし支払期限が10月末となっている場合に対象となるのかどうか。あるいは家電量販店で9月に購入、月内にインストールはした場合はどうか。現金で払っていれば全く問題はありませんが、クレジットカードで支払い、その口座引落しが10月に入った場合はどうなるのか。

現時点では補助金として対象となるという情報と、対象とならないという情報が錯綜しており、まだ最終的な確認は取れていません。現実問題として領収証の日付はあくまでもクレジットカードで支払った日になるでしょうし、口座引落しのタイミングによって左右されるというのは少々信じがたいと思います。

この点については、軽減税率対策補助金事務局に問合せをしているのですが、折返し対応となり、現時点まで折返しの電話は来ていない状況です。

一方で、まさに今日の話ですが、一部報道によれば、契約さえ9月中に終えていれば、導入や支払が10月になっても対象となるとのこと。また事務局による確認が得られていないので、断言はできないのですが、追って本ブログで発信したいと思います。ただ、いずれにせよ、早めに動くことによるマイナスはないので、早めの行動に移したいところです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:20 | TrackBack(0) | 業務

2019年08月23日

軽減税率対策補助金

消費税率の10%への引上げと軽減税率への準備を進めなければならないということで、前回はキャッシュレス・消費者還元事業についてお話をしました。早いタイミングで対象事業者となるためにも、一日でも早く登録を済ませたいところです。

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同じく時間的制約があるということで、今日は軽減税率対策補助金についてお話ししたいと思います。軽減税率対策補助金とは、「消費税の軽減税率制度の実施に伴い対応が必要となる中小企業・小規模事業者等に対して、複数税率対応レジや券売機の導入や改修、受発注システム、請求書管理システムの改修等に要する経費の一部を補助することにより、導入等の準備が円滑に進むよう支援する制度」です。

前回のキャッシュレス・消費者還元事業については、ほぼ全ての中小・小規模事業者が対象となりますが、今回の軽減税率対策補助金は、日頃から軽減税率対象商品を販売・取引しており(また今後も継続する)事業者に限られることに注意が必要です。軽減税率の対象商品については、機会を改めてしっかりお話ししたいと思いますが、基本的に飲食料品になりますので、飲食料品を扱う小売事業者、卸事業者、また、テイクアウトのある飲食事業者と考えればよいかと思います。

補助金の対象となるのは、レジ(A型)や請求書管理システム(C型)など。弥生シリーズと連携するAirレジUレジスマレジなどはA型の代表例です。ただA型と言っても、A-1型からA-6型まであり、補助率なども細かい決まりがありますので、軽減税率対策補助金のサイトをご確認ください。とはいえ、手っ取り早いのはレジベンダーに問い合わせることですかね。

この間お話ししたお店では、たまたま(ちょうどよく?)レジが壊れて、レジを入れ替えたばかりでした。その際に軽減税率対策補助金の対象になるという説明はあったそうですが、その後の補助金申請をしていないとのこと。申請は、事業者自身が行うケースと、ベンダーが代理申請を行うケースがあるようなので、これもまずベンダーに聞いた方がいいですね。

少し前に弥生販売やよいの見積・納品・請求書が軽減税率対策補助金の対象となるとお話ししましたが、弥生製品はC型(基本的には自分でインストールするC-2型)となります。C-2型の場合、事業者自身で補助金申請をしていただく必要があります。

いずれの場合も、補助金の対象となるのは、9月30日(月)までに購入した場合。10月から軽減税率が始まりますから、もちろん9月中に準備しなければならないのですが、とはいえ、需要が集中して納期が遅くなっているケースもあるようです。そうなると最悪の場合、10月に間に合わず、同時に補助金の対象ともならない、という踏んだり蹴ったりになりますので、こちらもやはり早めに動くことをお勧めします。なお、申請については、12月16日(月)までとなっています。ただ、気が付いたらこの締切りを過ぎていて、あてにしていた補助金を受けられないとなる可能性も否定できませんので、やはり早めに済ませておきたいところです。
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2018年12月10日

見積額と実績額で異なった場合

今年の年末調整は申告書が大きく変わったということで、先月末から解説を続けてきました。さすがに、そろそろ一区切りとしたいところです。

前回は、所得の見積額を記載しなければいけない、一方で、あくまでも見積りである以上、実際の額とは差が出る可能性があるとお話ししました。ただ、差が出たとしても、税金の額(正確に言えば、年末調整の結果、還付/追徴になる金額)に差が出なければ何ら問題ありません。前回お話ししたように、配偶者控除や配偶者特別控除に影響があるのは、本人の所得が900万円〜1,000万円にかかる場合。ですから、例えば、本人の所得の見積額が500万円だったのに対し、実際には賞与や12月支給の残業代が上振れた結果525万円だったとしても、特段何もする必要はありません。

もちろん、影響が出るケースもあります。例えば見積額が900万円ちょうどだったのが、実際には901万円だったというケース。この場合にはマル配でお話しした区分Iの判定結果が(A)から(B)に変わってしまいますので、(配偶者の所得が38万円以下だと仮定して)配偶者控除の額が38万円から26万円に減額となります。この際の所得税実効税率が23%だとすると、所得はわずか1万円の差ですが、税額は2.8万円ほど増えることになります。

では、実際に見積と実際に差が出てしまい、なおかつ、税額にも影響が出てしまうケースは、その差額をどのように処理すればいいのでしょうか。リカバリー方法は三段階あります。

1) 年末調整業務の中でチェックされ、修正されるケース
例えば、上記の例のように、本人の所得の見積額が900万円だったものの、12月給与を計算したところ実際は901万円になり、結果的に税額に差が出ているケース。この場合は、事業者(会社)が12月給与を計算し、その上で年末調整業務を行った際に、矛盾として検知されます。弥生給与(やよいの給与計算)の場合、この矛盾が発生している従業員の記録に「本人の給与所得の見積額と実績額の乖離により控除額が異なります」という赤いふせんがシステム的に付与されます。弥生給与では、通年の給与/賞与の実額を管理していますから、見積りとの矛盾を検知できるということです。仮に赤いふせんが貼られた場合は、実際の額(実績額)を確認し、必要に応じ、見積額を実績額に置き換えます。

2) 再年調を行うケース
本人の所得の場合は、上記のように弥生給与で実績額を把握できますので、年末調整業務の中でチェックすることが可能です。一方で、配偶者の所得に関しては、完全に自己申告ですので、チェックすることはできません。しかし例えば、配偶者の所得が85万円以下と申告したものの、実際には12月の勤務が予想より多く、85万円を超えた場合には、配偶者特別控除が減額となりますので、税額に影響が出ます。この場合には、配偶者の源泉徴収票を確認した上で、従業員から事業者(会社)に配偶者の所得の見積額に差が発生した旨を報告する必要があります。事業者はこの報告があった場合、1月末までであれば、当該従業員について、再度年末調整(再年調と言います)を行うことができます。この中で、見積額ではなく、実績額を用いることによって、正しい金額に修正されることになります。

3) 確定申告を行うケース
最後の手段として、従業員本人が確定申告を行うという方法があります。再年調が間に合わなかった、あるいはそもそも行わなかったという場合でも、実績額で確定申告すれば、正しい税額が算出され、必要に応じ追加で納税をする、もしくは、還付を受けることになります。確定申告というと面倒臭い、と思われるかもしれませんが、そもそも年末調整で完結しうる方の場合は、確定申告の内容も単純なので、申告がそこまで負担になることはないはずです(逆に言えば、確定申告が複雑になる方は、そもそも年末調整で完結せず、いずれにせよ確定申告をしなければいけない方ということです)。

ということで、仮に見積額と実績額に差が出て、結果として税額に影響がある場合でも、三重のリカバリー方法が存在しますので、見積額の算出にそこまで神経質になる必要はありません。一方で、どのリカバリー方法にせよ、一定の手間にはなりますから、税額に影響が出うる、具体的に言えば、本人の所得が900万円〜1,000万円の近辺のゾーンの方(給与収入で言えば、1,120万円から1,220万円近辺の方)、かつ、配偶者の所得が38万円〜123万円の方(給与収入で言えば103万円〜201.6万円)については、やはり可能な範囲で正確な見積りが望ましいかと思います。
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2018年12月06日

マル配

昨日は年末調整で必要となる3つの申告書のうち、マル扶とマル保についてお話ししました。今日は、残るマル配について。正式名称は「給与所得者の配偶者控除等申告書」。これまでお話しした通り、昨年までの「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」の一部(後者)が独立したものです。

一部が独立したと書きましたが、これまでは、配偶者「特別」控除を計算するためのものであったのに対し、新たに配偶者控除(特別ではなく)を計算するという役割が加わっています。このため、従来は、配偶者特別控除を計算するための「配偶者特別控除申告書」だったものが、配偶者控除と配偶者特別控除の両方を計算するための「配偶者控除等申告書」(「特別」がなくなって「等」が付いたことに注目)となっています。

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この申告書では、給与所得者本人の所得と配偶者の所得を記入し、そこから配偶者控除と配偶者特別控除を算出します。実際の用紙を見ていただくと、氏名等の欄の下に4つの枠があります。一般的に言えば、上から埋めていくところですが、この申告書の場合、三つ目(合計所得金額の見積額の計算表)の枠からスタートすることをおススメします。この枠で、本人と配偶者の所得を計算し、それを一つ目の枠(本人の所得)および二つ目の枠(配偶者の所得)に転記することになります。なお、三つ目の枠では収入から所得を計算しますが、収入と所得の違いは前回お話しした通りです(簡単にいえば、「収入」は額面であり、そこから控除を差し引いて税金計算の対象となる額が「所得」となります)。

三つ目の枠で本人と配偶者の所得を計算し、それを一つ目の枠(本人の所得)および二つ目の枠(配偶者の所得)に転記したら、その結果をもとに、本人と配偶者それぞれで区分の判定を行います。本人(区分I)については、所得の額によってA〜Cの3つのいずれかに該当するかを判定します。また、配偶者(区分II)については、やはり所得の額によって@〜C(環境によっては文字化けすると思いますが、まる1からまる4)のいずれかに該当するかを判定します。

区分Iと区分IIが判明したら、四つ目の枠内の表に当てはめて、配偶者控除/配偶者特別控除の額を計算します。配偶者控除を受けられる人は配偶者特別控除は受けられませんし、その逆もまた真なので、配偶者控除もしくは配偶者特別控除のいずれかに値が埋まることになります。なお、区分IがA〜Cに該当しない(=本人の所得が1,000万円を超える(=給与の場合には収入が1,220万円超))場合、もしくは、区分IIが@〜Cに該当しない(=配偶者の所得が123万円を超える(=給与の場合には、収入が2,015,999円超))場合は、配偶者控除/配偶者特別控除ともに対象外となるため、そもそもマル配を記入する必要がありません。

なお、ここではざっとした流れをお話ししましたが、こちらの記事ではより詳細にマル配の記入方法を解説していますので、是非ご参照ください。

ここまで年末調整で必要となる3つの申告書についてざっと解説してきました。ただ、実は、申告書を記入する上で躓きがちなポイントについて触れずにお話ししてしまいました。それは、これまでの解説では、「本人の所得が900万円を超え1,000万円以下の場合」といったように書きましたが、実際の申告書上には、「所得」ではなく、「所得の見積額」と記載されていること。見積額って何? どう見積ればいいのでしょうか。

次回は所得の見積額についてお話しします。
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2018年12月05日

マル扶とマル保

前回は、今年(平成30年分)の年末調整から、必要書類(申告書)が3種類に増えたこととその理由についてお話をしました。今まさに申告書を記入している方も多いと思いますが、実際に記入する上で特に頭を悩ませるのは、新設された給与所得者の配偶者控除等申告書ではないでしょうか。

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その前に、まずは残りの二つを簡単におさらいしてみたいと思います。まず一つ目は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」。用紙の右上に〇で囲って「扶」と書かれていることから、業界(?)では、「マル扶(マルフ)」と呼ばれます。これは従来から存在した申告書で、今年もフォーマットとしては大きくは変わっていません。ただし、実は配偶者の記載方法について大きく変わっています。

まずは、前回お話ししたように、今年から配偶者控除についても本人の所得が影響するようになった関係で、結果的に配偶者控除の対象とならない可能性のある配偶者については、マル扶上に記載しないことになりました。例えば、配偶者が専業主婦(夫)で昨年までは記載していたとしても、今年は、本人の所得次第で、記載しないケースも出てくるということです。本人の所得次第と書きましたが、具体的には所得が 900 万円を超えた場合。900万円を超えると配偶者控除が減額され、1,000万円を超えると配偶者控除がなくなるため、ここでは、下限の900万円が基準になっています。

なお、所得と収入という似たような用語が両方出てくるため混乱しがちですが、税金を計算するときに使用される「所得」という表現は、基礎控除や給与所得控除などの控除を差し引いた後の金額を意味します。稼ぎという意味で一般的に使われる所得という用語は、ここでは「収入」という表現になります。収入が給与だけの場合には、給与の収入金額が 1,120 万円の場合、控除後の所得が900万円となります。つまり、本人の給与収入が1,120万円を超える場合に配偶者控除が減額される、もしくは対象とならなくなるため、マル扶上で記載しなくなります。

逆に、これまでは記載しなかったけれども、今年から記載するようになるケースも存在します。それは、本人の所得が900万円以下、かつ、配偶者の所得が一定の枠内に収まる場合です。具体的には、配偶者の所得が38万円を超え、85万円以下の場合。配偶者控除は、配偶者の所得が38万円(給与収入103万円)以下でないと受けられないのですが、今年から、この枠が「実質上」85万円(給与収入150万円)以下に拡大されました。これは配偶者控除を受けられる枠内でパートやアルバイトで働くという方が、年末が近付くと、枠を超えてしまうため、あえて働かない、結果としてただでさえ人手不足の中、年末に近付くと働き手の確保に困る事業者が増えたこと等をふまえ、実質上配偶者控除を受けられる枠を給与収入150万円まで拡大したという経緯があります。

細かくなりますが、この枠の拡大については、配偶者控除を受けられる配偶者の所得のレンジを拡大したのではなく、配偶者「特別」控除を配偶者控除と同額受けられる所得のレンジを拡大して実現しています。このため、従来はマル扶において、配偶者の記載は、配偶者控除を受けられる場合に記載する、という単純なロジックだったのですが、今年から、配偶者控除を(減額して)受けられるが記載しないケース(本人の所得が900万円を超え1,000万円以下の場合)もあれば、逆に配偶者控除は受けられないが、配偶者特別控除を同額受けられるため記載するケース(配偶者の所得が38万円を超え85万以下の場合)が出てしまい一気に複雑になりました。

もう苦笑せざるを得ない複雑さですね…(苦笑)。なお、ここでは割愛しますが、配偶者が障害者に該当する場合にはさらに複雑になりますので、注意が必要です。

もっとも、残りの二つの申告書と異なり、マル扶は実は昨年末もしくは今年頭に既に記載しているはずです。これは給与の支払いを受ける際に適切に源泉徴収を受けるために、事前に(厳密には「その年の最初に給与の支払を受ける日の前日」までに)提出することとなっているから。ただし、実務では事前に記入していないケースもままあるようです。いずれにせよ、配偶者がいらっしゃる方については、記載内容が変わる可能性があるため、しっかりと理解して記入する(本来は記入してあったものを確認する)ようにしましょう。

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ここまで書くだけで疲れました…。ただ、今日お話しするもう一つの書類、「給与所得者の保険料控除申告書」についてはすぐ終わります。これは、昨年までの、給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書のうち、保険料控除申告書に該当する部分だけを独立させたものだからです。これも記入が容易とは言いませんが、少なくとも記入の要領は昨年までと同様です。

明日は残る一つ、今年から新設された配偶者控除等申告書についてお話ししたいと思います。
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2018年12月03日

年末調整向けの申告書が変わったワケ

今年の年末調整は、必要とされる申告書が大きく変わったとお話ししました。これまで2種類だった申告書が3種類に。

配偶者に関わる控除は、配偶者の所得が一定金額(基本的には基礎控除におさまる38万円)までの場合に適用される配偶者控除と、その一定金額を超えた場合に逓減しながら適用される配偶者特別控除が存在します。

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昨年までは、配偶者控除に影響するのは、配偶者の所得のみであり、本人の所得は関係ありませんでした。一方で、配偶者特別控除については、配偶者の所得が一定の枠に収まる必要があるのと同時に、本人の所得も関係していました。

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これに対して、今年からは、配偶者特別控除に加え、配偶者控除についても、本人の所得が影響するようになりました。

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今回の申告書の見直しは上記の変更を反映しています。昨年までは、給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書の一部に、このような「給与所得者の配偶者特別控除申告書」という欄がありました。昨年までは、配偶者控除については、本人の所得に左右されませんでしたから、扶養控除等(異動)申告書で扶養対象配偶者として記載するだけでした。一方で、配偶者特別控除は、本人の所得と配偶者の所得によって変動するため、計算するための欄が存在していたわけです。

これに対して、今年は配偶者控除も、配偶者特別控除も本人の所得と配偶者の所得の両方に影響を受けるようになりました。そのため、配偶者控除と配偶者特別控除の両方を計算するための書類として、給与所得者の配偶者控除等申告書が新設された訳です。

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配偶者控除等申告書では、本人(申告書上は「あなた」)と配偶者それぞれの合計所得の見積額を記載して、本人の所得をA〜Cの3つの区分(区分I)、配偶者の所得を@〜Cの4つの区分(区分II)のいずれかに当てはまるかを判定します。

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さらに区分I×区分IIのマトリックスに当てはめることによって、配偶者控除の額と配偶者特別控除の額を算出することになります(逆に言えば、区分IがA〜C//区分IIが@〜Cに当てはまらない場合には、控除はありません)。

率直に言って、かなり複雑になりました。配偶者特別控除の対象となりうる配偶者の所得額上限が引き上げられるなど、必ずしも増税ではありませんし、この改正が一概に悪いという気はありません。それでも、制度が複雑化しすぎていることは事実かと思います。業務ソフトを開発している弥生の社内ですら、今年の申告書を記入するのは大変という声が上がっている中で、一般の事業者において全社員が正しく理解し、正しく運用するのはなかなか難しいのではないかと危惧しています。

それでもやらなければならないのが年末調整。弥生では、ソフトを提供するだけではなく、how toの情報発信にも力を入れています。まず第一関門は、従業員に正しく申告書を記載してもらうことですが、こちら(弥生マルシェ)で従業員向けの案内として利用して頂ける記事を公開していますので、是非ご活用ください。
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2018年11月30日

大きく変わった年末調整

今日で11月も終わり、明日からは12月ということで、いよいよあの業務が待ったなしに迫ってきました。年賀状の準備? いやいや、それもありますが、従業員を雇用している事業者の皆さんに共通する年末の頭痛の種、そう、年末調整です。

準備を始めている事業者では、既に従業員に年末調整に必要な申告書を配布し、記入を進めてもらっているところかもしれません(全体的には12月に入ってから重い腰を上げてという方が多いとは思いますが)。これは例年行っていること…、ではあるのですが、今年は申告書が大きく変わりました。これまでの申告書は2種類。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書と給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書。これに対して、今年は3種類に増えました。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の保険料控除申告書、そして、給与所得者の配偶者控除等申告書です。つまり、従来は一つの帳票だった給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書が、保険料控除に関する申告書と、配偶者控除に関する申告書に分離されたのです。

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これは、今年から、配偶者控除の仕組みが大きく変わったから。これまでは、配偶者の所得が一定範囲に収まっていれば、本人の所得によらず配偶者控除が認められてきましたが、今年から、本人の所得によって配偶者控除の金額が変動するように(さらには、本人の所得が1,000万円を超えれば配偶者控除がゼロに)なりました。この計算を行うために、書式として独立したという訳です。細かく見れば、昨年までは、配偶者「特別」控除申告書、つまり配偶者の所得によって変動する配偶者特別控除を計算するためのものだったのが、今年は、配偶者控除(特別でなく)も変動するために、配偶者控除も計算するための配偶者控除「等」申告書になっています。

配偶者控除の仕組みが変わるなんて、聞いていないよ、という方も多いと思いますが、実はこれは一年以上前に決まっていたことです(平成29年度税制改正で決まったので、昨年の春に決まっています)。実は、意識はされていないかもしれませんが、今年に入ってから、毎月のお給料での源泉徴収額はこの変更を既に反映しています。給料はあまり変わっていないのに、源泉徴収の額が増えた、という方は、実は配偶者控除が適用されなくなっていた、ということかもしれません。

次回は、いよいよ12月ということで、従業員側と事業者側それぞれでの年末調整の手続きの注意点についてお話ししてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:06 | TrackBack(0) | 業務

2017年07月26日

電子申告が簡単に

先日の日経新聞で、「電子納税しやすく 国税庁、証明書や専用機器不要に」という記事が掲載されました。「今の電子申告では本人確認のための読み取り機器やマイナンバーカードなどの電子証明書が必要だが、税務署でいちど本人確認すればIDとパスワードで認証できるようにする」とのこと。狙いとしては「海外に比べ普及が遅れる電子申告・納税を広げるため」とのこと。

普及が遅れていると言いつつも、電子申告(e-Tax)は着実に利用が進んでいます。2015年度の個人の所得税申告では利用率が52%。二人に一人は利用していることになります(実際には、申告会場で専用機器を使って申告書を作る人もカウントされるから、という事情もあるようですが)。

しかし一方で、記事にもあるように、専用機器(ICカードリーダー)を用意し、電子証明書も用意して、さらに何重ものパスワードを正確に覚えることがネックになっているのも事実。というよりも、代替手段である、紙で申告することが簡単すぎるといった方が正確かもしれません。電子申告は、その後の国税庁での処理が効率化されるというメリットがあることはもちろんなのですが、そのメリットはあくまでも国税庁側のもの。申告をする側からすると、わざわざ手間をかけて電子申告しなくても、やり方のわかっている紙で、となっても不思議ではありません。

電子申告であれば、還付が早くなるとも言われていますが、紙での申告でもさほど遅くはないので、これもなかなかインセンティブにはなりません。以前は、電子申告をすると若干の税額控除が得られるということもありましたが、ICカードリーダー代で終わってしまう額であり、なおかつ適用は1回だけということで、これも決め手になりませんでした(既にこの控除はなくなっています)。

今回の新方式は、ICカードリーダーや電子証明書が不要になるという意味で、大きな進歩だと思いますが、その代わりに、税務署で本人確認を受けてIDとパスワードの発行を受ける必要があり、手間なしとは言えません。もちろん、やらないよりはやった方がいいとは思いますが、これで一気に電子申告が進むかというとやや疑問です。本当は電子申告によって国税庁での業務効率が上がるわけですから、その分を継続的な減税(税控除)として還元すれば、もう少しは普及が進むのではないかと思いますが、なかなか難しいんでしょうね。

結局、申告をする人からすれば、それだけ紙で不便はないということ。新しい商品やサービスが受け入れられるためには、従来のものよりも9倍のメリットを提示しなければならない、なぜならば、人は往々にして、既存のやり方を3倍高く評価し、新しいやり方を1/3に低く評価するから、という「9X Problem」という概念があります。会計業務 3.0を推進する弥生にとっても、この9X Problemは着実に越えていかなければならないハードルです。
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2017年03月15日

最終日 2017

さて、いよいよ本日3/15(水)が平成28年分所得税の確定申告の申告期限日です。毎年定番の内容になってしますが、申告期限日に頑張っている方向けへのポイントを二つほど(昨年と同じ内容を再掲)。必要に応じ以前の記事も参考にして下さい。

1) 提出方法ごとのデッドライン
郵便での場合、当日消印が必要です。最寄りの大規模郵便局(夜間窓口のある局)で何時まで当日消印が得られるか確認してみましょう。e-Taxは真夜中の24:00で一律に締切です。e-Taxは、証明書の期限切れなど、思わぬ障壁にぶつかる可能性があるので、事前に送信の一歩手前まで辿り着けるか確認しておきましょう(そこで問題を確認したら、すぐに諦めましょう)。大穴は、税務署への持参です。翌朝職員の方が確認する前に、時間外収受箱に投かんすれば大丈夫(のはず)。ただし、これはあくまで抜け道であって保証はないので、自己責任で。

2) 間に合わない、書類が揃わない時
とりあえず出しましょう。もちろん確信犯的に、ほぼ白紙の申告書を出すのは絶対にダメですが、例えば、あの領収書が見つからないけど、という時は、その分は省いて一旦提出しましょう。必要に応じて再度申告することも可能です(修正申告、更生の請求については、木村先生のこちらの記事が参考になるかと思います)。

なお、本日3/15(水)は、確定申告書を提出する期限であると同時に、同時に(税金の還付ではなく)納付となった場合の納付期限でもあります。納付に際しては、今年からインターネット上の手続きでクレジットカードで納付することが可能になりました。手続きはこちらの「国税クレジットカードお支払いサイト」ですることができます。納税者の情報を利用者情報として入力しますが、申告書とのマッチングは氏名/住所/納付先税務署の情報で行っているようなので、くれぐれもお間違えないように。本当はマイナンバーを入力してマッチングさせる方が確実なのでしょうが、本サイトは国税庁長官が指定した民間業者(トヨタファイナンス株式会社)が受託し、運営しているため、マイナンバーの入力を求めることができないのかと思います。

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ちなみに、利用者情報とクレジットカードの名義は一致している必要はありません(そもそもクレジットカードの情報としてはカード番号の入力が必要になりますが、カード所有者の名前を入力する必要がありません)。このため、FAQにもあるように、家族分の税金を自分のクレジットカードで払うことも可能になっています。また、クレジットカードの利用でクレジットカードのポイントは(今のところ)つくようですが、同時に、納税額1万円あたり82円の決済手数料が必要となるので、ポイントが本当にお得になるのか、慎重に考える必要があります。単純に言えば、1万円当たり82円相当のポイントが付く場合にはお得ということになるかと思います。ただ、今はお得であっても、お得ということは逆にクレジットカード会社の持ち出しになるということなので、将来的にはポイント付与の対象外になる可能性はあるのかと思います(電子マネーへのチャージなども昔はポイント付与対象だったものが、今はほとんどのケースでポイント付与対象外になっていますが、同様なことになりうるかと)。

ただ、一般的に納税のタイミングを可能な限り後ろにするという意味では、やはり納付の定番は振替納税かと思います。振替納税を選択する場合には、預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を確定申告書と同封して提出することになります。

また、前回もお話しした通り、本日は、今年は白色申告で、来年から青色申告にしようという方が青色申告承認申請書を出すための期限でもあります。こちらもお忘れなく。

さあ、泣いても笑っても今日限り。最後の最後まで諦めずに頑張ってください!
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2017年02月23日

8人に一人

2/16(木)に確定申告が始まって一週間。まだ全く着手していないという方から、もう終わったという方まで、進み方には差がありますが、全体的には着手は進んできているようです。デスクトップアプリケーション(やよいの青色申告 17)の家電量販店等での実売は、1月から大きく増加し、2月に入ってからも高いレベルが続いています。2月末から3月上旬にピークを記録し、申告時期が終わると一気に通常レベルに戻るのが例年の傾向です。

クラウドアプリケーション(やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン)についても新規ユーザーが1月から明確に増加し、2月に入ってからは、加速度的に増えています。

前にも少し書いたことがありますが、クラウドアプリケーションの場合、弥生側でお客さまの申告に向けた進捗状況を統計情報として把握することができます。先週末が終了した時点では、完了率は12.6%。8人に一人が申告書の作成を完了したということになります。より正確に言えば、青色申告のお客さまは完了率がやや高め(14%)に対して、白色申告のお客さまは相対的に低め(10%)という明確な差があります。

例年白色申告は最後の駆け込みが明確に現れますが、青色申告については、比較的コツコツと準備を進める方が多いようです。

8人に一人に入った方は、お疲れ様でした & おめでとうございます。残りの7人の方は、まだまだ仲間がいますので、ご安心下さい。ただ、残りは約3週間、是非着実に進めて下さいね。
posted by 岡本浩一郎 at 12:47 | TrackBack(0) | 業務

2017年02月16日

フェンス際の魔術師?

いよいよ本日、2/16(木)から今年の確定申告が始まりました。今年の確定申告期間は3月15日(水)まで。約一ヶ月間の短期勝負です。従前から本ブログでお伝えしているように、個人事業主に認められた特権である青色申告には、大きなメリットがありますが、一方で、このメリットは申告期間を過ぎてしまうと認められなくなってしまいます。まだ始まったばかりですから、無闇に焦る必要はないのですが、申告期間終了までに確実に申告を済ませることができるように、着実に進めましょう。

確定申告は、端的に言えば、青色申告決算書(青色申告の場合、白色申告では収支内訳書)と確定申告書を作成し、提出することですが、決算書や申告書を作成するためには、まずは一年分の取引の帳簿付けを済ませる必要があります。

つまり流れとしては、大きく、
  1. 書類の収集、整理
  2. 帳簿付け
  3. 申告の準備
  4. 決算書/申告書の作成
  5. 申告
というステップに分解されます。このうち、後工程となる3.〜5.は弥生の場合、ソフトの誘導に従って頂ければ、ある程度慣れた方であれば1〜2時間で、全く初めてという方でも半日もあれば完了できると思います(もちろん個人差はありますので、ざっくりの目安ということで)。逆に言えば、申告完了にどれだけの時間がかかるかは前工程である1.〜2.、特に2.の帳簿付けに左右されます。

ただ、前工程も、本当は昨年のうちに毎月コツコツ進めておけば全く問題はないはずです。特に銀行明細などを自動で取り込んで自動で仕訳する「スマート取引取込」を利用頂ければ、毎月の作業も最小限で済みます。

もっとも、世の中、そんなに計画的に進められる人ばかりではありません。この時期になって慌てている方も多いのが現実(むしろ多数派?)。今からであれば、例えば一日に一ヶ月分ずつ進める、一週間に3ヶ月分ずつ進める(これはちょっとギリギリですが)、といったペースを決めてその通りに準備すれば、確実に間に合います。

偉そうなことを書いているような気もしますが、実は私自身も余裕を持って前倒しで準備するという事は決して得意ではありません。むしろ正確に言えば、私はかなり先延ばし傾向があります。何せ、「フェンス際の魔術師」を自称しているぐらいですから(苦笑)。この傾向は子ども時代からあり、夏休みの最終日に泣きながら宿題をこなすタイプでした。

さすがに私も40歳代後半になって、それなりに先延ばしを避ける術は身に着けてきました。まず大事なことは、自分に先延ばし傾向があることを自覚すること。自覚なしには対応しようがありません。

私自身の先延ばしを避けるコツとしては、タスクをスケジュールに組み込んでしまう(例えば、一日に一ヶ月分ずつ進めるとしたら、毎朝の朝一番30分のスケジュールとして登録)、先延ばししがちなタスクには、先延ばししがちなタスクをぶつける(あの気の乗らないタスクよりはこちらの方がまだいいか、という毒をもって毒を制するアプローチ)、あるいは、正攻法として、今日この仕事をさっさと終えて、早く帰ろうというニンジンアプローチを適宜組み合わせています。

もちろん、やり方は人それぞれ。自分なりの方法で着実に進めて頂ければと思います。
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2016年11月30日

フルモデルチェンジ

明日から12月。給与計算業務を担当されている方は、12月分の処理までにはまだまだ余裕があると思われているかもしれませんが、ご承知の通り、12月と言えば年末調整。ゆっくりしている余裕はありません。ましてや今年に関しては、例年以上に早め早めに準備を進める必要があります。

何せ今年の年末調整では、始めて本格的にマイナンバーを取り扱う必要があります。さらに、源泉徴収票にもマイナンバーを記載するようになった関係で、今回から源泉徴収票が全く新しくなりました。これまでも源泉徴収票のフォーマットが若干変わることはありましたが、それらはいわばマイナーチェンジ。今回は全く新しくなったいわばフルモデルチェンジです。

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その違いは見て頂ければ一目瞭然です。左が昨年(平成27年分)の源泉徴収票。それに対して右が今年(平成28年分)の源泉徴収票。サイズがこれまでのA6サイズからA5サイズ(要は2倍)になりました。今年分から控除対象配偶者や扶養親族の名前が記載されるようになり、また、マイナンバーについては、本人だけでなく、控除対象配偶者や扶養親族の分も記載する必要があります。

ただし、マイナンバーを記載するのは、税務署に提出する分(+市区町村に提出する給与支払報告書)のみで、本人に交付する分には記載しないことになりましたので注意が必要です(参考pdf)。もちろん、弥生給与/やよいの給与計算では、本人交付分については印字しないという制御を行っていますし、弥生から販売している源泉徴収票のサプライでは、本人交付分のマイナンバー欄は印字対象外という事で模様が予め印字されています。

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用紙サイズが変わったことで業務も変わります。これまでは、A4 1枚に、源泉徴収票(税務署提出用)、源泉徴収票(本人交付用)、給与支払報告書(個人別明細書、市区町村提出用)×2の4帳票を一気に印刷することが可能でした。写真のA4 1枚を一人ずつ分印刷するということです。

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しかし、今回からは、まずA4 1枚で、源泉徴収票(税務署提出用)、源泉徴収票(本人交付用)を印刷し、次に別のA4 1枚で給与支払報告書(個人別明細書、市区町村提出用)×2を印刷するという二度手間になります。写真ではA4用紙が二種類ありますが、まず上の用紙(源泉徴収票)を1人ずつ分印刷し、次に下の用紙(給与支払報告書)に入れ替えて再度1人ずつ分印刷する必要があるということです。(なお、連続用紙+ドットインパクトプリンターでの印刷の場合は4枚つづりとなっていますから、用紙の入れ替えは必要ありません、また、もちろんのことですが、専用帳票ではなく、白紙への印刷も可能です)。

つまり、昨年までとは大きく変わるのが今年の年末調整処理です。少しでも早めの着手をお勧め致します。従業員の方も早めにマル扶を提出する等、協力してあげて下さいね。
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2016年11月11日

マル扶でのマイナンバー記載の省略

前々回に、年末調整には欠かせない書類である「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、通称、マル扶でマイナンバーの記載を省略できる方法が二つあるとご紹介しました。二つのうち、一つ目の方法、すなわち、予め別の方法で従業員等のマイナンバーを収集しておいた上で、従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨記載する方法を推奨するとも。

この方法について、若干の補足です。この方法の詳細については、国税庁が提供しているこちらのFAQが詳しいのですが、大きく以下の4つの要件があります。

1) 事業者(給与支払者)と従業員との間での合意があること
2) 事業者(給与支払者)が、従業員から既にマイナンバーの提供を受けていること
3) 従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載すること
4) 事業者(給与支払者)は、既に提供を受けている従業員等のマイナンバーを確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示すること

この要件について、実務レベルでどのような対応が可能か、税務署や内閣官房に確認しました。まず、1)の合意ですが、事業者から従業員への一方向の通知で合意とすることができるとのこと。つまりマル扶の記入を従業員に周知する際に、マイナンバーの記載を不要とすることを通知すればokということになります。

次に2)ですが、これは、いわゆるマイナンバーの収集方法になります。既に済ませている事業者の方も多いと思いますが、これからという場合には、色々と注意事項がありますので、弥生が提供している「よくわかる事業者のためのマイナンバーガイド」(pdf)のP25以降をご参照下さい。

実際にマル扶の記入の際に必要になるのは3)になりますが、これは必ずしも従業員の直筆である必要はないということです。従業員が多い場合には、この文言の判子を作って、会社で押してからマル扶を配布することも可能ということになります。あるいは、マル扶にこの文言をプレ印字して配布することも可能です。まもなく提供する弥生給与/やよいの給与計算の平成28年分年末調整機能では、開発期間の関係からこのプレ印字の機能は提供していませんが、今後という意味では、ソフトでプレ印字したものを配ることが中心になるかもしれません。

なお、「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」という文言ですが、マイナンバーの欄ではなく、余白に記載するということに注意が必要です。これはマイナンバーの記載が省略されたマル扶について、税務署長から提出を求められた場合には、事業者がマル扶に従業員等のマイナンバーを付記して提出する必要があるためです。つまり、後で記入ができるよう、マイナンバーの欄は空けておかなければならないということですね。

最後に4)で、確認した旨を扶養控除等申告書に表示することとありますが、「マイナンバーを確認しました」と書かなければならない訳ではなく、何かしらのチェックの印があれば十分ということなので、「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」という文言の横に、チェックマークを記入するだけでも大丈夫のようです。

マイナンバーの実務での運用はほぼ初めてということで、試行錯誤というのが正直なところ。正直ベースで言えば、対応するソフトを作る上でも、弥生も同様な試行錯誤状態です(苦笑)。いずれは運用も定着し、ソフトがカバーできる部分も増えてくるものと思いますが、まずは、上記の情報も参考にして頂き、できるだけ簡易な方法で対応を進めて頂ければ幸いです。
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2016年11月07日

マル扶再び

今年もあっという間に11月。年末調整の準備に取り掛かった事業者の方も多いのではないかと思います。年末調整といえば、「マル扶」。正式名称は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」。給与を支払う際に、配偶者控除や扶養控除を反映させた金額で源泉徴収を行うために必要な書類で、実務上は、その前年末の年末調整の準備の際に翌年分のマル扶を収集することが一般的です。

昨年(2015年)10月のマイナンバー制度の開始に伴い、昨年暮れに収集された平成28年分のマル扶から、マイナンバーの記入欄が設けられました。しかし、実際には、昨年末(2015年12月)までに提出を受けるものについては、記載の必要がなく、2016年(平成28年)以降、従業員に従業員等の個人番号を補完記入してもらう必要もないとされたため、マル扶においてのマイナンバー記入は実際にはスタートしていないケースが多いのではないかと思います。

それでは、マイナンバー制度発足から一年経った現在ではどうなのでしょうか。今回の年末調整の際には平成29年分のマル扶を収集することになりますが、平成29年分のマル扶にももちろん、本人、配偶者、扶養親族のマイナンバーを記載する欄が設けられています。いよいよこれらに記載が必要になるのでしょうか。

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実は、今回も(そしてこれ以降も)マル扶にマイナンバーを記載する必要がない運用が認められています。この一年間の中で、マイナンバーの記載を一定のルールの下で極力減らす方向に制度が変わってきており、平成29年分(およびそれ以降)のマル扶については、二通りのマイナンバーの記載を省略する方法が認められています。

まず一つ目は、予め別の方法で従業員等のマイナンバーを収集しておいた上で、従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨記載する方法。そして二つ目は、事業者が扶養控除等申告書などの一定の税務関係書類の提出を受けて作成した従業員等のマイナンバー(個人番号)等が記載された帳簿を備えておく方法。

方法が二つあると、どちらがいいのか迷うところですが、弥生としては、一つ目の方法を推奨しています。なぜならば、二つ目の場合、最初の一回はマル扶にマイナンバーを記載して提出することが前提となっており、結果的にマイナンバー記載のマル扶のやり取りが発生してしまう、また、帳簿に関する要件もやや厳しい(例えば、帳簿を電子保存するためには、そのために承認申請が必要)ためです。

現行の制度の下では、マイナンバーはやり取りすること自体がリスクです。そのため、いかにマイナンバーを紙で扱わないか、という工夫が必要になります。制度としても、マイナンバーの記載をできるだけ減らす方向には向かいつつありますが、マイナンバー制度自体がなくなったわけではありませんので、記載を省略する場合には、一定のルールに従って行う必要があります。上記でお話しした二つの方法にもより具体的な要件が定められており、それらを正確に理解し、実行する必要があります。詳細については、弥生の業務情報ページでも情報発信しておりますので、是非ご確認下さい。
posted by 岡本浩一郎 at 20:59 | TrackBack(0) | 業務