2013年01月31日

復興特別所得税(まとめ)

この1月から課税が始まった復興特別所得税について、これまで何回かに分けてお話してきましたので、ここで一旦まとめておきたいと思います。

復興特別所得税の概要
復興特別所得税の注意点

また、弥生のウェブサイトで、法令改正情報として復興特別所得税の特集ページもご用意していますので、一度目を通して頂ければ。報酬などの金額がわかっていて、そこから源泉徴収する金額を計算するのは比較的容易ですが、源泉徴収後の金額から源泉徴収前の金額を割り出すのは少々面倒です。報酬などは、受け取る側が予め請求書を発行し、そこで自ら源泉徴収額を計算しておくことも多いので、源泉徴収前の金額が比較的わかりやすいですが、意外に面倒なのが利子。預金の利子は源泉徴収後の金額だけが通帳に記載されていることが多いので、そこから、所得税および復興特別所得税の金額、住民税の金額を割り出し、それらを合算してようやく源泉徴収前の金額を算出することができます。この方法についても、例を挙げてご説明しています

今日は1月の月末ということで、初めて復興特別所得税を考慮しての請求書を作成された方も多かったようです。Twitterでも税理士の方が面倒…と。税理士の方は(税理士法人を除き)個人事業なので、報酬・料金での源泉徴収が該当しますからね。これから25年間(!!)お付き合いしなければいけない税金なので、早くマスターしておきたいところです。
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2013年01月23日

復興特別所得税の注意点(その3)

早ければ今月にも復興特別所得税を納付するケースがいくつかあるということで、前々回は給与所得について、前回は個人事業主の報酬・料金についてお話ししました。今回は三つ目のケースとなる預金などの利子についてお話ししたいと思います。

個人事業主や専業主婦のように給与所得が存在しないケースは珍しくありませんが、預金口座を持っていない人はかなり珍しいと思いますので、今回お話しする預金などの利子への復興特別所得税は影響範囲としては最も広いのかもしれません。

さて、預金などの利子も立派な所得ですので、所得税(と住民税)の対象となります。ただし、一般的には一定額が源泉徴収されるようになっており、確定申告は必要ありません。これまでは、所得税が15%、住民税が5%の合計20%が源泉徴収されていたのですが、この1月からは、所得税が15.315%(15%*1.021、しかし細かいですね…)と住民税は変わらず5%で、合計20.315%が源泉徴収されることになります。例えば、利子が1,000円だったとして、所得税(復興特別所得税込み)が15.315%で153円(円未満は切り捨て)、住民税は5%で50円、合計203円源泉徴収され、手取りは797円となります。この例だと復興特別所得税で3円だけ多く源泉徴収されることになりますね。

ただ、昨今の超低金利によって預金の利子は微々たるものになっていますから、実際には影響がでないケースも存在します。例えば利子が300円だとすると、所得税(復興特別所得税込み)が15.315%で45.945円になりますが、円未満は切り捨てになりますので、45円。これはこれまでの15%と結果的に同じ金額になります。
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2013年01月17日

復興特別所得税の注意点(その2)

今年1月1日からスタートした復興特別所得税ですが、前回も書いたように今年(平成25年)からの所得税に所得税額の2.1%分の復興特別所得税が上乗せされます。上乗せのベースとなるのが平成25年の所得税ですから、金額として確定するのはあくまでも平成25年が終わってから、そして、確定した金額を納付するのは、平成25年分確定申告ということになります。つまり今から一年以上はあるということです。

ただし実際には、早ければ今月にも復興特別所得税を納付するケースがいくつかあります。一つは、前回も書いた給与所得です。給与所得として、年間の所得が確定し、所得税+復興特別所得税の金額が確定するのは、年末調整もしくは来年の確定申告になります。しかしその前にも、毎月の給与の支払時に、源泉徴収という形で所得税と復興特別所得税を納める必要があります。

二つ目のケースは、個人事業主が報酬・料金を受け取る際です。ご承知の方が多いと思いますが、個人事業主に特定の報酬・料金等の支払いを行う場合には、支払う側が一定額を源泉徴収し、納付する必要があります。個人事業主側からすると、源泉徴収後の金額で受け取ることになるわけですが、この源泉徴収にも復興特別所得税が反映されますので、これまでよりも多く源泉徴収されることになります。

ただ、これも前回ちょっと書きましたが、復興特別所得税が上乗せされるのは、あくまでも今年の所得からですから、個人事業主が昨年12月に行った業務(=所得としてはあくまで昨年の分)については、例えその請求書の発行や売掛金の回収が今年になったとしても、復興特別所得税は課せられません。逆に言えば、この1月に行った業務から、復興特別所得税が課されることになりますので、タイミングとしては、今月末の請求書作成時に考慮が必要になるケースが多いのではないかと思います。

源泉徴収額は、これまで支払金額が100万円以下であれば、10%、100万円超であれば、100万円を超える部分の20%+10万円と決まっていました。これが復興特別所得税込みとなることによって、100万円以下であれば、10.21%、100万円超であれば、100万円を超える部分の20.42%+102,100円となります。要はこれまでの額+2.1%ということですね。報酬・料金での源泉徴収額は、支払を受ける側が請求書上で予め明記しておくのが一般的です。このため、請求書などを作成・印刷するソフトであるやよいの見積・納品・請求書 13では、源泉徴収の自動計算に対応しており、復興特別所得税込みでの金額で計算できるようになっています。

ただし、実は司法書士への報酬など上記の源泉徴収額算出式が当てはまらないケースがあります(厳密には司法書士、土地家屋調査士及び海事代理士)。この場合には、やよいの見積・納品・請求書では、源泉徴収税額をご自身で計算して頂き、金額を直接入力する必要があります。

さて、三つ目のケースは預金などの利子ですが、ちょっと長くなってしまったので、これは「その3」で。
posted by 岡本浩一郎 at 19:27 | TrackBack(0) | 業務

2013年01月11日

復興特別所得税の注意点(その1)

今年最初のブログ記事でも書いたように、今年1月1日から、復興特別所得税がスタートしています。復興特別所得税については、昨年11月にも解説していますが、いざスタートしたということで、改めて整理してみたいと思います。

この復興特別所得税は、いわゆる復興増税のうちの一つです。復興増税は、所得税だけでなく、法人税、住民税で実施されますが、復興特別所得税はこの1月からスタートし、今年から実に25年間に渡って課税されることになっています。

復興特別所得税は単純に言えば、通常の所得税への2.1%の上乗せということになります。間違えられやすいのですが、税率が2.1%増える(例えば所得税率10%が10%+2.1%=12.1%になる)ということではありません。所得税額が2.1%増えるということです。例えば、所得税が20万円であれば、その2.1%、すなわち4,200円が復興特別所得税として課税されます。税率として表現すると、所得税率が10%の場合には、10%×102.1%=10.21%となるということですね。

復興特別所得税は、今年以降(平成25年から平成49年!!)の所得に対して課税されます。このため、例えば、個人事業主が昨年12月に行った業務については、例えその請求書の発行や売掛金の回収が今年になったとしても、所得としてはあくまで昨年(平成24年)の分ですから、復興特別所得税は課せられません。個人事業主の昨年(平成24年)の所得については、今年の3月15日までに所得税の確定申告をする必要がありますが、今回の確定申告に関しては、復興特別所得税は全く関係がないことになります。

一方で、少々注意が必要なのは、給与所得です。ご承知のように給与を支給する場合には、源泉徴収が必要となりますが、いつ支払いの給与から復興特別所得税込みでの源泉徴収が必要になるのか。これは基本的に今年1月1日以降に支払われた給与は、復興特別所得税の対象となります。

ん、でも、1月に支払われる給与は12月の労働に対してなのでは?、と思われるかもしれませんが、所得税上は、支給日が定められている給与については、その支給日がその給与の収入とすべき時期とされているのです。ですから、1月に払われるのは今年分の収入ということになります(実際、年末に配布される給与所得の源泉徴収票に記載されている「支払金額」は、その年の1月から12月末までに支給された金額の合計です)。

ということで、給与所得のある方は、今月の給与明細書は要チェックです。今月から所得税の源泉徴収額に復興特別所得税が含まれています。ここでの復興特別所得税はもともとの源泉徴収額の2.1%ということになりますが、機械的に2.1%加算されるのではなく、復興特別所得税が反映された新しい「平成25年分 源泉徴収税額表」に基づいて源泉徴収されます(最終的には年末調整で正確に2.1%上乗せに調整されます)。

上記は給与所得を受け取る側の話になりますが、支給する側は、この1月の支給分から、平成25年分 源泉徴収税額表に基づいて源泉徴収額を計算する必要があります。これまでの源泉徴収税額表(平成24年分)を使ってしまうと、本来源泉徴収すべき額より少ない額になってしまいますので、注意が必要です。弥生給与 13やよいの給与計算 13では、新しい平成25年分 源泉徴収税額表での源泉徴収額計算に対応しています(逆に言えば、12製品をそのまま使ってしまうと、計算を誤ってしまうので注意が必要です)。
posted by 岡本浩一郎 at 19:14 | TrackBack(0) | 業務

2013年01月09日

源泉所得税の納付の2つの特例

約2年前にも書いたことがありますが、法人や個人事業主が、従業員に給与を支払ったり、税理士などに報酬を支払ったりする場合には、支払いの際に所得税を源泉徴収する必要があります。これはあくまでも国に代わって徴収しているわけですから、徴収した金額を期限までに国に納付する必要があります。納付期限は原則的に支払いの翌月10日です。参考URLはこちら

ただし、小規模事業所(給与を支払う対象が常時10人未満)の場合には、事前の申請により、納付期限を半年に一度(1月と7月)とする特例(納期の特例)が認められています。この特例では、通常は翌月10日までに納付しなければならないものを7月10日(1月から6月に源泉徴収した分)および翌年1月10日(7月から12月に源泉徴収した分)までにまとめて納付することができるようになります。ただ、この特例(納期の特例)にはさらに特例(納期限の特例、違いはわかりますか?)があり、納期の特例に加え、納期限の特例についても届け出をすれば、1月10日の納期が1月20日になります。

今回、後者の特例(納期限の特例)が廃止されました。といっても実は、納期の特例による納期限が1月については1月10日ではなく、1月20日に変更されたため、納期限の特例が必要なくなったということです(書いていて改めて思いますが、極めてわかりにくいですね)。

要は、これからは、納期の特例の承認を受けていれば、7月10日(1月から6月に源泉徴収した分)および翌年1月20日(7月から12月に源泉徴収した分)までに納付すれば良いということになります。納期の特例を受けている方で、「やばい、明日(1/10)が納期限だ」と焦っている方は、今回から1/20が期限(実際には今年は1/20が日曜日なので1/21)になっていますので、ご安心ください。とはいえ、所詮6営業日伸びただけなので、抜本的な解決とはなりませんが… ちなみに、納期の特例の参考URLはこちら

以前にも書いた通り、この特例は納付の手間を1/6に減らすことができますし、「支払いは遅く」という商売の鉄則からしても積極的に活用すべきものです。ただ、6ヶ月分の金額が嵩むことで、いざ納付となって資金が足りないと慌てる方もいらっしゃるようです。我田引水にはなってしまいますが、ここは会計ソフト(もちろん会計ソフトと言えば、弥生会計ですね)を利用して、使って良いお金なのか、あくまでも預っている資金(預り金)なのかをキチンと管理しておくべきかと思います。
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2012年03月21日

協会けんぽ、ついに10%の大台に

時節柄、2月中旬からずっと確定申告/青色申告に関連する話題を続けてきましたが、先週木曜日で確定申告が終了。確定申告時期は弥生のお客さま(個人事業主)にとって、非常に重要な時期だけに、無事に終わってホッと一息です。

さて、確定申告で盛り上がっている間にも、社会保険の料率改定がありました。既に弥生のウェブサイトではお知らせをしていますが、一つは健康保険料/介護保険料の料率改定。もう一つは雇用保険料の料率改定

健康保険料/介護保険料については、主に中小の法人が加入している協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の健康保険料率と介護保険料率が改定(引き上げ)になります。改定のタイミングは平成24年3月。実際には、翌月の給与から徴収する会社が多いと思いますので、手取りに影響が出るのは4月という方が多いと思いますが、早ければ(当月徴収の場合)この3月の給与から保険料が引き上げとなります。

医療費の増加により、もともと財政が厳しいところに、高齢者医療への拠出金が増えていることから、協会けんぽはここ数年、毎年料率を引き上げています。本ブログで最初に取り上げたのは約2年前の2010年2月ですが、この時は全国平均で8.20%から9.34%へと、大幅な引き上げでした(協会けんぽの実際の保険料率は各県によって異なります)。そして2011年には9.34%から9.50%への小幅引き上げ。そして今回2012年は、9.50%から10.00%へと引き上げとなり、ついに10%の大台にのりました。40才以上の方が対象となる介護保険料は2010年に1.19%から1.50%に、2011年には1.51%に、そして今回1.55%にとじわじわ引き上げとなっています。

もう一つの雇用保険料については、反対に引き下げとなります。これまでは、一般の事業所では被保険者(社員)負担が0.6%、事業主(会社)負担が0.95%の合計1.55%でしたが、この4月より、被保険者(社員)負担が0.5%、事業主(会社)負担が0.85%の合計1.35%となります。雇用保険料率はその時の雇用情勢と、積立金の状況を踏まえ、やや政治的に決まるようです。

ただ、折角の雇用保険料の引き下げも協会けんぽに加入している事業所では完全に打ち消しですね。ちなみに、今回の協会けんぽの料率引き上げ0.50%(全国平均で9.50%から10.00%)のうち、0.39%は特定保険料の引き上げです。特定保険料は「後期高齢者医療制度の支援金等に充てられる」保険料で、上で書いた高齢者医療への拠出金が増えているというのがこんなところにも現れています。逆に言えば、高齢化と医療費の増大が続く以上は、協会けんぽの保険料はまだまだ増えるということです。協会けんぽ自体、FAQとして「今後も保険料率は上がるのですか?」という質問に、「現状のままでは、今後も厳しい状況が続くものと考えられます。」と答えています。

社会保険についてブログ記事を書く度に思うのですが、さすがに全体の仕組みを見直さないとどうにもならないのではないかと強く危機感を抱きます。
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2011年10月13日

厚生年金はいつからもらえる?

弥生のウェブサイトでは既に8月からお知らせしていますが、この10月の給与から、厚生年金保険の料率が再び上がります。正確には、再びというよりも、毎年恒例。昨年9月に解説していますが、平成16年の年金制度改正によって、平成29年まで、毎年じわじわと上がっていくことが決まっています。

今回の料率改定は、16.058%から、16.412%への0.354%の引き上げです。料率ではわかりにくいですが、例として、給料(正確には標準報酬月額)が300,000円の方ですと、9月までが、300,000円×16.058% = 48,174円。これを会社(事業主)と従業員(被保険者)で半分ずつ負担しますので、従業員の負担額は半分の24,087円です。これが、10月の給与では300,000円×16.412% = 49,236円。従業員の負担額は半分の24,618円となります。その差、531円。一年間で、6,372円の負担増ということになります。

昨年お話しした通り、平成16年の改正前と平成29年の改正完了時点での保険料の増加は無視できないレベル(標準報酬月額が300,000円の人で、従業員負担分が年間で84,960円増加)ですが、そこはうまくできていて、毎年の負担増としては、まあなんとか耐えられるレベルです。実際問題、給与明細を見ておらず、気が付かない人も多いかもしれませんね。

既に決まっていることですし、厚生年金制度を健全に維持するためであればやむを得ないとは思いますが、最近は別の方面で気になる動きが出てきました。それは、厚生年金の支給開始年齢のさらなる引き上げです。実は、料率だけではなく、年金の支給開始年齢も段階的に引き上げられてきており、2030年までには男性も女性も支給開始年齢が65歳になります。この65歳への引き上げがもっと早まり(2021年?)、なおかつ支給開始年齢はさらに68歳〜70歳にまで引き上げられるという案(厚生労働省案, pdf)が検討されています。

今のところすぐにこの案が成立するということではないようですが、年金財政が悪化する中で、料率の引き上げだけでは将来の目処がたたないということでしょう。しかし、料率(=保険料)が上がる一方で、実際に支給される年齢が上がるのではふんだりけったりですね。私は今42歳ですので、年金の支給は早くても23年後。今は、68歳〜70歳への引き上げの検討ですが、そのうち75歳、いやいや80歳への引き上げが検討されたりすると、果たして本当に年金を受け取ることができるのかどうか。

以前も書きましたが、将来への不安こそが人々を委縮させ、経済を停滞させます。消費税にせよ、年金制度にせよ、目先の負担増は避けられなくても、将来が見通せるように是非なって欲しいと願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:54 | TrackBack(0) | 業務

2011年06月20日

え、このタイミングで!?

6/16に本ブログでも提供開始をご案内した弥生給与/やよいの給与計算向けの算定基礎届「年平均による報酬月額」対応版ですが、現在提供を一旦ストップさせて頂いています。

というのも、日本年金機構のウェブサイトで「年平均による報酬月額」の計算方法が一部変更されたことが急遽告知(リンク先はpdfです)されたためです。6/16に提供を開始したバージョンは今回の告知以前に開発されていますから、当然のことながら、この計算方法変更には対応できていません。このため、急遽提供をストップし、改めて今回の計算方法変更に対応したバージョンを開発することにしました。現時点では確定したことはお伝えできないのですが、今週半ばから後半にかけて新バージョンをご提供できるように開発を進めています。

6/16のブログ記事でもちょっと書いたのですが、今回の法令改正の対象となる算定基礎届の提出期限は7月11日。つまりあと三週間です。三週間後に必ず提出しなければいけない書類(しかも決して簡単なものでなく、重要かつ複雑な書類)の仕様がこのタイミングで変更されるのは、さすがに、さすがに、厳しいです。対応するシステムを開発する弥生にとっても厳しいですが、お客さまにとっても、対応版を利用して書類を準備する時間が減ることになり、厳しい対応となってしまいます(今回の改正を反映しない形で算定基礎届を提出するのであれば、問題ありませんが、そうすると折角の改正のメリットを享受できない可能性があります)。

とにかく弥生としては一刻も早く今回の変更への対応版を提供できるようにベストを尽くします。今しばらくお待ち頂きますようお願い申し上げます。
posted by 岡本浩一郎 at 20:41 | TrackBack(0) | 業務

2011年06月14日

弥生と会計事務所を結びつけるもの

5月から会計事務所に関して色々とお話ししてきました。会計事務所の仕事って何があるんだろう、会計事務所はどのように差別化しようとしているんだろう、といった点です。そして前々回は、企業(顧問先)にとっての「自計化」の意味についてお話ししました。

そもそもこれらの記事の発端となったのは、弥生のパートナーである会計事務所が4,000を超えたということ。この記事において、「弥生にとって、会計事務所は志を共にするパートナー」と書いたのですが、実はここに「自計化」というキーワードが深くかかわってきます。

弥生とそのパートナーである会計事務所が共にする志は何か。それは、一社でも多くの中小企業に元気に活動してもらいたいという想いです。ここで言う企業は法人か、個人事業かは問いません。何かを成し遂げようという想いで起業される方を全力でバックアップしたい。懸命に成長しようという企業の後押しをしたい。そして生き残ろうという意思のある企業には絶対に潰れて欲しくない。

企業を立ち上げ、成長させ、何があっても潰さない。そのために必要なことは何か。もちろん色々とありますが、まず必要なのは現状を正確に把握すること。自計化を通じ、自社が今どんな状況にあるかを正確に、かつタイムリーに把握することが必要。そういった強い信念で結ばれているのが、弥生とPAPと呼ばれるパートナー会計事務所です。

差別化戦略の記帳代行よろず経営相談で書いたように、お客さまへのアピールとしては記帳代行の方がわかりやすい。一般的に顧問先は会計についてあまり詳しくない中で、「帳簿付けから全部面倒見ます。お客さまは事業に専念して下さい」というのは非常にわかりやすいメッセージとなりますから。それでもあえて、「お客さま自身がちゃんと理解しないとダメです。だからまずは自分で帳簿を付けましょう」と言うのが弥生のパートナー会計事務所です。

もちろん、一つの型を万人に押しつけるのが正しいとは限りませんので、例えば、最初は記帳代行で受けるけれども、ある程度慣れたら自計化に移行しましょうという会計事務所もあります。それでも、根底にあるのは、本来は企業のためにも自計化すべきだという考えです。

もう一つ付け加えると、自計化は、企業と会計事務所の役割分担という意味でも副次効果を生みます。すなわち、企業側で記帳を行うことによって、会計事務所は労働集約型の作業から解放され、より付加価値の高いサービスを提供することが可能になります。

先ほどの記事で、弥生のパートナー制度はむやみに数を追わないと書きました。これは揺るぎのない想いです。まず中小企業、個人事業主、そして起業家を支えるという志を共にする。それが全ての原点です。
posted by 岡本浩一郎 at 19:25 | TrackBack(0) | 業務

2011年06月09日

自計化の意味

前回お話しした通り、「自計化」というのは自社で記帳することです。会計事務所のアドバイスを受けながらも、基本的には自社で会計ソフトを使って記帳する。そしてそのデータを会計事務所と共有し、会計事務所は申告やよろず経営相談など会計事務所ならではの付加価値を提供するという流れになります。

「自計化」というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、会計事務所に「記帳代行」として丸投げした場合の「代行」という言葉が示すように、本来、自社(顧問先)でやるべきことです。それは何故か。それは、自社が今どんな状況にあるかを正確に、かつタイムリーに把握するために必要だからです。

車の運転を考えてみましょう。余談ですが、私は車が好きなので、レンタカーを含めて色々な車に乗ったことがあります。これまで、タコメーター(回転速度計)がない車は見たことがありますが、さすがに速度計(スピードメーター)がなかったり、燃料計がない車というのは見たことがありません。そりゃそうですよね。何キロで走っているのかわからない、あとどれぐらい走れるのか見当もつかない車で走るのはとても危険ですし、日本では車検に引っ掛かって走ることすら認めてもらえないでしょう。

会計というのは、自動車でいうところの速度計であり、燃料計です。自社で記帳し、自社の数字をキチンと見えるようにするということは、自分の事業が今何キロで走っていて、あとどれぐらいの燃料があるのかを把握するということです。事業には通常は免許も必要ありませんし、車検もありませんが、速度計や燃料計を持っている、そしてそれをちゃんと活用していることは、当然必要なことです。

もちろん、事業を進めていく上で、速度はある程度体感できるでしょう。売上が順調かどうか。でも、それが適切な速度なのか、どうか。黒字倒産というものがありますが、これは儲かっているのに、倒産してしまうことです。なぜこれが起きるのかというと、簡単に言えば、現金がなくなったからです。自動車で言えば、ガス欠。うわーっ、調子いいな、と思って飛ばしていたら、突然のガス欠。燃料計に目をやっていれば、少しスピードも落としていたでしょうし、早めにガソリンの補給もできたでしょう。

調子がいい時以上に、悪い時にこそ速度計や燃料計を逐次チェックすることが必要です。思ったほど速度が出ていない、でも燃料は刻々と減っていっている。この場合、目的地を変更する必要があるかもしれませんし、場合によっては、車をより燃費の良いものに乗り換える必要すらあるかもしれません。

回りくどい例えになりましたが、自社で記帳を行い、自社が今どんな状況にあるかを正確に、かつタイムリーに把握すること。それが自計化です。
posted by 岡本浩一郎 at 22:04 | TrackBack(0) | 業務

2011年06月06日

顧問先にとっては?

間が一回あいてしまいましたが、これまで、会計事務所の差別化戦略についてお話ししてきました。会計事務所の4つの業務のうち、申告業務と税務調査立会は税理士独占業務でもあり、コア業務。一方で、それだけでは差別化できないので、残りの二つの業務である記帳代行もしくはよろず経営相談が差別化の鍵になるということでした。

会計事務所の観点から、記帳代行よろず経営相談という二つのオプションを比較してきたわけですが、顧問先(企業側)から見てはどうでしょうか。記帳代行は、本来は顧問先がやるべき記帳という業務を代行する、すなわち肩代わりしてくれるのに対し、よろず経営相談に重点を置く場合は、可能な限り記帳は顧問先に任せ、会計事務所は、より付加価値の高い業務に専念しようします。

一見すると、顧問先にとっては、記帳代行の方がよい仕組みに見えるかもしれません。しかし、実際は逆なのです。

自社で記帳することを「自計化」という言い方をします。会計事務所が自計化を勧める時、それは決して、会計事務所側にとって付加価値の低い業務を顧問先に押しつけるという後ろ向きな理由からではありません。それは、記帳代行の「代行」という言葉が示すように、本質的に顧問先がやるべきことだからです。本質的に顧問先がやるべきことは顧問先がやり、その一方で、会計事務所ならではの付加価値を提供しようとしているのです。

これは私が自分で起業した際の実感でもありますが、記帳をするという行為は、単純に帳簿を付けるだけではありません。自分で帳簿付けをすることによって、初めて自分の事業の今が見えます。細かいところで言えば、経費をひとつ入力する際にも、この経費は本当に有効だったんだろうかということを考えますし、売掛金を計上する際も、その売掛金を回収できるまでの資金繰りを確認する癖もつきます。自分でやるからこそ、タイムリーに、かつ、肌で感じることができるのです。次回はこの自計化の意味についてもう少しお話ししたいと思います。
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2011年05月30日

会計事務所の差別化戦略: よろず経営相談

前回は、会計事務所の差別化戦略として、記帳代行に力を入れるというオプションについてお話ししましたが、今回は、もう一つの方向性であるよろず経営相談について。

会計事務所は全国に30,000以上も存在しますから、その考え方や戦略も様々です。ただ、多くの会計事務所は、競争が激しくなる中で、より付加価値の高い業務にシフトしようとしています。前回お話ししたように、記帳代行というのは労働集約型の作業であり、必ずしも付加価値が高い作業ではありません。このため、会計事務所にとって付加価値の低い記帳は顧問先に任せ、より付加価値の高い業務に専念しようという方向性が生まれます。申告業務や税務調査立会は税理士ならではの付加価値ですが、さらに付加価値の高い業務として多くの会計事務所が力を入れているのが、よろず経営相談(地に足がついた経営コンサルティング)です。

経営コンサルティングと言えば、そういえば私もかつては一応(?)経営コンサルタントでしたが、そんな私でも会計事務所には結構相談しました。例えば、どうやって資金を手当てしておくかも含め、退職金制度の在り方について相談にのってもらいましたし、これに関連して、生命保険の掛け方などもアドバイスしてもらいました。あるいは、株主総会をいつ開催しなければならないか、どういった書面が必要か、まで。なんでもかんでも丸投げではありませんが、自分なりに調べてわからないことは、遠慮なく聞くようにしていました。事業と言えば、「ヒト・モノ・カネ」。このうちのヒトだけをとっても、自分の給料から、従業員を雇った場合の手続き、従業員を守るための保険のあり方まで、考えるべきことは山ほどあります。事業をする上で、次から次へと生まれる様々な疑問や悩みに対し、的確なアドバイスを受けることができるのが、このよろず経営相談です。私も、本当に助けてもらいました。

難点は記帳代行よりもお客さまへの訴求が難しいことでしょうか。このよろず経営相談の有難味は実際に受けてみないとわかりにくいですし、また、当然どの会計事務所も多かれ少なかれ「経営相談、経営指導、経営コンサルティング」を看板として掲げていますので、会計事務所からその付加価値を客観的に伝えることも、顧問先としてもそれを正しく評価することも難しいというのが大きなハードルかと思います。

ただ、ある程度この路線で顧問先が増えてくると、口コミで顧問先が顧問先を呼ぶ状態になります。これは会計事務所としては理想の状態ですね。
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2011年05月27日

会計事務所の差別化戦略: 記帳代行

間が一回あいてしまいましたが、前回は、会計事務所の差別化戦略についてお話ししました。会計事務所の4つの業務のうち、申告業務と税務調査立会は税理士独占業務でもあり、コア業務。一方で、それだけでは差別化できないので、残りの二つの業務である記帳代行もしくはよろず経営相談が差別化の鍵になるということでした。今日は、記帳代行に力を入れるというオプションについて。

記帳代行は、明確に「代行」と入るだけに、本来は企業(会計事務所からするとお客さま、ここでは顧問先と言う表現をします)が行うべき記帳業務を代行するということになります。顧問先からすると、お金を払って、一定の手間を肩代わりしてもらうということですね。この記帳代行については、一定のニーズがあるのは確かですが、会計事務所にとって積極的にやりたい業務かというと、実は微妙なところです。

なぜならば、会計事務所にとって、記帳代行というのは労働集約型の作業であり、必ずしも付加価値が高い作業ではないからです。確かに、会計事務所は記帳を請け負うことによって、多少は高い顧問料を得やすくなります。しかし、その業務を行うためには、それなりの労力が必要。要は、労力がかかる割にあまり儲からない、というわけです。

その一方で、記帳代行は会計事務所にとって戦略的な意味を持つのも事実です。まずは、顧問先を獲得するハードルを下げることができます。一般的に顧問先は会計についてあまり詳しくない中で、「お客さま自身がちゃんと理解しないとダメです。だからまずは自分で帳簿を付けましょう」と言うよりも、「帳簿付けから全部面倒見ます。お客さまは事業に専念して下さい」というのは非常にわかりやすいメッセージとなります。

また、そのような形で丸受けをすることによって、(意識してそれを狙っているかどうかは別として)会計をブラックボックス化しやすい、それによって顧問先を囲い込みやすいのです。これは逆のパターンを考えるとわかりやすいかと思います。記帳代行を受けない場合は、原則として顧問先が弥生会計のような会計ソフトに自分で入力します(もちろん入力する際のアドバイスはあります)。ここで顧問先が、ある会計事務所のサービスに納得できない場合は、弥生会計のデータを持って、別の会計事務所を探せば済みます。一方で、記帳代行をお願いしている場合は、こうはいきません。良くも悪くも会計業務を握られてしまっているからです。

このように会計事務所にとっても、顧問先にとってもメリットもデメリットも混在する中で、記帳代行に力を入れようとする会計事務所にとっては、業務の仕組み化がキモになります。一部の大型会計事務所では、オフショア(日本国外)の記帳代行センターを設置するという動きもあります。特に日本語を読むことのできる人の多い中国。労力がかかることは避けられないが、せめてそれにかかるコストを下げようというわけですね。特に大型事務所では、現地にスタッフを派遣し、業務の質向上を図っているようです。
posted by 岡本浩一郎 at 18:29 | TrackBack(0) | 業務

2011年05月23日

会計事務所の差別化戦略

前回は、会計事務所の仕事を大きく4つ(記帳代行・申告業務・税務調査立会・よろず経営相談)に分類しました。では、この4つの中でどこに重きを置いていくか。まず、申告業務と税務調査立会については、どの会計事務所にとってもコアと言って良いと思います。何と言っても税理士が独占を認められている業務ですから。例えば、申告に関しては、税金を納める人(会社)自身が申告書を作成し、申告することは当然okですが、逆に言えば、その人(会社)自身「以外」は税理士でないと認められないということです。

これに対し、残りの二つの記帳代行とよろず経営相談は、税理士でなくてもできる業務(税理士独占業務ではない)です。このために、世の中には記帳代行を専門にしている会社というものもありますし、よろず経営相談に至っては、とりあえず経営コンサルタントと名乗れば誰でもできてしまいます(お客さまがつくかどうかは別として)。

ただ、ではこのコアの二つ(申告業務と税務調査立会)だけでよいかというと... そうではありません。会計事務所の数が増える(税理士には定年がない一方で、新たに資格を得る方が毎年生まれます)一方で、その顧客となる事業の数は減っていますから、会計事務所業界も競争が激しくなってきています。そういった中で、このコア二つだけでは十分な差別化ができないからです。

例外としては、税務署OBの税理士の方が税務調査立会で力を発揮しやすいという話(噂?)もありますが... また、申告業務については、少なくともサラリーマンの確定申告であれば、国税庁のウェブサイトでほぼ完結でき、難易度のやや高い事業所得についても、やよいの青色申告のような会計ソフトを利用すれば自分でできるようになってきていますから、個人の申告業務が今後会計事務所の業務としてドンドン増えることは期待できません。

もちろん、個人の申告業務がすべてなくなることはありません。現実は、手間を省きたいという方やより高付加価値なアドバイスを求める方が会計事務所にお願いすることは変わらないでしょう。ただし、これは付加価値でいえば、前者は記帳代行、後者はよろず経営相談と言えます。

ではどこで差別化するか、でその会計事務所の戦略であり、特徴が顕著に出るようになります。大きな流れとしては、記帳代行で差別化するという考え方と、よろず経営相談で差別化するという二つの流れがあります(もちろんこれは一般化ですので、両方の組み合わせもあり得ますが)。

次回からこの二つの流れを順に解説してみたいと思います。早く結論を知りたいという方は、拙著「会計ソフトだけではダメ! 本当の会計の話」を是非どうぞ。

posted by 岡本浩一郎 at 19:27 | TrackBack(0) | 業務

2011年05月20日

会計事務所の仕事

中小企業にとって、最も頼れるのが税理士であり会計事務所。その会計事務所の仕事って何でしょう。会計事務所というだけにやっぱり会計の仕事? それはそうですが、あまりに漠然としていますよね。会計事務所の仕事を分類すると、実は大きく4つに分けることができます。

1) 記帳代行
2) 申告業務
3) 税務調査立会
4) よろず経営相談

少々補足すると、1)の記帳代行とは、日常に生ずる取引記録の整理、及びその入力などです。伝票などを元にいわゆる仕訳を起こす作業ですね。「代行」ですので、本来は企業(顧問先)が行う業務を代行するという位置付けになります。2)の申告業務はわかりやすいですね。所得税や法人税、消費税などの申告を行う業務です。3)の税務調査立会は、法人の場合3~5年に一度ぐらいのペースであると言われている税務調査に立ち会い、調査が顧問先にとって不利にならないように支援を行う業務です。

4)は格好良く言えば、経営コンサルティング業務ということになります。ただ、会計事務所によるコンサルティングは、いわゆる経営コンサルティングファームによるものと比較して、より地に足がついており、会計や税務だけではなく人事系の手続、株主総会の運営、保険の活用、資金調達や事業継承など極めて多岐にわたります。このため、私の感覚的には「よろず経営相談」という方がピンと来るような気がします。

会計事務所によってはこの他の仕事も手掛けているケースもありますが、一般的にはこの4つが大きな柱となります。これはどんな会社と付き合う際にも共通ですが、その会社の仕事(≒付加価値)を理解していないと、良いお付き合いはできません。会計事務所と良いお付き合いを実現する上では、会計事務所がどういった仕事をしているのかを理解し、その上で、何から何までを期待するか、そのためにいくら支払うかを依頼元(会社、顧問先)と会計事務所がキチンと合意することが重要です。

次回は、この4つの業務にまつわる会計事務所の戦略についてお話ししてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:35 | TrackBack(0) | 業務

2011年05月17日

会計事務所? 税理士? 会計士?

弥生のパートナーとなっている会計事務所が4,000を超えたことを記念(?)し、これから何回かで会計事務所(税理士)の仕事や弥生との関係についてお話をしたいと思います。

さて、上記で会計事務所(税理士)という表記をしました。会計事務所、税理士、はたまた会計士。これらの単語自体はそれなりに耳馴染みがあるかと思いますが、これらはそもそもどう違うのでしょうか。

税理士とはその名の通り、税務の専門家。税理士法という法律で定められた国家資格です。おそらく多くの中小企業(個人事業含め)にとって、最も近い会計の専門家と言えば、税理士になるでしょう。この税理士の先生が事業として構えているのが、会計事務所です。多くの場合は、税理士=会計事務所と考えて差支えはないでしょう。ただ、会計事務所ではなく、税理士事務所という呼び方をするケースもあります。

会計事務所の変形ですが、昨今増えているのが、税理士法人。会計事務所は、税理士の資格を持った個人が事務所を構えてスタッフを雇っているものであり、通常の事業で言うところの個人事業者です。これに対して、税理士同士で集まって法人として活動しているのが税理士法人です。正確には少々異なりますが、通常の事業で言うところの株式会社のような法人と考えればよいでしょう。

では会計士は? こちらは、公認会計士という言い方もしますね。会計士は、その名の通り、会計の専門家です。会計士も国家資格ですが、こちらは公認会計士法という法律に基づいています。会計の専門家ということで、中小企業の会計の駆け込み寺としてふさわしいようにも思えるのですが、実際は、監査法人の社員として大企業や中堅企業の監査の仕事を中心としている方がほとんどです。ただ、実は会計士は所定の登録さえすれば、税理士としての活動もできるようになっています。このため、中には「公認会計士・税理士」という肩書で活動している先生もいらっしゃいます。こういった方の場合は、中小企業を顧問先としているケースも多いようです。

ということで、中小企業が頼りにすることができる会計の専門家という意味では、会計事務所、税理士事務所、税理士、会計士、税理士法人、などなど全て「あり」なのですが、本ブログでは一般的な呼称として「会計事務所」(先生個人としては「税理士」)としてお話ししていきます。

今回は本題に入る前の予備知識でしたが、実はこの「会計事務所の仕事」シリーズには出典があります。それは2月に出版した拙著「会計ソフトだけではダメ! 本当の会計の話」。この本では会計事務所って何から始まって、どうやって選ぶか、何をどのようにお願いすべきか、等々について書いています。本ブログでも徐々にお話ししていきますが、今すぐに知りたい、という方は是非拙著をお読み下さい(最後は宣伝でした、笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 22:26 | TrackBack(0) | 業務

2011年05月06日

健康保険組合に加入するには

前回の記事では、一般的に協会けんぽよりも、健康保険組合の方が有利であるというお話をしました。実際、健康保険料率が協会けんぽの9.50%と同等、もしくは高い組合はわずか6.3%に過ぎません。逆に言えば、90%以上の健康保険組合が協会けんぽよりも低い保険料率となっているということです。

健康保険組合には単一の企業(社員700人以上)が設立するもの(単一健保組合)もあれば、同業種の複数の企業(合計で3,000人以上)が共同で設立するもの(総合健保組合)があります。新たに法人を立ち上げた場合、その性格上単一健保組合に追加で加入することはできませんが、属する業種に総合健保組合があれば、審査の上で加入することができます。

ただ、この審査、実はそんなに簡単ではないようです。どの健保組合も、自分の財政を厳しくするような新たな加入は認めたくないのが正直なところですから。健保組合はあくまで任意の組織であって、法律的に加入が保障されているものではありませんので、新たな加入を認めるかどうかは、その健保組合の判断次第です。

弥生が加入している関東ITソフトウェア健康保険組合は、加入基準をウェブ上で公開しています。業務がソフトウェアに関するものであることといった基準はまあ当然と思うのですが、4. 著しい低報酬月額の被保険者がいないこと、5. 被保険者の平均年齢が40歳未満であること、6. 扶養率については、当組合の平均を著しく上回らないこと、というのは、要は、財政を厳しくする新たな加入は認めないということかと思います。

報酬月額の件はともかくとして、平均年齢や扶養率については、理解はできるものの、う〜ん、という感じですね。50代の方数名が早期退職制度で会社を興した場合には確実に満たせなくなりますし、子どもの多い従業員が多ければやはり難しくなります。もっとも、毎月20〜30社以上はコンスタントに加入が認められているようですので、新規の加入が極端に厳しいというわけではありませんので、念のため。

現在協会けんぽに加入している場合、加入が認められる可能性のある(なおかつ保険料率などでメリットのある)健康保険組合がないか、調べてみるとよいかと思います。場合によって、加入の可能性のある健康保険組合が複数存在することもあります(例えば、関東ITソフトウェア健康保険組合東京都情報サービス産業健康保険組合など)。
posted by 岡本浩一郎 at 10:32 | TrackBack(0) | 業務

2011年05月02日

健康保険組合の仕組み

先日のブログ記事ではさらっと流してしまいましたが、この春からの健康保険料率は、協会けんぽが9.50%(全国平均)に対し、弥生も加入している関東ITソフトウェア健保組合が(大幅に引き上げられたとはいえ)8.50%。いまだに1.00%の差があります。さらに、40才以上の方が対象になる介護保険料も含めて考えると、協会けんぽが11.01%に対し、関東IT健保は9.50%とその差は1.51%に広がります。

従業員としてはこの差の半分を負担しているわけですが、先日と同じロジックで言えば、これは同じ中小企業でも協会けんぽに加入している中小企業の従業員か、関東IT健保に加入している従業員かで、事実上消費税1%以上に相当する格差が発生しているということです。

なぜこういったことが起きるか、ですが、三つ理由があるかと思います。まず、関東IT健保はIT企業が加入して組合のために、加入者の平均年齢が低いと言われています。比較対象となる協会けんぽでは被保険者の平均年齢が43.6歳(約一年半前の数字なので現在は+α?)。一方で、関東IT健保は35.1歳(平成23年予算)と10歳以上の差があります。平均年齢が低い = 病気になりにくい = 医療費での保険給付が少ない、ため低い保険料率でも成り立ちやすいということです。

二つ目ですが、扶養家族が少ないということ。協会けんぽは被保険者数が1,952万人に対し、被扶養者数が1,531万人。直接的な保険加入者(従業員)一人に対し、その扶養家族が0.78人という割合ですね。これに対し、関東IT健保のこの比率は、0.61人です(うーん、想像はできますが明確な差ですね、苦笑)。保険料は扶養家族があっても増えませんが、保険給付は扶養家族が増えるほど増えますので、扶養家族が少ないほど財政上は有利になります。

三つ目ですが、報酬が高いということ。協会けんぽの平均標準報酬月額が279,216円に対し、関東IT健保は390,000円と実に40%近く上回っています。保険料は報酬に連動しますので、報酬が全体的に高いほど、保険料収入も増えることになります。

要は保険料収入が見込める一方で、保険給付が少なくすむ加入者ばかりが集まっているから、保険料率を低く抑えることができるわけです。

さらに言えば、関東IT健保は日本全体で1,447ある健康保険組合の中でも恵まれた組合です。先ほど三つの条件を完璧に満たしているからです。まず、加入者の平均年齢ですが、例えば、東京都土木建築健康保険組合は被保険者の平均年齢が45.7歳(ここを選んだのはたまたま検索で引っ掛かったからで、他意はありません)。一方で、関東IT健保は35.1歳ですから、実に10歳以上の差があります。

二つ目の扶養家族ですが、健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)によると、1,447ある健康保険組合では、被保険者数が1,559万人に対し、被扶養者数が1,397万人。保険加入者(従業員)一人に対し、その扶養家族が0.9人。これに対し、関東IT健保は、0.61人。そして、三つ目の報酬ですが、健保連の平均値は平均標準報酬月額が361,660円に対し、関東IT健保は390,000円と7.8%ほど上回っています。

今回の関東IT健保の料率引き上げは、これだけ優良な健保組合でも、料率を引き上げざるを得ない状況になってきているということです。これは特に平成20年度より、後期高齢者医療制度がスタートし、現役世代が加入する健保組合が高齢者医療制度に納める納付金が大きく増えてきたことによります。このため、平成23年には、1,447ある健康保険組合のうち、約90%が赤字となることを予想しています。関東IT健保はまだ黒字の10%に含まれていますが、逆に言えば、今回料率を引き上げなければ赤字に転落していたということでしょう。
posted by 岡本浩一郎 at 09:29 | TrackBack(0) | 業務

2011年04月22日

税金の臨時特例

東日本大震災の被災者等の負担の軽減を図るため、税金について、様々な特例処置が設けられるようです(国会での決議はこれから)。法律案要綱が公開されていますが、一般の人にはなかなか読解が難しいですね。そこで「元フリーターの不敵な税理士」後藤先生が取り急ぎポイントをまとめて下さいましたので、ここで共有させて頂きます。

被災者の負担の軽減を図るという趣旨ですので、特例の対象となるのは、基本的に被災された方(個人、個人事業主、法人)となります。

[雑損控除]住宅や家財等に係る雑損控除は22年(昨年)分の所得で適用できる。今年以降の繰越可能期間を現行の3年から5年にする。
[事業者の被災]事業者は被災事業用資産の損失を22年の必要経費にできる。青色申告者はさらに21年に遡ることもできる。今年以降の繰越可能期間を現行3年から5年にする。
[ローン控除]住宅ローン控除は、対象の住宅が焼失等していても継続適用。
[被災した法人]23/03/11〜24/03/10に終了する事業年度につき、震災損失がある法人はその損失額を2年遡って繰り戻し還付ができる。
[被災した資産の代替]28/03/31までに被災資産の代替として取得する資産については特別償却(割増償却)可能。被災した資産の建替え、再建造再取得は登録免許税を免税、これらの請負契約書等の印紙税を非課税に。
[相続税贈与税]震災後に申告期限がくる相続税、贈与税は期限を延長し、震災後の財産評価を基にして計算が可能。
[消費税]消費税の各種届出の遅延を認める。

一方で、被災された方以外に対しても影響が生じます。本ブログでも色々と取り上げた寄附金に関する税制ですね。

[寄付金控除]23、24、25年の所得税で寄付金控除の上限を現行の総所得の40%から80%に拡大。

上記の法律案要綱では、認定特定非営利活動法人及び共同募金会連合会に対して支出した震災関連寄附金に関する扱いに関しての記述もあるのですが、もう少し調べた上で改めて共有させて頂きます。寄附金については、既に運用ベースで扱いが変わってきており(赤十字向けもふるさと納税と同様の扱いが認められるなど、基本的に税金が下がる方向で)、3月にアップした内容の更新も必要になっています。

蛇足ですが、今週二つのインタビュー記事が掲載されましたので、お時間がある時にでも是非ご覧下さい!

復興への活力--元気を出せる企業がなすべきこと」(ITmedia)
SaaSは成長を加速する柱の一つ 弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏」(ITpro)

posted by 岡本浩一郎 at 15:07 | TrackBack(0) | 業務

2011年04月13日

子ども手当

意図してではないですが、前回に引き続いて子供の話です。ただし、今回は弥生の業務にもかかわる話、そう「子ども手当」です。まだ正式な決定ではないのだと理解していますが、報道によると政府・民主党が災害復興の財源確保のために「支給期限が切れる10月以降は廃止する方向で調整に入った」ということです。ご承知のように、子ども手当はこの4月から9月までの継続支給がギリギリの3/31につなぎ法案として決まりました。とりあえず9月までは継続するが、それ以降は断念ということのようです。

災害復興に巨額の財源が必要だということは明らかですし、そのためには、国民みなが負担をしていかなければならないことも明らかです。ただ、ここで引っ掛かるのは、子ども手当の財源は何もないところから生まれたのではなく、その引き換えとして、年少者(16才未満)の扶養控除をなくすことによって、捻出された財源だということです。ですので、子ども手当はなくなりました、でも年少扶養控除はなくなったままですと、従前であれば年少扶養控除を受けていた世帯のみに負担を強いるということになります。

子ども手当という制度自体の是非はともかくとして、子どもを安心して迎え、育てられるようにしようという趣旨自体は日本の未来のために間違いなく必要なことです。しかし、今回、万が一子ども手当だけが廃止(年少扶養控除の復活なし)となると、その趣旨と完全に逆行する結果を産むことになります。

例えば、今年の子ども手当の支給額は1月〜9月になりますので、13,000円×9で、11万7千円。10月からは児童手当が復活するとして、5,000円×3を足すと13.2万円です。一方で、今年から廃止された年少扶養控除は38万円の所得控除(住民税では33万円)でしたから、所得税の税率5%の家庭で所得税が1.9万円、住民税(一律10%)が3.3万円で合計5.2万円税金が増えることになります(ただし住民税が実際に増えるのは来年の6月から)。このケースで言えば、去年までが児童手当が6万円であったものが、今年は、子ども手当+児童手当13.2万円受給と同時に5.2万円増税で実質8万円ですから、6万円から8万円で何とかプラスとなります。

ただ、それ以外の世帯では、ほとんどのケースで増税分が子ども手当(+対象となれば児童手当)を上回ってしまい、マイナスとなります。さらに、来年に関して言えば、税率が5%の方も含め、子どものいる家庭にとっては、軒並み実質的な増税になってしまいます。さすがにどんな事情があるにせよ、この状況は避けるべきではないでしょうか。

弥生という立場からすると、弥生給与/やよいの給与計算で年少扶養控除の廃止という法令改正対応をしたものを、下手をすると、もう一度逆の対応をする必要がでてくるわけで、かなり複雑な気持ちです。ただ、弥生としてどんな対応が必要になるにせよ、子どものいる家庭に一方的に負担を強いるような制度になってはならないと強く感じています。

(4/14修正) 数字に一部誤りがありましたので、修正しました。
posted by 岡本浩一郎 at 21:29 | TrackBack(0) | 業務