前回は、会計事務所の差別化戦略として、記帳代行に力を入れるというオプションについてお話ししましたが、今回は、もう一つの方向性であるよろず経営相談について。
会計事務所は全国に30,000以上も存在しますから、その考え方や戦略も様々です。ただ、多くの会計事務所は、競争が激しくなる中で、より付加価値の高い業務にシフトしようとしています。前回お話ししたように、記帳代行というのは労働集約型の作業であり、必ずしも付加価値が高い作業ではありません。このため、会計事務所にとって付加価値の低い記帳は顧問先に任せ、より付加価値の高い業務に専念しようという方向性が生まれます。申告業務や税務調査立会は税理士ならではの付加価値ですが、さらに付加価値の高い業務として多くの会計事務所が力を入れているのが、よろず経営相談(地に足がついた経営コンサルティング)です。
経営コンサルティングと言えば、そういえば私もかつては一応(?)経営コンサルタントでしたが、そんな私でも会計事務所には結構相談しました。例えば、どうやって資金を手当てしておくかも含め、退職金制度の在り方について相談にのってもらいましたし、これに関連して、生命保険の掛け方などもアドバイスしてもらいました。あるいは、株主総会をいつ開催しなければならないか、どういった書面が必要か、まで。なんでもかんでも丸投げではありませんが、自分なりに調べてわからないことは、遠慮なく聞くようにしていました。事業と言えば、「ヒト・モノ・カネ」。このうちのヒトだけをとっても、自分の給料から、従業員を雇った場合の手続き、従業員を守るための保険のあり方まで、考えるべきことは山ほどあります。事業をする上で、次から次へと生まれる様々な疑問や悩みに対し、的確なアドバイスを受けることができるのが、このよろず経営相談です。私も、本当に助けてもらいました。
難点は記帳代行よりもお客さまへの訴求が難しいことでしょうか。このよろず経営相談の有難味は実際に受けてみないとわかりにくいですし、また、当然どの会計事務所も多かれ少なかれ「経営相談、経営指導、経営コンサルティング」を看板として掲げていますので、会計事務所からその付加価値を客観的に伝えることも、顧問先としてもそれを正しく評価することも難しいというのが大きなハードルかと思います。