2020年11月06日

青の国と赤の国

開票が進む米国大統領選挙ですが、まだ最終結果は見えていません。バイデン氏がリーチとも見えますが、開票はまだ続いており、バイデン氏が勝ったとされるアリゾナ州においてトランプ氏が僅差に迫る(このため、アリゾナ州についてはバイデン氏を当確とするメディアとまだ判断はできないとするメディアで判断が分かれているようです)、その一方で、トランプ氏優位だったジョージア州で開票率99.0%の段階でバイデン氏が僅か2,000票以内に迫るなど全く予断を許さない状況です。

前回は「米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません」と書きましたが、より詳細に見てみると実はもっと複雑です。WSJ(Wall Street Journal)で今回の選挙の特集記事が公開されていますが、記事の地図内の州をクリックしてみると、その州内の郡単位で青(民主党優勢)なのか赤(共和党優勢)なのかを見ることができます。上でお話ししたアリゾナ州やジョージア州を見てみると、アリゾナ州では、PhoenixのあるMaricopa郡やTucsonのあるPima郡は青(民主党優勢)であるのに対し、それ以外の郡には赤(共和党優勢)も目立ちます。ジョージア州に関しては、Atlantaおよびその近郊は明確に青、それ以外は赤に染まっている地域が目立ちます。

つまり、州レベルで言えば、東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」というのは大きな傾向としてはその通りなのですが、実際には州の中にも、都市部の「青の国」、逆に地方の「赤の国」という対立構造が生まれているのです。

私の両親はだいぶ昔にテキサス州のHoustonに住んでいたのですが、4年前の選挙でトランプ氏が選ばれたことを信じらないと言っていました。両親がかつて見ていた、成熟した大人の国のイメージからはかけ離れていたのかと思います。ただ、これもテキサス州の中を見てみると、何が起こっているのか見えてきます。Houston, Dallas, San Antonio, Austinという都市部は青、一方で地方(面積でいえば80%程度)は赤で埋め尽くされています。つまりHoustonに暮らしていて見える米国と、地方に暮らしていて見える米国は異なるのだと思います。私自身も4年前にまさかという感想を本ブログに残していますが、青の国のカリフォルニア、しかも都市部に暮らしていたからこそ、本当の米国の姿が見えていなかったのかと思います。

もっとも、青の国と赤の国の対立構造はここ10年〜20年で顕著になってきたのだと思います。これは、グローバル経済/IT経済が広がる中で、そのメリットを受けやすい人と、メリットを受けにくい人という意味での差が大きくなったということもあるでしょうし、また、それがソーシャルメディアを通じて目に見えるように(場合によっては、真実ではなくても、真実以上の説得力を持つように)なってきたということもあるのでしょう。

日本が同質社会であるのに対し、米国は多様性の国と言われます。米国は多様性を強みにしてきた国です。それが今、多様性を認めるのではなく、お互いに相容れない対立構造を深めつつあるように見えることに憂慮しています。ましてやその一因が自分も関わっているITの力にあるのかもしれないというのは非常に複雑な思いです。一方で、米国は危機を機会にしてきた国でもあります。今回の選挙の結果がどうなるのかはまだわかりませんが、どういった結果になるにせよ、多様性の中での連帯を深める方向に進むことを願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:30 | TrackBack(0) | その他

2020年11月04日

米国における新型コロナウイルス危機(その4)

今世界中が米国大統領選挙の開票を固唾をのんで見守っています。2016年も接戦でしたが、今回も接戦ですね。最終的に決着がつくまでには一波乱も二波乱もありそうです。WSJで"This Election Highlights How Divided the Nation Remains"(今回の選挙で、米国がいかに分断され続けているかが明確になった)という記事がありましたが、米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません。

ただ、どんな結果になるにせよ、米国のダイナミズムはそう簡単には失われないのだとも思っています。先月初に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話ししていますが、危機を危険だけでなく、機会にすることができているのも、米国ならではだと感じています。前回は、融資という分野については、危険が先行し、有力な二社が買収されたということをお話ししました。

ただ、融資という分野においても、機会もまた生まれています。そのきっかけになったのがPPPです。PPP、Paycheck Protection Program(給与保護プログラム)は、新型コロナウイルス禍に対する米国政府による中小事業者支援策として4月にスタートしました。PPPは、基本的には金利1%の融資なのですが、その資金を賃金、家賃等の支払いに充当した場合には、返済を免除されることになっています。日本でも雇用調整助成金(給与支払いを支援)、家賃支援給付金(家賃支払いを支援)、持続化給付金(事業全体を支援)と様々な事業者支援策が講じられていますが、これら全てを包含したような支援策といえます。

PPPは、4月に受付が開始され、8月8日に受付を終了しました。実績としては、5,460社のレンダー(金融機関)から、5,212,128件の融資が実行され、総額$525B(約55兆円!)が融資されたそうです。

ただ、PPPの滑り出しは問題含みでした。基本形としてはあくまでも融資ですから、PPPを受け付けるのは、金融機関。殺到する申込みに対して、金融機関がそれをさばけないことが大きな問題となりました。金融機関としては、従来からのお客さまを優先する、しかも、PPP対象となる事業者の中でも比較的大きな事業者が優先的に取り扱われていることが大きな問題となりました。実際、私が通っていたビジネススクールの卒業生メーリングリストでは、この時期、どの金融機関であればPPPを受け付けてもらえるかという情報交換が頻繁に行われていました。

この問題に対し、PPPを主管するSBA(U.S. Small Business Administration、米国中小企業庁)は、PPPの取扱いを金融機関だけでなく、FinTechプレーヤーにも認めるという英断を行いました。

ここで特に目覚ましい成果をおさめたのが、前回もお話ししたKabbageです。Kabbageでは、前々回にお話しした通り、自社での融資は停止したものの、その一方でオンラインで完結するPPP申込プロセスを短期間で構築し、圧倒的なボリュームのPPP申込みを受け付けました。PPPが終了した8月までに、実に300,000件のPPPローンを実行したそうです(提携金融機関経由の申込みも含む)。これはBank of America(BoA)に次ぐ、全米で第2位の実績となったとのこと。

特徴的なのは、BoAなどの従来型の金融機関でのPPPの1件当たりの金額が$100,000(約1050万円)を超える中で、Kabbageの平均金額は$30,000(約310万円)にも満たないということ。従来型の金融機関が従来からの比較的大きなお客さまを中心に対応したのに対し、KabbageのようなFinTechプレーヤーが従来型の金融機関が救いきれないUnderbanked層を支えたということが明確にわかる結果かと思います。

このようにKabbageをはじめとするオンラインレンダーが、短期間で効率よくお申込みを処理できる仕組みを構築し、実際に多くのPPPローンを手掛けたことは、オンラインレンダーならではの価値を示す結果になりました。(続く)
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2020年10月29日

米国における新型コロナウイルス危機(その3)

前回に引き続き、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしたいと思います。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。一方で、融資という分野については、危険が先行しているということを前回お話ししました

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

そういった中で象徴的なM&Aが、この夏立て続けに発表されました。一つはEnovaによるOnDeckの買収、もう一つはAmerican Express(AMEX)によるKabbageの買収です。

EnovaによるOnDeckの買収は、正直に言って、追い込まれての買収という側面が強いかと思います。OnDeckは2014年12月に、オンラインレンダーとして初めて、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。上場時には$1.3B(約1,370億円 @ 105円/$)という時価総額だったOnDeckですが、業績は期待ほどには伸びず、近年は時価総額が低迷していました。今回Enovaによる買収の対価は$122M(約130億円)ということで、全盛期の1/10以下の評価で買収されたということになります。ただ、これが全て新型コロナウイルス禍によるものかというとそうではありません。もともと業績が低迷していたところに、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけたというのが正解だと思います。

ちなみに、Enovaという会社は私も初耳だったのですが、2000年代から消費者向けのローンをCashNetUSAといったブランドで提供してきた会社だそうです。Enova自身の時価総額は現時点で$600M(約630億円)弱ということで、かつては自分を上回る時価総額だった会社をこの機会にうまく飲み込んだということになります。ただ、米国経済の先行きが不透明な中ではかなり思い切った買収と言えるかと思います。

OnDeckのケースは、後ろ向きな側面が強いかと思いますが、AMEXによるKabbageの買収はそうとは言い切れない部分があります。KabbageはOnDeckとならぶ代表的なオンラインレンダーですが、OnDeckとは異なり、未上場のままでした。2017年にはソフトバンクによる出資を受け入れており、この際の評価額は$1.2B(約1,260億円)といわゆるユニコーンの一社でした。今回のAMEXによる買収は$850M(約900億円)と言われており、これだけを見れば、以前の評価額から下げての買収ということになります。もっとも、今回のAMEXによる買収にはKabbageの既存の貸出債権は含まれていない(その多くは既に証券化されているようですが)ため、それを含めた際のトータルでの評価額は判明していません。ただいずれにせよ、全盛期の1/10以下で買収されたOnDeckと比べれば、Kabbageはそれなりに高い評価をされて買収されたと言えるかと思います。

なぜOnDeckとKabbageで評価が分かれたのか。それはこの後にお話しする新型コロナウイルス禍によってもたらされた「機会」をどれだけ享受できる可能性があるかに密接にかかわっているように思えます。

それにしても、高い評価を受けることもあれば、一転低い評価を受けることもある資本市場ですが、評価が低くなった瞬間にすぐにM&Aの対象となるというのがいかにもアメリカだな、と思います。Kabbageの創業者は既に次のベンチャーを立ち上げているというのも、これもまたいかにもアメリカです。経済の先行きも政治の先行きも不透明な中でも株高が続いており、危うさも感じさせる米国市場ですが、このダイナミズムがある限り、一旦は屈むことはあったにせよ、時間はかかっても必ず盛り返すのだろうと思います。

次回は、いよいよ新型コロナウイルス禍によってもたらされた「機会」についてお話ししたいと思います。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 21:32 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月27日

米国における新型コロナウイルス危機(その2)

少し前に、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしました。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。

ただし、融資という分野については、危機が先行しています。新型コロナウイルス禍によって、景況が悪化する中で、KabbageOnDeckといったオンラインレンダーには、緊急避難的な資金繰りニーズによる申し込みが急増しました。ただ、Kabbageは「我々は"Emergency relief"(緊急救援)のために存在している訳ではない」ため、ニーズに応えられないということで、4月には融資をストップしました。また、OnDeckについても、「“Anticipatory” borrowing(先行きの悪化を予想しての駆け込み需要) が急増したが、応えきれるものではなく、4月中旬までに新規融資をストップした」とのことです。

これはオンラインレンダーに限ったことではありませんが、融資はその返済がなされる蓋然性が一定程度確保されているからこそ成り立つものです。特に米国では多くの事業者が事実上の活動停止に追い込まれる中で、返済がなされる蓋然性が確保できなくなりました。オンラインレンダーは、これまで、ややもすれば従来型の金融機関のサービスが行き届かない小規模事業者向けにサービスを提供してきました。いわば事業者版のUnderbanked(銀行に相手にしてもらえない層)の解消に価値を発揮してきたわけです。ただ、今回の経済環境の激変の中では、事業基盤がしっかりした事業者を多く抱えている大手銀行と比較し、事業基盤がぜい弱な小規模な事業者向けにサービスを提供しているオンラインレンダーは一番直接的に影響を受けたと言えます。

こういった状況の中で、米国においても公的な支援策が実行されました。これはもちろん必要なことですが、公的な支援策によって、事業者は一旦資金繰りに目処が立つ状況になり、そうなるとしばらくはそもそも融資の需要が減ることになります。

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

こんな中で、米国におけるメジャーなオンラインレンダーであるKabbage、OnDeckの両社とも買収されるということが発表されています。KabbageはAmerican Express(AMEX)によってOnDeckはEnovaによって買収されることが発表されています。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:30 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月22日

社員総会 2020

今年も先週金曜日に社員総会を開催しました。昨年は台風の接近にハラハラしながらの開催となりましたが、今年は今年で新型コロナウイルス禍のただ中。例年ですと、大規模なホテルの宴会場で開催するのですが、今年に関しては皆が集まっての開催は断念せざるを得ませんでした。

本ブログでもお話ししましたが、少し前にはカスタマーセンターの総会も開催しました。やはり会場に集まっての開催を断念し、オンライン開催としましたが、これは皆オフィス(カスタマーセンター)にいるものの、それぞれの席でオンライン参加という形式でした。これに対しカスタマーセンター以外では、リモートワークを主軸としているメンバーが多いため、今回の社員総会は私を含め、ほとんどの人が自宅からのオンライン参加となりました。

オフィスの自席からのオンライン参加は、まだ周りに人がいて、空気は共有している状態ですから、一体感はある程度残されていますが、皆がそれぞれ自宅からの参加となればどうなるか。正直心配しながらの開催となりました。

しかし、ふたを開けてみれば、今年の社員総会はサイコーでした(まあ、大体毎年サイコーと思っているのですが、笑)。オンライン開催ということもあり、あなた話す人、私たちはじっと聞く人という構図を軽減するため、プレゼンテーション形式は前半にとどめ、後半は、ファイアサイド・チャット形式(直訳すると暖炉脇での会話となりますが、少人数でのカジュアルな座談会)、パネルディスカッション形式など多様なスタイルを組み合わせました。結果的に、最後まで飽きることなく、と言うよりも、最後に向かって盛り上がっていったように思います(ということは冒頭の私のプレゼンは最低地点だったことになります、苦笑)。

Slack(チャットツール)に社員総会の専用チャンネル(書き込み板と言えばいいのでしょうか)を立上げたのですが、盛り上がり具合は、このチャンネルへの書き込みで一目瞭然でした。最後の「20年後の自分と弥生を考える」セッションはパネリストと(Slackを通じて)皆が一体化した感覚がありました。

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ビジネスセッションがだいぶ伸びてしまいましたが、19時過ぎからはお楽しみのビアバスト。予め特製のお弁当を各自の自宅に送付してあります(飲み物は定額を支給して各自で調達)。ビアバストの企画は毎年若手メンバーで準備するのですが、今年はオンライン開催ということで、だいぶ悩んだようです。ただ、その甲斐あって、ニュース番組企画もノベルゲームも盛り上がりました。ノベルゲームは皆の選択でゲームの進み方が変わるのですが、真面目なチーム弥生らしく、最初から最後まで正解を選び続けてしまい、最速でゴールにたどり着きました。ゲームを楽しむという意味では、たまにはわざと外すことによって脇道を歩みたいところなのですが、ついつい正解を選んでしまう。これも弥生らしさですね(笑)。

最後は恒例の大抽選大会。そして締め。この間ずっとSlackの流れるスピードが速いこと速いこと。オンライン開催でしたが、ある意味例年以上に一体感を感じることができました。ビジネスセッション、ビアバスト共に準備頂いた皆さん、本当にお疲れさまでした。チーム弥生でFY21も頑張りましょう。
posted by 岡本浩一郎 at 21:38 | TrackBack(0) | 弥生

2020年10月20日

ようこそ弥生へ(社外取締役の就任)

昨日10/19付けで弥生は太田直樹さんと林千晶さんを社外取締役として迎えました。現在の弥生の株主はオリックス(と超マイナーですが私)であり、会社の所有と経営は完全に分離されています。取締役会のうち3名は社外取締役として株主から迎えており、経営者の暴走を防げるガバナンス体制になっています。しかし、オリックス傘下になってからほぼ5年となり、いい意味でも悪い意味でも居心地のいい取締役会になっています。今後も弥生が健全に継続的に発展していくために、社外の有識者の目が必要だと考えていました。

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今回社外取締役に就任いただいた太田さんと林さんは、二人とも従前からの私の知人です。ただ、言い方はなかなか微妙ですが、友人と言えるほど親しいわけではありません(笑)。あまりにも親しい間柄であれば、社内取締役と社外取締役とのいい意味での緊張関係を築けませんからね。それだけに、社外取締役への就任を打診する際にはドキドキしながらでしたが、幸いなことにお二人ともご快諾いただくことができました。

太田さんは私と同様BCG(ボストン コンサルティング グループ)出身。もっとも滞在期間が短かった私と比べ、太田さんはパートナーまで務められていますので、比較になりませんが。私のBCG在籍中は残念ながらプロジェクトをご一緒する機会はありませんでしたが、BCG卒業後にはBCGのアラムナイパーティなどでたまにお話しする機会がありました。今年6月には、弥生は他4社と共同で、確定申告や年末調整などの社会的システムをデジタルを前提として再構築することを提言しましたが、これを提言で終わらせるのではなく、現実のものとするために、太田さんの民間と行政の両面にわたる経験が活きるものと思っています。

太田さんと私は共通項が多めなのですが(改めて経歴を拝見すると、大学卒業の年もビジネススクール修了の年も一緒でした!)、いい意味で私と大きく異なるのが林さんです。やや安直な例えですが、私が左脳派だとすると林さんは右脳派。社外取締役就任にあたって「『弥生』という社名は、社内公募で決まったと聞きました。旧暦の三月は、まだ寒さが残るけれど、一歩ずつ確実に春へと向かっていく。そんな未来に対する希望が想像される、いい社名だと思います」というメッセージをいただきました。こんなところにも、林さんらしさが詰まっています。一足先に社内イベントで登壇いただいたのですが、これまでの経営陣との違いを皆実感したのではないかと思います。そんな林さんですが、クリエイティブ・カンパニーであるロフトワークさんの共同創業者であり、起業家、経営者という弥生のお客さまを象徴する存在です(実際にロフトワークさんは長年の弥生ユーザーだそうです)。

太田さん、林さんという新たな応援団兼監督を迎え、弥生が今後どのような価値をお客さまに提供していくのか、それによってどのように成長していくのか、徹底的に議論し、実行していけることを楽しみにしています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:08 | TrackBack(0) | 弥生

2020年10月15日

奨学金返済支援手当

新型コロナウイルス禍の関係もあり本ブログでお話しする機会を逃していましたが、昨年秋より弥生では、奨学金返済支援手当の支給を開始しています。これは、大学(院)・高専での学業に伴って借り入れた奨学金の返済を会社として支援するというものです。対象者は1等級/2等級の正社員など大学を卒業してからの日が浅い = 奨学金の返済がまだ進んでいない、比較的ジュニアなメンバーとなりますが、最長5年間、奨学金の返済額と同額を会社から支給します。例えば、月々の返済額が2万円だとすると、2万円×12ヶ月×5年間で合計120万円の手当を支給することになります。

この制度を作ったのには、実はちょっとしたきっかけがありました。若手メンバーのYさんは、今どきにしては珍しいクルマ好き。ただ、残念なことに少し前に当て逃げの事故にあってしまったのです。怪我がなかったのは何よりなのですが、お気に入りの愛車(かなりユニークなクルマでした、笑)は全損。悪いことに車両保険に入っていなかったため、金銭的にも全損になったとのこと。新しいクルマを買うのか聞いたところ、奨学金の返済もありますし、将来も考えなければいけないので、クルマは買いませんとのこと。殊勝な顔をしていたことを覚えています。

気になったので人事と相談したところ、確かに最近は奨学金の返済がある人が増えているとのこと。こちらの記事によると、少し古い数字(2016年度)ですが、大学・短大生では2.6人に1人が奨学金を利用しているそうです。奨学金と言えば聞こえはいいですが、結局返済が必要な借金です。地道にでも返済ができればいいですが、過去5年間で奨学金を返済できない故の自己破産が延べ15,000人もなるとのこと。

私自身は幸いにして恵まれた環境にあり、進学する際にお金の心配をする必要はありませんでした。ただ、過去と比べ、大学への進学率が上昇し、大学に行く人が増える中で、奨学金に頼らざるを得ない人が増えているのかと思います。

弥生における給料は基本的に、アウトプットに対する報酬です。このため、昔ながらの企業であるような、住宅手当や配偶者手当といったものはありません。住宅の有無や配偶者の有無で報酬が変わるべきではないと考えており、その原資があるのであれば、本来のアウトプットに対する報酬として支払うべきだと考えているからです。そういった意味では、この奨学金返済支援手当は例外的な扱いです。大学を出て以降の住宅をどうする、配偶者をどうするは本人の意思ですが、大学から背負った借金は必ずしも本人の意思では左右できない部分だと考えているからです。実際にこの制度を利用する人は約50人程度。この制度ができて本当に助かったという声を多くいただいています。

それでも実は日本はまだマシな状況です。アメリカでは学生ローンが社会的な問題になっています。この記事によると、現在4,400万人を超えるアメリカ人が総額1兆5,600億ドル(約170兆円!)を学生ローンで借りているそうです。この額は、アメリカのクレジットカードの合計債務額の1兆2,000億ドルよりも多く(!!)、また自動車ローンの合計債務額よりも約5,210億ドル多い(!!!)のだそうです。

アメリカと比較して比較的廉価に教育を受けられることは日本の良さだと思いますし、多くの方が望む教育を受けられるような社会であるべきだと思います。教育を受けたことによる負担を多少なりともカバーし、機会の均等を実現することを、弥生として応援したいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 23:26 | TrackBack(0) | 弥生

2020年10月13日

API契約完了

既に弥生のウェブサイトで公開していますが、弥生は9月末をもって、弥生の口座連携機能(スマート取引取込)で連携している全ての金融機関とのAPI契約を完了しました。

2018年の銀行法の改正により、金融機関の口座情報を取得する事業者は、電子決済等代行業者として2020年9月末までに金融機関とAPI契約を締結することが義務付けられました。これに伴い弥生は、2018年12月に電子決済等代行業者としての登録を完了し、電子決済代行業者として、金融機関とのAPI契約を行い、従来のスクレイピング連携から、金融機関の預金残高や取引明細を正確かつ安全に取得できるAPI連携への切り替えを進めてきました。

本ブログで金融機関とのAPI接続について初めてお話ししたのが2018年4月のこと。ただ、実際には2017年の半ばには問題意識を持って動き始めていました。問題意識というのは、電子決済等代行業者N社と金融機関N社の間でそれぞれが個別に契約を結ぼうとすると、N対Nという膨大な数の契約交渉が必要になるという、いわゆる「N対N」問題です。N対N問題を回避するためには、電子決済等代行業者と金融機関が議論の出発点として活用できる標準的な契約案が必要です。そこから紆余曲折はありましたが、2017年11月には、全国銀行協会が事務局となるオープンAPI推進研究会が立上り、この場での議論を経て、改正銀行法対応のAPI利用契約の条文例をとりまとめることができました。

こうやって振り返ってみると、ここに至るまでに、実に3年以上という時間を要した訳です。正直時間はかかりましたが、それでも標準形となる条文例があったからこそできたこと。条文例がなく、いまだにN対Nで一から議論をしていたとすると、まだまだ終わる目処は立っていないでしょう。

ただ、実は今回何とか間に合わせた9月末というのは延長された期限です。もともとは法令上、5月末までの契約締結が求められていました。この時点では残念ながら一定数の金融機関との契約締結が間に合わず、一時的にでも口座連携を停止せざるを得ない金融機関が発生しそうだったのですが、新型コロナウイルス禍を受け、ギリギリで期限が延長されたという裏事情があります(これは新型コロナウイルス禍という不幸中の幸いです)。

締結したAPI契約に基づき、現時点で88の金融機関とAPI連携が完了しており、これは弥生会計(デスクトップ/オンライン)の口座連携機能をご利用のお客さまが登録している口座の約90%に当たります。残り50の金融機関に関しては、金融機関側での準備が整い次第順次API連携を進めていきます。

契約締結でも苦労しましたが、ぶっちゃけていうとお金がかかっているのもAPI契約の特徴です。一行一行でかかるコストはそこまで大きくなくても、100行以上と契約を結ぶとなると、年間を通じてかかるコストはウン億円です。これも弥生のお客さまが自動化のメリットを享受するため。これだけの労力とコストをかけて金融機関との口座連携を行っている訳ですから、もっともっと多くのお客さまに口座連携による自動仕訳のメリットを享受していただきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 20:56 | TrackBack(0) | 弥生

2020年10月09日

米国における新型コロナウイルス危機(その1)

先週参加したLendIt USA 2020ですが、お話しした通り新型コロナウイルス禍によってバーチャル開催となりました。日本では新型コロナウイルス禍は比較的落ち着いた状態に(今のところは)なっていますが、米国では新型コロナウイルス禍の収束の目処が立っておらず、米国経済全体に大きな影響が出ています。それはFinTechについても例外ではありません。

今回LendIt USAに参加して感じたのは、新型コロナウイルス禍はFinTechにとってまさに「危機」であるということ。これは私がいつも思っていることですが、危機は「危」と「機」の二文字、すなわち「危険」と「機会」で成り立っています。うまく乗り越えられなければ存在意義が問われる危険、一方で、進むべき方向を見極め、それに応じた方向転換をすることによって大きな成果を得られる機会、どちらにも転がりうるのが、今回の新型コロナウイルス危機であると考えています。

FinTechといっても、支払い/決済や、融資、資産運用など様々な分野が存在しますが、この中には新型コロナウイルス禍がまさに追い風になっている分野も存在します。例えば、オンラインショッピングの利用が広がる中で、支払い/決済に関するFinTechは大きな追い風を受けています。もともとデジタルの活用は日本よりも明らかに進んでいる米国ですが、その米国においても、今回の新型コロナウイルス禍によって、「デジタル・エコノミーへのシフトが5年から10年分の跳躍を遂げた」と言われています。今回のLendItでも登壇するパネリストによる「うちの親も遂にオンラインで買うようになった」といったコメントも複数見られました。ですから一口に支払い/決済といっても、リアルな店舗での利用が中心のSquareにとってはマイナス面がある一方で、オンラインでの利用が中心となるStripeは大いにプラスとなっているのではないでしょうか。

資産運用という観点では、3月には相場が大きく崩れたものの、4月には値段を戻し始め、夏には新型コロナウイルス禍前に近いところまで戻しています。金融緩和によるものであり、正直バブル感は否めませんが。米国でも特別定額給付金のような支援が実施されていますが、それをスマホ証券会社で投資に回すRobinhooder(名前はスマホ証券会社の代表格Robinhoodから)の存在が相場を押し上げる要因となっているとも言われています。そういった意味で資産運用という観点でも追い風と言えるかもしれません。

では融資という観点ではどうか。FinTech全体をカバーするカンファレンスとしてはMoney 20/20などいくつか存在しますが、LendIt USAはその名が示す通り、融資分野を中心としたカンファレンスです。だからこそ5回連続で参加してきている訳です。結論からお話しすると、融資分野においては、新型コロナウイルス禍はまさに危機です。危険でもあり、機会でもある。危険だけでもないし、機会だけでもない。何が危険で、何が機会なのか、次回お話ししたいと思います。
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2020年10月07日

一人時差

去る10/1に内定式を開催したと書きましたが、実は私、この日はあまり本調子ではありませんでした。というのは、9/30から10/2の3日間、NY時間で仕事をしていたからです。正確には、9/29の夜からですね。

私が毎年参加しているLendIt USAというイベントがあるのですが、今年はもともと5月にNYで開催される予定でした。しかし、新型コロナウイルス禍を受け、3月中旬には、9/30からの開催に延期されました。ただこの時点ではまだリアル会場での開催の予定。その後の特にアメリカでの新型コロナウイルス禍の広がりを受け、6月末には、今年に関してはバーチャルイベントとすることが発表されました。

バーチャルイベントなので、出張しなくていいのは大きなプラス。例年は4日程度は出張するため、その期間を空けるためのスケジュール調整はそれなりに大変ですが、今年はその点気軽でした。ただ、バーチャルイベントといっても、どこかのリアルな時間に基づいてスケジュールが設定されます。今回は、元々の開催会場であるNY時間(米国東部標準時)。米国東部標準時は日本との時差が14時間(夏時間)。ほぼ完全に昼夜逆転です。このため、9/29の夜23:45に最初のセッションが始まり、終わるのが翌朝6:00というのスケジュールを3日間続けることになりました。

もちろん出張の際にもこの時差を乗り越えなければなりません。それでも出張の時は現地の太陽がありますから、例えば朝やお昼に日光を浴びることである程度体を慣らすことができます。しかし、今回のような一人時差の場合、回りが寝静まった真夜中に活動を開始し、空が明るくなってくる頃に活動終了となります。これは正直結構辛かったです。

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身体的には辛かったですが、内容的には参加して正解でした。新型コロナウイルス禍がアメリカのFinTechに、もっと言えば社会全体にどんな影響を与えたのか、よく理解することができました。メディア等でも色々な情報は伝わってきますが、やはり自分で情報を取りに行く、もっと言えば空気を感じ、肌感覚を得ると見えてくるものが変わってきます。もちろん、リアル開催と比べると、得られる肌感覚はだいぶ薄まってしまうのですが。それでもリアルタイムで参加すると、コメントや質問などをリアルタイムで見ることができるため、ある程度は空気を感じることができます。

逆に言えば、空気を感じることを目的としないのであれば、日本の普通の時間に録画を見る方が簡単ですね。今回のイベントは全て録画され、数日後に(イベント参加者に = 有料で)公開されています。

LendIt USAへの参加はこれで5回目。登壇者も見知った人が多く、懐かしく感じました。リアル開催だと現地で隙間時間に情報交換できるのですが、今回はそれができないのが残念。ただ、彼らが色々な困難に直面しつつも活躍していることを確認できたことは良かったと思います。次回は、今回のLendIt USA 2020で見えてきたことについて少しお話ししようと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:16 | TrackBack(0) | アルトア