2020年11月17日

大きく変わった今年の年末調整

先週金曜日に弥生 21 シリーズが発売となりました。例年、新製品の発売後間もなくやってくるのが、年末調整シーズン。弥生のカスタマーセンターへのお問合せが目立って増えるのは12月に入ってからですが、本当は11月にはある程度目処をつけておきたいところです。特に今年は少し前にお話しした通り、ヤバいです。それだけ今年の年末調整は大きく変わっています。

年末調整では、従業員に何種類かの申告書を提出してもらい、その申告書に基づいて会社側で年末調整の計算をすることになります。少し前までは、基本となる申告書は3種類、ただし、これが2枚の帳票にまとめられていました。具体的には、1) 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書と2) 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書の2つです。

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これが平成30年分(2018年分)から、3種類の申告書で3枚の帳票に変わりました。1) 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、2) 給与所得者の配偶者控除等申告書、3) 給与所得者の保険料控除申告書です。本ブログで以前お話ししたことがありますが、2018年に配偶者控除が見直され、本人の所得に左右されることになったことから、それまでは、 保険料控除申告書と一体化していた配偶者特別控除申告書が分離され、新たに配偶者控除と配偶者特別控除に関する申告のための、給与所得者の配偶者控除等申告書(配偶者控除と配偶者特別控除の両方の申告を行うため、配偶者控除「等」申告書という名称になっています)として独立したためです。

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そして今年、令和2年分(2020年分)から、5種類(!)の申告書で3枚の帳票と変わりました。今回追加されたのは、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」という二つの申告書です。帳票としては、上記1)の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書と3)の給与所得者の保険料控除申告書は基本的に変わらないのですが、2)の給与所得者の配偶者控除等申告書に今回追加になった二つの申告書が合体され、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」というとにかく長い名前の帳票が生まれました。

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2018年の配偶者控除等申告書は配偶者控除の見直しによって生まれた訳ですが、今回の給与所得者の基礎控除申告書と所得金額調整控除申告書はなぜ生まれたのでしょうか。これは名前からある程度想像できると思いますが、基礎控除が見直されたため、そして所得金額調整控除という新たな控除ができたためです。

次回は基礎控除と所得金額調整控除についてお話しをしたいと思います。本ブログでは少し時間をかけて背景を含めお話ししたいと思いますが、一方でまだ年末調整に未着手という場合には、できるだけ早く着手することをお勧めします。今年の年末調整の変更点、そして何をすべきかについては、弥生の年末調整あんしんガイドで詳細に解説していますので、是非ご覧いただければ幸いです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:17 | TrackBack(0) | 税金・法令

2020年11月13日

弥生 21 シリーズ 本日発売

今日11/13(金)は、弥生のデスクトップアプリケーションの新製品、弥生 21 シリーズの発売日です。

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今ではデスクトップアプリケーションでも、あんしん保守サポートをご利用いただくことが一般的になっており、以前ほど新製品発売の重みはなくなってきています。

ちょうど今日はiPhone 12が、12/12 mini/12 Pro/12 Pro Maxとラインアップが一通り揃い、家電量販店でも賑やかに呼び込みを行っていました。ただ、お客さまがそれほど多かったかというと、うーん、どうでしょう。まあ、まだ時間が早かったということもありましたし、そもそもこの新型コロナウイルス禍において、人出も多くはないのだと思います。ただやはり、数年前のように新型iPhoneを見てみたいと人だかりができるような状況ではないですね。ただ、それが必ずしも悪いことかというとそうとは言えません。新製品がそれほど大きな話題にならなくても、スマホは着実に売れ続けていますし、何よりも人々の生活を変えています。

そういう意味では、(iPhoneと比べるのはだいぶおこがましいですが)弥生シリーズもある意味一般的なものとなり、新製品が出たからどうというものでもなくなってきています。

そもそも法令改正が続く中で、法令改正対応のためのマイナーアップデートは頻繁に行っています。新製品はそれに対し、改善が比較的大きいメジャーアップデートという違いでしかありません。また、いつ弥生シリーズをお買い上げ頂いても、あんしん保守サポートは基本的に初年度無償となっており、新製品発売前に購入したとしても、あんしん保守サポートによって新製品に自動的にバージョンアップできるようになっています。要は、法令改正にしっかり対応できるよう、パッケージに見える形かどうか(メジャーかマイナーか)は別として、いつでも最新にアップデートされていますし、またいつ買っていただいても、あんしん保守サポートにお入りいただいていれば、常に最新版を入手することができます。つまり、新製品発売のタイミングによらず、買いたい時が買い時になっています。

とはいえ、やはり新製品は全社の様々な部署の努力があって成り立っています。特に今回は新型コロナウイルス禍の中で準備を進めてきました。それがようやく全国の家電量販店で皆さまに手に取っていただけるところまで来た訳ですから、素直に嬉しいですし、ホッとしています。今日から全国で販売開始となった弥生 21 シリーズ、一人でも多くの方にご活用いただければと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:10 | TrackBack(0) | 弥生

2020年11月11日

新型コロナウイルス禍におけるお客さま対応

ある程度予想されていたことですが、本格的な寒さの到来とともに、新型コロナウイルス感染症の新規検査陽性者数が増加してきました。特に北海道では、弥生が判断基準としている人口10万人あたりの過去7日間の新規検査陽性者数が15以上を上回ったため、昨日から、弥生の札幌カスタマーセンターにおける対応レベルを再びレベル3としました。足元ではお客さまからのお問合せが極端に多い時期ではありませんので、これによってただちにお問合せ対応のサービスレベルが下がることはないと考えています。

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お客さまからのお問合せには明確な季節性があります。このスライドでは、四半期ごとのお問合せ件数を過去3年間(FY18/FY19/FY20)の推移として表しています。四半期ごとのお問合せ件数としては、一般的にQ2(1~3月)>Q1(10~12月)>Q3(4~6月)≒Q4(7~9月)という傾向があります。Q2はやはり2月から3月の確定申告に関連するお問合せが、そしてQ1は12月の年末調整のお問合せが集中します。

このグラフから見て取れる通り、お問合せ件数は基本的に年々右肩上がりです。これはお陰さまで弥生のお客さまが順調に増えているため。Q1でのFY18<FY19<FY20の件数の伸びは、基本的にはお客さま数の伸びと呼応しています。もっとも、お客さまからすれば、お問合せせずとも業務を完結できることがベストですから、弥生としてお問合せ件数が伸びること自体を良しとはしていません。より重視しているのは、お客さまあたりの平均お問合せ件数(コール係数と呼んでいます)であり、これは基本的に漸減傾向です。ただ、その漸減傾向をお客さま数の伸びが上回るため、お問合せ件数としても伸びる傾向にあります。Q2についても、やはりFY18<FY19<FY20の順で伸びています。上でお話しした通り、申告期限延長により3月は例年と比べお問合せが明確に減少しましたが、お客さま数の伸びもあり、四半期単位ではプラスとなっています。

特徴的なのはQ3ですね。Q3は見ての通り例年はお問合せが少ない時期です。ましてや今年は緊急事態宣言下ということもあり、減りそうなものですが、実際にはお問合せが増えました。考えてみれば当たり前で、緊急事態宣言下においても、お客さまの業務は続いていた訳です。特に今年は確定申告期限が延長されたこともあり、確定申告に関するお問合せの波が全体として3月から4月にシフトしました。さらに5月に入ると、持続化給付金に関するお問合せが増えました。弥生では、持続化給付金に関する特別窓口を用意して、お客さまのお問合せに対応しました。当然のことながらこれは例年は存在しないお問合せです。

Q4になって、ようやく前年対比で減少。これは前年が消費税率の引上げ/軽減税率の導入を目前にしてお問合せが増えたことからの反動であり、前々年と比べると増えていることが見て取れるかと思います。

ちなみに弥生にいただくお問合せのうち9割以上はお電話でのお問合せです。メールはもちろん、チャットでのお問合せもここ数年で増えてきましたが、ボリュームゾーンは電話。やはりその場で確実に解を得たいということなのかと思います。

足元ではお客さまからのお問合せが極端に多い時期ではありませんと書きましたが、11月も後半になると年末調整のお問合せが増加し、12月には爆発的に増えます。特に今年は年末調整の制度自体が複雑化し(これについては近々お話ししたいと思います)、お問合せが例年より増加することが予想されます。そんな中で対応レベル3への移行は正直しんどいところ。ただ、お客さまの業務が継続する中で、弥生としても足元だけではなく、年末も年始も、もちろん来年春もしっかりとお客さまのお問合せに対応し続けなければなりません。リスクをゼロにはできませんが、できるだけ低減できるよう対策を講じなければならないと考えています。対策の一つとして、スタッフが在宅でお電話に対応できるよう準備も進めています。本日時点では全ての課題を解消できておらず本格運用はできていませんが、年末調整のお問合せが本格化するまでに、必要に応じ在宅での受電ができるよう体制を整備したいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 23:16 | TrackBack(0) | 弥生

2020年11月09日

米国における新型コロナウイルス危機(その5)

接戦だった米国大統領選挙ですが、開票が進み、ようやくジョー・バイデン氏が当選確実となりました。当選確実を受けた集会では、“I pledge to be a president who does not seek to divide, but unify, who doesn’t see red states and blue states, but only sees the United States"(「私は、赤の国や青の国といった見方ではなく、合衆国のために、分断ではなく結束を促す大統領であることを誓う」)という演説がとても象徴的だったように思います。現時点でバイデン氏の得票が7,500万票に対し、トランプ氏は7,100万票。その差は数%に過ぎません。バイデン氏も、トランプ氏の続投を期待した人たちの意思を無視できないでしょう。分断の「危機」が、多様性の中での連帯を深め、世界から尊敬される国として復活する「機会」になることを願っています。

危機の中から機会が生まれる。先月初に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしてきましたが、まさに危機の中から機会が生まれているように感じます。融資という分野については、危険が先行し、有力な二社が買収されたということをお話ししましたが、同時に、機会も生まれてきています。そのきっかけになったのが、前回にお話ししたPPPという公的支援プログラム。

社員が数百人というFinTech企業、Kabbageが、300,000件という膨大な件数のPPPを実行した。この件数は、Bank of America(BoA)に次ぐ全米第二位の実績だそうですが、社員数で比較すると、Kabbageが300名程度、それに対してBoAは200,000名以上だそうですから、実に700倍近い差があります。Kabbageはオンラインで完結するPPP申込プロセスを短期間で構築したからこそ、少人数でこれだけの実績を出せた。またその結果として、従来型の金融機関が救いきれないUnderbanked層を支える存在となっています。Kabbageはこの夏にAmerican Express(AMEX)によって買収されることが発表されていますが、こういった実績を踏まえ、まずまずの評価での買収となったようです。

もう一つ新型コロナウイルス危機が機会となっているのは、動的なデータの重要性が再認識されたということ。これだけの環境の激変の中では、過去のデータは参考になりません。昨年の決算書を見たところで、それは足元での業況を確認するためにはほとんど役に立ちません。そういった中で、取引データや会計データなど、動的なデータをリアルタイムに近い形で分析し、与信判断に役立てることの必要性は、LendIt USA 2020における共通認識となっていました。一口に新型コロナウイルス禍と言っても、業種や地域によって、その影響の出方は変わります。皆が一律にダメージを受けている訳ではありません。また、一時的にはダメージを受けても、既に回復軌道に乗っている事業者も存在します。では、どうやって、融資できる/すべき事業者を判断するのか。それには動的なデータを分析するしかありません。

大手二社が買収され、おそらく今後はさらにプレーヤーの合従連衡が進んでいく(これも共通認識となっていました)。ただ、今後、プレーヤーの顔ぶれは変わっても、動的なデータをAIで分析するという方向は揺らがない、むしろその必要性が明確になったのが、今回の新型コロナウイルス危機なのだと思います。

翻ってアルトア。日本におけるオンラインレンディングは、良くも悪くも米国ほどの市民権は得ていません。3月から4月にかけて、やはり駆け込み需要は見られましたが、規模としては限定的でした。5月以降は公的支援が行き渡るようになり、需要が減っていますが、もともと先行投資フェーズですから、どちらにしても赤字という意味で、事業の存続が急に危ぶまれる訳ではありません。一方で、新型コロナウイルス禍の終わりが見えない中で、動的なデータで事業者の現況を把握することの重要性は明らかになったと強く感じています。新型コロナウイルス危機を危険にするのか、機会にするのか。アルトアの真価が問われています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:29 | TrackBack(0) | アルトア

2020年11月06日

青の国と赤の国

開票が進む米国大統領選挙ですが、まだ最終結果は見えていません。バイデン氏がリーチとも見えますが、開票はまだ続いており、バイデン氏が勝ったとされるアリゾナ州においてトランプ氏が僅差に迫る(このため、アリゾナ州についてはバイデン氏を当確とするメディアとまだ判断はできないとするメディアで判断が分かれているようです)、その一方で、トランプ氏優位だったジョージア州で開票率99.0%の段階でバイデン氏が僅か2,000票以内に迫るなど全く予断を許さない状況です。

前回は「米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません」と書きましたが、より詳細に見てみると実はもっと複雑です。WSJ(Wall Street Journal)で今回の選挙の特集記事が公開されていますが、記事の地図内の州をクリックしてみると、その州内の郡単位で青(民主党優勢)なのか赤(共和党優勢)なのかを見ることができます。上でお話ししたアリゾナ州やジョージア州を見てみると、アリゾナ州では、PhoenixのあるMaricopa郡やTucsonのあるPima郡は青(民主党優勢)であるのに対し、それ以外の郡には赤(共和党優勢)も目立ちます。ジョージア州に関しては、Atlantaおよびその近郊は明確に青、それ以外は赤に染まっている地域が目立ちます。

つまり、州レベルで言えば、東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」というのは大きな傾向としてはその通りなのですが、実際には州の中にも、都市部の「青の国」、逆に地方の「赤の国」という対立構造が生まれているのです。

私の両親はだいぶ昔にテキサス州のHoustonに住んでいたのですが、4年前の選挙でトランプ氏が選ばれたことを信じらないと言っていました。両親がかつて見ていた、成熟した大人の国のイメージからはかけ離れていたのかと思います。ただ、これもテキサス州の中を見てみると、何が起こっているのか見えてきます。Houston, Dallas, San Antonio, Austinという都市部は青、一方で地方(面積でいえば80%程度)は赤で埋め尽くされています。つまりHoustonに暮らしていて見える米国と、地方に暮らしていて見える米国は異なるのだと思います。私自身も4年前にまさかという感想を本ブログに残していますが、青の国のカリフォルニア、しかも都市部に暮らしていたからこそ、本当の米国の姿が見えていなかったのかと思います。

もっとも、青の国と赤の国の対立構造はここ10年〜20年で顕著になってきたのだと思います。これは、グローバル経済/IT経済が広がる中で、そのメリットを受けやすい人と、メリットを受けにくい人という意味での差が大きくなったということもあるでしょうし、また、それがソーシャルメディアを通じて目に見えるように(場合によっては、真実ではなくても、真実以上の説得力を持つように)なってきたということもあるのでしょう。

日本が同質社会であるのに対し、米国は多様性の国と言われます。米国は多様性を強みにしてきた国です。それが今、多様性を認めるのではなく、お互いに相容れない対立構造を深めつつあるように見えることに憂慮しています。ましてやその一因が自分も関わっているITの力にあるのかもしれないというのは非常に複雑な思いです。一方で、米国は危機を機会にしてきた国でもあります。今回の選挙の結果がどうなるのかはまだわかりませんが、どういった結果になるにせよ、多様性の中での連帯を深める方向に進むことを願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:30 | TrackBack(0) | その他

2020年11月04日

米国における新型コロナウイルス危機(その4)

今世界中が米国大統領選挙の開票を固唾をのんで見守っています。2016年も接戦でしたが、今回も接戦ですね。最終的に決着がつくまでには一波乱も二波乱もありそうです。WSJで"This Election Highlights How Divided the Nation Remains"(今回の選挙で、米国がいかに分断され続けているかが明確になった)という記事がありましたが、米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません。

ただ、どんな結果になるにせよ、米国のダイナミズムはそう簡単には失われないのだとも思っています。先月初に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話ししていますが、危機を危険だけでなく、機会にすることができているのも、米国ならではだと感じています。前回は、融資という分野については、危険が先行し、有力な二社が買収されたということをお話ししました。

ただ、融資という分野においても、機会もまた生まれています。そのきっかけになったのがPPPです。PPP、Paycheck Protection Program(給与保護プログラム)は、新型コロナウイルス禍に対する米国政府による中小事業者支援策として4月にスタートしました。PPPは、基本的には金利1%の融資なのですが、その資金を賃金、家賃等の支払いに充当した場合には、返済を免除されることになっています。日本でも雇用調整助成金(給与支払いを支援)、家賃支援給付金(家賃支払いを支援)、持続化給付金(事業全体を支援)と様々な事業者支援策が講じられていますが、これら全てを包含したような支援策といえます。

PPPは、4月に受付が開始され、8月8日に受付を終了しました。実績としては、5,460社のレンダー(金融機関)から、5,212,128件の融資が実行され、総額$525B(約55兆円!)が融資されたそうです。

ただ、PPPの滑り出しは問題含みでした。基本形としてはあくまでも融資ですから、PPPを受け付けるのは、金融機関。殺到する申込みに対して、金融機関がそれをさばけないことが大きな問題となりました。金融機関としては、従来からのお客さまを優先する、しかも、PPP対象となる事業者の中でも比較的大きな事業者が優先的に取り扱われていることが大きな問題となりました。実際、私が通っていたビジネススクールの卒業生メーリングリストでは、この時期、どの金融機関であればPPPを受け付けてもらえるかという情報交換が頻繁に行われていました。

この問題に対し、PPPを主管するSBA(U.S. Small Business Administration、米国中小企業庁)は、PPPの取扱いを金融機関だけでなく、FinTechプレーヤーにも認めるという英断を行いました。

ここで特に目覚ましい成果をおさめたのが、前回もお話ししたKabbageです。Kabbageでは、前々回にお話しした通り、自社での融資は停止したものの、その一方でオンラインで完結するPPP申込プロセスを短期間で構築し、圧倒的なボリュームのPPP申込みを受け付けました。PPPが終了した8月までに、実に300,000件のPPPローンを実行したそうです(提携金融機関経由の申込みも含む)。これはBank of America(BoA)に次ぐ、全米で第2位の実績となったとのこと。

特徴的なのは、BoAなどの従来型の金融機関でのPPPの1件当たりの金額が$100,000(約1050万円)を超える中で、Kabbageの平均金額は$30,000(約310万円)にも満たないということ。従来型の金融機関が従来からの比較的大きなお客さまを中心に対応したのに対し、KabbageのようなFinTechプレーヤーが従来型の金融機関が救いきれないUnderbanked層を支えたということが明確にわかる結果かと思います。

このようにKabbageをはじめとするオンラインレンダーが、短期間で効率よくお申込みを処理できる仕組みを構築し、実際に多くのPPPローンを手掛けたことは、オンラインレンダーならではの価値を示す結果になりました。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 23:52 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月29日

米国における新型コロナウイルス危機(その3)

前回に引き続き、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしたいと思います。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。一方で、融資という分野については、危険が先行しているということを前回お話ししました

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

そういった中で象徴的なM&Aが、この夏立て続けに発表されました。一つはEnovaによるOnDeckの買収、もう一つはAmerican Express(AMEX)によるKabbageの買収です。

EnovaによるOnDeckの買収は、正直に言って、追い込まれての買収という側面が強いかと思います。OnDeckは2014年12月に、オンラインレンダーとして初めて、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。上場時には$1.3B(約1,370億円 @ 105円/$)という時価総額だったOnDeckですが、業績は期待ほどには伸びず、近年は時価総額が低迷していました。今回Enovaによる買収の対価は$122M(約130億円)ということで、全盛期の1/10以下の評価で買収されたということになります。ただ、これが全て新型コロナウイルス禍によるものかというとそうではありません。もともと業績が低迷していたところに、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけたというのが正解だと思います。

ちなみに、Enovaという会社は私も初耳だったのですが、2000年代から消費者向けのローンをCashNetUSAといったブランドで提供してきた会社だそうです。Enova自身の時価総額は現時点で$600M(約630億円)弱ということで、かつては自分を上回る時価総額だった会社をこの機会にうまく飲み込んだということになります。ただ、米国経済の先行きが不透明な中ではかなり思い切った買収と言えるかと思います。

OnDeckのケースは、後ろ向きな側面が強いかと思いますが、AMEXによるKabbageの買収はそうとは言い切れない部分があります。KabbageはOnDeckとならぶ代表的なオンラインレンダーですが、OnDeckとは異なり、未上場のままでした。2017年にはソフトバンクによる出資を受け入れており、この際の評価額は$1.2B(約1,260億円)といわゆるユニコーンの一社でした。今回のAMEXによる買収は$850M(約900億円)と言われており、これだけを見れば、以前の評価額から下げての買収ということになります。もっとも、今回のAMEXによる買収にはKabbageの既存の貸出債権は含まれていない(その多くは既に証券化されているようですが)ため、それを含めた際のトータルでの評価額は判明していません。ただいずれにせよ、全盛期の1/10以下で買収されたOnDeckと比べれば、Kabbageはそれなりに高い評価をされて買収されたと言えるかと思います。

なぜOnDeckとKabbageで評価が分かれたのか。それはこの後にお話しする新型コロナウイルス禍によってもたらされた「機会」をどれだけ享受できる可能性があるかに密接にかかわっているように思えます。

それにしても、高い評価を受けることもあれば、一転低い評価を受けることもある資本市場ですが、評価が低くなった瞬間にすぐにM&Aの対象となるというのがいかにもアメリカだな、と思います。Kabbageの創業者は既に次のベンチャーを立ち上げているというのも、これもまたいかにもアメリカです。経済の先行きも政治の先行きも不透明な中でも株高が続いており、危うさも感じさせる米国市場ですが、このダイナミズムがある限り、一旦は屈むことはあったにせよ、時間はかかっても必ず盛り返すのだろうと思います。

次回は、いよいよ新型コロナウイルス禍によってもたらされた「機会」についてお話ししたいと思います。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 21:32 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月27日

米国における新型コロナウイルス危機(その2)

少し前に、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしました。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。

ただし、融資という分野については、危機が先行しています。新型コロナウイルス禍によって、景況が悪化する中で、KabbageOnDeckといったオンラインレンダーには、緊急避難的な資金繰りニーズによる申し込みが急増しました。ただ、Kabbageは「我々は"Emergency relief"(緊急救援)のために存在している訳ではない」ため、ニーズに応えられないということで、4月には融資をストップしました。また、OnDeckについても、「“Anticipatory” borrowing(先行きの悪化を予想しての駆け込み需要) が急増したが、応えきれるものではなく、4月中旬までに新規融資をストップした」とのことです。

これはオンラインレンダーに限ったことではありませんが、融資はその返済がなされる蓋然性が一定程度確保されているからこそ成り立つものです。特に米国では多くの事業者が事実上の活動停止に追い込まれる中で、返済がなされる蓋然性が確保できなくなりました。オンラインレンダーは、これまで、ややもすれば従来型の金融機関のサービスが行き届かない小規模事業者向けにサービスを提供してきました。いわば事業者版のUnderbanked(銀行に相手にしてもらえない層)の解消に価値を発揮してきたわけです。ただ、今回の経済環境の激変の中では、事業基盤がしっかりした事業者を多く抱えている大手銀行と比較し、事業基盤がぜい弱な小規模な事業者向けにサービスを提供しているオンラインレンダーは一番直接的に影響を受けたと言えます。

こういった状況の中で、米国においても公的な支援策が実行されました。これはもちろん必要なことですが、公的な支援策によって、事業者は一旦資金繰りに目処が立つ状況になり、そうなるとしばらくはそもそも融資の需要が減ることになります。

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

こんな中で、米国におけるメジャーなオンラインレンダーであるKabbage、OnDeckの両社とも買収されるということが発表されています。KabbageはAmerican Express(AMEX)によってOnDeckはEnovaによって買収されることが発表されています。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:30 | TrackBack(0) | アルトア

2020年10月22日

社員総会 2020

今年も先週金曜日に社員総会を開催しました。昨年は台風の接近にハラハラしながらの開催となりましたが、今年は今年で新型コロナウイルス禍のただ中。例年ですと、大規模なホテルの宴会場で開催するのですが、今年に関しては皆が集まっての開催は断念せざるを得ませんでした。

本ブログでもお話ししましたが、少し前にはカスタマーセンターの総会も開催しました。やはり会場に集まっての開催を断念し、オンライン開催としましたが、これは皆オフィス(カスタマーセンター)にいるものの、それぞれの席でオンライン参加という形式でした。これに対しカスタマーセンター以外では、リモートワークを主軸としているメンバーが多いため、今回の社員総会は私を含め、ほとんどの人が自宅からのオンライン参加となりました。

オフィスの自席からのオンライン参加は、まだ周りに人がいて、空気は共有している状態ですから、一体感はある程度残されていますが、皆がそれぞれ自宅からの参加となればどうなるか。正直心配しながらの開催となりました。

しかし、ふたを開けてみれば、今年の社員総会はサイコーでした(まあ、大体毎年サイコーと思っているのですが、笑)。オンライン開催ということもあり、あなた話す人、私たちはじっと聞く人という構図を軽減するため、プレゼンテーション形式は前半にとどめ、後半は、ファイアサイド・チャット形式(直訳すると暖炉脇での会話となりますが、少人数でのカジュアルな座談会)、パネルディスカッション形式など多様なスタイルを組み合わせました。結果的に、最後まで飽きることなく、と言うよりも、最後に向かって盛り上がっていったように思います(ということは冒頭の私のプレゼンは最低地点だったことになります、苦笑)。

Slack(チャットツール)に社員総会の専用チャンネル(書き込み板と言えばいいのでしょうか)を立上げたのですが、盛り上がり具合は、このチャンネルへの書き込みで一目瞭然でした。最後の「20年後の自分と弥生を考える」セッションはパネリストと(Slackを通じて)皆が一体化した感覚がありました。

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ビジネスセッションがだいぶ伸びてしまいましたが、19時過ぎからはお楽しみのビアバスト。予め特製のお弁当を各自の自宅に送付してあります(飲み物は定額を支給して各自で調達)。ビアバストの企画は毎年若手メンバーで準備するのですが、今年はオンライン開催ということで、だいぶ悩んだようです。ただ、その甲斐あって、ニュース番組企画もノベルゲームも盛り上がりました。ノベルゲームは皆の選択でゲームの進み方が変わるのですが、真面目なチーム弥生らしく、最初から最後まで正解を選び続けてしまい、最速でゴールにたどり着きました。ゲームを楽しむという意味では、たまにはわざと外すことによって脇道を歩みたいところなのですが、ついつい正解を選んでしまう。これも弥生らしさですね(笑)。

最後は恒例の大抽選大会。そして締め。この間ずっとSlackの流れるスピードが速いこと速いこと。オンライン開催でしたが、ある意味例年以上に一体感を感じることができました。ビジネスセッション、ビアバスト共に準備頂いた皆さん、本当にお疲れさまでした。チーム弥生でFY21も頑張りましょう。
posted by 岡本浩一郎 at 21:38 | TrackBack(0) | 弥生

2020年10月20日

ようこそ弥生へ(社外取締役の就任)

昨日10/19付けで弥生は太田直樹さんと林千晶さんを社外取締役として迎えました。現在の弥生の株主はオリックス(と超マイナーですが私)であり、会社の所有と経営は完全に分離されています。取締役会のうち3名は社外取締役として株主から迎えており、経営者の暴走を防げるガバナンス体制になっています。しかし、オリックス傘下になってからほぼ5年となり、いい意味でも悪い意味でも居心地のいい取締役会になっています。今後も弥生が健全に継続的に発展していくために、社外の有識者の目が必要だと考えていました。

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今回社外取締役に就任いただいた太田さんと林さんは、二人とも従前からの私の知人です。ただ、言い方はなかなか微妙ですが、友人と言えるほど親しいわけではありません(笑)。あまりにも親しい間柄であれば、社内取締役と社外取締役とのいい意味での緊張関係を築けませんからね。それだけに、社外取締役への就任を打診する際にはドキドキしながらでしたが、幸いなことにお二人ともご快諾いただくことができました。

太田さんは私と同様BCG(ボストン コンサルティング グループ)出身。もっとも滞在期間が短かった私と比べ、太田さんはパートナーまで務められていますので、比較になりませんが。私のBCG在籍中は残念ながらプロジェクトをご一緒する機会はありませんでしたが、BCG卒業後にはBCGのアラムナイパーティなどでたまにお話しする機会がありました。今年6月には、弥生は他4社と共同で、確定申告や年末調整などの社会的システムをデジタルを前提として再構築することを提言しましたが、これを提言で終わらせるのではなく、現実のものとするために、太田さんの民間と行政の両面にわたる経験が活きるものと思っています。

太田さんと私は共通項が多めなのですが(改めて経歴を拝見すると、大学卒業の年もビジネススクール修了の年も一緒でした!)、いい意味で私と大きく異なるのが林さんです。やや安直な例えですが、私が左脳派だとすると林さんは右脳派。社外取締役就任にあたって「『弥生』という社名は、社内公募で決まったと聞きました。旧暦の三月は、まだ寒さが残るけれど、一歩ずつ確実に春へと向かっていく。そんな未来に対する希望が想像される、いい社名だと思います」というメッセージをいただきました。こんなところにも、林さんらしさが詰まっています。一足先に社内イベントで登壇いただいたのですが、これまでの経営陣との違いを皆実感したのではないかと思います。そんな林さんですが、クリエイティブ・カンパニーであるロフトワークさんの共同創業者であり、起業家、経営者という弥生のお客さまを象徴する存在です(実際にロフトワークさんは長年の弥生ユーザーだそうです)。

太田さん、林さんという新たな応援団兼監督を迎え、弥生が今後どのような価値をお客さまに提供していくのか、それによってどのように成長していくのか、徹底的に議論し、実行していけることを楽しみにしています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:08 | TrackBack(0) | 弥生