2020年08月25日

レジ袋有料化

デジタル化に関する比較的固い話が続いているので、たまには少し柔らかめの話でも。既に皆さまご承知のことと思いますが、この7月1日から、レジ袋の有料化が始まりました。

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レジ袋の有料化を受けて、私が持ち歩くようになったのが、こちら。Sea to Summitというアウトドア用品メーカーのUltra-Sil Nano Shopping Bagというエコバッグです。MyXというアウトドアショップ(おススメです)で見かけて購入しました。ご覧の通り非常に小さく、持ち歩くのが簡単。カジュアルな格好であれば、ポケットに入れておいても気になりません。重さは30gしかありません。

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一方で、これをひらくと、容量25リッターのエコバッグになります。結構色々なものを入れても大丈夫。メーカーによると20kgはいけるそうです。20kgと言えば、2リッターのペットボトル10本分ということになります。この種のバッグでは、ひらくのは簡単だけど畳むのが意外に手間というケースも多いのですが、このバッグの場合、畳んだ時に外側となる小袋に無造作に突っ込んでいくだけです。

ということで、結構お気に入りで持ち歩いているのですが、ちょっとした買い物の時(家からちょっとコンビニに行く時ですとか、会社でお昼にお惣菜を買いに行く時)には、しまった持ってこなかったということが多いです。これも慣れの問題でしょうか。

ところで、レジ袋の有料化は何のためなのでしょうか。プラスチックの使用量を削減するため? ゴミを減らすため?

経済産業省の広報資料(pdf)によると、「海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの解決に向けた第一歩として、プラスチック製買物袋の有料化を通じて、マイバッグの持参など、消費者のライフスタイルの変革を促すことが目的です」とされています。またこちらのwebサイトでは、「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」ともされています。

これはなかなかに微妙な表現で、考えることや、ライフスタイルを変えることが目的だけれども、これによって海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化が解消する一助になるとは言っていないのです。

私自身で言うと、これまでレジ袋はもらっていましたが、それらは多くはゴミ袋として活用していました。横浜市はかなり真面目にゴミの分別をおこなっている(pdf)こともあり、分別してゴミを出すためにそれなりの数の袋が必要になります。今回、レジ袋が有料化され、レジ袋をもらわないことによって、ゴミ袋が足りなくなり、それは別途買うことになりました。ということは、少なくとも私のケースで言えば、プラスチック袋の使用量はあまり変わっていないのです。また、特に日本においては、海洋プラスチックごみは比較的少ない(ましてやその中に占めるレジ袋はもっと少ない)とされており、問題がないという気はないのですが、レジ袋の有料化は海洋プラスチックごみ問題の解消にはほとんどつながらないというのが実態かと思います。要は、(意味がないとは言いませんが)直接的な効果としては限られる、だからこそ「本当に必要かを考える」「ライフスタイルを見直す」というふわっとした目的になっているのかと思います。

今回少し調べてみてなるほどな、と思ったのが、レジ袋の有料化は国際的な動きですが、その背景にあるのは、ゴミ問題というよりは、脱石油社会へのシフトがあるということ。「プラスチック容器やレジ袋といった石油由来の資源のみならず、発電目的での利用など、あらゆる分野において脱石油を進めるというのが国際社会の流れ」。レジ袋の有料化が全く意味がないとは言いません。ただ、国際社会の流れを踏まえると、レジ袋の有料化だけをやってもしょうがないんですよね。レジ袋の有料化を一つの手段として、本当に目指すことは何なのか、それがもっとしっかりと議論され、発信されるべきなのではないかと思います。

あれ、少し柔らかめの話のはずが、結局固い話に着地してしまいました。これも性格でしょうか(苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:51 | TrackBack(0) | その他

2020年08月21日

短期的に取り組むべき領域での方向性(その2)

その2ということで、前回からの続きです。2023年10月にインボイスが義務化されることを単なる法令改正で終わらせるのではなく、業務のデジタル化によって大幅な効率化を実現する機会ととらえ、この時点までに多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムを構築しなければなりません。

多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムの構築のためには、まず電子インボイスの仕様の標準化が不可欠です。当然のことながら、標準仕様は、大企業から中小事業者まで、広く利用できるものでなければなりません。また、実際に標準仕様に基づき、電子インボイスが広く利用されるためには、標準仕様に対応した業務ソフトウェア、また、電子インボイスを送受信するための通信ネットワークが、大企業から中小事業者まで、それぞれのニーズにあわせ、またそれぞれの事業規模に見合ったコストで利用できるようにしなければなりません。繰り返しになりますが、標準化の実現に向けて、関係者間で電子インボイスの仕様検討・実証を行うために先月立ち上がったのが、電子インボイス推進協議会です。

これまで商取引のデジタル化という観点では受発注業務を中心としたEDIが主眼となっており、請求支払業務はその付随業務と位置付けられてきました。しかしこの機会を活かせば、むしろ電子インボイス・システムを先行させ、それを発展させることによって、中期的に、受発注業務まで含めた商取引全体のデジタル化を図ることもできるのではないかと考えています。

ただし、電子インボイスの仕組みが必要だ、標準化が必要だと言うのは簡単なことですが、実際にはそれほど簡単なことではありません。

電子インボイス・システム、さらには商取引全体のデジタル化を図る上では、これまでの取り組みの反省を活かさなければなりません。今回の提言の一貫した主張ですが、単なる紙の電子化ではなく、プロセス全体のデジタル化を目指すべきだと考えています。これまでの電子帳簿は基本的に、あくまでも原点に紙があり、その電子化を目指してきました。だからこそ、電子化された紙の真正性を担保するために、個々の電子化された紙にタイムスタンプを付与するという発想になっています。しかし、最初からデジタルデータであり、それが一貫してデジタルデータとして処理されるのであれば、例えば中間地点における処理ログでも真正性は担保できるはずです。

また、EDIが普及していないことに対する反省として、利用に向けた明確なインセンティブを設計しなければなりません。もちろん、デジタル化自体が業務効率化のようなメリットを生むのが本筋ですが、利用が一般化しない限りデジタルと紙の併用になってしまい、十分なメリットが生まれにくいこと、またメリットの多寡は事業規模に連動することから、特に中小事業者においては、外的なインセンティブが必要だと考えています。プロセス全体のデジタル化であり、社会的コストの低減という観点では、電子インボイスにより、より公平公正な納税が実現されるメリットを、事業者に対するインセンティブとして還元するという考え方もあるのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:45 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月19日

短期的に取り組むべき領域での方向性(その1)

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

これまでに、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。それを踏まえ、短期的に取り組むべき領域として、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域、具体的には、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立とお話ししました。一方で、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等、既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは、多大な労力と、結果として時間はかかりますが、それだけに非常に大きな社会的メリットを生むことが期待されるとお話ししました。今回は、短期的に取り組むべき領域での方向性についてもう少しお話ししたいと思います。

前々回にお話ししたように、短期的に取り組むべき領域としては、2023年10月のインボイス義務化に向けた標準化された電子インボイスの仕組みの確立 、さらにインボイス以外も含めた商取引全体のデジタル化があります。

ただ、実はこれまでも商取引の電子化、および電子化による業務効率化という観点では、EDI(Electronic Data Interchange)という電子的な受発注の仕組みの利用の必要性が叫ばれてきていますが、現時点では大企業を中心とした利用にとどまり、中小事業者での利用は進んでいません。これは、利用に向けた明確な期限がない中で、標準化に関する動きが弱かったこと、また、大企業を中心とする発注者側のメリットが優先され、中小事業者を中心とする受注者側にとっての利用の明確なメリットを示せていないことが影響しているものと考えられます。

今回、2023年10月にインボイスが義務化されることにより、明確な期限が設定された状態となっていますし、また利用のメリットも示しやすくなっています。紙のインボイスであれば、発行者/受領者ともにこれまで以上に業務が煩雑化しかねませんが、電子インボイスであれば、データとして前工程から後工程まで一気通貫で処理を行うことによって、発行者側での請求書発行業務〜入金消込業務、受領者側での請求書管理業務〜支払業務までを大幅に効率化することが可能になります。つまり、業務はそのままで法令改正に最低限対応することで終わらせるのではなく、業務をデジタルを前提として見直すことにより大幅な効率化を実現することが可能になるはずです 。

法令改正を、嫌々対応しなければならない後ろ向きなものと考えるのか、あるいは業務のデジタル化によって大幅な効率化を実現する機会ととらえるのか。これを機会ととらえ、この時点までに多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムを構築すべきである、というのが今回の提言の一つの柱となっています。そしてそのために先月立ち上がったのが、電子インボイス推進協議会という訳です。

(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:37 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月17日

With 新型コロナウイルス

弥生では、7月1日に新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応レベルを全社でレベル2へと引き下げました。これは、6月18日に安倍総理が社会経済活動のレベルをもう一段引き上げることを発表したこと、またこれを受け、6月19日より、一部の大規模なイベントを除き休業要請は全面的に解除され、また都道府県境をまたぐ移動の自粛要請についても全面解除されたことを受けたものです。

その後、各種自粛要請が解除された約2週間後から新たな検査陽性者数が増え始め、7月の半ばには顕著に増加するようになりました。ただ、春と異なるのは、検査陽性者数の増加ペースと比較し、重症者数や死亡者数の増加が緩やかであるということ。これは、今回の検査陽性者数の増加は、検査の件数が大きく増えていること、その中で、症状のない方を多く捕捉しているためと言われています。もともと緊急事態宣言が解除された段階で、検査陽性者数がある程度増加することは想定されていました。ただ、それが爆発的な増加には至らず、増減を繰り返しながら医療体制の崩壊の手前で留まれるかが重要だと考えています。

7月中は事態の推移を観察してきましたが、検査陽性者数の増加ペースが緩まないことから、8月4日に、東京と大阪のオフィスについて、再び対応レベルをレベル3とすることとしました。この際に判断基準としたのが、各都道府県での人口当たりの新たな検査陽性者数。各地でどれぐらい感染が拡大しているかは、当然のことながら、人口比で考える必要があります。また、一日単位では報告のない日、あるいは逆に二日分がまとめて発表されることもあり、一日では揺れ幅が大きいため、一定期間での傾向を見るという観点から、過去7日間の新規検査陽性者数を基準とすることにしました。

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正直仮置きではあるのですが、ひとまずは人口10万人あたりの過去7日間の新規検査陽性者数が15以上(100万人あたりでは150以上)を警報値と設定した結果、東京と大阪について、弥生の対応レベルをレベル3とすべきと判断しました。その後、福岡も警報値を超え、同様にレベル3となりました。今から振り返ると、この基準で言えば数日前には警報値を超える地域が出ていましたから、もう数日間は判断を早めるべきだったと反省しています。ただ、仮置きで設定したこの基準ですが、その数日後(8月7日)に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が発表した感染状況の判断基準において、過去7日間の新規検査陽性者数が15以上がステージ3(感染急増段階)と判定される一つの基準として採用されており、意外に妥当な基準だったと言えるかと思います(参考までに同値で25以上がステージ4: 感染爆発段階)。

一方で、検査陽性者数の増加が顕著だった東京や大阪などでは、8月に入ってしばらくしてからは、若干の減少傾向が見られるようになりました。大阪では8月11日から15を切る状態が続いています。警報値である15前後を行ったり来たりした結果、対応レベルをコロコロと切り替えるのは、オペレーション上難しいため、数日間連続で警報値を切った場合に対応レベルを引き下げることにしていますが、5日連続であれば既に、7日連続としても今日の数値次第で対応レベル引き下げという判断になります。東京と福岡についても、5日連続であれば、今日の数値次第で対応レベル引き下げという判断になります。

With コロナというのはこういうことなのだろうと思います。残念ながら新型コロナウイルスの脅威が近い将来すっきりとなくなることはありません。感染状況をしっかりと観察し、適切な感染拡大防止措置を取りつつ、社会経済活動をしっかりと継続していく。例えがよくないとは思いますが、医療体制という受け皿が溢れないように、蛇口の開け閉めを繰り返していく。正直悩ましい日々ですが、これも新常態(New Normal)なのだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:33 | TrackBack(0) | 弥生

2020年08月13日

中長期的に取り組むべき領域

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

これまでに、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。前回は、短期的に取り組むべき領域として、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域、具体的には、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立とお話ししました。今回は中長期的に取り組むべき領域についてお話ししたいと思います。

今回の提言は、短期的な視野には留まっていません。時間をかけてでも、社会的システムの根源からの見直しに踏み込むべきだと考えています。既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは、多大な労力と、結果として時間はかかりますが、それだけに非常に大きな社会的メリットを生むことが期待されるからです。こういった領域については、短期間で拙速に変えようとするのでもなく、一方で変えることは所詮無理と諦めるのでもなく、5〜10年の時間軸での道程表(ロードマップ)を作製した上で、計画的にデジタル化を進めていく必要があると考えています。

これに該当するのは、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等です。確定申告制度と年末調整制度については、戦後すみやかに、社会保険の各種制度については、戦後の高度成長期に整備されたものですが、いずれも、ITが一般に利用できない時代に整備が始まっており、当然のことながら、紙を前提として業務プロセスが構築されています。

現在は、行政機関におけるIT活用は当然のものとなっていますし、民間におけるIT活用も一般化しています。しかし、これら業務については、一部情報が電子データとして扱われるようにはなってきていますが、全体としては、紙を前提とした業務プロセスのまま変わっていません。時間はかかっても、デジタルを前提とし、デジタルで最適化された業務プロセスとして再構築することによって、行政/民間を通じて大幅な社会的コストの低減を図るべきだと考えています。

先般電子インボイス推進協議会が立上り、お蔭さまで非常に注目もいただいています(既に多くの入会希望をいただいています)。これはこれでもちろんしっかりとやっていく。しかし私の本当の想いは電子インボイスに留まりません。確定申告や年末調整など、長年慣れ親しんだ、逆に言えば時代に合わなくなってきている社会的システムをデジタルの力を活用して圧倒的にシンプルにする。正直時間はかかると思います。それでも何もしなければ何も変わらない。時間はかかっても、少しずつでも、前に進めたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:29 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月11日

短期的に取り組むべき領域

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

前回までは、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。今回と次回で、取り組むべき領域についてお話ししたいと思います。

確定申告や年末調整などの社会的システムのデジタル化は、取り組むべき領域が多岐にわたりますし、実現までに長期の時間を要する領域も存在します。特に税制のあり方を含め、社会的システムの根幹から見直すことが必要であれば、充分な検討と議論が必要となり、その実現までには長期の時間を要することが想定されます。

BD研究会の議論の中では、日本の法人税収入は約12兆円であり、これを申告法人数で割り戻すと40万円強になることから、今のように複雑な法人税の計算をするよりも、売上高もしくは従業員数、事業所数などに応じて法人税を均等割化し、思い切ってシンプルな税制にすることも可能なのではないかという案も出ました。過激と言えば過激な案ですが、シンプルな仕組みにして社会的コストの最小化を図るという観点では議論の余地はあるはずです。ただこの場合、充分な検討と議論が必要なことは言うまでもありません。一方で、法令等の大幅な見直しを必要とせずに、短期的にデジタル化を実現しうる領域も存在します。このため、短期的に取り組むべき領域と中長期的に取り組むべき領域を明確化し、優先順位を付けながら計画的に進めるべきであると考えています。

では、まず短期的(この先2〜3年)に取り組むべき領域は何か。それは、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域ではないでしょうか。確定申告や年末調整など、既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは一朝一夕では困難ですが、現在進行形で、もしくはこれから業務プロセスの構築が進む領域については、最初からデジタルを前提とした業務プロセスを構築することが相対的に容易だからです。

まさにこれに該当するのが、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立です。インボイス義務化に際し、紙だけを前提として業務プロセスを構築するのではなく、当初から電子インボイスを前提とし、デジタルで最適化された業務プロセスを構築すべき。これが、先般の電子インボイス推進協議会の設立につながっています。インボイスは、商取引では下流工程にあたりますが、電子インボイスによる業務プロセスを構築することにより、中期的には上流工程、すなわち受発注も含め、商取引全体のデジタル化が進むことも期待されます。つまりインボイス制度を単なる法令改正対応で終わらせるのではなく、電子インボイスの活用によって、最終的には商取引全体を通じての生産性向上を目指すべきだと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:39 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月06日

基本的な方向性

前回は、デジタル技術を浸透させることで社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るためには、今ある業務プロセスの電子化(Digitized/Digitization)を図るだけでは不十分であり、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalized/Digitalization)が必要だということをお話ししました。もっと言えば、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化を実現するためには、年末調整業務のように、税制のあり方も含め、社会的システムの根幹から見直すべきだと考えています。

デジタル化に推進するにあたっては、デジタルならではのメリットを最大限発揮できるように、以下の4つのポイントを踏まえる必要があります(提言書第3章)。

1. 発生源でのデジタル化
情報は発生源においてデジタル化する。近年ではPOSでの販売管理や、給与計算ソフトでの給与計算など、情報は当初からデジタルデータとして処理されていることが一般的ですから、これら発生源でのデジタルデータを起点とします。

2. 原始データのリアルタイムでの収集
発生源で生まれたデジタルデータは、情報量を維持するという観点で、合理的な範囲でそのまま、かつ、リアルタイム(もしくはリアルタイムに近い形)で次のプロセスに引き渡す 。

3. 一貫したデジタルデータとしての取り扱い
発生源で生まれたデジタルデータは、業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。事業者内はもちろん、事業者間の業務プロセス、さらには行政への申告・申請等、ひいては行政内の業務プロセスにおいて、紙などのアナログを経ず、一貫してデジタルとして取り扱うべきです。
データは、XMLのように、後工程でのデジタルでの処理を前提とした構造化された(Structured)フォーマットとする。逆に紙の様式を模したデータフォーマットである必要性はありません。つまり、これまでの取り組みのように、事業者から行政の申告・申請等を中心とした紙の様式の電子化にはとどまりません。

4. 社会的コストの最小化の観点での、必要に応じた処理の主体の見直し
発生源から行政まで一貫してデジタルデータとして取り扱う中で、どの時点でどのような処理を行うのかは、必要に応じ、全体最適の観点で見直しを行うべきです。例えば、年末調整業務の処理主体を事業者から行政に移管することも検討すべきだと考えています。

今回は結構固い内容になってしまいました。最初から最後までデジタルで一気通貫で処理するなど、改めて見ると当たり前と言えば当たり前の話なのですが、デジタル化に際しての基本的な方向性を確立することは非常に重要だと考えています。次回は、より具体的に、どんな領域でデジタル化に取り組むかについてお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:00 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月04日

提言の背景と課題認識

「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」の発表から少し時間が経ってしまいましたが、この提言のきっかけの一つとなった海外の事例(オーストラリアイギリスイタリアシンガポール)の紹介も一通り済みましたし、また、この提言から生まれた電子インボイス推進協議会も正式に設立されて動き出した、ということで、そろそろ腰を据えて提言の中身についてお話ししてみたいと思います。

提言の背景や課題認識(提言書第1章)については、実のところ、昨年12月に本ブログでお話ししています。弥生が事業者のお手伝いをしている確定申告や年末調整、あるいは社会保険の手続き、これらは全て昭和の時代の仕組みです。コンピューターがまだまだ一般的とは言えない時代の仕組みですから、あくまでも紙を前提とした仕組みです。確かにこれらの業務の電子化は進んできましたが、デジタル化は進んでいません。電子化とデジタル化の違いは何か。今ある業務プロセスはそのままで、媒体だけを電子データにしたのが電子化(Digitized/Digitization)、これに対し、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すのをデジタル化(Digitalized/Digitalization)と定義しています。

確かに、e-Taxやe-Govなど、電子申告、電子申請の仕組みは着実に普及しており、これは特に行政コストの低減につながっています。ただ、それはあくまでも紙を電子データ化したに過ぎません(つまり電子化に過ぎません)。業務プロセス自体は昭和の時代から何も変わっていない。事業者からすると、電子化によってラクになった実感はなかなか得られていません。下手をすれば面倒になった、大変になったと思われていても不思議ではありません。デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化によって業務そのものをシンプルにする必要があると考えています。

提言のもう一つのきっかけとなった年末調整業務はその典型例です(第2章)。年末調整業務は、戦後に税制のあり方が根本から変わる中で導入されました。納税者が自ら申告をする申告納税が原則となったものの、一般個人(給与所得者)には税制に関する知識が十分ではないこと、また、事務処理能力が十分でないことを踏まえ、事務処理能力が相応にあるであろう事業者が、給与所得者の実質的な申告義務を肩代わりすることになり、その際には、コンピューターが一般に利用できない時代を反映し、全てが紙を前提とした業務として整備されました。年末調整業務はそれ以来法令改正によって格段にその複雑度は増しつつも(前回も少しお話ししましたが、今年の年末調整はヤバいことになります)、仕組みは基本的に変わっていません。

しかし、海外事例でお話ししたオーストラリアのSingle Touch Payrollのように給与支払情報をリアルタイムにデジタルデータとして報告する仕組みがあればどうでしょうか。事業者はデータの収集および報告はするものの、年末調整業務自体はデジタルデータに基づいて行政で一元的に行うという可能性も生まれてきます。今の業務のあり方を前提にするのではなく、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すのが、今回の提言で目指すデジタル化です。デジタル技術を浸透させることで社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図る。これはある意味、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)と言えるかと思います。

なお、付言すると、基本的に紙を前提とした仕組みの限界は、今回の新型コロナウイルス禍でも明らかになっています。2023年10月にはインボイス(適格請求書等)制度が導入されることが既に決まっていますが、With コロナの時代において、紙が前提では成り立たないことは明白です。だからこそ、今回の電子インボイス推進協議会があるわけです。
posted by 岡本浩一郎 at 19:27 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年07月31日

リモートでも着々と

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前回お話しした電子インボイス普及に向けた取り組みである電子インボイス推進協議会ですが、翌日の日経朝刊1面(!!!)で取り上げられました(電子版はこちら)。以前弥生がオリックスグループに参画する時は、日経夕刊の1面デビューを果たしましたが、やはり朝刊1面は重みが違います。ちなみにこの記事自体は電子インボイス推進協議会だけを取り上げたものではありません。新型コロナウイルス禍の中で日本のデジタル化が遅れているという問題意識から、日経が従前から調査を進めていたところに、たまたま電子インボイス推進協議会の話がうまくはまったというのが実態です。電子インボイス推進協議会が設立された直後にイブニングスクープとして電子版に掲載され、翌朝に本紙に掲載となりましたので、あくまでも結果論ですが、タイミング的には完璧でした。

既にお話しした通り、電子インボイス推進協議会は、社会的システム・デジタル化研究会(Born Digital研究会、BD研究会)の提言に基づいて設立された組織です。BD研究会は、昨年の12月に初回の会合を開催し、以降5回の会合を経て提言を取りまとめました。初回の会合は当然のごとく物理的に集まって行われました(@ヤヨイヒロバ)し、2回目(1月下旬)もSAPのオフィスで開催されました。ここまでは順調でしたが、雲行きが怪しくなったのは、2月から。3月上旬に予定されていた3回目は一旦キャンセル。事例調査のために同じ週に予定していたシンガポール出張は見送りとし、ウェブ会議でのヒアリングとなりました。

ウェブ会議ベースに切り替える判断をして、改めて3回目を開催したのが、4月8日(緊急事態宣言発出の翌日)。この時点までには、各社ともウェブ会議に対応できるようになっており、民間参加者については、問題なくウェブ会議で参加することができました。ただ、行政のオブザーバーについては、ほとんどの方が環境的にウェブ会議参加が難しいということで、事前に事務局が電話でヒアリングを実施し、意見を集約する形で対応しました。以降4回目もウェブ会議で、そして緊急事態宣言が解除されてからの初開催となった5回目はウェブ会議を原則としつつも、どうしても対応が難しい方には弥生の会議室からウェブ会議に参加いただく形で開催し、なんとか提言の取りまとめにこぎつけることができました。

当初は戸惑いながらでしたが、ウェブ会議でも何とかなるな、というのがやってみての実感です。むしろ、各社のトップクラスにご参加いただくにあたって、移動の負担がなく、スケジュールの調整もしやすいというメリットもありました。ただ、1回目/2回目を会場開催しており、その中で関係性が確立された上だったからやりやすかったというのもあると思います。最初からウェブ会議、なおかつ皆初対面であれば、ハードルはより高かったでしょう。また、皆さんに事前に宿題をお願いし、論点をある程度明らかにした上で、会議に臨んだこと、また、言い出しっぺの責任として、私の方で積極的にファシリテートさせていただいたこともプラスに働いたと思います(もっともこれはオフラインでの会議でも同じことですね)。

こちらは社内の取り組みになりますが、メンバー全員がリモートワークの中で、調整を続けながら準備を進めてきたのが、弥生が本日公開した年末調整に関する特設サイト「年末調整あんしんガイド」。年末調整??? (関東は)まだ梅雨も明けていないのに、と思われるかもしれませんが、今年の年末調整は一言で言って(言葉を選べという感じですが)ヤバいんです。相当複雑になります。早めに変更点を理解していただき、備えを始めていただきたいという想いから、このタイミングでの公開となりました。

今年の年末調整はとにかくヤバいということで、昨年から準備を進めてきましたが、やはり春先からは皆が完全リモートの中で準備を進めることを強いられました。当初は不慣れもあったと思いますが、意外に(?)順調に準備は進められたとのこと。ようやく今日、公開の運びとなりました。なお、今年の年末調整のヤバさについては、本ブログでもまた改めてお話ししたいと思います(お話しすべきことが積み上がっています…)。

リモートワークによって、残念ながら制約を受けていることもそれはそれであり、開発スケジュールの見直しなども発生しています。しかし足元でも(緊急事態宣言を解除したことである程度想定されたことですが)検査陽性者数が増加している中で、今後もリモートワークをうまく活用し、それでもしっかりと成果を出せるようにしなければなりません。そういった意味で、この春、悩みながら、それでも着々と進めてきたことが、徐々にではありますが、形になってきたことを嬉しく思うと同時にホッとしています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:30 | TrackBack(0) | 弥生

2020年07月29日

電子インボイス推進協議会


電子インボイス推進協議会(E-Invoice Promotion Association, EIPA)は、先日お話しした社会的システム・デジタル化研究会(BD研究会)の提言「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」を踏まえ、2023年10月のインボイス制度開始に向け、標準化された電子インボイスの仕組みの確立に取り組むための組織として設立されました。2023年10月というと、まだまだ先じゃないか、と思われるかもしれませんが、システムを開発・提供する立場からすると、もうすでに、「今そこにある危機」です。

ただ、開発を始めようにも、日本においては、標準化された電子インボイスの仕様そのものがまだ存在しません。電子インボイスは、あらゆる事業者が容易に発行/受領できなければなりませんから、皆が同じ仕様に基づいてやり取りすることが不可欠です。EIPAではまず年内に標準仕様を策定することを目指しています。

設立のタイミングで6社が幹事法人に就任しましたが、その中から、弥生が代表幹事法人を務めることになりました。BD研究会にせよ、EIPAにせよ、言い出しっぺとしての責任を負わなければならないと考えています。電子インボイス(というよりもそのベースとなるインボイス制度そのもの)が実際に動き出すまでには、正直言ってかなり多難な道のりだと考えています。そういった中で代表幹事を引き受けることはかなりの重責ではありますが、インボイス制度を単なる法令改正対応とするのではなく、中小事業者の業務効率化を実現する機会とできるよう、努力したいと思っています。

本ブログに書きたいことがどんどん積もっていってしまっていますが(苦笑)、インボイス制度について、電子インボイスについて、そしてEIPAについて、少しずつお話していきたいと思っています。

ところで今日の設立総会の参加者は総勢70人以上。設立発起人は10社ですが、それ以外に内閣官房などの行政関係者、税理士の先生方、関連する団体の方、今後入会を検討いただいている会社の方などが集まるとこれだけの数となりました。今の環境下では70人が一堂に会することは至難の業です。ではウェブ会議で、としたいところですが、行政関係者など、現時点ではウェブ会議への対応が難しい方もおり(何とかしたいところです!)、ヤヨイヒロバとZoomのハイブリッド開催となりました。

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極力Zoom参加をお願いしたため、ヤヨイヒロバはご覧の通り、だいぶ疎な感じです。大多数となるZoom参加の方は写真右側のディスプレイ内に見えています。ただ、この種の会議を開催されている方はご存じと思いますが、今回のようにオフラインとオンラインの組み合わせというのはかなりハードルが高いです。オフラインでの発言をマイクが拾いきれず、オフラインで議論が盛り上がると、オンライン側はよく聞こえないんだけど何を議論しているんだろう、となりがち。しかし、今回は新しいデバイスを利用することによってこの課題を解決できることができました。この新兵器(笑)についても追ってお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:42 | TrackBack(0) | デジタル化