スマート証憑管理の本当の価値は、証憑を管理して終わるのではなく、証憑から仕訳を自動生成し、記帳業務を圧倒的に効率化することにあります。これからは、手での仕訳入力から、スマート証憑管理での証憑の確認・自動仕訳に。しかし、紙やPDFで受領した証憑では、AI-OCRの精度が100%でない以上、人の目による確認は必要となります。これでは、記帳業務を効率化することはできても、「圧倒的」な効率化と言えるかどうかは微妙なところです。
記帳業務を圧倒的に効率化するためにはどうすればいいのか。その解になるのが、「ボーン・デジタル」、最初からデジタルという発想です。発生源で生まれたデジタルデータは、事業者内だけでなく、事業者間も含めた業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。
最初からデジタルであれば、人の目による確認は不要となり、圧倒的な効率化が実現されます。インボイス制度において、これを実現するのが、Peppolです。インボイス制度で肝になるのは、何が適格請求書かを正確に判断すること。登録番号や取引年月日、税率など、必要とされる記載事項が満たされているかどうかを確認する必要があります。ただ、厄介なのは、例えば請求書上に登録番号の記載がなくても、例えば予め取引基本契約上で登録番号をやり取りしていれば、適格請求書として認められることもあるということです。また、日本では月締請求書が一般的であり、納品書に加えて、月締請求書がやり取りされますが、この際納品書上で税額の計算を行っており、月締請求書ではそれを列挙しているだけであれば、原則として納品書が適格請求書となります。一方で、納品書上では税額の計算は行っておらず、月締請求書で対象額を足し上げ、そこで初めて税額の計算を行っている場合(こちらが本来あるべき月締請求書です)は、原則として月締請求書が適格請求書になります。要は、ぱっと見では、どれが適格請求書となるか、判断がつかないことも多いということです。
これに対し、デジタルインボイスであるPeppolにおいては、適格請求書と区分記載請求書は明確に区別され、混同することはありません。Peppolのメッセージでは、Invoice type codeという証憑の種別を示す情報がありますが、適格請求書のInvoice type codeは”380”と決まっています。一方で、今後区分記載請求書もPeppolでやり取りできるように仕様の検討が進められていますが、区分記載請求書のInvoice type codeは”380”以外となります。ですから、Invoice type codeさえ(機械が)見れば、その証憑が適格請求書かどうかは一瞬で、確実に判別できるようになっています。
いや、でも、よくわかっていない送信者が、適格請求書でないのにInvoice type codeに”380”を埋めた場合は? 実は、Peppolのメッセージ送信時には”Rules”に基づいたチェックがなされ、エラーがない状態でなければ送信できないようになっています。
例えば、aligned-ibr-jp-04というruleでは"An Invoice shall have the Seller tax identifier (ibt-031)."とされています。つまり、登録番号がない場合は、そもそも送信ができないということです。また、aligned-ibrp-045と046というruleでは、"Each tax breakdown (ibg-23) MUST have a tax category taxable amount (ibt-116)."、"Each tax breakdown (ibg-23) MUST have a tax category tax amount (ibt-117)."とされています。適格請求書で求められる記載事項の通り、税率ごとの対象額と税額がなければ、やはり送信することはできないのです。
また、aligned-ibrp-051-jpというruleでは、"Tax category tax amount (ibt-117) = tax category taxable amount (ibt-116) x (tax category rate (ibt-119) / 100), rounded to integer. The rounded result amount shall be between the floor and the ceiling."とされており、税率ごとに端数処理も考慮した上で、対象額×税率が税額となることが求められています。
Rulesの複雑化を避けるという観点から、ruleは必要最小限に絞り込まれており、(意識的にやれば)Peppolで不正な「適格請求書」を作成し、送信することが不可能という訳ではありません。それでも通常のケースでは、(機械が)適格請求書であることを自動で判別し、後続業務を自動処理できるようになっています。
アナログがある限り、人の目による確認は避けられず、効率化にも限界があります。それを乗り越え、機械による自動処理を実現し、圧倒的な効率化を実現するのが、「ボーン・デジタル」という考え方であり、デジタル・インボイスの仕組みであるPeppolです。
昨年10月には、デジタル庁からいよいよPeppol BIS Standard Invoice JP PINT Version 1.0が公開され、日本におけるデジタルインボイス、Peppolはいよいよ実用化のステージに入りました。スマート証憑管理では、この春のPeppol対応、そしてそれによる圧倒的な効率化を実現していきます。