2022年08月05日

上を向いて歩くあなたと。

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前々回にご紹介したTVコマーシャルと、その前段となった昨年作成のブランドムービーは、いずれも「上を向いて歩くあなたと。」というブランドメッセージがベースになっています。これから独立・起業される方を含め、上を向き、明日の自分の可能性を信じる事業者の方を応援したい、という弥生の想い。それが「上を向いて歩くあなたと。」というメッセージに込められています。

では、この上を向いてというのがどこから来ているのかというと、おわかりですか? いえ、「上を向いて歩こう」ではありません(笑)。SukiyakiとしてBillboard Hot 100で日本の歌として初めて全米No.1になった名曲ではありますが、今改めて歌詞を見てみると、「泣きながら 歩く 一人ぽっちの夜」というフレーズが印象に残る意外に暗い曲でした(笑)。ではどこから来ているかというと、実は弥生のロゴマークです。右上を向いた矢印、通称Rising Arrow。

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ではこのロゴマークがどこから来ているのかというと…、そうです。「右肩上がり」です。弥生という製品名(後に社名にも採用)は、ただでさえ忙しい三月を、事業者の皆さんが無事に乗り切るお手伝いするためのソフトウェアとして生まれたというのは以前お話ししたことがあります。忙しい時期を乗り切るのも重要ですが、事業者にとってそれ以上に重要なのは、事業を右肩上がりで伸ばしていくこと。弥生の根底を流れる、事業をされる方をお手伝いしたい、応援したいという想いが、製品名になり、社名になり、ロゴマークになり、そして今回のブランドメッセージにもなっているということです。

ちなみにこのロゴマーク、全くの偶然ではありますが、結構似たロゴマークをアメリカではたまに目にすることがあります。それは大規模ディスカウントチェーンであるTargetのプライベートブランドup & upです。これはさすがに右肩上がりではないと思いますが、up & upということで、よりよい品質をよりよい価値(お値ごろ)でといったあたりなのでしょうか。そう考えるとそれはそれで弥生にも通じる部分もあるような(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 17:10 | TrackBack(0) | 弥生

2022年08月03日

段階的アプローチ

7月から開始したTVコマーシャルについて、弥生としてはほぼ初めての試みとお話ししました。実は別の意味でも、弥生としては新しい取り組みです。それは、弥生会計 オンラインのような特定の製品/サービスを直接的に宣伝する広告ではないということ。

弥生ではこれまで、例えば確定申告期にはやよいの青色申告 オンラインのインターネット広告を行ってきました。これらは直接的にその製品/サービスの利用を促すものです。これに対し、見ていただければわかりますが、今回のTVコマーシャルは、具体的な製品/サービスには言及していません。弥生が実現する経理のデジタル化によって、業務が効率化され、やりたいことに集中できるスモールビジネスの皆さんの姿を描いています。つまり、弥生の想いであり、提供する価値を表現しています。そういった意味で、直接的に販売増を目指す製品広告ではなく、ブランド広告と位置付けられます。

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実はこの取り組みは昨年公開したブランドムービー「上を向いて歩くあなたと。」からつながっています。昨年はTVコマーシャルにまでは踏み込みませんでしたが、業務ソフトの提供だけではなく、起業・開業支援なども含めスモールビジネスのあらゆるステップを支え続けたい、という弥生の想いをブランドムービーとして作成し公開、また多くの方に見ていただくためにインターネットでの広告も出稿しました。ブランド広告だけにこれが直接的な売上増につながった訳ではありませんが、見ていただいた方には好評で、弥生が定期的に行っているブランド調査でも、ポジティブな効果が確認できました。これを受けて今年は、TVコマーシャルの作成と放映に踏み切ったという流れです。

本件に限りませんが、まず小さな形で試してみて、効果を検証した上で次のステップに進むという段階的アプローチは、弥生が常に意識していることです。小さな形で、と言いつつも、昨年のブランドムービーの作成とインターネットでの広告出稿でも数千万円はかかっていますので、それなりな議論になりました。お客さまからいただいた売上ですから、それをどんな有意義な形で使うのかは、いつも真剣な議論になります。

結論から言えば、来年10月からのインボイス制度によって、経理業務のあり方が大きく変わるタイミングにおいて、弥生の広告宣伝もあり方を変えるべきという判断に至りました。ただ、知見が限られる中で、いきなり大掛かりに資金を投入するのではなく、まず最初(昨年)は、ブランドムービーの作成とインターネットでの拡散、そしてその経験を踏まえて、今回のTVコマーシャルに踏み切ったという訳です。

段階的アプローチは弥生が常に意識していることと書きましたが、いきなり大胆な行動をとらない/とれないというのは、弥生の強みであると同時に、弱みでもありますね。段階的アプローチで効果を検証しつつ着実に積み上げるということは基本的には良いことだとは思っていますが、これだけ変化の激しい時代の中では、弱みを最小化し、できるだけ強みとできるように、もっと短サイクルで段階的アプローチをとれるようにしないといけないと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 20:52 | TrackBack(0) | 弥生

2022年08月01日

TV CM

一ヶ月前の7/1から弥生のTVコマーシャルが始まっています。一定の予算の制約の中での広告ですから、いつでもどこでも見れるという訳ではないのですが、最近は「TVコマーシャル見ました」とお声がけいただくことが増えました。実は私自身はTVをほとんど見ないので、私自身は実際に放送されているのを見たことはないのですが…(苦笑)。YouTubeの広告も行っていますので、YouTubeで見たことあるよ、という方もいらっしゃるかもしれませんね。まだ見ていないけれど、見てみたいという奇特な方(笑)は、こちらでご覧いただけます(30秒バージョン15秒バージョン)。

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意外かもしれませんが、弥生としてTVコマーシャルを行うのはほぼ初めてのことになります。私が弥生に入る少し前にごくごく限定的にTVコマーシャルを行ったことがあるとは聞いていますが、少なくともここ15年では初めての試み。

面白いのは、弥生を知ったきっかけという質問を行うと、いつもそれなりな割合で「TVコマーシャル」という回答が多いことです。弥生では継続的に弥生ブランドに関する調査を行っており、その中ではどこで弥生を知ったかという質問を行っています。そうすると毎回、存在しないはずのTVコマーシャルという回答がそれなりな割合であるのです。

おそらく実際は家電量販店の店頭だったり、あるいは知人から話を聞いたり、一定程度弥生に関する認知はされている方が、どうやって知ったのかと聞かれても、はっきりと覚えていない時に、うーんよく覚えていないけれどもTVコマーシャルで見たのかなあと回答されるケースが多いのではないかと思います。インターネットによって、広告媒体としてのTVの価値は変わったとは言われますが、それでも、認知する経路としては、まずTVコマーシャルという意識が根付いているということなのではないかと思います。

広く認知を得るためには有効なTVコマーシャルですが、それでもこれまで弥生はTVコマーシャルを活用してきませんでした。それはやはり費用対効果のハードルを越えることができなかったから。そもそも会計ソフト/業務ソフトというのは、起業した方など、潜在顧客層がかなり限られています。知っていただくのは、会計事務所の紹介や知人の紹介で十分ですし、利用いただくまでの最後の一押しは、インターネット広告や家電量販店の陳列が有効です。

それではなぜこのタイミングでTVコマーシャルに踏み切ったかというと、来年10月からのインボイス制度によって、経理業務のあり方が大きく変わるタイミングだと考えているからです。従来通りの経理業務であれば、これまで通りの広告宣伝方法で問題はありません。しかし、経理業務のあり方が大きく変わる、それを経理担当者だけでなく経営者の方にも理解していただきたいと考えると、より広く伝えることのできるTVコマーシャルもありなのではないか、と判断しました。

実際問題として、どれぐらいの効果があるのかを短期的、直接的に測ることは難しいですが、何をどのように伝えるか、最適なメディアミックスを試行錯誤していきたいと思います。

ちなみにTVコマーシャルの舞台は「弥生ストリート」となっていますが、横浜とご縁のある方であればすぐにどこだかわかりますよね。せっかくの地元ですから、私もカメオ出演してみたかったところですが、私が場所を知った段階では既に撮影は終了しておりました(泣)。
posted by 岡本浩一郎 at 18:58 | TrackBack(0) | 弥生

2022年07月29日

デジタルインボイスの今

前回デジタルインボイス推進協議会(EIPA)の「デジタルインボイス推進の取り組み」がMM総研大賞で「話題賞」を受賞したことをお話ししました。また少し前には電子インボイス推進協議会からデジタルインボイス推進協議会へ名称を変更したこともお話ししました。

一方で、EIPAが実際にどういった活動をしているのかについてはお話しできていませんでした。EIPAは2020年7月に発足し、その年の12月にはグローバルな標準仕様である「Peppol(ペポル)」をベースとした日本におけるデジタルインボイスの標準仕様を策定すべきという提言を平井卓也デジタル改革担当大臣に行いました。これに対し平井大臣から全面的な賛同を受けたことから、実際の標準仕様の検討を進めてきました。昨年秋にデジタル庁が発足して以降は、デジタル庁が日本におけるデジタルインボイスの標準仕様の策定主体として活動を開始しており、EIPAは民間の立場からその支援を行ってきています。現時点では、この標準仕様がJapan PINT Invoice Version 0.9.3として、Peppol全体の運営主体であるOpenPeppolのウェブサイトで公開されています。Version 0.9.3ということで、まだ正式版ではないのですが、内容としてはほぼ固まっており、この仕様に基づいて、日本でPeppolのサービスを提供しようとするベンダーが各社開発に取り組んでいる状況です。

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EIPAでは、ベンダーが開発を進める際の補助資料として、開発者に向けた日本語でのリーダーズガイドである「テクニカルドキュメント」とデータのセット方法に関する「ガイドライン」という二つのドキュメントを作成し、EIPA会員向けに公開しています。これらのドキュメントもまだ正式版ではなくWork-in-progessなのですが、各社が実際に開発を進める中で活用いただきつつ、そこで生じた疑問などを取り込んで今後もブラッシュアップしていきます。

ご承知の通りインボイス制度(適格請求書等保存方式)は来年10月に始まりますが、事業者としては、来年10月1日から対応を開始すればいいわけではありません。来年10月1日の時点で、インボイスの発行、受領、保存が業務として既に定着している必要があります。これをデジタルで実現できるよう、デジタルインボイスのサービス自体はできるだけ早めに提供を開始したいと考えています。実際のサービス開始の時期は、サービスを提供する各社によって異なりますが、早ければ今年の秋にはサービスを開始する会社が出てくる見込みです。
posted by 岡本浩一郎 at 17:53 | TrackBack(0) | デジタル化

2022年07月27日

MM総研大賞 2022

MM総研が主催しているMM総研大賞 2022で、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)の「デジタルインボイス推進の取り組み」が「話題賞」を受賞したということで、EIPAを代表して、シェラトン都ホテルで開催された授賞式に参加してきました。

MM総研大賞は、ICT分野の市場、産業の発展を促すことを目的に2004年に創設された表彰制度です。MM総研大賞では複数の部門で表彰されますが、最高賞となる大賞は「FIWAREを活用したスマートシティ」ということで、実際にスマートシティのサービスを実現している高松市、富山市と、オープンソースのデータ連携基盤「FIWARE」を活用してそれを支援しているNECが受賞されました。今回EIPAが受賞したのは、話題賞。話題賞とは、その名の通り、ICT産業に大きなインパクトを与え、大きな話題を集めた製品・サービスが対象となっています。

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授賞式では授賞者ごとに審査委員から表彰いただくのですが、審査委員の中に見慣れた顔が。そうです、弥生の社外取締役である林 千晶さん(当たり前ですが、林さんが弥生の社外取締役であることと、今回のEIPAの受賞は何の関係もないはず、笑)。表彰を林さんからしていただければ、すごい巡り会わせだと思いましたが、EIPAの表彰の少し手前でプレゼンターが交代。同じく審査員であるジャーナリストの西田さんに表彰いただきました(西田さん、有難うございました)。

今回は代表幹事として私が授賞式に参加しましたが、賞を受賞したのはあくまでもEIPA。EIPAはデジタルで社会を効率化するという想いを共有する会社が集まって活動しています。普段は競争することもある会社同士が同じ目標に向かって活動していることが、今回こうして評価されたことはとても嬉しいことです。今の時点ではまだデジタルインボイスというサービス自体がまだ提供されていないということもあり、今回は話題賞ということになりましたが、一年後にはデジタルインボイスのサービスも立ち上がり、利用しているソフトが異なっても自由にデジタルインボイスのやり取りができるようになっているはずです。

ということで来年は話題賞ではなく、是非大賞を受賞したいと思います。来年はMM総研大賞にとって20年目という節目の年。その記念すべき年に栄えある大賞を獲得し、(その時点で)目前に迫ったインボイス制度の運用開始に向けて勢いを付けたいところです。ということで、今回のタイトルは思わせぶりに「MM総研大賞 2022」としてみました、笑。
posted by 岡本浩一郎 at 22:33 | TrackBack(0) | デジタル化

2022年07月25日

モリゾウからの手紙

少し前になりますが、あの「モリゾウ」から直々にお手紙をいただきました。あ、このモリゾーではなく、こちらのモリゾウです。そう、トヨタの豊田章男社長です。直々にとは言っても、私だけに出された手紙ではなく、おそらく1万人以上の方に出された手紙ではあるのですが。

本ブログではあまり趣味の話はしないようにしている(その割には最近はトライアスロンとかトレーニングの話が多いですが、笑)ので、ほとんど触れていませんが、私はクルマが好きです。18歳で初めて自分のクルマを持つようになってから、もう30年以上。所有歴は10台以上ですが、ずっとそれなりに拘りの強いクルマ選びをしてきました。しかし実は、トヨタのクルマは所有したことがありません。

若い時のトヨタのイメージというとおじさんのクルマ。ある程度年をとってからのイメージは普通のクルマ。いずれにせよ、トヨタ車を欲しいと思ったことはありませんでした。そんな私ですが、ここ一年ほどかなり惹かれるクルマが。それがGRヤリスです。トヨタのコンパクトカーであるヤリスがベースではあるものの、モータースポーツで勝てる車両を目指してほぼ全てが新規開発されたクルマ。そしてそのGRヤリスをベースとしてそのまま競技に出れるレベルにまで強化されたクルマがGRMNヤリス。発売されるのは僅か500台という超限定車です。

この冬に申し込みが開始され、私もダメもとで申し込んだものの、抽選結果は残念ながら外れ(なんでも1万人以上の申し込みがあったようです)。そろそろ納車が始まるということで、最近GRMNヤリスの試乗記事が増えていますが、読むたびにああ欲しかったなあ、と涙目になっています(笑)。

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そんな傷心の主に届けられたモリゾウからのお手紙(親しみを込めてあえて敬称抜きの「モリゾウ」と書いています)。GRMNヤリスに対する熱い思いをモリゾウ自身の声で語っています。

これって本当に素晴らしいことだと思います。ダントツの日本一であり、今や世界一の座を争うメーカーの社長が、自社の製品にとことん思い入れて、熱く語る。売上や利益、マーケットシェアについて語るのではなく、クルマを走らせることの楽しさを語る。その熱さや想いが、これまでずっとトヨタに見向きもしなかったクルマ好きも振り返させる。豊田社長は、トヨタのクルマであり、会社そのものを変えていっていることを実感します。

トップの熱い想いがトヨタという巨大な会社を変えていっている。トヨタほどの巨大な会社が変われるのであれば、弥生はもっと劇的に、もっと早く変われるはずです。製品も全く違いますし、そもそも会社の規模も全く違いますが、想いでは負けないようにしないと。
posted by 岡本浩一郎 at 22:31 | TrackBack(0) | ビジネス

2022年07月22日

弥生が事業承継を支援する意味

これまで、弥生が事業承継ナビを立ち上げた背景として、日本の事業者の約2/3は、「引退」の二文字が視野に入る年齢になりつつある一方で、その半数は引退 = 事業の廃業になりかねないということをお話ししました

一方で、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるという主張は、本当なんだろうか、という疑問があり、その検証を行ってきてきました(その1その2その3その4)。検証の結果は、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるというのは疑わしいと言わざるを得ないという結論になりました。

これはまずい事態です。2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるという前提で事業承継ナビを立ち上げたのに、その前提が崩れた訳ですから(苦笑)。とはいえ、ご安心ください。前提がそれなりに変わったにしても、事業承継の支援は弥生として取り組むべきテーマだと考えています。

検証した際の穏当なシミュレーションの結果では、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人は全体の約1/3。ただ、2015年には法人でも個人事業主でも20%弱だったものが30%強にまで増えていくわけですから、着実に高齢化は進んでいます。「2025年に」「全体の2/3」という極端なシナリオにはならないまでも、「引退」の二文字が視野に入る年齢の経営者が増えてきていることは紛れもない事実です。

少し古い数字ですが、中小企業白書(元データは経済センサス)によると、事業者(民間、非一次産業)の数は2016年で法人が160万、個人事業主が198万で合計358万。その1/3というと約120万。2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が約120万人。なおかつその約半数で後継者が未定とすると、遠からず引退 = 廃業となる可能性が約60万事業者ということになります。これでも十分に大きな数ですし、これに対し手を打っていかないと日本の経済に大きな影響を与えうるということは変わりません。ということで、やはり事業承継は取り組むべき課題です。問題は弥生として取り組む必然性があるかどうか。

弥生は事業承継ナビを通じて特に小規模事業者の事業承継のお手伝いをしたいと考えています。もともと弥生のお客さまは小規模事業者が中心ですが、これまでもお話ししているように既存の事業承継ビジネスは小規模事業者を対象にしていません。一方で上記の約60万事業者の大部分は小規模事業者です。だからこそ、弥生がやる意味があると考えています。

弥生がやる意味という観点では、特に個人事業主の事業承継は何とかしなければならないと考えています。既存の事業承継ビジネスは、基本的に対象は法人(なおかつ一定の事業規模以上)ですが、上でもお話ししたように、事業者の半分以上は個人事業主です。法人の事業承継は、価値算定の方式はある程度確立されていますし、実際の承継の方法も基本的には株式の譲渡という形で確立しています。これに対し、個人事業主の場合は、事業と個人が密接につながっているため、その個人が事業に従事しなくなった際の事業の価値算定が難しく、また、承継の方法も株式の譲渡というシンプルな方法は存在しませんから、事業資産の承継なのか、営業権の承継なのか、それらの組合せなのか、ケースバイケースとなります。一般的な事業承継ビジネスの観点からすると、そもそも事業規模が小さいというだけで採算性が悪い。さらに個人事業主については、価値算定の観点でも、実際の承継の手続きの観点でも手間がかかるということになります。つまり一般的には積極的に取り組む意義は見出せません。だからこそ、弥生がやる意味があるということです。

もっとも、正直に言って現時点では弥生としても個人事業主の事業承継に対し、何ら切り札を持っているわけではありません。当初はやはり法人の事業承継のお手伝いが中心になるのではないかと思います。ただ、弥生自身としても事業承継に対する知見を深めながら、どのようにすれば個人事業主の事業承継も円滑に進めることができるのかを考えていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:59 | TrackBack(0) | 弥生

2022年07月19日

数字を疑う(その4)

これまで、弥生が事業承継ナビを立ち上げた背景として、日本の事業者の約2/3は、「引退」の二文字が視野に入る年齢になりつつある一方で、その半数は引退 = 事業の廃業になりかねないということをお話ししました

一方で、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるという主張は、本当なんだろうか、という疑問があり、その検証を行ってきてきました。前々回は、2005年および2015年の法人経営者の年齢分布(元データは帝国データバンク)をもとに2025年の年齢分布のシミュレーションを行い、結果として、2025年に中小企業・小規模法人の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3というのは非常に疑わしいという結論を得ました。また前回は、2005年および2015年の個人事業主の年齢分布(元データは総務省「労働力調査(基本集計・長期時系列データ)」)をもとに2025年の年齢分布のシミュレーションを行い、2025年に個人事業主のうち70歳を超える人が全体の2/3というのも非常に疑わしいという結論を得ました。

どうして2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるという話になったのでしょうか。ヒントは出典となっている中小企業庁の資料の2ページ目にありました。右側の図の出所を確認してみると、平成28年度総務省「個人企業経済調査」とあります。この調査結果の概要がこちら(pdf)。詳細は割愛しますが、この調査では、2016年時点の(調査対象の)個人事業主のうち70歳以上が42%、70歳未満が58%でした。さらにこの時点で60歳以上が73%、60歳未満が27%でした。調査対象が全く変わらず約10年(正確には9年)経過すると、この割合がそのままスライドし、2025年時点で70歳以上が73%、70歳未満が27%ということになります。仮にこの割合が正しいとすると、少なくとも個人事業主については、70歳を超える人が全体の2/3ということになりそうです。

ちなみに、前回シミュレーションに使用した個人事業主の年齢分布のもとになっているのは総務省「労働力調査」。こちらでは2015年時点の60歳以上が45%、60歳未満が55%という数値でした。この割合を単純に10年スライドすると、2025年時点で70歳以上が45%、70歳未満が55%ということになります(これは基本的に前回の極端なシミュレーションのパターンです)。

同じ総務省が発表している二つの調査ですが、一方では、2025年時点で個人事業主のうち70歳以上が3/4近くに達しうるという結果、もう一方では半分もいかないという結果とかなりの差があります。おそらく「中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になる」というのは前者の数字がベースになっているのではないかと思います。

ちなみに、前者の「個人企業経済調査」というのは「個人企業の経営の実態を明らかにし,景気動向の把握や中小企業振興のための基礎資料などを得ることを目的」に毎年行われているそうですが、その調査対象は、「全国の個人企業のうち、次の産業を営むものの中から,一定の統計上の抽出方法に基づき抽出した約 4,000 事業所を調査対象としている」となっています。また調査方法としては、「統計調査員が調査事業所に調査票を配布し、事業主に記入していただき、記入された調査票を取集する方法により行っている」とされています。つまり必ずしも様々な産業を反映しておらず、サンプル数も約4,000と限られる、また、調査員による調査票の配布・回収に協力できる個人事業主が対象となっており、サンプリング・バイアスが起きやすい調査のように見えます。念のためですが、だからこの調査がダメだという気はありません。どんな調査にも(全数調査でない限り)、一定のバイアスはあります。ただ、その調査の結果は調査方法(とその結果どれだけ誤差が生まれやすいか)に応じて扱うべきかと思います。

一方で、総務省「労働力調査」もやはりサンプリング調査です。こちらはサンプル数が約40,000世帯(対象となる15歳以上の世帯構成員としては約10万人)と一桁大きく、また標本の抽出方法、結果の推定方法、さらに推定値の標本誤差までかなり詳細に解説されており、サンプリング調査の限界を踏まえた上で、正しく活用されるようにかなり意識した調査に見受けられます。

どちらの数字がより確からしいかは何とも言えませんが、サンプリング調査の限界を適切に踏まえているという意味で、「労働力調査」の方が「個人企業経済調査」よりまだ妥当な結果に思えます。

ということで、個人的な結論ですが、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるというのは疑わしいと言わざるを得ません。ただし、推計のベースになる調査の選び方次第では、そういった結論になることもありうる、ということかと思います。

思った以上にこのテーマに深入りしてしまいました(苦笑)。で、結局何を言いたいのかですが、わかりやすい(往々にしてキャッチーだったり、扇動的だったり)数字に飛びつくべきではないということです。このテーマのタイトル通り、わかりやすい数字であればあるほど、それを疑うことも必要だということです。

本ブログでは以前FACTFULNESSという本を取り上げました。アメリカのSATという(日本で言えばセンター試験のような)テスト結果から、男性の方が女性よりも数学が得意だ、という結論が得られそうだが、本当にそうなんだろうか、というエピソードについてご紹介しましたが、これもある意味わかりやすい数字を疑うということかと思います。

2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3になるというのは実にセンセーショナルな数字です。ただ、少なくとも私の感覚的には、70歳を超える人が増えることは間違いなくても、あと3年で全体の2/3になるというのはどうしてもしっくりきません。数字に安直に踊らされず、自分が感じる違和感を放置せず、本当なんだろうかと考えることも必要なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 21:45 | TrackBack(0) | ビジネス

2022年07月15日

数字を疑う(その3)

これまで、弥生が事業承継ナビを立ち上げた背景として、日本の事業者の約2/3は、「引退」の二文字が視野に入る年齢になりつつある一方で、その半数は引退 = 事業の廃業になりかねないということをお話ししました

一方で、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3って、本当だろうか、という疑問があり、その検証を行ってきています。前回は、2005年および2015年の法人経営者の年齢分布(元データは帝国データバンク)をもとに2025年の年齢分布のシミュレーションを行い、結果として、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3というのは非常に疑わしいという結論を得ました(なお前回記事に一部ミスがあったため修正していますが、メッセージは変わりません)。

うむむ、何かを見過ごしていないでしょうか。「2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3」のソースとなっている中小企業庁の資料の2ページ目のうち、前回は左下のグラフに関して検証を行ったわけですが、今回は、右側の図を見てみましょう。右側の図の出所を確認してみると、「平成28年度総務省「個人企業経済調査」、平成28年度 (株)帝国データバンクの企業概要ファイルから推計」とあります。後段は左側のグラフと共通ですが、前段が追加されています。

そう、左側のグラフはあくまでも法人の話なのですが、右側の図に関しては、法人と個人事業主を合わせて表現しているということです。つまり、法人の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3ということはなくても(前回の現実的なシミュレーションでは1/3ぐらいではないかと推計しました)、個人事業主も合わせて考えると、70歳を超える人が全体の2/3という可能性はあります。もっとも、法人で1/3ぐらいであるものが全体で2/3となると、個人事業主のうち70歳を超える人が3/4超といったような極端な分布になっている必要がありますが。

ということで、個人事業主の年齢分布を探ってみると、2019年版の小規模企業白書の第2-1-3図に、「年齢階級別に見た自営業主の推移」というデータがありました(ここでいう自営業主とは、個人経営の事業を営んでいる者という定義)。今回もこの第2-1-3図から、2005年と2015年のデータだけを抜き出してみました(法人の時と同様、例えば50歳〜54歳は中間地点である52.5として表現)。なお、縦軸を以降のグラフと揃えるためにやや見にくいグラフになっているのはご容赦ください

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個人事業主においても2005年から2015年にかけて、グラフが右にシフトしています。55〜59歳だったピーク値が70歳以上になっていることがわかります。このデータでは70歳以上が一まとめになってしまっている(法人では70〜74歳、75〜80歳、80歳以上となっていた)ため、ピーク値が10歳以上ずれてしまっているのかと思います。

今回もまずは極端なシミュレーションを行ってみたいと思います。2015年時点の個人事業主が、皆単純に10歳歳をとったとします。この場合2015年時点で60歳以上だった個人事業主は一人残らず2025年時点では70歳以上ということになります。ただ、この場合、15〜20歳の層と20〜25歳の層が誰もいなくなってしまう(皆10歳歳をとって2つ右の層に移ってしまう)ので、この2つの層に関しては仮に2015年時点と同じ数の個人事業主が新たに生まれてくると想定します。この極端なシミュレーションの結果はこちら。

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そうすると確かに2025年時点では70歳以上の層に極端なピークが立つことがわかります。その数201万人。ただ、確かにピークとしては高いのですが、70歳未満が245万人に対し、70歳以上が201万人ですから、これでも70歳を超える人が全体の2/3とはなりません。

次に、法人の時と同様にもう少し穏当なシミュレーションをしてみます。30〜34歳、35〜39歳といった各年齢層ごとに、10年経過する中での目減り率を設定します(廃業したなどの要素を考慮)。それと同時に、各年齢層ごとに10年の中で新たに個人事業主となる人の数を設定します。緻密なシミュレーションではなく、あくまでもざっくりとしたものですが、結果はこういった感じになります。

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上の極端なシミュレーションよりは、まあこんなものかな、という結果になっていますね。このシミュレーションでも70歳以上にかなり高いピークが立っています。ただし、その数は127万人と極端なシミュレーションよりは少なくなっています。このシミュレーションでは70歳未満が293万人に対し、70歳以上が127万人ということで、70歳以上の人が2/3どころか、むしろ70歳未満が2/3となります。

ということで、ここまでの一旦の結論なのですが、2025年に中小企業・小規模事業者(法人および個人事業主)の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3というのはやはり非常に疑わしいということになります。随分引っ張ってしまっていますが、次回はこれまでの検証をまとめてみたいと思います。実は70歳を超える人が全体の2/3となっている理由も想像はできているので、その点もお話ししてみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:06 | TrackBack(0) | ビジネス

2022年07月13日

数字を疑う(その2)

これまで、弥生が事業承継ナビを立ち上げた背景として、日本の事業者の約2/3は、「引退」の二文字が視野に入る年齢になりつつある一方で、その半数は引退 = 事業の廃業になりかねないということをお話ししました

一方で前回は、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3って、本当だろうか、という疑問も呈しました。本ブログでも以前紹介した帝国データバンクの調査では、2021年時点での社長の平均年齢は60.3歳。この平均年齢は大体年に0.1歳から0.3歳ぐらいの幅で上昇しているので、仮に2021年から2025年まで、毎年0.3歳平均年齢が上がるとしても、2025年時点では61.5歳。全体の平均は62歳だけれども、全体の2/3が70歳以上ということはありうるのでしょうか。

これは理論上はありうるとお話ししました。ただし、それは分布に極端な歪みがある場合です。例えば、40歳の人が100万人、70歳の人が200万人いたら、平均は60歳だけれども、70歳以上の人が全体の2/3ということになります。

ただ、これは明らかに現実的ではないですよね。ということで、実際の数字を追って検証してみたいと思います。「2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3」というのは中小企業庁が発表している資料に基づいています。この資料の2ページ目、まずは左側のグラフから確認していきますが、このグラフの出所は「平成28年度 (株)帝国データバンクの企業概要ファイルを再編加工」とあります。そう、本ブログの「社長の平均年齢」という記事で取り上げたのと情報源は同じです。これは2018年版の中小企業白書、第2-6-2図に同様なデータがありました。

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ここでは、2018年版の中小企業白書、第2-6-2図から、2005年と2015年のデータだけを抜き出してみました(ここでは例えば50歳〜54歳は中間地点である52.5として表現)。確かに2005年から2015年にかけて、グラフが右にシフトしており、55〜59歳だったピーク値が65〜69歳になっていることがわかります。ただし、このグラフから計算した(例えば、50歳〜54歳は全て52.5としているためあくまでも簡易的な計算)2005年時点での平均は58.3歳、2015年時点での平均は60.1歳であり、1年に1歳平均年齢が上がるということはなく、年に0.2歳ぐらいの上昇ということになります。

ここで、極端なシミュレーションをしてみましょう。2015年時点の社長が、皆単純に10歳歳をとったとします。この場合2015年時点で70歳以上だった社長は一人残らず2025年時点では80歳以上ということになります。ただ、この場合、30〜34歳の層と35〜39歳の層が誰もいなくなってしまう(皆10歳歳をとって2つ右の層に移ってしまう)ので、この2つの層に関しては仮に2015年時点と同じ数の社長が新たに生まれてくると想定します。この極端なシミュレーションの結果はこちら。

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2015年時点で70歳以上だった社長は一人残らず2025年時点では80歳以上となる結果、ピークは一気に80歳以上にシフトしています。計算上の平均年齢は68.0歳。2015年時点での平均である60.1歳からは一気に増えたことがわかります(30〜34歳の層と35〜39歳の層に新たな社長が生まれてくることを想定しているため、平均は単純に+10にはならない)。でもまあ、どう考えても極端なシミュレーションですよね。こんな極端なケースでも、70歳未満が61.7万人、70歳以上が65.4万人となり、確かに70歳以上の方が多くなりますが、それでも全体の2/3といった極端な結果にはなりません。

次に、もう少し穏当なシミュレーションをしてみます。30〜34歳、35〜39歳といった各年齢層ごとに、10年経過する中での目減り率を設定します(廃業した、あるいは社長交代したなどの要素を考慮)。それと同時に、各年齢層ごとに10年の中で新たに社長に就任する人の数を設定します。緻密なシミュレーションではなく、あくまでもざっくりとしたものですが、結果はこういった感じになります。上の極端なシミュレーションよりは、まあこんなものかな、という結果になっていますね。このシミュレーションではピークは70〜74歳になっています。

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このシミュレーションで平均を計算してみると62.0歳。上でお話しした2021年時点での社長の平均年齢は60.3歳、ここから導き出される2025年時点での平均年齢は62歳弱というのと整合していますね。このシミュレーションは、相当ざっくりではありますが、それでも当たらずと言えども遠からずなのではないかと思います。少なくとも極端なシミュレーションよりははるかに実態に近いはずです。

では、この穏当なシミュレーションで、70歳未満と70歳以上の数を確認してみるとどうでしょうか。結果は、70歳未満が88.8万人、70歳以上が43.3万人と、70歳以上の人が2/3どころか、むしろ70歳未満が2/3であることがわかります。
[7/15追記: 一部計算ミスがあったため本文を修正、グラフを更新しています。ただし、基本的なメッセージは変わりません。]

ここまで検証した結果としては、2025年に中小企業・小規模事業者の経営者のうち70歳を超える人が全体の2/3というのは非常に疑わしいということになります。うむむ、これは一体どういうことなのでしょうか(続く)。
posted by 岡本浩一郎 at 23:02 | TrackBack(0) | ビジネス