2020年07月27日

アルトア 弥生オンライン対応

2017年12月にアルトアが弥生会計をご利用の法人のお客さま向けに融資を開始してから早2年半。本当にあっという間ですね。その後2018年12月には個人事業主のお客さま向けにも融資を開始しました。その後も、融資実行に際しての本人確認の手続きを改善(その1その2)なども行ってきました。

足元の動向で言えば、2020年3月には、お申込みがかなり増えました。新型コロナウイルス禍の影響が着実に広がる一方で、公的な支援が行き渡らず、事業者の方々の資金繰りが急速に悪化した時期です。そんな中、アルトアであれば最短即日で融資が可能ということで、お申込みが増えたものと考えています。

一方で、5月からはお申込みが明確に減りました。え、そんなこと書いてしまっていいの、と思われるかもしれませんが、事実ですからしょうがありません(笑)。これは、3月とは逆に、公的融資や、持続化給付金など、公的な支援がそれなりに行き渡る中で、一旦事業者の方々の資金繰りが安定したためだと考えています。実際、3月にお借入れいただいた方が、資金繰りの目処が立ったということで、5月や6月に繰り上げ返済されるケースが目立ちました。融資をする立場からすると、お申込みが減るというのはなかなか残念なものがありますが、一方でそれは足元でお客さまの資金繰りが(少なくとも一旦は)落ち着いているということで、お客さまにとってはいいことだと考えています。

今後も新型コロナウイルス禍は相当程度続くであろう中で、アルトアの事業としては第二フェーズに入っていかなければなりません。これまではアルトア自身によって、弥生の会計データを用い、オンラインで完結する利便性の高い融資が実際に成立することを、いわば実証実験をしてきました。しかし、新型コロナウイルスのような過去に例のないほどの巨大な影響をもたらすものの前では、アルトアだけでは圧倒的に力不足です。3月にはお申込みが増えたとはいえ、それは日本全国で資金を求めていた事業者の数からすると、ほんの僅かな割合に過ぎません。

第二フェーズでは、金融機関がアルトアのテクノロジーを活用し、アルトアと同等の利便性/即時性を提供できるようになることを改めて目指していきます。これは当初から計画してきたことですが、残念ながらまだ実現できていません。

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そのために必要になることの一つが、アルトアとして取り扱える会計データを広げること。実は今日から、これまでは弥生のデスクトップアプリをご利用の方のみが対象だったものから、弥生のクラウドアプリ(弥生会計 オンライン、やよいの青色申告 オンライン)をご利用の方もお申込みいただけるようになりました。これらはもっと早くに実現したかったのですが、何だかんだ時間がかかってしまいました。ただ、これはあくまでも通過点。今後は、弥生以外の会計ソフトにも対応していきます。

アルトアの親会社は、弥生ですが、弥生だけを見てビジネスをしている訳ではありません。アルトアが目指すのは、データとテクノロジーの力で事業者の資金繰りを円滑にすること。事業者の皆さんが弥生を使っていただいていることは嬉しいこと(実際に非常に多くの方にご利用頂いています)ですが、それによって利便性の高い融資を受けられるかどうかが左右されるべきではないと考えています。もちろん、利用者が極端に少ない会計ソフトに対応することは費用対効果的にも難しいという現実はありますが、一定以上のシェアのある会計ソフトには着実に対応していきたいと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:00 | TrackBack(0) | アルトア

2020年07月21日

光回線

緊急事態宣言が解除されて以降、6月は概ね週一回の出社、7月からは平均すれば週二回出社しています。新常態ということで、出社ありきではなく、リモートでできることはリモートで、出社した方がいい時は出社でと使い分けています。逆に言えば、今後もリモートワークは続きます。今後も快適に、高い生産性でリモートワークを継続できるように、今回自宅に光回線を敷設しました。

正確に言えばこれまでも光回線を利用しており、それなりに快適でした。我が家は数百戸のマンション。マンション全体で1Gbpsの光回線が敷設されており、これを各戸からLANで利用できるようになっています。こちらが、これまでの回線での実効速度です。

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下りが68.8Mbps、上りが76.8Mbps。正直全く悪くありません。というかむしろかなりいい環境です。ただ、ネットワークの常で、この速度は時間帯によって変動します。これはかなりいい時の速度。平均すると下りで40Mbps〜50Mbpsぐらいでしょうか。Zoomなどでウェブ会議をしている時に、画面や音声が乱れることがあり、おそらくこちら側の問題ではないのですが、そうでないともいいきれません。やはりマンション全体で共有している回線に依存するのではなく、自分で回線を引いた方がいいのではないかと考えました。

今、弥生ではリモートワークを当然の選択とできるように、各自のリモートワーク環境の整備を進めています。そのために、5月末には全正社員/契約社員を対象に一律5万円のリモートワーク環境整備補助金を支給しており、来期初(10月)を目途に通勤交通費の見直しと合わせ、継続的なリモートワーク手当を導入する準備を進めています(これらは全部、取締役は対象外なんですけど、苦笑)。私も率先してリモートワーク環境を整備しようということで、1Gbpsの光回線を引くことにしました。

回線工事があったのが、昨日。ちょうどリモートワーク中だったので、工事の立会いも問題なし。ワクワクしてスピードテストを実行してみると…。あれ、思ったほどスピードが出ない…。何回か試して出た結果がこれ。

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下りが89.8Mbps、上りが153.6Mbps。確かに以前よりは早くなっているものの、思ったほどではないというのが、正直なところです。なおかつ、速度にかなりバラつきが出ます。夕方から夜にかけては、下りが10Mbps程度まで落ちたり(泣)。上りはコンスタントに速いのですが、下りの速度はかなり上下動があり、平均すると以前より遅くなったような。

今回引いた1Gbpsの光回線(中身はフレッツ)は、1Gbpsを1戸で独占ではなく、途中で32分割されているそうです。そのため、やはり回線を共有している人の影響を受けるとのこと。とはいえ、数百戸で共有しているこれまでの回線と、最大32戸で共有している今回の回線では、今回の方がマシなはず、と思ったのですが、当てが外れました。想像するところ、帯域を使う人ほど、個別に回線を引くため、結果的に全体共有回線にはあまり重いトラフィックがない一方で、個別(その実32戸共有)は皆帯域を使う人が集まっているので、重いトラフィックが集中している、ということかもしれません。

期待していただけにかなりがっかり。ただ、どこがボトルネックになっているのかをもう少し調べた上で、スループット改善のための打ち手がないかを考えてみるつもりです。旧回線もそのままある(費用が管理費に含まれており、個別に契約を切ることはできない)ので、最悪は旧回線を使い続けることになるかもしれませんが、もう少しあがいてみたいと思います。今週の4連休にちょうどいい宿題ができました(苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 17:41 | TrackBack(0) | パーソナル

2020年07月16日

PEPPOL in Singapore

先月末に公表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」に関連して、提言の一つのきっかけとなった、海外でのデジタル化の事例をご紹介しています。1回目はオーストラリアのSingle Touch Payrollについて、2回目はイギリスのMaking Tax Digitalについて、そして前回はイタリアのeInvoicingについてお話ししました。

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海外事例の紹介は今回で最後になりますが、今回はシンガポールについてお話ししたいと思います。シンガポールでは、昨年1月からPEPPOL E-Invoicingという電子インボイスの仕組みが導入されました。電子インボイスという意味では、イタリアの事例について前回お話ししましたが、イタリアはFatturaPAという独自規格であるのに対し、シンガポールはPEPPOLという国際的な規格を採用しています。PEPPOLとは、もともとPan-European Public Procurement On-Lineという名称で、ヨーロッパでの政府調達の際に利用される規格としてスタートしました。

PEPPOLでは近年ではヨーロッパ以外でも活用されるようになり、日本に近いところでは、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドで採用されています。1回目にオーストラリアについてお話ししましたが、この調査の際にPEPPOLの話が出て、そこからシンガポールの調査につながっています。ただ残念なのは、シンガポールには実際には行けていないこと。もともとはこの3月に出張を予定していたのですが、新型コロナウイルス禍の広がりにより、出張はキャンセルせざるを得ませんでした。ただ、折角アポイントも取れているということで、急遽ウェブ会議に切り替えることにより、調査自体は実施することができました(が、久し振りのシンガポールは行きたかった…)。

イタリアとシンガポールのもう一つの違いは、義務化されているかどうか。イタリアは一部の事業者を除き義務化されていますが、シンガポールでは、義務ではありません。あくまでも業務効率化のために是非使いましょう、というスタンスです。前回、イタリアの仕組みが日本に適しているとは思わないと書きましたが、シンガポールの取り組みはより日本にあったもののように感じます。

ただし、義務でないとすると、やはり難しいのは実際に使われるかどうか。電子インボイスは電話や電子メールのように、皆が使えば使うほど効用が高まる仕組みです(いわゆるネットワーク外部性がある)。義務化してしまえば、皆が強制的に使う訳ですから、いきなり皆で使うことのメリットが生まれます。一方で、義務ではなく任意とした瞬間に、使う人が少なければメリットが生まれず、結果的に使う人が増えないという悪しき循環に陥りかねません。そうならないためにも、電子インボイスを活用することに対する何らかのインセンティブが必要だと考えています。

シンガポールでも普及に向けた活動に取り組んでいるようですが、普及に向けて時間がかかることは覚悟しているとのことでした。日本においては、2023年10月にインボイス制度の導入が決まっていますが、この段階で、どこまで普及させられるか。シンガポールなどの事例を踏まえながら、日本にあった形での普及策を考えていかなければならないと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 17:52 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年07月14日

eInvoicing in Italy

先月末に公表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」に関連して、提言の一つのきっかけとなった、海外でのデジタル化の事例をご紹介しています。前々回はオーストラリアのSingle Touch Payrollについて、前回はイギリスのMaking Tax Digitalについてお話ししました。

今回ご紹介する事例はイタリア。ああ、これでようやく昨年イタリアに行ったのがお遊びではないことが証明できました(笑)。ローマ滞在はわずかに20時間、しかも飛行機のトラブルで苦労したり(これもいつかお話ししたいところ)となかなか刺激的な出張となりましたが、今回ご紹介する事例の中でも、このイタリアの事例が一番刺激的かもしれません。

イタリアでは、昨年1月からeInvoice、すなわち、電子インボイスが義務付けられました。日本でもこの先インボイス制度が導入されることが既に決まっていますが、イタリアをはじめ欧州では昔からインボイス制度が定着しています。ただし、それを全て電子インボイスとすることを義務付けたのは今回のイタリアが初めて。

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インボイスは一般的にモノ・サービスの売り手から買い手に発行されますが、イタリアのeInvoiceの仕組みは一味違います。それは、電子インボイスは売り手から一旦歳入庁(日本で言う国税庁)に送信され、歳入庁でシステム上のチェックを受けた上で、買い手に再送信されるのです。結果的に歳入庁は全ての取引を一元的に把握することができるという訳です。もともとイタリアでは、地下経済が大きいと言われていましたが、電子インボイスを導入することによって、これらも含めすべてをデジタルで捕捉しようということです。

さらに、これは実際に訪問して初めて知ったことなのですが、イタリアでは同時並行でB2C取引の捕捉も進めているとのこと。今年1月からは、全てのレジスターをインターネットに接続し、日次で取引データを歳入庁に送信することが義務化されるとのこと。さらに、そもそもレジを通さない取引(ランチとかでレジを打たないケースはよくありますよね)をなくすために、レジで印刷されたレシートを国が運営するくじにする、という制度も始まるそうです。レシートくじは世界的にはかなり導入事例があるのですが、何ヶ月かに一度くじ引きがあり、一等だったら(例えば)100万円がもらえる、となると、みんなちょっとした支払でもレシートを要求するようになるわけです。

つまりイタリアでは、従来レジを通らなかったような取引がレジを通るように仕向け、レジを通った取引は全て日次で捕捉。さらにB2Bに関しては、電子インボイスで全て捕捉するという仕組みを作り上げたのです。世界中の国税庁にとって、まさに夢のような仕組みです。ただ、実はこの種の仕組みはお隣の韓国で10年以上前から導入されています。

イタリアで実現した仕組みは、徴税の観点からは、一種の理想形と言えます。B2CからB2Bまで全ての取引がデジタルデータとして国に連携される。これを突き詰めれば、収集されたデジタルデータをもとに、国が納税額を計算することによって、イギリスが目指しているように、申告そのものをなくすことも可能でしょう。ただ、これが日本でも実現できるかというと、正直難しいと思いますし、そもそも日本に適しているとも思いません。地下経済が大きく、公平公正な課税が困難な国だからこそここまでやる訳であって、ある程度公平公正な課税が既に実現している国ではあるべき姿は変わるはずです。

一方で、イタリアの事例で学ぶべきだと思っているのは、関係者を巻き込み、時間をかけて議論するということ。お話ししたように、昨年1月から電子インボイスの義務化が始まった訳ですが、実は2012年に民間を中心としたeInvoicingに関するフォーラムが組成され、以来議論を続けてきたそうです。つまり7年かけて、じっくりと議論し、準備してきたということです。

デジタル化は一年にしてならず。2023年10月のインボイス制度導入に向けて、Born Digital研究会を母体として電子インボイス推進協議会を立ち上げるのですが、これにはこういった海外からの学びが活かされています。もっともイタリアは7年かけたのに対して、日本は圧倒的に時間が足りないため、焦るところではあるのですが。
posted by 岡本浩一郎 at 20:57 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年07月10日

Making Tax Digital

先月末に公表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」に関連して、提言の一つのきっかけとなった、海外でのデジタル化の事例をご紹介しています。前回はオーストラリアのSingle Touch Payrollについてお話ししました。

今回はイギリスです。イギリスでは、昨年4月にMaking Tax Digital(MTD)という制度の義務化が始まりました。昨年と言えば、イギリスではBrexit(イギリスの視点で言えば、EU Exit)をどうするのか、まだまだ紛糾している時期でしたが、そんな中でもこのMTDについては、粛々と動き始めました。“Making Tax Digital”、直訳すれば「税金をデジタルに」ということになりますが、具体的にどういった仕組みなのでしょうか。実はこれは表面上は、事業者に対し業務ソフトの利用を義務化するものです。業務ソフトを提供している側からすると、夢のような制度(笑)ですが、なぜ政府が業務ソフトの利用を義務化するのでしょうか。

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それは、手作業が入ることによって、多くのミスが発生しているから。そしてそのミスは往々にして税額を過少に申告することにつながります。そこで、ミスの発生を防ぐために、取引が行われてから、情報を一貫してデジタルで処理し、それをそのまま申告につなげようということです。イギリス歳入関税庁(HMRC)の方曰く、あくまでも意図的でない事務的なミスをなくすためということでしたが、本音ベースでは、意図的に取引を省くことを防ぐ狙いももちろんあるのだと思います。

例えば、飲食店でレジスターを利用している場合でも、売上を手で会計ソフトに入力する際に、一部の売上を除外することは簡単にできてしまいます。MTDが目指す世界では、POSレジの売上をデータとして会計ソフトに連携し、それがそのまま申告につながることにより、意図的にせよ、そうでないにせよ、ミスをなくし、正確な申告を実現します。

MTDは、政治主導で始まったものです。2015年3月にオズボーン財務相(当時)から、税務のデジタル化で個人や小規模事業者の年次の税務申告をなくす(!!)という最初の構想が発表されました。“… today I am announcing that we will abolish the annual tax return all together.” (「…今日、私は、我が国で年次での税務申告を全てなくすことを発表します」)。この宣言はさぞや輝かしいものであったでしょう。日頃から様々な取引の情報をデジタルデータとして収集することによって、納税者それぞれに用意されたDigital Tax Account(デジタル税金口座)に支払うべき税額が逐次自動的に反映される、それによって、年に一回、改まっての申告を不要とする。いわゆる税務申告の概念を覆す、大胆な宣言でした。

とはいえ、実際のところ、少なくとも現時点において、MTDがそれほどうまく行っているわけではありません。政治主導で短期間で導入をしようとした結果、大きな反発を受け、その反発に対し妥協に妥協を積み重ねた結果、本来目指した世界とは程遠い形でのスタートとなっています。ただ、今後時間はかかるでしょうが、取引の発生から申告までがデジタルにかっちりとつながっていく世界を目指していくことは間違いありません。
posted by 岡本浩一郎 at 17:26 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年07月08日

Single Touch Payroll

さて、今回からボチボチと、先月末に公表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」の具体的な中身についてお話していきたいと思います。ただ、じらすわけではないのですが、今回の提言の一つのきっかけ、つまり海外で何が起こっているのかについて先にお話ししておきたいと思います。

まずはオーストラリアで2018年7月に義務化が始まったSingle Touch Payroll(STP)という制度について。この制度が始まったということで、2018年11月にオーストラリアの国税庁であるATO(Australian Taxation Office)を訪問し、この制度導入の狙いや背景、今後目指すところをヒアリングしました。

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STPは、言ってしまえば給与支払報告の仕組みです。日本でも給与支払報告という制度がありますが、これは年に一回で、ベースは紙。これに対しSTPは、給与を支払ったタイミングで、なおかつデジタルで報告をするというのがミソです。

この制度が発足するきっかけとなったのは、年金保険料の未納問題。日本でも本来加入すべき社会保険制度に加入していない事業者が多く存在することが問題になっていますが、オーストラリアでも似たような問題があるらしく、従業員に給与を払うと同時に年金保険料を納付すべきところ、していない事業者が多数存在しているとのこと。

STP導入後は、給与支払情報がリアルタイムにデジタルデータとして収集されるため、別途収集している年金保険料の支払い状況と照合すれば、どの事業者が年金保険料未納となっているかが瞬時に判断できるようになったそうです。

また、オーストラリアは日本と違い年末調整制度がなく、各人が確定申告をする必要があるのですが、STPで収集した情報を活用することにより、申告のサイトにログインすれば、ある程度情報が埋まった申告書が用意されるようになりました。いわゆる記入済み申告書というもので、確定申告を非常に簡単に済ますことができるようになります。さらに将来的には、STPで収集した情報を雇用保険的な仕組みに活用したり、地方税の業務にも活用する計画があるそうです。

上述の通り、日本での給与支払報告は年に一回で、ベースは紙なのですが、これをSTPのような仕組みにすれば、そもそも年末調整という仕組み自体をなくせるのではないか。同行したメンバーとそうワクワクしながら話したことを覚えています。そういった意味で、このSTPの事例は今回の提言につながる重要な役割を果たしています。

ちなみに、STPには基になったイギリスのPAYE (Pay As You Earn) RTI (Real-Time Information)という制度があるのですが、イギリスでは新型コロナウイルス禍において、Coronavirus Job Retention Scheme(日本で言う雇用調整助成金に近い補助金)を支給する際に、このRTIによる情報を活用しています。新型コロナウイルス禍では、雇用調整助成金にせよ持続化給付金にせよ、日本においては基本的に紙ベースでの審査になっており、デジタル化が進んでいないことの弊害が明らかになってきていますが、こういった海外の事例を見ていると、改めてデジタル化の必要性を実感します。

また、オーストラリアには、2019年10月にも別件で訪問し、その際にもフォローアップでATOを訪問したのですが、この際には、オーストラリアの電子インボイスへの取り組みを把握することもできました。これが、この後ご紹介するシンガポールの事例にもつながっていきます。そういった意味でも、2018年のオーストラリア訪問が今回の提言の大きなきっかけになったと言えます。
posted by 岡本浩一郎 at 20:43 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年07月06日

キャンプ 2020

本ブログでは、たまにプライベートのことも書くようにしているのですが、新型コロナウイルス禍の影響もあり、プライベートについて書くのは久し振りになります。

先週末は、1年振りにキャンプに行ってきました。念願のという感じです。2013年にキャンプを始め、翌年にはテントを購入しオートキャンプデビューして以来、だいたい年に3〜4回はキャンプに行くようになりましたが、昨年だけは例外。この2月に娘の中学受験があるということで、遊びは自粛モード。キャンプは6月にわずかに1回だけ、しかも1泊2日ということで、テントは張らずコテージ泊でした(自粛モードと言いつつも、昨年年始には香港に行っていますし、昨年夏には沖縄に行っていますが、それでも例年よりはだいぶ自粛しているのです、笑)。晴れて中学校に入学したら、早々にキャンプを再開しようと目論んでいました。

無事に中学受験が終わり、小学校卒業、そして中学校入学。本来は5月ぐらいにキャンプのシーズンイン、しかも昨年あまり行けなかった分、早く行きたいところですが、新型コロナウイルス禍の広まりの中で、行きたいけれど行けない状況が続いていました。6月19日に他都道府県への移動自粛要請が解除され、ようやく行ってもいいかと判断しました。昨年来の念願、自粛中からの念願、二重の意味で、念願が叶いました。

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今回は、梅雨時の1泊2日ということで、らくちんなコテージ泊です(テント泊は設営と撤収に時間がかかる - 多分私の要領が悪いだけ - ので、極力2泊3日の予定を組むようにしています)。BBQを堪能した後は、雨と風の音を聞きながら、ぼーっと焚火を眺めるひととき。実に贅沢な時間です。やっぱりアウトドアはいいですね。約3ヶ月間、散歩等々はありつつも、自宅に半分缶詰になっていただけに外の解放感は堪りません。

足元では東京都の検査陽性者数が高めで推移しており、何でも自由にできる訳ではありませんが、その観点でもキャンプはいいですね。×密閉→〇開放、×密集→〇閑散、×密接→〇家族だけと、3密の要素がありませんから。あえて言えば、チェックインの際などに注意が必要ですが、入口手前で検温、建物に入るのは1人だけ、などかなり気をつかって運営されていました。

新型コロナウイルスのリスクはあり続けるという前提でのNew Normal(新常態)。人によっては、リモートワーク前提で田舎に引っ越すというのもありかもしれませんね。私自身はそこまで踏み切るつもりはないのですが、リフレッシュするためにもアウトドアはうまく組み合わせていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:38 | TrackBack(0) | パーソナル

2020年07月02日

レベル2

7月に入りました。今年ももう折り返し地点を回ったことになります。前半は新型コロナウイルス禍の影響を受け、普段通りではなかったとはいえ、あまりにあっという間に過ぎ去ってしまいました。はや後半戦ということで焦りを感じます。

弥生では、この7月1日から、新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応レベルを全社でレベル2へと引き下げました。緊急事態宣言の発出前、小池都知事がロックダウンの可能性を示唆した3月下旬にレベル3(その後、緊急事態宣言が発出された4月上旬にレベル4)に引上げて以来となりますので、3ヶ月間に渡ってレベル3/4の対応を継続してきました。

6月18日には、安倍総理が社会経済活動のレベルをもう一段引き上げることを発表し、これを受け、6月19日より、一部の大規模なイベントを除き休業要請は全面的に解除されました。また都道府県境をまたぐ移動の自粛要請についても全面解除され、待望の(?)プロ野球も、当初は無観客試合という特殊な環境ではありますが、ついに開幕しました。この時点で弥生としてすぐにレベル2に移行することも検討したのですが、何分2ヶ月以上継続してきた対応を変えるということで、準備など万全を期し、昨日7月1日から正式にレベル2へ移行しました。

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レベル2で目指すことは、リスクに応じた対策を取りつつ、通常の事業活動を継続すること。レベル3/レベル4では一定の制約はやむを得ない、結果的にお客さまから見たサービスレベルの低下もやむを得ないとしていましたが、レベル2ではお客さまから見て、通常通りの運営となります。弥生のカスタマーセンターでは、緊急事態宣言下となった4月でも、確定申告期限が延長されたこともあり、10万件超、申告期限が過ぎた5月でも8万件超の電話でのお問合せをいただきました。しかし、レベル3/レベル4では稼働人数を絞り込まざるを得ず、どうしてもお客さまにお待ちいただく時間が長くなってしまいました(それでも、リスク低減を図りつつも、お問合せに対応し続けられたことは胸を張れることだと思っていますし、それを可能にしてくれたスタッフの皆さんには本当に感謝しています)。

今回、レベル2となったことで、カスタマーセンターでは、(リスク低減策は徹底しつつも)ようやく概ね通常通りの稼働体制となりました。例年この時期はお問合せが比較的少ない時期ということもあり、お待ちいただく時間は目にみえて減らせるはずです。

東京本社(マーケティング/開発/管理)に関しては、レベル2では、アウトプットを出せる限りにおいては、出社でもリモートワークでもどちらも可としています。私は必要性があって7月1日は出社しましたが、出社している人の割合は、パッと見、30%ぐらいでしょうか。この4月に入社した新卒社員の現場配属日ということもあって出社される方も多かったようです。古い人間なのでしょうが、久し振りに皆に会えることが嬉しくてウキウキとしてしまいました。

弥生ではこの7月から9月は、新型コロナウイルスと共存しつつも、新しい働き方、New Normal(新常態)を見出す試行錯誤の期間と位置付けています。出社のメリット、リモートワークのメリット、最適な組み合わせは職務によって異なりますが、それぞれの最適解を見出していきたいと思います。

一方で、本日の東京での検査陽性者数は100名超。行動自粛を解いた段階で検査陽性者数がある程度増えることは想定の範囲内ではありますが、増減を続けながらも一定のレベルで収まるのか、はたまた再び感染拡大のフェーズに入るのか、状況を慎重に見極め、適切な対応を図らなければならないと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:26 | TrackBack(0) | 弥生

2020年06月30日

主な提言内容

先週木曜日に発表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。実際の提言書を見ていただければわかりますが、かなりみっちりと中身が詰まっています。本ブログでも少しずつお話ししたいのですが、盛り沢山でどこからお話しすればいいのか悩むところ。

前回は、今回の提言に至った経緯として、1) これまで既に決まった制度であり、法令に対して粛々と対応してきたものの、そもそもお客さまである事業者にとって、また社会全体にとってどういった制度であるべきか能動的に働きかけることができていなかった、2) 一方で海外では、デジタルを活用して制度自体を合理的/効率的なものに見直しをしようとする動きが顕著になっている、という二点をお話ししました。

今回は、肝心の提言の中身についてお話ししたいのですが、一字一句に想いがつまっており、下手をすれば提言書そのものをここに書き出してしまいそうです(苦笑)。今日はまず、主な提言内容として4点お話ししたいと思います。

  • 情報通信技術が急速に発展している一方で、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものの一部の電子化(Digitization)に留まっている。改めて、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである。
  • 社会的システムのデジタル化による再構築に際して、1. 発生源でのデジタル化、2. 原始データのリアルタイムでの収集、3. 一貫したデジタルデータとしての取り扱い、4. 必要に応じた処理の主体の見直し、の4つのポイントを踏まえるべきである。
  • 短期的には、2023年10月のインボイス義務化に向け、標準化された電子インボイスの仕組みの確立に取り組むべきである。商取引の主体は民間であることから、まずは何よりも民間がメリットを確実に享受できるものとして、民間が主導して標準化、および仕組み構築を進めるべきである。同時に、インセンティブ設計も含め、行政による一定の関与と強力な後押しは不可欠である。
  • 中長期的には、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等についても、業務プロセスを根底から見直すデジタル化を進めるべきである。主に行政の仕組みであることから、行政が主導すべきであるが、民間も、行政手続きへの対応を要求される立場として、全体最適が実現されるよう、積極的に提言を行い、仕組み構築に際し、その設計から関与するべきである。行政/民間双方での対応が必要とされることから、現実的かつ明確なロードマップを作成し、計画的に、かつ段階的に進めるべきである。

次回から、この4点を柱として深掘りをしていきたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:31 | TrackBack(0) | 弥生

2020年06月25日

社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言

本日6/25、弥生は、SAPジャパンオービックビジネスコンサルタントピー・シー・エーミロク情報サービスと共同で、「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」を発表しました

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提言書は13ページ、別紙資料集は42ページとなかなかなボリューム感です。実際の提言書はこちら(ZIPファイル、中身はPDF)をご覧ください。

ITが急速に発展している一方で、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものの一部の電子化(Digitization)に留まっています。改めて、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきであるというのが、今回の提言の骨子です。提言では、どのような時間軸でどのような領域に取り組むのべきかというところまで掘り込んでいます。

前回まで、「10年経った弥生」というお題で3回連続してお話ししました。色々とありつつも、新しいことに取り組んできた。結果として数値面でもまずまずといえる成長を遂げてきた。一方で、実際のところ、まだまだできていないこと、まだまだやるべきことは山ほどありますともお話ししました。

まだまだできていないことに対する一つの解が今回の提言書です。弥生はこれまで、既に決まった制度であり、法令に対し、お客さまが対応できるように、弥生として粛々と対応してきました。制度や法令は、既に決まったもの。Givenであり、弥生がどうこうできるものではない。

それではダメなのではないかと痛感したのが、一昨年の年末調整です。本ブログでもお話ししましたが、配偶者(特別)控除の仕組みがあまりにも複雑化してしまい、一般の事業者の方が正確に理解し、正しく対応することが、ソフトウェアの助けをもってしても難しくなってしまいました(ちなみに、今年末の年末調整はさらに複雑なものになることが既に決まっています、涙)。

本ブログでも、制度の建て増しではなく、よりシンプルな仕組みに抜本的に作り替えるべきだとお話ししてきましたが、では実際どうするのかという解を示すことができていませんでした。

もう一つきっかけになったのが、オーストラリアイタリアイギリスなどでの調査です。今回ようやく、単に遊びに行った訳ではないということが証明できました(笑)が、海外では、データを活用することによって仕組みを根本からシンプルに効率的にする取り組みが急速に広がってきています。もちろんすべてにおいてうまくいっている訳ではないのですが、そういった課題も含め、日本ではどうすべきなのか、非常に多くの学びを得ることができました。

昨年12月には、「電子化からデジタル化へ」という少し謎めいたブログ記事を書きましたが、実は、それこそが、今回の提言の母体である社会的システム・デジタル化研究会(通称Born Digital研究会)の第一回検討会でした。今回共同で提言を行った5社は、実際には対象とする顧客層、顧客規模が異なるため直接的な競合関係とは言えないものの、一定の競争関係にはあり、これまでは今回のような協調をすることはありませんでした。しかし、トップ同士で上記のような問題意識をお話ししたところ、賛同していただくことができ、議論を経て今回の共同提案につながりました。

Born Digital研究会には、税理士の先生方や内閣官房にもオブザーバーに入っていただき、また、財務省、国税庁、中小企業庁の有識者にもインプットをいただき、皆の知恵と熱い想いを集めただけに、良い提言にできたと思っています。

中身については、また追ってお話ししたいと思いますが。今回の提言書には、この先10年で弥生(+研究会参加各社)がどういった使命を果たすべきか、熱い想いが込められています。機会があれば、是非ご一読いただければと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:05 | TrackBack(0) | 弥生