2022年12月28日

良いお年を 2022

弥生は今日で仕事納めです。一年が速く過ぎ去ると感じるのは毎年のことではありますが、実感としては時間の進みがますます速くなっており、まさにあっという間に過ぎ去った一年となりました。程度の差はあれ、今年も新型コロナウイルス禍の影響を受け続けたことが時間感覚を狂わせているのかもしれません(と思いたいだけで、単純に年をとったということなのかもしれません、苦笑)。

ただ、影響は受けつつも、やりたいことをできた一年でした。去年も同様なことを書きましたが、去年は果たせなかった海外渡航がついに実現しました。それもプライベートで3回、ビジネスで2回というなかなかのペースです。

プライベートのうち2回(LA, Hawai'i)は、もともと計画していたもの。残りの1回(Arkansas)はご縁があって急遽渡航することになったものです。いずれも帰国前のPCR検査もあり、気兼ねなく羽を伸ばすという訳にはいきませんでしたが、それでも久し振りに海外の空気を吸うことができたことは、待ち望んでいたことでした。真面目な面で言えば、急激な円安で日本の国力が失われていることを実感する機会にもなりました。

プライベートでは、今年の目標であったトライアスロンでのオリンピック・ディスタンスの完走を6月に果たし、その後10月にも再び完走することができました。また少し子どもっぽいので、あまり広くはお話ししていない趣味でも、目標を達成して今年を終えることができそうです。

ビジネスでの2回の海外渡航(Las Vegas, Singapore)は年の終わりに集中しましたが、これは帰国時の検疫の要件が緩和されたからこそ。どちらも非常に刺激になりましたし、内向きに閉じがちになっていた視野を再び広げる機会にもなりました。

海外だけではなく、国内の出張も支障なくできるようになりました。空港も一転混み合うようになってきましたね(特に福岡が大変なことになっているようです)。年2回、全国7会場で開催する弥生PAPカンファレンス(開催レポート#1, #2)の全参加を果たすこともできました。もっともあくまでも必要最小限といったところで、以前のように年間40回といったペースにはとても及びません。とはいえ、Zoomによって、離れたところでもより簡単にコミュニケーションをとれるようになっただけに、対面でお話しすることの価値も上がったように思います。

本ブログのネタとして書きやすいという大人の事情があり、ビジネスというと出張の話が多くなってしまうのですが、もちろん出張ばかりしているわけではありません。お客さまの事業を支援するという観点で、起業・開業ナビの機能強化を図ったり、新たに事業承継のお手伝いを始めたり。もちろん業務を支援するという観点でも、インボイス対応の核となる証憑管理サービスの提供を開始し、また、新たなクラウドプラットフォームを採用してやよいの給与明細 オンラインの完全リニューアルを果たしました。ここには到底書ききれませんが、この一年間でリリースした新サービスや新機能のボリュームは過去最高レベルです。

こうやって書いてみると、あっという間の一年と言いつつも、それなりに濃厚な一年だったということを実感できます。ただ、十分かというと全く十分とは言えません。この春には新しい株主を迎え、できることが圧倒的に広がっている中で、その機会を十分に活かしきれていないと感じています。もっともっと圧倒的なスピードで変化し、進化しなければなりません。

今年は、一向に終わりが見えないウクライナでの戦争を目の当たりにし、平和が当たり前のものではないことを実感しました。当たり前と思っていたことが当たり前でなくなる時代の中で、自分に何ができるのか、何をすべきなのか、そういったことも改めて考えなければならないと思っています。

では皆さま、良いお年をお迎えください。
posted by 岡本浩一郎 at 11:39 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月23日

Building a Roadmap to SaaS

前回お話ししたように、Las Vegasで開催されたAWSのre:Inventに参加したことは、テクノロジーの今とこれからについて改めて考える非常に良い機会になりました。ただ、実はre:Inventに参加する目的はこれだけではありませんでした。

本当の目的は、Executive Summitの1セッションにスピーカーとして参加すること。最初は、いわゆるプレゼンだと思って気軽に引き受けたのですが、実際には"Building a Roadmap to SaaS"というテーマのパネルディスカッションに、パネリストとして参加することになりました。私は英語に不自由しませんし、プレゼンであれば事前の準備ができるので、全く問題はありません。そんな私でも、パネルディスカッションは即興性が求められるだけに、英語ではなかなか気が重い(苦笑)のですが、ポジティブに考えれば、プレゼンと違い本格的な準備は不要です。実際問題として、出発直前までバタバタしており、準備の時間は全くありませんでした。

かなり準備不足で臨んだ本番ですが、最近は英語でコミュニケーションを取る機会が減っているにしては、まずまずの出来だったかと思います。まあ、とりあえずパネルディスカッションで大事なのは笑いを取るところなので(笑)、それはしっかりと(複数回!)笑わせることができました。笑いの部分は脇に置いていても、弥生のクラウドジャーニーの第三幕(第一幕は2012年から、第二幕は2014年から、そして第三幕は2022年から)に至るまでの過程、何を考えてきたのか、をしっかりと伝えることができたのかなと思います。

2022122301.jpg 笑いをとったど(1回目)
2022122302.jpg 笑いをとったど(2回目)
2022122303.jpg 最後に全員で記念撮影

他のパネリストはGitLabのCMO&CSO、PreciselyのCTO、ExasolのCTOという錚々たるメンバー。他のパネリストの皆さんの発言も非常に参考になりましたし(やはり課題意識は共通)、とても楽しかったというのが感想です。

実はもう一つの目的があり、それは今回re:Inventに参加した社員6名をおもてなしすること。色々とハプニングもあり、事前の想定通りにはいきませんでしたが、到着後のお昼にはIn-N-Out Burgerを食べ、翌日夜にはRuth's Chris Steak HouseでFilet/Sirloin/Ribeyeという三種類のステーキを食べ比べ(お勘定は相当な金額でした、苦笑)、その後は皆でBlue Man Groupを鑑賞し、まずまず楽しんでいただけたのではないかと思います。

ちなみに、現在進行形で進んでいる弥生 Advent Calendar 2022でもre:Invent訪問記が掲載されています(噂では3回シリーズものになるとか)。また、1/26に予定されているもくテクはAWS re:Invent 2022 参加報告会として開催するそうなので、ご関心がある方はこちらも是非。

あ、本当の目的としてLas Vegasだけにカジノを想定していた方にはごめんなさい。私は人生が最大のギャンブルだと思っているので、ちまちました賭け事には興味がないのです(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 19:41 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月21日

re:Invent

微妙に明言しておりませんでしたが、11月の末に米国出張した際の目的地はLas Vegasでした。まずはSan Franciscoに入った後、泳いでお気に入りのオイスターバーでご飯を食べて、一泊して翌朝は走った後に、満を持して(笑)のLas Vegas入り。

Las Vegasというと、カジノのイメージが強いですが、全米最大のカンファレンスの街でもあります。と言いつつ個人的にはこれまでLas Vegasでカンファレンスに参加する機会がなかったのですが、今回はご縁があって、AWS(Amazon Web Services)が主催する同社最大のイベントre:Invent 2022に参加してきました。re:Inventはもともとエンジニア(AWS的な言い方では"Builder")向けのイベントですが、イベントの一部として経営層(Executive leaders)をターゲットとしてExecutive Summitというイベントも併催されています。今回は、AWS Japanからお声がけいただき、このExecutive Summitに参加した次第です。

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re:Inventのキーノートセッションや、Executive Summitの各種セッションに参加しましたが、言葉を選ばずに感想を述べれば、とにかく圧倒されたということでしょうか。もちろんre:Inventというイベントの規模にも圧倒されました(実に50,000名が参加するのだそうです)が、それ以上に、今回発表された大量の新サービスや新機能に圧倒されました。一つのキーノートで、次から次へと発表されますからね。量もそうですが、インフラからハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、AIまで、その多様さにも圧倒されました。

クラウドというと、もともとは自社のオフィスや契約データセンターに置かれていたサーバー群をインターネット上のデータセンター上にホストできるようにしたものというイメージがあるかと思います。もはやサーバーを所有し、管理する必要はない、インターネット接続さえあれば、クラウド上にあるリソースを好きな時、好きなだけ活用できる。

これは正しいと言えば正しいのですが、AWSはそれ以上の仕組みを構築しつつあるのではないかと感じました。サーバーをインターネット上のデータセンター上にホストするというのは、従来の技術の延長線上にあるものですが、もはや従来の技術の延長線上にない、ある意味これまでの技術から跳躍した新しい技術が生み出されている。新しいものについていけるのだろうかという漠然とした不安があるのも事実ですが、それ以上に何ができるんだろうとワクワクします。

re:Invent 2022は、仕事では実に3年ぶりに日本を離れ、世界の今を感じる(何でも高く感じるですとか、笑)良い機会になったと同時に、テクノロジーを生業とするものとして、テクノロジーの今とこれからについて改めて考える非常に良い機会になりました。
posted by 岡本浩一郎 at 21:11 | TrackBack(0) | テクノロジー

2022年12月16日

旅先ラン&スイム

11月末から12月上旬にかけてLas VegasSingaporeに二週連続で出張してきました。もちろん仕事なのですが、実は密かに楽しみにしていたのが、旅先でのラン&スイム。

Las VegasはSan Franciscoで一泊してから入ったのですが、San Franciscoに土曜日の夕方到着したら、まずホテルの屋内プールでスイム。ホテルのプールは小さいですし、子ども達が遊んでいたりしますが、泳ぐ専用コースがあり、そこで黙々と泳ぎます。コースが15mだと、167ラップでようやくいつもの2.5km。たまに子ども達のビーチボールが飛んで来たりますが、それもまたご愛敬。何よりも泳いだ後のビールは格別です。

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翌日は時差にもめげず早起きして早朝ラン。UberでFort Masonというところまで移動し、そこからCrissy Fieldを横断し、Golden Gate Bridgeを目指します。いかにもSan Franciscoという景色でテンションが上がります。Golden Gate Bridgeのたもとまで走って、そこで折り返し。帰りは出発地点を少し通り過ぎ、Fishermans Wharfまで。11kmを1時間ちょっとかけて走りました。折角なので、Fishermans Wharfからはケーブルカーでホテル近くまで戻ったのですが、汗をかいた後だけに寒かったです。

その後のLas Vegasでもあわよくば走って泳いでと思っていたのですが、全然ダメでした。走るのに適したコースがなく、またホテルに立派なプールエリアはあったのですが、全て屋外。一応温水プールとのことでしたが、外気温一桁の中で泳ぐ勇気はありませんでした。

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一旦日本に帰って、翌週はSingapore。Singaporeでもホテルに到着したらまずプール。Singaporeは暑いので、泳ぐ気満々です。ちょうど日が沈むタイミングでプールに。まだ十分に暑い(27度)のですが、こちらは逆に温水プールではないので、水がかなり冷たい。水につかるのにかなり勇気がいりました(笑)。45分ほどで1.5kmほど。

翌朝は早朝ラン。まだ暗いうちにホテルを出て、Merlionまで。ちょうど空が明るくなってきたところをMarina Bay Sandsを見ながら走ります。Marina Bay Sandsをグルっと回ってその裏側にあるGardens by the Bayまで。ここでは熱帯らしい植物が生い茂り、また、エキゾチックな鳥の鳴き声も聞こえ、Singaporeが熱帯だということを実感します。少し走っていると、Supertreeが見えてきます。あっちこっちと寄り道しながら、7.5kmを45分程度で。暑いのでペースは上がりませんが、あまりに楽しいので、翌日も早起きして二日連続ラン(& 夜に泳いだので、二日連続スイム)となりました。

考えてみると、これも新型コロナウイルス禍の中で見出したことかもしれません。以前は、職場に通勤してオン、家に帰ってオフとオンオフが明確に分かれていました。これに対しリモートワークが続くようになって、一日の中で、オンとオフがフレキシブルに切り替わるようになりました。当初は散歩&縄跳びでしたが、最近は朝一番やランチタイム、夕方などに時間があればランを中心に軽く体を動かしています。そしてその後また仕事に戻る。ちょっと運動すればすっきりして気分が切り替わるという効用があるように思います。もっともずるずると寝る直前まで仕事を続けてしまいがちというのは注意が必要なのですが。出張についても仕事だからずっとオン、ではなく、出張の中でもオンとオフを切り替えられるようになったということかと思います。

時間に余裕があれば、なので、残念ながらいつもという訳にはいきません。特に旅先は荷物も大変ですしね。それでも、いつもと違う土地で走ったり、泳いだりするのはとても楽しい時間です。
posted by 岡本浩一郎 at 18:25 | TrackBack(0) | パーソナル

2022年12月14日

幸先詣

11月末から12月頭にかけてLas Vegas(あ、これまではどこには明言していませんでしたが)、そして先週はSingaporeと二週間連続での海外出張となりました。Las Vegasは気温1ケタ台の冬(イメージと違うかもしれませんが、砂漠なので冬は寒いのです)に対して、Singaporeは30度近くの常夏とかなり変化に富んだ二週間となりました。

そしてふと気が付いてみると師走のしかも中旬。最終週はゆっくりと来し方行く末を考えたいとなると、実質今週と来週で終わりです。年齢と共に一年が早くなり、新型コロナウイルス禍の中ではもはや時間がワープする感覚ですが、それにしても今年一年は早かったと思います。

ということで、今週/来週は少し落ち着いて仕事を片付け、良い形で新年を迎えられるようにしたいと思います(と言いつつ今週金曜日は年内最終の出張があったりしますが)。一方で、新年を良い形で迎えられるよう、今年のうちに先取りできることもある、ということで、実は今日、幸先詣で神田明神に行ってきました。

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写真撮影の時のみマスクを外しています。

幸先詣(さいさきもうで)というと耳馴染みはないと思いますが、新型コロナウイルス禍の中で、ソーシャルディスタンス確保のために、年越し前、つまり年内に早めに参拝をすることを社寺が推奨するものだそうです。2020年に福岡県内の神社がはじめて提唱し、福岡県神社庁が勧奨したということです。

実は、新型コロナウイルス禍真っただ中の2020年12月、先手必勝ということで、年内に参拝を済ませました。新年の神田明神の混み具合は、超過密。でも、例年、弥生のためでもありますが、それ以上に、弥生のお客さまのため、日本の中小事業者の皆さんの繁栄をお祈りしていますから、お参りしないわけにもいかない。ということで、まだ人の少ない年内に参拝しようということになりました。結果的に大正解だったのは本ブログでもお話しした通りです。これはいいということで、2021年も年内に参拝。そして今年も、となった訳です。

年内に参拝というのはまだまだ一般的でないかと思いますが、実はもう幸先詣という名前までついていることを初めて知りました。日本人は初詣は神社で、結婚式はキリスト教、亡くなったら仏教と宗教に対する拘りがないと言われます(あくまでも一般論です)。拘りがないというと否定的な言い方になってしまいますが、こういった形で時代に合った形でお参りの形も変わっていく、その融通が利くところは日本の良さでもあるのではないかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:22 | TrackBack(0) | 弥生

2022年12月12日

25年以上振りのSingapore

という訳で先週はSingaporeに出張でしたが、振り返ってみるとSingaporeは実に25年以上振りでした。最初に訪れたのが社会人になって2年目の1993年。2回目がビジネススクールに留学中の1996年。それ以降、訪れる機会がぱったりと無くなってしまいました。1996年はビジネススクールの夏休みを使って、LA - Australia - Indonesia - Singapore - Malysia - Thailand - Hong Kong - China - Japan - LAという太平洋をグルっと回る旅の途中で訪れました。遊んで終わりではなく、Quarterdeckというパソコンソフトのメーカーでのインターンの一環として、Japan/Hong Kong/SingaporeのPCソフト市場の調査も兼ねた旅(もちろん思いっきり楽しんだのも事実ですが、笑)だったというのは以前本ブログでお話ししたことがあります。

ただ、実はこの際Singaporeで猛烈な食あたりにあい、丸二日間ぐらい全く動けなくなったという暗い過去があります。幸いにして無事に回復し、以降の日程を予定通りこなすことはできたのですが、滞在日数の割に印象が薄いのはこのせいかもしれません(笑)。以降、トラウマになって行く気がなくなったということではないのですが、なんとなく行く機会がありませんでした。

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今回、25年以上振りに訪問しての印象はとにかく都会だな、ということ。今回は、有名なMerlionの近くのホテルに泊まったのですが、その周辺は超高層ビルがこれでもかとばかりに。Merlionに向かい合って一番目立つのはMarina Bay Sands。前回訪問時にどんな感じだったのかは正直全く覚えていないのですが、Merlionを見たことは覚えています。ただ、調べてみたらMerlionは2002年に移転しているのですね。どうりで全く見覚えがないわけです。

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改めて調べてみると、前回訪問時(1996年)には日本の一人当たりGDPは$39,150、Singaporeは$26,234(出所: 世界銀行)。日本の方が経済先進国でした。しかし、直近の数字は全く異なります。2021年の数字ですが、日本は一人当たりGDPが$39,285、Singaporeは$72,794。USドル建てのため、為替の影響を大きく受けますが、日本は過去25年間ほぼ横ばい。それに対し、Singaporeは約3倍近くにまで成長しています。人口が違いますから、国全体のGDPとしてはもちろん日本の方が圧倒的に大きい(今でも世界第3位、Singaporeは36位)ですが、もはやSingaporeの方が経済的に豊かな国と言えるでしょう。

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今回、初日の晩は屋台(Hawker center、と言っても昔と異なり、奇麗に整備されたフードコート的なもの)で軽くご飯を食べたのですが、手前がMie Goreng(焼きそば)でS$8、奥がSatay(焼き鳥)でS$10でした。今のS$はざっくり100円なので、800円と1,000円。日本と比較しても決して高くはないですね。むしろ気持ち安いぐらいかもしれません(ただし、Singaporeは政策的にお酒は高いです)。アメリカでは何でも高いと書きましたが、今海外旅行に行くのであればSingaporeの方がおススメです。

興味深いのは、Singaporeにおいて、普通のお店の時給がそこまで高いわけではないこと(だからこそ食事も高くはない)。たまたま見たあるお店では、アルバイトの時給がS$10となっていました。時給1,000円であれば日本と変わらない(日本の都市部と比較するとむしろやや低めかもしれません)。それでいて、一人当たりGDPが$72,794という事実があります。これはおそらく単価の低い労働力として外国人労働者を受け入れており、Singaporeanはより付加価値の高い仕事に集中しているということなのではないかと思います。そもそも国の規模が違いますし、Singaporeでやっていることが絶対的に正しいというつもりもありませんが、一つの国のあり方として参考になる部分はあるように思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:16 | TrackBack(0) | パーソナル

2022年12月09日

Business productivity vs. Tax collection

前回お話しした通り、今週水曜日/木曜日にSingaporeで開催されたE-Invoice Exchange Summitに参加しました。私がE-Invoiceに関して本格的に取り組むようになったのはここ3年間弱ですが、今回、初めて関連する人たちと対面で会うことができました。

もっとも、もちろん会うことだけが目的ではありません。二日間のセッションを通じ、様々な国が今何を目的にどのように取り組んでいるのかについて理解を深めることができました。

これらセッションを通じ、改めて理解を深めることができたのが、そもそもなぜE-Invoiceに取り組むのか、大きく二つのアプローチがあるということ。二つのアプローチとは、E-Invoice推進の目的が、事業者の業務効率向上(Business productivity)にあるのか、あるいは、付加価値税の徴税効率化(Tax collection)にあるのか。これらは、必ずしも排他的ではなく、両方とも目的になりうるのですが、完全に並列というよりはどちらかが主目的ということが一般的です。以前本ブログでもお話ししたイタリアのE-Invoiceは明らかに後者(付加価値税の徴税効率化)ですね。一方で、結果的にインボイスが電子データとしてやり取りされるが故に、業務の効率化にもつながっているとは聞いています。

今回のセッションの中では、インドの事例がなかなか興味深かったです。インドの場合は、送信者(売り手)がE-Invoiceを送信する前に、税務当局にそのデータを提出して確認を受け、そのインボイスに対し、一意の番号の発行を受ける必要があります。その番号を付加したE-Invoiceを改めて受信者(買い手)に送信するという流れになります。これによって、税務当局は発行された全てのE-Invoiceを把握することが可能になります。つまり明らかに、後者、付加価値税の徴税効率化が目的です。イタリアの事例と違うのは税務当局は送信者(売り手)と受信者(買い手)のやり取りの間には入らないということです(イタリアのように間に入るモデルはCentralized exchangeもしくはCentralized reporting、インドのように確認を受けるモデルはClearanceという言い方をします)。

逆にE-Invoice推進の目的が、事業者の業務効率向上にあるのが今回のホスト国であるSingapore。私が最初にヒアリングをした2020年3月の時点から、SingaporeとしてのPeppol推進の目的は事業者のProductivityであり、Efficiencyの向上にあるということを明言していました。付加価値税の徴税については既に高い効率性と公平性を確保できており、そのためにE-Invoiceは必要ないとのこと。

では、今後Peppolを活用していく日本はどうなのか。これはSingaporeと同じく、事業者の業務効率向上です。そもそも、私がSingaporeの話を踏まえ、日本では事業者の業務効率向上を主眼に置くべき、そのためにはSingaporeでも採用されたPeppolを日本でも採用しようと考えたことがEIPAによる平井大臣への提言につながっていますから。

事業者の業務効率向上(Business productivity)か、付加価値税の徴税効率化(Tax collection)かは、E-Invoiceをどこまで強制するかとも密接に関係します。Tax collectionを目的とするのであれば、そもそもE-Invoiceを義務にしないと効果が生まれません。実際、イタリアもインドも基本的には義務です。

これに対し、日本では、インボイス制度に対応すること自体は法令であり義務ですが、デジタルインボイスはあくまでも任意です。逆に言えば、デジタルインボイスの普及の鍵を握るのは、いかに事業者の業務効率を向上させられるのかにかかっています。同様なアプローチをとるSingaporeは、いかに民間を巻き込むか、そして事業者に業務効率化というメリットを実感してもらうのかについて様々な工夫をしているということを今回改めて理解することができました。日本においても、この努力は欠かせません。弥生をはじめとする個社からも発信していくのはもちろんですが、EIPAを通じて社会全体に対し、しっかりと発信が必要だと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:44 | TrackBack(0) | デジタル化

2022年12月07日

It's so nice to finally see you in person.

先週の米国出張の目的について語らずじまいですが、実は今週はSingaporeに来ています。こちらについては最初から訪問目的をお話しすると、今日からSingaporeで開催されているE-Invoice Exchange Summitに参加するためです。

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E-Invoice Exchange Summitは、E-Invoice(日本ではデジタル化という観点からデジタルインボイスと呼ぶようにしています)の普及に向けて、様々な国の行政機関やサービスプロバイダー、Peppolの管理団体であるOpenPeppolなどが集まり情報を共有し、意見交換を行う場です。年に数回、ヨーロッパ、米国、アジアなどで開催されていますが、今回は海外との行き来がしやすくなったこと、また、日本から比較的行きやすいSingaporeでの開催ということで、参加することにしました。

私がE-Invoiceについて関心を持つようになったのは、2019年にイタリアを訪問し、イタリアで運用されているE-Invoiceについて調査をしたことがきっかけです。その後、SingaporeがPeppolによるE-Invoiceの運用を始めたということで、これも調べなければとSingaporeを訪問しようとしたのが2020年3月。Singaporeでは日本で言えばデジタル庁にあたるIMDAという行政機関がPeppol Authorityとして活動しているため、IMDAを訪問する予定でした。しかし2020年3月と言えば、新型コロナウイルス感染症が日本でも脅威として捉えられるようになった時期。ということで、このタイミングでのSingapore/IMDA訪問は残念ながら見送りとせざるを得ませんでした。

物理的に訪問することは叶いませんでしたが、急遽Web会議を設定し、IMDAへのヒアリング自体は行うことができました。その後IMDAとは何回も打合せは行ってきましたが、すべてWeb会議。今回、当初の訪問予定から実に2年半経ってようやくリアルで会うことができました。

2020年12月に日本のデジタルインボイスとしてPeppolをベースとした標準仕様を策定することを平井卓也デジタル改革担当大臣に提言し、2021年1月には正式にOpenPeppolとの議論が始まりました。OpenPeppolとはかなりの頻度(基本的に2週間に一度)で議論を続けてきましたが、それらも全てWeb会議です。今回のSingaporeでのE-Invoice Exchange Summitでようやくリアルで会うことができました。

It's so nice to finally see you in person. ようやく対面で会えてうれしいです。

何回もWeb会議で顔合わせしている人と、初めてリアルで顔合わせするというのはちょっと奇妙な感覚ですね。実際に会うこと、そして握手するのは初めて。ただ、Web会議で何回もやり取りしているだけにすぐに打ち解けることができます。少し不思議に思うのは、実際に会った際に、イメージ通りの人もいれば、イメージと全く違う人もいるということ。今回のケースで言えば、IMDAの人たちは概ねイメージ通りでしたが、OpenPeppolの人たちはだいぶイメージが違いました。一人に至っては、言われなければ誰だか全くわからないほど(失礼)、Web会議の時のイメージと違いました。もちろん、話し出せばすぐに打ち解けるのですが。イメージ通りか、イメージと違うのか、何が影響しているんでしょうね。
posted by 岡本浩一郎 at 23:18 | TrackBack(0) | デジタル化

2022年12月05日

ブリトー一つで2,000円越え

先週お話しした新しいクラウドプラットフォームに関連して、先週は米国に出張してきました。どこに、何しに、という点は次回以降お話しするとして(出し惜しみ、笑)、今回とにかく印象に残ったのは、何でもかんでも高いということ。

今年に入って米国訪問は実に4回目。海外に出たくても出れなかった2020年/2021年と打って変わって、今年は結構な頻度で海外(ここまでは全て米国)に出ています。本ブログでも一通りお話ししていますが、ゴールデンウィークにはビジネススクールの同窓会でLos Angelesに、その数週間後には娘の部活動の世界大会出場をサポートするためにArkansasに、そして8月には命の洗濯(夏休み)で4年振りのHawai'iに。全部プライベートなので、いつ仕事をしているんだという感じですね。いや、仕事は仕事でしているはずです(汗)。そういった意味では、今回の渡米が3年振り(2019年秋のオーストラリア以来)の海外出張となります。

という訳で渡米は今年4回目となり、強烈な円安にもまあまあ慣れているはずなのですが、それでも、今回は何でもかんでも高いと感じました。

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例えば、こちら。日曜日の晩ご飯のChipoletのブリトー。見た目はあんまり冴えませんが、結構美味しいです。航空券の関係で私は一人で土曜日にSan Franciscoに入り、日曜日に目的地に入りました。日曜日夜には本隊の6名が合流し、遅めのディナーを一緒に食べるはずだったのですが、Los Angelesから飛ぶはずの飛行機が遅延するとのこと(結局日曜日中には飛ばず、月曜日朝の到着になり、皆お疲れの様子でした)。一人での晩ご飯は簡単に済ませようということで、ホテルから歩いていけるChipoletでテイクアウトすることに。しかし、これ一つで実に$16.15です。内訳はBarbacoa Burritoが$12.00、Guacamoleトッピングが$2.90、そして税金が$1.25。$16.15といえば、多少なりとも円高に戻してきた直近のレート135円/$で計算しても、2,180円です。ブリトー一つが2,000円越え。

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そして、こちら。これはその翌日の朝ご飯。Coffee Bean & Tea Leafというコーヒー屋さんで、Caramel Latteとサラダ。これで$17.83です。内訳としては、Large Caramel Latteが$7.00、Pesto Saladが$9.45、そして税金が$1.38。$17.83は2,400円と朝ご飯としてはあり得ない値段ですが、Latteだけでも$7.00、既にほぼ1,000円!

これまでの3回の渡米では、もちろん何を見ても高い、ただ現実を無視して100円/$で考えれば、まあ何とかしょうがないと思える範囲だったように思います。それに対し、今回は仮に100円/$で考えても高い。そう、インフレですね。今年最初の渡米が4月末。それから7ヶ月間ですが、それだけの短い期間でも確実に全ての値段が上がっているように思います(あとは今回の訪問地の物価が高いという部分もあるのかもしれません)。

ちなみに、McDonaldsでスタッフ募集の広告が出ていましたが、時給が$18-$19ぐらいだったかと思います。日本円で言えば時給が2,400円から2,600円。それはMcDonaldsのハンバーガーも(今回は食べていませんが)高くなるはずです。移動の際にUberのドライバーの人と話しましたが、今や$20ではちゃんとしたランチも食べられないよ、とのこと。

先週末は出先で時間がなかったので、松屋で牛めしを食べましたが、牛めしにセットをつけて500円ぐらい。$4.00ぐらいといったところでしょうか。普通のお店でも1,000円/$7.50ぐらいあればしっかりとしたお昼ご飯を食べることができます。確かに日本の中にいる限りにおいては、値段が上がってきているとはいえ、まだまだそれなりにお手頃にそれなりに美味しいものが食べられます。ただ、それはあくまでも日本の中にいる限り。一歩外に出た瞬間に、日本は(あえて極端な表現をすれば)貧しい国になっていることを実感します。さらに言えば、エネルギーはもちろん、食べ物も多くの割合を海外に依存している以上は、いずれは日本での価格も上がっていきます。

今は、たまに海外に出た際に、うわー高いな、と驚くだけかもしれません。一方で、このままいけば、日本にとどまっていても海外からの物を買えなくなってくる。そんな危機感を強く持たざるを得ない、そんな今年4回目の渡米となりました。
posted by 岡本浩一郎 at 23:21 | TrackBack(0) | パーソナル

2022年12月02日

弥生PAPカンファレンス 2022秋 開催レポート

10/20から開催してきた会計事務所向けのカンファレンス、弥生PAPカンファレンス 2022 秋ですが、11/24のオンライン開催(3回目)で無事終了しました。全国7会場、オンライン開催3回を1ヶ月ちょいでやり遂げたということになります。正直大変ではありましたが、その大変さに見合うだけの成果は得られたと考えています。

6月に開催した前回のカンファレンス(これも全国7会場、オンライン3回)では、参加者(メディアや関係者等を除く)が2,000名を越えたとお話ししました。今回は、3,000名越えとまではいきませんでしたが、かなり3,000名に近いところにまでいきました。会場での参加も100名以上増えていますが、やはりインパクトが大きいのがオンラインでの参加です。今回もオンラインでは3回開催しましたが、うち1回目が1,000名弱、2回目が1,000名超となりました。オンライン開催は一般的に初回が一番参加者が多く、以降は参加者が減っていくのですが、今回は2回目が最多の参加者という結果になりました。

3,000名近くの方にご参加いただけた背景には、今回のメインテーマであるインボイス制度について、制度開始まで一年を切り、会計事務所の関心がより高まっており、なおかつ、その関心はより具体的な点にまで広がってきたことがあると感じています。今回のカンファレンスで弥生が目指したのは、インボイス制度において、インボイスの受領から記帳まで、どのようなオペレーションとなるのか、具体的な感触を持っていただくこと。参加した方にいただいたアンケート結果を見ても、この狙いは概ね達成できたのではないかと考えています。

もっとも、良くも悪くも今回のカンファレンスに参加いただけたのは、3,000名弱。弥生PAPの会員数は12,000弱ですから、1/4に過ぎません。カンファレンスという仕組み上、時間の制約はありますし、参加したかったけど都合がつかなかったという方もいらっしゃるのではないかと思います。また、事務所内で1名は参加したけれども、本当は事務所内の皆でしっかり理解したいということもあるかと思います。

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そのため、弥生ではカンファレンスの開催レポートを作成し、公開しています。今回の弥生PAPカンファレンス 2022秋の開催レポートについては、11/30に無事公開することができました(終了から一週間での公開ですから、結構頑張りました)。開催レポートは概要だけではなく、オンライン開催時のビデオそのものを見れるようになっています。しかも再生速度を1.0倍から2.0倍まで変えることができますし、チャプターも設定されているので、必要な部分だけを簡単に見ることもできます。

また、一連の開催でいただいたご質問とその回答もまとめて公開しています。特にオンライン開催の際には多くのご質問をいただいており、結果的に100問以上のQ&Aとなっています。

心配なのは、開催レポートでここまで丁寧にやると、これはもうPAPカンファレンスそのものには参加しなくてもいいのでは、とならないかということ(苦笑)。実際問題、再生速度の変更など、事後の方が便利な部分もありますから。ただ、会場開催の空気感的なものまでは伝えることはできませんし、また、開催前後や休憩中などに私やスタッフに直接いただいた質問などはカバーできていません。また、オンライン開催にご参加いただければその場で直接ご質問いただけますが、開催レポートでは既になされた質問への回答を確認することはできても、新たに質問をすることはできません。

カンファレンスを企画・開催する立場としては、やはり直接的な参加者を増やしたい。でも一番大事なのは、弥生としてのメッセージを多くの会計事務所パートナーにしっかり伝えるということ。ですから、開催レポートでも伝わるのであれば、それはそれでいいのだと思います。しっかり伝えるために、会場での参加、オンラインでの参加、開催レポートでの確認という選択肢を提供することが大事なのだと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:44 | TrackBack(0) | 弥生